(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、サブマウントに搭載される複数の半導体レーザ素子は、より広い動作温度範囲で駆動することが望まれている。しかしながら、動作温度範囲を広げることにより、発明者らは検討により、以下の問題があるとの知見を得ている。
【0005】
第1の問題点として、半導体レーザ素子の出力波長の温度依存性が大きいことが挙げられる。温度変化による半導体レーザ素子の出力波長の変動は望ましくない。特に、複数の半導体レーザ素子を用いて、互いに異なる出力波長のレーザ光を合波する場合には、各半導体レーザ素子の出力波長を限定される範囲内に制御する必要が生じる。
【0006】
第2の問題点として、半導体レーザ素子の光出力効率及び高周波特性の温度依存性が大きいことが挙げられる。環境温度に応じて、半導体レーザ素子の温度が変化しても、出射するレーザ光の光出力を一定にするため、半導体レーザ素子に流す駆動電流を制御する必要がある。この時、特に低温環境下においては、半導体レーザ素子の光出力効率が高温に比べ増加することから、半導体レーザ素子に流す駆動電流は小さくなり、高周波特性の劣化が顕著に生じる。広い温度範囲において、半導体レーザ素子が所望の高周波特性を有することが望まれるが、その実現は容易ではない。
【0007】
特許文献1に、「サブマウントと半導体レーザの間にヒータを挟み、半導体レーザの温度を上昇させ、半導体レーザの温度を室温より高く保つようにする。」と記載されている(要約参照)。周囲温度の変化に応じて発熱体に流れる電流量を制御している。これにより、半導体レーザ素子が常に一定以上の温度を保つように制御され、出力波長の変化幅を小さくしている。また、特許文献2に、「レーザ搭載面上の発熱体に電流を流すと、発熱体が発熱し、半導体レーザを加熱する。これにより、特に低温下でレーザモジュールを動作させるときに、半導体レーザの温度を上昇させて、その動作特性を改善することができる」と記載されている。
【0008】
第1及び第2の問題を解決するために、環境温度が変動しても複数の半導体レーザ素子それぞれの出力波長範囲を制限する必要がある。すなわち、低温環境下で半導体レーザ素子を昇温するための発熱体をサブマウント上に設置する必要がある。しかしながら、複数の半導体レーザ素子がハイブリッド集積されるサブマウントは、半導体レーザを駆動する配線などで他の部品を配置するための十分な領域がなく、各半導体レーザ素子を独立して昇温させる発熱体を個々にサブマウントに搭載することは難しい。さらに、複数の発熱体それぞれを駆動させる複数の配線が必要となり、駆動回路も発熱体の数と同数必要となるので、高コスト化を招くこととなる。さらに、複数の半導体レーザ素子がハイブリッド集積されるサブマウントを、1つのペルチェ(又は発熱体)により温度制御すると、サブマウントに無視できない温度分布が生じ、複数の半導体レーザ素子の温度が不均一となるとの知見を、発明者らは得ている。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、低コスト化及び小型化と、動作温度範囲内における半導体レーザ素子の光特性の変動を低減することと、がともに実現されるサブマウント、光送信モジュール、光モジュール、光伝送装置、並びに、それらの制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係るサブマウントは、3以上の半導体レーザ素子が第1の方向に並んで搭載される載置面を有する、サブマウントであって、前記3以上の半導体レーザ素子の温度を上昇させるための発熱体を備え、前記発熱体が熱を発する場合に、前記3以上の半導体レーザ素子のうち、前記第1の方向に沿って一端に配置される第1半導体レーザ素子が吸収する第1熱量が、前記第1半導体レーザ素子に隣接して前記載置面に配置される第2半導体レーザ素子が吸収する第2熱量より、大きい。
【0011】
(2)上記(1)に記載のサブマウントであって、前記3以上の半導体レーザ素子のうち、隣り合う半導体レーザ素子の前記第1の方向における間隙の垂直2等分線により前記載置面を分割し、平面視して、前記第1半導体レーザ素子を含む領域を第1領域と、前記第2半導体レーザ素子を含む領域を第2領域とするとき、前記発熱体が熱を発する場合に、前記発熱体のうち、前記第1領域に配置される第1発熱部分の熱量が、前記第2領域に配置される第2発熱部分の熱量より、大きくてもよい。
【0012】
(3)上記(2)に記載のサブマウントであって、前記第1発熱部分と前記第2発熱部分と、は直列に接続され、前記発熱体は、単一の外部電源により駆動されてもよい。
【0013】
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のサブマウントであって、前記第1領域及び前記第2領域はともに、厚板部と、前記厚板部より厚みが小さい薄板部と、を有し、前記第1発熱部分の主たる発熱部分は、前記第1領域のうち、前記第1半導体レーザ素子の、前記第1の方向に沿って前記一端側の側方に配置されてもよい。
【0014】
(5)上記(4)に記載のサブマウントであって、前記発熱体は、前記載置面のうち、前記薄板部に配置されてもよい。
【0015】
(6)上記(4)又は(5)に記載のサブマウントであって、前記第1半導体レーザ素子は、前記載置面のうち、前記厚板部に配置されてもよい。
【0016】
(7)上記(4)乃至(6)のいずれかに記載のサブマウントであって、前記3以上の半導体レーザ素子は、前記載置面のうち、前記厚板部に配置されてもよい。
【0017】
