(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パルプ懸濁液から湿紙を抄紙する抄紙部と、湿紙を乾燥させて乾紙となす乾燥部と、乾紙の紙搬送方向の長さを所定のサイズに切断して単票紙となす裁断部と、紙搬送方向においてカールする単票紙の乾紙にデカール処理を施すデカール部を備え、
デカール部は、上ローラと下ローラの相互間に紙搬送経路なす紙挟み部を少なくとも乾紙の全幅にわたって形成する複数の搬送ローラ対を有し、複数の搬送ローラ対は、紙挟み部が上位置となる上位の搬送ローラ対と紙挟み部が下位置となる下位の搬送ローラ対とを紙搬送方向に沿って順次に配置し、各搬送ローラ対の一方のローラが剛体からなり、他方のローラが弾性体からなり、
上位の搬送ローラ対は、剛体からなる下ローラを固定配置し、弾性体からなる上ローラを下ローラに対して接近離間自在に配置し、かつ上ローラを下ローラに向けて付勢する付勢部を有し、下位の搬送ローラ対は、剛体からなる上ローラを固定配置し、弾性体からなる下ローラを上ローラに対して接近離間自在に配置し、かつ下ローラを上ローラに向けて付勢する付勢部を有することを特徴とする古紙再生処理装置。
搬送ローラ対は、上ローラと下ローラが、双方の回転軸心を含む平面が紙搬送方向上流側に所定の角度で傾斜する位置関係を有することを特徴とする請求項1に記載の古紙再生処理装置。
【背景技術】
【0002】
従来、古紙パルプを含むパルプ懸濁液を抄紙ワイヤーで抄紙する抄紙工程では、抄紙した湿紙を抄紙ワイヤーで乾燥ローラに押圧するか、フェルトのカンバスベルトで湿紙を乾燥ローラに押圧して乾燥させている。このとき、抄紙ワイヤーの網目、もしくはカンバスベルトの網目の痕跡が湿紙に凹凸の圧痕として残る。この圧痕は印刷を阻害する要因となり、窪んだところにインクやトナーが乗り難く、印刷の仕上がり品質が低下する。また、ペンなどにより手書きする場合の書き味も悪くなる。
【0003】
このため、例えば特許文献1に記載する技術では、乾燥部が、複数のローラと内部にヒーターを備えた乾燥ローラの間に掛け渡したスチール製の下搬送ベルトと、複数のローラと乾燥ローラの間に掛け渡した網状をなす樹脂製の上搬送ベルトを有し、下搬送ベルトと上搬送ベルトが湿紙を挟んで乾燥ローラの表面上で重なり、乾燥ローラに圧接させて湿紙を乾燥させている。
【0004】
そして、カレンダ部において、プレスローラを乾燥ローラに対向する位置に配置し、プレスローラを湿紙に当接するプレス位置と湿紙から離間する退避位置とにわたって変位可能に設け、プレスローラで湿紙を押圧して紙面の平滑化を行っている。
【0005】
特許文献2に記載するものは、折り加工を施した用紙のカール癖を解消するデカール機構であり、複数の搬送ローラ対を、その挟み部の高さ位置を違えて配置し、上位の搬送ローラ対ではスプリングによって上ローラを下ローラに向けて付勢し、下位の搬送ローラ対では、下ローラをスプリングによって上ローラに向けて付勢している。
【0006】
特許文献3に記載するものでは、変形可能な弾性体部分を有するローラーと、このローラーの弾性体部分より硬く、用紙の幅より内側に位置する部材を二か所に有するシャフトを有し、用紙がローラーの弾性体部分とシャフトの部材に押圧されて、デカール機構通過前と対称的で逆方向のカールが用紙に生じてカールを除去、軽減される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、乾燥工程においては、乾燥ローラの外周面に沿って湿紙を湾曲させた状態に湿紙を押圧して乾燥させるので、乾燥ローラから剥がした乾紙に湾曲形状の癖が残り、乾紙の特に紙搬送方向の前後端に紙搬送方向においてカールが発生する。紙に生じるカールは、紙の表裏の水分差に起因し、乾燥した面が縮み傾向となり、湿気の多い面が延びる傾向となることで生じる。
【0009】
このカールした状態の紙を搬送すると、紙搬送経路の途中や紙受け部で紙詰まりの原因となる。また、紙受け部では平坦な状態に積層することができず、上下の紙の間に空間を形成するので、紙受け部に基準の容量の紙を積載できない問題があった。
