(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ブランクである円筒状の中空シャフト素材に対し、その軸心に沿った端部に位置する据え込み予定部を、該軸心に向けて絞ることで、絞りを施さない元々の基準径円筒部との間に、径差を有した段付き状シャフトを成形する段付き中空シャフトの製造方法において、
絞りを行う一対の金型である押圧側金型と被押圧側金型とに対し、少なくとも一方が導入角付き金型として形成された導入角θの角度基準を、前記軸心と直交する前記中空シャフト素材の輪切り断面に対応した前記金型の仮想面上とすると、
前記導入角付き金型として、前記中空シャフト素材を保持する一次型内を、45°を上回る鋭角状の第1導入角θ1の第1テーパ部を介して、径小化された第1の前記被押圧側金型と、第1の前記押圧側金型を備える第1の金型ユニットにより、
前記第1の被押圧側金型の前記一次型内にセットされた状態にある前記中空シャフト素材のうち、一方側の前記据え込み予定部を、前記第1の押圧側金型と共に、前記第1導入角θ1に倣って絞り、中空を維持したまま、前記基準径円筒部より径小な一方側一次変形部に変形させる一次絞り工程と、
前記導入角付き金型として、前記一方側一次変形部を含む半成形シャフトを保持する二次型内を、45°を上回る鋭角状の第2導入角θ2で形成された第2テーパ部を境に、前記基準径円筒部の形状に対応した型等径部と、前記型等径部より径小な一方側型径小部に区画した第2の前記被押圧側金型と、前記第2の被押圧側金型との相対動作で、前記一方側一次変形部の反対側から前記半成形シャフトを押圧する第2の前記押圧側金型と、前記一方側型径小部を挿通して前記半成形シャフトと接触可能な一方側スリーブと、前記半成形シャフトの前記一方側一次変形部をその内周側でしごくしごき部を含む一方側マンドレルを備える第2の金型ユニットにより、
前記一方側マンドレルの先端部が前記型等径部内に待避の下、前記第2の被押圧側金型の前記二次型内にセットした状態の前記半成形シャフトを、前記第2の押圧側金型で押圧することにより、前記一方側一次変形部を、前記型等径部から前記第2導入角θ2に倣いながら、前記一方側マンドレルの前記しごき部と非接触で、前記一方側型径小部と前記一方側マンドレルとの間に送り、絞り込んで一方側二次変形部を成形する第1成形処理と、
前記第2の押圧側金型で反力を受けながら、前記一方側スリーブで前記一方側二次変形部の一端面を押圧して、前記一方側二次変形部を、前記一方側マンドレルの前記しごき部と接触した状態になるまで圧縮させ、この圧縮状態を維持したまま、前記一方側マンドレルを、前記一方側二次変形部と相対的に移動させて、前記一方側二次変形部のしごきを行ってから、前記一方側二次変形部から引き抜く第2成形処理と、を含む二次絞り工程を有すること、
を特徴とする段付き中空シャフトの製造方法。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、エンジンとモータを併用して走行するハイブリッドカーは近年、急速な勢いで普及し、さらに電気自動車や、自動運転技術を搭載した自動車が、次世代の自動車として大いに注目され、将来、世界的な市場規模で展開されると予想されている。次世代の自動車は、エンジンを主に走行する従来の自動車に比べ、多種に亘り、数多くのモータを搭載している。このように、自動車の電動化がさらに進むことに伴い、モータの需要は今後、増加傾向にあると見込まれている。自動車に搭載される走行向けのモータでは、ロータ軸は、円筒状の中空シャフトからなり、その一部に縮径部を有している。
【0003】
特許文献1は、拘束治具の挿入軸部をダイスに挿入した下で、中空素材を、その送り込み開始端部からこのダイス内に送り込むことで、中空素材に対し、送り込み開始端部の内径を拘束した状態で、塑性加工で縮径を施して成形された中空状動力伝達シャフトである。モータのロータ軸を、径差を付して製造する場合、縮径部は一般的に、一例として挙げた特許文献1のように、ストレート状の中空素材に絞り加工を施して形成される。
【0004】
ここで、走行向けモータのロータ軸を製造する現場で、実際に行われている製造方法の一つとして、縮径部を成形する絞り加工について、
図1及び
図2を用いて簡単に説明する。
図1は、絞り加工後の製品であるシャフト成形品を、その軸心を含んで半分に分割された状態で示す断面図である。
図2は、
図1に示すシャフト成形品の素材として、製品ブランクを、その軸心を含んで半分に分割された状態で示す断面図である。
【0005】
ロータ軸は、
図1に示すように、絞り加工後の製品であるシャフト成形品10に、熱処理や表面処理等の二次絞り工程を施して形成される。シャフト成形品10は、
図2に示すように、円筒形状で肉厚t0の製品ブランク30を素材に用いて、軸心AX方向に対し、基準径円筒部31を挟む両側で、屈曲予定部33を介して、縮径予定部34を絞り込んでなる。シャフト成形品10では、基準径円筒部11は、製品ブランク30の基準径円筒部31と同径であるが、縮径部13は、屈曲予定部33の変形後である屈曲部12を介して、縮径予定部34より径小である。縮径部13は、製品ブランク30の肉厚t0より太い一様の肉厚t1となっている。屈曲部12は、軸心AX方向に対し、基準径円筒部11と縮径部13との間で、急峻(
図1中、屈曲角θ=約90〜100°)な段差状になっている。
【0006】
図22は、従来技術に係るモータシャフトの製造方法に関し、金型の導入角と製品ブランクの変形との関係を説明する模式図である。(a)は、絞り加工前の製品ブランクを示す図、(b)は、45°を下回る比較的尖った鋭角状の導入角とした金型で、製品ブランクを絞った場合に生じる変形の様子を示す図、(c)は、45°を上回る比較的緩やかな鋭角状の導入角とした金型で、製品ブランクを絞った場合に生じる変形の様子を示す図である。
【0007】
金型を用いた製品ブランク30の絞り加工では、軸心AX方向に真直ぐな屈曲予定部33と縮径予定部34とを、金型形状(導入角等)に倣って塑性変形させることにより、急峻な屈曲部12と、径小化した縮径部13を得る。このとき、現場では、生産管理やコスト削減化等の都合上、絞り加工の工程数を、なるべく少なく抑えることが望まれている。
【0008】
ところが、工程数を少なくしようと、45°を下回る比較的尖った鋭角状の導入角とした金型により、
図22(a)、(b)に示すように、真直ぐな屈曲予定部33から、急峻な屈曲角θm(0<θm)の屈曲部116Xmに変形させると、その半成形品115Xmでは、屈曲部116Xmの肉厚は、屈曲予定部33の肉厚t0に比べ、極端に薄くなる。一方、縮径部117Xmは、その肉厚減少分に応じた肉の増加に伴って、軸心AXに向けて肥大化するため、縮径予定部34の肉厚t0に比べて、必要以上に太くなり過ぎてしまう。また、場合によって、半成形品115Xmでは、屈曲部116Xmが座屈してしまう。このような半成形品115Xmが、絞り加工の途中で成形されると、縮径部117Xmの肉厚等を調整する工程が、別途必要になる。
【0009】
その反対に、45°を上回る比較的緩やかな鋭角状の導入角とした金型により、
図22(a)、(c)に示すように、真直ぐな屈曲予定部33を、緩やかな屈曲角θn(0<θn≪θm)の屈曲部116Xnに変形させても、その半成形品115Xnでは、屈曲部116Xn、縮径部117Xnとも、変形前の製品ブランク30の肉厚t0と比べ、極端な肉厚の変化は生じ難い。しかしながら、45°を上回る導入角の金型を用いた場合、急峻な屈曲部12と、径小化した縮径部13を得るまでに、工程毎に、金型の導入角を段階的に変化させ、屈曲部12の肉厚変化と縮径部13の肉厚変化とを、双方でバランス良く制御しながら、絞り工程を、何度も繰り返す必要があり、工程数が増大化する傾向になる。
【0010】
具体的には、絞り加工でシャフト成形品10を製造するにあたり、実際には、
図23に示すように、縮径部13片側につき、少なくとも全5工程が必要となる。
図23は、従来技術に係るモータシャフトの製造方法に基づき、(a)〜(e)を通して、製品ブランクからシャフト成形品を製造するまでの全5工程の様子を、工程毎に分けて示す説明図である。
【0011】
第1工程では、
図23(a)に示すように、比較的緩やかな鋭角状の第1導入角とした金型により、製品ブランク30に対し、屈曲予定部33を絞って、第1屈曲部112Xaを成形すると同時に、縮径予定部34を絞って、第1縮径部113Xaを成形することで、第1半成形品110Xaを得る。続く第2工程では、第1導入角から、角度をより小さく変化させた第2導入角の金型により、
図23(b)に示すように、第1屈曲部112Xaから第2屈曲部112Xbへの変形を伴って、第1縮径部113Xaをさらに絞り込み、より径小な第2縮径部113Xbに成形することで、第2半成形品110Xbを得る。
【0012】
続く第3工程では、第2導入角から、さらに角度を小さく変化させた第3導入角の金型により、
図23(c)に示すように、第2屈曲部112Xbから第3屈曲部112Xcへの変形を伴って、第2縮径部113Xbをさらに絞り込み、より径小な第3縮径部113Xcに成形することで、第3半成形品110Xcを得る。続く第4工程では、第3導入角から、さらに角度を小さく変化させた第4導入角の金型により、
図23(d)に示すように、第3屈曲部112Xcから第4屈曲部112Xdへの変形を伴って、第3縮径部113Xcをさらに絞り込み、より径小な第4縮径部113Xdを成形することで、第4半成形品110Xdを得る。
【0013】
第1工程〜第4工程では、第1半成形品110Xaと第2半成形品110Xbとの間、第2半成形品110Xbと第3半成形品110Xcとの間、第3半成形品110Xcと第4半成形品110Xdとの間と、それぞれ工程前後の絞りよる半成形品の断面減少率(絞り加工率)は、20%台に維持されている。第4工程において、第4縮径部113Xdは、シャフト成形品10の縮径部13として、既に成形されているため、第5工程は、第4工程で成形された第4屈曲部112Xdを、急峻な屈曲角度(
図1中、θ=約90°)に変形させる角付けだけを行って、屈曲部12を形成する。
【0014】
このように、製品ブランク30の絞り開始から4工程を経て、最後に仕上げの第5工程を行うことで、
図1に示すように、屈曲部12の肉厚と、縮径部13の肉厚との均衡を図った形状に、シャフト成形品10を仕上げることが可能になる。かくして、セレーション14の有無に拘わらず、シャフト成形品10は、屈曲部12を介した縮径部13と、基準径円筒部11とを、段差状に成形した態様で、製造される。
