特許第6861021号(P6861021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861021
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】建物の開閉体システム
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/75 20150101AFI20210412BHJP
   E05F 15/79 20150101ALI20210412BHJP
   A47L 9/28 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   E05F15/75
   E05F15/79
   A47L9/28 E
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-241094(P2016-241094)
(22)【出願日】2016年12月13日
(65)【公開番号】特開2018-96101(P2018-96101A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】初山 恵莉
【審査官】 桐山 愛世
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−129614(JP,A)
【文献】 特開2016−045580(JP,A)
【文献】 実開平05−094485(JP,U)
【文献】 特開2002−054350(JP,A)
【文献】 実開昭48−091730(JP,U)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0103098(KR,A)
【文献】 特開2016−059990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00−79
A47L 9/22−32
G05D 1/00−12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁と床とにより囲まれた屋内空間と、
前記壁の一部に形成された出入口と、
その出入口を開閉する開閉体と、
前記壁と前記床との境界に沿って設けられた見切り材とを備える建物に適用され、
前記開閉体を開側及び閉側のうち少なくとも側に動作させる駆動部と、
前記見切り材に物体が衝突したことを検知する衝突検知手段と、
前記衝突検知手段により前記見切り材への物体の衝突が検知された場合に、その検知からの経過時間を計測する計時手段と、
前記計測される経過時間が所定時間を超えた場合に、前記衝突検知手段の検知結果に基づいて、前記開閉体を開側に動作させるよう前記駆動部を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする建物の開閉体システム。
【請求項2】
前記開閉体は引き戸であり、
前記駆動部は、前記引き戸側に突出することで当該引き戸を開側に押す突出装置であることを特徴とする請求項に記載の建物の開閉体システム。
【請求項3】
前記開閉体は引き戸であり、
前記駆動部は、前記引き戸を開側に引っ張ることで当該引き戸を開側に動作させる引張装置であることを特徴とする請求項に記載の建物の開閉体システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記衝突検知手段による物体の衝突検知が所定時間内に複数回あった場合に、前記開閉体を開側に動作させるよう前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の建物の開閉体システム。
【請求項5】
前記屋内空間を囲む複数の前記壁にはそれぞれ前記見切り材が設けられており、
前記各見切り材のうち少なくともいずれか複数の見切り材に前記衝突検知手段が設けられており、
前記制御手段は、前記各衝突検知手段の検知結果に基づいて、前記開閉体を開側に動作させるよう前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の建物の開閉体システム。
【請求項6】
前記屋内空間を囲む複数の前記壁のうち、前記出入口が設けられた前記壁の前記見切り材には前記衝突検知手段が設けられておらず、当該壁と異なる壁の前記見切り材に前記衝突検知手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の建物の開閉体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の開閉体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅等の建物では、部屋の掃除を行うに際し自走式の掃除機(掃除ロボット)が用いられる場合がある。特許文献1には、自走式掃除機がメモリに記憶された建物内の間取り情報を参照しつつ、建物内(複数の部屋)を自律走行しながら掃除を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−129614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、部屋のドアが閉められていると、自走式掃除機が出入口を通じて隣り合う部屋間を行き来できなくなってしまう。そのため、その場合には、自走式掃除機により複数の部屋を掃除することができなくなるおそれがある。
【0005】
また、部屋のドアが開き戸である場合には、開き戸が開かれることで開き戸と壁とが対向し、それによって、それら両者間に自走式掃除機が入り込めなくなる場合が想定される。その場合、それら両者間のスペースについては掃除することができなくなるおそれがある。
【0006】
このように、上記の技術では、自走式掃除機により屋内の掃除を行うにあたり、その掃除を行える範囲がドアにより制限されてしまう場合が想定される。そのため、上記の技術は、その点で未だ改善の余地があると考えられる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、自走式掃除機による屋内の掃除を好適に行うことを可能とする建物の開閉体システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物の開閉体システムは、壁と床とにより囲まれた屋内空間と、前記壁の一部に形成された出入口と、その出入口を開閉する開閉体と、前記壁と前記床との境界に沿って設けられた見切り材とを備える建物に適用され、前記開閉体を開側及び閉側のうち少なくともいずれかの側に動作させる駆動部と、前記見切り材に物体が衝突したことを検知する衝突検知手段と、その衝突検知手段の検知結果に基づいて、前記開閉体を開側又は閉側に動作させるよう前記駆動部を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
