特許第6861054号(P6861054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861054
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】印刷機
(51)【国際特許分類】
   B41F 31/04 20060101AFI20210412BHJP
   B41F 33/00 20060101ALI20210412BHJP
   B41F 31/06 20060101ALI20210412BHJP
   B41F 7/02 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B41F31/04
   B41F33/00 238
   B41F31/06
   B41F7/02 414
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-39761(P2017-39761)
(22)【出願日】2017年3月2日
(65)【公開番号】特開2018-144295(P2018-144295A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】714000460
【氏名又は名称】リョービMHIグラフィックテクノロジー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷本 孝文
(72)【発明者】
【氏名】藤原 聖子
【審査官】 石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−001799(JP,A)
【文献】 特開平10−016193(JP,A)
【文献】 特開2002−248738(JP,A)
【文献】 特開平09−290502(JP,A)
【文献】 特開昭57−187253(JP,A)
【文献】 米国特許第05832830(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F31/00−35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキツボローラと、該インキツボローラの軸方向に複数設けられたインキツボキーとを備え、該インキツボキーの該インキツボローラに対する開度調整によりインキを該インキツボローラに供給し、さらに複数のインキローラ群を介して版胴に巻回された刷版へインキを供給する印刷機において
該刷版へのインキ供給量を迅速に増減可能なベースインキ調整モードを備えており、
該複数のインキローラ群のうち、少なくとも1つのインキローラに接離可能で、該インキローラの軸方向に延びて設けられ、該インキローラへの当接時に該インキローラに供給されたインキを掻き取り可能なドクタを有し、該ドクタの該インキローラへの当接により該刷版へのインキ供給量を迅速に減量することを特徴とする印刷機。
【請求項2】
該複数のインキツボキーの該インキツボローラに対する開度を全て同一開度にすることにより該刷版へのインキ供給量を迅速に増量することを特徴とする請求項1記載の印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のインキローラ群を介し、インキツボ内のインキを版胴に巻回された刷版に供給するインキ供給装置を備えた印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷中に所望の色調(濃度)の印刷物を得るために、刷版へのインキ供給量を増減させることがある。特許文献1には、インキツボローラの回転数やインキ移しローラの往復動回数を制御することによりインキ供給量を調整する技術の開示がある。また、特許文献2にはドクタのインキ往復ローラへの当接により、インキ供給量を減少させる技術の開示がある。
【0003】
しかしながら、インキ量の調整は、複数のインキローラで構成されたインキローラ群を介して行うので、印刷中など、インキローラ群にインキが十分に供給された状態では、所望の色調の印刷物を得るまでに時間がかかり、改善の余地があった。特に刷版に形成される画像が少ない、所謂画像面積率の小さい印刷物の印刷(小画像印刷)に関してこの傾向が強かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−16193号公報
