特許第6861053号(P6861053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861053
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】造形装置及び造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/112 20170101AFI20210412BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20210412BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20210412BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20210412BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20210412BHJP
【FI】
   B29C64/112
   B33Y30/00
   B33Y10/00
   B29C64/393
   B33Y50/02
【請求項の数】13
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-37979(P2017-37979)
(22)【出願日】2017年3月1日
(65)【公開番号】特開2018-144236(P2018-144236A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】八角 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】田中 義博
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−013351(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/025838(WO,A1)
【文献】 特開2017−013352(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/010457(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B33Y 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された積層方向へ造形の材料の層を積層することで立体的な造形物を造形する造形装置であって、
前記造形の材料を吐出する吐出ヘッドと、
造形中の前記造形物に対して相対的に移動する走査動作を前記吐出ヘッドに行わせる走査駆動部と
を備え、
前記走査駆動部は、前記走査動作として、
前記積層方向と直交する主走査方向へ前記造形中の造形物に対して相対的に移動しつつ前記造形の材料を吐出する主走査動作と、
前記積層方向及び前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記造形中の造形物に対して相対的に移動する副走査動作と
を前記吐出ヘッドに行わせ、
前記造形の材料により形成される一つの前記層を形成する動作において、前記走査駆動部は、造形中の前記層の各位置に対し、前記吐出ヘッドに、予め設定されたPn回(Pnは、2以上の整数)の前記主走査動作を行わせ、
前記吐出ヘッドは、前記造形の材料を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有し、
少なくとも、前記副走査方向におけるノズル列の幅であるノズル列幅よりも前記副走査方向における大きさが大きな前記造形物を造形する場合、前記走査駆動部は、前記吐出ヘッドに、前記一つの層として、前記Pn回の前記主走査動作を行うことで形成される領域であるブロックが前記副走査方向へ複数個並ぶ構成の層を形成させ、
一つの前記層を構成するそれぞれの前記ブロックは、前記副走査方向における前記ブロックの中間部分を含み、他の前記ブロックと位置が重ならない領域である中間領域と、前記副走査方向における前記ブロックの端の領域であり、隣接する前記ブロックと前記副走査方向における範囲の少なくとも一部が重なる領域である端部領域とを有し、
前記積層方向へ積層される複数の前記層のうちの少なくとも一部について、前記積層方向へ連続して重なる二つの前記層の間で、対応する前記ブロックにおける前記端部領域の形成の仕方を異ならせ
前記対応するブロックについて、前記副走査方向における前記端部領域の幅を異ならせることにより、前記積層方向へ連続して重なる二つの前記層の間で、前記端部領域の形成の仕方を異ならせることを特徴とする造形装置。
【請求項2】
前記対応するブロックについて、前記副走査方向における前記端部領域の位置をずらすことにより、前記積層方向へ連続して重なる二つの前記層の間で、前記端部領域の形成の仕方を異ならせることを特徴とする請求項1に記載の造形装置。
【請求項3】
前記走査駆動部は、それぞれの前記ブロックの形成時において、前記端部領域の少なくとも一部に対して1回の前記主走査動作で前記吐出ヘッドに前記造形の材料を吐出させる吐出位置の密度を、前記中間領域に対して1回の前記主走査動作で前記吐出ヘッドに前記造形の材料を吐出させる吐出位置の密度よりも低く設定することにより、前記端部領域の少なくとも一部について、隣接する二つの前記ブロックを形成する間に行う2Pn回の前記主走査動作により形成し、
前記端部領域内のそれぞれの前記吐出位置へ前記造形の材料を吐出させるパターンの設定について、前記積層方向へ連続して重なる二つの前記層における前記対応するブロックの間で異ならせることにより、前記積層方向へ連続して重なる二つの前記層の間で、前記端部領域の形成の仕方を異ならせることを特徴とする請求項1又は2に記載の造形装置。
【請求項4】
各回の前記主走査動作において、前記走査駆動部は、前記吐出ヘッドにおける前記ノズル列が通過する領域内に設定される吐出対象領域へ、前記吐出ヘッドに前記造形の材料を吐出させ、
前記吐出対象領域は、前記副走査方向における端部が前記主走査方向と非平行になるように設定されており、
前記積層方向へ連続して重なる二つの前記層の間で、前記対応するブロックの形成時に対応するタイミングで行う前記主走査動作で前記造形の材料を吐出する前記吐出対象領域について、前記副走査方向における前記端部の形成の仕方を異ならせることにより、前記端部領域の形成の仕方を異ならせることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の造形装置。
【請求項5】
前記副走査方向における前記端部の位置をずらすことにより、前記積層方向へ連続して重なる二つの前記層の間で、前記対応するブロックの形成時に対応するタイミングで行う前記主走査動作で前記造形の材料を吐出する前記吐出対象領域について、前記副走査方向における前記端部の形成の仕方を異ならせることを特徴とする請求項に記載の造形装置。
【請求項6】
予め設定された積層方向へ造形の材料の層を積層することで立体的な造形物を造形する造形装置であって、
前記造形の材料を吐出する吐出ヘッドと、
造形中の前記造形物に対して相対的に移動する走査動作を前記吐出ヘッドに行わせる走査駆動部と
を備え、
前記走査駆動部は、前記走査動作として、
前記積層方向と直交する主走査方向へ前記造形中の造形物に対して相対的に移動しつつ前記造形の材料を吐出する主走査動作と、
前記積層方向及び前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記造形中の造形物に対して相対的に移動する副走査動作と
を前記吐出ヘッドに行わせ、
前記造形の材料により形成される一つの前記層を形成する動作において、前記走査駆動部は、造形中の前記層の各位置に対し、前記吐出ヘッドに、予め設定されたPn回(Pnは、2以上の整数)の前記主走査動作を行わせ、
前記吐出ヘッドは、前記造形の材料を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有し、
少なくとも、前記副走査方向におけるノズル列の幅であるノズル列幅よりも前記副走査方向における大きさが大きな前記造形物を造形する場合、前記走査駆動部は、前記吐出ヘッドに、前記一つの層として、前記Pn回の前記主走査動作を行うことで形成される領域であるブロックが前記副走査方向へ複数個並ぶ構成の層を形成させ、
一つの前記層を構成するそれぞれの前記ブロックは、前記副走査方向における前記ブロックの中間部分を含み、他の前記ブロックと位置が重ならない領域である中間領域と、前記副走査方向における前記ブロックの端の領域であり、隣接する前記ブロックと前記副走査方向における範囲の少なくとも一部が重なる領域である端部領域とを有し、
前記積層方向へ積層される複数の前記層のうちの少なくとも一部について、前記積層方向へ連続して重なる二つの前記層の間で、対応する前記ブロックにおける前記端部領域の形成の仕方を異ならせ、
各回の前記主走査動作において、前記走査駆動部は、前記吐出ヘッドにおける前記ノズル列が通過する領域内に設定される吐出対象領域へ、前記吐出ヘッドに前記造形の材料を吐出させ、
前記吐出対象領域は、前記副走査方向における端部が前記主走査方向と非平行になるように設定されており、
前記積層方向へ連続して重なる二つの前記層の間で、前記対応するブロックの形成時に対応するタイミングで行う前記主走査動作で前記造形の材料を吐出する前記吐出対象領域について、前記副走査方向における前記端部の形成の仕方を異ならせることにより、前記端部領域の形成の仕方を異ならせ、
前記吐出対象領域の前記副走査方向における端部は、前記主走査方向に沿ってギザ状又は波状に変化するように形成され、
前記端部において前記ギザ状又は波状に変化する部分の前記副走査方向における幅を互いに異ならせることにより、前記積層方向へ連続して重なる二つの前記層の間で、前記対応するブロックの形成時に対応するタイミングで行う前記主走査動作で前記造形の材料を吐出する前記吐出対象領域について、前記副走査方向における前記端部の形成の仕方を異ならせることを特徴とする造形装置。
【請求項7】
予め設定された積層方向へ造形の材料の層を積層することで立体的な造形物を造形する造形装置であって、
前記造形の材料を吐出する吐出ヘッドと、
造形中の前記造形物に対して相対的に移動する走査動作を前記吐出ヘッドに行わせる走査駆動部と
を備え、
前記走査駆動部は、前記走査動作として、
前記積層方向と直交する主走査方向へ前記造形中の造形物に対して相対的に移動しつつ前記造形の材料を吐出する主走査動作と、
前記積層方向及び前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記造形中の造形物に対して相対的に移動する副走査動作と
を前記吐出ヘッドに行わせ、
前記造形の材料により形成される一つの前記層を形成する動作において、前記走査駆動部は、造形中の前記層の各位置に対し、前記吐出ヘッドに、予め設定されたPn回(Pnは、2以上の整数)の前記主走査動作を行わせ、
前記吐出ヘッドは、前記造形の材料を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有し、
少なくとも、前記副走査方向におけるノズル列の幅であるノズル列幅よりも前記副走査方向における大きさが大きな前記造形物を造形する場合、前記走査駆動部は、前記吐出ヘッドに、前記一つの層として、前記Pn回の前記主走査動作を行うことで形成される領域であるブロックが前記副走査方向へ複数個並ぶ構成の層を形成させ、