(8)上記(4)又は(5)に記載のサブマウントであって、前記第1領域は、厚板部と、前記厚板部より厚みが小さい薄板部と、を有し、
前記第1半導体レーザ素子は、前記第1領域のうち、前記薄板部に配置されてもよい。
【0018】
(9)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のサブマウントであって、前記第1発熱部分の主たる発熱部分は、前記第1領域のうち、前記第1半導体レーザ素子の下方に配置されてもよい。
【0019】
(10)上記(9)に記載のサブマウントであって、前記第2発熱部分の主たる発熱部分は、前記第2領域のうち、前記第2半導体レーザ素子の下方に配置されてもよい。
【0020】
(11)上記(4)又は(5)に記載のサブマウントであって、前記第1領域の前記薄板部の面積は、前記第2領域の前記薄板部の面積より、大きくてもよい。
【0021】
(12)上記(2)乃至(5)のいずれかに記載のサブマウントであって、第1発熱部分から外部環境への放熱量が、第2発熱部分の外部環境への放熱量より、小さくてもよい。
【0022】
(13)本発明に係る光送信モジュールは、上記(1)乃至(12)のいずれかに記載のサブマウントと、前記3以上の半導体レーザ素子と、を備えていてもよい。
【0023】
(14)本発明に係る光モジュールは、上記(13)に記載の光送信モジュールと、光受信モジュールと、を備えていてもよい。
【0024】
(15)本発明に係る光伝送装置は、上記(14)に記載の光モジュールが、搭載されていてもよい。
【0025】
(16)本発明に係るサブマウントの制御方法は、3以上の半導体レーザ素子が第1の方向に並んで搭載される載置面を有する、サブマウントの制御方法であって、前記サブマウントは、前記3以上の半導体レーザ素子の温度を上昇させるための発熱体を備え、前記発熱体が熱を発する場合に、前記3以上の半導体レーザ素子のうち、前記第1の方向に沿って一端に配置される第1半導体レーザ素子が吸収する第1熱量が、前記第1半導体レーザ素子に隣接して前記載置面に配置される第2半導体レーザ素子が吸収する第2熱量より、大きく、環境温度が第1温度以下の場合において、環境温度に応じる大きさの電流を、前記発熱体に流し、環境温度が前記第1温度より高い場合において、前記発熱体へ電流を流さなくてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、低コスト化及び小型化と、動作温度範囲内における半導体レーザ素子の光特性の変動を低減することと、がともに実現されるサブマウント、光送信モジュール、光モジュール、光伝送装置、並びに、それらの制御方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0029】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光伝送装置101及び光モジュール102の構成を示す模式図である。光伝送装置101は、プリント回路基板111とIC112を備えている。光伝送装置101は、例えば、大容量のルータやスイッチである。光伝送装置101は、例えば交換機の機能を有しており、基地局などに配置される。光伝送装置101に、複数の光モジュール102が搭載されており、光モジュール102より受信用のデータ(受信用の電気信号)を取得し、IC112などを用いて、どこへ何のデータを送信するかを判断し、送信用のデータ(送信用の電気信号)を生成し、プリント回路基板111を介して、該当する光モジュール102へそのデータを伝達する。
【0030】
光モジュール102は、送信機能及び受信機能を有するトランシーバである。光モジュール102は、プリント回路基板121と、光ファイバ103Aを介して受信する光信号を電気信号に変換する光受信モジュール123Aと、電気信号を光信号に変換して光ファイバ103Bへ送信する光送信モジュール123Bと、を含んでいる。プリント回路基板121と、光受信モジュール123A及び光送信モジュール123Bとは、それぞれフレキシブル基板122A,122Bを介して接続されている。光受信モジュール123Aより電気信号がフレキシブル基板122Aを介してプリント回路基板121へ伝送され、プリント回路基板121より電気信号がフレキシブル基板122Bを介して光送信モジュール123Bへ伝送される。光モジュール102と光伝送装置101とは電気コネクタ105を介して接続される。光受信モジュール123Aや光送信モジュール123Bは、プリント回路基板121に電気的に接続され、光信号/電気信号を電気信号/光信号にそれぞれ変換する。
【0031】
当該実施形態に係る伝送システムは、2個以上の光伝送装置101と2個以上の光モジュール102と、1個以上の光ファイバ103を含む。各光伝送装置101に、1個以上の光モジュール102が接続される。2個の光伝送装置101にそれぞれ接続される光モジュール102の間を、光ファイバ103が接続している。一方の光伝送装置101が生成した送信用のデータが接続される光モジュール102によって光信号に変換され、かかる光信号を光ファイバ103へ送信される。光ファイバ103上を伝送する光信号は、他方の光伝送装置101に接続される光モジュール102によって受信され、光モジュール102が光信号を電気信号へ変換し、受信用のデータとして当該他方の光伝送装置101へ伝送する。
【0032】
ここで、各光モジュール102が送受信する電気信号のビットレートは100Gbit/sである。光送信モジュール123Bは、25Gbit/sの光を波長間隔20nmで4波長多重化して100Gbit/sで伝送するCWDM(Coarse Wavelength Division Multiplexing)方式である。光送信モジュール123Bは、−40℃〜85℃との外環境の広い動作温度範囲で駆動することができる。