【0015】
なお、このような従来技術に係るモータシャフトの製造方法については、公然実施されている技術であるため、先行技術文献は開示しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、従来技術に係るモータシャフトの製造方法で、円筒形状の製品ブランク30からシャフト成形品10(製品)を成形しようとすると、
図23に示すように、縮径部13片側につき、少なくとも全5工程が必要になるため、以下のような問題があった。
【0018】
(1)製品の製造コストが割高である問題
前述の第1工程〜第5工程に対し、複数種の金型が、工程毎に、金型形状(導入角等)を段階的に変化させて必要になるほか、金型や加工機は、非常に高価であるため、設備投資に、多額の費用が掛かる。そのため、製品として、絞り加工で成形されるモータシャフトの製造コストは、割高となっていた。特に、自動車走行向けのモータの需要は将来、増加傾向にあると見込まれている傍ら、製造業では近年、コスト競争が非常に激しく、メーカー等は、安価な製造コストで製品を提供できるよう、市場から強く求められている。
【0019】
(2)製品の生産性が低い問題
第5工程で、シャフト成形品10(製品)の縮径部13が成形されるまでに、第1工程〜第5工程を通して順に、第1工程から第2工程、第2工程から第3工程等のように、前工程で絞られた半成形品は、その追加工として、次工程で絞られる。このとき、製品が、特に量産体制下で製造される場合、半成形品の品質管理が、工程毎にそれぞれ、十分な体制で実施されていないと、半成形品や製品は、大量に不良品化してしまう虞がある。それ故に、品質管理上、歩留まりの高い半成形品等を製造する上で、作業者は、各工程における適切な工程管理を、5工程分全てまとめて行わなければならず、工程管理の作業は煩雑化する。しかも、シャフト成形品10に対し、片側の縮径部13を成形するだけで5工程も要し、両側に縮径部13を成形すると、絞り加工の総工程数は、さらに増加する。従って、従来の製造方法では、効率良く、生産性を高めて製品を製造することができない問題があった。
【0020】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ブランクである円筒状の中空シャフトを絞り、例えば、段付き形状のモータシャフト等のような、径方向段付き形状のシャフトに成形するにあたり、安価なコストで、かつ生産性を高めて効率良く成形することができる段付き中空シャフトの製造方法、及びモータシャフトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様における段付き中空シャフトの製造方法は、ブランクである円筒状の中空シャフト素材に対し、その軸心に沿った端部に位置する据え込み予定部を、該軸心に向けて絞ることで、絞りを施さない元々の基準径円筒部との間に、径差を有した段付き状シャフトを成形する段付き中空シャフトの製造方法において、絞りを行う一対の金型である押圧側金型と被押圧側金型とに対し、少なくとも一方が導入角付き金型として形成された導入角θの角度基準を、前記軸心と直交する前記中空シャフト素材の輪切り断面に対応した前記金型の仮想面上とすると、前記導入角付き金型として、前記中空シャフト素材を保持する一次型内を、45°を上回る鋭角状の第1導入角θ1の第1テーパ部を介して、径小化された第1の前記被押圧側金型と、第1の前記押圧側金型を備える第1の金型ユニットにより、前記第1の被押圧側金型の前記一次型内にセットされた状態にある前記中空シャフト素材のうち、一方側の前記据え込み予定部を、前記第1の押圧側金型と共に、前記第1導入角θ1に倣って絞り、中空を維持したまま、前記基準径円筒部より径小な一方側一次変形部に変形させる一次絞り工程と、前記導入角付き金型として、前記一方側一次変形部を含む半成形シャフトを保持する二次型内を、45°を上回る鋭角状の第2導入角θ2で形成された第2テーパ部を境に、前記基準径円筒部の形状に対応した型等径部と、前記型等径部より径小な一方側型径小部に区画した第2の前記被押圧側金型と、前記第2の被押圧側金型との相対動作で、前記一方側一次変形部の反対側から前記半成形シャフトを押圧する第2の前記押圧側金型と、前記一方側型径小部を挿通して前記半成形シャフトと接触可能な一方側スリーブと、前記半成形シャフトの前記一方側一次変形部をその内周側でしごくしごき部を含む一方側マンドレルを備える第2の金型ユニットにより、前記一方側マンドレルの先端部が前記型等径部内に待避の下、前記第2の被押圧側金型の前記二次型内にセットした状態の前記半成形シャフトを、前記第2の押圧側金型で押圧することにより、前記一方側一次変形部を、前記型等径部から前記第2導入角θ2に倣いながら、前記一方側マンドレルの前記しごき部と非接触で、前記一方側型径小部と前記一方側マンドレルとの間に送り、絞り込んで一方側二次変形部を成形する第1成形処理と、前記第2の押圧側金型で反力を受けながら、前記一方側スリーブで前記一方側二次変形部の一端面を押圧して、前記一方側二次変形部を、前記一方側マンドレルの前記しごき部と接触した状態になるまで圧縮させ、この圧縮状態を維持したまま、前記一方側マンドレルを、前記一方側二次変形部と相対的に移動させて、前記一方側二次変形部のしごきを行ってから、前記一方側二次変形部から引き抜く第2成形処理と、を含む二次絞り工程を有すること、を特徴とする。
【0022】
この態様によれば、一次絞り工程と二次絞り工程による全2工程で、中空シャフト素材から段付き中空シャフトを成形することができるため、少なくとも全5工程を要していた従来技術に係る製造方法に比べ、段付き中空シャフトのコストが安価になる。特に、従来技術に係る製造方法では、非常に高価な専用の金型が、全5工程分、工程毎に必要となり、設備コストも多額であったが、本発明に係る段付き中空シャフトの製造方法は、一次絞り工程向けの第1の金型ユニットと、二次絞り工程向けの第2の金型ユニットで足りるため、設備コストを、大幅に抑制することができる。また、段付き中空シャフトは、多品種小ロット体制下や量産体制下に拘わらず、一次絞り工程と二次絞り工程を含む実質の総タクトタイムを、例えば、数十〜百数十秒等と、実際に効率良く、生産性を高めて製造することができる。
【0023】
上記の態様においては、前記第1成形処理時に、前記一方側一次変形部が、前記一方側型径小部と前記一方側マンドレルとの間に挟まれた状態になってから、前記第2成形処理時に、前記一方側二次変形部から前記一方側マンドレルを引き抜くまでの間に、前記一方側二次変形部の外周側部を、前記第2の押圧側金型と共に、前記第2の被押圧側金型で押圧すること、が好ましい。
【0024】
この態様によれば、基準径円筒部に対し、一方側二次変形部との境界付近が、急峻な屈曲角度に角付けされ、軸心方向に対し、基準径円筒部と縮径部との間を、急峻な屈曲部で形成した段付き中空シャフトを得ることができる。
【0025】
上記の態様においては、前記二次絞り工程は、前記第2成形処理で前記一方側二次変形部のしごきを終えた後、さらに前記一方側スリーブで前記一端面を押圧して前記一方側二次変形部を圧縮する第3成形処理を含むこと、が好ましい。
【0026】
この態様によれば、圧縮した一方側二次変形部は、段付き中空シャフトの屈曲部及び縮径部として、局部的な座屈、屈曲等の変形を取り除いて、肉厚を一様に調整した形状に修正される。
【0027】
上記の態様においては、前記据え込み予定部は、前記中空シャフト素材の前記軸心方向両側にあり、前記第1の金型ユニットでは、第1の前記押圧側金型は、45°を上回る鋭角状の第3導入角θ3で第3テーパ部を形成した前記導入角付き金型で構成されていること、前記一次絞り工程は、前記第1の被押圧側金型の前記一次型内にセットした状態の前記中空シャフト素材に対し、前記第1の被押圧側金型との相対動作による前記第1の押圧側金型の押圧で、前記一方側据え込み予定部を、前記第1の被押圧側金型の前記第1導入角θ1に倣って、前記一方側一次変形部に変形させると同時に、他方側の前記据え込み予定部を、前記第1の押圧側金型の前記第3導入角θ3に倣って絞り、中空を維持したまま、前記基準径円筒部より径小な他方側一次変形部に変形させること、が好ましい。
【0028】
この態様によれば、他方側一次変形部は、例えば、その相手側となる部品、既製品のユニット等の対象物と、軸支、嵌め合い、溶接等の連結手段により、接続可能になる。
【0029】
上記の態様においては、前記第2の被押圧側金型と共に、前記他方側一次変形部を絞る前記第2の押圧側金型は、その三次型内を、45°を上回る鋭角状の第4導入角θ4で形成された第4テーパ部を介して、前記第2の被押圧側金型の前記型等径部より径小な他方側型径小部を有すると共に、前記第2の金型ユニットは、前記他方側型径小部を挿通して前記半成形シャフトと接触可能な他方側スリーブと、前記半成形シャフトの前記他方側一次変形部をその内周側でしごくしごき部を含む他方側マンドレルを備えること、前記二次絞り工程は、前記他方側マンドレルの先端部を、前記第2の被押圧側金型または前記第2の押圧側金型の前記型等径部内に待避させた状態で、前記第2の被押圧側金型の前記二次型内にセットした状態にある前記半成形シャフトの前記他方側一次変形部を、前記第2の押圧側金型との押圧で、前記第4導入角θ4に倣いながら、前記他方側マンドレルの前記しごき部と非接触で、前記他方側型径小部と前記他方側マンドレルとの間に送り、前記第2の押圧側金型と前記他方側スリーブと前記第2の被押圧側金型と前記一方側スリーブとの絞り込みで、他方側二次変形部を成形する第4成形処理と、前記第2の被押圧側金型で相対的に反力を受けながら、前記他方側スリーブで前記他方側二次変形部の他端面を押圧して、前記他方側二次変形部を、前記他方側マンドレルの前記しごき部と接触した状態になるまで圧縮させ、この圧縮状態を維持したまま、前記他方側マンドレルを、前記他方側二次変形部と相対的に移動させて、前記他方側二次変形部のしごきを行ってから、前記他方側二次変形部から引き抜く第5成形処理とを含むこと、が好ましい。
【0030】
この態様によれば、
図1に示すように、基準径円筒部を挟む両側に、屈曲部を介して縮径部を成形する場合でも、工程数の増加を伴うことなく、一次絞り工程と二次絞り工程だけで、軸心方向両側に縮径部を有する段付き中空シャフトを成形することができる。しかも、軸心方向両側に縮径部を成形する場合でも、一次絞り工程と二次絞り工程を含む実質の総タクトタイムは、縮径部を片側だけ成形する場合のタクトタイムに比べ、例えば、20%程度までの増加に過ぎない。そのため、段付き中空シャフトの生産性は、極めて高い。
