(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861002
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】飛散防止装置の取付構造
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
E04G23/08 A
E04G23/08 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-184052(P2016-184052)
(22)【出願日】2016年9月21日
(65)【公開番号】特開2018-48473(P2018-48473A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】000103655
【氏名又は名称】オカダアイヨン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516284688
【氏名又は名称】株式会社エコワス
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】間宮 剛
(72)【発明者】
【氏名】橋 勇介
(72)【発明者】
【氏名】森屋 光石
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−017285(JP,A)
【文献】
特開2013−256820(JP,A)
【文献】
特開平08−177370(JP,A)
【文献】
特開2013−002034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームを有する重機により解体対象物を解体する際、飛散物の発生を防止するための飛散防止装置を前記アームに取り付けるための取付構造であって、
アタッチメントを着脱自在に保持するための取付部材が、前記重機の前記アームの先端部に着脱自在に設けられるとともに、前記取付部材に前記飛散防止装置が取り付けられており、
前記飛散防止装置は、
前記アタッチメントの近傍で前記解体対象物の解体部分を養生する養生部材と、
前記養生部材を支持する支持部と、を有し、
前記支持部が、前記取付部材に対して係合部材を介して取り付けられる
ことを特徴とする飛散防止装置の取付構造。
【請求項2】
前記支持部は、前記取付部材との間に架設され、その延長方向に伸縮自在な第1の伸縮機構を備えており、
前記第1の伸縮機構の伸縮動作によって、前記飛散防止装置が前記取付部材に対し、前記係合部材を介して回動する
ことを特徴とする請求項1に記載の飛散防止装置の取付構造。
【請求項3】
前記支持部は、
自身の長手方向およびまたは短手方向に前記養生部材を拡大縮小させるための第2の伸縮機構を更に備えており、
前記養生部材は、
前記第2の伸縮機構による伸縮動作によって、拡大縮小可能となっている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の飛散防止装置の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームを有する重機に対し、建造物を解体する際にボルト等の飛散物の飛散を防止する飛散防止装置を取り付けるための取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート製の建造物を解体する場合、一般的に重機が用いられ、この重機としては、例えば、油圧ショベル等のアームを有するものが知られている。この場合、重機は、アームの先端にアタッチメントの一つとして装着される破砕機によって、建造物を解体する。破砕機は、鋏状の開閉アームを有し、この開閉アームを油圧シリンダ等によって開閉させるようになっている。また、アタッチメントは、破砕機に限らず、用途に応じて、ドリルや掘削機等の様々な形態のものを適宜選択することが可能となっている。
【0003】
ところで、このような重機による建造物の解体作業においては、破砕機によって建造物を取り壊す際に、鉄筋コンクリートに含まれる鉄骨ボルトやリベット等が飛散する場合がある。そのため、鉄骨のボルトジョイント部分での解体を避け、梁の中間部分で解体し、ボルト部分は囲われた空間内で細かく解体するようにしていた。また、ボルト部分に養生用のメッシュシートを巻き付け、メッシュシートごと破砕機によって圧壊する場合もあった。
【0004】
しかしながら、ボルトジョイント部分を避けて一度解体し、前述のような囲われた空間に移動して再度小割りするという解体作業では二度手間となり、作業効率が低下すると共に作業時間を要する問題があった。また、メッシュシートを解体部分に巻き付ける場合には、メッシュシートの耐久性を上げると、その分、メッシュシートの費用が嵩む上、解体部分を圧壊し難くなり、一方、耐久性を下げると、その分、メッシュシートが短期間のうちに破断され、転用率が下がるため、やはりメッシュシートの費用が嵩むという問題があった。
【0005】
