(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吐出量が少ない前記不良ノズルが存在する場合、前記制御部は、前記副走査方向において当該不良ノズルと隣接する前記ノズルにより形成される前記ラインの前記ライン密度について、前記設定密度よりも大きくなるように設定することを特徴とする請求項1に記載の造形装置。
前記吐出量が少ない前記不良ノズルが存在する場合、前記制御部は、前記副走査方向において当該不良ノズルとの間に1個の前記ノズルを挟む位置にある前記ノズルにより形成される前記ラインの前記ライン密度について、前記設定密度よりも大きくなるように設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の造形装置。
前記吐出量が少ない前記不良ノズルが存在する場合、前記制御部は、当該不良ノズルにより形成される前記ラインと、1個以上のいずれかの前記正常ノズルにより形成される前記ラインとを含む複数の前記ラインにおける平均の前記ライン密度が予め設定される範囲
内になるように、前記いずれかの正常ノズルにより形成される前記ラインの前記ライン密度について、前記設定密度よりも大きくなるように設定することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の造形装置。
前記吐出ヘッドにおける全ての前記ノズルが前記正常ノズルである場合、前記制御部は、前記吐出ヘッドにおけるそれぞれの前記ノズルに、予め設定された複数種類の前記吐出量から選択される前記吐出量で、前記造形材料を吐出させ、
前記吐出量が少ない前記不良ノズルが存在する場合、少なくとも前記主走査動作時のいずれかのタイミングにおいて、前記制御部は、対応する前記ライン密度を前記設定密度よりも大きくする前記ノズルに、前記複数種類の前記吐出量のうちの最大の前記吐出量よりも大きな吐出量で前記造形材料を吐出させることを特徴とする請求項6に記載の造形装置。
前記吐出量が少ない前記不良ノズルが存在する場合、前記造形装置が造形の動作を開始する前に、前記制御部は、前記吐出ヘッドにおいて存在している前記不良ノズルと、前記吐出位置指定データの生成時に考慮した前記不良ノズルとが同一である否かを確認することを特徴とする請求項12に記載の造形装置。
前記制御部は、前記データ生成装置と通信することにより、前記吐出ヘッドにおいて存在している前記不良ノズルと、前記吐出位置指定データの生成時に考慮した前記不良ノズルとが同一である否かを確認することを特徴とする請求項13に記載の造形装置。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る造形システム10の一例を示す。
図1(a)は、造形システム10の構成の一例を示す。本例において、造形システム10は、立体的な造形物を造形する造形システムであり、造形装置12及び制御PC14を備える。
【0030】
造形装置12は、造形物の造形を実行する装置であり、制御PC14の制御に応じて、造形物を造形する。また、より具体的に、造形装置12は、フルカラーでの着色がされた造形物を造形可能なフルカラー造形装置であり、造形しようとする造形物を示すデータを制御PC14から受け取り、このデータに基づいて、造形物を造形する。また、本例において、造形装置12は、造形物を示すデータとして、造形物の断面を示すスライスデータを受け取り、スライスデータに基づき、造形物の造形を行う。
【0031】
制御PC14は、造形装置12の動作を制御するコンピュータ(ホストPC)である。本例において、制御PC14は、造形装置12に造形をさせる造形物を示すスライスデータを生成して、造形装置12へ供給する。また、これにより、制御PC14は、造形装置12による造形の動作を制御する。
【0032】
尚、本例において、スライスデータは、積層造形法において積層する各層の断面を示すデータである。また、より具体的に、スライスデータは、例えば、造形物を構成する各層の形成時に造形材料を吐出する位置を指定するデータである。この場合、造形材料を吐出する位置を指定するとは、例えば、造形装置において造形材料を吐出するインクジェットヘッドにおけるそれぞれのノズルにより造形材料を吐出する位置(吐出位置)を指定することである。また、本例において、スライスデータは、吐出位置指定データの一例である。制御PC14は、吐出位置指定データを生成するデータ生成装置の一例である。
【0033】
また、上記のように、本例において、造形システム10は、複数の装置である造形装置12及び制御PC14により構成されている。しかし、造形システム10の変形例において、造形システム10は、一台の装置により構成されてもよい。この場合、例えば、制御PC14の機能を含む一台の造形装置12により造形システム10を構成すること等が考えられる。
【0034】
続いて、造形装置12の具体的な構成について、説明をする。
図1(b)は、造形装置12の要部の構成の一例を示す。本例において、造形装置12は、立体的な造形物50を造形する造形装置であり、ヘッド部102、造形台104、走査駆動部106、及び制御部110を有する。
【0035】
