特許第6860984号(P6860984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6860984脊髄小脳変性症における運動失調の治療剤の投与レジメン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860984
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】脊髄小脳変性症における運動失調の治療剤の投与レジメン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/427 20060101AFI20210412BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   A61K31/427ZMD
   A61P25/00
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-125029(P2016-125029)
(22)【出願日】2016年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-14198(P2017-14198A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2019年6月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-128174(P2015-128174)
(32)【優先日】2015年6月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104560
【氏名又は名称】キッセイ薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151231
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196807
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雅人
(72)【発明者】
【氏名】清水 義隆
(72)【発明者】
【氏名】山野 仁
(72)【発明者】
【氏名】清野 雄治
(72)【発明者】
【氏名】飯代 智之
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−010776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33−33/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1日1回投与されることを特徴とする、1日用量として1.6 mg〜3.2 mgのロバチレリン又は
フリー体換算値として1.6 mg〜3.2 mgのロバチレリンの薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、脊髄小脳変性症における運動失調の治療用医薬組成物。
【請求項2】
フリー体換算値として1.6 mg〜3.2 mgのロバチレリン三水和物を有効成分として含有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
1日用量として2.4 mgのロバチレリン又はフリー体換算値として2.4 mgのロバチレリンの
薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
フリー体換算値として2.4 mgのロバチレリン三水和物を有効成分として含有する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
脊髄小脳変性症における運動失調が、脊髄小脳変性症における小脳性運動失調である、請求項1〜4の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
ロバチレリン又はその薬理学的に許容される塩、及び少なくとも1つの医薬品添加物を含
有する経口剤である、請求項1〜5の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
1日1回用量として1.6 mg、2.4 mg若しくは3.2 mgのロバチレリン又はフリー体換算値として1.6 mg、2.4 mg若しくは3.2 mgのロバチレリンの薬理学的に許容される塩を有効成分として単一製剤中に含有する、脊髄小脳変性症における運動失調の治療用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の用法・用量で投与することにより、甲状腺ホルモンの上昇による副作用のリスクを低減し、かつ優れた脊髄小脳変性症における運動失調の改善効果を発揮する薬剤に関する。
【0002】
さらに詳しくは、1日1回投与されることを特徴とし、1日用量として1.6 mg〜3.2 mg