自走式掃除機により屋内空間の掃除が行われる際には、自走式掃除機が屋内空間の周囲の壁と床との境界に設けられる見切り材に衝突しながら掃除を行うことが考えられる。そこで、本発明では、この点に着目し、見切り材に物体が衝突したことを検知する衝突検知手段を設け、その衝突検知手段の検知結果に基づいて、開閉体を開側又は閉側に動作させるよう駆動部を制御している。この場合、見切り材に自走式掃除機が衝突した場合に、開閉体を開側又は閉側に動作させることができるため、自走式掃除機の走行範囲が開閉体により制限されてしまうのを抑制することが可能となる。これにより、自走式掃除機による屋内の掃除を好適に行うことができる。
【0010】
第2の発明の建物の開閉体システムは、第1の発明において、前記駆動部は、前記開閉体を少なくとも開側に動作させるものであり、前記制御手段は、前記衝突検知手段の検知結果に基づいて、前記開閉体を開側に動作させるよう前記駆動部を制御することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、自走式掃除機が見切り材に衝突した場合に開閉体を開側に動作させることができる。これにより、掃除開始時には開閉体が閉まっていたとしても、開閉体を開側に動作させることで、自走式掃除機を出入口を通じて隣りの屋内空間に移動させることが可能となる。そのため、複数の屋内空間の掃除を行うことが可能となる。
【0012】
第3の発明の建物の開閉体システムは、第2の発明において、前記開閉体は引き戸であり、前記駆動部は、前記引き戸側に突出することで当該引き戸を開側に押す突出装置であることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、突出装置により引き戸が開側に押されることで引き戸が開動作される。この場合、駆動部として、引き戸を開閉可能な開閉機構(自動ドア機構等)を設ける場合と比べ、駆動部(突出装置)を比較的簡単に建物に設置することができる。そのため、本システムを建物に導入する上で実用上好ましい構成といえる。
【0014】
第4の発明の建物の開閉体システムは、第2の発明において、前記開閉体は引き戸であり、前記駆動部は、前記引き戸を開側に引っ張ることで当該引き戸を開側に動作させる引張装置であることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、引張装置により引き戸が開側に引っ張られることで引き戸が開動作される。この場合、上記第3の発明と同様、駆動部(引張装置)を比較的簡単に建物に設置することができるため、本システムを建物に導入する上で実用上好ましい構成といえる。
【0016】
第5の発明の建物の開閉体システムは、第2乃至第4のいずれかの発明において、前記衝突検知手段により前記見切り材への物体の衝突が検知された場合に、その検知からの経過時間を計測する計時手段を備え、前記制御手段は、前記計測される経過時間が所定時間を超えた場合に、前記衝突検知手段の検知結果に基づいて、前記開閉体を開側に動作させるよう前記駆動部を制御することを特徴とする。
【0017】
ところで、自走式掃除機による屋内空間の掃除が開始された直後に、見切り材に自走式掃除機が衝突して開閉体が開動作されると、屋内空間の掃除がまだ終わっていないにもかかわらず、自走式掃除機が出入口より屋内空間の外へと移動してしまう場合が想定される。そこで本発明では、この点に鑑み、見切り材への物体の衝突検知があってからの経過時間を計測し、換言すると自走式掃除機による掃除開始からの経過時間を計測し、そして、その計測した経過時間が所定時間を超えた場合に開閉体を開動作させるようにしている。この場合、自走式掃除機による屋内空間の掃除が終了した後に開閉体を開動作させることができるため、屋内空間の掃除が終了していないにもかかわらず、自走式掃除機が屋内空間の外に移動してしまう事態が生じるのを防止できる。
【0018】
第6の発明の建物の開閉体システムは、第1の発明において、前記開閉体は、前記屋内空間側に回動することで開状態となる開き戸であり、前記駆動部は、前記開き戸を少なくとも閉側に動作させるものであり、前記制御手段は、前記開き戸を閉側に動作させるよう前記駆動部を制御することを特徴とする。
【0019】
開き戸が開いた状態にある場合には、その開き戸と屋内空間の壁との間に自走式掃除機が入り込めず、それら両者の間については掃除ができなくなる場合が想定される。その点本発明では、衝突検知手段の検知結果に基づいて、開き戸を閉側に動作させるようにしているため、自走式掃除機が見切り材に衝突した場合に、開き戸を閉側に動作させることができる。これにより、掃除開始時に開き戸が開状態にあっても、開き戸を閉側に動作させることで、開き戸と壁との間を掃除することが可能となる。
【0020】
第7の発明の建物の開閉体システムは、第6の発明において、前記駆動部は、前記開き戸側に突出することで当該開き戸を閉側に押す突出装置であることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、突出装置により開き戸が閉側に押されることで、開き戸が閉動作される。この場合、駆動部として、開き戸を開閉可能な開閉機構(自動ドア機構等)を設ける場合と比べ、駆動部(突出装置)を比較的簡単に建物に設置することが可能となる。そのため、本システムを建物に導入する上で実用上好ましい構成といえる。
【0022】
第8の発明の建物の開閉体システムは、第7の発明において、前記突出装置は、前記開き戸の戸当たりにより構成され又は前記戸当たりに設けられていることを特徴とする。
【0023】
屋内空間の床には、開き戸が開かれた状態で当該開き戸が当たる戸当たりが設けられている場合がある。そこで本発明では、この戸当たりに着目し、突出装置を戸当たりにより構成し又は戸当たりに設けるようにしている。この場合、開かれた開き戸の近くから開き戸を閉側に押すことができるため、開き戸を閉側に向けて好適に押すことができる。このため、上記第7の発明を実現する上で好ましい構成とすることができる。
【0024】
