(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図15は、従来のシート状の複合材料100の概略構成図である。
図16は、従来のシート状の複合材料100の概略断面図である。
図17は、
図15の領域Aの拡大断面図である。シート状の複合材料100は、
図15、
図16及び
図17に示すように、強化繊維100fに樹脂を含浸させたものである。複合材料100は、
図15、
図16及び
図17では、4層の複合材料の層が積層されたものが例示されている。複合材料100は、
図16に示すように、4本の繊維層の中心軸100a、100b、100c及び100dを有する。4本の繊維層の中心軸100a、100b、100c及び100dは、面内方向に沿って延びている。複合材料100は、面内方向には強化繊維100fにより強度が高められているが、面外方向には強度が高められていない。そのため、複合材料100は、
図15及び
図17に示すように、層間に層間破壊部100xが形成される可能性があるという問題があった。この問題に対応するため、特許文献1に記載の方法が知られている。
【0005】
図18は、改良した従来のシート状の複合材料200の概略構成図である。
図19は、
図18の領域Bの拡大断面図である。改良した従来のシート状の複合材料200は、シート状の複合材料100を特許文献1の方法で改良したものである。複合材料200は、
図18及び
図19に示すように、強化繊維200fに樹脂を含浸させたものを、補強糸202で縫ったものである。複合材料200は、
図18及び
図19では、4層の複合材料の層が積層されたものが例示されている。複合材料200は、
図19に示すように、4本の繊維層の中心軸200a、200b、200c及び200dを有する。4本の繊維層の中心軸200a、200b、200c及び200dは、面内方向に沿って延びている。複合材料200は、面外方向には補強糸202により強化されている。しかし、4本の繊維層の中心軸200a、200b、200c及び200dは、補強糸202により蛇行が生じている。そのため、複合材料200は、補強糸202によって面内方向の強度が複合材料100と比較して低下する可能性があるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させた繊維含有材料、面外補強糸の挿入方法及び繊維含有材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、繊維含有材料は、平面に沿う方向に延びる強化繊維を含む母材と、前記母材の内部に、前記平面に沿う方向と交差する方向に沿って延びて形成された面外補強糸と、を含むことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、面内方向の強度を高める強化繊維と、面外方向の強度を高める面外補強糸と、が共存することができるので、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させることができる。
【0009】
この構成において、前記面外補強糸は、前記母材の前記平面に沿う方向と交差する方向の厚さと同じ長さであってもよい。この構成によれば、繊維含有材料の形状を変更することなく、面外方向の強度を向上させることができる。
【0010】
あるいは、この構成において、前記面外補強糸は、前記母材の前記平面に沿う方向と交差する方向の厚さよりも長く、前記母材から前記厚さの方向の少なくとも一方に突き出していてもよい。この構成によれば、面外補強糸が突き出している側に別の部材と接着する場合に、突き出した面外補強糸により接着強度を向上させることができる。
【0011】
面外補強糸が母材から突き出している構成において、前記面外補強糸が突き出している側の前記母材の表面に設けられた保護シートをさらに含むことが好ましい。この構成によれば、面外補強糸の引張が抑制され、母材の表面が傷つくこと及び汚れが付着することを低減することができる。
【0012】
保護シートを有する構成において、前記保護シートは、前記面外補強糸が突き出している長さと同じ厚さを有することが好ましい。この構成によれば、面外補強糸の引張をより抑制することができる。
【0013】
これらの構成において、前記母材は、前記強化繊維に樹脂が含浸された複合材料であることが好ましい。この構成によれば、さらに軽量性及び高い強度を有することができる。
【0014】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、繊維含有材料は、平面に沿う方向に延びる強化繊維を含む母材と、前記母材の両面に設けられたスペーサと、前記母材と前記スペーサとを縫い合わせた補強糸と、を含み、前記補強糸は、前記スペーサの表面に、前記平面に沿う方向に延びて形成された面内補強糸と、前記母材の内部に、前記平面に沿う方向と交差する方向に沿って延びて形成された面外補強糸と、を含むことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、面内方向の強度を高める強化繊維と、面外方向の強度を高める面外補強糸と、が共存することができる繊維含有材料の前駆体、すなわち、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させた繊維含有材料の前駆体を得ることができる。
【0016】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、面外補強糸の挿入方法は、平面に沿う方向に延びる強化繊維を含む母材を縫い合わせ、前記平面に沿う方向に延びて形成された面内補強糸と、前記母材の内部に、前記平面に沿う方向と交差する方向に沿って延びて形成される面外補強糸とを含む補強糸を形成する縫合工程と、前記面内補強糸を除去する面内補強糸除去工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、面内補強糸を除去するため、繊維含有材料において、面内方向の強度を高める強化繊維と、面外方向の強度を高める面外補強糸とを共存させることができるので、繊維含有材料の面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させることができる。
【0018】
この構成において、前記縫合工程の前に、前記母材の両面にスペーサを設けるスペーサ配置工程をさらに有し、前記縫合工程では、前記母材と前記スペーサとを縫い合わせることが好ましい。この構成によれば、面内補強糸の除去を容易にすることができる。
【0019】
スペーサ配置工程をさらに有する構成において、前記面内補強糸除去工程では、前記母材と前記母材の少なくとも一方に設けられた前記スペーサとの間を前記平面の方向に沿って切断することが好ましい。この構成によれば、母材の平面に沿う方向と交差する方向の厚さと同じ長さの面外補強糸を挿入することができるので、繊維含有材料の形状を変更することなく、面外方向の強度を向上させることができる。
【0020】
あるいは、スペーサ配置工程をさらに有する構成において、前記面内補強糸除去工程では、前記母材の少なくとも一方に設けられた前記スペーサを前記平面の方向に沿って切断し、前記母材の少なくとも一方の面に残された前記スペーサの一部を保護シートとすることが好ましい。この構成によれば、母材の平面に沿う方向と交差する方向の厚さよりも長く、母材から厚さの方向の少なくとも一方に突き出した面外補強糸を挿入することができるので、面外補強糸が突き出している側に別の部材と接着する場合に、突き出した面外補強糸により接着強度を向上させることができる。
