【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワークの内面に楕円形の貫通孔を設ける場合、長径部と短径部とでは内面のテーパ精度に差が生じる。具体的には、長径部側では、砥石軸側の内径が大きく、反対側の内径が小さくなる傾向にあるが、短径部側では、ほとんどテーパが発生しないことがわかっている。
【0006】
具体的には、
図4にフォーム創成軸(X軸)の座標カーブ及び砥石軸用電動モータにかかる負荷の変化の様子を示すように、研削クーラントの供給量を一定としたときに、楕円の内面を加工中に形状位相に連動して砥石軸用電動モータにかかる負荷が変動する。すなわち、長径部Aでは負荷が高く、短径部Bでは負荷が低くなる。これは、研削クーラントの逃げ(排出)量の差による加工負荷の差によって発生すると考えられる。つまり、長径部では砥石外周とワーク内面との間の隙間が狭く、研削クーラントの逃げ道が狭くなり、砥石外周とワーク内面との間に研削クーラントが食い込み、それが加工負荷となって最も細い砥石軸を撓ませ、加工面にテーパを生じさせやすくなる。負荷の変動幅hは、砥石軸電力の準急工程では約13%、仕上げ工程では約10%となり、無視できない値となることがわかった。
【0007】
さらに、研削効率を確保するには、冷却及び切削くず排出のために研削クーラントの量はある程度は必要である。
【0008】
一方、特許文献1のように、送り込み速度に合わせて研削クーラントの量を増減させる方法もあるが、例えば送り込み速度が一定の場合には適用できない。
【0009】
また、内面の研削であるので、砥石をワーク内部に挿入する必要があり、また砥石の厚さを保つためには、砥石軸の外径をあまり大きくするすることができず、負荷変動に耐えられるために砥石軸の形状を太くすることはできない。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、非真円の内面研削において砥石軸の剛性に頼ることなく、安価にワーク内面のテーパ精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、この発明では、負荷変動に対応させて研削クーラントの供給量を変動させるようにした。
【0012】
具体的には、第1の発明では、研削クーラントを供給しながら砥石を高速で回転させてワークの内面を研削するワークの内面研削方法を前提とする。
【0013】
そして、上記砥石の外周面と上記ワークの内面との間の隙間の大きさに合わせて上記研削クーラントの供給量を調整する構成とする。
【0014】
すなわち、砥石外周とワーク内面との間の隙間が狭くなると、研削クーラントの逃げ道が狭くなり、砥石外周とワーク内面との間に研削クーラントが食い込み、それが加工負荷となって砥石や砥石軸を変形させ、加工面にテーパを生じさせやすくなる。しかし、上記の構成によると、隙間の小さいときには、研削クーラントの量を減らして負荷を小さくし、逆に隙間の大きいときには、研削クーラントの量を減らさないことで、全体として負荷を均一に近付けることができる。これにより、加工面にテーパが生じにくくなる。
【0015】
第2の発明では、上記前提のワークの内面研削方法において、
上記ワークの楕円形貫通孔を内面研削する場合に、上記砥石が楕円の長径側にあるときの研削クーラントの量よりも上記楕円の短径側にあるときの研削クーラントの量を増やす構成とする。
【0016】
すなわち、砥石外周とワーク内面との間の隙間が狭い長径部側では、研削クーラントの逃げ道が狭くなり、砥石外周とワーク内面との間に研削クーラントが食い込み、それが加工負荷となって砥石や砥石軸を変形させ、加工面にテーパを生じさせやすくなる。しかし、上記の構成によると、長径部側では研削クーラントの量を減らして負荷を小さくし、逆に短径部側では研削クーラントの量を減らさないことで、全体として負荷を均一に近付けることができる。これにより、加工面にテーパが生じにくくなる。
【0017】
第3の発明では、上記前提のワークの内面研削方法において、
上記砥石の回転軸を回転させる砥石用電動モータの電力計の値が大きくなるときに上記研削クーラントの量を減らし、上記電力計の値が小さくなるときに上記研削クーラントの量を増やす構成とする。
【0018】