そこで、従来、このような鉄骨ボルト等の飛散を防止すると共に、作業効率の低下や作業時間およびコストの増大といった問題を解決するべく、例えば特許文献1に記載されるような飛散防止装置が提案されている。この飛散防止装置は、重機のアームの破砕機近傍にボルト等の締結部材を介して直接取り付けられ、当該破砕機による建造物の解体部を覆うことで、鉄骨のボルトジョイント部分での解体を避けることなく、またメッシュシートの巻き付けを必要とすることなく、建造物の解体作業における飛散物の飛散を防止できる利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−17285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述した重機は、建造物の解体作業のように、飛散防止装置が必要となる作業ばかりではなく、当該飛散防止装置が不要な作業にも多く使用されている。そのため、このような飛散防止装置は、必要に応じて重機に取り付けられ使用されている。
【0008】
ところが、特許文献1の飛散防止装置の場合、破砕機近傍のアーム部分にボルト等の締結部材を介して直接取り付ける構造のため、重機に対する着脱作業が煩雑となり、作業効率の面で問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、重機に対する飛散防止装置の着脱作業を格段に容易化でき、当該飛散防止装置の着脱作業を含めた解体対象物の解体作業の効率化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するべく、本発明に係る飛散防止装置の取付構造は、アームを有する重機により解体対象物を解体する際、飛散物の発生を防止するための飛散防止装置を前記アームに取り付けるための取付構造であって、
アタッチメントを着脱自在に保持するための取付部材が、前記重機の前記アームの先端部に着脱自在に設けられるとともに、前記取付部材に前記飛散防止装置が取り付けられており、前記飛散防止装置は、前記アタッチメントの近傍で前記解体対象物の解体部分を養生する養生部材と、前記養生部材を支持する支持部と、を有し、前記支持部が、前記取付部材に対して係合部材を介して取り付けられることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、飛散防止装置の支持部を、重機のアームの先端部に設けられた取付部材に対し、係合部材を介して取り付けるようにしたので、重機に対する飛散防止装置の着脱作業を格段に容易化でき、当該飛散防止装置の着脱作業を含めた解体対象物(例えば、建造物)の解体作業の効率化を図ることができる。
【0012】
このとき、本発明に係る飛散防止装置の取付構造において、
前記支持部は、前記取付部材との間に架設され、その延長方向に伸縮自在な伸縮機構を備えており、
前記伸縮機構の伸縮動作によって、前記飛散防止装置が前記取付部材に対し、前記係合部材を介して回動することが好ましい。
【0013】
これによれば、伸縮機構を伸縮させることで、飛散防止装置を取付部材に対して、支持部の係合部材を介して取り付けられた部位を中心に回動させることができる。よって、当該飛散防止装置を解体作業の内容に応じて、アタッチメントから離した位置に退避させた状態で保持できると共に、当該アタッチメントの近傍に位置させた状態で保持できるので、重機の操作性を向上させることができ、解体作業の効率化を図ることができる。
【0014】
また、本発明に係る飛散防止装置の取付構造において、
前記支持部は、
自身の長手方向およびまたは短手方向に前記養生部材を拡大縮小させるための第2の伸縮機構を更に備えており、
前記養生部材は、
前記第2の伸縮機構による伸縮動作によって、拡大縮小可能となっていることが好ましい。
【0015】
これによれば、必要に応じて養生部材を拡大することでアタッチメントを覆い、解体対象物(例えば、建造物)を解体する際に鉄骨ボルト等の飛散物の発生を防止することができる。また、必要に応じて養生部材を縮めて収納することができるので、移動時などの養生が不要な場合に、飛散防止装置が障害となることを未然に回避できる。さらに、養生が不要な場合の解体作業の効率化を図ることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、重機に対する飛散防止装置の着脱作業を格段に容易化でき、当該飛散防止装置の着脱作業を含めた解体対象物の解体作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態における飛散防止装置を用いた重機を示す概略構成図である。
【
図2】
図1の飛散防止装置を示し、(a)はアタッチメントが取り付けられた状態を示す概略構成図、(b)はアタッチメントが取り外された状態を示す概略構成図である。
【
図3】
図1の重機における飛散防止装置を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る飛散防止装置の取付構造の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う飛散防止装置の取付構造もまた本発明の技術思想に含まれる。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の飛散防止装置1は、解体対象物としての鉄筋コンクリート製の建造物(不図示)を解体する際に鉄骨ボルト等(不図示)の飛散を防止するためのものであり、油圧ショベル等の重機10が有するアーム11に取り付けられて用いられる。
図1および
図2(a)に示すように、アーム11の先端部には、解体作業用器機(本実施形態の場合、破砕機)のアタッチメント12を着脱自在に保持するための取付部材13がピン14を介して着脱自在に取り付けられている。アタッチメント12は、取付部材13に対し、ピン15を介して着脱自在に取り付けられており、鋏状の開閉アーム12aを油圧シリンダ12bの伸縮によって開閉させるようになっている。