【0021】
面内補強糸除去工程でスペーサを平面の方向に沿って切断する構成において、保護シートを除去するシート除去工程をさらに含むことが好ましい。この構成によれば、シート除去工程により、繊維含有材料を使用する直前まで保護シートで保護された、繊維含有材料の面外補強糸が突き出している側の表面に、別の部材を接着することができる。
【0022】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、繊維含有材料の製造方法は、上記のいずれかの面外補強糸の挿入方法により、前記強化繊維を含む母材の内部に前記面外補強糸が形成された繊維含有材料を製造することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、面内方向の強度を高める強化繊維と、面外方向の強度を高める面外補強糸とを共存させた繊維含有材料を製造することができるので、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させた繊維含有材料を製造することができる。
【0024】
この構成において、前記強化繊維に樹脂を含浸させる含浸工程をさらに含むことが好ましい。この構成によれば、さらに軽量性及び高い強度を有する繊維含有材料を製造することができる。
【0025】
含浸工程を含む構成において、前記縫合工程より後、かつ、前記含浸工程より後に、前記樹脂を硬化させる硬化工程をさらに含むことが好ましい。この構成によれば、軽量性及び高い強度に合わせて安定した構造を有する繊維含有材料を製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させた繊維含有材料、面外補強糸の挿入方法及び繊維含有材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0029】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る繊維含有材料の一例である繊維含有材料10を示す概略断面図である。繊維含有材料10は、
図1で概略断面図が示されているが、面外方向から見た平面図における形状は、いかなる形状でもよい。繊維含有材料10は、
図1に示すように、母材12と、面外補強糸14と、を含む。母材12は、平面に沿う方向である面内方向に延びる材料であり、面内方向に延びる強化繊維12fを含む。母材12は、これに限定されず、母材12の平面に沿う方向と交差する方向である面外方向に湾曲部を有していても良く、段差を有していても良い。面外補強糸14は、母材12の内部に、母材12の平面に沿う方向と交差する方向である面外方向に沿って延びて形成されている。面外補強糸14は、母材12の平面に沿う方向と交差する方向の厚さと同じ長さである。面外補強糸14は、母材12の平面に沿う方向と直交することが好ましい。繊維含有材料10は、母材12の平面に沿う方向と交差する面外補強糸14のみを有し、母材12の平面に沿う方向、すなわち母材12の平面に平行な方向の補強糸を有さないことが好ましい。繊維含有材料10は、
図1では、面外補強糸14が母材12の平面に沿う方向において均一に分布しているが、本発明はこれに限定されることなく、面外補強糸14が不均一に分布していても良い。繊維含有材料10は、例えば、母材12に湾曲部または段差部がある場合、母材12の応力のかかる場所である湾曲部または段差部に面外補強糸14が高密度に分布していることが好ましい。
図1では、母材12の各箇所に面外補強糸14が2本あり、2本の面外補強糸14が離れている例が示されているが、これは追って行う面外補強糸の挿入方法の処理の詳細を説明のために便宜上示されているものであり、本発明の繊維含有材料はこれに限定されない。以下における
図4、
図5及び
図6についても同様である。
【0030】
強化繊維12fは、5μm以上7μm以下の範囲内の基本繊維を数100本から数1000本程度束ねたものが例示される。強化繊維12fを構成する基本繊維は、いずれも炭素繊維が例示される。強化繊維12fを構成する基本繊維は、これに限定されず、その他のプラスチック繊維、ガラス繊維又は金属繊維でもよい。
【0031】
母材12は、強化繊維12fを含むプリフォーム、及び強化繊維12fに樹脂を含浸させた複合材料が例示される。強化繊維12に含浸される樹脂は、熱硬化性樹脂が好ましいが、熱可塑性樹脂でもよい。熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂が例示される。熱可塑性樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、及びポリフェニレンサルファイド(PPS)等が例示される。ただし、強化繊維12に含浸される樹脂は、これに限定されず、その他の樹脂でもよい。
【0032】
強化繊維12に含浸される樹脂が熱硬化性樹脂の場合、熱硬化性樹脂は、軟化状態と、硬化状態と、半硬化状態となることができる。軟化状態は、熱硬化性樹脂を熱硬化させる前の状態である。軟化状態は、自己支持性を有さない状態であり、支持体に支持されていない場合に形状を保持できない状態である。軟化状態は、加熱されて、熱硬化性樹脂が熱硬化反応をすることができる状態である。硬化状態は、熱硬化性樹脂を熱硬化させた後の状態である。硬化状態は、自己支持性を有する状態であり、支持体に支持されていない場合でも形状を保持できる状態である。硬化状態は、加熱されても、熱硬化樹脂が熱硬化反応をすることができない状態である。半硬化状態は、軟化状態と硬化状態との間の状態である。半硬化状態は、硬化状態よりも弱い程度の熱硬化を熱硬化性樹脂にさせた状態である。半硬化状態は、自己支持性を有する状態であり、支持体に支持されていない場合でも形状を保持できる状態である。半硬化状態は、加熱されて、熱硬化性樹脂が熱硬化反応をすることができる状態である。強化繊維12fが熱硬化性樹脂に含浸された複合材料は、熱硬化性樹脂が半硬化状態であるプリプレグであるか、又は熱硬化性樹脂が硬化状態であることが好ましい。
【0033】
面外補強糸14は、5μm以上7μm以下の範囲内の基本繊維を数100本から数1000本程度束ねたものが例示される。面外補強糸14を構成する基本繊維は、いずれもナイロン繊維が例示される。面外補強糸14を構成する基本繊維は、これに限定されず、その他のプラスチック繊維、炭素繊維、ガラス繊維又は金属繊維でもよい。
【0034】
繊維含有材料10は、面内方向の強度を高める強化繊維12fと、面外方向の強度を高める面外補強糸14とが、繊維層の中心軸を蛇行させることなく共存できるので、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させることができる。
【0035】
繊維含有材料10は、面外補強糸14が母材12の平面に沿う方向と交差する方向の厚さと同じ長さであるので、繊維含有材料10の形状が変更されることなく、面外方向の強度が向上する。
【0036】
繊維含有材料10は、母材12が強化繊維12fに樹脂を含浸させた複合材料である場合、さらに軽量性及び高い強度を有することができる。