【0010】
紙のカールは、特許文献2のように、搬送ローラ対のローラ間に紙を挟んでしごくことで矯正できるが、挟み部でしごかれる紙には歪が生じる。このため、搬送ローラ対の上下のローラ間で紙に過剰な負荷が作用して破断することがある。
【0011】
本発明は上述した課題を解決するものであり、紙に生じるカールを紙搬送経路の途中で矯正することができる古紙再生処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の古紙再生処理装置は、パルプ懸濁液から湿紙を抄紙する抄紙部と、湿紙を乾燥させて乾紙となす乾燥部と、乾紙の紙搬送方向の長さを所定のサイズに切断して単票紙となす裁断部と、紙搬送方向においてカールする
単票紙の乾紙にデカール処理を施すデカール部を備え、
デカール部は、上ローラと下ローラの相互間に紙搬送経路なす紙挟み部を少なくとも乾紙の全幅にわたって形成する複数の搬送ローラ対を有し、複数の搬送ローラ対は、紙挟み部が上位置となる上位の搬送ローラ対と紙挟み部が下位置となる下位の搬送ローラ対とを紙搬送方向に沿って順次に配置し、各搬送ローラ対の一方のローラが剛体からなり、他方のローラが弾性体からなり、
上位の搬送ローラ対は、剛体からなる下ローラを固定配置し、弾性体からなる上ローラを下ローラに対して接近離間自在に配置し、かつ上ローラを下ローラに向けて付勢する付勢部を有し、下位の搬送ローラ対は、剛体からなる上ローラを固定配置し、弾性体からなる下ローラを上ローラに対して接近離間自在に配置し、かつ下ローラを上ローラに向けて付勢する付勢部を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の古紙再生処理装置において、搬送ローラ対は、上ローラと下ローラが、双方の回転軸心を含む平面が紙搬送方向上流側に所定の角度で傾斜する位置関係を有することを特徴とする
本発明の古紙再生処理装置において、上位の搬送ローラ対と下位の搬送ローラ対の相互間には、紙搬送経路をなすガイド部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上述したように、本発明によれば、乾紙は、紙搬送方向上流側の上位の搬送ローラ対の紙挟み部および紙搬送方向下流側の下位の搬送ローラ対の紙挟み部を続けて通過し、かつ上位の搬送ローラ対と下位の搬送ローラ対とで異なる方向に湾曲しながら通過する間に、しごかれ、カールと反対方向に湾曲されることでカールの矯正が施される。
【0016】
乾紙が紙挟み部でしごかれることで乾紙に生じる歪は弾性体のロールが弾性変形することで吸収する。このため、乾紙は過剰な負荷を受けることなくスムーズに通過し、破断が防止される。
【0017】
乾紙は、上位の搬送ローラ対の挟み部を通過する際には、下ローラの外周面に沿って湾曲しながら通過し、下位の搬送ローラ対の挟み部を通過する際には、上ローラの外周面に沿って湾曲しながら通過する。このため、一方のローラに負荷が作用する。この負荷が作用する側のローラを固定配置した剛体のローラとし、剛体のローラで乾紙を確実に支持し、剛体のローラの外周面で乾紙をしごくことで確実な矯正を施しつつ、負荷が作用しない他方のローラを弾性体のローラとすることにより、乾紙に生じる歪を取りながらスムーズな搬送を実現できる。
【0018】
搬送ローラ対において、上ローラと下ローラが、双方の回転軸心を含む平面が紙搬送方向上流側に所定の角度で傾斜する位置関係を有するで、剛体ローラの外周面に接触する領域が紙搬送方向において長くなり、湾曲形状が強く癖付けられ、挟み部で乾紙に与えるしごき作用が強くなるので、カール矯正が容易に、確実に行える。
【0019】
上位の搬送ローラ対と下位の搬送ローラ対の相互間にガイド部材を配置することで、上位の搬送ローラ対から下位の搬送ローラ対へ乾紙を導き、乾紙の先端縁に皺、折れ等の不具合が生じないように、確実に乾紙の受け渡しを行える。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図4に示すように、抄紙部13は、脱墨されたパルプ懸濁液から湿紙12を抄紙するものであり、複数のローラ41に巻回されたメッシュ状のベルトからなる抄紙ワイヤー42と、脱墨されたパルプ懸濁液を抄紙ワイヤー42上に注ぐヘッドボックス43を有している。
