特許第6860993号(P6860993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860993
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】書類挟み
(51)【国際特許分類】
   B42F 9/00 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   B42F9/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-161907(P2016-161907)
(22)【出願日】2016年8月22日
(65)【公開番号】特開2018-30241(P2018-30241A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000129437
【氏名又は名称】株式会社キングジム
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100146330
【弁理士】
【氏名又は名称】本間 博行
(72)【発明者】
【氏名】羽田 達也
【審査官】 渡邉 勇
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−074374(JP,U)
【文献】 特開2011−031495(JP,A)
【文献】 実開平05−053986(JP,U)
【文献】 実開平05−028677(JP,U)
【文献】 米国特許第05738271(US,A)
【文献】 実開昭55−076179(JP,U)
【文献】 特開2003−320776(JP,A)
【文献】 実開平03−070984(JP,U)
【文献】 実開昭56−086170(JP,U)
【文献】 特開平01−156098(JP,A)
【文献】 実開昭52−050832(JP,U)
【文献】 実用新案登録第2597192(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42F 1/00 − 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、当該基板の一端近傍にスライド移動可能に設けられたスライダーと、を有し、当該スライダーがその弾性力により基板とそれに載置された書類とを挟んで綴じる書類挟みであって、
前記基板は、前記一端における両側縁に立設された規制壁部を有し、
当該規制壁部は、前記スライダーが基板とそれに載置された書類とを挟む挟持位置に向かう進方向及び前記スライダーが当該挟持位置から離脱した非挟持位置に向かう退方向と直交する方向への移動を規制するとともに、前記スライダーが前記退方向に移動して所定の位置に到達すると、前記スライダーに当接して前記退方向への移動を規制するように形成され、
前記規制壁部は、前記基板に設けられた折曲線により折り曲げられることで前記基板に対して立設され、前記折曲線の長さよりも当該折曲線と対向する先端の方が長くなる様に形成されている、
書類挟み。
【請求項2】
前記規制壁部は、前記基板の前記一端における両側縁が切り欠かれて耳片が形成され、当該耳片が前記基板における前記書類が載置される面とは反対の面に向けて折曲げられて成る、
請求項1に記載の書類挟み。
【請求項3】
前記スライダーは、前記スライダーの両側縁であって前記基板に添接された状態で前記耳片と対峙する位置に切欠部を有し、前記スライダーの端部において前記切欠部と切り欠かれていない箇所との境界に、前記スライダーが前記退方向に移動して所定の位置に到達したときに前記規制壁部に当接してその先への移動を阻止する退移動阻止部を有する、
請求項2に記載の書類挟み。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、断面が略コ字形状を呈して弾性力を有するスライダーが基板の一端を移動可能にその上下面を挟み、基板の上面に書類を載置した状態で、スライダーを基板に対して移動させることで書類を挟持するか否かを選択する書類挟みに関し、書類を挟持するか否かを選択するための移動の進退方向とは異なる方向にスライダーが移動するのを防ぐとともに、スライダーが書類を保持する位置及び保持しない位置にあるときにそれぞれの位置で確実に停止するように、スライダーの移動を規制する機能を簡易な構造により実現するものである。
【背景技術】
【0002】
