(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、図を参照して、本発明の実施形態である固体酸化物形燃料電池システムについて説明をする。
図1は、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池システムを示す構成図である。
図1に示すように、固体酸化物形燃料電池システム1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えてなる。
【0015】
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材7を介して密封空間8が形成されている。なお、断熱材は設けないようにしても良い。この密封空間8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤ガス(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(
図4参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(
図5参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
【0016】
燃料電池モジュール2の密封空間8の上述した発電室10の上方には、燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。また、この燃焼室18の上方には、燃料ガスを改質する改質器20が配置され、前記残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、改質器20の熱を受けて空気を加熱し、改質器20の温度低下を抑制するための空気用熱交換器22が配置されている。
【0017】
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料ガスを遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤である空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
【0018】
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
【0019】
次に、
図2及び
図3により、固体酸化物形燃料電池システムの燃料電池モジュールの内部構造を説明する。
図2は、固体酸化物形燃料電池システムの燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、
図3は、
図2のIII−III線に沿った断面図である。
図2及び
図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内の密封空間8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
【0020】
改質器20は、その上流端側に純水を導入するための純水導入管60と改質される燃料ガスと改質用空気を導入するための被改質ガス導入管62が取り付けられ、また、改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20aと改質部20bが形成され、改質部20bには改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。
【0021】
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。
【0022】
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。
【0023】
次に、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。この空気用熱交換器22は、上流側に空気集約室70、下流側に2つの空気分配室72を備え、これらの空気集約室70と空気分配室72は、6個の空気流路管74により接続されている。ここで、
図6に示すように、3個の空気流路管74が一組(74a,74b,74c,74d,74e,74f)となっており、空気集約室70内の空気が各組の空気流路管74からそれぞれの空気分配室72へ流入する。
【0024】
空気用熱交換器22の6個の空気流路管74内を流れる空気は、燃焼室18で燃焼して上昇する排気ガスにより予熱される。空気分配室72のそれぞれには、空気導入管76が接続され、この空気導入管76は、下方に延び、その下端側が、発電室10の下方空間に連通し、発電室10に余熱された空気を導入する。
【0025】
次に、マニホールド66の下方には、排気ガス室78が形成されている。また、
図3に示すように、ハウジング6の長手方向に沿った面である前面6aと後面6bの内側には、上下方向に延びる排気ガス通路80が形成され、この排気ガス通路80の上端側は、空気用熱交換器22が配置された空間と連通し、下端側は、排気ガス室78と連通している。また、排気ガス室78の下面のほぼ中央には、排気ガス排出管82が接続され、この排気ガス排出管82の下流端は、
図1に示す上述した温水製造装置50に接続されている。
図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