第9の発明の建物の開閉体システムは、第1乃至第8のいずれかの発明において、前記制御手段は、前記衝突検知手段による物体の衝突検知が所定時間内に複数回あった場合に、前記開閉体を開側又は閉側に動作させるよう前記駆動部を制御することを特徴とする。
【0025】
自走式掃除機により屋内空間の掃除が行われる際には、自走式掃除機が周囲の見切り材に衝突を繰り返しながら掃除を行うことが考えられる。そこで本発明では、この点に着目し、所定時間内に見切り材への衝突検知が複数回あった場合に開閉体を開側又は閉側に動作させるようにしている。これにより、見切り材に足が当たる等して見切り材への衝突が検知された場合に、開閉体が意図せず開側又は閉側に動作してしまうのを防止することができる。つまり、この場合、誤検知防止を図ることができる。
【0026】
第10の発明の建物の開閉体システムは、第1乃至第9のいずれかの発明において、前記屋内空間を囲む複数の前記壁にはそれぞれ前記見切り材が設けられており、前記各見切り材のうち少なくともいずれか複数の見切り材に前記衝突検知手段が設けられており、前記制御手段は、前記各衝突検知手段の検知結果に基づいて、前記開閉体を開側又は閉側に動作させるよう前記駆動部を制御することを特徴とする。
【0027】
自走式掃除機により屋内空間の掃除が行われる際には、自走式掃除機が周囲に設けられた各見切り材に順に衝突しながら掃除を行うことが考えられる。そこで本発明では、この点に着目し、屋内空間の周囲に設けられた各見切り材のうち少なくともいずれか複数の見切り材に衝突検知手段を設け、それら各衝突検知手段の検知結果に基づき、開閉体を開側又は閉側に動作させるようにしている。この場合、例えば複数の見切り材に物体の衝突が検知された場合に開閉体を開側又は閉側に動作させることができる。これにより、見切り材に足が当たる等して見切り材への衝突が検知された場合に、開閉体が意図せず開側又は閉側に動作してしまうのを防止することができる。つまり、この場合、上記第9の発明と同様、誤検知防止を図ることができる。
【0028】
第11の発明の建物の開閉体システムは、第1乃至第10のいずれかの発明において、前記屋内空間を囲む複数の前記壁のうち、前記出入口が設けられた前記壁の前記見切り材には前記衝突検知手段が設けられておらず、当該壁と異なる壁の前記見切り材に前記衝突検知手段が設けられていることを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、出入口が設けられた壁の見切り材には衝突検知手段が設けられていないため、出入口を通じて出入りする際に見切り材に足が当たる等して衝突検知手段が誤検知してしまうのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1の実施形態における建物内の間取りを示す平面図。
図2】居室における出入口周辺を示す斜視図。
図3】突出装置周辺の構成を示す正面図であり、(a)が突出装置の初期状態を示しており、(b)が突出装置の突出状態を示している。
図4】引き戸システムの電気的構成を示す図。
図5】引き戸システムにおける制御処理の流れを示すフローチャート。
図6】引き戸開放処理の流れを示すフローチャート。
図7】第2の実施形態における建物内の間取りを示す平面図。
図8】居室における出入口周辺を示す斜視図。
図9】戸当たり周辺の構成を示す平面図であり、(a)が戸当たりの初期状態を示し、(b)が戸当たりの突出状態を示している。
図10】開き戸システムの電気的構成を示す図。
図11】開き戸システムにおける制御処理の流れを示すフローチャート。
図12】他の実施形態における引張装置周辺の構成を示す正面図。
図13】(a)が開き戸を示す斜視図であり、(b)が縦断面図である。
図14】自走式掃除機が開き戸の開口部を通過する際の様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔第1の実施形態〕
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は建物内の間取りを示す平面図であり、図2は居室における出入口周辺を示す斜視図である。
【0032】
図1に示すように、住宅等の建物10には、屋内空間として、居室11や廊下12、寝室13等が設けられている。居室11は、廊下12及び寝室13にそれぞれ隣接して設けられている。
【0033】
図1及び図2に示すように、居室11には床部15が設けられている。床部15は、例えばフローリング仕上げの床となっており、その床面が廊下12や寝室13等、他の屋内空間の床面と同じ高さに設定されている。また、居室11は、その周囲が壁部16により囲まれている。すなわち、居室11の四方にはそれぞれ壁部16が設けられ、それら各壁部16のうち、壁部16aが居室11と廊下12とを仕切る仕切壁、壁部16bが居室11と寝室13とを仕切る仕切壁、それ以外の各壁部16c,16dが居室11と屋外とを仕切る外壁となっている。
【0034】
居室11には、各壁部16ごとに巾木17が設けられている。巾木17は、壁部16と床部15との境界部に沿って延びる見切り材である。この巾木17によって壁部16と床部15との境界部が覆い隠されている。
【0035】
壁部16aには、居室11と廊下12とを連通する出入口18が形成されている。この出入口18を通じて居室11と廊下12との間の出入りが可能となっている。出入口18には、開閉体としての引き戸19が設けられている。この引き戸19により出入口18が開閉されるようになっている。また、引き戸19は片引き戸とされており、その開状態では壁部16aと重なるように配置される。より詳しくは、引き戸19は、その開状態では壁部16aの居室11側に重なるように配置される。
【0036】
建物10には、屋内空間の掃除を自動で行う自走式掃除機21(掃除ロボット)が設けられている。自走式掃除機21は、充電可能なバッテリ(図示略)を有しており、そのバッテリに蓄えられた電力を用いて屋内空間を走行(自走)しながら掃除を行うものとなっている。本実施形態では、この自走式掃除機21により、居室11、廊下12及び寝室13を含む複数の屋内空間の掃除を行うことを想定している。なお、図示は省略するが、自走式掃除機21は、ゴミを吸引する吸引部や、その吸引部より吸引したゴミを収容するゴミ収容部等を有している。また、本実施形態では、自走式掃除機21が扁平の円形状とされている。
【0037】