基板と弾性スライダーと押え板とを有し、弾性スライダーが基板の一端をスライド可能にその上下面を挟み、さらに、基板には、弾性スライダーの進退方向と直交する方向の移動を規制するように前記基板の一端両側縁にそれぞれ基板の平面と直交するよう設けた案内板と、これらの案内板間に接続され前記基板の一端上面に立設したリムと、このリムと前記案内板とにより囲繞された基板の一端両隅角部に形成した所定幅の穴と、この穴に対応する部分の前記リムの両端部を基板の裏面まで延設して形成したストッパーと、前記基板の裏面側の案内板の端部と前記リムの端部とに接続され前記穴に対応する位置にそれぞれ形成した底板とから構成された移動規制手段が設けられた用箋挾が知られている(例えば、特許文献1。)。
【0003】
この用箋挾の案内板は、それぞれの対向する面に互いに相手の案内板に向けて延設され、弾性スライダーに対して揺動可能かつ係脱可能に設けられた一対のピンを備え、押え板は、当該一対のピンを介して基板に対して揺動可能に支持されている。
【0004】
さらに、ストッパーが、弾性スライダーを基板に対し引き出す方向に移動させたときの弾性スライダーの移動を規制し、このストッパーとリムの底面に設けられた段付部とが、弾性スライダーを基板に対し押し込む方向に移動させたときの弾性スライダーの移動を規制する。
【0005】
この他、裏表紙とスライダーと表表紙とを有し、裏表紙の上面に表表紙が重ねられた状態で、スライダーが、裏表紙の一側縁部の近傍の上面及び表表紙の一側縁部の近傍の下面を移動可能に挟み、さらに、裏表紙には、その一側縁部の両端に形成された耳片が表表紙に臨む面とは反対の面に折曲げられて当該面に接着されて形成された側面規制ストッパーと、当該一側縁部のそれぞれの側面規制ストッパーの間に位置する部分を内側斜め上方、すなわち耳片が折り曲げられる方向とは逆の方向に折り曲げられて、その内側にその先端部分を若干残して表表紙の基端部を接着して連結された横規制ストッパーと、により、スライダーの進退方向の移動操作時に際し、スライダーが常に定位置に確実に停止することができるスライドファイルが知られている(例えば、特許文献2。)。
【0006】
このスライドファイルは、スライダーを裏表紙及び表表紙に対し引き出す方向に移動させると、スライダーの先端部から内側方向に突設した突起部と横規制ストッパーの先端部分とが当接し、スライダーを裏表紙及び表表紙に対し押し込む方向に移動させると、スライダーの底面部の内奥部に立設された立壁と裏表紙と表表紙との連結部となる前記横規制ストッパーの末端部とが当接し、以てそれぞれの方向へのスライダーの移動を規制するものである。
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第2597192号公報
【特許文献2】実用新案登録第2516918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載された従来の用箋挾は、基板と押え板とが、基板に設けられた案内板とこれに設けられたピンとを介して互いに揺動可能に接続されたものであり、この構造を実現するためには、基板に対して案内板を、案内板に対してピンを、それぞれ一体で成形するか、互いに溶着や接着によって接続するか、いずれかにより形成する必要がある。
【0009】
また、このような用箋挾は、弾性スライダーを案内板に当接させることで移動の進退方向と直行する方向の移動を規制しており、さらに基板に設けられたストッパーにより進退方向の移動を規制している。
【0010】
このように、従来の用箋挾はその構造が複雑とならざるを得ず、このような構造を一体成形や溶着、接着によって実現する場合、使用する材質(例えばポリプロピレン。)が限られてしまい、また、この構造によると、基板に対する押え板の取り付けは必ずしも容易ではないという課題があった。
【0011】
さらに、特許文献2に記載された従来のスライドファイルは、スライダーが、それを引き出す方向への移動をスライダーの先端部から内側方向に突設した突起部により規制し、それを押し込む方向への移動をスライダーの底面部の内奥部に立設された立壁により規制するように形成されているため、この考案のスライダーは、成形が容易ではない複雑な形状となるという課題があった。
【0012】