のロバチレリン又はフリー体換算値として1.6 mg〜3.2 mgのロバチレリンの薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、脊髄小脳変性症における運動失調の治療用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
脊髄小脳変性症(SCD)は、小脳、脊髄の神経核、及び/又は伝導路に病変の主座をも
ち、進行性の小脳性運動失調を主徴とする神経変性疾患の一つである。脊髄小脳変性症は、若年から高齢に至るまで幅広い年齢層で発症する疾患であり、例えば日本において、その患者数は約3.8万人(多系統萎縮症を含む)と推定され、神経・筋疾患の指定難病とし
て定められている。脊髄小脳変性症には様々な病型が存在し、孤発性と遺伝性に大別される。孤発性の脊髄小脳変性症には、多系統萎縮症(MSA)が含まれる。臨床症状及び病理
学的には、孤発性と遺伝性のいずれにおいても、小脳のみが萎縮することに起因し小脳性運動失調の症状を呈する病型(純粋小脳型脊髄小脳変性症)、並びに脳幹及び脊髄の萎縮も伴い、小脳性運動失調の症状に加え、錐体外路症状、末梢神経症状等も伴う病型(非純粋小脳型脊髄小脳変性症)が存在する。
【0004】
脊髄小脳変性症における運動失調の治療剤として、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)製剤が知られている。TRH製剤は、生体内作用時間が短く注射剤であるため、その投与には、頻繁な通院又は入院が必要である。また、TRHは、自発運動亢進、脊髄運動ニュ
ーロン興奮等の中枢作用に加え、下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)及びプロラク
チン(PRL)の分泌を促進するホルモン作用も知られている。そのため、TRH製剤の使用の際は、TRHのホルモン作用に起因する副作用にも注意が必要である。
【0005】
脊髄小脳変性症における運動失調の治療剤として、TRHアナログであるタルチレリン水
和物も知られている。タルチレリン水和物は、経口投与可能な薬剤であり、TRH製剤に比
べ作用時間も長いことが知られている(非特許文献1)。また、タルチレリン水和物の連続経口投与時の安全性及び薬物動態についての報告がある(非特許文献2)。当該文献において、2.5 mgのタルチレリン水和物の1日2回投与時、及び5 mgのタルチレリン水和物の1日1回投与時のホルモン値(TSH値、T値、及びT値)等に対する影響が報告されてい
る。第III相二重盲検比較試験においてタルチレリン水和物は、脊髄小脳変性症における
運動失調に対して、28週後の医師の主観評価である全般改善度においてプラセボとの有意差が認められたが、症状別改善度(運動失調症候)では有意な改善を示した項目が無かった(非特許文献3)。
【0006】
脊髄小脳変性症における運動失調に対する改善効果は、SARA (Scale for the assessment and rating of ataxia)を用いて評価することができる。SARAは2006年に報告された運動失調を評価するスケールであり、運動失調の評価スケールとしてその妥当性及び信頼性が認められている。しかしながら、これまでSARAを用いた臨床試験において脊髄小脳変性症における運動失調に対する改善効果が確認された薬剤は存在しない。
【0007】
そのため、甲状腺ホルモンの上昇による副作用のリスクを低減し、かつ優れた脊髄小脳
変性症における運動失調の改善効果を発揮する新たな薬剤が求められている。
【0008】
TRHアナログである、azetirelin、DN-1417、JTP-2942、MK-771、montirelin、posatirelin、及びRX-77368は、脳血管障害の改善、遷延性意識障害の改善、アルツハイマー病の
治療等を適応症として臨床試験が行われていた。しかしながら、これらの臨床開発はいずれも中止されている。このようにTRHアナログは、それらの様々なTRH様作用が着目され、様々な適応に臨床開発が行われていたが、ほとんどのTRHアナログの臨床開発が困難を極
めた。そのため、TRHアナログの有効性及び安全性を満たす用法・用量を見出すことには
困難が伴うと推察されていた。
【0009】
下記式(I)で表される、(4S,5S)−5−メチル−N−{(2S)−1−[(2R)−2−メチルピロリジン−1−イル]−1−オキソ−3−(1,3−チアゾール−4−イル)プロパン−2−イル}−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミド(一般名:ロバチレリン)が、TRHアナログとして記載されている(特許文献1)。
また、ロバチレリンは、脊髄小脳変性症の治療剤として知られている(特許文献2)。特許文献2には、モデル動物においてロバチレリンがタルチレリンに比べて30倍以上の優れた運動失調改善効果を示したこと、及びロバチレリンが高いバイオアベイラビリティー(BA)を有することも記載されている。しかしながら、一般に薬効及びBAが増大すれば、TRHアナログの有するホルモン作用も同様に増大することが予測される。そのため、甲状腺