【0037】
第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法に含まれる第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法の処理について以下に説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法に含まれる本発明の第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法の処理の一例を示すフローチャートである。第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、
図2に示すように、スペーサ配置工程S12と、縫合工程S14と、面内補強糸除去工程S16と、シート除去工程S18と、を含む。
【0038】
図3は、第1の実施形態において、スペーサ22a及びスペーサ22bが配置された母材12であるスペーサ積層体20の概略断面図である。スペーサ積層体20は、母材12と、スペーサ22aと、スペーサ22bと、を含む。スペーサ22aは、母材12の一方の面、すなわち
図3における上側の面に設けられている。スペーサ22bは、母材12の他方の面、すなわち
図3における下側の面に設けられている。
図2に示すスペーサ配置工程S12は、母材12の両面にスペーサ22a及びスペーサ22bを設けることで、スペーサ積層体20を形成する工程である。スペーサ配置工程S12は、後で説明する縫合工程S14で母材12とスペーサ22a及びスペーサ22bとを縫い合せるため、縫合工程S14の前に施される。
【0039】
スペーサ22a及びスペーサ22bは、ナイロン製又はポリエステル製のシート、及び柔軟性を有するパネル等のいずれかを1枚又は複数枚積層させたものが例示される。スペーサ22a及びスペーサ22bは、これに限定されず、その他のスペーサでもよい。スペーサ22a及びスペーサ22bは、例示の材料の積層する枚数を変更することで、厚さを変更することができる。スペーサ22a及びスペーサ22bは、後述する縫合工程S14において、母材12の表面が傷つくこと及び汚れが付着することを抑制することができる。また、スペーサ22a及びスペーサ22bは、後述する縫合工程S14において、補強糸26の引張を抑制することができる。
【0040】
図4は、第1の実施形態において、母材12とスペーサ22a及びスペーサ22bとが縫い合わされている状態の概略断面図である。母材12とスペーサ22a及びスペーサ22bとは、
図4に示すように、縫合部24により、補強糸26で縫い合わされる。すなわち、縫合部24は、母材12とスペーサ22a及びスペーサ22bとを、補強糸26で縫い合わせる。縫合部24は、ミシンに装着され、先端に孔が開けられた針が例示される。ただし、縫合部24は、これに限定されず、その他の補強糸26が挿入可能な形状の針でもよい。
【0041】
図5は、
図1の繊維含有材料10の前駆体の一例である繊維含有材料30を示す概略断面図である。繊維含有材料30は、
図5に示すように、母材12と、スペーサ22aと、スペーサ22bと、面内補強糸26aと、面内補強糸26bと、面外補強糸26cと、を含む。母材12とスペーサ22a及びスペーサ22bとを縫い合せた補強糸26は、面内補強糸26aと、面内補強糸26bと、面外補強糸26cとを含む。面内補強糸26aは、スペーサ22aの表面に、平面に沿う方向である面内方向に延びて形成されている。面内補強糸26bは、スペーサ22bの表面に、平面に沿う方向である面内方向に延びて形成されている。面外補強糸26cは、母材12とスペーサ22a及びスペーサ22bとの内部に、母材12とスペーサ22a及びスペーサ22bとを貫通して、平面に沿う方向と交差する方向である面外方向に沿って延びて形成されている。
【0042】
繊維含有材料30は、面内方向の強度を高める強化繊維12fと、面外方向の強度を高める面外補強糸14とが、繊維層の中心軸を蛇行させることなく共存できる繊維含有材料10の前駆体であるので、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させた繊維含有材料10を得ることができる。
【0043】
図2に示す縫合工程S14は、強化繊維12fを含む母材12を縫い合せ、面内補強糸26a及び面内補強糸26bと、面外補強糸26cとを含む補強糸26を形成する工程である。詳細には、縫合工程S14は、母材12にスペーサ22a及びスペーサ22bが積層されたスペーサ積層体20を、縫合部24により補強糸26で縫い合わせることで、繊維含有材料30を形成する。スペーサ積層体20は、縫合工程S14が施されることで、繊維含有材料30となる。縫合工程S14では、補強糸26が柔らかいものであることが好ましい。また、縫合工程S14では、補強糸26が細いもの、すなわち基本繊維の本数が強化繊維12fより少ないものであることが好ましい。これらの場合、縫合工程S14を円滑に施すことができる。また、これらの場合、第1の実施形態における面外補強糸の挿入方法により挿入される面外補強糸14は、柔らかいもの又は細いものとなる。なお、縫合工程S14では、補強糸26が硬いものまたは太いものであってもよく、この場合には、縫い合わせする補強糸26が折れる可能性があるが、補強糸26が折れる箇所は、最終的に後述する面内補強糸除去工程S16で除去される箇所であるため、問題にはならない。この場合、第1の実施形態における面外補強糸の挿入方法により挿入される面外補強糸14は、硬いもの又は太いものとなる。
【0044】
図6は、第1の実施形態において、面内補強糸26a及び面内補強糸26bが除去されている状態の概略断面図である。繊維含有材料30は、
図6に示すように、切断部32a及び切断部32bにより、スペーサ22a及び面内補強糸26aとスペーサ22b及び面内補強糸26bとが、切り離される。詳細には、繊維含有材料30は、切断部32aにより、スペーサ22a及び面内補強糸26aが切り離され、切断部32bにより、スペーサ22b及び面内補強糸26bが切り離される。すなわち、切断部32aは、繊維含有材料30からスペーサ22a及び面内補強糸26aを切り離し、切断部32bは、スペーサ22b及び面内補強糸26bを切り離す。これらが切り離されることにより、繊維含有材料30は、繊維含有材料10となる。また、これらが切り離されることにより、母材12の内部に残される面外補強糸26cは、面外補強糸14となる。詳細には、同じ個所に挿入された2本の面外補強糸26cのうち、面内補強糸除去工程S16を経て母材12の内部に残された部分が、1セットの面外補強糸14となる。切断部32a及び切断部32bは、いずれも、金属製の刃が例示される。ただし、切断部32a及び切断部32bは、これに限定されず、スペーサ22a、スペーサ22b、面内補強糸26a、及び面内補強糸26bを除去可能なものであればよい。
【0045】
図2に示す面内補強糸除去工程S16は、面内補強糸26a及び面内補強糸26bを除去する工程である。面内補強糸除去工程S16は、詳細には、切断部32aで、母材12とスペーサ22aとの間を平面の方向に沿って切断することで、スペーサ22a及び面内補強糸26aを切り離して面内補強糸26aを除去し、切断部32bで、母材12とスペーサ22bとの間を平面の方向に沿って切断することで、スペーサ22b及び面内補強糸26bを切り離して面内補強糸26bを除去する工程である。繊維含有材料30は、面内補強糸除去工程S16が施されることで、繊維含有材料10となる。また、面外補強糸26cは、面内補強糸除去工程S16が施されることで、母材12に残された部分が面外補強糸14となる。