加えて、このようなスライドファイルは、裏表紙の一側端部において、側面規制ストッパーと横規制ストッパーと、がそれぞれ裏表紙に設けられた耳片が折り曲げられて成るため、そのような耳片を有する裏表紙を形成する板片は、裏表紙が通常のサイズ(例えばJIS S 5505に定めるA4版。)の紙片から成る書類に対応した大きさであるためには、耳片の大きさを考慮してそのようなサイズよりもやや大きい変則的なサイズもしくは形状でなければならず、そのような板材と他の通常サイズの紙片に対応した大きさの板材と併せて製造する現場においては、材料の管理が効率的ではなくなるという課題があった。
【0013】
本発明は、このような課題に着目して案出されたものであり、スライダーに突起部や立壁を設けることなく、さらに裏表紙の機能を担保する基板に案内板等を設けることなく、スライダーの移動が所定の方向及び位置に規制される構造を有する書類挟みを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、後述する通り、スライダーの弾性力により、基板に載置された書類や書類保持シートを基板と共に挟み込むものである。
【0015】
すなわち、基板と、当該基板の一端近傍にスライド移動可能に設けられたスライダーと、を有し、当該スライダーがその弾性力により基板とそれに載置された書類とを挟んで綴じる書類挟みであって、前記基板は、前記一端における両側縁に立設された規制壁部を有し、当該規制壁部は、前記スライダーが基板とそれに載置された書類とを挟む挟持位置に向かう進方向及び前記スライダーが当該挟持位置から離脱した非挟持位置に向かう退方向と直行する方向への移動を規制するとともに、前記スライダーが前記退方向に移動して所定の位置に到達すると、前記スライダーに当接して前記退方向への移動を規制するように形成された、書類挟みである。
【0016】
また、前記規制壁部は、前記基板の前記一端における両側縁が切り欠かれて耳片が形成され、当該耳片が前記基板における前記書類が載置される面とは反対の面に向けて折曲げられて成る。
【0017】
さらに、前記スライダーは、前記スライダーの両側縁であって前記基板に添接された状態で前記耳片と対峙する位置に切欠部を有し、前記スライダーの端部において前記切欠部と切り欠かれていない箇所との境界に、前記スライダーが前記退方向に移動して所定の位置に到達したときに前記規制壁部に当接してその先への移動を阻止する退移動阻止部を有する。
【0018】
規制壁部は、基板においてスライダーが配置される一端であってスライダーの進退方向と直行する方向の両端、すなわち基板の角部近傍に、基板の当該直交する方向の一端辺が第一辺に相当する線分を形成する仮想四角形において第一辺と直行して互いに対向する第二辺と第四辺とに相当する箇所に切込線が設けられ、第一辺と対向する位置にある第三辺に相当する箇所が切り込まれないことで、第一辺に相当する箇所を先端とする略四角形状の耳片が形成され、その耳片が、第三辺に相当する箇所を折曲線として、前基板において記書類が載置される面とは反対の面に向けて折曲げられて成るから、基板を形成する板片は、耳片を追加することによる板材の形状変更や大きさの増大を考慮する事無く、通常のサイズの紙片から成る書類に対応した大きさであればよい。加えて、耳片を形成する板材を溶着や接着によって基板に取り付ける必要が無い。なお、第二辺と第四辺とのうちいずれか一方(例えば第二辺。)が基板においてスライダーが配置される一端と仮想同一線上に位置するのであれば、切込線が設けられるのは他方(例えば第四辺。)のみでよい。
【0019】
スライダーに設けられる切欠部は、当該スライダーの両側縁であって前記基板に添接された状態で前記耳片と対峙する位置に、スライダーの一端が第一辺に相当する線分を形成する仮想四角形において、第一辺と直行してそれぞれ対向する第二辺と第四辺と、第一辺と対向する位置にある第三辺と、にそれぞれ相当する箇所に切り込まれることで、スライダーの両側縁がそれぞれ略四角形状に切り欠かれた切欠部が形成されるが、その切欠部の第一辺から第三辺までの距離は、前述した耳片の第一辺から第三辺までの距離と略同じであればよい。
【0020】
これにより、スライダーが基板上を進退方向と直行する方向に移動する力が働くと、スライダーの切欠き部の第三辺に相当する箇所に位置する直行移動阻止部が、規制壁部に当接することで、スライダーの当該方向への移動が規制され、スライダーが基板上を退方向に移動して所定の位置である最大引き出し位置に到達すると、切欠部の第二辺及び第四辺に相当する箇所のうちのいずれか一方に位置する退移動阻止部が、耳片の第二辺及び第四辺に相当する箇所のうちのいずれか一方である規制壁部の当接部に当接することで、スライダーが当該最大引き出し位置を超えてさらに退方向に移動することが規制される。