【0026】
次に
図4により燃料電池セルスタック14について説明する。
図4は、固体酸化物型燃料電池システムの燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図4に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の下支持板68及び上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴68a及び100aがそれぞれ形成されている。
【0027】
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極92の外周面全体と電気的に接続される空気極用接続部102bとにより一体的に形成されている。空気極用接続部102bは、外側電極92の表面を上下方向に延びる鉛直部102cと、この鉛直部102cから外側電極92の表面に沿って水平方向に延びる多数の水平部102dとから形成されている。また、燃料極用接続部102aは、空気極用接続部102bの鉛直部102cから燃料電池セルユニット16の上下方向に位置する内側電極端子86に向って斜め上方又は斜め下方に向って直線的に延びている。
【0028】
さらに、燃料電池セルスタック14の端(
図4では左端の奥側及び手前側)に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104(図示せず)に接続され、上述したように、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
【0029】
次に、
図5を参照して、燃料電池セルユニット16について説明する。
【0030】
図5に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続されたキャップである内側電極端子86とを備えてなる。燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の多孔質支持体91上に内側電極90と、外側電極92と、内側電極90と外側電極92との間にある固体電解質94とを備えてなる。この内側電極90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極である。一方、外側電極92は、空気と接触する空気極であり、(+)極である。
【0031】
内側電極90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。本実施形態では、内側電極90は、Ni/YSZからなる。
【0032】
固体電解質94は、内側電極90の外周面に沿って全周にわたって形成されており、下端は内側電極90の下端よりも上方で終端し、上端は内側電極90の上端よりも下方で終端している。固体電解質94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0033】
外側電極92は、電解質94の外周面に沿って全周にわたって形成されており、下端は固体電解質94の下端よりも上方で終端し、上端は固体電解質94の上端よりも下方で終端している。外側電極92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
【0034】
次に、内側電極端子86について説明する。燃料電池セル84の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。
【0035】
内側電極端子86は、燃料電池セル84の上端部をそれぞれ包囲するように設けられ、燃料電池セル84により発電された電力を燃料電池セル84から取り出すための集電部材として機能する。
図5に示すように、内側電極90の上部90aは、固体電解質94と外側電極92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備える。内側電極90の露出部90aは、電解質層94と外側電極92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、内側電極90の上端面90cに直接接続され、或いは、導電性のシール材96を介して内側電極90の外周面90b、及び、内側電極90の上端面90cと接続されており、これにより、内側電極90と電気的に接続されている。また、内側電極端子86の中心部には、内側電極90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が画成されている。
【0036】
次に、本発明において用いられる金属部材300について説明する。
【0037】
(金属部材)
本発明において用いられる金属部材300は、金属部材の内側に設けられ、未反応の燃料ガスが流通するための流通領域と、未反応の燃料ガスが流通領域から金属部材の外側に排出し、燃焼する噴出口と、を有し、噴出口において、流通領域から噴出口に未反応の燃料ガスが流入する流入径d
1と、噴出口から金属部材の外側に未反応の燃料ガスが排出する排出径d
2が、d
1<d
2を満たすものである。これにより、噴出口にて未反応の燃料ガスを燃焼させる場合において、異常酸化が発生し、噴出口の内径閉塞が起こっても排出径d
2が流入径d
1よりも大きいため燃料ガスの流通を阻害せず、ガスの分散性低下を抑制することが可能となる。