【0046】
図2に示すシート除去工程S18は、面内補強糸除去工程S16で母材12の一方の面にスペーサ22aの一部が残された場合と、面内補強糸除去工程S16で母材12の他方の面にスペーサ22bの一部が残された場合と、のうち少なくとも一方の場合に施される工程である。これらの場合、シート除去工程S18は、残されたスペーサ22aの一部である保護シート及びスペーサ22bの一部である保護シートの少なくとも一方を除去する工程である。第1の実施形態は、面内補強糸除去工程S16で、面内補強糸26a及び面内補強糸26bの除去にあわせてスペーサ22a及びスペーサ22bを完全に除去できる場合、シート除去工程S18を行う必要がない。
【0047】
なお、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、スペーサ配置工程S12を省略することができる。この場合、縫合工程S14は、母材12のみを縫合部24により補強糸26で縫い合わせる工程となる。また、この場合、面内補強糸除去工程S16は、母材12の表面に、平面に沿う方向である面内方向に延びて形成された面内補強糸を、削り落とす等の処理により除去する工程となる。また、この場合、スペーサ22a及びスペーサ22bがないので、シート除去工程S18は、省略される。
【0048】
第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、面内補強糸除去工程S16で除去可能な面内補強糸を含む前駆体を介在して、面内補強糸除去工程S16で面内補強糸を除去する。第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、スペーサ配置工程S12を省略しない場合、詳細には、面内補強糸除去工程S16で除去可能な面内補強糸26a及び面内補強糸26bを含む前駆体である繊維含有材料30を介在して、面内補強糸除去工程S16で面内補強糸26a及び面内補強糸26bを除去する。このため、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、繊維含有材料10において、面内方向の強度を高める強化繊維12fと、面外方向の強度を高める面外補強糸14とを共存させることができるので、繊維含有材料10の面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させることができる。
【0049】
第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、スペーサ配置工程S12を省略しない場合、縫合工程S14で、母材12にスペーサ22a及びスペーサ22bが積層されたスペーサ積層体20が、縫合部24により補強糸26で縫い合わせられる。そのため、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、スペーサ配置工程S12を省略しない場合、面内補強糸除去工程S16で、スペーサ22a及びスペーサ22bを切り離すことで面内補強糸26a及び面内補強糸26bを除去することができるので、面内補強糸26a及び面内補強糸26bの除去を容易にすることができる。
【0050】
第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、面内補強糸除去工程S16で、母材12とスペーサ22aとの間を平面の方向に沿って切断し、母材12とスペーサ22bとの間を平面の方向に沿って切断する。そのため、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、母材12の厚さと同じ長さの面外補強糸14を挿入することができるので、繊維含有材料10の形状を変更することなく、面外方向の強度を向上させることができる。また、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、繊維含有材料10の表面を円滑にすることができる。
【0051】
第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法について、以下に説明する。第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法の処理を含む。そのため、第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、詳細には、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法により、強化繊維12fを含む母材12の内部に面外補強糸14が形成された繊維含有材料10を製造することができる。したがって、第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させた繊維含有材料10を製造することができる。
【0052】
第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、強化繊維12fに樹脂を含浸させる含浸工程を含むことが好ましい。第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、含浸工程を含む場合、母材12が強化繊維12fに樹脂を含浸させた複合材料である繊維含有材料10を製造できるので、さらに軽量性及び高い強度を有する繊維含有材料を製造することができる。含浸工程は、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法のどのタイミングで施されても良い。
【0053】
第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、含浸工程を含む場合、樹脂を硬化させる硬化工程を含むことが好ましい。第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、硬化工程を含む場合、母材12が強化繊維12fに樹脂を含浸させ、樹脂が半硬化状態又は硬化状態となった複合材料である繊維含有材料10を製造できるので、軽量性及び高い強度に合わせて安定した構造を有する繊維含有材料を製造することができる。硬化工程は、縫合工程S14より後、かつ、含浸工程より後で施されることが好ましく、この場合、樹脂が硬化する前に縫合工程S14を施すので、縫合工程S14を円滑に施すことができる。
【0054】
[第2の実施形態]
図7は、本発明の第2の実施形態に係る繊維含有材料の一例である繊維含有材料40を示す概略断面図である。第2の実施形態に係る繊維含有材料40は、
図7に示すように、母材12と、面外補強糸44と、を含む。すなわち、第2の実施形態に係る繊維含有材料40は、第1の実施形態に係る繊維含有材料10において、面外補強糸14を面外補強糸44に変更したものである。第2の実施形態の説明では、第1の実施形態と同様の構成に第1の実施形態と同一の符号群を用い、その詳細な説明を省略する。
図7では、