自走式掃除機21により複数の屋内空間の掃除を行う際には、自走式掃除機21が出入口(例えば出入口18)を通じて各屋内空間を行き来しながら掃除を行うことになる。例えば、自走式掃除機21により居室11の掃除が行われた場合には、その後、自走式掃除機21は出入口18より廊下12へ移動し廊下12の掃除を行うことになる。しかしながら、この場合に引き戸19が閉められていると、自走式掃除機21は出入口18を通じて廊下12へ移動することができなくなってしまう。そのため、この場合には、複数の屋内空間を掃除することができなくなるおそれがある。
【0038】
そこで、本実施形態では、この点に鑑み、建物10に、引き戸19を開側に動作させることが可能な引き戸システムを設けている。以下、この引き戸システムについて説明する。
【0039】
図1及び図2に示すように、居室11の巾木17には、衝突検知手段としての衝突検知センサ23が設けられている。衝突検知センサ23は、巾木17に物体が衝突したことを検知するセンサであり、巾木17の裏側に設けられている。これにより、自走式掃除機21により居室11の掃除が行われている際に、自走式掃除機21が巾木17に衝突すると、その衝突が衝突検知センサ23により検知されるようになっている。また、衝突検知センサ23は、各壁部16b〜16dの巾木17にそれぞれ設けられている一方、壁部16aの巾木17には設けられていない。
【0040】
各壁部16b〜16dの巾木17において、衝突検知センサ23はそれぞれ、巾木17の長手方向全域に亘って設けられている。これにより、巾木17の長手方向におけるいずれの位置で自走式掃除機21が衝突しても、その衝突が衝突検知センサ23により検知されるようになっている。なお、図1及び図2では便宜上、各巾木17の衝突検知センサ23をドットハッチにて示している。また、衝突検知センサ23は、必ずしも巾木17の長手方向全域に亘って設けられる必要はなく、巾木17の長手方向の一部にのみ設けられてもよい。
【0041】
壁部16aには、引き戸19を開側に動作させるための突出装置25(駆動部に相当)が設けられている。図3は、その突出装置25周辺の構成を示す正面図であり、(a)が突出装置25の初期状態を示しており、(b)が突出装置25の突出状態を示している。以下、この図3に基づいて突出装置25の構成について説明する。なお、図2では便宜上、突出装置25を初期状態で示している。
【0042】
図3(a)及び(b)に示すように、突出装置25は、壁部16aにおける出入口18よりも引き戸19閉側に埋設されており、引き戸19の上端部と同じ高さ位置に配置されている。突出装置25は、筒状の収容部25aと、その収容部25aの内側に収容された棒状の突出部25bとを有する。突出部25bは、収容部25aに収容された収容位置(図3(a)参照)と、その収容位置から引き戸19側に突出する突出位置(図3(b)参照)との間で動作可能とされている。収容部25aには、モータ等の駆動装置(図示略)が内蔵され、その駆動部の駆動により突出部25bが収容位置から突出位置に動作されるようになっている。そして、突出部25bが突出位置に動作されることで、その突出部25b(の先端部)により引き戸19(詳しくは引き戸19の閉側の端面)が開側に押され、それにより引き戸19が開側に動作される(つまり開かれる)ようになっている。
【0043】
なお、引き戸19は、必ずしも出入口18を全開する位置まで開動作される必要はなく、出入口18の一部を開放する位置まで開動作されるだけでもよい。要するに、出入口18を通じて自走式掃除機21が居室11から廊下12に移動できるように引き戸19が開動作されればよい。
【0044】
また、本突出装置25では、駆動装置の駆動により突出部25bが収容位置から突出位置へ動作されるようになっているが、駆動装置の駆動により突出位置から収容位置へ動作されるようにはなっていない。このため、突出部25bを突出位置から収容位置へ戻す際には手動操作により戻す必要がある。
【0045】
次に、引き戸システムの電気的構成について図4に基づいて説明する。図4は、引き戸システムの電気的構成を示す図である。
【0046】
図4に示すように、引き戸システムは、制御手段としてのコントローラ30を備える。コントローラ30は、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータを備えて構成されている。コントローラ30には、各衝突検知センサ23が接続されている。コントローラ30には、これら各衝突検知センサ23から逐次検知結果が入力される。
【0047】
また、コントローラ30には、突出装置25が接続されている。コントローラ30は、各衝突検知センサ23からの検知結果に基づいて、突出装置25を駆動し同装置25により引き戸19を開側に動作させる。
【0048】
次に、コントローラ30により実行される制御処理の流れについて説明する。図5は、その制御処理の流れを示すフローチャートである。なお、本処理は、所定の周期で繰り返し実行される。また、以下では、引き戸19が閉められた状態で自走式掃除機21による居室11の掃除が開始される場合を想定している。例えば、予め設定された掃除開始時刻になった際に自走式掃除機21による居室11の掃除が開始される場合を想定している。
【0049】
図5に示すように、まずステップS11では、開フラグ(後述する図6のステップS30でセットされる)がセットされているか否かを判定する。開フラグがセットされている場合には本処理を終了し、開フラグがセットされていない場合にはステップS12に進む。
【0050】
ステップS12では、掃除タイマ(後述するステップS13でセットされるタイマ)が実行中であるか否かを判定する。掃除タイマが実行中である場合にはステップS15に進み、実行中でない場合にはステップS13に進む。
【0051】
ステップS13では、各衝突検知センサ23からの検知結果に基づいて、いずれかの巾木17に物体すなわち自走式掃除機21が衝突したか否かを判定する。つまり、ここでは、自走式掃除機21による居室11の掃除が開始されたか否かを判定する。いずれの巾木17にも自走式掃除機21が衝突していない場合、つまり自走式掃除機21による居室11の掃除がまだ開始されていない場合には本処理を終了し、いずれかの巾木17に自走式掃除機21が衝突した場合、つまり自走式掃除機21による居室11の掃除が開始された場合にはステップS14に進む。
【0052】
ステップS14では、掃除タイマをセットする。これにより、掃除タイマにより計時が開始される。
【0053】