【0021】
これ加えて、前記規制壁部は、折曲線の長さよりも当該折曲線と対向する先端の方が長くなる様に形成されている。
【0022】
つまり、規制壁部は、折曲線を形成する第三辺よりも耳片の先端を形成する第一辺の方が長く、これらと接する第二辺と第四辺とは互いに平行関係を形成せず、以て第二辺及び第四辺のうち少なくとも基板の上下方向内側に位置する一方は第一辺及び第三辺との間で直角を形成せず、第一辺と第三辺とが平行であればこれら4辺に相当する線分が仮想台形を形成するように設けられていてもよい。
【0023】
規制壁部をこのような形状とすることで、当接部は、規制壁部が基板から離れる方向に向けて広がるように傾斜するから、スライダーが基板上を最大引き出し位置を超えてさらに退方向に移動する力を受けたとき、スライダーと基板とが離れる方向の力が作用することが防がれる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、スライダーに突起部や立壁を設けることなく、さらに裏表紙の機能を担保する基板に案内板等を設けることなく、スライダーが、最大引き出し位置を超えてさらに退方向に移動することを規制するとともに、その進退方向と直行する方向に移動することを規制することができため、基板に溶着・接着するなどの加工が不要であり、このような加工が困難な材質、例えば3層発泡PPシート(軽量な発泡剤の厚肉シートの両面をポリプロピレンの薄肉シートで挟んだシート)や板紙などを採用することが出来るため、質感や見た目を、材質による拘束を受けずに自由に設定できるという利点がある。
【0025】
換言すると、基板の両側縁が切り欠かれて形成された耳片が、基板において書類が載置される面とは反対の面に向けて折曲げられて、以て規制壁部が形成されるから、規制壁部を基板に溶着・接着する事無く設けることが出来る。
【0026】
また、基板に案内板等を設けなくても、スライダーが移動する際に、規制壁部が、当該スライダーの進退方向と直行する両端の一部と当接するか、近傍に位置し続けるか、これら何れかの状態が実現するように形成されていることで、スライダーは書類保持部に対して自らの進退方向と直行する方向に抜けることがない。
【0027】
さらに、スライダーに突起部や立壁を設けなくても、スライダーが当該最大引き出し位置を越えてさらに退方向に移動する力が働くと、基板の当接部とスライダーの切欠き部の一部である退移動阻止部とが当接するように形成されていることで、スライダーは書類保持部に対して自らの退方向に抜けることがない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る書類挟みを示す正面図である。
図2】耳片を折り曲げない状態の基板の正面図である。
図3】耳片を折り曲げた状態の基板の上下方向中間部を省略して拡大した左側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る書類挟みを示す背面図である。
図5】基板に添接されたスライダーの切欠部及びその近辺を拡大した図である。
図6】スライダーの側面図である。
図7図6に示すスライダーを基板に添接した状態を示す図である。
図8】当接部と退移動阻止部との当接状態を示す拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本明細書において、特に説明が無い限り、図1において視認される上下方向を「書類挟みの上下方向」とし、同様に視認される左右方向を「書類挟みの左右方向」とする。
【0030】
図1に示される書類挟み1は、基板2に書類保持シート4が重ねられ、スライダー3が、その弾力によりそれらの左端を上下方向略全長に亘って挟み、さらに、基板2と書類保持シート4との間に書類5を挿入した状態でスライダー3を書類5を挟む位置に移動させることで書類5を綴じるものである。なお、スライダー3が配置される位置は左端に限定されず、基板の右端や上下端であってもよいし、また、スライダー3が配置される数は1に限られず、複数配置されてもよい。
【0031】
図2及び図3に示すように、基板2は、その左端の上下端である2つの角部の近傍に、それぞれの上下端から基板2の上下方向中央に向けてそれぞれ切込線20が設けられることで、基板の上下の端辺と仮想同一直線状に位置する端辺を先端211とする耳片21が形成され、さらに、当該切込線20の基板2の上下方向中央寄りの端部から基板2の左端に向けて横方向に延びる折曲線213が設けられ、耳片21が、当該折曲線213を基線として、後述するスライダー3の押圧板34や書類保護シート4に臨む面とは反対の面に向けて折り曲げられて、基板2に対して立設された規制壁部21を形成する。