尚、以下に説明をする点を除き、造形装置12は、公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。より具体的に、以下に説明をする点を除き、造形装置12は、例えば、インクジェットヘッドを用いて造形物50の材料となる液滴を吐出することで造形を行う公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。また、造形装置12は、図示した構成以外にも、例えば、造形物50の造形や着色等に必要な各種構成を更に備えてよい。また、本例において、造形装置12は、積層造形法により立体的な造形物50を造形する造形装置(3Dプリンタ)である。この場合、積層造形法とは、例えば、複数の層を重ねて造形物50を造形する方法である。造形物50とは、例えば、立体的な三次元構造物のことである。
【0036】
ヘッド部102は、造形物50の造形に用いる造形材料を吐出する部分である。また、本例において、造形物材料としては、インクを用いる。この場合、インクとは、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体のことである。また、より具体的に、ヘッド部102は、造形材料として、複数のインクジェットヘッドから、所定の条件に応じて硬化するインクを吐出する。そして、着弾後のインクを硬化させることにより、造形物50を構成する各層を重ねて形成して、積層造形法で造形物を造形する。また、本例では、インクとして、紫外線の照射により液体状態から硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)を用いる。
【0037】
また、ヘッド部102は、造形物50の各層の形成に用いるインクに加え、サポート層52の材料となるインクを更に吐出する。これにより、ヘッド部102は、造形物50の周囲に、必要に応じて、サポート層52を形成する。サポート層52とは、例えば、造形中の造形物50の外周を囲むことで造形物50を支持する積層構造物のことである。サポート層52は、造形物50の造形時において、必要に応じて形成され、造形の完了後に除去される。
【0038】
造形台104は、造形中の造形物50を支持する台状部材であり、ヘッド部102におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の造形物50を上面に載置する。また、本例において、造形台104は、少なくとも上面が積層方向(図中のZ方向)へ移動可能な構成を有しており、走査駆動部106に駆動されることにより、造形物50の造形の進行に合わせて、少なくとも上面を移動させる。この場合、積層方向とは、例えば、積層造形法において造形の材料が積層される方向のことである。また、より具体的に、本例において、積層方向は、主走査方向(図中のY方向)及び副走査方向(図中のX方向)と直交する方向である。
【0039】
走査駆動部106は、造形中の造形物50に対して相対的に移動する走査動作をヘッド部102に行わせる駆動部である。この場合、造形中の造形物50に対して相対的に移動するとは、例えば、造形台104に対して相対的に移動することである。また、ヘッド部102に走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部102が有するインクジェットヘッドに走査動作を行わせることである。また、本例において、走査駆動部106は、主走査動作(Y走査)、副走査動作(X走査)、及び積層方向走査(Z走査)をヘッド部102に行わせる。
【0040】
主走査動作とは、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作のことである。本例において、走査駆動部106は、主走査方向における造形台104の位置を固定して、ヘッド部102の側を移動させることにより、ヘッド部102に主走査動作を行わせる。また、走査駆動部106は、例えば、主走査方向におけるヘッド部102の位置を固定して、例えば造形台104を移動させることにより、造形物50の側を移動させてもよい。
【0041】
副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ造形中の造形物50に対して相対的に移動する動作のことである。また、より具体的に、副走査動作は、例えば、予め設定された送り量だけ副走査方向へ造形台104に対して相対的に移動する動作である。本例において、走査駆動部106は、主走査動作の合間に、副走査方向におけるヘッド部102の位置を固定して、造形台104を移動させることにより、ヘッド部102に副走査動作を行わせる。また、走査駆動部106は、副走査方向における造形台104の位置を固定して、ヘッド部102を移動させることにより、ヘッド部102に副走査動作を行わせてもよい。
【0042】
積層方向走査とは、例えば、積層方向へヘッド部102又は造形台104の少なくとも一方を移動させることで造形中の造形物50に対して相対的に積層方向へヘッド部102を移動させる動作のことである。また、走査駆動部106は、造形の動作の進行に合わせてヘッド部102に積層方向走査を行わせることにより、積層方向において、造形中の造形物50に対するインクジェットヘッドの相対位置を調整する。また、より具体的に、本例において、走査駆動部106は、積層方向におけるヘッド部102の位置を固定して、造形台104を移動させる。走査駆動部106は、積層方向における造形台104の位置を固定して、ヘッド部102を移動させてもよい。
【0043】