ステップS15では、掃除タイマによる計時を開始してからの経過時間、すなわち自走式掃除機21による掃除開始からの経過時間が所定時間を超えたか否かを判定する。ここで、所定時間は、自走式掃除機21により居室11の掃除を行うのに必要十分な時間に設定され、例えば15分〜30分に設定されている。掃除タイマによる計時開始からの経過時間が所定時間を超えていない場合には本処理を終了する。一方、掃除タイマによる計時開始からの経過時間が所定時間を超えている場合にはステップS16に進み、引き戸開放処理を実行する。そして、引き戸開放処理の後、ステップS17で各種タイマをリセットし、その後、本処理を終了する。
【0054】
続いて、ステップS16の引き戸開放処理について図6に基づいて説明する。図6は、引き戸開放処理の流れを示すフローチャートである。
【0055】
図6に示すように、まずステップS21では、タイマをセットし、同タイマによる計時を開始する。続くステップS22では、衝突カウンタiを0にセットする(i←0)。
【0056】
ステップS23では、各衝突検知センサ23からの検知結果に基づいて、いずれかの巾木17に自走式掃除機21が衝突したか否かを判定する。いずれの巾木17にも自走式掃除機21が衝突していない場合にはステップS27に進み、いずれかの巾木17に自走式掃除機21が衝突した場合にはステップS24に進む。
【0057】
ステップS24では、上記ステップS23で判定された自走式掃除機21の衝突がタイマによる計時開始後、初めての衝突であるか否かを判定する。初めての衝突である場合にはステップS26に進み、2回目以降の衝突である場合にはステップS25に進む。
【0058】
ステップS25では、今回衝突した巾木17が前回衝突した巾木17と異なるか否かを判定する。今回衝突した巾木17が前回衝突した巾木17と同じである場合には本処理を終了する。今回衝突した巾木17が前回衝突した巾木17と異なる場合にはステップS26に進み、衝突カウンタiを1インクリメントする(i←i+1)。
【0059】
続くステップS27では、タイマによる計時開始からの経過時間が所定時間を超えたか否かを判定する。ここで、所定時間は、自走式掃除機21による居室11の掃除が行われている際に、自走式掃除機21が巾木17に3回衝突するのに要する時間よりも十分長い時間に設定され、例えば30〜60秒に設定されている。タイマによる計時開始からの経過時間が所定時間を超えた場合には本処理を終了し、所定時間を超えていない場合にはステップS28に進む。
【0060】
ステップS28では、衝突カウンタiが3に設定されているか否かを判定する。衝突カウンタiが3に設定されていない場合、すなわち衝突カウンタiが1又は2に設定されている場合にはステップS23に戻り、ステップS23〜S28の処理を再度行う。一方、衝突カウンタiが3に設定されている場合にはステップS29に進む。つまり、所定時間内に自走式掃除機21が巾木17に3回(複数回)衝突した場合、詳しくは所定時間内に自走式掃除機21が複数の巾木17に衝突した場合にはステップS29に進む。
【0061】
ステップS29では、突出装置25に開信号を出力し、同装置25の突出部25bを収容位置から突出位置へ動作させる。これにより、突出部25bにより引き戸19が開側に押され、引き戸19が開側に動作される。この場合、出入口18が開放されるため、その出入口18を通じて自走式掃除機21が居室11から廊下12に移動することが可能となる。その後、本処理を終了する。
【0062】
続くステップS30では、開フラグをセットする。その後、本処理を終了する。なお、開フラグは突出装置25の突出部25bが突出位置から収容位置に戻されるとリセットされる。
【0063】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0064】
居室11(屋内空間に相当)の巾木17に物体が衝突したことを検知する衝突検知センサ23を設け、その衝突検知センサ23の検知結果に基づいて、引き戸19を開側に動作させるよう突出装置25を制御した。この場合、自走式掃除機21が巾木17に衝突した場合に引き戸19を開側に動作させることができる。このため、自走式掃除機21による掃除開始時には引き戸19が閉まっていたとしても、引き戸19を開側に動作させることで、自走式掃除機21を出入口18を通じて廊下12(隣りの屋内空間に相当)に移動させることが可能となる。そのため、複数の屋内空間の掃除を行うことが可能となる。
【0065】
駆動部として、引き戸19側に突出することで引き戸19を開側に押す突出装置25を設けた。この場合、駆動部として、引き戸19を開閉可能な開閉機構(自動ドア機構等)を設ける場合と比べ、駆動部(突出装置25)を比較的簡単に建物10に設置することができる。そのため、本引き戸システムを建物10に導入する上で実用上好ましい構成といえる。
【0066】
衝突検知センサ23による物体の衝突検知があってからの経過時間(換言すると自走式掃除機21による掃除開始からの経過時間)を掃除タイマ(計時手段に相当)により計測し、その計測した経過時間が所定時間を超えた場合に引き戸19を突出装置25により開側に動作させるようにした。この場合、自走式掃除機21による居室11の掃除が終了した後に引き戸19を開動作させることができるため、居室11の掃除がまだ終了していないにもかかわらず、自走式掃除機21が出入口18を通じて居室11の外に移動してしまう事態が生じるのを防止できる。
【0067】
衝突検知センサ23による物体の衝突検知が所定時間内に複数回(具体的には3回)あった場合に、引き戸19を突出装置25により開側に動作させるようにした。この場合、巾木17に足が当たる等して巾木17への衝突が検知された場合に、引き戸19が意図せず開側に動作してしまうのを防止することができる。つまり、この場合、誤検知防止を図ることができる。
【0068】
居室11の周囲に設けられた複数(3つ)の巾木17にそれぞれ衝突検知センサ23を設け、それら各衝突検知センサ23の検知結果に基づいて、引き戸19を突出装置25により開側に動作させるようにした。具体的には、複数の巾木17に物体の衝突が検知された場合に、引き戸19を開側に動作させるようにした。この場合、上記の場合と同様、誤検知防止を図ることができる。
【0069】
具体的には、所定時間内に複数の巾木17に対する物体の衝突が検知された場合に、引き戸19を開側に動作させるようにした。この場合、誤検知防止を確実に図ることができる。
【0070】
出入口18が設けられた壁部16aの巾木17には衝突検知センサ23を設けず、それ以外の壁部16b〜16dの巾木17に衝突検知センサ23を設けた。この場合、出入口18を通じて出入りする際に巾木17に足が当たる等して衝突検知センサ23が誤検知してしまう事態を回避することができる。
【0071】