一つの前記層を構成するそれぞれの前記ブロックは、前記副走査方向における前記ブロックの中間部分を含み、他の前記ブロックと位置が重ならない領域である中間領域と、前記副走査方向における前記ブロックの端の領域であり、隣接する前記ブロックと前記副走査方向における範囲の少なくとも一部が重なる領域である端部領域とを有し、
前記積層方向へ積層される複数の前記層のうちの少なくとも一部について、前記積層方向へ連続して重なる二つの前記層の間で、対応する前記ブロックにおける前記端部領域の形成の仕方を異ならせ、
一つの前記層を形成する動作において、前記走査駆動部は、前記副走査動作として、
一つの前記ブロックを形成するために行う前記Pn回の前記主走査動作の合間に行う前記副走査動作である第1副走査と、
前記一つの前記ブロックを形成するために行う前記Pn回の前記主走査動作を行った後、次の前記ブロックを形成するための前記主走査動作を行う前に行う前記副走査動作である第2副走査と
を前記吐出ヘッドに行わせ、
前記第1副走査において前記副走査方向へ前記造形中の造形物に対して相対的に移動する前記吐出ヘッドの移動量は、前記第2副走査において前記副走査方向へ前記造形中の造形物に対して相対的に移動する前記吐出ヘッドの移動量よりも小さいことを特徴とする造形装置。
【請求項8】
前記第1副走査において前記副走査方向へ前記造形中の造形物に対して相対的に移動する前記吐出ヘッドの移動量は、前記ノズル列幅を前記Pnで除した幅よりも小さいことを特徴とする請求項に記載の造形装置。
【請求項9】
前記第2副走査において前記副走査方向へ前記造形中の造形物に対して相対的に移動する前記吐出ヘッドの移動量は、前記ノズル列幅に対応する距離であることを特徴とする請求項7又は8に記載の造形装置。
【請求項10】
前記走査駆動部は、一つの前記ブロックを形成するために行う前記Pn回の前記主走査動作のそれぞれの合間に、前記吐出ヘッドに前記第1副走査を行わせ、
かつ、いずれかの前記主走査動作の後で行う前記第1副走査において、前記造形中の造形物に対して相対的に、前記副走査方向における一方の向きで前記吐出ヘッドを移動させ、他のいずれかの前記主走査動作の後で行う前記第1副走査において、前記造形中の造形物
に対して相対的に、前記副走査方向における他方の向きで前記吐出ヘッドを移動させることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の造形装置。
【請求項11】
前記積層方向へ積層されるそれぞれの前記層の形成時において、前記走査駆動部は、最初の前記主走査動作の開始時の前記副走査方向における前記吐出ヘッドの位置について、前記層を形成すべき領域の前記副走査方向における範囲に合わせて設定することを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の造形装置。
【請求項12】
前記走査駆動部は、前記第2副走査において前記造形中の造形物に対して相対的に前記吐出ヘッドを移動させる向きについて、前記積層方向へ積層されるそれぞれの前記層毎に、交互に変更することを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の造形装置。
【請求項13】
予め設定された積層方向へ造形の材料の層を積層することで立体的な造形物を造形する造形方法であって、
前記造形の材料を吐出する吐出ヘッドに、
造形中の前記造形物に対して相対的に移動する走査動作を行わせ、
前記走査動作として、
前記積層方向と直交する主走査方向へ前記造形中の造形物に対して相対的に移動しつつ前記造形の材料を吐出する主走査動作と、
前記積層方向及び前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記造形中の造形物に対して相対的に移動する副走査動作と
を前記吐出ヘッドに行わせ、
前記造形の材料により形成される一つの前記層を形成する動作において、造形中の前記層の各位置に対し、前記吐出ヘッドに、予め設定されたPn回(Pnは、2以上の整数)の前記主走査動作を行わせ、
前記吐出ヘッドは、前記造形の材料を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有し、
少なくとも、前記副走査方向におけるノズル列の幅であるノズル列幅よりも前記副走査方向における大きさが大きな前記造形物を造形する場合、前記吐出ヘッドに、前記一つの層として、前記Pn回の前記主走査動作を行うことで形成される領域であるブロックが前記副走査方向へ複数個並ぶ構成の層を形成させ、
一つの前記層を構成するそれぞれの前記ブロックは、前記副走査方向における前記ブロックの中間部分を含み、他の前記ブロックと位置が重ならない領域である中間領域と、前記副走査方向における前記ブロックの端の領域であり、隣接する前記ブロックと前記副走査方向における範囲の少なくとも一部が重なる領域である端部領域とを有し、
前記積層方向へ積層される複数の前記層のうちの少なくとも一部について、前記積層方向へ連続して重なる二つの前記層の間で、対応する前記ブロックにおける前記端部領域の形成の仕方を異ならせ
前記対応するブロックについて、前記副走査方向における前記端部領域の幅を異ならせることにより、前記積層方向へ連続して重なる二つの前記層の間で、前記端部領域の形成の仕方を異ならせることを特徴とする造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形装置及び造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドを用いて造形物を造形する造形装置(3Dプリンタ)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。更には、カラー情報を造形物の表面に形成したカラー造形装置も知られている。このような造形装置においては、例えば、インクジェットヘッドにより形成するインクの層を複数層重ねることにより、積層造形法で造形物を造形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−13552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットヘッドを用いて積層造形法で造形物を形成する場合、それぞれのインクの層の形成については、例えば、2次元の画像をインクジェットプリンタで印刷する場合の動作を応用して行うことができる。そして、この場合、それぞれのインクの層の形成について、マルチパス方式で行うことが考えられる。マルチパス方式とは、形成中の層の各位置に対して、予め設定された複数回の主走査動作を行う方式のことである。また、この場合、マルチパス方式でそれぞれのインクの層を形成する動作については、例えば、各回の主走査動作の合間に一定のパス幅を送り量とする副走査動作を行って、インクジェットプリンタでのマルチパス方式の動作と同様に行うことが考えられる。
【0005】
しかし、このような方法でマルチパス方式の動作を行う場合、それぞれのインクの層を形成する動作において、副走査動作の繰り返しによりインクジェットヘッドを移動させる範囲(副走査方向における範囲)について、副走査方向における造形物の幅と比べて大きくなる無駄な範囲(無駄な走査エリア)が大きくなる場合がある。また、積層造形法で造形物を造形する場合、多数のインクの層を積層するため、このような無駄な走査エリアが存在すると、造形に要する時間が大きく増大することになる。そのため、従来、より適切な方法で造形物の造形を行うことが望まれている。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる造形装置及び造形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
造形物の造形時において、それぞれのインクの層をマルチパス方式で形成する場合、2次元の画像を印刷する場合にインクジェットプリンタで広く行われているマルチパス方式とは異なる動作を採用することも考えられる。より具体的に、この場合、例えば特許文献1において小ピッチパス方式として説明がされているような、送り量を小さくした小ピッチの副走査動作でマルチパス方式の動作を行うこと等も考えられる。この場合、例えば、パス数分の主走査動作を行う間に行う副走査動作として小ピッチの副走査動作を行うことで、副走査方向へのインクジェットヘッドの移動量を少なくして、インクの層の一部(ブロック)を形成する。また、パス数分の主走査動作を行った後には、インクジェットヘッドのノズル列の副走査方向における幅(ノズル列長)に対応する大きな距離を送り量とする大ピッチの副走査動作を行うことで、次のブロックの形成時に造形の材料を吐出する位置へ、インクジェットヘッドを移動させる。また、これらの動作を繰り返すことにより、一つのインクの層を形成する。このように構成すれば、例えば、一定のパス幅での副走査動作のみを行う場合と比べ、無駄な走査エリアを低減することができる。また、これにより、例えば、造形物の造形をより効率的に行うことができる。
【0007】
しかし、小ピッチパス方式でインクの層を形成する場合、動作の特性上、パス数分の主走査動作により形成されるブロックが副走査方向へ並ぶような構成のインクの層を形成することになる。そのため、副走査方向の送り寸法の異なる小ピッチパスと大ピッチパスが混在することによるパス後の位置精度のバラツキが大きく、副走査方向の送り寸法を一定で繰り返すマルチパス方式に比べて、送りムラが目立つことになる。その結果、隣接するブロックの境界付近について、それ以外の領域と比べて状態の連続性が小さく、粗さや帯状の凹凸等が目立つ状態になる場合がある。また、積層造形法で造形を行う場合、ブロックの境界が積層方向へ重なることで、境界の状態の影響がより大きくなること等も考えられる。更には、表面にカラー情報を形成する造形装置により造形する造形物の場合は、単に形状を表す造形物に比べて、色ムラ、濃度ムラ、筋ムラとなって、視覚的により強く目立つことが考えられる。
【0008】
これに対し、本願の発明者は、ブロックの境界を構成するブロックの端部領域について、層毎に形成の仕方を異ならせることで、造形物の全体としてブロックの境界が目立つことを防ぎ得ることを見出した。この場合、ブロックの端部領域について、層毎に形成の仕方を異ならせるとは、例えば、端部領域の位置や幅等を層毎に異ならせること等である。また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、予め設定された積層方向へ造形の材料の層を積層することで立体的な造形物を造形する造形装置であって、前記造形の材料を吐出する吐出ヘッドと、造形中の前記造形物に対して相対的に移動する走査動作を前記吐出ヘッドに行わせる走査駆動部とを備え、前記走査駆動部は、前記走査動作として、前記積層方向と直交する主走査方向へ前記造形中の造形物に対して相対的に移動しつつ前記造形の材料を吐出する主走査動作と、前記積層方向及び前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記造形中の造形物に対して相対的に移動する副走査動作とを前記吐出ヘッドに行わせ、前記造形の材料により形成される一つの前記層を形成する動作において、前記走査駆動部は、造形中の前記層の各位置に対し、前記吐出ヘッドに、予め設定されたPn回(Pnは、2以上の整数)の前記主走査動作を行わせ、前記吐出ヘッドは、前記造形の材料を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有し、少なくとも、前記副走査方向におけるノズル列の幅であるノズル列幅よりも前記副走査方向における大きさが大きな前記造形物を造形する場合、前記走査駆動部は、前記吐出ヘッドに、前記一つの層として、前記Pn回の前記主走査動作を行うことで形成される領域であるブロックが前記副走査方向へ複数個並ぶ構成の層を形成させ、一つの前記層を構成するそれぞれの前記ブロックは、前記副走査方向における前記ブロックの中間部分を含み、他の前記ブロックと位置が重ならない領域である中間領域と、前記副走査方向における前記ブロックの端の領域であり、隣接する前記ブロックと前記副走査方向における範囲の少なくとも一部が重なる領域である端部領域とを有し、前記積層方向へ積層される複数の前記層のうちの少なくとも一部について、前記積層方向へ連続して重なる二つの前記層の間で、対応する前記ブロックにおける前記端部領域の形成の仕方を異ならせることを特徴とする。
