(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図中の矢印に基づいて、前後方向、左右方向及び上下方向を定義して説明を行う。
【0023】
まず、
図1から
図3までを用いて、本発明の第一実施形態に係る移乗支援装置1の概略について説明する。
【0024】
移乗支援装置1は、被介護者(介護を受ける者)を乗せて移動することにより、当該被介護者の移乗(例えば、ベッドとトイレ間の移乗、ベッドと車椅子間の移乗や、移乗支援装置自体への移乗等)を支援するものである。移乗支援装置1は、主として台車部2、支持部3及び上体保持部100を具備する。
【0025】
台車部2は、地面(床面)上を移動することができる。台車部2の上部には、支持部3が設けられる。支持部3は、台車部2に対して前後に揺動可能に連結される。支持部3と台車部2との間にはシリンダ3aが設けられ、当該シリンダ3aを伸縮させることで、支持部3を任意の位置に揺動させることができる。また支持部3の後部には、移乗支援装置1に搭乗する被介護者が着座可能な着座部3bが設けられる。
【0026】
支持部3の上部には、上体保持部100が設けられる。上体保持部100は、移乗支援装置1に搭乗した被介護者の身体(特に上体)を保持することができる。上体保持部100は、支持部3に対して摺動可能に設けられ、位置を適宜調節することができる。
【0027】
なお、本実施形態においては図示を省略しているが、実際には、移乗支援装置1には外装部材やクッション等の保護部材(搭乗する被介護者を保護するための部材)等が適宜設けられる。
【0028】
以下では、
図4から
図6までを用いて、上体保持部100の構成について詳細に説明する。なお、
図1から
図3までに示した方向(前後方向等)の定義と、
図4以降の方向の定義は、特に対応していない。
【0029】
上体保持部100は、主としてベース板110、センターフレーム120、サイドフレーム130及び固定ピン140を具備する。
【0030】
ベース板110は、支持部3に固定される部材である。ベース板110は、略矩形板状に形成される。ベース板110には、ボルト等を挿通するための貫通孔が適宜形成される。
【0031】
センターフレーム120は、被介護者を正面から保持する部分である。センターフレーム120は、ベース板110から左右両側方に延びるように形成される。センターフレーム120の左右中央部は、ベース板110の上面に固定される。センターフレーム120は、複数の板材(板金)によって、左右方向に延びる矩形断面を有する筒状に形成される。センターフレーム120の左右両端部は、左右中央部から若干上方に向かって屈曲するように形成される。なお、センターフレーム120は左右対称に形成されているため、以下では当該センターフレーム120の右側に着目してその構成を説明する。センターフレーム120には、主として挿入部121、突起部122及び貫通孔123が形成される。
【0032】
図5及び
図6に示す挿入部121は、後述するサイドフレーム130を挿入可能な部分である。挿入部121は、筒状に形成されたセンターフレーム120の中空部(特に、右端部近傍)により構成される。挿入部121は、センターフレーム120の右端面に開口されている。
【0033】
図6に示す突起部122は、後述するサイドフレーム130を係合させるためのものである。突起部122は、センターフレーム120の挿入部121内に設けられる。突起部122は、挿入部121内の上面から略下方に向かって突出するように設けられる。
【0034】
図5に示す貫通孔123は、センターフレーム120の前側面を貫通するように形成される。より具体的には、貫通孔123は、センターフレーム120の右端部近傍(挿入部121に対応する部分)の前側面を前後に貫通するように形成される。
【0035】
図4から
図6までに示すサイドフレーム130は、被介護者を左右両側方(腋の下)から保持する部分である。サイドフレーム130は、センターフレーム120の左右両端部にそれぞれ着脱可能に設けられる。なお、左右一対のサイドフレーム130は、左右対称に形成されているため、以下では、右側のサイドフレーム130に着目してその構成を説明する。
【0036】
サイドフレーム130は、板材を適宜屈曲させることで、正面視略L字状に形成される。より具体的には、サイドフレーム130の下部130aは、左右内側に向かって延びるように形成され、サイドフレーム130の上部130bは、上方に向かって延びるように形成される。サイドフレームの下部130aは、内側に向かって徐々に上下方向幅が小さく(狭く)なるようなテーパ状に形成される。サイドフレーム130には、主として係合孔131及び貫通孔132が形成される。
【0037】
図5及び
図6に示す係合孔131は、センターフレーム120の突起部122と係合可能な部分である。係合孔131は、サイドフレーム130の下部130aの先端部(内側端部)近傍の上面を上下に貫通するように形成される。
【0038】
図5に示す貫通孔132は、サイドフレーム130の前側面を貫通するように形成される。より具体的には、貫通孔132は、サイドフレーム130の下部130aの先端部近傍の前側面を前後に貫通するように形成される。
【0039】
図4及び
