【文献】
Journal of Semiconductors,2010年,Vol.31, No.8,pp.083005-1〜083005-3,ISSN 1674-4926
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、前述の材料からなるMn−Zn−Ma−O系記録層のように、複数種の元素を含有する層をスパッタリング法で形成する方法の一つとして、特許文献1に開示されているように、それぞれの元素からなる複数のターゲットをスパッタする多元スパッタ法が挙げられる。他の方法として、複数の元素を含有する1枚の複合ターゲットを単一ターゲットとしてスパッタリングする方法が挙げられる。ここで、多元スパッタ法は、装置が大型化してコストアップ要因になる上、組成ずれが生じやすいという欠点があるため、量産化の観点では1枚の複合ターゲットを用いて、DC(直流)スパッタリング法を用いる方が好ましい。
【0008】
前掲の特許文献1は、情報記録媒体作製用のスパッタリングターゲットとして、Mnの酸化物を含み、上記Mnの酸化物の一部または全部は、Mnの価数が+4未満の酸化物状態で存在するターゲットを提案し、このターゲットにおいて、上記酸化物状態で存在するMnの酸化物は、熱分解しないMn
3O
4であることが好ましいことが提案されている。さらに、このターゲットは、Mn以外の金属または該金属の酸化物をさらに含んでもよく、上記金属は、Sn、Zn、Bi、Ge、Co、W、CuおよびAlからなる群より選ばれる1種以上であることが提案されている。さらに、Zr、Al、Ta、Mo、Si、Mg、Hf、V、Ti、Sb及びTeのうち、任意の金属元素が添加されてもよいことが提案されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1は、具体的なMn−Zn−O系の複合スパッタリングターゲットについては言及していない。Mnと、Znと、元素X(ただし、XはWまたはMoである)と、Oとを成分組成に含むMn−Zn−O系の複合スパッタリングターゲットは、これまでのところ確立されていないのである。
【0010】
そこで、本発明は、元素X(ただし、XはWまたはMoである)を含むMn−Zn−O系スパッタリングターゲット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記諸目的を達成すべく鋭意検討を行い、酸化マンガン粉末、酸化亜鉛粉末、酸化タングステン粉末を原料として、Mn−Zn−W−O系スパッタリングターゲットの作製を試みた。また、上記Mn−Zn−W−O系スパッタリングターゲットにおいて、酸化タングステン粉末に替えて、酸化モリブデン粉末を原料として、Mn−Zn−Mo−O系スパッタリングターゲットの作製も試みた。これらのスパッタリングターゲットをDCスパッタリングに供したところ、異常放電(「アーキング」とも呼ばれる。)が発生することが判明した。そこで、原料を全て上記元素の金属粉末に代えて、Mn−Zn−W−O系スパッタリングターゲット及びMn−Zn−Mo−O系スパッタリングターゲットの作製をそれぞれ試みた。しかしながら、金属亜鉛の融点は酸化亜鉛に比べて低いため、スパッタリングターゲットの作製自体が困難であることが分かった。
【0012】
そこで本発明者らは、原料粉末として酸化物粉末及び金属粉末を組み合わせてMn−Zn−O系スパッタリングターゲットを作製することを着想し、得られたターゲットの被スパッタリング面の算術平均粗さRaを1.5μm以下、または最大高さRyを10μm以下とすることにより、DCスパッタリングに供しても異常放電が発生しないことを本発明者らは知見し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記諸課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> Mnと、Znと、Oと、元素X(ただし、XはWおよびMoからなる群より選択される1種単独または2種の元素である)と、を成分組成に含むMn−Zn−O系スパッタリングターゲットであって、
前記ターゲットの被スパッタリング面の算術平均粗さが1.5μm以下、または最大高さRyが10μm以下であることを特徴とするスパッタリングターゲットである。