【0031】
上記の態様においては、前記第4成形処理時に、前記他方側一次変形部が、前記他方側型径小部と前記他方側マンドレルとの間に挟まれた状態になってから、前記第5成形処理時に、前記他方側二次変形部から前記他方側マンドレルを引き抜くまでの間に、前記前記第2の被押圧側金型と共に、前記第2の押圧側金型により、前記他方側二次変形部の外周側部を押圧すること、が好ましい。
【0032】
この態様によれば、一方側二次変形部の角付けと同様、基準径円筒部に対し、他方側二次変形部との境界付近も、急峻な屈曲角度に角付けされ、軸心方向に対し、基準径円筒部と縮径部との間を、急峻な屈曲部で形成した段付き中空シャフトを得ることができる。
【0033】
上記の態様においては、前記二次絞り工程は、前記第5成形処理で前記他方側二次変形部のしごきを終えた後、さらに前記他方側スリーブで前記他端面を押圧して前記他方側二次変形部を圧縮する第6成形処理を含むこと、が好ましい。
【0034】
この態様によれば、圧縮した他方側二次変形部は、段付き中空シャフトの屈曲部及び縮径部として、局部的な座屈、屈曲等の変形を取り除き、屈曲部の肉厚と縮径部の肉厚について、双方でバランスを図った上で、肉厚を一様に調整した形状に修正される。
【0035】
上記の態様においては、前記第4成形処理は、前記第1成形処理と同期して行われ、前記第5成形処理は、前記第2成形処理と同期して行われること、が好ましい。
【0036】
この態様によれば、第1の金型ユニットで、第1成形処理で必要な押圧力は、第4成形処理で必要な反力として、第4成形処理で必要な押圧力は、第1成形処理で必要な反力として、それぞれ相互に活かすことができる。同様に、第2の金型ユニットで、第2成形処理で必要な押圧力は、第5成形処理で必要な反力として、第5成形処理で必要な押圧力は、第2成形処理で必要な反力として、それぞれ相互に活かすことができる。そのため、第1の金型ユニットや第2の金型ユニットを装着した絞り成形装置では、押圧力を発生させる推力が、半成形シャフトや段付き中空シャフトの成形に有効に活用され、押圧力とその反力によって、絞り成形装置等自体に受ける機械的な負荷を抑制することができる。
【0037】
上記の態様においては、前記第6成形処理は、前記第3成形処理と同期して行われること、が好ましい。
【0038】
この態様によれば、第2の金型ユニットで、第3成形処理で必要な押圧力は、第6成形処理で必要な反力として、第6成形処理で必要な押圧力は、第3成形処理で必要な反力として、それぞれ相互に活かすことができる。そのため、第2の金型ユニットを装着した絞り成形装置では、押圧力を発生させる推力が、半成形シャフトや段付き中空シャフトの成形に有効に活用され、押圧力とその反力によって、絞り成形装置等自体に受ける機械的な負荷を抑制することができる。
【0039】
上記の態様においては、前記一方側マンドレルまたは前記他方側マンドレルの少なくとも片方のマンドレルに、セレーションを形成可能なセレーション刃具を具備し、前記セレーション刃具が前記一方側マンドレルに具備されている場合には、前記二次絞り工程で、しごき後の前記一方側二次変形部から前記一方側マンドレルを引き抜く時、前記セレーション刃具により、前記一方側二次変形部の内周にセレーションを形成すること、前記セレーション刃具が前記他方側マンドレルに具備されている場合には、前記二次絞り工程で、しごき後の前記他方側二次変形部から前記他方側マンドレルを引き抜く時、前記セレーション刃具により、前記他方側二次変形部の内周にセレーションを形成すること、が好ましい。
【0040】
この態様によれば、段付き中空シャフトが、製品となってモータ本体の出力軸等の回転軸と嵌め合いで接続するのに必要なセレーションを、別途、歯切り工程で加工する必要がなく、段付き中空シャフトの製造工程が簡略化できるため、段付き中空シャフトのコストダウンを図ることができる。
【0041】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の態様におけるモータシャフトの製造方法は、円筒状の中空シャフト素材の端部を、その軸心に向けた絞り成形により、径差を有した段付き中空シャフトであるモータシャフトの製造方法において、当該モータシャフトは、請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載する段付き中空シャフトの製造方法に基づいて、前記中空シャフト素材を成形してなること、を特徴とする。
【0042】
この態様によれば、従来、いわゆる丸棒状の中実軸を基に、切削加工による削り出しで縮径部を形成したモータシャフトや、鍛造加工で縮径部を形成したモータシャフト等が、コスト上の理由で、やむを得なく使用されてきたモータ製品に対し、本発明に係る段付き中空シャフトの製造方法で成形された段付き中空シャフトは、このようなモータシャフトに代えて、採用することができるようになる。
【0043】
上記の態様においては、当該モータシャフトは、車両に搭載されるモータのロータ向けの軸であること、が好ましい。
【0044】
この態様によれば、段付き中空シャフトは、例えば、エンジンとモータを併用して走行するハイブリッドカーのほか、電気自動車や自動運転技術を搭載した自動車に挙げられる次世代の自動車の走行用モータ等を、安価に製造するのに貢献することできる。
【発明の効果】
【0045】
本発明に係る段付き中空シャフトの製造方法、及びモータシャフトの製造方法によれば、ブランクであるストレート状の中空シャフトを絞り、段付き形状のモータシャフト等のような、径方向段付き形状のシャフトに成形するにあたり、安価なコストで、かつ生産性を高めて効率良く成形することができる、という優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明に係る段付き中空シャフトの製造方法、及びモータシャフトの製造方法について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0048】
本発明に係る段付き中空シャフトの製造方法は、本実施形態では、モータシャフトの製造方法として、例えば、電気自動車や、自動運転技術を搭載した自動車に挙げられる次世代の自動車等、主として車両の走行向けに搭載されるモータを対象に、そのロータ軸を製造する場合を挙げて、説明する。前述したように、このようなロータ軸は、
図1に示すように、絞り加工後の製品であるシャフト成形品10(段付き中空シャフト、段付き中空シャフト)に、熱処理や表面処理等の後工程を施して形成される。
【0049】
<シャフト成形品10の概要>
はじめに、シャフト成形品10の概要について、簡単に説明する。シャフト成形品10は、
図1及び
図2に示すように、円筒状の中空シャフト素材である製品ブランク30に対し、その軸心AXに沿う両端に位置する据え込み予定部32を、軸心AXに向けて絞ることで、絞りを施さない元々の基準径円筒部31との間に、径差を有した段付き中空シャフトである。
【0050】
前述したモータのロータ軸の場合、シャフト成形品10は、一例として、S38C、S45C等をはじめ、モリブテン(Mo)等の種々の金属成分をこのような炭素鋼に含んだ炭素鋼材を、本実施形態では、冷間鍛造により塑性変形させてなる。なお、段付き中空シャフトの材質は、塑性変形する機械的性質を有した金属材であれば、特に限定されるものではない。また、段付き中空シャフトは、実施形態のように、冷間鍛造品に限定されず、熱間鍛造により塑性変形された鍛造品であっても良い。
【0051】
図1に示すように、シャフト成形品10は、本実施形態では、肉厚t0の製品ブランク30のうち、基準径円筒部31と同径とした基準径円筒部11を挟む両側で、屈曲予定部33の変形後である屈曲部12を介して、縮径予定部34を絞り込んだ縮径部13からなる。また、シャフト成形品10X(以下、「シャフト成形品10」と総称する場合もある)では、片側の縮径部13の内周には、セレーション14が形成されている。
【0052】
具体的には、シャフト成形品10は、本実施形態に係るモータシャフトの製造方法で製造された製品の一例として、本実施形態では、肉厚8mmの製品ブランク30に絞り加工を行うことにより、全長251mm、基準径円筒部11の外径φ76.6mm、縮径部13の外径φ42mmで内径φ18.4mm等の形状に成形されてなる。
【0053】
なお、本実施形態では、段付き中空シャフトとして、縮径部13が、軸心AX方向両側に配されたシャフト成形品10を例示したが、縮径部13は片側だけ配置される場合もある。また、
図1(b)に示すように、セレーション14が、片側の縮径部13に形成されたシャフト成形品10Xを例示したが、セレーション14の有無は、適宜変更可能である。
【0054】
<本実施形態に係るモータシャフトの製造方法の開発にあたり>
本出願人は、本実施形態に係るモータシャフトの製造方法を開発する上で、専用のアプリケーションソフトにより、絞られる成形物の状態についてシミュレーション化を行い、解析を行って検証すると共に、知得したシミュレーション結果に基づいて、実際に数多くの試加工を実施する等、日々、積極的な研究開発を進めてきた。
【0055】
このモータシャフトの製造方法は、シャフト成形品10の製造にあたり、生産性を高くし、効率良く製品ブランク30に絞り加工を行うために開発された方法であり、後述するように、大別して、一次絞り工程と二次絞り工程の全2工程からなる。特に一次絞り工程で、絞りの加工の最適条件を見出すため、本出願人は、品質管理手法の一つである実験計画法を採用して、L18直交表の実験条件に基づいた複数種の実験(試加工)を行った。本実施形態に係るモータシャフトの製造方法の一次絞り工程は、このようなL18直交表による実験結果を反映して構成されている。
【0056】
<L18直交表の概要>
図3は、実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法の一次絞り工程に対し、複数の実験を通じて、加工条件を見出すのに適用したL18直交表の実験条件を示す説明図である。なお、
図3(a)中、寸法・形状を図示した概略図では、下側にあるφ76.6の部分が基準径円筒部11に対応する型部分で、上側にあるφ42の部分が縮径部13に対応する型部分で、その間の部分が屈曲部12に対応する型部分である。
【0057】
L18直交表の制御因子は、