また、壁部16aの巾木17に衝突検知センサ23が設けられている場合、自走式掃除機21が当該巾木17に衝突することで、引き戸19(片引き戸)が閉まると、引き戸19と壁部16aとの間に自走式掃除機21が挟まるおそれがある。その点、壁部16aの巾木17以外の巾木17に衝突検知センサ23を設けたことで、かかる事態が生じるのを回避することが可能となる。
【0072】
〔第2の実施形態〕
上記第1の実施形態では、居室11の出入口18に引き戸19が設けられていたが、本実施形態では、出入口18に開き戸が設けられている。この関係で、本実施形態では、コントローラにより実行される制御処理が上記第1の実施形態と相違しており、以下においては、その相違点を中心に本実施形態の構成を説明する。また、以下では、上記第1の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付してその説明を省略することとする。なお、図7は、第2の実施形態における建物10内の間取りを示す平面図であり、図8は、居室11における出入口18周辺を示す斜視図である。
【0073】
図7及び図8に示すように、居室11の出入口18には、開閉体としての開き戸35が設けられている。開き戸35は、居室11側に回動することで開状態となる構成となっている。また、居室11の床部15には、開き戸35が開状態とされた場合に、その開き戸35と当たる戸当たり36が設けられている。この戸当たり36により、開き戸35がそれ以上開側へ回動することが規制されている。
【0074】
開き戸35が開状態とされた場合には、その開き戸35が壁部16dと対向する。この対向状態では開き戸35と壁部16dとの間隔が自走式掃除機21の直径(幅)よりも小さくなる。このため、開き戸35の開状態において、自走式掃除機21により居室11の掃除が行われる際には、自走式掃除機21が開き戸35と壁部16dとの間に入り込めず、それら両者16d,35間について掃除が行われない場合が想定される。
【0075】
そこで、本実施形態では、この点に鑑み、建物10に、開き戸35を閉側に動作させることが可能な開き戸システムを設けている。以下においては、その開き戸システムについて説明する。
【0076】
開き戸35の戸当たり36は、開き戸35側に突出することで当該開き戸35を閉側に押す突出装置として構成されている。図9は、その戸当たり36周辺の構成を示す平面図であり、(a)が戸当たり36の初期状態を示し、(b)が戸当たり36の突出状態を示している。なお、以下においては、戸当たり36を突出装置36ともいう。また、突出装置36が駆動部に相当する。
【0077】
図9(a)及び(b)に示すように、戸当たり36(突出装置36)は、床部15上に固定された筒状の本体部36aと、その本体部36aの内部に収容された柱状の突出部36bとを有する。突出部36bは、本体部36aに収容される収容位置(図9(a)参照)と、その収容位置から開き戸35側に突出する突出位置(図9(b)参照)との間で動作可能とされている。本体部36aには、モータ等の駆動装置が内蔵され、その駆動装置により突出部36bが収容位置から突出位置に動作されるようになっている。そして、突出部36bが突出位置に動作されることで、その突出部36b(の先端部)により開き戸35が閉側に押され、それにより開き戸35が閉側に動作されるようになっている。
【0078】
なお、開き戸35は、必ずしも出入口18を閉鎖(全閉)する位置まで閉動作される必要はなく、出入口18の一部が開放される位置まで閉動作されるだけでもよい。要するに、自走式掃除機21が(開状態における)開き戸35と壁部16dとの間のスペースに入り込めるように、開き戸35が閉動作されればよい。
【0079】
また、本突出装置36では、駆動装置の駆動により突出部36bが収容位置から突出位置へ動作されるようになっているが、駆動装置の駆動により突出位置から収容位置へ動作されるようにはなっていない。このため、突出部36bを突出位置から収容位置へ戻す際には手動操作により戻す必要がある。
【0080】
続いて、開き戸システムの電気的構成について図10に基づいて説明する。図10は、開き戸システムの電気的構成を示す図である。
【0081】
図9に示すように、開き戸システムは、上記第1の実施形態と同様、制御手段としてのコントローラ40を備える。コントローラ40には、各衝突検知センサ23が接続され、そのコントローラ40には、各衝突検知センサ23から逐次検知結果が入力される。また、コントローラ40には、突出装置36が接続されている。コントローラ40は、各衝突検知センサ23からの検知結果に基づいて、突出装置36を駆動し同装置36により開き戸35を閉側に動作させる。
【0082】
続いて、コントローラ40により実行される制御処理の流れについて説明する。図11は、その制御処理の流れを示すフローチャートである。なお、本処理は所定の周期で繰り返し実行される。また、以下では、開き戸35が開かれた状態で自走式掃除機21による居室11の掃除が開始される場合を想定している。
【0083】
図11に示すように、まずステップS41では、閉フラグ(後述するステップS50でセットされる)がセットされているか否かを判定する。閉フラグがセットされている場合には本処理を終了し、閉フラグがセットされていない場合にはステップS42に進む。ステップS42では、各衝突検知センサ23からの検知結果に基づいて、いずれかの巾木17に自走式掃除機21が衝突したか否かを判定する。いずれの巾木17にも自走式掃除機21が衝突していない場合には本処理を終了し、いずれかの巾木17に自走式掃除機21が衝突した場合にはステップS43に進む。
【0084】
ステップS43ではタイマをセットし、タイマによる計時を開始する。続くステップS44では、衝突カウンタを0にセットする(i←0)。
【0085】
ステップS45では、ステップS42と同様、いずれかの巾木17に自走式掃除機21が衝突したか否かを判定する。いずれの巾木17にも自走式掃除機21が衝突していない場合にはステップS47に進む。一方、いずれかの巾木17に自走式掃除機21が衝突した場合にはステップS46に進み、衝突カウンタiを1インクリメントする(i←i+1)。
【0086】
続くステップS47では、タイマによる計時開始からの経過時間が所定時間を超えたか否かを判定する。ここで、所定時間は、自走式掃除機21による居室11の掃除が行われている際に、自走式掃除機21が巾木17に3回衝突するのに要する時間よりも十分長い時間に設定され、例えば30〜60秒に設定されている。衝突タイマによる計時開始からの経過時間が所定時間を超えた場合には本処理を終了し、所定時間を超えていない場合にはステップS48に進む。