該<1>に記載のMn−Zn−O系スパッタリングターゲットは、DCスパッタリングに供することができるMn−Zn−O系スパッタリングターゲットである。そして、該<1>に記載のMn−Zn−O系スパッタリングターゲットによれば、異常放電を発生させることなくDCスパッタリングを行うことができる。
【0014】
<2> Mnと、Znと、前記元素Xとの合計100原子%に対してMn:4〜40原子%、Zn:15〜60原子%、前記元素X:5〜40原子%である、前記<1>に記載のスパッタリングターゲットである。
【0015】
<3> Cu、Mg、Ag、Ru、Ni、Zr、Sn、Bi、Ge、Co、Al、In、Pd、Ga、Te、V、Si、Ta、Cr、Tbからなる群より選択される1種単独又は2種以上の元素を前記成分組成に更に含む、前記<1>または<2>に記載のスパッタリングターゲットである。
【0016】
<4> 前記Cu、Mg、Ag、Ru、Ni、Zr、Sn、Bi、Ge、Co、Al、In、Pd、Ga、Te、V、Si、Ta、Cr、Tbからなる群より選択される1種単独又は2種以上の元素の含有率は、前記スパッタリングターゲットの構成元素のうち、Oを除いた合計100原子%に対して8〜70原子%である、前記<3>に記載のスパッタリングターゲットである。
【0017】
<5> 前記<1>に記載のMn−Zn−O系スパッタリングターゲットを製造する方法であって、
マンガン酸化物粉末と、亜鉛酸化物粉末と、前記元素Xを成分含有する金属粉末とを、12時間以上湿式混合する混合工程と、
該混合工程の後、前記混合粉末を700℃以上の温度で焼結する焼結工程と、
該焼結工程の後、前記ターゲットの被スパッタリング面を平滑にする仕上げ加工工程と、を含むことを特徴とする製造方法である。
該<5>に記載の製造方法によれば、DCスパッタリングに供することが可能なMn−Zn−O系スパッタリングターゲットを製造することができる。そして、該<5>に記載の方法により製造されたMn−Zn−O系スパッタリングターゲットにより、異常放電を発生させることなくDCスパッタリングを行うことができる。
【0018】
<6> 前記混合粉末は、Cu、Mg、Ag、Ru、Ni、Zr、Sn、Bi、Ge、Co、Al、In、Pd、Ga、Te、V、Si、Ta、Cr、Tbからなる群より選択される1種単独又は2種以上の元素の単体又は化合物からなる粉末を更に含む、前記<5>に記載の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、DCスパッタリングに供することが可能なMn−Zn−O系スパッタリングターゲット及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(Mn−Zn−O系スパッタリングターゲット)
本発明のMn−Zn−O系スパッタリングターゲットは、Mnと、Znと、元素Xと、Oとを成分組成に含むMn−Zn−O系スパッタリングターゲットである。以下、本発明のMn−Zn−O系スパッタリングターゲットを単に「ターゲット」と称し、本発明に従うターゲットを詳細に説明する。なお、元素XはWおよびMoからなる群より選択される1種単独または2種の元素であり、以下、単に「(元素)XはWまたはMoである」と記載する。
【0022】
<ターゲット>
本発明の一実施形態に従うターゲットは、Mnと、Znと、元素Xと、Oとを成分組成に含み、さらに、必要に応じて、その他の成分組成を含む。
【0023】
<<元素X>>
前述のとおり、元素XはWまたはMoである。すなわち、元素XはWの1種単独からなることができ、元素XはMoの1種単独からなることができる。また、元素XはWおよびMoの2種の元素からなることもできる。ここで、元素XがWおよびMoの2種の元素からなるとは、ターゲットの成分組成にWおよびMoが共に含まれることを意味する。
【0024】
<<算術平均粗さRa及び平均高さRy>>
本実施形態に従うターゲットは、その被スパッタリング面の算術平均粗さRaが1.5μm以下、または最大高さRyが10μm以下であることが肝要である。後述する実施例に示す様に、本発明者らによる検討の結果、ターゲットの被スパッタリング面の算術平均粗さRaが1.5μm以下、または最大高さRyが10μm以下であれば、DCスパッタリング時に異常放電が発生しないことが判明した。
【0025】