図3(a)〜(c)に示すように、絞り成形装置における絞り時の「成形速度」(因子A)、金型のテーパ部において、「導入角度θb」(因子B)、「導入角度θc」(因子C)、「コーナーRd」(因子D)、「コーナーRe」(因子E)、「コーナーRf」(因子F)、「θbとθcとの変曲部位の曲率G」(因子G)、基準径円筒部11に対応する型部分において、「ベア長さH」(因子H)である。各因子の水準数は、因子Aだけが2で、それ以外の因子は全て3である。
【0058】
図1に示すようなシャフト成形品10を製造する場合、製品ブランク30の据え込み予定部32(屈曲予定部33、縮径予定部34)を、屈曲部12や縮径部13の形状のように、所望とする形状により近付けて絞るために、本出願人は、L18直交表による実験を通じて、最も有意性の高いとされる制御因子とその水準に関して、有益な知見を得た。すなわち、L18直交表の実験結果より、寄与率が最も高い制御因子は、「導入角度θc」(因子C)であり、その因子Cの水準は、導入角度θc=60°の条件とした場合であった。
【0059】
図7は、実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法の一次絞り工程に基づき、第1金型ユニットにより、製品ブランクを絞って半成形シャフトを製造するまでの一連の絞り加工のうち、前半の第1工程内処理(a)〜第3工程内処理(c)をまとめて示す工程図である。
図8は、
図7に続き、一連の絞り加工のうち、後半の第4工程内処理(d)〜第6工程内処理(f)をまとめて示す工程図である。
図9は、実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法の一次絞り工程で成形された半成形シャフトを、その軸心を含んで半分に分割された状態で示す断面図である。
【0060】
<本実施形態に係るモータシャフトの製造方法で用いる金型ユニットについて>
はじめに、本実施形態に係るモータシャフトの製造方法で用いる金型ユニットに対し、その導入角θの角度基準について、説明する。本実施形態に係るモータシャフトの製造方法で、一次絞り工程を行う第1絞り成形装置(図示せず)には、
図7及び
図8に示すように、第1金型ユニット1(第1の金型ユニット)が用いられる。また、二次絞り工程を行う第2絞り成形装置Mには、
図10〜
図21に示すように、第2金型ユニット2(第2の金型ユニット)が用いられる。なお、
図7及び
図8と
図10〜
図21に示す金型では、上側と下側は、図中、上下方向に沿う向きである。
【0061】
図2に示すように、軸心AX方向両側にある製品ブランク30の据え込み予定部32を絞って、
図1に示すように、縮径部13と屈曲部12に変形させるシャフト成形品10の製造には、押圧側金型と被押圧側金型による一対の金型が、必要になる。第1金型ユニット1と第2金型ユニット2は、押圧側金型と被押圧側金型を有する。第1金型ユニット1と第2金型ユニット2において、押圧側金型と被押圧側金型とに対し、少なくとも一方が導入角付き金型として形成された導入角θの角度基準は、
図7と
図10に示すように、軸心AXと直交する製品ブランク30等の輪切り断面に対応した金型の仮想面VS上である。
【0062】
<第1金型ユニット1の概要>
第1金型ユニット1は、いずれも導入角付き金型として、第1ダイ40(第1の被押圧側金型)と第1パンチ50(第1の押圧側金型)、バックノックアウト可動部44等を有する。
【0063】
(1)第1金型ユニット1の下側
第1ダイ40は、製品ブランク30を保持する一次型内40Sを、45°を上回る緩やかな鋭角状の第1導入角θ1(本実施形態では、θ1=60°)の第1テーパ部42を介して、型等径部41と、それより径小な型径小部43に区画して形成されている。型等径部41は、ガタなく保持させる製品ブランク30の外径に対応した径となっている。バックノックアウト可動部44は、第1金型ユニット1の軸心L1方向に、型径小部43と相対的に移動可能となっている。
【0064】
(2)第1金型ユニット1の上側
第1パンチ50は、アウターパンチ50Aとインナーパンチ50Bとからなり、アウターパンチ50Aは、45°を上回る緩やかな鋭角状の第3導入角θ3(本実施形態では、θ3=60°)で第3テーパ部52を形成した導入角付き金型である。アウターパンチ50Aは、製品ブランク30を保持するパンチ型内50Sを、45°を上回る緩やかな鋭角状の第3導入角θ3の第3テーパ部52を介して、型等径部51と、それより径小な型径小部53に区画して形成されている。型等径部51は、ガタなく保持させる製品ブランク30の外径に対応した径となっている。インナーパンチ50Bは、アウターパンチ50Aの型径小部53に、ストッパ54と共に配設され、アウターパンチ50Aに位置決めされた状態で固定されている。絞り時におけるアウターパンチ50Aのストローク長は、ストッパ54により調整可能となっている。
【0065】
<本実施形態に係るモータシャフトの製造方法の一次絞り工程>
次に、実施形態に係る中空シャフトの製造方法の一次絞り工程について、
図7及び
図8を用いて説明する。一次絞り工程は、第1ダイ40の一次型内40Sにセットされた状態にある製品ブランク30のうち、一方側(
図7及び
図8中、下側)の据え込み予定部32を、第1パンチ50と共に、第1導入角θ1に倣って絞り、中空を維持したまま、基準径円筒部31より径小な一方側一次変形部21Aに変形させる。本実施形態では、据え込み予定部32は、製品ブランク30の軸心AX方向両側にあるため、第1金型ユニット1により、双方の据え込み予定部32(32A,32B)を、同時に変形させる。
【0066】
すなわち、一次絞り工程は、一次型内40Sにセットされた状態にある製品ブランク30に対し、第1ダイ40と相対的に下降動作する第1パンチ50の押圧により、一方側の据え込み予定部32A(32)を、第1ダイ40の第1導入角θ1に倣って、一方側一次変形部21Aに変形させる。一方側一次変形部21Aの変形と同時に、他方側(
図7及び
図8中、上側)の据え込み予定部32B(32)も、アウターパンチ50Aの第3導入角θ3に倣って絞り、中空を維持したまま、基準径円筒部31より径小な他方側一次変形部21Bに変形させる。
【0067】
具体的には、第1金型ユニット1では、第1工程内処理として、第1パンチ50が、第1ダイ40と離間した待避位置に待機した下、軸心AXを第1金型ユニット1の軸心L1と同心上で、製品ブランク30の一方側据え込み予定部32Aを、第1ダイ40の一次型内40Sの型等径部41に挿入し、第1テーパ部42との境で保持させる(
図7(a)参照)。次の第2工程内処理で、第1パンチ50を下降して、第1ダイ40に保持されている製品ブランク30の他方側据え込み予定部32Bを、アウターパンチ50Aのパンチ型内50Sに挿入させる。これにより、他方側据え込み予定部32Bが、アウターパンチ50Aの第3テーパ部52との境まで、変形を伴わずに到達する。この段階では、バックノックアウト可動部44とインナーパンチ50Bは、製品ブランク30と離れた状態になっている(
図7(b)参照)。
【0068】
この状態から、第3工程内処理として、この第1パンチ50がさらに下降し続けて、製品ブランク30が押圧されると、
図7(c)に示すように、一方側据え込み予定部32Aは、一次型内40Sで、第1テーパ部42と型径小部43の各形状に倣って絞られ、変形する。それと同時に、他方側据え込み予定部32Bも、パンチ型内50Sで、第3テーパ部52と型径小部53の各形状に倣って絞られ、変形する。
【0069】
そして、第4工程内処理として、第1パンチ50が、さらに第1ダイ40と近接した最下端位置まで下降すると、
図8(d)に示すように、変形後の一方側据え込み予定部32Aの端面が、バックノックアウト可動部44に当接して押圧され、一方側一次変形部21Aは、中空を維持したまま、基準径円筒部31より径小化して成形される。それと同時に、変形後の他方側据え込み予定部32Bの端面が、インナーパンチ50Bに当接して押圧され、他方側一次変形部21Bも、中空を維持したまま、基準径円筒部31より径小化して成形される。このとき、基準径円筒部31は、第1ダイ40の型等径部41と第1パンチ50の型等径部51で保持された状態にあるため、過度に座屈することなく、概ねストレート形状に保たれている。
【0070】
一方側一次変形部21Aと他方側一次変形部21Bを含む半成形シャフト20が成形されたら、
図8(e)に示すように、第1パンチ50を待避位置まで上昇させて、第1パンチ50と第1ダイ40とを離す(第5工程内処理)。次いで、バックノックアウト可動部44を上昇させて、第1ダイ40に保持されている半成形シャフト20を上げ、第1金型ユニット1から取り出す(第6工程内処理)。かくして、半成形シャフト20は、
図9に示すように、基準径円筒部31に相当する円筒部23を挟み、一方側一次変形部21Aと他方側一次変形部21Bを有した形状に成形される。半成形シャフト20では、一方側一次変形部21A、他方側一次変形部21Bとも、その肉厚は、変形前の製品ブランク30の肉厚t0と比べ、縮径による肉厚減少分に応じて、僅かに増えているものの、参照する
図6(c)のように、極端な肉厚の変化は生じていない。
【0071】
<第2金型ユニット2の概要>
図10は、実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法の二次絞り工程で、第1工程内処理として、第2金型ユニットに半成形シャフトをセットした状態を示す第1工程図であり、
図10中、A部の拡大図を、
図11に示す。なお、説明の便宜上、
図10中、上下方向の動作を昇降動作と定義し、
図11以降の各図面でも、この定義を準用する。
【0072】
図10に示すように、第2金型ユニット2は、いずれも導入角付き金型として、第2ダイ60(第2の被押圧側金型)と第2パンチ80(第2の押圧側金型)、円筒状のノックアウトパンチ66(一方側スリーブ)、下側マンドレル70(一方側マンドレル)、上側マンドレル90(他方側マンドレル)等を有する。第2金型ユニット2は、第2絞り成形装置Mに装着されている。第2ダイ60は、第2絞り成形装置Mのベッドプレート69に、一体化して固定された状態で取付けられ、第2パンチ80は、第2絞り成形装置Mに昇降可能に設けられたスライダ88に、一体化して固定された状態で取付けられている。
【0073】
(1)第2金型ユニット2の下側