ホルモンの上昇による副作用のリスクを低減し、かつ優れた脊髄小脳変性症における運動失調の改善効果を発揮するためのロバチレリンの用法・用量を見出すことは容易ではない。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第99/53941号
【特許文献2】特表2008-512344号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】平山恵造ら、「臨床医薬」、1997年、第13巻、第16号、p. 4133-4167
【非特許文献2】甲斐沼正ら、「臨床医薬」、1997年、第13巻、第10号、p. 2517-2532
【非特許文献3】金澤一郎ら、「臨床医薬」、1997年、第13巻、第16号、p.4169-4224
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、甲状腺ホルモンの上昇による副作用発現のリスクを低減し、かつ優れた脊髄小脳変性症における運動失調の治療用医薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述のように、TRHアナログとして唯一の脊髄小脳変性症における運動失調の治療剤と
して知られているタルチレリン水和物の用法・用量は、非特許文献2記載の安全性試験、用量反応探索試験等の結果、5 mgの1日2回経口投与と定められている。非特許文献2においても、1日1回投与より1日2回投与の方が、TSH、T3及びT4への影響が少ない傾向が示さ
れている。したがって、甲状腺ホルモンの上昇による副作用発現のリスクを考慮した場合、1日用量を複数回にわけてTRHアナログを投与する方が望ましいと示唆されていた。しかしながら、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、意外にもロバチレリンを脊髄小脳変性症における運動失調の治療に用いる場合、1日複数回投与に比
べ1日1回投与される場合の方が、甲状腺ホルモンの上昇への影響が低減することを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は、下記の〔1〕〜〔7〕等に関する。
〔1〕1日1回投与されることを特徴とする、1日用量として1.6 mg〜3.2 mgのロバチレ
リン又はフリー体換算値として1.6 mg〜3.2 mgのロバチレリンの薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、脊髄小脳変性症における運動失調の治療用医薬組成物。
〔2〕フリー体換算値として1.6 mg〜3.2 mgのロバチレリン三水和物を有効成分として含有する、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔3〕1日用量として2.4 mgのロバチレリン又はフリー体換算値として2.4 mgのロバチレ
リンの薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔4〕フリー体換算値として2.4 mgのロバチレリン三水和物を有効成分として含有する、前記〔3〕に記載の医薬組成物。
〔5〕脊髄小脳変性症における運動失調が、脊髄小脳変性症における小脳性運動失調である、前記〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の医薬組成物。
〔6〕ロバチレリン又はその薬理学的に許容される塩、及び少なくとも1つの医薬品添加
物を含有する経口剤である、前記〔1〕〜〔5〕の何れかに記載の医薬組成物。
〔7〕1日1回用量として1.6 mg、2.4 mg若しくは3.2 mgのロバチレリン又はフリー体換算値として1.6 mg、2.4 mg若しくは3.2 mgのロバチレリンの薬理学的に許容される塩を有効成分として単一製剤中に含有する、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の医薬組成物は、優れた脊髄小脳変性症における運動失調の改善効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面の簡単な説明中におけるロバチレリン三水和物の投与量については、特に他の記載が無い限り、フリー体換算値を表す。
【0017】
図1】各投与群のFTの血清中濃度(各8例の平均値)の推移を示す。横軸は、測定時期を示し、Day 1、Day 5及びDay 9は、治験薬投与開始から1日目、5日目及び9日目を示し、0〜16の数字は、朝食後投薬後の経過時間をそれぞれ示す。縦軸は、FT値(pg/mL)を示す。図中、黒四角(破線)は0.25 mgの1日2回投与群(0.25 mg/bid)、白丸(破線)は0.5 mgの1日1回投与群(0.5 mg/qd)、白四角(実線)は0.5 mgの1日2回投与群(0.5 mg/bid)、黒丸(実線)は1mgの1日1回投与群(1 mg/qd)の値をそれぞれ示す。点線は基準値(2.3又は4.3 pg/mL)をそれぞれ示す。