【0033】
図2は、当該実施形態に係る光送信モジュール1の平面図である。ここで、光送信モジュール1は、例えば
図1に示す光送信モジュール123Bである。光送信モジュール1は、外装ケース10と、外装ケース10に収容されるサブマウント11と、サブマウント11に備えられる4個の半導体レーザ素子12と、を備える。また、フレキシブル基板13が接続されており、4個の半導体レーザ素子12それぞれの1対の電極と接続される。なお、フレキシブル基板13は、例えば
図1に示すフレキシブル基板122Aである。光送信モジュール1は、4個の半導体レーザ素子12が出射する光をそれぞれ集光する4個のレンズを含む光部品14と、該4個のレンズそれぞれから出射される光を合波する光合波器15と、光合波器15にて合波される光を光ファイバへ伝送する光ファイバコネクタ16と、をさらに備える。光部品14と光合波器15とは、外装ケース10に収容され、光ファイバコネクタ16は、外装ケース10を貫いて配置される。
【0034】
図3Aは、当該実施形態に係るサブマウント11の構成を示す平面図である。
図3B及び
図3Cは、当該実施形態に係るサブマウント11の構成を示す断面図である。
図3Bは、
図3AのIIIB−IIIB線による断面を、
図3Cは、
図3AのIIIC−IIIC線による断面を、それぞれ示している。
図3Dは、当該実施形態に係るサブマウント11の構成を示す底面図である。
【0035】
図3Aに示す通り、4個の半導体レーザ素子12a、12b,12c,12dが、サブマウント11の表面(載置面)に、第1の方向(
図3Aの縦方向)に並んで搭載されている。半導体レーザ素子12は、分布帰還型(DFB:Distributed Feedback)レーザである。半導体レーザ素子12は、InGaAlAsを含む多重量子井戸構造を有する活性層を有している。4個の半導体レーザ素子12a、12b,12c,12dは互いに異なる出力波長の光を出射している。半導体レーザ素子12aには、金属からなる1対の駆動用電極20a1,20b1に接続されている。半導体レーザ素子12aの上面(表面)に配置されるp型電極(第1導電型電極)は、ワイヤ21aを介してp型(第1導電型の)駆動用電極20a1と電気的に接続されており、半導体レーザ素子12aの下面(裏面)に配置されるn型電極(第2導電型電極:図示せず)は、n型(第2導電型の)駆動用電極20b1の金属パターンにより、駆動用電極20b1と電気的に接続されている。駆動用電極20b1の金属パターンは半導体レーザ素子12aが配置される領域まで延伸しており、半導体レーザ素子12aのn型電極と重畳し、電気的に接続される。他の半導体レーザ素子12b,12c,12dも同様であり、半導体レーザ素子12bには1対の駆動用電極20a2,20b2が、半導体レーザ素子12cには1対の駆動用電極20a3,20b3が、半導体レーザ素子12dには1対の駆動用電極20a4,20b4が、それぞれ接続されている。半導体レーザ素子12b,12c,12dのp型電極は、それぞれワイヤ21b,21c,21dを介して、p型の駆動用電極20a2,20a3,20a4に接続されている。なお、4対の駆動用電極は、
図2に示すフレキシブル基板13に接続される。
【0036】
当該実施形態に係るサブマウント11は、3以上(ここでは、4個)の半導体レーザ素子12が第1の方向(
図3Aの縦方向)に並んで搭載される載置面を有する、3以上(ここでは、4個)の半導体レーザ素子12のうち、第1の方向に沿って一端に配置される半導体レーザ素子12を第1半導体レーザ素子とする。ここで、第1半導体レーザ素子は、
図3Aに示す上端に配置される半導体レーザ素子12aである。また、
図3Aに示す下端に配置される半導体レーザ素子12dを第1半導体レーザ素子としてもよい。3以上(ここでは、4個)の半導体レーザ素子12のうち、第1半導体レーザ素子に隣接して配置される半導体レーザ素子を第2半導体レーザ素子とする。ここで、第2半導体レーザ素子は、半導体レーザ素子12aに隣接して配置される半導体レーザ素子12bである。また、半導体レーザ素子12dに隣接して配置される半導体レーザ素子12cを第2半導体レーザ素子としてもよい。なお、サブマウント11本体に用いられる材料は、窒化アルミ又はシリコンが望ましい。
【0037】
当該実施形態に係るサブマウント11は、3以上(ここでは、4個)の半導体レーザ素子12の温度を上昇させるための発熱体を備えており、ここでは、発熱体は載置面の上に配置される。発熱体と3以上の(ここでは、4個)半導体レーザ素子12とは、サブマウント11本体を介して、熱的に接続されている。当該実施形態に係るサブマウント11の主な特徴は、発熱体が熱を発する場合に、第1半導体レーザ素子(半導体レーザ素子12a,12d)が吸収する第1熱量が、第2半導体レーザ素子(半導体レーザ素子12b,12c)が吸収する第2熱量より、大きいことにある。
【0038】
3以上(ここでは、4個)の半導体レーザ素子12のうち、隣り合う半導体レーザ素子12の第1の方向(
図3Aの縦方向)における間隙G(ギャップ)の垂直2等分線により、載置面を分割する。平面視して、第1半導体レーザ素子(半導体レーザ素子12a,12d)を含む領域を第1領域R1と、第2半導体レーザ素子(半導体レーザ素子12b,12c)を含む領域を第2領域R2と、それぞれ定義する。第1領域R1は、載置面上の平面領域のみならず、平面視して、サブマウント11の一部分となる立体領域である。第2領域R2も同様である。発滅体が熱を発する場合に、当該実施形態に係るサブマウント11において、発熱体のうち、第1領域R1に配置される第1発熱部分の熱量が、第2領域R2に配置される第2発熱部分の熱量より、大きいのが望ましい。また、発滅体が熱を発する場合に、サブマウント11のうち、第1発熱部分から外部環境への放熱量が、第2発熱部分の外部環境への放熱量より、小さいのが望ましい。