【特許文献2】特開昭57−187253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、印刷中の刷版へのインキ供給量を迅速に調整可能な印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、インキツボローラと、該インキツボローラの軸方向に複数設けられたインキツボキーとを備え、該インキツボキーの該インキツボローラに対する開度調整によりインキを該インキツボローラに供給し、さらに複数のインキローラ群を介して版胴に巻回された刷版へインキを供給する印刷機において、該刷版へのインキ供給量を迅速に増減可能なベースインキ調整モードを備えており、該複数のインキローラ群のうち、少なくとも1つのインキローラに接離可能で、該インキローラの軸方向に延びて設けられ、該インキローラへの当接時に該インキローラに供給されたインキを掻き取り可能なドクタを有し、該ドクタの該インキローラへの当接により該刷版へのインキ供給量を迅速に減量することを特徴としている。
【0007】
また、該複数のインキツボキーの該インキツボローラに対する開度を全て同一開度にすることにより該刷版へのインキ供給量を迅速に増量することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、ベースインキ調整モードにより、印刷中の刷版へのインキ供給量を迅速に調整可能な印刷機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る印刷機の概略断面側面図である。
図2】本発明に係る印刷機のインキ供給部の拡大図である。
図3】本発明に係るインキツボキーとインキツボローラを示す平面図である。
図4】本発明に係る制御装置を示すブロック図である。
図5】本発明に係るGUIの画面を示す図である。
図6】本発明に係るインキ供給量を増量する場合のフローチャートである。
図7】本発明に係るインキ供給量を減量する場合のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態にかかる印刷機について図1図5を参酌しつつ説明する。
【0012】
図1は本発明に係るベースインキ調整モードを供えた印刷機の一例である。図1に示す通り、本実施形態に係る印刷機は枚葉オフセット印刷機である。この印刷機は、紙積み台からフィーダ装置や用紙分離装置等により一枚ずつ印刷用紙としての枚葉紙を送り出すための給紙部Aと、この給紙部Aからの枚葉紙に印刷を行うための印刷部Bと、印刷部Bで印刷された枚葉紙に表面処理を施す表面処理部Cと、枚葉紙を排紙するための排紙部Dを備えている。ここで印刷部Bは、4色の印刷が行えるように4台の印刷ユニット5を備えた印刷部Bとしているが、4色以外の色、つまり1色又は2色以上の印刷が行える印刷部であってもよい。又、印刷機を構成する各部の具体的な構成は図に示されるものに限定されるものではない。
【0013】
前記印刷ユニット5は、図示しない刷版を巻回可能な版胴1とゴム胴2とインキローラ群4、そして圧胴3と渡し胴6とを備えている。図示していないが、圧胴3のそれぞれには、送り出されてきた枚葉紙を爪台と爪とで把持するグリッパを、円周方向の2箇所(1箇所又は3箇所以上でもよい)に備えている。符号7は給紙胴であり、フィーダーボード8、口板9上を搬送される枚葉紙をスイングアーム10から受け取り、圧胴3に渡す役割を果たす。給紙胴7、スイングアーム10にも前記の爪台と爪が設けられている。また、版胴1には画像の形成された図示しない刷版が巻回され、固定されている。
【0014】
排紙部Dは2つの排紙胴とグリッパを備えるチェーン搬送装置にて構成されている。すなわち、表面処理部Cの圧胴3に隣接した第1排紙胴11と、これに隣接した第2排紙胴12が設けられ、そして枚葉紙の搬送方向前側(上流側)に設けられたスプロケット13と枚葉紙の搬送方向後側(下流側)に設けられたスプロケット14に無端状のチェーン15が巻回されており、スプロケット13、14の回転により、図示しないチェーンガイドに規制された状態でチェーン15は周回する。チェーン15に所定間隔で複数固定された図示しないチェーングリッパに把持されて枚葉紙は排紙されることとなる。
【0015】
図1に示すように、表面処理部Cには圧胴3と対向、当接するニス版胴16が設けられている。また、図示しないが、ニス版胴16に当接してニスを供給するアニロックスローラが設けられている。そして表面処理部Cは、ニス版胴16を圧胴3に対して昇降可能に支持する図示しない胴昇降装置を備えている。
【0016】