第2ダイ60は、一方側一次変形部21Aを含む半成形シャフト20を保持する二次型内60Sを、45°を上回る緩やかな鋭角状の第2導入角θ2(本実施形態では、θ2=55°)で形成された第2テーパ部62を境に、半成形シャフト20の円筒部23(中空シャフト素材の基準径円筒部)の形状に対応した型等径部61と、型等径部61より径小な一方側型径小部63に区画して形成されている。すなわち、型等径部61は、製品であるシャフト成形品10,10Xの基準径円筒部11に対応した径となっている。第2ダイ60の二次型内60Sは、軸心L2方向に貫通している。
【0074】
ノックアウトパンチ66は、昇降可能な可動プレート67に立設されている。ノックアウトパンチ66は、可動プレート67の昇降動作により、二次型内60Sの一方側型径小部63を、摺動した状態で挿通して、一方側二次変形部22Aの端面22Abと接触可能に設けられている。ノックアウトパンチ66の内周には、下側マンドレル70が配設されている。下側マンドレル70は、連結スペーサ77を介して、第2絞り成形装置Mに昇降可能に設けられたバックノックアウト可動部68に接続されている。下側マンドレル70は、バックノックアウト可動部68の昇降動作により、ノックアウトパンチ66の内周と二次型内60Sを、第2ダイ60と相対的に軸心L2方向に移動するようになっている。 下側マンドレル70は、半成形シャフト20の一方側二次変形部22Aを、内周側からしごくためのしごき部72を有している。
【0075】
(2)第2金型ユニット2の上側
図10に示すように、第2パンチ80は、第1ダイ40及びノックアウトパンチ66との相対動作で、第2絞り成形装置Mのスライダ88から半成形シャフト20を押圧する。第2パンチ80は、絞りパンチ80Aと、インナーパンチスリーブ80B(他方側型スリーブ)と、アウターパンチ80Cからなり、いずれも円筒状に形成されている。アウターパンチ80Cは、第2絞り成形装置Mのスライダ88に懸架して固設されたパンチホルダ85に懸架した状態で、パンチホルダ85と相対的に上下動可能に取付けられている。アウターパンチ80Cは、第2パンチ80の三次型内80Sの一部として、第2ダイ60の型等径部61と同径で、軸心L2方向に貫通した型等径部81を有する。
【0076】
絞りパンチ80Aは、第2パンチ80の三次型内80Sの一部として、45°を上回る緩やかな鋭角状の第4導入角θ4(本実施形態では、θ4=55°)で第4テーパ部82を形成した導入角付き金型である。絞りパンチ80Aとインナーパンチスリーブ80Bは、スライダ88と一体化して設けられている。絞りパンチ80Aは、スライダ88の昇降動作に伴って、アウターパンチ80Cの内周(型等径部81)を、軸心L2方向にアウターパンチ80Cと相対移動するようになっている。インナーパンチスリーブ80Bは、絞りパンチ80Aの内周(他方側型径小部83)に配設され、絞り加工時に、三次型内80Sにある他方側型径小部83を挿通し、他方側二次変形部22Bの端面22Bbと接触可能に設けられている。
【0077】
パンチスペーサ86は、上下動可能なパンチスペーサ規制部87により上昇端を規制した状態で、スライダ88と相対的に昇降可能に設けられている。上側マンドレル90は、パンチスペーサ86の貫通穴を挿通した連結スペーサ97と連結している。連結スペーサ97がパンチスペーサ規制部87に当接する位置まで、上側マンドレル90は、軸心L2方向上側に移動可能になっている。
【0078】
第2絞り成形装置Mは、油圧制御を備えたバルジ成形プレス装置である。第2絞り成形装置Mでは、作動油の差圧に基づく油圧制御により、可動プレート67とパンチスペーサ86とは、互いに近接する向き、または離間する向きに同期して動作する。また、バックノックアウト可動部68とパンチスペーサ規制部87とは、双方とも同期して連動し、同じ向きに上昇動作または下降動作を行う。
【0079】
上側マンドレル90は、半成形シャフト20の他方側二次変形部22Bを、内周側からしごくためのしごき部92を有している。また、本実施形態では、
図10及び
図11に示すように、上側マンドレル90は、その先端部91に、
図1(b)に示すシャフト成形品10Xのセレーション14を成形可能とするセレーション刃具93を具備している。
【0080】
<製造工程のシミュレーション化>
図4は、実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法の二次絞り工程を第2金型ユニットで実施するにあたり、駆動部の動きに対するタイミングと作動荷重との関係について、アプリケーションソフトで解析した結果を、グラフで表示したシミュレーション画面を掲げた図である。
図5は、実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法のうち、二次絞り工程の第7工程内処理に相当する成形物の状態について、アプリケーションソフトで解析を行い、検証を行ったシミュレーション結果を、模式的に表示したシミュレーション画面を掲げた図である。
図6は、実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法で成形されるシャフト成形品の状態について、アプリケーションソフトで解析と検証を行ったシミュレーション結果を、模式的に表示したシミュレーション画面を掲げた図である。
【0081】
前述したように、本出願人は、本実施形態に係るモータシャフトの製造方法の開発にあたり、製品ブランク30からシャフト成形品10を製造するまでの一連の製造工程に対し、絞られる成形物の状態について、専用のアプリケーションソフトにより、予めシミュレーション化を行い、成形物の解析を行うと共に、加工条件の検証を行ってきた。本実施形態に係るモータシャフトの製造方法では、特に、その一次絞り工程で成形された半成形シャフト20を基に、シャフト成形品10を製造するまでの二次絞り工程を実施する上で、第2金型ユニット2における駆動部の動作制御は、重要である。
【0082】
第2金型ユニット2の可動部に相当する画面MT1上の駆動部は、
図4に示すように、駆動部A(第2ダイ60に相当)、駆動部B(下側マンドレル70に相当)、駆動部C(ノックアウトパンチ66に相当)、駆動部D(絞りパンチ80Aに相当)、駆動部E(上側マンドレル90に相当)、及び駆動部F(インナーパンチスリーブ80Bに相当)の全6種である。なお、駆動部A〜駆動部Fの動作制御に関する説明は、二次絞り工程で詳述する。
【0083】
アプリケーションソフトによると、
図5に示すように、画面MT2に表示されたシャフト成形相当品10Yは、シミュレーション上で、シャフト成形品10を製造可能であるとして表示されたものである。加えて、
図6に示すように、画面MT3に表示されたシャフト成形相当品10Yは、
図1に示すように、所望とするシャフト成形品10の形状(屈曲部12及び縮径部13に対し、外形形状や厚み、縮径部13で一様な肉厚等)と、ほぼ同形状である。しかも、画面MT3右側に表示されたシャフト成形相当品10Yの半断面図によれば、シャフト成形相当品10Yには、絞りによる屈曲に伴って、過度な歪みが発生することもなく、部位によって、内部応力が極端に大きくなっていないことが判る。
【0084】
<本実施形態に係るモータシャフトの製造方法の二次絞り工程>
次に、実施形態に係る中空シャフトの製造方法の二次絞り工程について、説明する。二次絞り工程は、第2金型ユニット2を用いて実施される。二次絞り工程は、実施形態では、大別して、第1成形処理〜第6成形処理を含む。
【0085】
第1成形処理では、下側マンドレル70の先端部71が、二次型内60Sのうち、第2ダイ60の型等径部61内に待避の下、第2ダイ60の二次型内60Sにセットした状態にある半成形シャフト20の一方側一次変形部21Aを、第2パンチ80で押圧する。これにより、一方側一次変形部21Aは、型等径部61から第2導入角θ2に倣いながら、下側マンドレル70のしごき部72と非接触で、一方側型径小部63と下側マンドレル70との間に送出され、絞り込まれて一方側二次変形部22Aに成形される。
【0086】
第2成形処理では、第2パンチ80で反力を受けながら、ノックアウトパンチ66で一方側二次変形部22Aの端面22Ab(一端面)を押圧して、一方側二次変形部22Aを、下側マンドレル70のしごき部72と接触した状態になるまで圧縮させ、この圧縮状態を維持したまま、下側マンドレル70を、一方側二次変形部22Aと相対的に移動させて、一方側二次変形部22Aのしごきを行ってから、一方側二次変形部22Aから引き抜く。
【0087】
他方、第1成形処理時に、一方側一次変形部21Aが、一方側型径小部63と下側マンドレル70との間に挟まれた状態になってから、第2成形処理時に、一方側二次変形部22Aから下側マンドレル70を引き抜くまでの間に、一方側二次変形部22Aの外周側部22Aaを、第2パンチ80と共に、第2ダイ60で押圧する。
【0088】
第3成形処理は、第2成形処理で一方側二次変形部22Aのしごきを終えて、下側マンドレル70のしごき部72を一方側二次変形部22Aから待避させた後、さらにノックアウトパンチ66で端面22Abを押圧して、一方側二次変形部22Aを圧縮する。
【0089】
本実施形態に係る半成形シャフト20では、軸心AX方向に対し、一方側二次変形部22Aの反対側にも、他方側二次変形部22Bがあるため、第2金型ユニット2により、一方側二次変形部22Aと他方側二次変形部22Bを、同時に変形させる。
【0090】
すなわち、二次絞り工程は、第1成形処理と同期して行う第4成形処理と、第2成形処理と同期して行う第5成形処理を含む。第4成形処理では、上側マンドレル90の先端部91は、第2ダイ60の型等径部61内または第2パンチ80の型等径部81内に待避させた状態にする。そして、第2ダイ60の二次型内60Sにセットした状態にある半成形シャフト20の他方側一次変形部21Bを、第2パンチ80の押圧により、第4導入角θ4に倣いながら、上側マンドレル90のしごき部92と非接触で、第2パンチ80の他方側型径小部83と上側マンドレル90との間に送り、第2パンチ80の絞りパンチ80Aと、インナーパンチスリーブ80Bと、第2ダイ60と、ノックアウトパンチ66との絞り込みで、他方側二次変形部22Bを成形する。
【0091】
第5成形処理では、第2ダイ60で相対的に反力を受けながら、インナーパンチスリーブ80Bで他方側二次変形部22Bの端面22Bb(他端面)を押圧して、他方側二次変形部22Bを、上側マンドレル90のしごき部92と接触した状態になるまで圧縮させ、この圧縮状態を維持したまま、上側マンドレル90を、他方側二次変形部22Bと相対的に移動させて、他方側二次変形部22Bのしごきを行ってから、他方側二次変形部22Bから引き抜く。