なお、本発明において「算術平均粗さRa」とは、JIS B0601(1994)に基づく算術平均粗さ(Ra)(単位:μm)である。また、本発明において「最大高さ(Ry)」とは、JIS B0601(1994)に基づく最大高さ(Ry)(単位:μm)である。
【0026】
このように、本実施形態に従うスパッタリングターゲットは、DCスパッタリングに供することができるMn−Zn−O系スパッタリングターゲットであり、異常放電を発生させることなくDCスパッタリングを行うことができる。また、本実施形態に従うターゲットは、光情報記録媒体の記録層の形成に供して特に好適であるが、用途が何ら限定されるものではない。
【0027】
<<成分比>>
ここで、本実施形態に従うターゲットの成分比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Mnと、Znと、元素Xとの合計100原子%に対してMn:4〜40原子%、Zn:15〜60原子%、元素X:5〜40原子%とすることができる。
【0028】
<<その他の成分>>
本実施形態に従うターゲットには、必要に応じて他の金属元素がさらに含まれていてもよい。これら金属元素を適宜含有させることで、本実施形態に従うターゲットを例えば情報記録媒体の記録層形成に供する場合に、記録層の透過率、反射率及び記録感度を変化させて、多層構造の記録層とすることができる。この目的のために、本実施形態に従うターゲットは、Cu、Mg、Ag、Ru、Ni、Zr、Sn、Bi、Ge、Co、Al、In、Pd、Ga、Te、V、Si、Ta、Cr、Tbからなる群より選択される1種単独又は2種以上の元素を成分組成に更に含むことが好ましい。
【0029】
−その他の成分の成分比−
上記Cu、Mg、Ag、Ru、Ni、Zr、Sn、Bi、Ge、Co、Al、In、Pd、Ga、Te、V、Si、Ta、Cr、Tbからなる群より選択される1種単独又は2種以上の元素の含有率は、スパッタリングターゲットの構成元素のうち、O(酸素)を除いた合計100原子%に対して8〜70原子%とすることができ、この範囲で用途に応じて適宜選択することができる。
【0030】
なお、本実施形態に従うターゲットの形状は何ら限定されることはなく、円盤状、円筒状、四角形板状、長方形板状、正方形板状など、任意の形状とすることができ、ターゲットの用途に応じて適宜選択することができる。また、ターゲットの幅及び奥行きの大きさ(円形の場合には直径)についても、mmオーダー〜mオーダー程度の範囲で、ターゲットの用途に応じて適宜選択することができる。例えばターゲットが円形の場合、一般的には直径50mm〜300mm程度である。厚みについても同様であるが、一般的には1mm〜20mm程度である。
【0031】
<スパッタリングターゲットの製造方法>
次に、
図1を用いて、前述の本発明の一実施形態に従うターゲットの製造方法を説明する。本発明の一実施形態に従うターゲットの製造方法は、混合工程(S10)と、焼結工程(S20)と、仕上げ加工工程(S30)と、を含み、さらに、必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。
【0032】
<<混合工程(S10)>>
混合工程(S10)は、マンガン酸化物粉末と、亜鉛酸化物粉末と、元素Xを成分含有する金属粉末とを含む混合粉末を、12時間以上湿式混合する工程である。
湿式混合の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば従来公知のボールミル装置を用いた湿式混合方法、などが挙げられる。本工程で混合する混合粉末及び混合条件を以下に説明する。
【0033】
混合粉末は、マンガン酸化物粉末と、亜鉛酸化物粉末と、元素Xを成分含有する金属粉末とを含み、必要に応じて、その他の粉末を含んでもよい。
【0034】
−マンガン酸化物粉末−
マンガン酸化物粉末としては、目的に応じて適宜選択することができ、Mn
3O
4(酸化マンガン(II,III))及びMn
2O
3(酸化マンガン(III))の他、MnO、MnO
2、MnO
3及びMn
2O
7などMn
3O
4、Mn
2O
3、などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、Mn
3O