【0039】
以下に、発熱体の第1発熱部分と第2発熱部分について説明する。当該実施形態に係る発熱体は、サブマウント11の両端にそれぞれ配置される両端高抵抗部分22a,22bと、隣り合う半導体レーザ素子12の間であって光の出射方向の前方にそれぞれ配置される境界低抵抗部分23a,23b,23cと、を含んでいる。すなわち、発熱体は、
図3Aに示す上端から下端にかけて、両端高抵抗部分22aと,境界低抵抗部分23a,23b,23cと、両端高抵抗部分22bと、が順に並んで配置しており、隣り合う抵抗部分それぞれを接続するように、発熱体は、配線部分24a,24b,24c,24dをさらに含んでいる。発熱体のうち、第1半導体レーザ素子である半導体レーザ素子12a(又は12d)を含む第1領域R1に配置される第1発熱部分は、両端高抵抗部分22a(又は22b)と、配線部分24a(又は24d)と、境界低抵抗部分23a(又は23c)の半分である。発熱体のうち、第2半導体レーザ素子である半導体レーザ素子12b(又は12c)を含む第2領域R2に配置される第2発熱部分は、境界低抵抗部分23a(又は23c)の半分と、配線部分24a(又は24d)と、境界低抵抗部分23bの半分である。
【0040】
図3Aに示す通り、両端高抵抗部分22a,22bは、外部電源接続用パッド部25a,25bとそれぞれ接続されており、外部電源接続用パッド部25a,25bに、導線26a,26bがそれぞれワイヤボンディングにより接続されている。そして、1対の導線(導線26a,26b)は、外部電源(図示せず)に接続される。すなわち、サブマウント11に備えられる発熱体は、単一の外部電源が単一の電圧を付加することにより駆動される。
【0041】
当該実施形態において、第1発熱部分の主たる発熱部分は、第1領域R1のうち、第1半導体レーザ素子(半導体レーザ素子12a,12b)の、第1の方向に沿って一端側(上端又は下端)の側方に配置されている。ここで、「主たる」は50%以上の発熱量で定義される。第1発熱部分の主たる部分が一端側の側方に配置されていることにより、第1発熱部分が発する熱が、第1半導体レーザ素子により伝達し、第2半導体レーザ素子にはより伝達しない構造となっている。
【0042】
発熱体のうち、第1発熱部分と第2発熱部分と、は直列に接続されており、第1発熱部分及び第2発熱部分の発熱量は、第1発熱部分の抵抗値及び第2発熱部分の抵抗値に、それぞれ比例している。当該実施形態では、両端高抵抗部分22a,22bと、境界低抵抗部分23a,23b,23cとが、(配線部分と比較して)高い抵抗率であって同じ材料によって形成されている。ここで、かかる材料は窒化タンタルが望ましいが、これに限定されることはなく、例えば、NiCr、Ta−SiO
2などの薄膜抵抗体であってもよい。また、配線部分24a,24b,24c,24dが、(両端高抵抗部分及び境界低抵抗部分と比較して)同じ材料によって形成されており、簡便な工程で発熱体を実現できている。両端高抵抗部分22a(又は22b)の抵抗値が、境界低抵抗部分23a(又は23c)の抵抗値より、高くなるように、両端高抵抗部分22a(又は22b)の長さが、境界低抵抗部分23a(又は23c)の長さより、長くなっている。なお、両者の幅や厚みは実質的に同じとしている。両端高抵抗部分22a(又は22b)を、配線部分24a(又は24d)と、外部電源接続用パッド部25a(又は25b)と、の間を、ジグザグ状に屈曲して延伸するよう形成することにより、両端高抵抗部分22a(又は22b)を長くすることができる。また、境界低抵抗部分23a,23b,23cは、隣り合う半導体レーザ素子12の間の領域を、出射方向の前方から後方へ平行して延伸する1対の抵抗体を後方側の端を接続して形成されている。なお、当該実施形態において、境界低抵抗部分23a(又は23c)の1対の抵抗体の一方は第1領域R1に配置され、他方は第2領域R2に配置され、1対の抵抗体の後方側の端を接続する抵抗体が、第1領域R1と第2領域R2の境界線を跨いで配置されている。境界抵抗部分23bについても同様な形態をしており、1対の抵抗体の一方は、一方の第2領域R2に配置され、他方は他方の第2領域R2に配置されている。第1発熱部分の抵抗値は第2発熱部分の抵抗値より大きく、それゆえ、発熱体が熱を発する場合に、第1発熱部分の熱量は、第2発熱部分の発熱量より、大きい。以上、発熱体の第1発熱部分と第2発熱部分について説明した。
【0043】
サブマウント11は、厚板部P1と薄板部P2とを有する。以下に、厚板部P1と薄板部P2とについて説明する。サブマウント11本体の底面の面積は、載置面の面積よりも小さい。サブマウント11は、3以上の(ここでは、4個)半導体レーザ素子12の出射の方向の前方及び両側方を囲うように、庇状に突き出た形状を有している。ここで、サブマウント11本体の鉛直方向(
図3B及び
図3Cの縦方向:載置面に垂直な方向)に沿う厚みにより、サブマウント11本体を厚板部P1と薄板部P2に分類する。庇状に突き出た形状の部分を薄板部P2とし、それ以外の部分を厚板部P1とする。薄板部P2は厚板部P1より厚みが小さくなっている。なお、厚板部P1は、平面視して全領域において同じ厚みである必要はなく、何らかの事情により、厚板部P1の主たる部分より厚い又は薄い部分を含んでいても良い。