【0092】
また、第4成形処理時に、他方側二次変形部22Bが、他方側型径小部83と上側マンドレル90との間に挟まれた状態になってから、第5成形処理時に、他方側二次変形部22Bから上側マンドレル90を引き抜くまでの間に、他方側二次変形部22Bの外周側部22Baを、第2ダイ60と共に、第2パンチ80の絞りパンチ80Aで押圧する。
【0093】
他方、しごき後の他方側二次変形部22Bから上側マンドレル90を引き抜く時に、上側マンドレル90のセレーション刃具93により、他方側二次変形部22Bの内周に、
図1に示すように、シャフト成形品10にあるセレーション14の歯切りを行う。
【0094】
第6成形処理は、第5成形処理で他方側二次変形部22Bのしごきを終えて、上側マンドレル90のしごき部92を他方側二次変形部22Bから待避させた後、さらにインナーパンチスリーブ80Bで端面22Bbを押圧して、他方側二次変形部22Bを圧縮する。このような第6成形処理は、第3成形処理と同期して行われる。
【0096】
第2金型ユニット2では、
図10に示すように、第2パンチ80は、待避位置で第2ダイ60と離間している。下側マンドレル70では、先端部71は、二次型内60Sの型等径部61内に、しごき部72は、二次型内60Sの第2テーパ部62付近に、それぞれ配置されている。また、上側マンドレル90では、先端部91としごき部92は、いずれも三次型内80Sの型等径部81内に、配置されている。このような配置下で、半成形シャフト20の一方側一次変形部21Aを、第2ダイ60の二次型内60Sの型等径部61内に挿入して、円筒部23の下方を型等径部61内に収容し、第2テーパ部62との境で保持させる(第1工程内処理)。
【0097】
次に、第2工程内処理では、
図12に示すように、スライダ88だけを下降させ、第2ダイ60の上端面に、第2パンチ80のアウターパンチ80Cの下端面を当接させる。これにより、第2ダイ60の二次型内60Sに保持された半成形シャフト20の他方側一次変形部21Bが、その軸心AXを第2金型ユニット2の軸心L2と同心上で、アウターパンチ80Cの三次型内80Sの型等径部81内に挿入し、収容した状態で、第4テーパ部82との境で保持される。他方側一次変形部21Bは、絞りパンチ80Aの第4テーパ部82との境まで、変形を伴わずに到達する。この段階では、ノックアウトパンチ66(
図4中、駆動部Cに対応)とインナーパンチスリーブ80B(同じく、駆動部Fに対応)は、半成形シャフト20と離れた状態になっている。
【0098】
次に、第3工程内処理を行う。第3工程内処理は、
図4に示す画面MT1において、時刻T1(1s付近)〜時刻T2(13s付近)に相当するタイミングで、駆動部A(第2ダイ60に対応)と駆動部D(絞りパンチ80Aに対応)のように、第2ダイ60と相対的に絞りパンチ80Aを動作制御して、実施される。
【0099】
第3工程内処理では、
図13に示すように、第2工程内処理から引き続きスライダ88だけを下降させ、パンチホルダ85の下端面を第2ダイ60の上端面まで近接させる。これにより、半成形シャフト20では、他方側一次変形部21Bは、その端面に当接したインナーパンチスリーブ80Bに支持された状態で、絞りパンチ80Aと第2ダイ60との押圧を受けて、三次型内80Sで、第4テーパ部82と他方側型径小部83の各形状に倣って絞られ、変形する。それと同時に、一方側一次変形部21Aも、その端面に当接したノックアウトパンチ66に支持された状態で、絞りパンチ80Aと第2ダイ60との押圧を受けて、二次型内60Sで、第2テーパ部62と一方側型径小部63の各形状に倣って絞られ、変形する。
【0100】
このとき、
図14に示すように、下側マンドレル70のしごき部72は、二次型内60Sの第2テーパ部62付近に配置されているものの、一方側一次変形部21Aの変形に大きく影響を与える位置に配置されておらず、変形した一方側一次変形部21Aと非接触状態である。同様に、上側マンドレル90のしごき部92は、三次型内80Sの第4テーパ部82に配置されているものの、他方側一次変形部21Bの変形に大きく影響を与える位置に配置されておらず、変形した他方側一次変形部21Bと非接触状態である。
【0101】
第3工程内処理により、変形後の一方側一次変形部21Aと変形後の他方側一次変形部21Bでは、円筒部23側の肉は厚く、端面側に向けて肉が次第に薄くなっているため、肉厚を一様にするために、次の第4工程内処理を行う。
【0102】
次に、第4工程内処理は、
図4に示す画面MT1において、時刻T2(13s付近)以降に相当したタイミングで、駆動部C(ノックアウトパンチ66に対応)と駆動部F(インナーパンチスリーブ80Bに対応)のように、ノックアウトパンチ66とインナーパンチスリーブ80Bを動作制御して、実施される。
【0103】
第4工程内処理では、
図15に示すように、可動プレート67を僅かに上昇させると同時に、パンチスペーサ86を僅かに下降させて、半成形シャフト20のうち、一方側一次変形部21Aの端面と他方側一次変形部21Bの端面とを、ノックアウトパンチ66とインナーパンチスリーブ80Bにより、それぞれ押圧する。これにより、変形後の一方側一次変形部21Aは、その肉の変形代を、第2ダイ60と下側マンドレル70で規制した状態で、軸心AX方向に圧縮されて変形し、一方側二次変形部22Aとなる。一方側二次変形部22Aでは、インナーパンチスリーブ80Bの下降を伴ったノックアウトパンチ66の上昇(押圧)により、円筒部23側の肉は、端面側に寄ると共に、端面側の肉は、円筒部23側に向けて寄っていることから、肉厚は、概ね一様に調整されている。また、一方側二次変形部22Aの内周は、
図16に示すように、下側マンドレル70のしごき部72の挿通を妨げる程に径小化して、しごき部72と接触した状態になっている。
【0104】
同様に、可動プレート67の僅かな上昇と同時に、パンチスペーサ86の僅かな下降を行って、半成形シャフト20のうち、一方側一次変形部21Aの端面と他方側一次変形部21Bの端面とを、ノックアウトパンチ66とインナーパンチスリーブ80Bにより、それぞれ押圧する。これにより、変形後の他方側一次変形部21Bは、その肉の変形代を、絞りパンチ80Aと上側マンドレル90で規制した状態で、軸心AX方向に圧縮されて変形し、他方側二次変形部22Bとなる。他方側二次変形部22Bでは、ノックアウトパンチ66の上昇を伴ったインナーパンチスリーブ80Bの下降(押圧)により、円筒部23側の肉は、端面側に寄ると共に、端面側の肉は、円筒部23側に向けて寄っていることから、肉厚は、概ね一様に調整されている。また、他方側二次変形部22Bの内周も、
図16に示すように、上側マンドレル90のしごき部92の挿通を妨げる程に径小化して、しごき部92に密着した状態となっている。
【0105】
<しごき処理>
次に、第4工程内処理の実施後、第5工程内処理と第6工程内処理を行う。第5工程内処理と第6工程内処理は、
図4に示す画面MT1において、時刻T3(17s付近)以降に相当したタイミングで、駆動部B(下側マンドレル70に対応)と、駆動部C(ノックアウトパンチ66に対応)と、駆動部E(上側マンドレル90に対応)と、駆動部F(インナーパンチスリーブ80Bに対応)のように、下側マンドレル70、ノックアウトパンチ66、上側マンドレル90、及びインナーパンチスリーブ80Bを動作制御して、実施される。
【0106】
次に、第4工程内処理の実施後、本実施形態では、先に他方側二次変形部22Bをしごく第5工程内処理を行う。一方側二次変形部22Aの端面22Abは、ノックアウトパンチ66で、他方側二次変形部22Bの端面22Bbは、インナーパンチスリーブ80Bで、それぞれ支持された状態になっている。第5工程内処理では、この状態を維持したまま、
図17に示すように、パンチスペーサ規制部87と連動してバックノックアウト可動部68だけを上昇させて、下側マンドレル70の先端部71で先端部91と一体的に連結した上側マンドレル90のしごき部92を、上方に向けて移動させる。
【0107】
これにより、上側マンドレル90のしごき部92は、他方側二次変形部22Bの内周を挿通して完全に貫通する。すなわち、他方側二次変形部22Bは、第2ダイ60側と第2パンチ80側を閉じて、インナーパンチスリーブ80Bとアウターパンチ80Cに拘束された状態の下で、上側マンドレル90のしごき部92が、内周側から他方側二次変形部22Bをしごきながら、他方側二次変形部22Bの端面22Bb側から引き抜かれる。そのため、しごいた後の他方側二次変形部22Bの外周側部22Baでは、局部的な座屈、屈曲等の変形が修正される。
【0108】
他方側二次変形部22Bのしごきを実施した後、引き続き一方側二次変形部22Aをしごく第6工程内処理を行う。第6工程内処理では、
図18に示すように、パンチスペーサ規制部87と連動してバックノックアウト可動部68だけを下降させて、上側マンドレル90の先端部91で先端部71と一体的に連結した下側マンドレル70のしごき部72を、下方に向けて移動させる。これにより、下側マンドレル70のしごき部72は、一方側二次変形部22Aの内周を挿通して完全に貫通する。
【0109】
すなわち、他方側二次変形部22Bは、第2ダイ60側と第2パンチ80側を閉じて、第2ダイ60とノックアウトパンチ66に拘束された状態の下で、下側マンドレル70のしごき部72が、内周側から一方側二次変形部22Aをしごきながら、一方側二次変形部22Aの端面22Ab側から引き抜かれる。そのため、しごいた後の一方側二次変形部22Aの外周側部22Aaでは、局部的な座屈、屈曲等の変形が修正される。
【0110】
<角付け処理>
次に、第7工程内処理を行う。第7工程内処理は、
図4に示す画面MT1において、時刻T4(23s付近)以降に相当したタイミングで、駆動部C(ノックアウトパンチ66に対応)と駆動部F(インナーパンチスリーブ80Bに対応)のように、ノックアウトパンチ66とインナーパンチスリーブ80Bを動作制御して、実施される。
【0111】
第7工程内処理では、
図19に示すように、可動プレート67を僅かに上昇させると同時に、パンチスペーサ86を僅かに下降させて、一方側二次変形部22Aの端面22Abと他方側二次変形部22Bの端面22Bbとを、ノックアウトパンチ66とインナーパンチスリーブ80Bにより、それぞれ押圧する。
【0112】