図5に示す固定ピン140は、サイドフレーム130をセンターフレーム120に対して固定するためのものである。固定ピン140は、円柱状(棒状)に形成される。
【0040】
次に、上述の如く構成された上体保持部100において、サイドフレーム130をセンターフレーム120に対して着脱する方法について説明する。
【0041】
サイドフレーム130をセンターフレーム120に取り付ける場合、
図5及び
図6(a)に示すように、まず、サイドフレーム130の下部130aをセンターフレーム120の挿入部121に挿入する。この際、サイドフレーム130の下部130aはテーパ状に形成されているため、当該サイドフレーム130の下部130aを挿入部121の底面に沿わせながら当該挿入部121に挿入することで、サイドフレーム130の下部130aとセンターフレーム120の突起部122との干渉を回避することができる。
【0042】
サイドフレーム130の下部130aをセンターフレーム120の挿入部121に挿入した後で、
図6(b)に示すように、当該サイドフレーム130の上部130bを外側に向かって傾ける。これによって、サイドフレーム130の下部130aが上方に持ち上がる。この際、サイドフレーム130の係合孔131にセンターフレーム120の突起部122が係合する。これによって、サイドフレーム130がセンターフレーム120から抜け落ちることがなくなる。なお、上体保持部100に保持される被介護者の体重も、サイドフレーム130の上部130bを外側に向かって押すように加わるため、サイドフレーム130が抜け落ちるのをより効果的に防止することができる。
【0043】
さらにこの状態で、
図4及び
図5に示すように、センターフレーム120の貫通孔123及びサイドフレーム130の貫通孔132に固定ピン140を挿入する。これによって、サイドフレーム130の係合孔131とセンターフレーム120の突起部122とが係合した状態に保持される。
【0044】
なお、サイドフレーム130をセンターフレーム120から取り外す場合には、上述の場合(取り付ける場合)とは逆に、固定ピン140を取り外してサイドフレーム130の係合孔131とセンターフレーム120の突起部122との係合を解除する。この状態でサイドフレーム130を側方へと引き抜くことで、当該サイドフレーム130をセンターフレーム120から取り外すことができる。
【0045】
このように構成された上体保持部100によって被介護者の上体を保持する場合、サイドフレーム130をセンターフレーム120に適宜着脱することで、腕を上げるのが困難な(例えば、片麻痺等の)被介護者であっても、容易に脇の下から上体を保持することができる。
【0046】
以上の如く、第一実施形態に係る移乗支援装置1は、
支持部3(本体部)と、
前記支持部3に支持され、被介護者の上体を保持する上体保持部100と、
を具備し、
前記上体保持部100は、
前記被介護者を正面から保持するセンターフレーム120(正面保持部)と、
前記センターフレーム120に対して相対移動可能に設けられ、前記被介護者を側方から保持するサイドフレーム130(側方保持部)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、被介護者の腋の下を容易に保持することができる。すなわち、サイドフレーム130をセンターフレーム120に対して適宜相対移動(着脱)させることで、サイドフレーム130を被介護者と干渉しないようにしながら被介護者の脇の下に挿通することができる。
【0047】
また、前記サイドフレーム130は、
前記センターフレーム120に対して着脱可能に構成されるものである。
このように構成することにより、被介護者の腋の下を容易に保持することができる。すなわち、サイドフレーム130をセンターフレーム120から取り外すことで、当該サイドフレーム130が被介護者と干渉するのを防止することができる。また、サイドフレーム130を取り外した状態で被介護者の腋の下に挿通することができ、被介護者の腋の下を容易に保持することができる。
【0048】
また、前記センターフレーム120は、
前記サイドフレーム130を挿入可能な挿入部121と、
前記挿入部121の内部に形成された突起部122(第一係合部)と、
を具備し、
前記サイドフレーム130は、
前記突起部122と係合可能な係合孔131(第二係合部)を具備するものである。
このように構成することにより、サイドフレーム130がセンターフレームから脱落するのを防止することができる。
【0049】
なお、本実施形態に係る支持部3は、本発明に係る本体部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るセンターフレーム120は、本発明に係る正面保持部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るサイドフレーム130は、本発明に係る側方保持部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る突起部122は、本発明に係る第一係合部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る係合孔131は、本発明に係る第二係合部の実施の一形態である。
【0050】