【0020】
なお、重機10はアーム11を有する一般的なものを使用できるため、ここでは詳細な説明は省略する。また、アタッチメント12は、破砕機に限らず、用途に応じて、ドリルや掘削機等の様々な形態のものを適宜選択することが可能である。
【0021】
具体的に、飛散防止装置1は、
図2(a),(b)および
図3に示すように、アタッチメント12の近傍で不図示の建造物の解体部分を養生する養生部材としての養生ネット2と、養生ネット2を支持する支持部3と、を有し、支持部3が、取付部材13に対して係合部材であるピン16等を介して回動自在に取り付けられている。なお、
図3では養生ネット2の図示を省略している。
【0022】
支持部3は、油圧ジャッキ等からなる伸縮機構4を備えている。伸縮機構4は、支持部3と取付部材13との間に架設されており、その伸縮動作によって、飛散防止装置1が支持部3のピン16を介して取り付けられた部位を中心に回動可能となっている。よって、飛散防止装置1を解体作業の内容に応じて、アタッチメント12から離した位置に退避させたり、当該アタッチメント12の近傍位置に保持したりすることができる。
【0023】
また、支持部3は、例えば矩形状の骨格31の一端側に、側方から見て略くの字に屈曲した状態で一対のステー32,32が結合されてなり、当該ステー32,32がピン16を介して取付部材13に回動自在に係合されている。なお、
図3では図示省略したが、支持部3の骨格31の一端側と、ステー32,32とを覆うカバー33(
図2(a),(b)参照)を設けることで、支持部3の剛性を向上させることができる。
【0024】
骨格31には、自身の長手方向およびまたは短手方向に養生ネット2を拡大縮小させるための第2の伸縮機構である伸縮ステー5を更に備えている。伸縮ステー5は、例えば水圧・油圧・空気圧等によって伸縮可能な2本の棒状部材からなり、これら棒状部材が互いに交差して略X字状に配設されている。そして、養生ネット2は、伸縮ステー5に取り付けられ、この伸縮ステー5を伸長させることによって、アタッチメント12を覆うように拡げられる。また、養生ネット2は、伸縮ステー5を収縮させることによって、アーム11を移動させる際の妨げとならないようにコンパクトに縮められる。このように、養生ネット2を縮めた場合、例えば伸縮ステー5から取り外して(または、伸縮ステー5ごと支持部3から取り外して)別途、収納することも可能である。
【0025】
以上、説明したように、本実施形態によれば、重機10に対して破砕機等の解体作業用機器のアタッチメント12を着脱自在に保持するための取付部材13が、重機10が有するアーム11の先端部に着脱自在に設けられ、この取付部材13に飛散防止装置1が取り付けられる。すなわち、飛散防止装置1は、直接、重機10のアーム11に取り付けられるのではなく、アタッチメント12を着脱可能に保持すると共に、自身もアーム11に対して容易に着脱可能な取付部材13を介して、重機10のアーム11に取り付けられるので、重機10に対する飛散防止装置1の着脱作業を格段に容易化でき、当該飛散防止装置1の着脱作業を含めた建造物の解体作業の効率化を図ることができる。また、取付部材13には、各種解体作業用機器のアタッチメント12が着脱自在に取り付けられるため、建造物の解体作業における段取りを効率的に行うことができる。
【0026】
さらに、飛散防止装置1は、アタッチメント12の近傍で建造物の解体部分を養生する養生ネット2と、この養生ネット2を支持する支持部3と、を有し、この支持部3を、重機10のアーム11の先端部に設けられた取付部材13に対し、ピン16を介して取り付けられており、支持部3は、取付部材13との間に架設され、その延長方向に伸縮自在な伸縮機構4を備えており、伸縮機構4を伸縮させることで、飛散防止装置1を取付部材13に対して、支持部3のピン16を介して取り付けられた部位を中心に回動させることができる。よって、飛散防止装置1を解体作業の内容に応じて、アタッチメント12から離した位置に退避させたり、当該アタッチメント12の近傍位置に保持したりすることができるので、重機10の操作性を向上させることができ、解体作業の効率化を図ることができる。
【0027】
また、支持部13は、骨格31の長手方向およびまたは短手方向に養生ネット2を拡大縮小させるための伸縮ステー5を更に備えており、養生ネット2は、伸縮ステー5による伸縮動作によって、拡大縮小可能となっているので、必要に応じて養生ネット2を拡大することでアタッチメントを覆い、建造物の解体する際にボルト等の飛散物の飛散を防止することができる。また、必要に応じて養生ネット2を縮めて収納することができるので、移動時などの養生が不要な場合に、飛散防止装置1が障害となることを未然に回避できる。さらに、養生が不要な場合の解体作業の効率化を図ることもできる。
【0028】
なお、上述した実施形態では、飛散防止装置1を用いる重機10として、油圧ショベル等のアーム11を有する自走式作業台車を適用する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要はアームを有するものであれば、自走式・他走式・固定式を問わず、この他種々の重機を広く適用できる。
【符号の説明】
【0029】
1…飛散防止装置, 2…養生ネット(養生部材), 3…支持部, 31…骨格, 32…ステー, 4…伸縮機構(第1の伸縮機構), 5…伸縮ステー(第2の伸縮機構), 10…重機, 11…アーム, 12…アタッチメント, 13…取付部材, 14、15、16…ピン(係合部材)