図1と同様に、母材12の各箇所に面外補強糸44が2本あり、2本の面外補強糸44が離れている例が示されているが、これは
図1と同様に、追って行う面外補強糸の挿入方法の処理の詳細を説明のために便宜上示されているものであり、本発明の繊維含有材料はこれに限定されない。以下における
図9及び
図10についても同様である。
【0055】
面外補強糸44は、母材12の平面に沿う方向と交差する方向の厚さよりも長く、母材12から厚さの方向の両面に突き出している点で、面外補強糸14と異なる。面外補強糸44は、長さ及び母材12から突き出している点を除くその他の点で、面外補強糸14と同様である。繊維含有材料40は、面外補強糸44が上記構成を有するので、面外補強糸44が突き出している両面側に別の部材と接着する場合に、突き出した面外補強糸44により接着強度を向上させることができる。詳細には、繊維含有材料40は、突き出した面外補強糸44が、接着される別の部材における面外補強糸となるので、接着強度を向上させることができる。また、繊維含有材料40は、突き出した面外補強糸44が、接着される別の部材との間でアンカー効果を生じさせるので、接着強度を向上させることができる。また、繊維含有材料40は、突き出した面外補強糸44が、接着される別の部材との間の接着層を保持することができるので、接着強度を向上させることができる。
【0056】
第2の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法に含まれる第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法の処理について以下に説明する。第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法において、スペーサ配置工程S12と、縫合工程S14と、面内補強糸除去工程S16と、シート除去工程S18とのいずれもについて、以下に説明するように変更したものである。
【0057】
図8は、第2の実施形態において、スペーサ52a及びスペーサ52bが配置された母材12であるスペーサ積層体50の概略断面図である。第2の実施形態に係るスペーサ積層体50は、
図8に示すように、母材12と、スペーサ52aと、スペーサ52bと、を含む。すなわち、第2の実施形態に係るスペーサ積層体50は、第1の実施形態に係るスペーサ積層体20において、スペーサ22aをスペーサ52aに変更し、スペーサ22bをスペーサ52bに変更したものである。スペーサ52aは、厚さが異なる、すなわちより厚いという点で、スペーサ22aと異なる。スペーサ52aは、厚さが異なる点を除くその他の点で、スペーサ22aと同様である。スペーサ52bは、厚さが異なる、すなわちより厚いという点で、スペーサ22bと異なる。スペーサ52bは、厚さが異なる点を除くその他の点で、スペーサ22bと同様である。
【0058】
第2の実施形態におけるスペーサ配置工程S12は、スペーサ22aに代えてスペーサ52aを配置し、スペーサ22bに代えてスペーサ52bを配置するという点で、第1の実施形態におけるスペーサ配置工程S12と異なる。第2の実施形態におけるスペーサ配置工程S12は、配置される各スペーサが異なる点を除くその他の点で、第1の実施形態におけるスペーサ配置工程S12と同様である。第2の実施形態におけるスペーサ配置工程S12は、母材12の両面にスペーサ52a及びスペーサ52bを設けることで、スペーサ積層体50を形成する工程である。
【0059】
図9は、
図7の繊維含有材料40の前駆体の一例である繊維含有材料60を示す概略断面図である。第2の実施形態に係る繊維含有材料60は、
図9に示すように、母材12と、スペーサ52aと、スペーサ52bと、面内補強糸56aと、面内補強糸56bと、面外補強糸56cと、を含む。すなわち、第2の実施形態に係る繊維含有材料60は、第1の実施形態に係る繊維含有材料30において、スペーサ22aをスペーサ52aに変更し、スペーサ22bをスペーサ52bに変更し、面内補強糸26aを面内補強糸56aに変更し、面内補強糸26bを面内補強糸56bに変更し、面内補強糸26cを面内補強糸56cに変更したものである。以下において、面内補強糸56aと、面内補強糸56bと、面外補強糸56cと、を合わせて、適宜、補強糸56と称する。
【0060】
面内補強糸56aは、スペーサ52aの表面に、平面に沿う方向である面内方向に延びて形成されている。面内補強糸56bは、スペーサ52bの表面に、平面に沿う方向である面内方向に延びて形成されている。面外補強糸56cは、母材12とスペーサ52a及びスペーサ52bとの内部に、母材12とスペーサ52a及びスペーサ52bとを貫通して、平面に沿う方向と交差する方向である面外方向に沿って延びて形成されている。面外補強糸56cは、スペーサ52a及びスペーサ52bがスペーサ22a及びスペーサ22bと比較して厚い分だけ、面外補強糸26cよりも長い。
【0061】
第2の実施形態における縫合工程S14は、縫い合わされる対象がスペーサ積層体20に代えてスペーサ積層体50であり、縫い合わせするものが補強糸26に代えて補強糸56であるという点で、第1の実施形態における縫合工程S14と異なる。第2の実施形態における縫合工程S14は、縫い合わせされる対象及び縫い合わせするものが異なる点を除くその他の点で、第1の実施形態における縫合工程S14と同様である。第2の実施形態における縫合工程S14は、スペーサ積層体50を補強糸56で縫い合わせ、繊維含有材料60を形成する。
【0062】
図10は、
図7の繊維含有材料40の前駆体の別の状態の一例である繊維含有材料65を示す概略断面図である。繊維含有材料65は、母材12と、保護シート67aと、保護シート67bと、面外補強糸44と、を含む。保護シート67aは、面外補強糸44が突き出している側の母材12の一方の表面、すなわち
図10における上側の面に設けられている。つまり、保護シート67aは、母材12に対して、スペーサ52aが配置された側に設けられている。保護シート67bは、面外補強糸44が突き出している側の母材12の他方の表面、すなわち
図10における下側の面に設けられている。つまり、保護シート67bは、母材12に対して、スペーサ52bが配置された側に設けられている。
【0063】
保護シート67a及び保護シート67bは、スペーサ52a及びスペーサ52b同様に、すなわちスペーサ22a及びスペーサ22b同様に、ナイロン製又はポリエステル製のシート、及び柔軟性を有するパネル等のいずれかを1枚又は複数枚積層させたものが例示される。保護シート67a及び保護シート67bは、これに限定されず、その他の保護シートでもよい。保護シート67a及び保護シート67bは、スペーサ52a及びスペーサ52bにおいて例示の材料の積層する枚数を変更すること及び後述する第2の実施形態における面内補強糸除去工程S16での切断位置を変更することで、厚さを変更することができる。
【0064】
保護シート67a及び保護シート67bは、繊維含有材料65において、母材12の表面が傷つくこと及び汚れが付着することを抑制することができる。また、保護シート67a及び保護シート67bは、繊維含有材料65において、面外補強糸44の引張を抑制することができる。
【0065】