4粉末がより好ましい。焼結温度と融点の関係のためである。
なお、マンガン酸化物粉末の平均粒径としては、目的に応じて適宜選択することができる。Mn
3O
4粉末の平均粒径としては、市販の3μm〜7μm程度とすることができる。
【0035】
−亜鉛酸化物粉末−
亜鉛酸化物粉末としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化亜鉛(ZnO)粉末、過酸化亜鉛(ZnO
2)粉末、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ZnO粉末がより好ましい。焼結温度と融点の関係のためである。
なお、亜鉛酸化物粉末の平均粒径としては、目的に応じて適宜選択することができる。また、ZnO粉末の平均粒径としては、市販の1μm〜3μm程度とすることができる。
【0036】
−元素Xを成分含有する金属粉末−
元素Xを成分含有する金属粉末としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Wの単体からなる金属タングステン粉末、Moの単体からなる金属モリブデン粉末、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。XがW及びMoである場合には、金属タングステン粉末及び金属モリブデン粉末を共に用いる。
なお、元素Xを成分含有する金属粉末の平均粒径としては、目的に応じて適宜選択することができる。金属タングステン粉末の平均粒径としては、市販の2μm〜5μm程度とすることができる。また、金属モリブデン粉末の平均粒径としては、市販の1μm〜5μm程度とすることができる。
【0037】
−その他の粉末−
その他の粉末としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Cu、Mg、Ag、Ru、Ni、Zr、Sn、Bi、Ge、Co、Al、In、Pd、Ga、Te、V、Si、Ta、Cr、Tbからなる群より選択される1種単独又は2種以上の元素の単体又は化合物からなる粉末、などが挙げられる。ここで、製造するターゲットの所望の目的に応じて、かかる粉末を混合粉末に含ませてもよい。
【0038】
−混合時間−
ここで、混合粉末を12時間以上湿式混合することが本実施形態において肝要である。混合時間を12時間以上とすることにより、十分に混合粉末を混合することができるので、焼結中の酸化マンガンの固相反応を促進して、焼結後の酸化マンガン結晶相の残留を抑制することができる。また、上記範囲の中でも、混合時間を16時間以上とすることが好ましく、20時間以上とすることがより好ましく、24時間以上とすることが最も好ましい。24時間混合すると、混合の効果が飽和するものの、24時間以上混合しても構わず、上限を意図するものではないが、工業的な生産性を考慮し、上限を168時間と設定することができる。
【0039】
<<焼結工程(S20)>>
焼結工程(S20)は、混合工程(S10)の後に行う工程であって、混合粉末を700℃以上の温度で焼結する焼結工程である。
【0040】
−焼結−
焼結法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、不活性ガス雰囲気中でのホットプレス、熱間等方圧加圧法(HIP法;Hot Isostatic Pressing)、などが挙げられる。
【0041】
ここで、混合粉末を700℃以上の温度で焼結することが、本実施形態において肝要である。焼結温度を700℃以上とすることにより、焼結後の酸化マンガン結晶相の残留を抑制することができる。
【0042】
なお、焼結時間は特に限定されず、適宜選択することが可能であり、一般的に行われる1時間〜6時間程度の焼結時間とすればよい。
【0043】
<<仕上げ加工工程(S30)>>
仕上げ加工工程(S30)は、焼結工程(S20)の後に行う工程であって、ターゲットの被スパッタリング面を平滑にする工程である。
【0044】
上記仕上げ加工工程は、平面研削機を用いて行うことができる。具体的には、ダイアモンド砥石または砥粒砥石を用いて、研削を行う。その後、スコッチブライト等の研磨用パッドにて仕上げ加工を行い、ターゲットの被スパッタリング面を平滑にする。
【0045】