制御部110は、例えば造形装置12のCPUであり、造形装置12の各部を制御することにより、造形物50の造形の動作を制御する。また、本例において、制御部110は、制御PC14から受け取るスライスデータに基づき、造形装置12の各部を制御する。この場合、制御部110は、例えば、ヘッド部102における各インクジェットヘッドの動作を制御することにより、造形物の造形に用いるインクを各インクジェットヘッドに吐出させる。本例によれば、造形物50を適切に造形できる。
【0044】
続いて、造形装置12におけるヘッド部102の構成について、更に詳しく説明をする。
図1(c)は、ヘッド部102の構成の一例を示す。本例において、ヘッド部102は、複数のインクジェットヘッド、複数の紫外線光源204、及び平坦化ローラ206を有する。また、複数のインクジェットヘッドとして、図中に示すように、インクジェットヘッド202s、インクジェットヘッド202mo、インクジェットヘッド202w、インクジェットヘッド202y、インクジェットヘッド202m、インクジェットヘッド202c、インクジェットヘッド202k、及びインクジェットヘッド202tを有する。これらの複数のインクジェットヘッドは、吐出ヘッドの一例であり、例えば、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。また、それぞれのインクジェットヘッドは、インクをそれぞれ吐出する複数のノズルが所定のノズル列方向へ並ぶノズル列を有する。また、本例において、ノズル列方向は、副走査方向と平行な方向である。そのため、それぞれのインクジェットヘッドにおける複数のノズルは、ノズル列において、副走査方向における位置をずらして並ぶ。
【0045】
また、これらのインクジェットヘッドのうち、インクジェットヘッド202sは、サポート層52の材料を吐出するインクジェットヘッドである。サポート層52の材料としては、例えば、サポート層用の公知の材料を好適に用いることができる。インクジェットヘッド202moは、造形材インク(Moインク)を吐出するインクジェットヘッドである。この場合、造形材インクとは、例えば、造形物50の内部(内部領域)の造形に用いる造形専用のインクである。
【0046】
尚、造形物50の内部については、造形材インクに限らず、他の色のインクを更に用いて形成してもよい。また、例えば、造形材インクを用いずに、他の色のインク(例えば白色のインク等)のみで造形物50の内部を形成することも考えられる。この場合、ヘッド部102において、インクジェットヘッド202moを省略してもよい。また、造形物50の内部については、これらのインクに限らず、例えば、サポート層52の材料以外の任意のインクを用いて形成してもよい。
【0047】
インクジェットヘッド202wは、白色(W色)のインクを吐出するインクジェットヘッドである。本例において、白色のインクは、光反射性のインクの一例であり、例えば造形物50において光を反射する性質の領域(光反射領域)を形成する場合に用いられる。
【0048】
インクジェットヘッド202y、インクジェットヘッド202m、インクジェットヘッド202c、インクジェットヘッド202k(以下、インクジェットヘッド202y〜kという)は、着色された造形物50の造形時に用いられる着色用のインクジェットヘッドである。より具体的に、インクジェットヘッド202yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。また、インクジェットヘッド202kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。また、本例において、YMCKの各色は、減法混色法によるフルカラー表現に用いるプロセスカラーの一例である。また、インクジェットヘッド202tは、クリアインクを吐出するインクジェットヘッドである。クリアインクとは、例えば、無色の透明色(T)であるクリア色のインクのことである。
【0049】
複数の紫外線光源204は、インクを硬化させるための光源(UV光源)であり、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発生する。また、本例において、複数の紫外線光源204のそれぞれは、間にインクジェットヘッドの並びを挟むように、ヘッド部102における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。紫外線光源204としては、例えば、UVLED(紫外LED)等を好適に用いることができる。また、紫外線光源204として、メタルハライドランプや水銀ランプ等を用いることも考えられる。
【0050】
平坦化ローラ206は、造形物50の造形中に形成されるインクの層を平坦化するための平坦化手段である。平坦化ローラ206は、例えば主走査動作時において、インクの層の表面と接触して、硬化前のインクの一部を除去することにより、インクの層を平坦化する。
【0051】
以上のような構成のヘッド部102を用いることにより、造形物50を構成するインクの層を適切に形成できる。また、複数のインクの層を重ねて形成することにより、造形物50を適切に造形できる。
【0052】