【0044】
図3A及び
図3Dに示す通り、当該実施形態に係る発熱体は、載置面のうち薄板部P2に配置されている。これに対して、当該実施形態に係る3以上の(ここでは、4個)半導体レーザ素子12は、載置面のうち厚板部P1に配置されている。また、各半導体レーザ素子12にそれぞれ接続される1対の駆動用電極20a,20bもそれぞれ、載置面のうち厚板部P1に配置されている。外部電源接続用パッド部25a,25bは、載置面のうち薄板部P2に配置されている。第1領域R1の薄板部P2の面積は、第2領域R2の薄板部P2の面積より、大きいのが望ましい。
【0045】
半導体レーザ素子12(及び1対の駆動用電極)が厚板部P1に配置されていることにより、半導体レーザ素子12が駆動される場合に、半導体レーザ素子12(及び1対の駆動用電極)より発する熱は、サブマウント11の厚板部P1へ伝わり、サブマウント11の底面より外部環境へ放熱し、サブマウント11の放熱性は損なわれていない。これに対して、発熱体が薄板部P2に配置されていることにより、発熱体より発する熱は、サブマウント11の底面より外部環境へ放熱することが抑制されている。それゆえ、薄板部P2が設けられない(サブマウント11すべてが厚板部P1である)場合より、サブマウント11は、発熱体が発する熱が3以上の半導体レーザ素子12へより伝わる構造となっている。よって、発熱体が発する熱により効率的に半導体レーザ素子12に伝わるので、小さい電力で半導体レーザ素子12を昇温することができる。また、前述の通り、サブマウント11のうち、第1発熱部分から外部環境への放熱量が、第2発熱部分の外部環境への放熱量より、小さいのがさらに望ましい。
【0046】
図4Aは、ケース温度Tcに対する半導体レーザ素子12の温度TLD及び発熱体の発熱量Qを示す模式図である。当該実施形態に係る光送信モジュール1は、−40℃〜85℃との外環境の広い温度範囲で動作可能である。当該実施形態に係る光送信モジュール1は、ペルチェを用いていない。なお、ケース温度Tcは、光送信モジュール1のケース(筐体)の温度であり、温度TLDは、駆動時における半導体レーザ素子12近傍の温度である。なお、光送信モジュール1は光モジュール102内部に格納されているが、外環境の温度(環境温度)は、光モジュール102の周囲の温度で定義されることが一般的である。光送信モジュール1自体は温度制御されていないために、光モジュール102の温度と略一致する。厳密には、光モジュール102と光送信モジュール1との間の接触抵抗などにより若干光送信モジュール1のほうが高温状態で熱平衡となるが、ここでは説明の簡略化のために略一致しているとする。また、
図4に示すように、高温時において半導体レーザ素子12の温度TLDは光送信モジュール1のケース温度Tcと一致しているが、これも厳密には半導体レーザ素子12のほうが若干高温状態にて熱平衡となることが多いが、説明の簡略化のために一致しているとした。
【0047】
図4Aに示す破線は、ケース温度Tcに対する発熱体が発する発熱量Qを示しており、当該実施形態に係る光送信モジュール1では、ケース温度Tc(外部環境)に応じて、発熱体の発熱量Qを調整する。ここでは、ケース温度Tcが−40℃のとき発熱量Qは0.8Wであり、ケース温度Tcの上昇に伴って、発熱量Qは減少し、ケース温度Tcが25℃以上では発熱体の発熱量Qを0に設定している。
図4Aに示す実線は、発熱体がかかる発熱量Qを発する場合における半導体レーザ素子12の温度TLDを示しており、ケース温度がTcが−40℃であっても、温度TLDは0℃まで上昇している。発熱体の発熱量Qに応じて、ケース温度Tcの上昇に伴って、温度TLDは0℃より上昇し、温度25℃より高い温度領域において、温度TLDは温度Tcと一致している。
【0048】
当該実施形態にかかるサブマウント11(光送信モジュール1)の制御方法は、光送信モジュール1(すなわち、半導体レーザ素子12)が動作されるとき、環境温度が第1以下の場合において、環境温度に応じる大きさの電流を、前記発熱体に流し、環境温度が第1温度より高い場合において、前記発熱体へ電流を流さない、ことを特徴とする。第1温度以下において、外部電源が外部電源接続用パッド部25a,25b間に所望の電圧を印加し、発熱体に電流が流れ、発熱体が熱を発する。ここでは、半導体レーザ素子12の動作可能領域が0℃〜85℃である場合に、かかる半導体レーザ素子12をサブマウント11に搭載される光送信モジュール1は、発熱体を用いずに0℃以下の外部環境下では良好な特性が得られない。しかし、第1温度以下において、発熱体に電流を流し、発熱体が発熱量Qを発することにより、第1温度以下であっても、半導体レーザ素子12の動作可動範囲の下限よりも高い温度に半導体レーザ素子12を昇温されることができ、広い温度範囲に動作可能な光送信モジュール1を実現することができる。ここでは、
図4Aに示す通り、第1温度は室温(例えば25℃)であるが、第1温度は、半導体レーザ素子12又は/及びサブマウント11の特性により、任意に決定されればよい。
【0049】
発熱体の発熱量Qを決定するために、まず、サブマウント11、又はサブマウント11近傍に、温度センサを設置する。外部電源が外部電源接続用パッド部25a,25b(発熱体)に印加する電圧それぞれに、かかる電圧が印加される場合のサブマウント11の温度を温度センサにより測定する。かかる測定によって得られる印加電圧と温度センサの温度の関係をルックアップテーブルに収納する。例えば、外部の環境温度(ケース温度Tc)が−40℃〜85℃までの範囲とする場合、第1温度である室温から85℃までの範囲では発熱体に電圧印加せず、光送信モジュール1は外部の環境温度に応じた温度での動作となる。また、第1温度である室温以下では、半導体レーザが搭載されているサブマウント11の表面温度が0℃を下回らないような発熱量に設定することが望ましい。これにより、複数の半導体レーザ素子が低温環境下にあっても、所望の高周波特性を得ることが出来る。さらに、温度変化による半導体レーザ素子の出力波長変化を抑えることが出来るため、波長多重通信における波長安定性を向上させることが出来る。