【0087】
ステップS48では、衝突カウンタiが3に設定されているか否かを判定する。衝突カウンタiが3に設定されていない場合、すなわち衝突カウンタが1又は2に設定されている場合にはステップS45に戻り、ステップS45〜S48の処理を再度行う。一方、衝突カウンタiが3に設定されている場合にはステップS49に進む。つまり、所定時間内に自走式掃除機21が巾木17に3回衝突した場合にはステップS49に進む。
【0088】
ステップS49では、突出装置36に閉信号を出力し、同装置36の突出部36bを収容位置から突出位置へ動作させる。これにより、突出部36bにより開き戸35が閉側に押され、開き戸35が閉側に動作される。この場合、開き戸35の開状態において自走式掃除機21が入り込めなかった開き戸35と壁部16dとの間のスペースに自走式掃除機21が入り込むことが可能となる。
【0089】
続くステップS50では、閉フラグをセットする。その後、本処理を終了する。なお、閉フラグは突出装置36の突出部36bが突出位置から収容位置に戻されるとリセットされる。
【0090】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0091】
衝突検知センサ23の検知結果に基づいて、開き戸35を閉側に動作させるよう突出装置36を制御した。この場合、自走式掃除機21が巾木17に衝突した場合に、開き戸35を閉側に動作させることができる。このため、掃除開始時に開き戸35が開状態にあっても、開き戸35を閉側に動作させることで、開き戸35と壁部16dとの間を掃除することが可能となる。
【0092】
駆動部として、開き戸35側に突出することで開き戸35を閉側に押す突出装置36を設けた。この場合、駆動部として、開き戸35を開閉可能な開閉機構(自動ドア機構等)を設ける場合と比べ、駆動部(突出装置36)を比較的簡単に建物10に設置することが可能となる。そのため、本開き戸システムを建物10に導入する上で実用上好ましい構成といえる。
【0093】
また、突出装置36を開き戸35の戸当たりにより構成したため、開かれた状態の開き戸35の近くから開き戸35を閉側に押すことができる。このため、開き戸35を閉側に向けて好適に押すことができ、駆動部として突出装置36を用いる上で好ましい構成とすることができる。
【0094】
また、突出装置を戸当たり36により構成したことで、突出装置を戸当たり36の上部等に設ける場合と比べ、外観が損なわれるのを抑制することができる。
【0095】
衝突検知センサ23による物体の衝突検知が所定時間内に複数回(具体的には3回)あった場合に、開き戸35を突出装置36により閉側に動作させるようにした。この場合、巾木17に足が当たる等して巾木17への衝突が検知された場合に、開き戸35が意図せず閉側に動作してしまうのを防止することができる。つまり、この場合、誤検知防止を図ることができる。
【0096】
〔他の実施形態〕
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0097】
(1)上記第1の実施形態では、巾木17への物体の衝突が検知されてから所定時間が経過した場合に、引き戸開放処理(ステップS16)を行ったが、巾木17への物体の衝突が検知された直後に引き戸開放処理を行ってもよい。但し、その場合には、自走式掃除機21による居室11の掃除がまだ終わっていないにもかかわらず、引き戸19が開動作され自走式掃除機21が出入口18より居室11の外へ移動してしまうおそれがある。そのため、この点を鑑みると、上記第1の実施形態のように、衝突検知から所定時間経過後に引き戸開放処理を行うのが望ましい。
【0098】
また、巾木17への衝突検知の直後に引き戸開放処理を行う場合、例えば次のような付随的な効果を得ることができる。
【0099】
居住者が引き戸19を開いて居室11から廊下12に移動する際に、居住者が両手に物を持っている等して両手がふさがっている場合には、巾木17を3回足で押す(蹴る)等して、引き戸19を開けることが可能となる。
【0100】
また、居室11で急に気分が悪くなった場合には、巾木17を3回手等で押すことで引き戸19を開け、他の部屋にいる家族に助けを求めることが可能となる。
【0101】
(2)上記第1の実施形態では、所定時間内に衝突検知センサ23による衝突検知が3回あった場合に突出装置25により引き戸19を開側に動作させるようにしたが、所定時間内に衝突検知が2回又は4回以上あった場合に引き戸19を開側に動作させるようにしてもよい。この場合、衝突検知の回数を多く設定すればする程、誤検知防止を確実に図ることが可能となる。また、衝突検知が1回あった場合に引き戸19を開側に動作させるようにしてもよい。
【0102】
上記第2の実施形態においても同様に、所定時間内に衝突検知が2回又は4回以上あった場合に開き戸35を開側に動作させるようにしてもよい。また、衝突検知が1回あった場合に開き戸35を開側に動作させるようにしてもよい。
【0103】
(3)上記第1の実施形態では、複数の巾木17に対する物体の衝突が検知された場合に引き戸19を開側に動作させるようにしたが、これを変更して、いずれかの巾木17に物体の衝突が検知された場合に引き戸19を開側に動作させるようにしてもよい。また、上記第2の実施形態においても、これと同様に、いずれかの巾木17に物体の衝突が検知された場合に開き戸35を閉側に動作させるようにしてもよい。
【0104】
(4)上記各実施形態では、出入口18が設けられた壁部16aの巾木17に衝突検知センサ23を設けなかったが、当該巾木17に衝突検知センサ23を設けるようにしてもよい。その場合、居室11を囲む各壁部16a〜16dの巾木17にそれぞれ衝突検知センサ23が設けられることになる。また、各壁部16a〜16dのうちいずれか一の壁部16にだけ衝突検知センサ23を設けるようにしてもよい。
【0105】
(5)上記第1の実施形態では、突出装置25(駆動部に相当)により引き戸19を開側に押すことで引き戸19を開側に動作させたが、引き戸19を開側に動作させるための駆動部は必ずしもこれに限らない。例えば、駆動部として、引き戸19を開側に引っ張ることで引き戸19を開側に動作させる引張装置を用いてもよい。その例を図12に示す。
【0106】
図12の例では、引き戸19が壁部16aに入り込んで開閉を行う引き込み戸よりなる。壁部16aには出入口18よりも引き戸19開側に引張装置41が埋設されている。引張装置41は、引き戸19(詳しくはその開側端面)に連結されたワイヤ41aと、そのワイヤ41aを巻取可能な巻取部41bとを有している。巻取部41bは、引き戸19に対して開側に配置され、壁部16a内に固定されている。