【0022】
抄紙ワイヤー42の無端軌道は、ヘッドボックス43から後述する乾燥ローラ49に至るまでの往路部と、乾燥ローラ49の一部を覆う転移部と、乾燥ローラ49からヘッドボックス43に戻る復路部からなる。
【0023】
抄紙ワイヤー42の往路部には、抄紙ワイヤー42の下部側でヘッドボックス43の近くに、抄紙ワイヤー42の下面に摺接して抄紙ワイヤー42の下面上から水を払う水切り部44と、抄紙ワイヤー42を介して湿紙12から水分を吸引する吸引装置45を設けている。
【0024】
さらに吸引装置45の下流側には、複数の絞りローラ41a、41bが抄紙ワイヤー42を挟んで位置しており、絞りローラ41a、41bによって双方のローラ間を通過する抄紙ワイヤー42上の湿紙12を絞る。ヘッドボックス43から抄紙ワイヤー42に供給された直後の湿紙12の含水率を100%とすると、絞りローラ41a、41bを通過した湿紙は、含水率が60−65%である。
【0025】
乾燥部14は、脱水された湿紙12を乾燥するものであり、加熱装置を内蔵した乾燥ローラ49の一部を、複数のローラ50に巻回したカンバスベルト51が無端軌道の一部で乾燥部14を覆っており、乾燥部14においてカンバスベルト51と乾燥ローラ49の外周面との間に湿紙12を挟み、乾燥ローラ49で湿紙12を乾燥させる。
【0026】
乾燥した乾紙61は、カンバスベルト51の往路終端位置でスクレーパ111によりカンバスベルト51から剥離させて仕上部15に案内する。
仕上部15は、湿紙12を乾燥して得られる連続紙の乾紙61に対して仕上工程を行い、得られた単票紙の再生紙62を紙受部63に排出するものであり、裁断部として乾紙61を所定のサイズの単票紙に切断する金属製のカッター装置60およびスリッター装置112が設けられている。
【0027】
乾燥部14の紙搬送方向の下流側で、裁断部のカッター装置60とスリッター装置112の間には、単票紙の乾紙61を平滑化して再生紙62となすカレンダ部200および紙搬送方向においてカールする単票紙の乾紙61にデカール処理を施すデカール部300を配置している。
【0028】
図2および
図3に示すように、カレンダ部200は、紙搬送経路を介して上下に対向して配置する一対のプレスローラ201、202を有している。上方に位置する一方のプレスローラ201は駆動側の固定ローラ201bをなし、回転軸201aを所定位置に固定しており、他方のプレスローラ202は従動側の加圧ローラ202bをなし、回転軸202aを固定ローラ201bに対して接近離間自在に配置している。
【0029】
加圧ローラ202bの下方には加圧ローラ202bを固定ローラ201bに向けて付勢する付勢部203を設けている。付勢部203は加圧ローラ202bの保持部202cに付勢力を加える皿バネ203aと皿バネ203aの付勢力を調整する押しボルト203bからなる。
【0030】
加圧ローラ202bの保持部202cには、固定ローラ201bと加圧ローラ202bの間に規制間隙tを形成して固定ローラ201bと加圧ローラ202bの当接を防止する規制部202dを設けており、規制間隙tは再生紙62の仕上がり紙厚より狭く、約0.03mmであり、仕上がり紙厚さが0.1mmから0.3mmの範囲にある再生紙62に共通して設定される隙間サイズである。
【0031】
カレンダ部200は、紙搬送方向でプレスローラ201、202の上流側にガイド部204を有しており、ガイド部204は乾紙61を規制間隙tに案内するもので、上ガイド204aおよび下ガイド204bからなる。紙搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなす上ガイド204aと紙搬送方向の下流側に向けて上り勾配をなす下ガイド204bとの間隙は紙搬送方向の下流側ほど狭くなっている。下ガイド204bの下流側縁は、上ガイド204aの下流側縁よりも紙搬送方向で下流側に位置し、規制間隙tより上方位置で固定ローラ201bの外周面に対向している。