【0038】
流入径d
1は、金属部材300の内壁にある噴出口の直径を指す。また、排出径d
2は、金属部材300の外壁にある噴出口の直径を指す。
【0039】
本発明において、好ましくは、金属部材300の噴出口202の断面形状は、C面形状または逆R面形状である。これにより異常酸化が発生することで噴出口の内径閉塞が起こっても流入径よりも大きいため燃料ガスの流通を阻害せず、ガスの分散性低下を抑制することが可能となる。なお、C面形状とは、
図6に示すように、角部を直線状に落とした形状である。また、逆R面形状とは、
図7や
図8に示すように、金属部材300の内側に湾曲するように落とした形状である。
【0040】
本発明において、好ましくは、金属部材300の噴出口202は、面取り加工により形成されたものである。金属部材300に貫通孔を形成すると、貫通孔の端部にバリが生成してしまう。これを面取り加工により除くことにより、バリが無い噴出口202を形成できる。したがって、噴出口202付近での異常酸化を抑制し、ガスの分散性低下を抑制できる。
【0041】
面取り加工は、上述のようにC面形状または逆R面形状となるように行うのが好ましい。
【0042】
本発明において、好ましくは、金属部材300の噴出口202は、プレス成形により形成されたものである。すなわち、噴出口202の形成過程において、プレス成形を用いていれば良い。金属部材300にプレス成形により貫通孔を形成した後、貫通孔の端部の処理を行うことにより噴出口202を形成してもよい。また、貫通孔を形成した後、プレス成形により貫通孔の端部の処理を行うことにより噴出口202を形成しても良い。貫通孔の端部の処理として、上述のように面取り加工を行う場合、プレス成形により行っても良い。
【0043】
本発明において、金属部材300は、フェライト系ステンレスやオーステナイト系ステンレスなどの金属で構成されていることが好ましい。好ましくは、フェライト系ステンレスである。これにより燃料電池セル84を構成する他の部材との熱膨張差を小さくすることができ、燃料電池の運転時に発生するクラックを抑制することが出来る。
【0044】
次に、本発明で用いられる金属部材300を内側電極端子86として用いる実施形態について、説明する。
【0045】
本発明における金属部材300は、内側電極端子86として用いることが可能である。特に、燃料電池セル84の上端部に設けられた内側電極端子86として用いることができる。燃料電池セル84の上端部を覆うように金属部材300(内側電極端子86)が設けられる。なお、燃料電池セル84の上端部とは、燃料電池モジュール2において、改質器20が設けられている側に向いている燃料電池セル84の端部である。
【0046】
図6は、
図5のI部の拡大断面図である。内側電極端子86は、燃料電池セル84の端部を覆う本体部200と、本体部200の端部に設けられ本体部200よりも径が小さい先端部201とを有する。内側電極端子86の中心部には、内側電極90の燃料ガス流路と連通する燃料ガス流路98が形成されている。燃料ガス流路98は、内側電極90において発電で用いられなかった未反応の燃料ガスが流通するための流通領域301として機能する。流通領域301を通った未反応の燃料ガスは、内側電極端子86の上端、つまり、先端部201に設けられた噴出口202から噴出される。この際、内側電極端子86の外側、つまり燃料電池セル84の外側には、外側電極に92に供給するための酸化剤ガスが存在している。噴出口202から未反応の燃料ガスが噴出し、未反応の燃料ガスと酸化剤ガスとが反応することにより、燃焼する。燃焼は、未反応の燃料ガスと酸化剤ガスとが出会う噴出口202の外側で起こる。
【0047】
本発明では、金属部材300の噴出口202において、流通領域301から噴出口202に未反応の燃料ガスが流入する流入径d
1と、噴出口202から金属部材の外側に未反応の燃料ガスが排出する排出径d
2の関係がd
1<d
2である。これにより、噴出口202にて異常酸化が発生したとしても、金属部材300の流通領域301を流通する未反応ガスの分散性低下を抑制できる。よって、発電効率の低下を抑制できる。なお、
図6に示すように、流入径d
1は、金属部材300の内壁にある噴出口の直径を指す。また、排出径d
2は、金属部材300の外壁にある噴出口の直径を指す。
図6は、噴出口202の断面形状はC面形状である。
【0048】
次に、本発明の金属部材300を排気集約室500として用いた実施形態について説明する。
【0049】
図9を参照して説明する。
図9は、内側電極端子86の上端部を覆うようにして排気集約室500を設けた場合の燃料電池セル84上端の断面図である。
【0050】
図9では、燃料電池セル84の上端部に内側電極端子86を設け、かつ排気集約室500を設けているが、その他の構成は前述の構成と同一であるため、説明は省略する。排気集約室500は、1つの燃料電池セル84に対し、1つの排気集約室500を設けても良いが、複数の燃料電池セル84に対し、1つの排気集約室500を設けるのが好ましい。
図9では、2つの燃料電池セル84に対し、1つの排気集約室500を設けている。
【0051】
排気集約室500は、燃料電池セル84の内側電極90の燃料ガス流路88と連通しており、燃料電池セル84から排出される発電に用いられなかった燃料ガスである未反応の燃料ガスを集約する。集約された未反応の燃料ガスは、排気集約室500内の流通領域301を通り、天井面に形成された噴出口202から排出して燃焼する。この際、排気集約室500の外側の周囲には、酸化剤ガスが存在しているため、未反応の燃料ガスと酸化剤ガスとが反応することにより、燃焼する。