保護シート67aは、面外補強糸44が母材12の一方の表面から突き出している長さと同じ厚さを有する。また、保護シート67bは、面外補強糸44が母材12から他方の表面から突き出している長さと同じ厚さを有する。このため、保護シート67a及び保護シート67bは、いずれも、面外補強糸44の引張をより抑制することができる。また、面外補強糸44は、保護シート67a及び保護シート67bの厚さを変更することで、長さを変更することができる。
【0066】
第2の実施形態における面内補強糸除去工程S16は、面内補強糸26a及び面内補強糸26bに代えて、面内補強糸56a及び面内補強糸56bを除去する点で、第1の実施形態における面内補強糸除去工程S16と異なる。詳細には、第2の実施形態における面内補強糸除去工程S16は、母材12とスペーサ22aとの間に代えて、スペーサ52aを平面の方向に沿って切断し、母材12の一方の面に残されたスペーサ52aの一部を保護シート67aとする点で、第1の実施形態における面内補強糸除去工程S16と異なる。また、第2の実施形態における面内補強糸除去工程S16は、母材12とスペーサ22bとの間に代えて、スペーサ52bを平面の方向に沿って切断し、母材12の一方の面に残されたスペーサ52bの一部を保護シート67bとする点で、第1の実施形態における面内補強糸除去工程S16と異なる。第2の実施形態における面内補強糸除去工程S16は、上記の異なる点を除くその他の点で、第1の実施形態における面内補強糸除去工程S16と同様である。繊維含有材料60は、面内補強糸除去工程S16が施されることで、繊維含有材料65となる。また、面外補強糸56cは、面内補強糸除去工程S16が施されることで、母材12、保護シート67a及び保護シート67bに残された部分が面外補強糸44となる。詳細には、同じ個所に挿入された2本の面外補強糸56cのうち、面内補強糸除去工程S16を経て母材12、保護シート67a及び保護シート67bの内部に残された部分が、1セットの面外補強糸44となる。
【0067】
第2の実施形態におけるシート除去工程S18は、保護シート67a及び保護シート67bを除去する工程である。繊維含有材料65は、シート除去工程S18が施されることで、繊維含有材料40となる。
【0068】
第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、面内補強糸除去工程S16で、スペーサ52aを平面の方向に沿って切断し、母材12の一方の面に残されたスペーサ52aの一部を保護シート67aとし、スペーサ52bを平面の方向に沿って切断し、母材12の一方の面に残されたスペーサ52bの一部を保護シート67bとする。そのため、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、母材12の平面に沿う方向と交差する方向の厚さよりも長く、母材から厚さ方向に突き出した面外補強糸44を挿入することができる。したがって、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、繊維含有材料40の面外補強糸44が突き出している側に別の部材と接着する場合に、突き出した面外補強糸44により接着強度を向上させることができる。さらに、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、面内補強糸除去工程S16におけるスペーサ52a及びスペーサ52bの切断位置を制御することで、繊維含有材料40に挿入される面外補強糸44の長さを制御することができる。
【0069】
第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、シート除去工程S18で、保護シート67a及び保護シート67bを除去する。そのため、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、繊維含有材料40を使用する直前まで保護シート67a及び保護シート67bで保護された、繊維含有材料40の面外補強糸が突き出している側の表面に、別の部材を接着することができる。
【0070】
第2の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法について、以下に説明する。第2の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法の処理を含む。そのため、第2の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、詳細には、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法により、強化繊維12fを含む母材12の内部に面外補強糸44が形成された繊維含有材料40を製造することができる。したがって、第2の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させた繊維含有材料40を製造することができる。第2の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法における含浸工程及び硬化工程は、第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法における含浸工程及び硬化工程と同様である。
【0071】
[第3の実施形態]
図11は、本発明の第3の実施形態に係る繊維含有材料の一例である繊維含有材料70を示す概略断面図である。第3の実施形態に係る繊維含有材料70は、
図11に示すように、母材12と、面外補強糸74と、を含む。すなわち、第3の実施形態に係る繊維含有材料70は、第1の実施形態に係る繊維含有材料10において、面外補強糸14を面外補強糸74に変更したものである。第3の実施形態の説明では、第1の実施形態と同様の構成に第1の実施形態と同一の符号群を用い、その詳細な説明を省略する。
図11では、
図1及び
図7と同様に、母材12の各箇所に面外補強糸74が2本あり、2本の面外補強糸が離れている例が示されているが、これは
図1及び
図7と同様に、追って行う面外補強糸の挿入方法の処理の詳細を説明のために便宜上示されているものであり、本発明の繊維含有材料はこれに限定されない。以下における
図13及び
図14についても同様である。
【0072】
面外補強糸74は、母材12の平面に沿う方向と交差する方向の厚さよりも長く、母材12から厚さの方向の一方の面側に突き出している点で、面外補強糸14と異なる。面外補強糸74は、長さ及び母材12から突き出している点を除くその他の点で、面外補強糸14と同様である。すなわち、面外補強糸74は、面外補強糸14と同様に、母材12から厚さの方向の他方の面側に突き出していない。繊維含有材料70は、面外補強糸74が上記構成を有するので、面外補強糸74が突き出している一方の面側に別の部材と接着する場合に、突き出した面外補強糸74により接着強度を向上させることができる。詳細には、繊維含有材料70は、第2の実施形態に係る繊維含有材料40における突き出した面外補強糸44と同様の理由で、突き出した面外補強糸74が、接着強度を向上させることができる。また、繊維含有材料70は、面外補強糸74が上記構成を有するので、面外補強糸74が突き出していない他方の面側については、繊維含有材料10と同様に、繊維含有材料70の面外補強糸74が突き出していない他方の面側の形状が変更されることなく、面外方向の強度が向上する。
【0073】