図2】各投与群のFTの血清中濃度(各8例の平均値)の推移を示す。横軸は、図1と同様に測定時期を示す。縦軸は、FT値(ng/dL)を示す。図中、黒四角(破線)は0.25 mgの1日2回投与群(0.25 mg/bid)、白丸(破線)は0.5 mgの1日1回投与群(0.5 mg/qd)、白四角(実線)は0.5 mgの1日2回投与群(0.5 mg/bid)、黒丸(実線)は1 mgの1日1回投与群(1 mg/qd)の値をそれぞれ示す。点線は基準値(0.9又は1.7 ng/dL)をそれぞれ示す。
図3】脊髄小脳変性症患者(各群122例〜124例の平均値)のSARA歩行スコアの変化量及びSARA立位スコアの変化量を示す。各棒グラフは左からプラセボ(Placebo)、ロバチレリン三水和物1.6 mg投与群(1.6 mg)及びロバチレリン三水和物2.4 mg投与群(2.4 mg)のSARA歩行スコア(Gait)の値、並びにプラセボ(Placebo)、ロバチレリン三水和物1.6 mg投与群(1.6 mg)及びロバチレリン三水和物2.4 mg投与群(2.4 mg)のSARA立位スコア(Stance)の値をそれぞれ示す。縦軸は、SARA歩行スコアの変化量又はSARA立位スコアの変化量をそれぞれ示す。
図4】各投与群のFTの血清中濃度(各123例〜126例の平均値)の推移を示す。横軸は測定時期を示し、4W〜28Wは治験薬投与開始から4週〜28週をそれぞれ示し、Endは最終評価時を示す。縦軸は、FT3値(pg/mL)を示す。図中、黒丸(実線)はロバチレリン三水和物1.6 mg投与群(1.6 mg)、白三角(実線)はロバチレリン三水和物2.4 mg投与群(2.4 mg)、白丸(破線)はプラセボ(Placebo)の値をそれぞれ示す。
図5】各投与群のFTの血清中濃度(各123例〜126例の平均値)の推移を示す。横軸は、測定時期を示し、4W〜28Wは、治験薬投与開始から4W〜28Wをそれぞれ示し、Endは最終評価時を示す。縦軸は、FT値(ng/dL)を示す。図中、黒丸(実線)はロバチレリン三水和物1.6 mg投与群(1.6 mg)、白三角(実線)はロバチレリン三水和物2.4 mg投与群(2.4 mg)、白丸(破線)はプラセボ(Placebo)の値をそれぞれ示す。
図6】タルチレリンからロバチレリン三水和物に切り替えた脊髄小脳変性症患者(各群19例又は23例の平均値)のSARA合計スコアの推移を示す。横軸は測定時期を示し、-4Wは治験薬投与開始前4週を示し、4W〜24Wは治験薬投与開始から4週〜24週をそれぞれ示し、Endは最終評価時を示す。縦軸は、SARA合計スコアの値を示す。図中、黒丸(実線)はロバチレリン三水和物1.6 mg投与群(1.6 mg)、白三角(実線)はロバチレリン三水和物2.4 mg投与群(2.4 mg)の値をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態についてより詳細に説明する。
【0019】
本発明において、各用語は、特に断らない限り、以下の意味を有する。
【0020】
「ロバチレリン」とは、上述のように、式(I)で表される化合物((4S,5S)−5−メチル−N−{(2S)−1−[(2R)−2−メチルピロリジン−1−イル]−1−オキソ−3−(1,3−チアゾール−4−イル)プロパン−2−イル}−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−カルボキサミド)をいう。ロバチレリン三水和物は、「ロバチレリン水和物」として日本における医薬品一般的名称(JAN)に登録されている。
【0021】
本発明において、ロバチレリンは、必要に応じて常法に従い、その薬理学的に許容される塩にすることもできる。例えば、アルカリ金属(リチウム、ナトリウムまたはカリウム等)、アルカリ土類金属(マグネシウムまたはカルシウム等)、アンモニウム、有機塩基およびアミノ酸との塩、または無機酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸または硫酸等)、および有機酸(酢酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、ベンゼンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸等)との塩が挙げられる。
【0022】
本発明において、「ロバチレリンの薬理学的に許容される塩」には、水、エタノール等の医薬品として許容される溶媒との溶媒和物も含まれる。ロバチレリンの薬理学的に許容される塩に含まれる水和物としては、ロバチレリン一水和物又は三水和物が好ましく、ロバチレリン三水和物が特に好ましい。なお、本発明において、ロバチレリンの薬理学的に許容される塩の投与量に関し、「フリー体換算値」とは、ロバチレリンとしての値を示す。