【0050】
図4Bは、ケース温度Tcに対する半導体レーザ素子12の出力波長λを示す模式図である。
図4Bは、発熱体の発熱量Qを適切に制御した場合の半導体レーザ素子12の出力波長λを示している。なお、半導体レーザ素子12の出力波長λが変動する要因としては、以下の2つが挙げられる。第1に、温度変化により半導体レーザ素子12の有効屈折率が変化する。第2に、半導体レーザ素子12に流す駆動電流が環境温度によって変化する。
【0051】
かかる要因により、特に低温環境下において、半導体レーザ素子12は低い電流で駆動されるので、副モード抑圧比が不安定になりやすい。これに対して、当該実施形態に係る光送信モジュール1では、発熱体が発する熱により、半導体レーザ素子12が効率良く昇温され、副モード抑圧比が変化しにくくなるので、半導体レーザ素子12のキンクの低減を図ることができる。
【0052】
図5は、当該実施形態に係る半導体レーザ素子12のビーム広がり角に対する発光点からの許容可能距離の計算結果を示す図である。発熱体は、光の出射方向において、サブマウント11の半導体レーザ素子12と、光部品14に含まれる対応するレンズとの間に配置される。当該実施形態において、半導体レーザ素子12の出射光の中心点(発光中心点)がサブマウント11の載置面より100μm高い位置にある。ここで、
図5に示す通り、半導体レーザ素子11の遠方視野像が半値全幅で45°である場合、半導体レーザ素子12の出射光が損失なく集光レンズに到達する距離は、半導体レーザの発光中心点からサブマウント11の出射側の端までの100um程度まで許容出来る。よって、サブマウント11の載置面に発熱体を配置するに十分なマージンを設けることが可能であり、サブマウント11の作製工程において高い精度は必要なく、コスト増大を抑制することができる。
【0053】
図6は、当該実施形態における光送信モジュール1の各チャネルの半導体レーザ素子12の温度TLDを示す模式図である。
図6は、低温環境下(例えば、−30℃)における)当該実施形態に係る半導体レーザ素子12の温度TLDの温度分布を実線及びシンボル◆で、比較例に係る半導体レーザ素子の温度TLDの温度分布を破線及びシンボル●で、それぞれ示している。ここで、比較例に係る光送信モジュールは、4個の半導体レーザ素子が発熱体より吸収する熱量がそれぞれ等しい構造となっている。発熱体が発する熱により、半導体レーザ素子を動作可能な温度範囲まで昇温することができる。しかし、比較例のように4個の半導体レーザ素子が発熱体より吸収する熱量がそれぞれ等しい場合は、
図6に示す比較例における温度TLDの温度分布のように、第1半導体素子と第2半導体素子とでは、1℃という無視できない温度差が発生してしまう知見を、鋭意検討の末に発明者らは得ている。駆動時に半導体レーザ素子12は熱を発しており、かかる熱の大部分はサブマウント11の底面へ伝わり、外部環境へ放熱されるが、かかる熱の一部は、両側に隣接する半導体レーザ素子12へそれぞれ伝わり、半導体レーザ素子12を昇温する。第1半導体レーザ素子は隣接する半導体レーザ素子が1個であるのに対して、第2半導体レーザ素子は隣接する半導体レーザ素子が2個であり、隣接する2個の半導体レーザ素子によって昇温される第2半導体レーザ素子の温度TLDと、第2半導体レーザ素子によって昇温される第1半導体レーザ素子の温度TLDとは、無視できない温度差が発生するものと考えられる。これに対して、当該実施形態に係る光送信モジュール1は、上述の通り、第1半導体レーザ素子が吸収する第1熱量が、第2半導体レーザ素子が吸収する第2熱量より、大きくなる構造を有することにより、
図6に示す通り、第1半導体レーザ素子と第2半導体レーザ素子との温度差が抑制されている。さらに、3以上(ここでは、4個)の半導体レーザ素子の温度TLDが均一な温度分布となっているのがさらに望ましい。発熱体の最大消費電力は、
図4Aに示す通り0.8Wである。ペルチェを備える光送信モジュールにおけるペルチェの最大消費量と比較して、当該実施形態に係る光送信モジュール1の発熱体の最大消費電力は、1/2以下と大幅に低減することが出来ている。なお、低温時のみでなく高温時においても第1半導体レーザ素子と第2半導体レーザ素子間で温度差が生じる場合はありうる。その場合に発熱体に電流を流し、半導体レーザ素子間の温度差を低減しても構わない。
【0054】
最近の情報伝送容量増大に伴い、光通信においてはルータやスイッチのフロントパネル当たりの伝送容量増大が求められており、光トランシーバ(光モジュール)の小型化、低消費電力化の両立が必要である。1つの半導体レーザ素子が1つのサブマウントに搭載され、かかるサブマウントを複数備えて構成されるディスクリートタイプの光送信モジュールと比較して、複数の半導体レーザ素子が1つのサブマウントにハイブリッド集積される光送信モジュールが、近年より利用されるようになっており、光送信モジュールの大幅な小型化が進められている。さらなる低消費電力化のために、複数半導体レーザ素子が搭載されるサブマウントを温度調整するペルチェを使用せず、例えば0℃〜85℃で動作する光トランシーバが市場に供給されている。従来の動作温度範囲よりもさらに低温側に広がる(例えば−40℃〜85℃といった)動作温度範囲の光送信モジュールが望まれており、かかる光送信モジュールに本発明は最適である。