第1実施形態に係る繊維含有材料10は、面外補強糸14が母材12の両面から突き出しておらず、第2実施形態に係る繊維含有材料40では、面外補強糸44が母材12の両面から突き出しており、第3実施形態に係る繊維含有材料70では、面外補強糸74が母材12の一方の面から突き出しており、かつ、他方の面から突き出していない。本発明は、これらに限定されることなく、面外補強糸が母材12の平面に沿う方向と交差する方向の厚さよりも長い場合、母材12から厚さの方向の少なくとも一方に突き出している形態を含む。この場合、面外補強糸が突き出している側に別部材と接着する場合に、突き出した面外補強糸により接着強度を向上させることができる。
【0074】
第3の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法に含まれる第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法の処理について以下に説明する。第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法において、スペーサ配置工程S12と、縫合工程S14と、面内補強糸除去工程S16と、シート除去工程S18とのいずれについて、以下に説明するように変更したものである。
【0075】
図12は、第3の実施形態において、スペーサ82a及びスペーサ82bが配置された母材12であるスペーサ積層体80の概略断面図である。第2の実施形態に係るスペーサ積層体80は、
図12に示すように、母材12と、スペーサ82aと、スペーサ82bと、を含む。すなわち、第3の実施形態に係るスペーサ積層体80は、第1の実施形態に係るスペーサ積層体20において、スペーサ22aをスペーサ82aに変更し、スペーサ22bをスペーサ82bに変更したものである。スペーサ82aは、厚さが異なる、すなわちより厚いという点で、スペーサ22aと異なる。スペーサ82aは、厚さが異なる点を除くその他の点で、スペーサ22aと同様である。スペーサ82aは、第2の実施形態におけるスペーサ52aと同様のものが例示される。スペーサ82bは、厚さも含めてスペーサ22bと同様のものが例示されるが、スペーサ22bと異なっていても良い。
【0076】
第3の実施形態におけるスペーサ配置工程S12は、スペーサ22aに代えてスペーサ82aを配置し、スペーサ22bに代えてスペーサ82bを配置するという点で、第1の実施形態におけるスペーサ配置工程S12と異なる。第3の実施形態におけるスペーサ配置工程S12は、配置される各スペーサが異なる点を除くその他の点で、第1の実施形態におけるスペーサ配置工程S12と同様である。第3の実施形態におけるスペーサ配置工程S12は、母材12の両面にスペーサ82a及びスペーサ82bを設けることで、スペーサ積層体80を形成する工程である。
【0077】
図13は、
図11の繊維含有材料70の前駆体の一例である繊維含有材料90を示す概略断面図である。第3の実施形態に係る繊維含有材料90は、
図13に示すように、母材12と、スペーサ82aと、スペーサ82bと、面内補強糸86aと、面内補強糸86bと、面外補強糸86cと、を含む。すなわち、第3の実施形態に係る繊維含有材料90は、第1の実施形態に係る繊維含有材料30において、スペーサ22aをスペーサ82aに変更し、スペーサ22bをスペーサ82bに変更し、面内補強糸26aを面内補強糸86aに変更し、面内補強糸26bを面内補強糸86bに変更し、面内補強糸26cを面内補強糸86cに変更したものである。以下において、面内補強糸86aと、面内補強糸86bと、面外補強糸86cと、を合わせて、適宜、補強糸86と称する。
【0078】
面内補強糸86aは、スペーサ82aの表面に、平面に沿う方向である面内方向に延びて形成されている。面内補強糸86bは、スペーサ82bの表面に、平面に沿う方向である面内方向に延びて形成されている。面外補強糸86cは、母材12とスペーサ82a及びスペーサ82bとの内部に、母材12とスペーサ82a及びスペーサ82bとを貫通して、平面に沿う方向と交差する方向である面外方向に沿って延びて形成されている。面外補強糸86cは、スペーサ82aがスペーサ22aと比較して厚い分だけ、面外補強糸26cよりも長い。
【0079】
第3の実施形態における縫合工程S14は、縫い合わされる対象がスペーサ積層体20に代えてスペーサ積層体80であり、縫い合わせするものが補強糸26に代えて補強糸86であるという点で、第1の実施形態における縫合工程S14と異なる。第3の実施形態における縫合工程S14は、縫い合わせされる対象及び縫い合わせするものが異なる点を除くその他の点で、第1の実施形態における縫合工程S14と同様である。第3の実施形態における縫合工程S14は、スペーサ積層体80を補強糸86で縫い合わせ、繊維含有材料90を形成する。
【0080】
図14は、
図11の繊維含有材料70の前駆体の別の状態の一例である繊維含有材料95を示す概略断面図である。繊維含有材料95は、母材12と、保護シート97aと、面外補強糸74と、を含む。保護シート97aは、面外補強糸74が突き出している側の母材12の一方の表面、すなわち
図14における上側の面に設けられている。つまり、保護シート97aは、母材12に対して、スペーサ82aが配置された側に設けられている。保護シート97aは、第2の実施形態における保護シート67aと同様のものが例示されるが、保護シート67aと異なっていても良い。面外補強糸74が突き出していない側の母材12の他方の表面、すなわち
図14における下側の面には、保護シートは設けられていない。
【0081】
保護シート97aは、第2の実施形態における保護シート67a及び保護シート67bと同様に、繊維含有材料95において、母材12の表面が傷つくこと及び汚れが付着することを抑制することができる。また、保護シート97aは、第2の実施形態における保護シート67a及び保護シート67bと同様に、繊維含有材料95において、面外補強糸74の引張を抑制することができる。
【0082】
保護シート97aは、第2の実施形態における保護シート67a及び保護シート67bと同様に、面外補強糸74が母材12の一方の表面から突き出している長さと同じ厚さを有する。このため、保護シート97aは、第2の実施形態における保護シート67a及び保護シート67bと同様に、いずれも、面外補強糸74の引張をより抑制することができる。また、面外補強糸74は、第2の実施形態における保護シート67a及び保護シート67bと同様に、保護シート97aの厚さを変更することで、長さを変更することができる。
【0083】
第2実施形態に係る繊維含有材料65では、面外補強糸44が母材12から突き出している側である両面にそれぞれ保護シート67a及び保護シート67bが設けられており、第3実施形態に係る繊維含有材料95では、面外補強糸74が母材12から突き出している一方の面に保護シート97aが設けられており、かつ、面外補強糸74が母材12から突き出していない他方の面に保護シートが設けられていない。本発明は、これらに限定されることなく、面外補強糸が母材12の少なくとも一方の面から突き出している場合、面外補強糸が突き出している側の母材12の表面に保護シートが設けられている形態を含む。この場合、保護シートは、繊維含有材料に含まれる面外補強糸の引張を抑制することができ、母材12の表面が傷つくこと及び汚れが付着することを低減することができる。