図2はインキ供給部の拡大図である。インキツボローラ21は図中、反時計方向に回転し、呼出しローラ25を介して下流のインキローラ群4にインキを供給する。呼出しローラ25は詳細図示しないが、インキツボローラ21と横転ローラ26にそれぞれ接離可能に往復動する。すなわち、呼出しローラ25がインキツボローラ21に当接しているときは、呼出しローラ25は横転ローラ26と離反している。この往復動をインキ呼出しともいい、インキ呼出し回数が多いほど、インキ供給量が多くなる。また、インキツボローラ21に対してインキツボキーKが矢印S方向にスライド移動することにより接離可能となっており、インキツボキーKがインキツボローラ21に対して離間するほど、多量のインキが供給されるように構成されている。インキツボキーKはインキツボキー駆動モータM2の駆動により移動する。また、水船23が設けられており、水元ローラ24等を介して刷版に湿し水を供給可能となっている。
【0017】
インキローラ群4のうちの1つのローラ4aにはドクタ22が矢印T方向に回動することにより接離可能に設けられている。ドクタ22はドクタ駆動エアシリンダM3の駆動により回動する。ドクタ22はインキローラ4aの軸方向に延びて設けられ、インキローラ4aへの当接時にインキローラ4aに供給されたインキを掻き取り可能に構成されており、図示しない刷版へのインキ供給量を迅速に減量することができる。
【0018】
インキツボキーKは図3の通り、インキツボローラ21の軸方向に複数(K1〜Kn)設けられている。図3(a)の通り、インキツボキーKのインキツボローラ21に対する距離は印刷画像に基づく必要インキ量によって、ツボキー毎に決められる。
【0019】
図4に印刷機の制御装置のブロック図を示す。マイクロプロセッサ50には、読み出し専用のROM及び読み書きが可能なRAMが接続されており、印刷機を駆動する本機モータM1の駆動制御信号をインターフェイス51を介して出力するように構成されている。また、インターフェイス51には印刷機の各種状態を表示可能で、タッチパネル式ボタンにより各種操作も可能なGUI(Graphical User Interface)30が接続されている。また、前述のインキツボキー駆動モータM2、ドクタ駆動エアシリンダM3も接続されている。なお、上述のマイクロプロセッサに代えて、プログラマブルロジックデバイス等、他の制御手段を用いても本発明は実現可能である。また、インターフェイス51には他の装置も接続されているが、本発明に関係のないものは省略しているので、本発明は図4に示すものに限定されない。
【0020】
図5はGUI30の画面を示している。本画面はタブ31を押すことによって、ベースインキ調整モードになる。インキを増量する時のインキ嵩上げボタン32、インキを減量する時のインキ掻き取りボタン33が設けられている。また、Bk(スミ)ユニット設定ボタン35、C(シアン)ユニット設定ボタン36、M(マゼンタ)ユニット設定ボタン37、Y(イエロー)ユニット設定ボタン38が設けられている。これら設定ボタン35〜38はそれぞれ、図1中、上流側(右側)からのユニット5、5、5、5にそれぞれ該当する。各設定ボタン35〜38はそれぞれ3種類設けられており、ボタンに表示される数値はインキ呼出しローラ25の呼出し回数(往復回数)を示している。符号39はこのインキ呼出しローラ25の呼出し回数の設定を変更可能な編集ボタンである。符号34は不足濃度値を示しており、3つの指標(0.1、0.2、0.3)が設けられている。この指標は前述のインキ呼出しローラ25の呼出し回数に対応する。符号40〜43はユニット選択ボタンであり、前述の設定ボタン35〜38に対応する。符号44は設定値表示部であり、設定ボタン35〜38で選択した呼出し回数が表示される。例えば、Bk(スミ)ユニット設定ボタン35ではインキ呼出し回数として1回が選択されており、C(シアン)ユニット設定ボタン36では、12回が選択されている。ユニット選択ボタン40〜43を押すことによりベースインキ増量の実施、不実施を選択できる。符号45は全ユニット選択ボタンであり、全ユニットのベースインキ増量の実施、不実施を選択可能である。また符号46はスタートボタンであり、これを押すことでモードが開始される。
【0021】
本発明のベースインキ調整モードについて、図6のフローチャート等を用いて説明する。まず、本モードはアイドリング運転が条件となる(ステップS1)。オペレータは印刷された印刷物の色調について、所望のものかどうか、濃度計等を用いて計測する。計測の結果、印刷物の濃度が薄く、印刷用紙全面に亘ってインキ量を増加させたい、すなわちベースインキを増量させたい場合、GUIのインキ嵩上げボタン32を押す。そして各設定ボタン35〜38の3種類のボタンのうち、いずれか1つをそれぞれ選択する。そしてユニット選択ボタン40〜43を押してベースインキ増量の実施、不実施を選択してスタートボタン46を押す(ステップS2)。なお、ユニット選択ボタン40〜43によりベースインキ増量の不実施が選択された印刷ユニット5ではインキ増量の制御が行われない。