【0023】
本発明のロバチレリン又はその薬理学的に許容される塩は、公知の方法で製造することができる。例えば、本発明のロバチレリン及びロバチレリン三水和物は、WO 2006/028277(特表2008-512344)に記載の方法又はそれに準じた方法で製造することもできる。
【0024】
本発明の医薬組成物は、用法に応じて種々の剤型のものが使用される。このような剤型としては、例えば、錠剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤、及びカプセル剤を挙げることができ、経口投与される。
【0025】
本発明の医薬組成物は、ロバチレリン又はその薬理学的に許容される塩、及び少なくとも1つの医薬品添加物を用いて調製される。これら医薬組成物は、その剤型に応じ製剤学的に公知の手法により、適切な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤等の医薬品添加物と適宜混合、希釈又は溶解することにより調製することもできる。
【0026】
本発明において、「脊髄小脳変性症における運動失調」には、脊髄小脳変性症における小脳性運動失調等が含まれ、脊髄小脳変性症を伴わない二次性運動失調(例えば、脳血管障害、脳腫瘍等を伴う運動失調)は含まれない。
【0027】
本発明において、「純粋小脳型脊髄小脳変性症」とは、小脳のみが萎縮することに起因し小脳性運動失調の症状を呈する病型をいう。優性遺伝性の純粋小脳型脊髄小脳変性症は、Harding分類においてAutosomal dominant cerebellar ataxia (ADCA) type IIIともよ
ばれる。純粋小脳型脊髄小脳変性症には、遺伝性の脊髄小脳変性症であるSCA6、SCA31等
が含まれ、孤発性の皮質性小脳萎縮症(CCA)等も含まれる。
【0028】
本発明において、「非純粋小脳型脊髄小脳変性症」とは、脳幹及び脊髄の萎縮も伴い、小脳性運動失調の症状に加え、錐体外路症状、末梢神経症状等も伴う病型をいう。優性遺伝性の非純粋小脳型脊髄小脳変性症は、Harding分類においてADCA type Iともよばれ、ADCA type II又はADCA type IVとよばれることもある。
【0029】
本発明において、「脊髄小脳変性症における小脳性運動失調」とは、小脳が脊髄小脳変性症に伴い障害されることにより生じる運動失調をいい、例えば、小脳性運動失調における歩行障害、立位障害(ふらつき)等が含まれる。
【0030】
本発明の医薬組成物は、脊髄小脳変性症における運動失調に対して改善効果を示し、好ましくは、脊髄小脳変性症における小脳性運動失調に対して優れた改善効果を示す。また、一つの実施態様において、本発明の医薬組成物は、脊髄小脳変性症の運動失調における歩行障害又は立位障害に対して優れた改善効果を示し、好ましくは脊髄小脳変性症の運動失調における歩行障害及び立位障害からなる群から選択される1以上の障害に対して優れ
た改善効果を示す。
【0031】
本発明の医薬組成物の脊髄小脳変性症における運動失調に対する改善効果は、例えば、8つの評価項目(歩行、立位、座位、言語障害、指追い試験、鼻−指試験、手の回内・回
外運動、踵−すね試験)からなるSARA (Scale for the assessment and rating of ataxia)(例えば、Neurology 2006、66(11)、p.1717-1720参照)を用いて評価することもでき
る。また、SARAの評価項目の一つである「歩行」及び「立位」における改善効果を個別に解析することで、脊髄小脳変性症の治療において重要な歩行障害及び立位障害に対する改善効果を評価することもできる。
【0032】
本発明の有効成分の投与量は、患者の年齢、性別、体重、疾患の程度、遺伝的素因、副
作用の発現状況等により適宜決定される。成人に対する1日用量は、経口投与の場合、1.6
mg〜3.2 mg(フリー体換算値)の範囲で定めることができる。例えば、成人に対し、ロ
バチレリン三水和物の2.4 mg(フリー体換算値)を初回投与量とし、治療期には、ロバチレリン三水和物の2.4 mg(フリー体換算値)を経口投与し、医師の判断でロバチレリン三水和物1.6 mg〜3.2 mg(フリー体換算値)の範囲で適宜増減して使用することもできる。
【0033】
また、一つの実施態様において、成人に対する1日用量は、1.6 mg(フリー体換算値)
が初回投与量の場合は、症状及び副作用の発現状況等により、2.4 mg又は3.2 mg(フリー体換算値)へ適宜増量して使用することもでき、1.6 mg〜3.2 mg(フリー体換算値)の範囲で定めることもできる。
【0034】
本発明の医薬組成物の用法・用量としては、ロバチレリン又はその薬理学的に許容される塩を1.6 mg〜3.2 mg(フリー体換算値)を1日1回投与することができる。例えば、ロバチレリン三水和物をフリー体換算値として2.4 mgを1日1回経口投与することができ、ロバチレリン三水和物1.6 mg〜3.2 mg(フリー体換算値)の範囲で適宜増減して使用することもできる。