【0107】
巻取部41bは、ワイヤ41aの巻き取りを駆動する駆動装置(図示略)を有している。その駆動装置を用いて巻取部41bによりワイヤ41aが巻き取られると、引き戸19が開側に引っ張られ、それにより引き戸19が開側に動作されるようになっている。なお、本引張装置41では、駆動装置によりワイヤ41aの巻き取りが行われるようになっているが、駆動装置によりワイヤ41aの引き出しが行われるようにはなっていない。このため、ワイヤ41aを引き出す際には、引き戸19を閉めることで引き出すことになる。
【0108】
上記の引張装置41も、上記第1の実施形態の突出装置25と同様、自動ドア等の開閉機構を設ける場合と比べ、比較的簡単に建物10に設置することができる。そのため、引き戸システムを建物10に導入する上で実用上好ましい構成とすることができる。
【0109】
(6)上記第2の実施形態では、突出装置36を開き戸35の戸当たり36により構成したが、突出装置を戸当たり36の上部等に別途設けてもよい。その場合にも、開かれた開き戸35の近くから開き戸35を突出装置により押すことができるため、開き戸35を閉側に向けて好適に押すことが可能となる。また、突出装置36を壁部16dや天井等、戸当たり36以外の部材に設けてもよい。
【0110】
(7)上記第1の実施形態では、駆動部として、引き戸19を開側にのみ動作させることが可能な突出装置25を用い、上記第2の実施形態では、駆動部として、開き戸35を閉側にのみ動作させることが可能な突出装置36を用いたが、これを変更して、上記各実施形態のそれぞれで、駆動部として、引き戸19(開き戸35)を開側及び閉側のいずれにも動作させることが可能な自動ドア装置等の開閉装置を用いてもよい。但し、そのような開閉装置を建物10に設ける場合、その設置作業が大掛かりなものになると考えられ、その点を鑑みると、上記第1及び第2の実施形態のような突出装置25,36を駆動部として用いるのが望ましいと考えられる。
【0111】
(8)例えば、開き戸の下端側に自走式掃除機21が通過可能な開口部を設けるようにしてもよい。その場合、開き戸を閉めた状態でも、自走式掃除機21がその開口部を通じて居室11と廊下12との間を出入りすることが可能となるため、複数の屋内空間の掃除を行うことが可能となる。
【0112】
しかしながら、開き戸の下端側に上記の開口部を設ける場合、居室11の気密性や意匠上の面で問題が生じるおそれがある。そこで、その点を配慮して、例えば開き戸を図13に示すような構成とすることが考えられる。以下、この開き戸の構成について図13に基づき説明する。図13は(a)が開き戸を示す斜視図であり、(b)が縦断面図である。
【0113】
図13(a)及び(b)に示すように、開き戸45は、開き戸本体部46と、その開き戸本体部46と床面との間に形成された開口部47と、その開口部47を覆う覆い部48とを有している。開き戸本体部46は、対向する一対の表面材51と、それら各表面材51の間に挟まれた芯材52とを有しており、いわゆるフラッシュ工法(枠芯構造)により形成されている。表面材51は合板等からなり、芯材52は木製の角材が枠状に組まれてなる。各表面材51の表側には化粧シート53が貼り付けられている。化粧シート53は、例えば木目シートからなる。
【0114】
化粧シート53は、開き戸本体部46よりも下方に延出しており、その延出部分53aの裏面側には、ゴム材からなる軟質シート55が貼り付けられている。この軟質シート55と延出部分53aとにより上記の覆い部48が構成されている。この場合、覆い部48は互いに対向した状態で一対設けられ、それら各覆い部48の間は中空部となっている。また、覆い部48はその下端を床面に接触させた状態で配置され、それにより気密性や遮音性が確保されている。
【0115】
図14には、上述した開き戸45において、自走式掃除機21が開口部47を通過する際の様子が示されている。図14(a)及び(b)では、自走式掃除機21が廊下12側から居室11側に開口部47を通じて移動する様子が示されている。この場合、自走式掃除機21は覆い部48を居室11側に押し込みながら開口部47を通過する。詳しくは、自走式掃除機21はまず覆い部48に当たって覆い部48を居室11側に弾性変形させ(図14(a)参照)、その後覆い部48を自走式掃除機21の上方に持ち上げ、その持ち上げた覆い部48の下方を通過する(図14(b)参照)。なお、自走式掃除機21が居室11側から廊下12側に開口部47を通じて移動する際も、上記同様、覆い部48を廊下12側に押し込みながら移動する(図14(c)参照)。
【0116】
このように、上記の構成によれば、開口部47に弾性変形可能な(換言すると、可撓性を有する)覆い部48が設けられていることで、開き戸45周辺の意匠性が損なわれるのを回避しながら、開き戸45の閉状態において自走式掃除機21を開口部47を通じて出入り可能とすることができる。
【0117】
(9)上記各実施形態では、衝突検知センサ23を巾木17に設けたが、衝突検知センサ23を巾木以外の見切り材に設けてもよい。
【0118】
(10)上記各実施形態では、居室11の開閉体(引き戸19、開き戸35)に本発明の開閉体システムを適用したが、寝室13等、他の屋内空間の開閉体に本発明を適用してもよい。例えば、寝室13に、上記第1の実施形態の引き戸システムを適用することが考えられる。この場合、自走式掃除機21による掃除開始時に寝室13の引き戸が閉まっていても、引き戸を開側に動作させることで、自走式掃除機21を寝室13の隣室へ移動させることが可能となる。また、寝室13に引き戸システムを適用する場合、付随的な効果として、就寝時に部屋の空気を入れ換えたい場合に、ベッド上から手を伸ばし巾木17を押すことで引き戸を開けれるという効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0119】
10…建物、11…屋内空間としての居室、15…床としての床部、16…壁としての壁部、17…見切り材としての巾木、18…出入口、19…開閉体としての引き戸、21…自走式掃除機、23…衝突検知手段としての衝突検知センサ、25…駆動部としての突出装置、30…制御手段としてのコントローラ、35…開閉体としての開き戸、36…戸当たり、40…制御手段としてのコントローラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14