【0010】
このように構成すれば、例えば、それぞれのインクの層におけるブロックの境界部分について、インクの層が重なることでより目立つ状態になることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、造形物の造形をより高い精度で適切に行うことができる。また、更に表面にカラー情報を形成する造形物の場合には、色ムラ、濃度ムラ、筋ムラを目立たなくすることができる。
【0011】
ここで、この構成において、より高い精度での造形を行うためには、例えば、造形物を構成する全ての層について、連続して重なる二つの層の間で、対応するブロックにおける端部領域の形成の仕方を異ならせることが好ましい。また、対応するブロックとは、例えば、副走査方向における位置が最も近い関係になるブロックのことである。また、対応するブロックにおける端部領域の形成の仕方を異ならせる方法としては、例えば、対応するブロックについて、副走査方向における前記端部領域の位置をずらすこと等が考えられる。また、例えば、対応するブロックについて、副走査方向における端部領域の幅を異ならせること等も考えられる。
【0012】
また、端部領域の形成の仕方については、例えば、端部領域内のそれぞれの吐出位置へ造形の材料を吐出させるパターンの設定を変化させることで、異ならせること等も考えられる。この場合、端部領域内のそれぞれの吐出位置へ造形の材料を吐出させるパターンとは、例えば、隣接する二つのブロックの形成時に端部領域を相補的(インターレイス的)に形成するように吐出位置を選択するパターンである。
【0013】
また、端部領域を相補的に形成する動作については、例えば、各回の主走査動作でインクジェットヘッドから造形の材料を吐出する領域である吐出対象領域について、副走査方向における端部を主走査方向に沿ってギザ状又は波状に変化させて、端部を主走査方向と非平行にすること等が考えられる。そして、この場合、例えば、積層方向へ連続して重なる二つの層の間で、対応するブロックの形成時に対応するタイミングで行う主走査動作の吐出対象領域について、端部の形成の仕方を異ならせることが考えられる。この場合、対応するタイミングで行う主走査動作とは、例えば、一つのブロックの形成時に行うPn回の主走査動作のうち、同じ回の主走査動作のことである。また、端部の形成の仕方を異ならせとしては、より具体的に、例えば、副走査方向における端部の位置をずらすことや、端部においてギザ状又は波状に変化する部分の副走査方向における幅を互いに異ならせること等が考えられる。
【0014】
また、この構成において行うパス方式の動作については、例えば、小ピッチパス方式での動作と考えることができる。より具体的に、この構成における小ピッチパス方式での動作は、副走査動作として、小さな送り量(小ピッチ)での副走査動作である第1副走査と、大きな送り量(大ピッチ)での副走査動作である第2副走査とを行う動作である。この場合、送り量とは、例えば、副走査動作時に造形中の造形物に対して相対的に移動する吐出ヘッドの移動量のことである。また、この場合、例えば、一つのブロックを形成するために行うPn回の主走査動作の合間に行う副走査動作として、第1副走査を行う。また、Pn回の主走査動作を行う毎に、次のブロックの形成を始める前に、第2副走査を行う。
【0015】
また、この場合、第1副走査における送り量(小ピッチの送り量)については、例えば、ノズル列幅をパス数Pnで除した幅よりも小さい幅にすることが考えられる。また、より具体的に、第1副走査における送り量については、例えば、ノズル列におけるノズル間隔の20倍以下にすることが好ましい。また、第1副走査における送り量は、好ましくはノズル間隔の10倍以下である。また、第2副走査における送り量(大ピッチの送り量)については、例えば、ノズル列幅に対応する距離にすることが考えられる。この場合、ノズル列幅に対応する距離とは、例えば、ノズル幅に対し、小ピッチでの送り量を考慮した必要な調整を行った距離のことである。
【0016】
また、第1副走査において造形物に対して相対的に吐出ヘッドを移動する向きについては、例えば、副走査方向における一方及び他方の両方の向きを用いることが考えられる。この場合、例えば、一つのブロックの形成時に行うPn回の主走査動作の合間において、吐出ヘッドの相対移動の向きについて、副走査方向の一方の向きと他方の向きとに交互に設定することが考えられる。
【0017】
また、それぞれの層の形成時において、最初の主走査動作を開始する位置については、例えば、その層を形成する範囲に応じて層毎に設定することが好ましい。より具体的に、この場合、最初の主走査動作の開始時の副走査方向における吐出ヘッドの位置について、その層を形成すべき領域の副走査方向における範囲に合わせて設定することが好ましい。この場合、吐出ヘッドの位置を合わせるとは、例えば、吐出ヘッドのノズル列における端の位置を合わせることである。また、小ピッチパス方式で造形を行う場合、大ピッチで行う第2副走査で吐出ヘッドを相対移動させる向きについては、層毎に異ならせてもよい。この場合、例えば、積層されるそれぞれの層毎に、吐出ヘッドの相対移動の向きを交互に変更することが好ましい。
【0018】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する造形方法等を用いることも考えられる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。また、この造形方法について、例えば、造形物の製造方法と考えることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、例えば、造形物の造形をより高い精度で適切に行うことができる。とりわけ、例えば表面にカラー画像を形成する造形物において、画像品質を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る造形装置10の一例を示す図である。図1(a)は、造形装置10の要部の構成の一例を示す。図1(b)は、造形装置10におけるヘッド部12の構成の一例を示す。図1(c)は、本例において造形する造形物50の構成の一例を示す。
図2】マルチパス方式でインクの層を形成する動作について説明をする図である。図2(a)は、マルチパス方式の動作の例を示す。図2(b)、(c)は、小ピッチパス方式の動作について模式的に示す。
図3】小ピッチパス方式についてより詳しく説明をする図である。図3(a)、(b)は、小ピッチパス方式の動作の一例について模式的に示す。図3(c)は、小ピッチパス方式の動作の他の例について模式的に示す。
図4】連続して重なる二つのインクの層の形成の仕方について説明をする図である。図4(a)は、連続して重なる二つのインクの層である第n層及び第n+1層について、各回の主走査動作を行う範囲の一例を示す。図4(b)は、第n層及び第n+1層について、副走査方向へ並ぶ二つのブロック302a、bの範囲の一例を示す。
図5】第2副走査の動作の一例について説明をする図である。図5(a)は、積層方向へ連続して重なる二つのインクの層のうちの一方の形成時に行う第2副走査の一例を示す。図5(b)は、積層方向へ連続して重なる二つのインクの層のうちの他方の形成時に行う第2副走査の一例を示す。
図6】第2副走査の行い方の変形例を示す図である。図6(a)、(b)は、この変形例における往路及び復路の第2走査副走査の例を示す。
図7】ブロックの形成の仕方の変形例について説明をする図である。図7(a)は、図3及び図4等を用いて説明をしたブロックの形成の仕方を示す。図7(b)、(c)は、ブロックの形成の仕方の変形例を示す。
図8】連続して積層する複数のインクの層についてインターレイス領域512の形成の仕方の例を示す。図8(a)、(b)は、複数のブロック302a〜cを含むインクの層の形成時に行う主走査動作について、それぞれの主走査動作を行う位置の例を示す。図8(c)は、図8(b)に円602で示した箇所を拡大した様子を模式的に示す拡大図である。
図9】インターレイス領域512の形成の仕方の変形例等について説明をする図である。図9(a)は、インターレイス領域512の形成の仕方の変形例を模式的に示す。図9(b)は、サポート層52の形成の仕方について更に詳しく説明をする図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る造形装置10の一例を示す。図1(a)は、造形装置10の要部の構成の一例を示す。図1(b)は、造形装置10におけるヘッド部12の構成の一例を示す。
【0022】
尚、以下に説明をする点を除き、造形装置10は、公知の造形装置と同一又は同様の特徴を有してよい。より具体的に、以下に説明をする点を除き、造形装置10は、例えば、インクジェットヘッドを用いて造形物50の材料となる液滴を吐出することで造形を行う公知の造形装置と同一又は同様の特徴を有してよい。また、造形装置10は、図示した構成以外にも、例えば、造形物50の造形や着色等に必要な各種構成を更に備えてよい。
【0023】
本例において、造形装置10は、積層造形法により立体的な造形物50を造形する造形装置(3Dプリンタ)である。この場合、積層造形法とは、例えば、予め設定された積層方向へ造形の材料の層を積層することで立体的な造形物50を造形する方法のことである。造形物50とは、例えば、立体的な三次元構造物のことである。また、本例において、造形装置10は、ヘッド部12、造形台14、走査駆動部16、及び制御部20を備える。
【0024】
ヘッド部12は、造形物50の材料を吐出する部分である。また、本例において、造形物50の材料としては、インクを用いる。この場合、インクとは、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体のことである。インクジェットヘッドとは、例えば、インクジェット方式でインクの液滴を吐出する吐出ヘッドのことである。また、より具体的に、ヘッド部12は、造形物50の材料として、複数のインクジェットヘッドから、所定の条件に応じて硬化するインクを吐出する。そして、着弾後のインクを硬化させることにより、造形物50を構成する各層を重ねて形成する。また、本例では、インクとして、紫外線の照射により液体状態から硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)を用いる。
【0025】
また、ヘッド部12は、造形物50の材料に加え、サポート層52の材料を更に吐出する。これにより、ヘッド部12は、造形物50の周囲に、必要に応じて、サポート層52を形成する。サポート層52とは、例えば、造形中の造形物50の外周を囲むことで造形物50を支持する積層構造物のことである。サポート層52は、造形物50の造形時において、必要に応じて形成され、造形の完了後に除去される。ヘッド部12のより具体的な構成については、後に詳しく説明をする。
【0026】