【0032】
規制壁部21は、先端211を第一辺とし、第二端212と、切込線20により基板から離された規制壁部21の端辺であって後述する当接部214と、をそれぞれ第二辺及び第四辺とし、先端211と対向する位置にある折曲線213を第三辺とすると、これらの同一線上にある仮想直線を結ぶと仮想四角形状を呈するが、折曲線213を基線として耳片21が折り曲げられて規制壁部21が形成されるのであればこのような形状に限られず、例えば、先端211、第二端212及び当接部214の何れかもしくは全てが曲線状を呈してもよい。
【0033】
さらに、第二端212は、耳片21が折曲線213を基線として折り曲げられない状態において、基板2の左端と仮想同一線上に位置してもよいし、その基端よりも右に寄った位置にあってもよい。同様に、先端211は、基板2の上下端と仮想同一線上に位置してもよいし、その基端よりも上下方向内側に寄った位置にあってもよい。
【0034】
図4に示すように、スライダー3と基板2とが組み合わされると、規制壁部21が切欠部32に囲まれるように位置し、切欠部32を形成する端部のうちの何れかと規制壁部21とが当接する若しくは近傍に位置し続けることで、スライダー3の基板2に対する移動が規制される。
【0035】
具体的には、スライダー3は、その上下端に、それぞれ上下方向内側に向けて切り欠かれた切欠部32が形成され、基板2に添接された状態で、切欠部32を形成する端部のうちの一端が、その一部が規制壁部21に当接する若しくは近傍に位置し続けることで上下方向、すなわちスライダー3が進退方向と直行する方向に移動することを規制する直行移動阻止部321を形成する。
【0036】
スライダー3が、図5(a)に示す書類5を挟む位置にあるときに書類5が綴じられ、その位置から退方向(図1において左方向、図5において右方向。)に移動すると、図5(b)に示すように切欠部32を形成する端部のうちの一端と規制壁部21の一端である当接部214とが当接する位置に至ることで、スライダーが当該最大引き出し位置を超えてさらに退方向に移動することが規制される。すなわち、この一端が退移動阻止部322を形成し、当該退移動阻止部322と対向する端部が第三端部323を形成する。
【0037】
このように、規制壁部21は、直行移動阻止部321に当接する若しくは近傍に位置し続けることでスライダー3の上下方向の移動を規制するとともに、スライダーが最大引き出し位置に至ると当接部214が退移動阻止部322に当接することでスライダーの退方向への移動を規制する。
【0038】
規制壁部21が切欠部32に対してこのように形成されるから、規制壁部21は、その左右方向の長さが短く設定されれば、スライダー3の移動範囲が長くなるが、その短かさゆえに規制壁部21の面積が小ささくなるため耐久性が低く、規制壁部21の左右方向の長さが長く設定されれば、スライダー3の移動範囲が短くなるものの、規制壁部21の面積を大きくすることが出来るため耐久性が高い。つまり、書類挟みの大きさや想定する書類5の収容枚数などの諸条件に応じて規制壁部21の左右方向の長さが決められれば良い。
【0039】
スライダー3は、図6に示すように、この図において下に位置し基板2の面上を移動するする移動板31と、当該移動板31からこの図における上方に延びる起立板33と、当該起立板33からこの図において視認される左方(図1においては右方。)に延びる押圧板34と、を有し、これらが適度な弾性を有する樹脂により一体に形成されて、その断面が略コの字形状を呈し、移動板31と押圧板34との間に、基板2と、押圧板34が書類5に直接当接することでこれを痛めることを防ぐために基板2に載置された書類保護シート4と、を挟むものである。
【0040】
スライダー3は、図1及び図4に示すように、その上下方向の全長が基板2のそれと略等しく設定され、図7(a)に示すように、スライダー3が基板2の一端に近づく方向に移動して第三端部323が規制壁部21に当接する若しくは基板2の一端と起立板33の内面とが当接する位置、すなわち最大押し込み位置に至ると、スライダー3が書類保護シート4を基板2に近づく方向に押圧し、以て基板2と書類保護シート4との間に配された書類5を挟持する状態となり、図7(b)に示すように、スライダー3が基板2の一端から離れる方向に移動して当接部214と退移動阻止部322とが当接する位置に至ると、スライダー3が基板2と書類保護シート4と書類5とが重合する位置から離れて当該位置への押圧を開放し、以て書類5を挟持しない状態となるように形成されている。