【0022】
すると制御装置のマイクロプロセッサ50の指示により、各印刷ユニット5のインキツボキー駆動モータM2が駆動し、インキツボキーKが全て(K1〜Kn)同一開度に設定され、図3(a)から図3(b)のような状態となる(ステップS3)。するとインキツボローラ21、インキ呼出しローラ25、インキローラ群4等の駆動によりインキが印刷用紙の全幅に亘って一律に供給される。そしてインキ呼出しローラ25が設定された回数呼出されたか(往復動したか)どうかが確認され(ステップS4)、これが完了したらインキツボキー駆動モータM2が駆動し、インキツボキーK1〜Knが図3(b)から図3(c)のように元の位置に戻る(ステップS5)。
【0023】
次にインキを減量させる場合について、図7のフローチャート等を用いて説明する。本モードもアイドリング運転が条件となる(ステップS7)。計測の結果、印刷物の濃度が濃く、印刷用紙全面に亘ってインキ量を減少させたい、すなわちベースインキを減量させたい場合、GUIのインキ掻き取りボタン33を押す。そして各設定ボタン35〜38の3種類のボタンのうちいずれか1つをそれぞれ選択する。そしてユニット選択ボタン40〜43を押してベースインキ減量の実施、不実施を選択してスタートボタン46を押す(ステップS8)。減量モードにおいては、符号34の3つの指標(0.1、0.2、0.3)は余剰濃度値を示しており、各設定ボタン35〜38の3種類の数値はドクタ22のインキローラ4aに当接する時間(秒)を示すこととなる。画面構成は図5と同様なので、減量モードにおける図示は省略する。なお、インキ増量の時と同様、ユニット選択ボタン40〜43によりベースインキ減量の不実施が選択された印刷ユニット5ではインキ減量の制御が行われない。
【0024】
すると制御装置のマイクロプロセッサ50の指示により、各印刷ユニット5のドクタ駆動エアシリンダM3が駆動し、ドクタ22が図2中時計方向へ回動してインキローラ4aへ当接する(ステップS9)。するとインキローラ4aを含んだインキローラ群4等の駆動とドクタ22の当接により、インキローラ4aからインキローラ群4に供給された余剰インキが掻き取られる。そしてドクタ22がインキローラ4aに当接した時間が経過したかどうかが確認され(ステップS10)、これが完了したらドクタ駆動エアシリンダM3の駆動によりドクタ22が図2中反時計方向へ回動してインキローラ4aから離間して元の位置に戻る(ステップS11)。
【0025】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前述のインキ増量モードの時、インキツボキーKが全て(K1〜Kn)同一開度に設定されているが、この開度を数段階に設定可能にすると、より効率的な作業が行える。また、前述の実施例では、オペレータは濃度計等を用いて印刷物の濃度を計測していたが、濃度に限らず、色差計を用いてもよいし、肉眼で判断してもよい。また、印刷機内にカメラを設置し、印刷中に濃度等の計測を行うインライン式の計測でもよい。
【0026】
また、前述の実施形態では枚葉オフセット式印刷機であったが、インキ供給量が調整可能な印刷機であればこれに限らず、輪転オフセット印刷機等、その他の印刷機にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る印刷機は、インキ供給量が調整可能な印刷機において極めて有用である。
【符号の説明】
【0028】
1 :版胴
2 :ゴム胴
3 :圧胴
4 :インキローラ群
4a :インキローラ
5 :印刷ユニット
6 :渡し胴
7 :給紙胴
8 :フィーダーボード
9 :口板
10 :スイングアーム
11 :第1排紙胴
12 :第2排紙胴
13 :スプロケット
14 :スプロケット
15 :チェーン
16 :ニス版胴
21 :インキツボローラ
22 :ドクタ
23 :水船
24 :水元ローラ
25 :呼出しローラ
26 :横転ローラ
30 :GUI
31 :タブ
32 :インキ嵩上げボタン32
33 :インキ掻き取りボタン33
34 :不足濃度値(余剰濃度値)
35 :Bk(スミ)ユニット設定ボタン
36 :C(シアン)ユニット設定ボタン
37 :M(マゼンタ)ユニット設定ボタン
38 :Y(イエロー)ユニット設定ボタン
39 :編集ボタン
40 :スタートボタン
50 :マイクロプロセッサ
51 :インターフェイス
A :給紙部
B :印刷部
C :表面処理部
D :排紙部
M1 :本機モータ
M2 :インキツボキー駆動モータ
M3 :ドクタ駆動エアシリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7