造形台14は、造形中の造形物50を支持する台状部材であり、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の造形物50を上面に載置する。また、本例において、造形台14は、少なくとも上面が積層方向(図中のZ方向)へ移動可能な構成を有しており、走査駆動部16に駆動されることにより、造形物50の造形の進行に合わせて、少なくとも上面を移動させる。この場合、積層方向とは、例えば、積層造形法において造形の材料が積層される方向のことである。また、より具体的に、本例において、積層方向は、主走査方向(図中のY方向)及び副走査方向(図中のX方向)と直交する方向である。
【0027】
走査駆動部16は、造形中の造形物50に対して相対的に移動する走査動作をヘッド部12に行わせる駆動部である。この場合、造形中の造形物50に対して相対的に移動するとは、例えば、造形台14に対して相対的に移動することである。また、ヘッド部12に走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部12が有するインクジェットヘッドに走査動作を行わせることである。また、本例において、走査駆動部16は、主走査動作(Y走査)、副走査動作(X走査)、及び積層方向走査(Z走査)をヘッド部12に行わせる。
【0028】
主走査動作とは、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作のことである。また、本例において、走査駆動部16は、主走査方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12の側を移動させることにより、ヘッド部12に主走査動作を行わせる。造形装置10の構成の変形例においては、例えば、主走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、例えば造形台14を移動させることにより、造形物50の側を移動させてもよい。
【0029】
また、後により詳しく説明をするように、本例において、ヘッド部12は、紫外線光源を更に有する。そして、主走査動作時において、走査駆動部16は、ヘッド部12における紫外線光源の駆動を更に行う。より具体的に、走査駆動部16は、例えば、主走査動作時に紫外線光源を点灯させることにより、造形物50の被造形面に着弾したインクを硬化させる。造形物50の被造形面とは、例えば、ヘッド部12により次のインクの層が形成される面のことである。
【0030】
また、副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ造形中の造形物50に対して相対的に移動する動作のことである。また、より具体的に、副走査動作は、例えば、予め設定された送り量だけ副走査方向へ造形台14に対して相対的に移動する動作である。この場合、送り量とは、例えば、造形中の造形物50に対して副走査動作時に相対的に移動するヘッド部12の移動量(相対移動の距離)のことである。また、ヘッド部12の移動量とは、例えば、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドの移動量のことである。
【0031】
本例において、走査駆動部16は、主走査動作の合間に、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。この場合、走査駆動部16は、例えば、副走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、造形台14を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。また、走査駆動部16は、副走査方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせてもよい。
【0032】
尚、本例において、造形装置10は、造形物50の造形を、マルチパス方式で行う。この場合、マルチパス方式とは、造形物50の造形時に積層するそれぞれのインクの一つの層の形成時に、形成中のインクの層の各位置に対して、予め設定された複数回の主走査動作を行う方式のことである。そして、この場合、走査駆動部16は、マルチパス方式のパス数等に応じて予め設定されたタイミングや送り量で、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。この場合、パス数とは、例えば、一つのインクの層の形成時に同じ位置に対して行う主走査動作の回数のことである。また、パス数については、例えば、インクの層における単位面を造形の材料で充填するために必要な主走査動作の回数等と考えることもできる。マルチパス方式の動作については、後に更に詳しく説明をする。
【0033】
また、積層方向走査とは、例えば、積層方向へヘッド部12又は造形台14の少なくとも一方を移動させることで造形物50に対して相対的に積層方向へヘッド部12を移動させる動作のことである。この場合、積層方向へヘッド部12を移動させるとは、例えば、ヘッド部12における少なくともインクジェットヘッドを積層方向へ移動させることである。また、積層方向へ造形台14を移動させるとは、例えば、造形台14における少なくとも上面の位置を移動させることである。
【0034】
また、走査駆動部16は、造形の動作の進行に合わせてヘッド部12に積層方向走査を行わせることにより、積層方向において、造形中の造形物50に対するインクジェットヘッドの相対位置を調整する。また、より具体的に、本例において、走査駆動部16は、積層方向におけるヘッド部12の位置を固定して、造形台14を移動させる。走査駆動部16は、積層方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12を移動させてもよい。
【0035】
制御部20は、例えば造形装置10のCPUであり、造形装置10の各部を制御することにより、造形装置10における造形の動作を制御する。より具体的に、制御部20は、例えば造形すべき造形物50の形状情報や、カラー情報等に基づき、造形装置10の各部を制御する。本例によれば、造形物50を適切に造形できる。
【0036】
続いて、ヘッド部12のより具体的な構成について、説明をする。本例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッド、複数の紫外線光源104、及び平坦化ローラ106を有する。複数のインクジェットヘッドのそれぞれは、造形の材料を吐出する吐出ヘッドの一例である。また、より具体的に、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッドとして、図1(b)に示すように、インクジェットヘッド102s、インクジェットヘッド102mo、インクジェットヘッド102w、インクジェットヘッド102y、インクジェットヘッド102m、インクジェットヘッド102c、インクジェットヘッド102k、及びインクジェットヘッド102tを有する。これらの複数のインクジェットヘッドは、例えば、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。また、それぞれのインクジェットヘッドは、造形台14と対向する面に、造形の材料を吐出するノズルが所定のノズル列方向へ複数個並ぶノズル列を有する。また、本例において、ノズル列方向は、副走査方向と平行な方向である。
【0037】
また、これらのインクジェットヘッドのうち、インクジェットヘッド102sは、サポート層52の材料を吐出するインクジェットヘッドである。本例において、サポート層52の材料としては、造形物50の材料よりも紫外線による硬化度が弱い紫外線硬化型インクを用いる。これにより、インクジェットヘッド102sは、サポート層52の材料となる紫外線硬化型インクを、ノズル列における各ノズルから吐出する。サポート層52の材料としては、例えば、造形物50の造形後に水で溶解可能な水溶性の材料を用いることが好ましい。また、この場合、造形物50を構成する材料よりも硬化度が弱く、分解しやすい材料を用いることが好ましい。
【0038】
インクジェットヘッド102moは、造形材インク(Moインク)を吐出するインクジェットヘッドである。この場合、造形材インクとは、例えば、造形物50の内部(内部領域)の造形に用いる造形専用のインクである。
【0039】
尚、造形物50の内部については、造形材インクに限らず、他の色のインクを更に用いて形成してもよい。また、例えば、造形材インクを用いずに、他の色のインク(例えば白色のインクや、着色用のインク等)で造形物50の内部を形成することも考えられる。この場合、ヘッド部12において、インクジェットヘッド102moを省略してもよい。
【0040】
インクジェットヘッド102wは、白色(W色)のインクを吐出するインクジェットヘッドである。また、本例において、白色のインクは、光反射性のインクの一例であり、例えば造形物50において光を反射する性質の領域(光反射領域)を形成する場合に用いられる。この光反射領域は、例えば、造形物50表面に対してフルカラー表現での着色を行う場合に、造形物50の外部から入射する光を反射する。フルカラー表現とは、例えば、プロセスカラーのインクによる減法混色法の可能な組合せで行う色の表現のことである。
【0041】
インクジェットヘッド102y、インクジェットヘッド102m、インクジェットヘッド102c、インクジェットヘッド102k(以下、インクジェットヘッド102y〜kという)は、着色された造形物50の造形時に用いられる着色用のインクジェットヘッドである。また、より具体的に、インクジェットヘッド102yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。また、インクジェットヘッド102kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。また、この場合、YMCKの各色は、フルカラー表現に用いるプロセスカラーの一例である。また、インクジェットヘッド102tは、クリアインクを吐出するインクジェットヘッドである。クリアインクとは、例えば、無色の透明色(T)であるクリア色のインクのことである。
【0042】
複数の紫外線光源104は、インクを硬化させるための光源(UV光源)であり、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発生する。また、本例において、複数の紫外線光源104のそれぞれは、間にインクジェットヘッドの並びを挟むように、ヘッド部12における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。紫外線光源104としては、例えば、UVLED(紫外LED)等を好適に用いることができる。また、紫外線光源104として、メタルハライドランプや水銀ランプ等を用いることも考えられる。
【0043】
平坦化ローラ106は、造形物50の造形中に形成されるインクの層を平坦化するための平坦化手段である。平坦化ローラ106は、例えば主走査動作時において、インクの層の表面と接触して、硬化前のインクの一部を除去することにより、インクの層を平坦化する。以上のような構成のヘッド部12を用いることにより、造形物50を構成するインクの層を適切に形成できる。また、複数のインクの層を重ねて形成することにより、造形物50を適切に造形できる。
【0044】