なお、本実施形態においては、センターフレーム120は複数の板材(板金)によって形成されるものとしたが、その他種々の部材(例えば、角パイプ等)によって形成することも可能である。
【0051】
以下では、
図7から
図9までを用いて、第二実施形態に係る上体保持部200について説明する。
【0052】
上体保持部200は、主としてベース板210、センターフレーム220、サイドフレーム230、回動軸240及び固定ピン250を具備する。
【0053】
ベース板210は、支持部3に固定される部材である。ベース板210は、第一実施形態に係るベース板110(
図4等参照)と略同一の形状に形成される。
【0054】
図7及び
図8に示すセンターフレーム220は、被介護者を正面から保持する部分である。センターフレーム220は、ベース板210から左右両側方に延びるように形成される。センターフレーム220の左右中央部は、ベース板210の上面に固定される。センターフレーム120は、左右方向に延びる矩形断面を有する筒状の部材(パイプ材)等により形成される。センターフレーム220の左右両端部は、左右中央部から若干上方に向かって屈曲するように形成される。なお、センターフレーム220は左右対称に形成されているため、以下では当該センターフレーム220の右側に着目してその構成を説明する。センターフレーム220には、主として連結部221が形成される。
【0055】
連結部221は、後述するサイドフレーム230が連結される部分である。連結部221は、左右一対の板状部材により形成される。連結部221は、センターフレーム220の右端から上方に向かって立ち上がるように設けられる。連結部221には、主として貫通孔221a及び係合部221bが形成される。
【0056】
貫通孔221aは、連結部221を左右に貫通するように形成される。貫通孔221aは、円形状に形成される。
【0057】
係合部221bは、後述する固定ピン250と係合する部分である。係合部221bは、連結部221の上端部を下方に向かって切り欠くようにして形成される。
【0058】
サイドフレーム230は、被介護者を左右両側方(腋の下)から保持する部分である。サイドフレーム230は、センターフレーム220の左右両端部にそれぞれ回動可能に設けられる。なお、左右一対のサイドフレーム230は、左右対称に形成されているため、以下では、右側のサイドフレーム230に着目してその構成を説明する。
【0059】
サイドフレーム230は、矩形断面を有する筒状の部材(角パイプ)により形成される。サイドフレーム230には、主として貫通孔231及び係合孔232が形成される。
【0060】
貫通孔231は、サイドフレーム230の下端部を左右に貫通するように形成される。貫通孔231は、円形状に形成される。
【0061】
係合孔232は、後述する固定ピン250と係合する部分である。係合孔232は、サイドフレーム230の下端部(貫通孔231より上方)を左右に貫通するように形成される。係合孔232は、矩形状に形成される。
【0062】
回動軸240は、サイドフレーム230をセンターフレーム220に対して回動可能に連結するものである。回動軸240は、略円柱状に形成される。回動軸240は、サイドフレーム230の貫通孔231及びセンターフレーム220の貫通孔221aに挿通される。これによって、サイドフレーム230は、センターフレーム220に対して前後に回動可能に連結される。
【0063】
固定ピン250は、サイドフレーム230の回動を規制するものである。固定ピン250は、略角柱状に形成される。サイドフレーム230の係合孔232とセンターフレーム220の係合部221bの位置を合わせた状態で、当該係合孔232及び係合部221bに固定ピン250を挿通することで、センターフレーム220に対するサイドフレーム230の回動を規制(固定)することができる。
【0064】
次に、上述の如く構成された上体保持部200において、サイドフレーム230をセンターフレーム220に対して回動させる方法について説明する。
【0065】
固定ピン250がサイドフレーム230の係合孔232等に挿通されていない状態では、当該サイドフレーム230は、センターフレーム220に対して回動することができる。具体的には、サイドフレーム230は後方を向く位置(
図9(a)参照)から上方を向く位置(
図9(b)参照)まで回動することができる。
【0066】
図9(b)に示すように、サイドフレーム230が上方を向いた状態では、側面視においてサイドフレーム230の係合孔232の位置とセンターフレーム220の係合部221bの位置とが合うため、当該係合孔232等に固定ピン250を挿通することで、サイドフレーム230を上方に向けた状態で固定することができる(
図7参照)。また、再び固定ピン250を抜き取れば、サイドフレーム230を回動させることができるようになる。
【0067】
このように構成された上体保持部200によって被介護者の上体を保持する場合、サイドフレーム230をセンターフレーム220に対して適宜回動させることで、腕を上げるのが困難な(例えば、片麻痺等の)被介護者であっても、容易に脇の下から上体を保持することができる。
【0068】
以上の如く、第二実施形態に係る前記サイドフレーム230(側方保持部)は、
前記センターフレーム220(正面保持部)に対して相対回動可能に構成されるものである。