【0052】
金属部材300を内側電極端子86として用いる場合と同様に、金属部材300の噴出口202において、金属部材300の内壁に設けられ、流通領域301から噴出口202に未反応の燃料ガスが流入する流入径d
1と、金属部材300の外壁に設けられ、噴出口202から金属部材の外側に未反応の燃料ガスが排出する排出径d2の関係がd
1<d
2である。これにより、噴出口202にて異常酸化が発生したとしても、金属部材300の流通領域301を流通する未反応ガスの分散性低下を抑制できる。よって、発電効率の低下を抑制できる。
【0053】
燃料電池モジュール2において、排気集約室500を設ける場合、内側電極端子86と排気集約室500との間にシール材97を設ける。これにより、未反応の燃料ガスが排気集約室の噴出口202で燃焼するため、燃焼熱によって生じる熱応力が燃料電池セルに伝わる影響を緩和することが出来る。
【0054】
(金属部材の製造方法)
本発明で用いられる金属部材の製造方法について説明する。
図10に、金属部材として内側電極端子86を製造する場合の製造プロセスの模式図を示す。なお、ここでは内側電極端子86を例にとって説明するが、これに限定されるものではなく、排気集約室500も同様の方法で作製することが可能である。
【0055】
本発明で用いられる金属部材の製造方法は、(1)金属板を準備する準備工程と、(2)金属板を所望の形状に成形し、中間体を製造する作製工程と、(3)中間体にプレス成形により貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、(4)貫通孔の端部を加工し、噴出口を形成する噴出口形成工程と、を含む。
【0056】
準備工程では、所望の金属で構成された金属板を準備する。金属板の厚みは0.1mm〜3mm程度であるものが好ましい。前処理として、金属板の表面を電解研磨処理しても良い。これにより、金属基材表面の凹凸を無くすことにより表面を滑らかにし、表面に緻密な金属酸化物層を形成することが可能となる。
【0057】
製造工程では、準備工程で準備した金属板を所望の形状に成形し、中間体を得る。成形の方法として、プレス成形、曲げ加工溶接加工を用いることができる。好ましくはプレス成形である。これにより、継ぎ目のない成形が可能となる。
【0058】
貫通孔形成工程では、作製工程で作製した所望の形状の中間体にプレス成形により貫通孔240を形成する。この際、
図10に示すように、貫通孔240の端部にバリ250が生成してしまう。バリ250は、プレス成形の方向に生成される。このバリ250が、未反応の燃料ガスの排出方向に存在すると、噴出口202での燃焼が異常酸化してしまうため、好ましくない。
【0059】
噴出口形成工程では、貫通孔形成工程にて形成された貫通孔240の端部を処理することにより、噴出口202を形成する。この際、噴出口202の端部に形成されたバリ250を取り除く処理を行う。これにより、噴出口202において、未反応の燃料ガスが流入する流入径d
1と、未反応の燃料ガスが排出する排出径d
2が、d
1<d
2を満たすことが可能となる。したがって、異常酸化の発生を抑制することができ、さらに発生したとしても燃料ガスの噴出口202の閉塞による影響を低減できるため、ガスの分散性が低下してしまうのを抑制できる。
【0060】
処理は、機械研磨、電解研磨、プレス成形などの公知の方法を用いることができる。機械研磨としては、ドリルやリーマを用いた加工またはバフ研磨を用いることができる。本発明では、プレス成形を用いることが好ましい。これにより、削り取った金属粉の付着のおそれなく、一連の工程により金属部材300の作製を行うことができる。
【実施例】
【0061】
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0062】
下記の方法により金属部材を作製し、耐久性試験を行った。
【0063】
(金属部材1)
表1に示す組成の金属板を用意した。なお、組成はXRF(X−Ray Fluorescence リガク製)を使用し、切り出した金属板表面の半定量分析を行うことで求めた。この金属板をキャップ形状になるように成形し、中間体を得た。中間体をプレス成形することにより貫通孔を形成した。以上より、貫通孔を有するキャップ形状の金属部材1を得た。
【0064】
【表1】
【0065】
(金属部材2)
金属部材1に対し、
図11に示すように、貫通孔の端部をピンで面押し加工することにより、噴出口の流入径d
1と排出径d
2の関係がd
1<d
2であり、端部がC面形状であるキャップ形状である金属部材2を得た。
【0066】
(試験方法)
上述の方法により得られた金属部材を、電気炉において880℃、400時間大気下で加熱した。加熱後の金属部材の噴出口付近をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察した。
【0067】
(結果)
得られたSEM写真を
図12に示す。
図12は金属部材1のSEM図であり、貫通孔の端部を加工していない金属部材1は、先端が異常酸化してスケールが堆積することにより、内径閉塞が見られた。金属部材2を観察したところ、異常酸化が確認されず、初期と同形状を保っていた。