尚、ヘッド部12の具体的な構成については、上記において説明をした構成に限らず、様々に変形することもできる。例えば、ヘッド部12は、着色用のインクジェットヘッドとして、インクジェットヘッド102y〜kに加え、各色の淡色、R(赤)G(緑)B(青)やオレンジ等の色用のインクジェットヘッド等を更に有してもよい。また、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッドの並べ方についても、様々に変形可能である。例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらしてもよい。
【0045】
続いて、本例の造形装置10により造形する造形物50の構成について、更に詳しく説明をする。図1(c)は、本例において造形する造形物50の構成の一例を示す図であり、積層方向(Z方向)と直交する造形物50の断面であるX−Y断面の構成の一例を、サポート層52とともに示す。また、この場合、Y方向やZ方向と垂直な造形物50のZ−X断面やZ−Y断面の構成も、同様の構成になる。
【0046】
上記においても説明をしたように、本例において、造形装置10は、例えば、インクジェットヘッド102y〜k等を用いて、少なくとも表面が着色された造形物50を造形する。また、この場合、造形装置10は、例えば図中に示すように、内部領域202、光反射領域204、着色領域206、及び保護領域208を有する造形物50を造形する。また、必要に応じて、造形物50の周囲等にサポート層52を形成する。
【0047】
内部領域202は、造形物50の内部を構成する領域である。また、内部領域202については、例えば、造形物50の形状を構成する領域と考えることもできる。本例において、造形装置10は、インクジェットヘッド102moから吐出する造形材インクを用いて、内部領域202を形成する。光反射領域204は、着色領域206等を介して造形物50の外側から入射する光を反射するための光反射性の領域である。本例において、造形装置10は、インクジェットヘッド102wから吐出する白色のインクを用いて、内部領域202の周囲に光反射領域204を形成する。
【0048】
着色領域206は、インクジェットヘッド102y〜kから吐出する着色用のインクにより着色がされる領域である。本例において、造形装置10は、インクジェットヘッド102y〜kから吐出する着色用のインクと、インクジェットヘッド102tから吐出するクリアインクとを用いて、光反射領域204の周囲に着色領域206を形成する。また、この場合、例えば、各位置への各色の着色用のインクの吐出量を調整することにより、様々な色を表現する。また、色の違いによって生じる着色用のインクの量(単位体積あたりの吐出量が0%〜100%)の変化を一定の100%に補填するために、クリアインクを用いる。このように構成すれば、例えば、着色領域206の各位置を所望の色で適切に着色できる。
【0049】
保護領域208は、造形物50の外面を保護するための透明な領域である。本例において、造形装置10は、インクジェットヘッド102tから吐出するクリアインクを用いて、着色領域206の外側を覆うように、保護領域208を形成する。本例によれば、以上のような各領域を形成することにより、表面が着色された造形物50を適切に形成できる。
【0050】
尚、造形物50の構成の変形例においては、造形物50の具体的な構成について、上記と異ならせることも考えられる。より具体的には、例えば、内部領域202と光反射領域204とを区別せずに、例えば白色のインクを用いて、光反射領域204の機能を兼ねた内部領域202を形成すること等が考えられる。また、造形物50において、一部の領域を省略すること等も考えられる。この場合、例えば、保護領域208を省略すること等が考えられる。また、例えば、着色がされない造形物50を造形する場合、内部領域202以外の領域を省略すること等が考えられる。また、造形物50において、上記以外の領域を更に形成すること等も考えられる。この場合、例えば、光反射領域204と着色領域206との間に分離領域を形成すること等が考えられる。分離領域とは、例えば、光反射領域204を構成する白色のインクと着色領域206を構成するインクとが混ざり合うことを防ぐための透明な領域である。この場合、造形装置10は、例えば、インクジェットヘッド102tから吐出するクリアインクを用いて、光反射領域204の周囲に分離領域を形成する。
【0051】
続いて、本例の造形装置10において行うマルチパス方式での造形の動作について、更に詳しく説明をする。先ず、説明の便宜上、一般的なマルチパス方式の動作について、説明をする。
【0052】
図2は、マルチパス方式でインクの層を形成する動作について説明をする図である。図2(a)は、マルチパス方式の動作の例を示す図であり、従来から一般的に行われているマルチパス方式の動作を模式的に示す。
【0053】
尚、図2以降の図面に図示するマルチパス方式の動作では、各回の主走査動作(パス)を行うタイミングでのインクジェットヘッドの副走査方向における位置を模式的に示している。また、主走査方向と直交する図面においては、図示の便宜上、一つのインクの層形成時に実行する各回の主走査動作時のインクジェットヘッドの位置について、図中の上下方向に位置をずらして図示をしているが、実際の造形装置10の動作では、一つのインクの層形成時には上下方向に位置をずらすことはない。また、これらの図においては、ヘッド部12(図1参照)が有する複数のインクジェットヘッドについて、一つのインクジェットヘッドに簡略化して図示している。これらの図示方法については、後述する図3図4図7図8等においても同様である。
【0054】
また、図2(a)に示すマルチパス方式の動作は、例えば2次元の画像を印刷するインクジェットにおいて広く行われているマルチパス方式と同様の方式(以下、通常ピッチパス方式という)の動作である。また、通常ピッチパス方式については、例えば、造形物50(図1参照)の造形時に積層するそれぞれのインクの層について、インクジェットプリンタにおいてマルチパス方式で印刷を行う場合と同様にして形成する方式等と考えることもできる。
【0055】
また、より具体的に、図2(a)においては、造形しようとする造形物50(図1参照)の副走査方向における幅(造形長さ)がインクジェットヘッドにおけるノズル列幅NLの2倍の場合に、パス数を4にしてマルチパス方式でインクの層を形成する動作を図示している。この場合、造形長さとは、例えば、形成中のインクの層の副走査方向における幅のことである。ノズル列幅NLとは、インクジェットヘッドにおけるノズル列の副走査方向における幅(ノズル並びの長さ)のことである。
【0056】
通常ピッチ方式でインクの層を形成する場合、図中に示すように、1回の主走査動作を行う毎(パス毎)に、ノズル列幅NLを予め設定されたパス数Pn(Pnは、2以上の整数)で除した距離NL/Pnだけ、副走査方向における所定の向きへ、造形物50に対して相対的にインクジェットヘッドを移動させる。そして、このようにしてインクの層を形成する場合、インクの層の単位面に注目すると、複数回の主走査動作(パス)による均等な動作で造形の材料であるインクが充填されるため、パスの繋ぎ目を目立ちにくくすることができる。また、この場合、一般に、パス数Pnを大きくするほどインクの層の均一性が良好になる。また、着色された造形物50を造形する場合に、着色される表面の画質もより良好になる。
【0057】
しかし、この場合、図中に示す状態からもわかるように、主走査動作を行う範囲(走査エリア)の副走査方向における幅が造形長さと比べて大きくなり、必要な主走査動作の回数が増大することになる。より具体的に、図中に示すように、造形長さが2NLの場合に、パス数Pnを4にして通常ピッチ方式でインクの層を形成すると、11回の主走査動作(パス)が必要になる。しかし、この場合、造形物50の造形の材料を吐出するのは、図中に充填エリアと示す範囲のみであり、始端と後端の合計6回の主走査動作で、造形の材料を吐出しない範囲(無駄な走査エリア)が発生している。
【0058】
これに対し、造形物50の造形時に行うマルチパス方式の動作については、より小さな送り量での副走査動作を行う小ピッチパス方式での動作を行うことも考えられる。図2(b)、(c)は、小ピッチパス方式の動作について模式的に示す。
【0059】
尚、以下において説明をするように、小ピッチパス方式とは、パス数分の主走査動作を行う間に行う副走査動作での送り量を通常ピッチ方式よりも小さくする方式である。また、図2(b)、(c)においては、図示及び説明の簡略化のため、パス数分の主走査動作を行う間に行う副走査動作での送り量を0にした場合を図示している。この送り量を0よりも大きな量に設定する場合の動作については、後に更に詳しく説明をする。また、以下においては、説明の便宜上、送り量を0よりも大きくした場合の動作を適宜含めて説明をする。
【0060】
また、小ピッチパス方式でインクの層を形成する場合も、層の各位置に対しては、通常ピッチ方式の場合と同様に、パス数Pn回の主走査動作を行う。より具体的に、この場合、ヘッド部12(図1参照)におけるインクジェットヘッドから吐出されるインクにより形成される一つのインクの層を形成する動作において、走査駆動部16(図1参照)は、造形中の層の各位置に対し、インクジェットヘッドに、Pn回の主走査動作を行わせる。
【0061】
また、この場合において、パス数であるPn回分の主走査動作の合間には、大きな送り量での副走査動作を行わず、副走査方向におけるほぼ同じ範囲に対し、インクジェットヘッドにPn回の主走査動作を行わせる。また、これにより、インクジェットヘッドに、副走査方向における範囲がインクジェットヘッドのノズル列幅NLに相当する範囲に、インクの層の一部を構成するブロックを形成させる。
【0062】
この場合、ノズル列幅NLに相当する範囲とは、例えば、ノズル列幅NLに対し、そのブロックの形成中に行う副走査動作での小さな送り量分の調整を行った範囲のことである。また、図2(b)、(c)に示すように、この送り量を0にした場合、ノズル列幅NLに相当する範囲とは、ノズル列幅NLと等しい範囲のことである。
【0063】
また、より具体的に、図2(b)、(c)に示す場合、パス数Pnを4にして、小ピッチパス方式での動作を行う。そして、この場合、1〜4回目の主走査動作(1〜4pass)により、一つ目のブロック(ブロック1)であるブロック302aを形成する。
【0064】
また、小ピッチパス方式でインクの層を形成する場合において、造形長さがノズル列幅NLよりも大きい場合、副走査方向へブロックが複数個並ぶ構成でインクの層を形成する。そして、この場合、一つ目のブロック302aを形成した後に、形成するブロックの位置を変更するための大きな送り量での副走査動作を行って、二つ目のブロック(ブロック2)であるブロック302bを形成すべき位置へインクジェットヘッドを移動させる。そして、その位置で更にパス数Pn回分の主走査動作である5〜8回目の主走査動作(5〜8pass)を行って、ブロック302bを形成する。また、更に大きな造形物50を造形する場合には、必要に応じて、同様の動作を繰り返して更に多くのブロック(ブロック3等)を形成する。
【0065】
このように、小ピッチパス方式の場合も、単位面に注目すると、通常ピッチ方式の場合と同様に、Pn回の主走査動作でインクが充填される。しかし、インクの層の全体の構成に着目した場合、小ピッチパス方式の場合、通常ピッチ方式の場合と異なり、ブロック単位での層の形成が行われることになる。
【0066】
そして、この場合、図2(a)と図2(b)との比較等からわかるように、一つのインクの層を形成するために必要な主走査動作の回数を低減することができる。より具体的に、図2(a)に示す通常ピッチ方式の場合に11回の主走査動作が必要であったのに対し、図2(b)に示す小ピッチパス方式の場合、8回の主走査動作で一つのインクの層を形成することができる。そのため、小ピッチパスでインクの層を形成することにより、例えば、造形に要する時間を短縮すること等が可能になる。