【0035】
また、一つの実施態様において、例えば、ロバチレリン三水和物をフリー体換算値として3.2 mgを1日1回経口投与することができ、ロバチレリン三水和物1.6 mg〜2.4 mg(フリー体換算値)の範囲で適宜減量して使用することもできる。
【0036】
また、一つの実施態様において、例えば、ロバチレリン三水和物をフリー体換算値として1.6 mgを1日1回経口投与することができ、ロバチレリン三水和物2.4 mg〜3.2 mg(フリー体換算値)の範囲で適宜増量して使用することもできる。
【0037】
本発明において、「甲状腺ホルモンの上昇による副作用」には、甲状腺ホルモン(トリヨードチロニン(T)及びチロキシン(T))の基準値を超えた上昇に起因する直接的又は間接的な副作用が含まれる。甲状腺ホルモンの上昇による副作用の具体的な事象としては、例えば、血圧上昇、心拍数増加、体重減少等が挙げられる。甲状腺ホルモンの上昇による副作用のリスクは、個々に反応性は異なるものの、通常、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、遊離T(FT)、遊離T(FT)等の血清中濃度を測定することにより推察する
ことができる。一般的に、FTの基準値は2.3〜4.3 pg/mLであり、FTの基準値は0.9〜1.7 ng/dLである。甲状腺ホルモンの上昇による副作用のリスクを低減するには、FT及び/又はFTがこれらの基準値を継続して超えない状態が好ましい。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明を実施例にもとづいてさらに詳細に説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。なお、実施例中におけるロバチレリン三水和物の投与量(用量)については、特に他の記載が無い限り、フリー体換算値を表す。実施例中における健康成人男性及び脊髄小脳変性症患者については、特に他の記載が無い限り、日本人であり、二次性に運動失調を呈する患者(例えば、脳血管障害、脳腫瘍等を伴う患者)は含まれていない。
【0039】
実施例1
健康成人男性を対象とした反復投与試験
1.試験方法
健康成人男性50例(各群8例及びプラセボ10例)を対象として、ロバチレリン三水和物0.25、0.5若しくは1.0 mg又はプラセボを1日1回、又はロバチレリン三水和物0.25、若しくは0.5 mg又はプラセボを1日2回、それぞれ朝食後又は夕食後に9日間反復経口投与した。
2.評価項目
FT、FT、TSH、及びプロラクチン(PRL)の血清中濃度(平均値)、並びに有害事象等を評価した。
3.結果
各投与群の1日目、5日目及び9日目のFT及びFTの血清中濃度(平均値)の推移を図1及び図2にそれぞれ示す。
FT値については、0.25 mgの1日2回投与群(0.25 mg/bid)の値の推移と0.5 mgの1日1回投与群(0.5 mg/qd)の値の推移を比べると、0.5 mg/qd群のFT値の方が全体的に低く推移した。また、0.5 mgの1日2回投与群(0.5 mg/bid)の値の推移と1 mgの1日1回投与群(1 mg/qd)の値の推移を比べると、1 mg/qd群のFT値の方が全体的に低く推移した。
FT値については、0.25 mgの1日2回投与群(0.25 mg/bid)の値の推移と0.5 mgの1日1回投与群(0.5 mg/qd)の値の推移を比べると、同等若しくは0.5 mg/qd群のFT値の方がやや低く推移した。また、0.5 mgの1日2回投与群(0.5 mg/bid)の値の推移と1 mgの1日1回投与群(1 mg/qd)の値の推移を比べると、1 mg/qd群のFT値の方が全体的に低く推移し、0.5 mgの1日2回投与群においては、5日目と9日目にFT値の基準値を上回る継続的な上昇が認められた。
【0040】
以上の解析から、1日用量を1日2回に分けて投与する用法に比べ、1日用量を1日1回で投与する用法により、ロバチレリン三水和物の反復投与による甲状腺ホルモンの上昇への影響が低減されることが示された。したがって、1日用量を1日1回で投与する用法により、
ロバチレリン三水和物の反復投与に伴う甲状腺ホルモンの上昇による副作用発現のリスクを低減できることが示された。
【0041】
実施例2
ヒトにおける薬物動態試験
健康成人男性48例(各群6例及びプラセボ12例)を対象として、ロバチレリン三水和物 0.1、0.3、1、2.5、5若しくは10 mg又はプラセボを空腹時に単回投与した。このときの未変化体のロバチレリンの薬物動態を解析した結果、0.1〜10 mgまでの用量範囲において、ロバチレリンのCmax(最高血漿中濃度)、AUC0-∞(0〜無限大時間までの血漿中濃度−時間曲線下面積)及びAe0-48(0〜48時間までの尿中累積排泄量)は線形性を示した。
【0042】