【0032】
カレンダ部200とデカール部300の間には、紙搬送経路をなす搬送ガイド400を設けており、搬送ガイド400は上下のガイド401、402からなり、搬送ガイド400の紙搬送方向上流側の開口がカレンダ部200の排出部に対向し、紙搬送方向下流側の開口がデカール部300の供給部に対向している。
【0033】
デカール部300は、複数の搬送ローラ対310、320を紙搬送方向に配置しており、本実施の形態では2組の搬送ローラ対310、320で説明するが、搬送ローラ対310、320の数に限定はなく、3組以上の搬送ローラ対を配置することも可能である。
【0034】
搬送ローラ対310、320は、それぞれ上ローラ311、321と下ローラ312、322を有し、上ローラ311、321と下ローラ312、322の相互間に紙搬送経路なす紙挟み部313、323を有している。紙挟み部313、323は少なくとも乾紙61の全幅にわたって形成されており、本実施の形態では上ローラ311、321と下ローラ312、322がその全長にわたって当接可能である。
【0035】
搬送ローラ対310、320は、
図6に示すように、上ローラ311、321と下ローラ312、322が、双方の回転軸心を含む平面Aが紙搬送方向上流側に所定の傾斜角度θで傾斜する位置関係を有する。
【0036】
また、紙搬送方向の上流側に配置する上位の搬送ローラ対310は、紙挟み部313がカレンダ部200の紙搬送経路および下流側に配置する下位の搬送ローラ対320の紙挟み部323より上位置にあり、下流側に配置する下位の搬送ローラ対320は、紙挟み部323が上位の搬送ローラ対310の紙挟み部313より下位置となるとともに、カレンダ部200の紙搬送経路と上下方向位置が同レベルにある。
【0037】
上位の搬送ローラ対310は、駆動ローラをなす下ローラ312が鉄製の剛体で、外周面にスリップ防止用のウレタンコーティングを施してなり、下ローラ312の回転軸312aを所定位置に固定配置している。また、従動ローラをなす上ローラ311がスポンジ等の弾性体で、紙搬送時に生じる損傷を防止するために外周面を熱収縮チューブからなるヒシチューブで覆っており、上ローラ311の回転軸を下ローラ312に対して接近離間自在に配置している。そして、上位の搬送ローラ対310は、上ローラ311を下ローラ312に向けて付勢する付勢部330を有し、付勢部330には皿ばね等を使用する。
【0038】
下位の搬送ローラ対320は、駆動ローラをなす上ローラ321が鉄製の剛体で、外周面にスリップ防止用のウレタンコーティングを施してなり、上ローラ321の回転軸321aを所定位置に固定配置している。また、従動ローラをなす下ローラ322がスポンジ等の弾性体で、紙搬送時に生じる損傷を防止するために外周面を熱収縮チューブからなるヒシチューブで覆っており、下ローラ322の回転軸を上ローラ321に対して接近離間自在に配置している。そして、下位の搬送ローラ対320は、上ローラ321を下ローラ322に向けて付勢する付勢部340を有し、付勢部340には圧縮ばねまたは皿ばね等を使用する。
【0039】
上位の搬送ローラ対310と下位の搬送ローラ対320の相互間には、紙搬送経路をなすガイド部材350を配置しており、ガイド部材350は上ガイド351と下ガイド352からなり、上流側の開口が上位の搬送ローラ対310の紙挟み部313に対向し、下流側の開口が下位の搬送ローラ対320の紙挟み部323に対向している。
【0040】
本実施の形態ではガイド部材350を固定配置しているが、ガイド部材350は移動自在に配置することも可能であり、すなわち上位の搬送ローラ対310と下位の搬送ローラ対320に挟まれた乾紙61にテンションを与える位置とテンションを解除する位置とにわたって出退自在に配置することも可能である。また、ガイド部材350は、上位の搬送ローラ対310の上ローラ311と下位の搬送ローラ対320の上ローラ321との間に掛け渡したベルトを上ガイド351となし、上位の搬送ローラ対310の下ローラ312と下位の搬送ローラ対320の下ローラ322との間に掛け渡したベルトを下ガイド352とすることで構成することも可能である。