上記の構成によると、砥石用電動モータの電力計の値が大きいときには、研削クーラントの量を減らすことで研削クーラントによる反力を低減し、逆に電力計の値が小さくなるときには、研削クーラントの量を増やすことで、研削クーラントによる反力の大きさをできるだけ均一化し、ワーク内面のテーパが生じないようにすることができる。
【0019】
第4の発明では、第3の発明において、
フィードバック制御により、上記電力計の値の変化と上記研削クーラントの量の増減のタイミングとを調整する構成とする。
【0020】
すなわち、電力計の変化に合わせて研削クーラントを増減させると、ノズルまでの経路等の影響で応答がずれてしまう。上記の構成によると、ずれ具合を制御装置に戻してフィードバック制御することにより、電力計の値の変化と研削クーラントの量の増減のタイミングとを適切に調整することができる。
【0021】
第5の発明では、研削クーラントを供給しながら砥石を高速で回転させてワークの内面を研削する研削装置を前提とし、
上記研削装置は、
上記砥石を回転させる砥石軸と、
上記砥石軸を回転させる砥石用電動モータと、
上記ワークを回転させるワーク回転軸と、
上記研削クーラントを上記ワークの内面に吐出するノズルと、
上記研削クーラントを上記ノズルに送り込むクーラント回路と、
上記クーラント回路に設けられ、研削クーラントの供給を制御する供給用制御弁と、
上記クーラント回路に設けられ、研削クーラントの供給量を増加させる増量用制御弁と、
上記クーラント回路に設けられたクーラント用ポンプユニットと、
上記砥石用電動モータ及び上記クーラント用ポンプユニットを制御する制御装置とを備え、
上記制御装置は、
上記供給用制御弁を開いて上記研削クーラントを供給すると共に、
上記増量用制御弁を開いて上記研削クーラントの供給量を増やすように構成されている。
【0022】
すなわち、砥石外周とワーク内面との間の隙間が狭くなると、研削クーラントの逃げ道が狭くなり、砥石外周とワーク内面との間に研削クーラントが食い込み、それが加工負荷となって砥石や砥石軸を変形させ、加工面にテーパを生じさせやすくなる。しかし、上記の構成によると、隙間の小さいときには、増量用制御弁を閉じて研削クーラントの量を減らして負荷を小さくし、逆に隙間の大きいときには、増量用制御弁を開いて研削クーラントの量を減らさないことで、全体として負荷を均一に近付けることができる。これにより、加工面にテーパが生じにくくなる。
【0023】
第6の発明では、第5の発明において、
上記ワークの楕円形貫通孔を内面研削する場合に、上記制御装置は、上記砥石軸と上記ワーク回転軸との位置関係の情報を利用し、上記砥石が楕円の長径側にあるときに上記増量用制御弁を閉じ、上記楕円の短径側にあるときに上記増量用制御弁を開いて研削クーラントの量を増やすように構成されている。
【0024】
上記の構成によると、制御装置が砥石軸とワーク回転軸との位置関係の情報を読み、砥石が楕円の長径側にあるときにには、研削クーラントの量を減らすことで研削クーラントによる反力を低減し、逆に楕円の短径側にあるときには、研削クーラントの量を増やすことで、研削クーラントによる反力の大きさをできるだけ均一化し、ワーク内面のテーパが生じないようにすることができる。
【0025】
第7の発明では、第5又は第6の発明において、
上記制御装置は、上記砥石用電動モータの電力計の値を読み、電力計の値が大きくなるときに上記増量用制御弁を閉じ、上記電力計の値が小さくなるときに上記増量用制御弁を開くように構成されている。
【0026】
上記の構成によると、制御装置が、砥石用電動モータの電力計を読み、その値が大きいときには、研削クーラントの量を減らすことで研削クーラントによる反力を低減し、逆に電力計の値が小さくなるときには、研削クーラントの量を増やすことで、研削クーラントによる反力の大きさをできるだけ均一化し、ワーク内面のテーパが生じないようにすることができる。
【0027】
第8の発明では、第7の発明において、
上記制御装置は、フィードバック制御により、上記電力計の値の変化と上記増量用制御弁の開閉タイミングとを調整するように構成されている。
【0028】
すなわち、電力計の変化に合わせて研削クーラントを増減させると、ノズルまでの経路等の影響で応答がずれてしまう。上記の構成によると、ずれ具合を制御装置に戻してフィードバック制御することにより、電力計の値の変化と研削クーラントの量の増減のタイミングとを適切に調整することができる。