【0067】
しかし、小ピッチパス方式でインクの層を形成する場合、例えば図2(b)に示すように、ブロックの境界が形成されることになる。また、このようなブロックの境界は、例えば通常ピッチ方式の場合に生じるパスの境界等と比べ、目立ちやすくなる場合がある。より具体的に、小ピッチパス方式でインクの層を形成する場合、ブロック間の繋ぎ目において、凹凸や色味の違い等が発生する場合がある、また、その結果、繋ぎ目がスジとして目立つ場合がある。
【0068】
この点について、上記においても説明をしたように、小ピッチパス方式でインクの層を形成する場合にも、パス数分の主走査動作を行う間に行う副走査動作での送り量について、必ずしも0にせず、小さな送り量での副走査動作を行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、小さな送り量を完全に0にする場合等と比べ、ブロックの境界の影響を低減することができる。
【0069】
図3は、小ピッチパス方式についてより詳しく説明をする図である。図3(a)、(b)は、小さな送り量を0以外に設定する場合の小ピッチパス方式の動作の一例について模式的に示す。
【0070】
図3(a)、(b)に示した動作においては、小ピッチパス方式での小さな送り量を0以外に設定することで、一つのブロックの形成時に行うパス数分の主走査動作について、副走査方向における位置をわずかにずらして行う。また、これにより、図3(a)中に記号Δで示すように、ブロック間に重なり部分を設ける。このように構成すれば、例えば、図2(b)、(c)を用いて説明をした場合と比べ、ブロックの境界に発生するスジや色味の違い等を目立たなくすることができる。
【0071】
また、より具体的に、この場合、一つのブロック(ブロック302a等)を形成する間に行うパス数Pn回分の主走査動作の合間に行う副走査動作において、副走査方向の一方の向きへ、小さい送り量での副走査動作を行う。また、これにより、ブロック302a、b等の各ブロックについて、中間領域402及び端部領域404を有するように形成する。この場合、中間領域402は、副走査方向におけるブロックの中間部分である。また、図3(b)に示すように、本例において、中間領域402は、副走査方向における位置が一つのブロックのみに含まれ、他のブロックと位置が重ならない領域である。また、端部領域404は、副走査方向におけるブロックの端の領域である。本例において、端部領域404は、副走査方向におけるブロックの一方及び他方のそれぞれの領域であり、隣接するブロックと副走査方向における範囲の少なくとも一部が重なっている。隣接するブロックと副走査方向における範囲の少なくとも一部が重なるとは、例えば、図中におけるブロック302aとブロック302bとの間の端部領域404のように、副走査方向の範囲がブロック302a、bの両方と重なることである。
【0072】
このようにして小ピッチパス方式の動作を行う場合、例えば図2(b)、(c)に示した場合と比べると、同じ回数の主走査動作により形成できる領域の副走査方向における範囲は、送り量の小さな副走査動作を行う影響により、わずかに狭くなる。例えば、図3(a)、(b)に示す場合において、8回の主走査動作に対応する充填エリアの幅は、2NLよりもわずかに小さくなる。しかし、この場合も、小さな送り量の副走査動作での送り量を十分に小さくすることで、無駄な走査エリアを適切に低減することができる。また、これにより、例えば通常ピッチ方式で造形を行う場合と比べ、造形に要する時間を適切に短縮することができる。
【0073】
ここで、上記の説明等からわかるように、小ピッチパス方式の動作については、例えば、一つのインクの層を形成する動作において、送り量の異なる複数種類の副走査動作である第1副走査と第2副走査とを行う構成等と考えることもできる。この場合、第1副走査は、一つのブロックを形成するために行うパス数分のPn回の主走査動作の合間に行う小さな送り量(小ピッチ)での副走査動作である。また、第2副走査は、一つのブロックを形成するために行うPn回の主走査動作を行った後、次のブロックを形成するための主走査動作を行う前に行う大きな送り量(大ピッチ)での副走査動作である。
【0074】
また、この場合、第1副走査における送り量(小ピッチの送り量)については、例えば、ノズル列幅NLをパス数Pnで除した幅(NL/Pn)よりも小さい幅にすることが考えられる。また、より具体的に、第1副走査における送り量については、例えば、ノズル列におけるノズル間隔の20倍以下にすることが好ましい。この場合、ノズル間隔とは、例えば、ノズル列中に並ぶノズル間の副走査方向における間隔のことである。また、第1副走査における送り量は、好ましくはノズル間隔の10倍以下、更に好ましくは5倍以下である。
【0075】
また、第2副走査における送り量(大ピッチの送り量)については、例えば、ノズル列幅NLに対応する距離にすることが考えられる。この場合、ノズル列幅に対応する距離とは、例えば、ノズル幅に対し、小ピッチでの送り量を考慮した必要な調整を行った距離のことである。
【0076】
また、より具体的に、第2副走査における送り量については、例えば、それぞれのブロックの片方の端における端部領域404の幅(副走査方向における幅)をノズル列幅NLから減じた距離にすることが考えられる。また、この場合、それぞれのブロックの片方の端における端部領域404の幅については、例えば、ノズル列におけるノズル間隔(ノズル間ピッチ)とパス数Pnとの積(ノズル間隔・Pn)よりも大きく、かつ、ノズル列幅NLをパス数Pnで除した値(NL/Pn)よりも小さくすることが考えられる。
【0077】
また、上記においては、小さな送り量の副走査動作(第1副走査)について、図3(a)、(b)を用いて、副走査方向の一方の向きへインクジェットヘッドを相対移動させる動作について、説明をした。しかし、小ピッチパス方式で一つのブロックを形成する間に行う小さな送り量の副走査動作については、必ずしも一方の向きのみで行うのではなく、例えば、副走査方向における一方及び他方の向きへの副走査動作を併用してもよい。
【0078】
図3(c)は、小ピッチパス方式の動作の他の例について模式的に示す図であり、一つのブロックを形成する間に双方向の副走査動作(第1副走査)を行う場合の動作の例を示す。この場合も、例えば図3(a)、(b)を用いて説明をした場合と同様に、一つのブロックを形成するために行うパス数(Pn)回の主走査動作のそれぞれの合間に、小さな送り量の副走査動作である第1副走査を行う。そして、この場合、Pn回のうちのいずれかの主走査動作の後で行う第1副走査において、インクジェットヘッドの相対移動の向きを、副走査方向における一方の向きにする。また、他のいずれかの主走査動作の後で行う第1副走査において、インクジェットヘッドの相対移動の向きを、副走査方向における他方の向きにする。このように構成した場合も、小ピッチパス方式の動作を適切に行うことができる。また、この場合、より具体的に、各回の第1副走査におけるインクジェットヘッドの相対移動の向きについては、図中に示すように、副走査方向の一方及び他方の向きで交互に設定することが考えられる。
【0079】
ここで、上記においても説明をしたように、小ピッチパス方式でインクの層を形成する場合において、各ブロックの端に上記のような端部領域404を形成することにより、例えば、図2(b)、(c)を用いて説明をした場合と比べ、ブロックの境界に発生するスジ等を目立たなくすることができる。しかし、積層造形法で造形を行う場合、単純に複数のインクの層を重ねて形成すると、単独のインクの層ではブロックの境界が目立ちにくい場合にも、それぞれのインクの層における端部領域404が重なることにより、境界が目立ちやすくなることが考えられる。
【0080】
これに対し、本願の発明者は、積層方向へ積層される複数のインクの層について、端部領域404の形成の仕方を層毎に異ならせることを考えた。この場合、端部領域404の形成の仕方を層毎に異ならせるとは、例えば、積層される複数のインクの層のうちの少なくとも一部について、積層方向へ連続して重なる二つのインクの層の間で、対応するブロックにおける端部領域404の形成の仕方を異ならせることである。また、対応するブロックとは、例えば、副走査方向における距離が最も近くなるブロックのことである。また、ブロック間の副走査方向における距離とは、例えば、副走査方向における一方側の端等の所定の位置を基準位置にした場合の基準位置間の距離である。
【0081】
尚、この場合、積層される全てのインクの層について、積層方向へ連続して重なる二つのインクの層の間で、対応するブロックにおける端部領域404の形成の仕方を異ならせることが好ましい。また、積層される複数のインクの層のうちの少なくとも一部とは、例えば、造形物50(図1参照)を構成する全てのインクの層のうち、外観等への影響が少ない一部の層を除いたインクの層であってもよい。
【0082】
図4は、連続して重なる二つのインクの層の形成の仕方について説明をする図であり、対応するブロックにおける端部領域404の形成の仕方を異ならせ方の一例を模式的に示す。図4(a)は、連続して重なる二つのインクの層である第n層及び第n+1層(nは、1以上の整数)について、各回の主走査動作を行う範囲(副走査方向における範囲)の一例を示す。図4(b)は、第n層及び第n+1層について、副走査方向へ並ぶ二つのブロック302a、bの範囲の一例を示す。
【0083】
尚、第n層及び第n+1層とは、例えば、積層造形法で積層されるインクの層のうち、第n番目及び第n+1番目に積層されるインクの層のことである。また、図中に示す場合においては、例えば、第n層における一つ目のブロック(ブロック1)であるブロック302aと、第n+1層における一つ目のブロック(ブロック1)であるブロック302aとの関係が、連続して重なる二つのインクの層の間での対応するブロックになる。また、この場合、第n層における二つ目のブロック(ブロック2)であるブロック302bと、第n+1層における二つ目のブロック(ブロック2)であるブロック302bとの関係も、連続して重なる二つのインクの層の間での対応するブロックになる。
【0084】
また、この場合、連続して重なる二つのインクの層について、対応するブロックにおける端部領域404の形成の仕方を異ならせるとは、例えば、端部領域404の位置(副走査方向における位置)や幅(Δの量)を異ならせることである。より具体的に、この場合、例えば、対応するブロックについて、副走査方向における端部領域404の位置をずらすことにより、積層方向へ連続して重なる二つのインクの層の間で、端部領域404の形成の仕方を異ならせる。また、例えば、対応するブロックについて、副走査方向における端部領域404の幅を異ならせることにより、積層方向へ連続して重なる二つのインクの層の間で、端部領域404の形成の仕方を異ならせてもよい。
【0085】
このように構成すれば、例えば、連続して重なるインクの層の間で同じ状態の端部領域404が重なることを適切に防ぐことができる。また、これにより、それぞれのインクの層におけるブロックの境界部分について、インクの層が重なることでより目立つ状態になることを適切に防ぐことができる。そのため、本例によれば、例えば、造形物50の造形をより高い精度で適切に行うことができる。
【0086】
続いて、小ピッチパス方式の動作に関し、大ピッチの送り量で行う第2副走査の行い方の例を説明する。図5は、第2副走査の動作の一例について説明をする図である。
【0087】