【0041】
以上の構成において、抄紙部13で抄紙された湿紙12は乾燥部14で乾燥されて乾紙61として仕上部15に送られる。仕上部15では、裁断部のカッター装置60で乾紙61の紙搬送方向の長さを所定のサイズに切断して単票紙となし、この乾紙61をカレンダ部200に導いて平滑化処理し、デカール部300でカールを矯正した後に、スリッター装置112で単票紙の乾紙61の幅を所定のサイズに切断して再生紙62となす。
【0042】
カレンダ部200ではガイド部204が上ガイド204aと下ガイド204bによって湿紙61を規制間隙tに導く。このとき、下ガイド204bが湿紙61の先端縁を固定ローラ201bの外周面に沿わせることで、乾紙61の先端縁が固定ローラ201bの外周面に倣って直線的に矯正され、乾紙61の先端縁が規制間隙tに導入される前に予備的に伸ばされる。この結果、規制間隙tへ導入する際に乾紙61に生じる場合がある皺の発生を抑制できる。
【0043】
そして、乾紙61は、固定ローラ201bの回転に伴って固定ローラ201bと加圧ローラ202cの間の規制間隙tにスムーズに導かれ、乾紙61の状態で固定ローラ201bと加圧ローラ202cとの間においてプレスされる。このとき、付勢部203の皿バネ203aにより加圧ローラ202bに加える加圧力のもとでプレスし、かつ規制部202dにより固定ローラ201bと加圧ローラ202bの間を規制間隙tに維持する。
【0044】
この結果、乾紙61は、先端縁の折れ曲がりや皺の発生を伴うことなく、かつ過剰な圧力を受けることなくプレスされ、紙表面の凹凸を均して平滑化処理される。また、従来の湿紙状態でプレスするときに生じる繊維が流出する事象や、湿紙先端部がプレスローラに巻き付く事象の発生を防止できるので、再生紙62の品質を安定化できる。
【0045】
さらに、固定ローラ202bと加圧ローラ202cの相互間に過剰な加圧力が作用することを防止でき、プレスローラ201、202、特に受圧側の固定ローラ202bに作用する荷重負荷を抑制し、装置としての機械的負荷を軽減して稼働時の消費エネルギーを節減できる。
【0046】
裁断部のカッター装置60の下流側にカレンダ部200を配置することで、乾紙61がカレンダ部200を通過する間に紙の搬送が中断する事態が生じず、紙表面の平滑化をムラなく実施できる。
【0047】
すなわち、抄紙部13から乾燥部14を経て裁断部のカッター装置60に至るまでの搬送経路上では、紙は連続紙の状態にあり、裁断部で乾紙61を所定サイズに裁断する際に、紙の搬送が一時停止する。このため、裁断部より上流側にカレンダ部200を配置した場合には、平滑化処理の途中で乾紙61の搬送が一時停止して紙面に不要な線などのムラが生じ易くなる。しかし、裁断部より下流側においては単票紙であるので、裁断時に生じる搬送の一時停止に影響を受けることがなく、カレンダ部200を通過する乾紙61に対して中断することなく連続して平滑化処理を施すことができる。
【0048】
また、裁断部の上流側に配置したカレンダ部200では、一旦乾紙61に皺が発生すると連続紙であるが故にプレスローラ201、202の加圧力を解除してプレスローラ201、202の間を広げて皺を直すまで正常復帰できず、その間は皺の発生が継続する。
【0049】
しかし、裁断部の下流側に配置したカレンダ部200では、裁断後の単票紙の乾紙61にプレスを施すので、ある単票の乾紙61に皺が発生しても次に搬送されてくる単票の乾紙61との間が断絶していることで皺が継続せず、皺が発生していない次の単票の乾紙61の先端縁が規制間隙tに導入されることで、プレスローラ201、202の加圧力を解除せずとも、正常状態に復帰できる。
【0050】
カレンダ部200から排出される単票の乾紙61は、乾燥ローラ49の外周面に倣って湾曲する癖により、紙搬送方向においてカールし、紙搬送経路上で上方に向けて凸状に湾曲した状態で搬送ガイド400を通ってデカール部300へ送られる。