このとき、一方側二次変形部22Aでは、外周側部22Aaが、第2ダイ60と下側マンドレル70に保持された状態にある。そのため、一方側二次変形部22Aの端面22Abが、ノックアウトパンチ66で上側に押されると、一方側二次変形部22Aは、円筒部23に対し、それとの境界付近で、急峻な屈曲角度θ(
図1中、一例としてθ=約100°)に変形(角付け)されて、シャフト成形品10の屈曲部12となる。同時に、他方側二次変形部22Bでは、外周側部22Baが、絞りパンチ80Aと上側マンドレル90に保持された状態にある。そのため、他方側二次変形部22Bの端面22Bbが、インナーパンチスリーブ80Bで下側に押されると、他方側二次変形部22Bは、円筒部23に対し、それとの境界付近で、急峻な屈曲角度θ(
図1中、一例としてθ=約100°)に変形(角付け)されて、シャフト成形品10の屈曲部12となる。
【0113】
次に、第8工程内処理では、
図20に示すように、スライダ88を上昇させて、第2金型ユニット2の第2パンチ80側を、その待避位置まで第2ダイ60側と離間させる。このとき、第2パンチ80のアウターパンチ80Cの下端面が、当接状態にあった第2ダイ60の上端面と離間する位置まで、第2パンチ80側が上昇すると、上側マンドレル90の先端部91は、下側マンドレル70の先端部71と離れて、他方側二次変形部22Bに近接した位置に到達する。先端部91にセレーション刃具93を具備していない上側マンドレル90の場合には、第2ダイ60の型等径部61で円筒部23を保持した状態を維持したまま、引き続きスライダ88の上昇により、待避位置まで第2パンチ80側を上昇させる。これにより、上側マンドレル90の先端部91が、他方側二次変形部22Bの内周を挿通して、上側マンドレル90は、他方側二次変形部22Bから引き抜かれる。
【0114】
なお、上側マンドレル90のセレーション刃具93で、他方側二次変形部22Bの内周にセレーションを形成する場合には、
図20に示すように、第2金型ユニット2において、第2パンチ80側を第2ダイ60側と離間させず、
図17に示すように、他方側二次変形部22Bを、第2パンチ80側と第2ダイ60側で完全にクランプされた状態にしておく。スライダ88の上昇により、第2金型ユニット2の第2パンチ80側を待避位置まで上昇させておき、他方側二次変形部22Bが、第2パンチ80側と第2ダイ60側で完全にクランプされた状態の下で、上側マンドレル90の先端部91にあるセレーション刃具93を、他方側二次変形部22Bの内周を挿通させる。これにより、他方側二次変形部22Bの内周は、セレーション刃具93により、セレーションをなす形状に歯切りされて、上側マンドレル90は、他方側二次変形部22Bから引き抜かれる。
【0115】
また、本実施形態に係るシャフト成形品10とは異なり、縮径部が、基準径円筒部の片側だけにある段付き中空シャフト(モータシャフト)で、その縮径部の内周にセレーションを形成する場合でも、前述の要領と同じように、セレーションの歯切りを行うことができる。この場合には、上側マンドレル90等に相当するマンドレルのセレーション刃具を、縮径部となる前の状態にある半成形シャフトの二次変形部の内周に挿通させることにより、セレーションの歯切りを行いながら、マンドレルを二次変形部の内周から引き抜く。
【0116】
続く第9工程内処理では、第2金型ユニット2の第2パンチ80側が、待避位置まで移動したら、
図21に示すように、バックノックアウト可動部68を上昇させて、第2ダイ60に保持されているシャフト成形品10,10Xを上げ、第2金型ユニット2から取り出す。かくして、シャフト成形品10,10Xは、
図1に示すように、基準径円筒部11を挟み、屈曲部12を介した縮径部13と、基準径円筒部31とを、段差状に成形した態様で、製造される。
【0117】
なお、実施形態に係る中空シャフトの製造方法の二次絞り工程のうち、第1成形処理と第4成形処理は、前述した第1工程内処理〜第3工程内処理に対応する。また、第2成形処理と第5成形処理は、第4工程内処理〜第6工程内処理に対応する。また、第3成形処理と第6成形処理は、第7工程内処理に対応する。
【0118】
次に、本実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法、及びモータシャフトの製造方法の作用・効果について説明する。
【0119】
本実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法は、第1ダイ40の一次型内40Sにセットされた状態にある製品ブランク30のうち、一方側(
図7及び
図8中、下側)の据え込み予定部32を、第1パンチ50と共に、第1導入角θ1に倣って絞り、中空を維持したまま、基準径円筒部31より径小な一方側一次変形部21Aに変形させる一次絞り工程と、下側マンドレル70の先端部71が、二次型内60Sのうち、第2ダイ60の型等径部61内に待避の下、第2ダイ60の二次型内60Sにセットした状態にある半成形シャフト20の一方側一次変形部21Aを、第2パンチ80で押圧することにより、一方側一次変形部21Aを、型等径部61から第2導入角θ2に倣いながら、下側マンドレル70のしごき部72と非接触で、一方側型径小部63と下側マンドレル70との間に送り、絞り込まれて一方側二次変形部22Aを成形する第1成形処理と、第2パンチ80で反力を受けながら、ノックアウトパンチ66で一方側二次変形部22Aの端面22Abを押圧して、一方側二次変形部22Aを、下側マンドレル70のしごき部72と接触した状態になるまで圧縮させ、この圧縮状態を維持したまま、下側マンドレル70を、一方側二次変形部22Aと相対的に移動させて、一方側二次変形部22Aのしごきを行ってから、一方側二次変形部22Aから引き抜く第2成形処理と、を含む二次絞り工程を有すること、を特徴とする。
【0120】
この特徴により、一次絞り工程と二次絞り工程による全2工程で、製品ブランク30からシャフト成形品10を成形することができるため、
図23に示すように、少なくとも全5工程を要していた従来技術に係る製造方法に比べ、シャフト成形品10のコストが安価になる。特に、従来技術に係る製造方法では、非常に高価な専用の金型が、全5工程分、工程毎に必要となり、設備コストも多額であったが、本実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法は、一次絞り工程向けの第1金型ユニット1と、二次絞り工程向けの第2金型ユニット2で足りるため、設備コストを、大幅に抑制することができる。
【0121】
また、シャフト成形品10は、多品種小ロット体制下や量産体制下に拘わらず、一次絞り工程と二次絞り工程を含む実質の総タクトタイムを、参照する
図4の画面MT1の通り、例えば、数十〜百数十秒等と、実際に効率良く、生産性を高めて製造することができる。しかも、少なくとも全5工程を要していた従来技術に係る製造方法に比べ、工程数が2と少ない分、作業者は、一次絞り工程と二次絞り工程との工程管理を、適切に行うことが容易になり、ひいては、品質管理上、歩留まりを高くしてシャフト成形品10を製造することができる。
【0122】
従って、本実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法によれば、ストレート状の製品ブランク30を絞り、段付き形状のモータシャフト等のような、シャフト成形品10,10Xに成形するにあたり、安価なコストで、かつ生産性を高めて効率良く成形することができる、という優れた効果を奏する。
【0123】
また、本実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法では、第1成形処理時に、一方側一次変形部21Aが、一方側型径小部63と下側マンドレル70との間に挟まれた状態になってから、第2成形処理時に、一方側二次変形部22Aから下側マンドレル70を引き抜くまでの間に、一方側二次変形部22Aの外周側部22Aaを、第2パンチ80と共に、第2ダイ60で押圧すること、を特徴とする。
【0124】
この特徴により、円筒部23に対し、一方側二次変形部22Aとの境界付近が、
図1に示すように、急峻な屈曲角度θ(
図1中、一例としてθ=約100°前後)に角付けされ、軸心AX方向に対し、基準径円筒部31と縮径部13との間を、急峻な屈曲部12で形成したシャフト成形品10を得ることができる。
【0125】
また、本実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法では、二次絞り工程は、第2成形処理で一方側二次変形部22Aのしごきを終えて、下側マンドレル70のしごき部72を一方側二次変形部22Aから待避させた後、さらにノックアウトパンチ66で端面22Abを押圧して、一方側二次変形部22Aを圧縮する第3成形処理を含むこと、を特徴とする。
【0126】
この特徴により、圧縮した一方側二次変形部22Aは、
図1に示すように、シャフト成形品10の屈曲部12及び縮径部13として、局部的な座屈、屈曲等の変形を取り除いて、肉厚を一様に調整した形状に修正される。
【0127】
また、本実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法では、一次絞り工程は、一次型内40Sにセットされた状態にある製品ブランク30に対し、第1ダイ40と相対的に下降動作する第1パンチ50の押圧により、一方側の据え込み予定部32A(32)を、第1ダイ40の第1導入角θ1に倣って、一方側一次変形部21Aに変形させると同時に、他方側の据え込み予定部32B(32)も、アウターパンチ50Aの第3導入角θ3に倣って絞り、中空を維持したまま、基準径円筒部31より径小な他方側一次変形部21Bに変形させること、を特徴とする。
【0128】
この特徴により、他方側一次変形部21Bは、例えば、その相手側となる部品、既製品のユニット等の対象物と、軸支、嵌め合い、溶接等の連結手段により、接続可能になる。
【0129】
また、本実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法では、二次絞り工程は、上側マンドレル90の先端部91を、第2ダイ60の型等径部61内または第2パンチ80の型等径部81内に待避させた状態で、第2ダイ60の二次型内60Sにセットした状態にある半成形シャフト20の他方側一次変形部21Bを、第2パンチ80との押圧で、第4導入角θ4に倣いながら、上側マンドレル90のしごき部92と非接触で、第2パンチ80の他方側型径小部83と上側マンドレル90との間に送り、第2パンチ80の絞りパンチ80Aと、インナーパンチスリーブ80Bと、第2ダイ60と、ノックアウトパンチ66との絞り込みで、他方側二次変形部22Bを成形する第4成形処理と、第2ダイ60で相対的に反力を受けながら、インナーパンチスリーブ80Bで他方側二次変形部22Bの端面22Bbを押圧して、他方側二次変形部22Bを、上側マンドレル90のしごき部92と接触した状態になるまで圧縮させ、この圧縮状態を維持したまま、上側マンドレル90を、他方側二次変形部22Bと相対的に移動させて、他方側二次変形部22Bのしごきを行ってから、他方側二次変形部22Bから引き抜く第5成形処理を含むこと、を特徴とする。