上記においても説明をしたように、小ピッチパス方式でインクの層を形成する場合、形成するブロックを変更するタイミングで、第2副走査を行う。また、これにより、次に形成するブロックの位置へインクジェットヘッドを移動させる。そして、この場合、より簡易な制御で造形を行うことを考えるのであれば、例えば、第2副走査時にインクジェットヘッドを相対移動させる向きについて、副走査方向における一方の向きのみに設定すること等が考えられる。
【0088】
しかし、第2副走査時にインクジェットヘッドを相対移動させる向きについては、例えば、副走査方向における一方及び他方の向きの双方向に設定することも考えられる。また、より具体的に、この場合、例えば、第2副走査の向きについて、積層されるインクの層毎に、副走査方向における一方の向きと他方の向きとで交互に変更すること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、それぞれのインクの層の形成を開始するタイミングにおいて、副走査方向における初期位置(X始点)へインクジェットヘッドをより短時間で移動させることができる。また、これにより、例えば、造形物50の造形に要する時間をより短縮して、より効率的に造形物50の造形を行うことができる。
【0089】
また、この場合、積層方向において連続して重なる二つのインクの層について、第2副走査の相対移動の向きを異なせることで、インクの層の形成の仕方が異なることにもなる。そのため、このように構成すれば、例えば、連続して重なるインクの層の間で同じ状態の端部領域404が重なることをより適切に防ぐこともできる。
【0090】
また、より具体的に、双方向の第2副走査動作については、図5(a)、(b)に示すように行うことが考えられる。図5(a)は、積層方向へ連続して重なる二つのインクの層のうちの一方(下側のインクの層)の形成時に行う第2副走査の一例を示す。この場合、第2副走査時のインクジェットヘッド102の相対移動の向きについては、図中に往路と示すように、副走査方向の一方の向きに設定する。また、これにより、図中にブロック1〜3として示す複数のブロック302a〜cについて、この往路の向きに沿って並ぶように形成する。尚、図5においては、図示及び説明の簡略化のため、走査範囲を造形物50に合わせた状態を図示している。しかし、サポート層52の形成が必要な造形物50を造形する場合には、走査範囲について、サポート層52を含む範囲に合わせることになる。
【0091】
また、この場合、次のインクの層の形成時には、第2副走査時のインクジェットヘッド102の相対移動の向きを反対にする。図5(b)は、積層方向へ連続して重なる二つのインクの層のうちの他方(上側のインクの層)の形成時に行う第2副走査の一例を示す。この場合、第2副走査時のインクジェットヘッド102の相対移動の向きについては、図中に復路と示すように、図5(a)に示した場合と反対に、副走査方向の他方の向きに設定する。また、これにより、複数のブロック302a〜c(ブロック1〜3)について、この復路の向きに沿って並ぶように形成する。このように構成すれば、例えば、双方向の第2副走査を適切に行うことができる。
【0092】
また、積層造形法で造形を行う場合、それぞれのインクの層の形成時において、最初の主走査動作の開始時の副走査方向におけるインクジェットヘッド102の位置(X始点)について、そのインクの層を形成すべき領域の副走査方向における範囲に合わせて設定することが好ましい。より具体的に、この場合、図中に示すように、X始点について、副走査方向における造形物50の端の位置に合わせて設定することが考えられる。この場合、インクジェットヘッド102の位置を合わせるとは、例えば、インクジェットヘッド102のノズル列における端の位置を合わせることである。また、造形物50やノズル列の端とは、第2副走査でのインクジェットヘッド102の相対移動の向きにおける上流側の端のことである。このように構成すれば、例えば、主走査動作を行う領域の副走査方向における範囲について、造形物50の形状に合わせてより適切に設定できる。また、これにより、造形物50の造形をより効率的に行うことができる。
【0093】
また、この場合、それぞれのブロックの形成時に行う主走査動作時にインクジェットヘッド102を移動させる範囲(主走査方向における範囲)についても、造形しようとする造形物50の主走査方向における幅に合わせて設定することが好ましい。この場合、造形物50の主走査方向における幅に合わせるとは、造形物50を構成するインクの層のうち、その回の主走査動作により形成するインクの層を形成すべき範囲(主走査方向における範囲)に合わせることである。また、より具体的に、この場合、例えば図5(a)、(b)におけるブロック302c(ブロック3)のように、造形物50において主走査方向における幅が狭くなる部分に対応するブロックの形成時には、主走査動作時にインクジェットヘッド102を移動させる範囲を狭くすることが考えられる。また、この場合、ブロック302a、b(ブロック1、2)の形成時についても、主走査方向における造形物50の幅に合わせてインクジェットヘッド102を移動させる範囲を設定することが好ましい。このように構成すれば、造形物50の造形をより効率的に行うことができる。
【0094】
また、図5を用いて説明をした動作の変形例においては、例えば、第2副走査の行い方を変形すること等も考えられる。図6は、第2副走査の行い方の変形例を示す。図6(a)、(b)は、この変形例における往路及び復路の第2走査副走査の例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図6に示した動作は、図5に示した動作と同一又は同様である。
【0095】
本変形例においては、例えば、図5(a)においてブロック302b(ブロック2)からブロック302c(ブロック3)に移動する場合に行う第2副走査に対応する第2副走査について、図6(a)に示すように、造形物の範囲に合わせて、移動量を小さくする。このように構成すれば、例えば、次の層の形成時において、副走査方向へ移動することなく、図6(b)に示すブロック302a(ブロック1)の主走査動作を開始することができる。また、この場合、図6(b)に示す動作において最後に行う第2副走査についても、図6(a)に示した場合と同様に、造形物の範囲に合わせて、移動量を小さくする。このように構成すれば、例えば、副走査方向におけるインクジェットヘッド102の移動距離を小さくすることができる。また、これにより、例えば、造形物50の造形をより効率的に行うことができる。また、例えば、造形装置10を小型にすること等も可能になる。
【0096】
続いて、小ピッチパス方式の動作に関し、ブロックの形成の仕方の変形例等を説明する。図7は、ブロックの形成の仕方の変形例について説明をする図である。尚、以下に説明をする点を除き、本変形例においてブロックを形成する動作は、図1〜6等を用いて説明をした動作と、同一又は同様である。
【0097】
図7(a)は、以下に説明をする変形例について説明をするための参考図であり、本変形例とは異なる方法でブロックを形成する動作に関し、上記において図3及び図4等を用いて説明をしたブロックの形成の仕方を示す。図3及び図4等を用いて説明をした動作の場合、上記においても説明をしたように、一つのインクの層を形成するブロック(ブロック302a、b等)として、中間領域402及び端部領域404を有する構成のブロックを形成する。そして、この場合、隣接するブロックについて、端部領域404が重なるように形成する。
【0098】
しかし、この場合、隣接するブロックの形成時に行うパス数Pn回分の主走査動作のうち、同じ回の主走査動作に着目した場合、それぞれの主走査動作で形成される領域である吐出対象領域の境界(パスの境界)は、主走査方向と平行な一直線状になる。この場合、吐出対象領域とは、例えば、各回の主走査動作でインクジェットヘッドにインクを吐出させる領域であり、各回の前記主走査動作でインクジェットヘッドにおけるノズル列が通過する領域内に設定される。
【0099】
尚、この場合、同じ回の主走査動作とは、例えば、各ブロックの形成時に行う複数回の主走査動作のうち、最初の主走査動作から数えた順番が同じになる主走査動作のことである。より具体的に、例えば、図7(a)の下側に示すように、各ブロックの形成時にk番目(kは、1以上、Pn以下の整数)に行う主走査動作に着目した場合、一つ目のブロック302aに対してk番目に行う主走査動作は、一つのインクの層の形成時に行う全ての主走査動作のうち、k番目の主走査動作(k pass)である。また、二つ目のブロック302bに対してk番目に行う主走査動作は、全ての主走査動作のうち、(k+Pn)番目の主走査動作((k+Pn)pass))である。そのため、この場合、これらの二つの主走査動作が、同じ回の主走査動作になる。
【0100】
また、この場合、同じ回の主走査動作で形成される吐出対象領域の境界(パスの境界)について、主走査方向と平行な一直線状になるとは、図7(a)の下側に示すように、k番目に行う主走査動作に対応する吐出対象領域502aと、(k+Pn)番目の主走査動作に行う主走査動作に対応する吐出対象領域502bとについて、副走査方向における特定の位置が境界になることである。また、この場合、隣接するブロックにおける同じ回の主走査動作について、副走査方向における各位置に対して排他的にインクを吐出すると考えることもできる。この場合、副走査方向における各位置に対して排他的にインクを吐出するとは、例えば、副走査方向における各位置へインクを吐出する主走査動作について、隣接するブロックにおける同じ回の主走査動作のうちのいずれか一方になることである。
【0101】
これに対し、ブロックの形成の仕方の変形例においては、隣接するブロックにおける同じ回の主走査動作について、副走査方向における同じ範囲の領域へ両方の主走査動作でインクを吐出するように設定すること等も考えられる。図7(b)、(c)は、ブロックの形成の仕方の変形例を示す。
【0102】
この場合、副走査方向における同じ範囲の領域へ両方の主走査動作でインクを吐出するとは、例えば、副走査方向における所定の範囲の領域に対し、一方の主走査動作で領域内の一部の吐出位置へインクを吐出して、他方の主走査動作で領域内の他の吐出位置へインクを吐出することである。また、このような動作については、副走査方向における所定の範囲の領域に対し、隣接するブロックにおける同じ回の主走査動作により相補的にインクを吐出する動作等と考えることもできる。
【0103】
また、この場合、隣接するブロックにおける同じ回の主走査動作の吐出対象領域502について、図7(b)に示すインターレイス領域512のように、副走査方向において一部が重なるように設定することが考えられる。この場合、インターレイス領域512は、例えば、ブロックにおける端部領域の一部に設定される。また、より具体的に、図7(b)に示す場合、k番目に行う主走査動作に対応する吐出対象領域502aと、(k+Pn)番目の主走査動作に行う主走査動作に対応する吐出対象領域502bとが、インターレイス領域512を共有して並んだ状態になっている。
【0104】
また、この場合、インターレイス領域512については、各回の主走査動作でインクを吐出する吐出密度を他の部分よりも少なくした領域等と考えることもできる。この場合、例えば、インターレイス領域512を吐出対象領域に含む2回の主走査動作により、インターレイス領域512以外の部分に対しての1回分の主走査動作と同じ密度で、インクのドットを形成する。また、この場合、例えば、それぞれのブロックの形成時において、ブロックの端部領域の少なくとも一部に対する1回の主走査動作での吐出位置の密度について、ブロックの中間領域に対する吐出位置の密度よりも低く設定する動作等と考えることもできる。この場合、吐出位置の密度とは、1回の主走査動作でインクジェットヘッドにインクを吐出させる吐出位置の密度のことである。また、この場合、隣接する二つのブロックの間の端部領域の少なくとも一部について、それぞれのブロックに対してPn回ずつ行う合計で2Pn回の主走査動作により形成すると考えることができる。