【0051】
デカール部300では、搬送ガイド400を通った乾紙61が上位の搬送ローラ対310に向けて上向けに供給され、乾紙61は紙搬送方向上流側の上位の搬送ローラ対310の紙挟み部313および紙搬送方向下流側の下位の搬送ローラ対320の紙挟み部323を続けて通過し、かつ上位の搬送ローラ対310と下位の搬送ローラ対320とで異なる方向に湾曲しながら通過する間に、しごかれ、カールと反対方向に湾曲されることでカールの矯正が施される。このとき、上位の搬送ローラ対310と下位の搬送ローラ対320の相互間に配置したガイド部材350が、上位の搬送ローラ対310から下位の搬送ローラ対320へ乾紙61を導き、乾紙61の先端縁に皺、折れ等の不具合が生じないように、確実に乾紙61の受け渡しを行える。
【0052】
カールした乾紙61は、上位の搬送ローラ対310の紙挟み部313を通過する際には、下ローラ312の外周面に沿って湾曲しながら通過し、下位の搬送ローラ対320の紙挟み部323を通過する際には、上ローラ321の外周面に沿って湾曲しながら通過する。
【0053】
双方の搬送ローラ対310、320においては、紙通過時に負荷が作用する側のローラ312、321が剛体をなすことで乾紙61を確実に支持し、剛体のローラ312、321の外周面で乾紙をしごくことで確実な矯正を施しつつ、負荷が作用しない他方のローラ311、322が弾性体をなすことで、乾紙61が紙挟み部313、323でしごかれるときに乾紙61に生じる歪を弾性体のロール311、322が弾性変形することで吸収でき、乾紙は過剰な負荷を受けることなくスムーズに通過し、破断が防止される。
【0054】
また、双方の搬送ローラ対310、320において、上ローラ311、321と下ローラ312、322が、双方の回転軸心を含む平面Aが紙搬送方向上流側に所定の傾斜角度θで傾斜する位置関係を有するので、剛体のローラ311、322の外周面に接触する領域が紙搬送方向において長くなり、湾曲形状が強く癖付けられ、挟み部313、323で乾紙61に与えるしごき作用が強くなるので、カール矯正が容易に、確実に行える。
【0055】
デカール部300の配置位置は、紙搬送方向においてカッター装置60の下流側で、かつカレンダ部200の下流側が望ましい。上述したように、カッター装置60の下流域は連続運転可能領域であり、一時停止に起因する不必要な皺の発生等の不具合が生じず、カレンダ部200において平滑処理に起因するカールが発生することがあっても、デカール部300が最終仕上げ工程をなすことでカールのない紙を製造できる。
【0056】
以下に、本実施の形態おけるデカール処理の効果を示す。
図5は比較対照の通常の搬送ローラ対の配置を示しており、双方の搬送ローラ対は、上下方向位置を同じレベルで、ピッチを38mmに設定している。
図6は本実施の形態のモデルであり、上位の搬送ローラ対310と下位の搬送ローラ対320とを、紙挟み部313、323の位置を上下方向で9.7mm相違させ、紙搬送方向においてピッチ38mmで配置している。
【0057】
この
図5に示す構成と、
図6に示す構成とにおいてデカール処理を施した結果を
図8に示す。ここで、カール方向は、
図7に示すように、紙面の上方にカールすれば+で表示し、紙面の下方にカールすれば−で表示している。
【0058】
図8に示すように、普通紙の場合は、
図5の通常配置では、紙の先端において平均−14.0mmのカールが残り、紙の後端において平均11.7mmのカールが残る。これに対して、
図6に示す本実施の形態では、紙の先端において平均−5.3mmのカールとなり、紙の後端において平均−6.3mmのカールとなる。
【0059】
また、厚紙の場合は、
図5の通常配置では、紙の先端において平均−12.0mmのカールが残り、紙の後端において平均9.7mmのカールが残る。これに対して、
図6に示す本実施の形態では、紙の先端において平均−6.3mmのカールとなり、紙の後端において平均−4.7mmのカールとなる。
【0060】
よって、本実施の形態では顕著なデカール処理の効果を得ることができる。