【0130】
この特徴により、
図1に示すシャフト成形品10のように、基準径円筒部11を挟む両側に、屈曲部12を介して縮径部13を成形する場合でも、工程数の増加を伴うことなく、一次絞り工程と二次絞り工程だけで、軸心AX方向両側に縮径部13を有するシャフト成形品10を成形することができる。しかも、軸心AX方向両側に縮径部13を成形する場合でも、一次絞り工程と二次絞り工程を含む実質の総タクトタイムは、縮径部13を片側だけ成形する場合のタクトタイムに比べ、一例として、20%程度までの増加に過ぎない。そのため、シャフト成形品10の生産性は、極めて高い。
【0131】
また、本実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法では、第4成形処理時に、他方側二次変形部22Bが、他方側型径小部83と上側マンドレル90との間に挟まれた状態になってから、第5成形処理時に、他方側二次変形部22Bから上側マンドレル90を引き抜くまでの間に、他方側二次変形部22Bの外周側部22Baを、第2ダイ60と共に、第2パンチ80の絞りパンチ80Aで押圧すること、を特徴とする。
【0132】
この特徴により、一方側二次変形部22Aの角付けと同様、円筒部23に対し、他方側二次変形部22Bとの境界付近も、
図1に示すように、急峻な屈曲角度θ(
図1中、一例としてθ=約100°前後)に角付けされ、軸心AX方向両側に対し、基準径円筒部31と縮径部13との間を、急峻な屈曲部12で形成したシャフト成形品10を得ることができる。
【0133】
また、本実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法では、二次絞り工程は、第5成形処理で他方側二次変形部22Bのしごきを終えて、上側マンドレル90のしごき部92を他方側二次変形部22Bから待避させた後、さらにインナーパンチスリーブ80Bで端面22Bbを押圧して、他方側二次変形部22Bを圧縮する第6成形処理を含むこと、を特徴とする。
【0134】
この特徴により、圧縮した他方側二次変形部22Bは、
図1及び
図6に示すように、シャフト成形品10の屈曲部12及び縮径部13として、局部的な座屈、屈曲等の変形を取り除き、屈曲部12の肉厚と縮径部13の肉厚について、双方でバランスを図った上で、肉厚を一様に調整した形状に修正される。
【0135】
また、本実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法では、第4成形処理は、第1成形処理と同期して行われ、第5成形処理は、第2成形処理と同期して行われること、を特徴とする。
【0136】
この特徴により、第1金型ユニット1では、第1ダイ40等と第1パンチ50等による押圧力とその反力について、第1成形処理で必要な押圧力は、第4成形処理で必要な反力として、第4成形処理で必要な押圧力は、第1成形処理で必要な反力として、それぞれ相互に活かすことができる。同様に、第2金型ユニット2では、第2ダイ60等と第2パンチ80等による押圧力とその反力について、第2成形処理で必要な押圧力は、第5成形処理で必要な反力として、第5成形処理で必要な押圧力は、第2成形処理で必要な反力として、それぞれ相互に活かすことができる。そのため、第1絞り成形装置や第2絞り成形装置Mでは、押圧力を発生させる推力が、半成形シャフト20やシャフト成形品10の成形に有効に活用され、押圧力とその反力によって、第2絞り成形装置M等自体に受ける機械的な負荷を抑制することができる。
【0137】
また、本実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法では、第6成形処理は、第3成形処理と同期して行われること、を特徴とする。
【0138】
この特徴により、第2金型ユニット2では、第2ダイ60等と第2パンチ80等による押圧力とその反力について、第3成形処理で必要な押圧力は、第6成形処理で必要な反力として、第6成形処理で必要な押圧力は、第3成形処理で必要な反力として、それぞれ相互に活かすことができる。そのため、第2絞り成形装置Mでは、押圧力を発生させる推力が、シャフト成形品10の成形に有効に活用され、押圧力とその反力によって、第2絞り成形装置M自体に受ける機械的な負荷を抑制することができる。
【0139】
また、本実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法では、上側マンドレル90に、セレーションを形成可能なセレーション刃具93を具備し、セレーション刃具93が上側マンドレル90に具備されている場合には、二次絞り工程で、しごき後の他方側二次変形部22Bから上側マンドレル90を引き抜く時、セレーション刃具93により、他方側二次変形部22Bの内周にセレーション14を成形すること、を特徴とする。
【0140】
この特徴により、シャフト成形品10が、製品となってモータ本体の出力軸等の回転軸と嵌め合いで接続するのに必要なセレーション14を、別途、歯切り工程で加工を行う必要がなく、シャフト成形品10の製造工程が簡略化できるため、シャフト成形品10のコストダウンを図ることができる。
【0141】
また、本実施形態に係るモータシャフトの製造方法では、円筒状の製品ブランク30の端部を、その軸心AXに向けた絞り成形により、径差を有した段付き中空シャフトであるモータシャフトの製造方法において、モータシャフト(シャフト成形品10,10X)は、前述の段付き中空シャフトの製造方法に基づいて、製品ブランク30を成形してなること、を特徴とする。
【0142】
この特徴により、従来、いわゆる丸棒状の中実軸を基に、切削加工による削り出しで縮径部を形成したモータシャフトや、鍛造加工で縮径部を形成したモータシャフト等が、コスト上の理由で、やむを得なく使用されてきたモータ製品に対し、シャフト成形品10,10Xは、このようなモータシャフトに代えて、採用することができるようになる。
【0143】
すなわち、従来技術に係るモータシャフトの製造方法で、円筒形状の製品ブランク30からシャフト成形品10を成形しようとすると、
図23に示すように、縮径部13片側につき、少なくとも全5工程が必要になるため、絞り加工で成形されるモータシャフトの製造コストは、割高であった。これに対し、本実施形態に係るモータシャフトの製造方法では、製品ブランク30からシャフト成形品10を成形するまでに、縮径部13が片側、両側に依らず、絞り加工は全2工程であるため、前述の中実軸を加工したモータシャフトに比べ、安価になる場合がある。その上、シャフト成形品10は、中空状の製品ブランク30を塑性変形させて縮径部13を形成したものであるため、耐強度の向上と共に、軽量化の実現を図ることができている。
【0144】
また、本実施形態に係るモータシャフトの製造方法では、モータシャフト(シャフト成形品10,10X)は、車両に搭載されるモータのロータ向けの軸であること、を特徴とする。
【0145】
この特徴により、シャフト成形品10,10Xは、例えば、エンジンとモータを併用して走行するハイブリッドカーのほか、電気自動車や自動運転技術を搭載した自動車に挙げられる次世代の自動車の走行用モータ等を、安価に製造するのに貢献することできる。
【0146】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0147】
(1)例えば、実施形態では、鉛直方向に対し、第2金型ユニット2にある第2ダイ60側を下側に、第2パンチ80側を上側に装着した第2絞り成形装置Mを用いて、本実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法の二次絞り工程を実施した。しかしながら、本発明に係る段付き中空シャフトの製造方法の二次絞り工程は、第2の金型ユニットのうち、第2の被押圧側金型側を構成するユニットと、第2の押圧側金型を構成するユニットとを、水平方向に対向した配置で装着する絞り成形装置を用いて実施しても良い。
【0148】
(2)また、実施形態では、本実施形態に係る段付き中空シャフトの製造方法の一次絞り工程で、第1導入角θ1と第3導入角θ3が、双方とも60°の第1金型ユニット1を用いた。また、二次絞り工程で、第2導入角θ2と第4導入角θ4が、双方とも55°の第2金型ユニット2を用いた。しかしながら、本発明に係る段付き中空シャフトの製造方法で用いる一次絞り工程向けの第1の金型ユニットや、二次絞り工程向けの第2の金型ユニットでは、導入角付き金型の導入角は、本実施形態に限定されるものでなく、中空シャフト素材に基づいて成形される段付き中空シャフトの形状(基準径円筒部、屈曲部、縮径部に関する形状)や、中空シャフト素材の機械的性質等の絞り条件に応じて、適宜変更可能である。
【0149】
(3)また、実施形態では、実施形態に係る中空シャフトの製造方法の二次絞り工程では、
図10〜
図21に例示したように、第1工程内処理〜第9工程内処理を行ったが、これらの工程内処理は、実施形態に限定されるものではない。
【課題】ブランクである円筒状の中空シャフトを絞り、径方向段付き状シャフトに成形するにあたり、安価なコストで、かつ生産性を高めて効率良く成形することができる段付き中空シャフトの製造方法、及びモータシャフトの製造方法を提供する。
【解決手段】中空シャフトの製造方法は、製品ブランクの一方側の据え込み予定部を基準径円筒部より径小な一方側一次変形部に変形させる。次に、下側マンドレルを待避させ、第2ダイの二次型内にセットした半成形シャフトの一方側一次変形部を第2パンチで押圧し、型等径部から第2導入角θ2に倣い、下側マンドレルのしごき部と非接触で一方側型径小部と下側マンドレルとの間に一方側一次変形部を送り、絞って一方側二次変形部を成形し、ノックアウトパンチで一方側二次変形部の端面を押圧し、一方側二次変形部と接触状態にある下側マンドレルのしごき部で一方側二次変形部のしごきを行った後、一方側二次変形部から下側マンドレル引き抜く。