【0084】
第3の実施形態における面内補強糸除去工程S16は、面内補強糸26a及び面内補強糸26bに代えて、面内補強糸86a及び面内補強糸86bを除去する点で、第1の実施形態における面内補強糸除去工程S16と異なる。詳細には、第3の実施形態における面内補強糸除去工程S16は、母材12とスペーサ22aとの間に代えて、スペーサ82aを平面の方向に沿って切断し、母材12の一方の面に残されたスペーサ82aの一部を保護シート97aとする点で、第1の実施形態における面内補強糸除去工程S16と異なる。また、第3の実施形態における面内補強糸除去工程S16は、母材12とスペーサ22bとの間を切断してスペーサ22を切り離すことに代えて、母材12とスペーサ82bとの間を切断してスペーサ82bを切り離す点で、第1の実施形態における面内補強糸除去工程S16と異なる。第3の実施形態における面内補強糸除去工程S16は、上記の異なる点を除くその他の点で、第1の実施形態における面内補強糸除去工程S16と同様である。繊維含有材料90は、面内補強糸除去工程S16が施されることで、繊維含有材料95となる。また、面外補強糸86cは、面内補強糸除去工程S16が施されることで、母材12及び保護シート97aに残された部分が面外補強糸74となる。詳細には、同じ個所に挿入された2本の面外補強糸86cのうち、面内補強糸除去工程S16を経て母材12及び保護シート97aの内部に残された部分が、1セットの面外補強糸74となる。
【0085】
第3の実施形態におけるシート除去工程S18は、保護シート97aを除去する工程である。繊維含有材料95は、シート除去工程S18が施されることで、繊維含有材料70となる。第3の実施形態におけるシート除去工程S18は、繊維含有材料95のうち保護シートが設けられていない側の面、すなわち母材12のうちスペーサ82bが設けられた側の面については、面内補強糸除去工程S16で母材12の他方の面にスペーサ82bの一部が残された場合に施される工程である。第3の実施形態は、面内補強糸除去工程S16で、面内補強糸86bの除去にあわせてスペーサ82bを完全に除去できる場合、母材12のうちスペーサ82bが設けられた側の面については、シート除去工程S18を行う必要がない。
【0086】
第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、面内補強糸除去工程S16で、スペーサ82aを平面の方向に沿って切断し、母材12の一方の面に残されたスペーサ82aの一部を保護シート97aとし、母材12とスペーサ82bとの間を切断してスペーサ82bを切り離す。そのため、第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、母材12の平面に沿う方向と交差する方向の厚さよりも長く、母材のスペーサ82が設けられた側の面から厚さ方向に突き出した面外補強糸74を挿入することができる。したがって、第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、繊維含有材料70の面外補強糸74が突き出している側に別の部材と接着する場合に、突き出した面外補強糸74により接着強度を向上させることができる。さらに、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、面内補強糸除去工程S16におけるスペーサ82aの切断位置を制御することで、繊維含有材料70に挿入される面外補強糸74の長さを制御することができる。
【0087】
第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、シート除去工程S18で、保護シート97aを除去する。そのため、第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、繊維含有材料70を使用する直前まで保護シート97aで保護された、繊維含有材料70の面外補強糸74が突き出している側の表面に、別の部材を接着することができる。
【0088】
第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、面内補強糸除去工程S16で、母材12の両面側において、母材12とスペーサ22a及びスペーサ22bとの各間を平面の方向に沿って切断する。第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、面内補強糸除去工程S16で、母材12の両面側において、スペーサ52a及びスペーサ52bのそれぞれを平面の方向に沿って切断し、スペーサ52a及びスペーサ52bの各一部を保護シート67a及び保護シート67bとする。第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、面内補強糸除去工程S16で、母材12の一方の面側において、母材12とスペーサ82bとの間を平面の方向に沿って切断し、母材12の他方の面側において、スペーサ82aを平面の方向に沿って切断し、スペーサ82aの一部を保護シート97aとする。本発明は、これらに限定されることなく、面内補強糸除去工程S16では、母材12と母材12の少なくとも一方に設けられたスペーサとの間を平面の方向に沿って切断する場合も含まれる。この場合、母材12の平面に沿う方向と交差する方向の厚さと同じ長さの面外補強糸を挿入することができるので、繊維含有材料の形状を変更することなく、面外方向の強度を向上させることができる。また、本発明は、これらに限定されることなく、面内補強糸除去工程S16では、母材12の少なくとも一方に設けられたスペーサを平面の方向に沿って切断し、母材12の少なくとも一方の面に残されたスペーサの一部を保護シートとする場合も含まれる。この場合、母材の平面に沿う方向と交差する方向の厚さよりも長く、母材から厚さの方向の少なくとも一方に突き出した面外補強糸を挿入することができるので、面外補強糸が突き出している側に別の部材と接着する場合に、突き出した面外補強糸により接着強度を向上させることができる。
【0089】
第3の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法について、以下に説明する。第3の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法の処理を含む。そのため、第3の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、詳細には、第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法により、強化繊維12fを含む母材12の内部に面外補強糸74が形成された繊維含有材料70を製造することができる。したがって、第3の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させた繊維含有材料70を製造することができる。第3の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法における含浸工程及び硬化工程は、第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法における含浸工程及び硬化工程と同様である。