実施例1及び2の結果から、ロバチレリン又はその薬理学的に許容される塩の用法については、1日用量を1日2回に分けて投与する用法に比べ、1日1回で投与する用法の方が、
反復投与による甲状腺ホルモンの上昇による副作用のリスクを低減できることが推察された。
【0043】
実施例3
脊髄小脳変性症患者を対象とした臨床試験(第II相試験)
1.試験方法
脊髄小脳変性症患者225例を対象として、ロバチレリン三水和物 0.4、0.8、1.6若しく
は3.2 mg又はプラセボを1日1回、朝食後に24週間経口投与した(二重盲検法)。
2.有効性評価項目及び安全性評価項目
有効性評価項目は、SARA合計スコア変化量(検証期最終評価時のSARA合計スコア(検証期における最終観測値)−前観察期終了時のSARA合計スコア)等とし、安全性評価項目は、有害事象及び副作用の発現状況、生理学的検査(血圧、脈拍等)、内分泌学的検査(FT3、FT4等)等とした。
なお、SARA個別スコア((歩行(0〜8点)、立位(0〜6点)、坐位(0〜4点)、言語障害(0〜6点)、指追い試験(0〜4点)、鼻指試験(0〜4点)、手の回内・回外運動(0〜4点)、及び踵すね試験(0〜4点)(なお、いずれも0が正常である))の合計をSARA合計
スコアとした。
3.解析結果
(1)有効性
極度の外れ値を示した1例を除いた純粋小脳型脊髄小脳変性症患者(各群23〜28例、合
計126例)のSARA合計スコア変化量(平均値)において、用量依存的な改善が認められ(
表1)、ロバチレリン三水和物 1.6 mg以上の用量において、プラセボに比して優れた運
動失調の改善効果が示唆された。
【0044】
【表1】
(2)安全性
Fisherの直接確率計算法により実薬群とプラセボ群の比較を行った結果、ロバチレリン三水和物 3.2 mg投与群において、副作用発現率に有意差が認められた(P=0.002)。FT3
及びFT4の値は、ロバチレリン三水和物 3.2 mg投与群では、基準値上限をわずかに超える上昇が継続して認められた。中止率は、プラセボが15.6%であり、1.6 mg投与群が17.8%であり、3.2 mg投与群が28.9%であった。
【0045】
以上より、脊髄小脳変性症の患者は長期にわたる薬剤の服用が必要であるので、3.2 mgは、運動失調の改善効果は認められるものの、甲状腺ホルモンの推移及び副作用発現状況より、初回投与量(開始用量)としては過量と考えられ、治療期における臨床使用可能な最大用量であると考えられた。また、ロバチレリン三水和物 0.4〜0.8 mgの用量は、安全性は認められるものの、脊髄小脳変性症における運動失調の改善効果が弱いことが示された。これらから、脊髄小脳変性症患者における臨床推奨用量は、1.6 mgと考えられた。
【0046】
実施例4
純粋小脳型脊髄小脳変性症患者を対象とした臨床試験(第III相試験)
1.試験方法
運動失調を有する脊髄小脳変性症患者であって、純粋小脳型(SCA6、SCA31又は皮質性
小脳萎縮症(CCA))の患者を対象として、ロバチレリン三水和物 1.6若しくは2.4 mg、
又はプラセボを1日1回、朝食後に28週間経口投与した(二重盲検法、1.6 mg投与群:124
例、2.4 mg投与群:122例、プラセボ:123例)。
本試験においては運動失調に対するロバチレリン三水和物の有効性を適切に評価するため、純粋小脳型の脊髄小脳変性症患者のうち、SARA歩行スコアが2点以上6点以下であり、SARA合計スコアが6点以上の患者を対象とした。
2.有効性評価項目及び安全性評価項目
実施例3と同様の項目を有効性及び安全性の評価項目とした。脊髄小脳変性症は自然悪化していく疾患であるため、悪化を遅延させることも治療において重要である。そのため、0週時と比較してSARAスコアが悪化した例を悪化例とし、SARA合計スコア又はSARA個別
スコアにおける悪化率(悪化例/全例数)を算出した。
3.結果
(1)有効性
2.4 mg投与群において、薬物投与前に比べSARA合計スコアの改善が認められた(SARA合計スコア変化量=-1.22)。それに加え、2.4 mg投与群において、SARA個別スコアの解析
から、ロバチレリンは特に歩行障害及び立位障害(ふらつき)に対して改善効果を示すことが認められた(図3)。これらの改善効果は、筋力が低下しプラセボ効果が生じにくい65歳以上の高齢者においてより鮮明であった(SARA合計スコア変化量=-1.39、SARA歩行
スコア変化量=-0.19、SARA立位スコア変化量=-0.54)。また、SARA合計スコアにおける、プラセボの悪化率は30.9%であるのに対し、2.4 mg投与群の悪化率は23.8%であった。
一方、1.6 mg投与群において、薬物投与前に比べSARA合計スコアの改善が認められたも
のの(SARA合計スコア変化量=-0.75)、プラセボに比してSARA合計スコアの改善は認め
られなかった。また、プラセボに比してSARA歩行スコア及びSARA立位スコアの改善も認められなかった(図3)。
(2)安全性