【0105】
また、この場合、ブロックの端部領域におけるインターレイス領域512の形成の仕方については、例えば、隣接する二つのブロックの形成時に、インターレイス領域512を相補的(インターレイス的)に形成するように吐出位置を選択するパターンを用いる方法等と考えることもできる。この場合、インターレイス領域512の形成に用いるパターンとは、例えば、インターレイス領域512内の全ての吐出位置の中から各回の主走査動作でインクを吐出させる吐出位置を指定するパターンのことである。また、より具体的に、この場合、インターレイス領域512の面積を半分ずつに分けて、隣接するブロックのそれぞれにおける吐出対象領域に分配する方法(面積分配方式)等が考えられる。
【0106】
また、図7(c)においては、面積分配方式でインターレイス領域512を形成する場合のインターレイス領域512の詳細な構成の一例を模式的に示している。この場合、隣接するブロックにおいてインターレイス領域512と重なる複数の吐出対象領域502a、bについて、図中に示すように、主走査方向に沿って端部をギザ状に変化させる。また、これにより、吐出対象領域502a、bに対応する2回の主走査動作により、インターレイス領域512を相補的に形成する。
【0107】
また、吐出対象領域502a、bの端部については、ギザ状に限らず、その他の形状で変化させてもよい。例えば、吐出対象領域502a、bの端部について、図示したようなギザ状以外の波状に変化させること等も考えられる。また、様々な形状により、端部について、主走査方向と非平行になるように形成すること等も考えられる。
【0108】
また、このようにしてインターレイス領域512を形成する場合、積層する複数のインクの層の間でのインターレイス領域512の重なり方についても、同じ状態のインターレイス領域512が連続して重ならないようにすることが好ましい。図8は、連続して積層する複数のインクの層についてインターレイス領域512の形成の仕方の例を示す。図8(a)、(b)は、複数のブロック302a〜cを含むインクの層の形成時に行う主走査動作について、それぞれの主走査動作を行う位置(副走査方向における位置)の例を示す。図8(c)は、図8(b)に円602で示した箇所を拡大した様子を模式的に示す拡大図である。
【0109】
尚、図8においては、図示及び説明の簡略化のため、それぞれのブロックの形成時に行う主走査動作の回数(パス数Pn)を2にした場合について、図示を行っている。この場合、隣接するブロック302a、b等において、奇数番目の主走査動作同士や、偶数番目の主走査動作同士が、一つのインターレイス領域を形成する関係になる。
【0110】
また、この場合も、一つのブロックを形成時に行う各回の主走査動作の合間には、小ピッチの送り量での副走査動作(第1副走査)を行う。また、隣接するブロックにおける同じ回の主走査動作の吐出対象領域については、図7(c)に示した場合と同一又は同様にして、端部をギザ状に変化させる。そのため、この場合、ブロック間の端部領域404の一部が、インターレイス領域になる。また、この場合、副走査方向におけるインターレイス領域の幅について、5mm程度(例えば、3〜8mm程度)の幅にすることが好ましい。
【0111】
また、積層造形法で造形物を造形する場合、このようなインターレイス領域を含むインクの層が重ねて形成されることになる。そして、この場合、積層される複数のインクの層において、例えば同じ状態のインターレイス領域が重なると、ブロックの境界が目立つおそれがある。これに対し、この場合も、積層方向へ連続して重なる二つのインクの層の間で、対応するインターレイス領域の形成の仕方を互いに異ならせることで、ブロックの境界が目立つことをより適切に防ぐことができる。この場合、二つのインクの層の間での対応するインターレイス領域とは、対応するブロックの形成時に対応するタイミングで行う主走査動作により形成されるインターレイス領域のことである。また、対応するタイミングで行う主走査動作とは、パス数分の主走査動作のうちの、同じ回の主走査動作のことである。
【0112】
また、この場合、対応するインターレイス領域の形成の仕方を互いに異ならせるとは、例えば、インターレイス領域において重なる吐出対象領域について、副走査方向における端部の形成の仕方を互いに異ならせることである。また、より具体的に、端部の形成の仕方を互いに異ならせる方法として、例えば、端部をギザ状にする場合において、ギザ状に変化する部分の形状を互いに異ならせることが考えられる。また、この場合、例えば、ギザのパターンについて、副走査方向における幅を互いに異ならせることが考えられる。また、ギザのパターンについて、例えば周期や凹凸の大きさを互いに異ならせること等も考えられる。また、ギザ状以外の波状の端部を形成する場合にも、同様に、波状の部分の形状を互いに異ならせることが考えられる。また、端部の形成の仕方を互いに異ならせる方法としては、例えば、二つのインクの層の間で、対応するインターレイス領域内での吐出対象領域の端部の副走査方向における位置をずらすこと等も考えられる。これらのように構成すれば、例えば、ブロックの境界が目立つことをより適切に防ぐことができる。
【0113】
続いて、インターレイス領域512の形成の仕方の変形例や、造形装置10(図1参照)の動作に関する補足説明等を行う。図9は、インターレイス領域512の形成の仕方の変形例等について説明をする図である。図9(a)は、インターレイス領域512の形成の仕方の変形例を模式的に示す。
【0114】
上記においては、図7及び図8等を用いて、主に、面積分配方式でインターレイス領域512を形成する動作について、説明をした。しかし、インターレイス領域512の形成については、面積分配方式以外の方法で行うことも考えられる。また、この場合、図9(a)においてk番目の主走査動作の吐出対象領域502aや(k+Pn)番目の主走査動作の吐出対象領域502bに対して網掛け模様で示したように、インターレイス領域512内のそれぞれの吐出位置へインクを吐出させるパターンの設定において、端部をギザ状等にする面積分配方式以外の相補的なパターンを設定することが考えられる。
【0115】
また、この場合、相補的なパターンについては、例えば、インターレイス領域512内を副走査方向に交互に分割する方式(X方向インターレイス方式)や、インターレイス領域512内を主走査方向に交互に分割する方式(Y方向インターレイス方式)等が考えられる。この場合、インターレイス領域512内を分割するとは、副走査方向又は主走査方向において、造形の解像度の最小単位の幅のライン単位で、そのラインを形成すべき主走査動作について、そのインターレイス領域512を形成する二つの主走査動作に交互に割り当てることである。このように構成した場合も、インターレイス領域512を適切に形成できる。
【0116】
また、これらのようにしてインターレイス領域512を形成する場合、積層方向へ連続して重なる二つのインクの層の間で、対応するインターレイス領域512の形成時に用いるパターンの設定を互いに異ならせることが好ましい。このように構成すれば、例えば、二つのインクの層の間で、ブロックの端部領域の形成の仕方を適切に異ならせることができる。
【0117】
続いて、造形装置10の動作に関連して、造形時に造形物50の周囲に形成するサポート層52について、補足説明を行う。図9(b)は、サポート層52の形成の仕方について更に詳しく説明をする図である。上記においても説明をしたように、造形装置10により造形物50を形成する場合、造形台14の上へインクを吐出することにより、インクの層を重ねて形成する。また、この場合において、必要に応じて、造形物50の周囲にサポート層52を形成する。
【0118】
そして、この場合、例えば、造形台14上において、造形物50の下(造形台14と造形物50との間)に、造形物50の下地となるサポート層52を形成することが考えられる。このように構成すれば、例えば、造形台14に微小な凹凸等が存在する場合等にも、その影響を適切に抑えることができる。また、この場合、造形装置10のヘッド部12(図1参照)における平坦化ローラに達する高さまでサポート層52の材料を積層することで、平坦化ローラが機能しない隙間を埋めて、造形物50の形成の開始直後から、平坦化ローラでの平坦化を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、造形物50をより高い精度で適切に造形できる。
【0119】
また、造形装置10においては、ヘッド部12における各インクジェットヘッドとして、吐出するインクの液滴の容量を複数段階で可変な構成(バリアブルヘッド)を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、造形物50の各部の形成時において、必要に応じてインクの液滴の容量を様々に調整できる。また、より具体的には、例えば、造形物50のおける着色領域の形成時において、インクの液滴の容量を可変にすることで、より高い精度の着色が可能になる。
【0120】
また、この場合、例えばサポート層52等のように、1種類のインクで塗りつぶすように形成する部分については、吐出する液滴の容量を最大にしてインクの吐出を行うことが考えられる。また、この場合、特に、サポート層52において造形物50の下に形成する部分については、液滴の容量を最大にしてインクの吐出を行うことが好ましい。このように構成すれば、例えば、ヘッド部12における平坦化ローラに達する高さまでサポート層52の材料を積層する動作について、より短時間で行うことができる。また、これにより、例えば、造形に要する時間をより適切に短縮できる。
【0121】
尚、造形台14上において、平坦化ローラが機能しない隙間は、例えば200μm程度の幅の隙間である。また、サポート層52の材料でこの隙間を埋める動作については、例えば、造形物50の本体の造形時と同一又は同様の設定で行ってよい。より具体的に、この場合、例えば、造形物50の下にサポート層52の材料を積層する動作について、造形物50の本体の造形時と同じ解像度の設定で行うことが考えられる。
【0122】
また、造形物50の下にサポート層52の材料を積層する動作については、例えば造形物50と比べて低い解像度で形成を行っても問題が生じにくいため、造形物50の本体の造形時と異なる設定で行うこと等も考えられる。この場合、例えば、造形の解像度について、造形物50の本体の造形時よりも低く設定すること等が考えられる。より具体的に、この場合、例えば、造形物50の下にサポート層52の材料を積層する動作について、300dpi程度の解像度で行い、造形物50の本体の造形について、600dpi程度の解像度で行うこと等が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、例えば造形装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0124】
10・・・造形装置、12・・・ヘッド部、14・・・造形台、16・・・走査駆動部、20・・・制御部、50・・・造形物、52・・・サポート層、102・・・インクジェットヘッド、104・・・紫外線光源、106・・・平坦化ローラ、202・・・内部領域、204・・・光反射領域、206・・・着色領域、208・・・保護領域、302・・・ブロック、402・・・中間領域、404・・・端部領域、502・・・吐出対象領域、512・・・インターレイス領域、602・・・円
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9