以上の工程を経て、ターゲットの被スパッタリング面の算術平均粗さRaが1.5μm以下、または最大高さRyが10μm以下であるMn−Zn−O系スパッタリングターゲットを製造することができる。
【0046】
<<その他の工程>>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、混合粉末の成形工程、などが挙げられる。
【0047】
−成形工程−
なお、上記混合粉末の成形工程は、本発明において必須ではなく、ターゲットの形状を成形するために行われることがある。
【実施例1】
【0048】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0049】
以下のとおり、元素XとしてWを用い、本発明に従うターゲットとして実施例1−1〜1−2を作製し、対照用のターゲットとして比較例1−1〜1−2を作製して、異常放電の回数を評価した。
(実施例1−1)
原料粉末として、以下の粉末を用意した。
純度:99.9%以上、平均粒径:5μm、Mn
3O
4粉末
純度:99.9%以上、平均粒径:1.4μm、ZnO粉末
純度:99.9%以上、平均粒径:2μm、W粉末
各金属元素の割合を、Mn:Zn:W=20:50:30(原子%)となるように、上記Mn
3O
4粉末、ZnO粉末及びW粉末を秤量した。秤量した各原料粉末と、各原料粉末の合計重量の3倍のジルコニアボール(直径5mm)と、アルコールとをポリ容器に入れ、ボールミル装置にて、湿式混合を24時間行った。混合粉末を乾燥後、目開き500μmのふるいにかけた。次いで、焼結温度:900℃、焼結時間:2時間、圧力:200kgf/cm
2、不活性ガス雰囲気中でホットプレスを行った。続いて、焼成により得られたターゲットの表面を平面研削機により、算術平均粗さRaが0.5μm、最大高さRyが4μmとなるように仕上げ加工を行った。ここで、上記算術平均粗さRa及び最大高さRyの値は、東京精密株式会社製サーフコム480Aを用いて測定したものである。最後に、無酸素銅製のバッキングプレートにInはんだでボンディングを行って、実施例1−1に係るターゲットを作製した。
【0050】
(実施例1−2)
実施例1−1と同様にターゲットを作製した。ただし、ターゲットの被スパッタリング面の仕上げ加工は、砥粒サイズを変更することにより、表面の算術平均粗さRaが1.5μm、最大高さRyが10μmとなるように行い、実施例1−2に係るターゲットを作製した。その他の条件は実施例1−1と全て同じである。
【0051】
(比較例1−1)
実施例1−1と同様にターゲットを作製した。ただし、ターゲットの被スパッタリング面の仕上げ加工は、砥粒サイズを変更することにより、表面の算術平均粗さRaが1.6μm、最大高さRyが12μmとなるように行い、比較例1−1に係るターゲットを作製した。その他の条件は実施例1−1と全て同じである。
【0052】
(比較例1−2)
実施例1−1と同様にターゲットを作製した。ただし、ターゲットの被スパッタリング面の仕上げ加工は、砥粒サイズを変更することにより、表面の算術平均粗さRaが1.6μm、最大高さRyが12μmとなるように行い、比較例1−2に係るターゲットを作製した。その他の条件は実施例1−1と全て同じである。
【0053】
<異常放電の発生回数の評価>
以上の実施例1−1〜1−2、及び比較例1−1〜1−2に係るターゲットについて、異常放電の発生回数の評価を行った。具体的には、実施例1−1〜1−2、及び比較例1−1〜1−2に係るターゲットをスパッタリング装置に取り付け、それぞれDCスパッタリングを行った。すなわち、スパッタリング装置内を1×10
−4Pa以下まで真空排気し、ArガスとO
2ガスを導入し、装置内圧力を0.3Paとした。酸素の分圧([O
2]/[Ar+O
2])は、70%とした。DC電源にて電力5W/cm
2を印加して、30分間スパッタリングを行い、アーキングカウンターによりスパッタリング中の異常放電の発生回数を計測した。なお、放電直後の異常放電は除外した。得られた結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1から、元素XがWの場合、ターゲットの被スパッタリング面の算術平均粗さRaが1.5μm以下、または最大高さRyが10μm以下を満足する実施例1−1、1−2に係るターゲットは、異常放電が発生した回数は0回であり、異常放電を発生させることなくスパッタリングできることが分かる。これに対して、ターゲットの被スパッタリング面の算術平均粗さRaが1.5μmを超えているか、あるいは最大高さRyが10μmを超えている比較例1−1及び1−2の場合、異常放電が少なくとも30回発生することが分かる。