FT3及びFT4の値は、1.6 mg投与群及び 2.4 mg投与群では、投与後4週目に正常範囲上限まで上昇したが、それ以後、さらなる上昇は認められなかった(図4及び図5)。中止率は、プラセボが4.9%であり、1.6 mg投与群が16.0%であり、2.4 mg投与群が19.8%であ
った。
甲状腺ホルモンの推移及び副作用発現状況より、ロバチレリン三水和物1.6 mg及び 2.4
mgは、臨床的に問題となる事象は認められず、長期にわたる服用が可能な用量と考えら
れた。
【0047】
上記第III相試験の結果、ロバチレリン三水和物 2.4 mgは、甲状腺ホルモンの推移及び副作用発現状況より、長期間にわたる服用が可能であり、副作用のリスクを考慮した運動失調(特に歩行障害)の改善によるベネフィットを最大化できる用量であることがはじめて示された。
一方、ロバチレリン三水和物 1.6 mgは安全性が認められ、1.6 mg投与群には十分な運
動失調の改善効果が認められた患者もいるものの、予想外に歩行障害及び立位障害に対する十分な改善効果は示されなかった。
【0048】
実施例5
純粋小脳型脊髄小脳変性症患者を対象とした長期継続投与試験
1.試験方法
第III相試験(実施例4)を完了した患者を対象として、ロバチレリン三水和物1.6 mg
又は2.4 mgを1日1回、52週間経口投与した(非盲検並行群間比較試験)。
2.有効性評価項目及び安全性評価項目
実施例4と同様の項目を有効性及び安全性の評価項目とし、同様にSARA合計スコア又はSARA個別スコアにおける悪化率(悪化例/全例数)を算出した。
3.解析結果
実施例4(第III相試験)の2.4 mg投与群の患者であって、その後もロバチレリン三水
和物2.4 mgが投与された患者(投与期間:計52週)における運動失調の改善効果を解析した。52週間投与が完了した患者(81例)において、52週時のSARA合計スコア変化量は-1.41を示し、ロバチレリン三水和物2.4 mgの長期的な運動失調の改善効果が認められた。ま
た、同患者群において、SARA合計スコアにおける52週時の悪化率は21.0%であり、SARA個別スコア(歩行)における52週時の悪化率は9.9%であった。
【0049】
脊髄小脳変性症は自然悪化していく難病であるが、上記の通りロバチレリンが長期継続投与された患者において、SARA合計スコアにおける52週時の悪化率は21.0%に留まっていた。したがって、ロバチレリンを投与することにより、脊髄小脳変性症における運動失調の悪化を遅延させることができる可能性が示唆された。
【0050】
実施例6
脊髄小脳変性症患者を対象とした試験(既存薬からロバチレリンへの切り替え試験)
1.試験方法
脊髄小脳変性症患者を対象としたロバチレリンの臨床試験に参加歴のある脊髄小脳変性症患者のうち、SARA歩行スコアが2点以上6点以下であり、SARA合計スコアが6点以上の患
者を対象にした。前記患者に、ロバチレリン三水和物 1.6又は2.4 mgを1日1回、朝食後に24週間経口投与した(無作為化非盲検並行群間比較試験)。
なお、治療期開始前4週間を前観察期とし、前観察期開始前より脊髄小脳変性症の既存
薬であるタルチレリン又はプロチレリン製剤(TRH製剤)を服用していた場合は、その用
法・用量を変更せずに前観察期終了時までその薬剤を投与した。
2.有効性評価項目及び安全性評価項目
実施例4と同様の項目を有効性及び安全性の評価項目とした。
3.解析結果
前観察期開始前よりタルチレリンを服用していた純粋小脳型脊髄小脳変性症患者(切替群)におけるロバチレリン三水和物の有効性を解析した。ロバチレリン三水和物の改善効果は、投与後4週から早期に認められ、ロバチレリン三水和物1.6 又は2.4 mgが投与され
た切替群において、ロバチレリン三水和物の投与前(タルチレリンでの治療期)に比して、有意なSARA合計スコアの改善も認められた(1.6 mg切替群のエンドポイントでのSARA合計スコア変化量=-1.34(P<0.01)、2.4 mg切替群のエンドポイントでのSARA合計スコア変化量=-1.35(P<0.01))(図6)。
【0051】
脊髄小脳変性症は神経・筋疾患の指定難病として定められた難病であり、その既存の薬剤としてはTRH製剤及びタルチレリンしか存在せず、脊髄小脳変性症の新たな治療剤が求
められていた。実施例6より、ロバチレリンは、脊髄小脳変性症における運動失調の治療剤として、タルチレリンを上回る改善効果を有することが示唆された。
【0052】
これまで運動失調の評価スケールであるSARAを用いた臨床試験において、脊髄小脳変性症における運動失調に対する改善効果が確認された薬剤は存在しなかった。そのような状況下、SARAにより脊髄小脳変性症における運動失調に対するロバチレリンの改善効果が示された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の医薬組成物は、脊髄小脳変性症における運動失調の治療剤として極めて有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6