このように構成することにより、被介護者の腋の下を容易に保持することができる。すなわち、サイドフレーム230をセンターフレーム220に対して回動させることで、当該サイドフレーム230が被介護者と干渉するのを防止することができる。
【0069】
また、上体保持部200は、
前記サイドフレーム230が前記センターフレーム220に対して所定の回動位置まで回動した状態において、当該サイドフレーム230の回動を規制可能な固定ピン250(規制部)をさらに具備するものである。
このように構成することにより、サイドフレーム230を固定することができる。
【0070】
なお、本実施形態に係るサイドフレーム230は、本発明に係る側方保持部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るセンターフレーム220は、本発明に係る正面保持部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る固定ピン250は、本発明に係る規制部の実施の一形態である。
【0071】
以下では、
図10から
図12までを用いて、第三実施形態に係る上体保持部300について説明する。なお、第三実施形態に係る上体保持部300が第二実施形態に係る上体保持部200と異なる点は、固定ピン250に代えてエレメント350を具備する点である。よって以下では、主に当該相違点について説明し、第二実施形態と同様の部材については同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
エレメント350は、サイドフレーム230の回動を規制するものである。エレメント350は、主として本体部351、突起部352及びローラ353を具備する。
【0073】
本体部351は、略矩形枠状に形成される。本体部351の中央部分は、左右に貫通するように開口されている。
【0074】
突起部352は、センターフレーム220の係合部221bと係合される部分である。突起部352は、本体部351の下部から下方に向かって突出するように形成される部分である。
【0075】
ローラ353は、略円柱状に形成される。ローラ353は、本体部351の内側に回動可能に支持される。ローラ353は、本体部351から左右に若干突出するように配置される。
【0076】
このように構成されたエレメント350は、サイドフレーム230の内部に配置される(
図10参照)。エレメント350は、サイドフレーム230の長手方向に沿って移動(摺動)可能に配置される。なお、サイドフレーム230は、ローラ353を介してサイドフレーム230の内側面と接することで、当該サイドフレーム230内を滑らかに摺動することができる。
【0077】
次に、上述の如く構成された上体保持部300において、サイドフレーム230をセンターフレーム220に対して回動させる方法について説明する。
【0078】
エレメント350の突起部352がセンターフレーム220の係合部221bに係合されていない状態では、当該サイドフレーム230は、センターフレーム220に対して回動することができる。具体的には、サイドフレーム230は後方を向く位置(
図10(a)参照)から上方を向く位置(
図10(b)参照)まで回動することができる。
【0079】
図10(b)に示すように、サイドフレーム230が上方を向く位置まで回動すると、エレメント350が自重によって下方へと摺動し、当該エレメント350の突起部352がセンターフレーム220の係合部221bに係合する。これによって、センターフレーム220に対するサイドフレーム230の回動が規制される。すなわち、サイドフレーム230を上方に向けた状態で固定することができる。また、当該エレメント350を上方に摺動させれば、当該エレメント350の突起部352とセンターフレーム220の係合部221bとの係合が解除されるため、サイドフレーム230を再び回動させることができるようになる。
【0080】
このように構成された上体保持部300によって被介護者の上体を保持する場合、サイドフレーム230をセンターフレーム220に対して適宜回動させることで、腕を上げるのが困難な(例えば、片麻痺等の)被介護者であっても、容易に脇の下から上体を保持することができる。また、サイドフレーム230を上方を向く位置まで回動させることで、自動的に当該サイドフレーム230を固定させることができるため、容易に作業(サイドフレーム230の固定)を行うことができる。
【0081】
以上の如く、第三実施形態に係る前記エレメント350(規制部)は、
前記サイドフレーム230が前記センターフレーム220に対して所定の回動位置まで回動した際に自重によって移動することで、前記サイドフレーム230の回動を規制するものである。
このように構成することにより、サイドフレーム230を容易に固定することができる。
【0082】
なお、本実施形態に係るエレメント350は、本発明に係る規制部の実施の一形態である。
【0083】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0084】
例えば、上体保持部100等の各部材の形状や大きさ等は、上記実施形態に限定されるものではなく、任意の形状等に変更することが可能である。