【実施例2】
【0056】
以下のとおり、元素XとしてMoを用い、本発明に従うターゲットとして実施例2−1〜2−2を作製し、対照用のターゲットとして比較例2−1〜2−2を作製し、異常放電の有無を評価した。
(実施例2−1)
原料粉末として、以下の粉末を用意した。
純度:99.9%以上、平均粒径:5μm、Mn
3O
4粉末
純度:99.9%以上、平均粒径:1.4μm、ZnO粉末
純度:99.9%以上、平均粒径:2μm、Mo粉末
各金属元素の割合を、Mn:Zn:Mo=20:50:30(原子%)となるように、上記Mn
3O
4粉末、ZnO粉末及びW粉末を秤量した。秤量した各原料粉末と、各原料粉末の合計重量の3倍のジルコニアボール(直径5mm)と、アルコールとをポリ容器に入れ、ボールミル装置にて、湿式混合を24時間行った。混合粉末を乾燥後、目開き500μmのふるいにかけた。次いで、焼結温度:900℃、焼結時間:2時間、圧力:200kgf/cm
2、不活性ガス雰囲気中でホットプレスを行った。続いて、焼成により得られたターゲットの表面を平面研削機により、算術平均粗さRaが0.5μm、最大高さRyが4μmとなるように仕上げ加工を行った。ここで、上記算術平均粗さRa及び最大高さRyは、東京精密株式会社製サーフコム480Aを用いて測定した。最後に、無酸素銅製のバッキングプレートにInはんだでボンディングを行って、実施例2−1に係るターゲットを作製した。
【0057】
(実施例2−2)
実施例2−1と同様にターゲットを作製した。ただし、ターゲットの被スパッタリング面の仕上げ加工は、砥粒サイズを変更することにより、表面の算術平均粗さRaが1.5μm、最大高さRyが10μmとなるように行い、実施例2−2に係るターゲットを作製した。その他の条件は実施例2−1と全て同じである。
【0058】
(比較例2−1)
実施例2−1と同様にターゲットを作製した。ただし、ターゲットの被スパッタリング面の仕上げ加工は、砥粒サイズを変更することにより、表面の算術平均粗さRaが1.6μm、最大高さRyが12μmとなるように行い、比較例2−1に係るターゲットを作製した。その他の条件は実施例2−1と全て同じである。
【0059】
(比較例2−2)
実施例2−1と同様にターゲットを作製した。ただし、ターゲットの被スパッタリング面の仕上げ加工は、砥粒サイズを変更することにより、表面の算術平均粗さRaが1.6μm、最大高さRyが12μmとなるように行い、比較例2−2に係るターゲットを作製した。その他の条件は実施例2−1と全て同じである。
【0060】
<異常放電の発生回数の評価>
以上の実施例2−1〜2−2、及び比較例2−1〜2−2に係るターゲットについて、異常放電の発生回数の評価を行った。具体的には、実施例2−1〜2−2、及び比較例2−1〜2−2に係るターゲットをスパッタリング装置に取り付け、それぞれDCスパッタリングを行った。すなわち、スパッタリング装置内を1×10
−4Pa以下まで真空排気し、ArガスとO
2ガスを導入し、装置内圧力を0.3Paとした。酸素の分圧([O
2]/[Ar+O
2])は、70%とした。DC電源にて電力5W/cm
2を印加して、30分間スパッタリングを行い、アーキングカウンターによりスパッタリング中の異常放電の発生回数を計測した。なお、放電直後の異常放電は除外した。得られた結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表2から、元素XがWの場合、ターゲットの被スパッタリング面の算術平均粗さRaが1.5μm以下、または最大高さRyが10μm以下を満足する実施例2−1、2−2に係るターゲットは、異常放電が発生した回数は0回であり、異常放電を発生させることなくスパッタリングできることが分かる。これに対して、ターゲットの被スパッタリング面の算術平均粗さRaが1.5μmを超えているか、あるいは最大高さRyが10μmを超えている比較例2−1、2−2の場合、異常放電が少なくとも20回発生することが分かる。