【0041】
より好適には、スライダー3が、図7(a)に示される書類5を挟持する状態において、基板2及び書類保護シート4を、その一端においてスライダー3の内側に設けられた押え部35と移動板31との間に挟むように形成されてもよい。
【0042】
規制壁部21を基板2の角部に設けて、スライダー3の第三端部323が規制壁部21の第二端212に当接することで最大押し込み位置となるように設定する場合、規制壁部21を形成するためには上下それぞれの角部の近傍に切込線20を1つずつ設ればよく、製造効率上は好適であるが、このような形態を採用した場合、スライダー3を最大押し込み位置に至らしめる度に規制壁部21に力が加わることを考慮すると、規制壁部21の耐久性を考慮してその左右方向の長さが長く設定されることが好ましい。
【0043】
他方、図示しないが、規制壁部21を基板2の角部よりも左右方向中央に寄った位置(図5において左方に寄った位置。)に設ける場合、規制壁部21を形成するためには、上下それぞれの角部の近傍に、第二端212と当接部214とをそれぞれ形成するために切込線20を横方向に並べて2つずつ設けることを要するが、これにより、基板2の一端と起立板33の内面とが当接する位置が最大押し込み位置となり、従って第三端部323と第二端212とが当接することが無く、この条件において規制壁部21の耐久性を考慮する必要が無い。
【0044】
つまり、製造効率を重視するなら、規制壁部21が基板2の角部に設けられることが好ましく、規制壁部21が劣化しにくい構成とすることを重視するなら、規制壁部21が基板2の角部よりも左右方向中央に寄った位置に形成されることが好ましく、これらは、書類挟みの大きさや想定する書類5の収容枚数などの諸条件に応じて選択されれば良い。
【0045】
また、規制壁部21は、折曲線213よりも先端211を形成する第一辺の方が長く、これらと接する第二端212と当接部214とは互いに平行関係を形成せず、以て少なくとも当接部214は先端211及び折曲線213との間で直角を形成せず、先端211と折曲線213とが平行であればこれらと同一線上に位置する4つの仮想直線を結ぶと仮想台形を形成するように設けられていてもよい。
【0046】
このように形成すると、図8(a)に示すように、スライダー3が、基板2に対してこの図において視認される上下方向に離れた状態で移動すると、当接部214と退移動阻止部322とが当接した後、さらに退方向(この図において右方向。)に移動する力を受けると、退移動阻止部322が傾斜した当接部214に沿ってこの図における上方向に移動するのに伴い移動板31が基板2に近づくように移動し、この動作が続くと、図8(b)に示すように、スライダー3と基板2とが当接する。
【0047】
加えて、書類挟みが図7(b)及び図8に示す非挟持状態のときに、スライダー3を基板2に対してこれらの図において視認される上下方向に離すには、当接部214により形成される傾斜を乗り越えて移動板31を引き下げる必要がある。つまり、当接部214が傾斜していると、書類挟みが非挟持状態のときにスライダー3が基板2に対して外れにくくなる。
【0048】
この発明は、スライダー3においては、移動の進退方向と直行する方向への移動や最大引き出し位置を越えた退方向への移動を規制するための他の部材を溶着や接着によって接続することに拠らず、切欠部32を設けることのみでこれらの移動を規制することが出来るものである。
【0049】
また、この発明は、基板2に移動の進退方向と直行する方向への移動や最大引き出し位置を越えた退方向への移動を規制するための他の部材を溶着や接着によって接続することに拠らず、基板2の角部若しくはその近傍に耳片21を設けこれを折り曲げることのみでこれらの移動を規制することが出来るものである。
【符号の説明】
【0050】
1 書類挟み
2 基板
20 切込線
21 耳片(規制壁部)
211 先端
212 第二端
213 折曲線
214 当接部
3 スライダー
31 移動板
32 切欠部
321 直行移動阻止部
322 退移動阻止部
323 第三端部
33 起立板
34 押圧板
35 押え部
4 書類保護シート
5 書類
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8