【0055】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るサブマウント11は、第1の実施形態に係るサブマウント11と、発熱体の構造が異なっているが、それ以外については、同じ構造を有している。
【0056】
図7Aは、当該実施形態に係るサブマウント11の構成を示す平面図である。
図7B及び
図7Cは、当該実施形態に係るサブマウント11の構成を示す断面図である。
図7Bは、
図7AのVIIB−VIIB線による断面を示しており、
図7Cは、
図7BのVIIC−VIIC線による断面を示している。
【0057】
当該実施形態に係るサブマウント11は、第1の実施形態と同様に、厚板部P1と薄板部P2とを有している。当該実施形態に係る発熱体は、第1の実施形態と同様に、薄板部P2に配置されるが、載置面ではなく、サブマウント11の内部に配置されている。サブマウント11の載置面には、第1の実施形態と同様に、外部電源接続用パッド部25a,25bが、第1の方向に並ぶ3以上(ここでは、4個)の半導体レーザ素子12の両端にそれぞれ配置される。配線部分24e,24fは、外部電源接続用パッド部25a,25bに接続し、光の出射方向に沿って、延伸する。導通ビア27a,27bは、サブマウント11の載置面と発熱体の主たる部分が配置される層とを接続するビアホールであり、配線部分24e,24fはそれぞれ、導通ビア27a,27bに接続している。
【0058】
図7Cに示す通り、導通ビア27a,27bの間を、平面視して、第1の方向に並ぶ3以上(ここでは、4個)の半導体レーザ素子12の両側方と前方とを囲うように、配線部分24g、抵抗部分28、及び配線部分24hが、順に並んで配置されている。ここでは、発熱体は、抵抗部分28、及び配線部分24g,24hとするが、発熱体は、配線部分24e,24f、及び導通ビア27a,27bを含むとしてもよい。いずれにしても、発熱体が発する熱は、ほぼ抵抗部分28のみによる。抵抗部分28は、両端高抵抗部分22a,22b、及び境界低抵抗部分23a,23b,23cと同様に、(配線部分と比較して)高い抵抗率である材料によって形成されており、例えば、窒化タンタルである。抵抗部分28は、3以上(ここでは、4個)の半導体素子12の両側方(の一部)と前方とを囲うように配置されているので、第1発熱部分の長さは、第2発熱部分の長さより長く、第1発熱部分の抵抗値は、第2発熱部分の抵抗値より大きく、それゆえ、発熱体が熱を発する場合に、第1発熱部分の熱量は、第2発熱部分の発熱量より、大きい。また、抵抗部分28(及び配線部分24g,24h)は、薄板部P2に配置されているので、第1の実施形態と同様に、発熱体が発する熱は、サブマウント11の底面より外部環境へ放熱することが抑制されている。よって、発熱体が発する熱が、より効率的に半導体レーザ素子12に伝わるので、小さい電力で半導体レーザ素子12を昇温することができる。また、第1の実施形態と同様に、サブマウント11のうち、第1発熱部分から外部環境への放熱量が、第2発熱部分の外部環境への放熱量より、小さいのがさらに望ましい。よって、発熱体が熱を発する場合に、第1半導体レーザ素子が吸収する第1熱量が、第2半導体レーザ素子が吸収する第2熱量より、大きくなっており、第1半導体レーザ素子と第2半導体レーザ素子との温度差が抑制される。
【0059】
図7Dは、当該実施形態に係るサブマウント11の変形例の構成を示す底面図である。半導体レーザ素子からの熱の放熱性が損なわれないという観点では、3以上(ここでは、4個)の半導体レーザ素子12は、第1の実施形態同様に、厚板部P1に配置されるのが望ましい。しかしながら、第1半導体レーザ素子と第2半導体レーザ素子との温度差を抑制するという観点では、
図7Dに示す通り、両側の半導体レーザ素子12a,12dが配置する部分を薄板部P2として、第1半導体レーザ素子を、薄板部P2に配置することも考えられる。半導体レーザ素子が発する熱の放熱性と、発熱体が発する熱の放熱性と、いずれを優先するか検討して、選択されればよい。
【0060】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係るサブマウント11は、第1及び第2の実施形態に係るサブマウント11と、発熱体の構造が異なっているが、それ以外については、同じ構造を有している。
【0061】
図8は、当該実施形態に係るサブマウント11の構成を示す断面図である。
図8は、
図7BのVIIC−VIIC線による断面に対応している。当該実施形態に係るサブマウント11は、第1及び第2の実施形態と同様に、厚板部P1と薄板部P2とを有している。当該実施形態に係る発熱体のうち、第1発熱部分の主たる発熱部分は、第1領域R1のうち、第1半導体レーザ素子(半導体レーザ素子12a,12d)の下方に配置され、第2発熱部分の主たる発熱部分は、第2領域R2のうち、第2半導体レーザ素子(半導体レーザ素子12b,12c)の下方に配置される。
図8に示す通り、発熱体は、第1半導体レーザ素子(半導体レーザ素子12a,12d)の下方にそれぞれ配置される両端高抵抗部分30a,30bと、第2半導体レーザ素子(半導体レーザ素子12b,12c)の下方にそれぞれ配置される境界低抵抗部分31a,31bと、を含んでいる。隣り合う抵抗部分それぞれを接続するように、発熱体は、導通ビア27aから導通ビア27bにかけて、配線部分24i,24j,24k,24m,24nをさらに含んでいる。両端高抵抗部分30a,30bと、境界低抵抗部分31a,31bとが、(配線部分と比較して)高い抵抗率であって同じ材料によって形成されており、例えば、窒化タンタルである。両端高抵抗部分30a(又は30b)の抵抗値が、境界低抵抗部分31a(又は31b)の抵抗値より、高くなるように、両端高抵抗部分30a(又は30b)の長さが、境界低抵抗部分31a(又は31c)の長さより、長くなっている。なお、両端高抵抗部分30a,30bの長さ、及び境界低抵抗部分31a,31bの長さを確保するために、両端高抵抗部分30a,30b、及び境界低抵抗部分31a,31bはともに、ジグザグ状に屈曲して延伸している。
図8に示す発熱体の構造以外、サブマウント11は第2の実施形態と同じ構造をしている。なお、本実施形態における境界低抵抗部分は二つの半導体レーザ素子の間に配置されてはいないが、説明の便宜上境界抵抗底部と呼称する。その機能については上述のとおりである。
【0062】
両端高抵抗部分30a(又は30b)の長さは、境界低抵抗部分31a(又は31b)の長さより、長く、両端高抵抗部分30a(又は30b)の抵抗値は、境界低抵抗部分31a(又は31b)の抵抗値より、大きく、発熱体が熱を発する場合に、第1発熱部分の熱量は、第2発熱部分の発熱量より、大きい。両端高抵抗部分30a,30b、及び境界低抵抗部分31a,31bが、3以上(ここでは、4個)の半導体レーザ素子12それぞれの下方に配置されていることにより、発熱体が発する熱がより効率的に半導体レーザ素子12に伝わるので、小さい電力で半導体レーザ素子12を昇温することができる。よって、発熱体が熱を発する場合に、第1半導体レーザ素子が吸収する第1熱量が、第2半導体レーザ素子が吸収する第2熱量より、大きくなっており、第1半導体レーザ素子と第2半導体レーザ素子との温度差が抑制される。なお、両端高抵抗部分30a(又は30b)は第1発熱部分の主たる発熱部分である。境界低抵抗部分31a(又は31b)は第2発熱部分の主たる発熱部分である。発熱体が熱を発する場合に、両端高抵抗部分30a(又は30b)の発熱量は、第1発熱部分の発熱量の大部分(例えば、少なくとも90%以上)を占めている。同様に、境界低抵抗部分31a(又は31b)の発熱量は、第2発熱部分の発熱量の大部分(例えば、少なくとも90%以上)を占めている。
【0063】
図7Dに示す第2の実施形態の変形例と同様に、第1半導体レーザ素子と第2半導体レーザ素子との温度差を抑制するという観点により、両側の半導体レーザ素子12a,12dが配置する部分を薄板部P2として、第1半導体レーザ素子を、薄板部P2に配置することも考えられる。半導体レーザ素子が発する熱の放熱性と、発熱体が発する熱の放熱性と、いずれを優先するか検討して、選択されればよい。
【0064】
以上、本発明の実施形態に係るサブマウント、光送信モジュール、光モジュール、光伝送装置、並びに、それらの制御方法について説明した。本発明は上記実施形態に限定されることはなく、様々な発熱体に広く適用することが出来る。上記実施形態においては、光送信モジュール1が動作可能な環境温度の動作温度範囲を−40〜85℃であり、半導体レーザ素子12が動作可能な動作温度範囲を0℃〜85℃であるが、これら動作温度範囲に限定されるものではない。例えば、半導体レーザ素子12が動作可能な動作温度範囲が−20〜85℃であってもよく、任意に設定することができる。また、例えば、光送信モジュール1が動作可能な環境温度の動作温度範囲も、−55℃〜95℃であってもよい。上記実施形態では、3以上の半導体レーザ素子は互いに異なる出力波長の光を出射しているとしたが、これに限定されることなく、例えば、同一の出力波長の光を出射していてもよい。
【0065】
上記実施形態では、3以上の半導体レーザ素子12はそれぞれDFBレーザを用いているが、これに限定されるものではない。例えば、ファブリペローレーザや、DBR(Distributed Bragg Reflector)レーザ、光ファイバとの光結合効率向上を目的としたモード拡大器が集積化されたDFBレーザ、又は外部変調器が集積もしくは導波路で接続されたDFBレーザのいずれかを用いてもよい。さらに、面発光型半導体レーザを用いても同様の効果が得られることは言うまでもない。上記実施形態では、発熱体は各部分が直列接続される1本の抵抗体としているが、これに限定されることはなく、外部電源によって駆動されるのであれば、複数本の抵抗体を並列接続させたものであってもよい。
【0066】
サブマウント11、光送信モジュール、光モジュール、並びに光伝送装置の制御方法は、任意の周知の方法を用いてもよい。例えば、PID制御又はデジタル制御などを用いてもよい。また、ケース温度Tcに応じる発熱体の発熱量Qは、半導体レーザ素子12の動作温度範囲に収まるのであれば、ユーザが任意に選択すればよく、
図4Aに示すような下に凸曲線でなくてもよい。
【0067】
サブマウント11の材料は、所望の熱伝導が得られるものであれば特に限定されることはないが、窒化アルミニウム又はシリコンが望ましい。また、上記実施形態では、サブマウント11上に駆動IC回路は搭載されていないが、これに限定されることはなく、駆動IC回路がサブマウントに集積されていてもよい。発熱体の発熱量Qを制御するための温度制御モジュールがサブマウント11上に集積されていてもよい。温度センサ、ヒータも、サブマウント11上に集積されても、本発明の効果が得られることは言うまでもない。
【0068】
上記実施形態では、半導体レーザ素子12は、InGaAlAsを含む多重量子井戸構造を有しる活性層を含むとしたが、これに限定されることはない。活性層の材料はInGaAsP系であってもよい。