尚、ヘッド部102の具体的な構成については、上記において説明をした構成に限らず、様々に変形することもできる。例えば、ヘッド部102は、着色用のインクジェットヘッドとして、上記以外の色用のインクジェットヘッドを更に有してもよい。また、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッドの並べ方についても、様々に変形可能である。例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらしてもよい。
【0053】
続いて、本例の造形装置12により造形する造形物50について、更に詳しく説明をする。
図2は、本例の造形装置12(
図1参照)により造形する造形物50について更に詳しく説明をする図である。
図2(a)は、造形装置12により造形する造形物50の構成の一例を示す図であり、積層方向(Z方向)と直交する造形物50の断面であるX−Y断面の構成の一例を、サポート層52とともに示す。また、この場合、Y方向やZ方向と垂直な造形物50のZ−X断面やZ−Y断面の構成も、同様の構成になる。
【0054】
上記においても説明をしたように、本例において、造形装置12は、例えば、インクジェットヘッド202y〜k(
図1参照)等を用いて、着色された造形物50を造形する。また、この場合、造形物50として、少なくとも表面が着色された造形物50を造形する。造形物50の表面が着色されるとは、例えば、造形物50において外部から色彩を視認できる領域の少なくとも一部が着色されることである。また、この場合、造形装置12は、例えば図中に示すように、内部領域152、光反射領域154、着色領域156、及び保護領域158を有する造形物50を造形する。また、必要に応じて、造形物50の周囲等にサポート層52を形成する。
【0055】
内部領域152は、造形物50の内部を構成する領域である。また、内部領域152については、例えば、造形物50の形状を構成する領域と考えることもできる。本例において、造形装置12は、インクジェットヘッド202mo(
図1参照)から吐出する造形材インクを用いて、内部領域152を形成する。光反射領域154は、着色領域156等を介して造形物50の外側から入射する光を反射するための光反射性の領域である。本例において、造形装置12は、インクジェットヘッド202w(
図1参照)から吐出する白色のインクを用いて、内部領域152の周囲に光反射領域154を形成する。
【0056】
着色領域156は、インクジェットヘッド202y〜kから吐出する着色用のインクにより着色がされる領域である。本例において、造形装置12は、インクジェットヘッド202y〜kから吐出する着色用のインクと、インクジェットヘッド202t(
図1参照)から吐出するクリアインクとを用いて、光反射領域154の周囲に着色領域156を形成する。また、これにより、造形物50において、着色領域156は、光反射領域154よりも外側に形成される。この場合、例えば、各位置への各色の着色用のインクの吐出量を調整することにより、様々な色を表現する。また、色の違いによって生じる着色用のインクの量(単位体積あたりの吐出量が0%〜100%)の変化を一定の100%に補填するために、クリアインクを用いる。このように構成すれば、例えば、着色領域156の各位置を所望の色で適切に着色できる。
【0057】
保護領域158は、造形物50の外面を保護するための透明な領域である。本例において、造形装置12は、インクジェットヘッド202tから吐出するクリアインクを用いて、着色領域156の周囲に保護領域158を形成する。また、これにより、ヘッド部102は、透明な材料を用いて、着色領域156の外側を覆うように、保護領域158を形成する。以上のように各領域を形成することにより、表面が着色された造形物50を適切に形成できる。
【0058】
尚、造形物50の構成の変形例においては、造形物50の具体的な構成について、上記と異ならせることも考えられる。より具体的には、例えば、内部領域152と光反射領域154とを区別せずに、例えば白色のインクを用いて、光反射領域154の機能を兼ねた内部領域152を形成すること等が考えられる。また、造形物50において、一部の領域を省略すること等も考えられる。この場合、例えば、保護領域158を省略すること等が考えられる。また、造形物50において、上記以外の領域を更に形成すること等も考えられる。この場合、例えば、光反射領域154と着色領域156との間に分離領域を形成すること等が考えられる。分離領域とは、例えば、光反射領域154を構成する白色のインクと着色領域156を構成するインクとが混ざり合うことを防ぐための透明な領域(透明層)である。この場合、造形装置12は、例えば、インクジェットヘッド202tから吐出するクリアインクを用いて、光反射領域154の周囲に分離領域を形成する。
【0059】
また、上記においても説明をしたように、本例において、造形装置12は、主走査動作によりヘッド部102(
図1参照)の各インクジェットヘッドからインクを吐出することにより、造形物50の各部を形成する。また、より具体的に、この場合、各インクジェットヘッドの各ノズルからインクを吐出することにより、インクの層を形成する。
図2(b)は、主走査動作時にインクジェットヘッドからインクを吐出する様子を模式的に示す図である。
【0060】
尚、
図2(b)においては、図示の便宜上、ヘッド部102における一つのインクジェットヘッドを、インクジェットヘッド202として図示している。また、インクジェットヘッド202のノズル列に並ぶ複数のノズル212として、副走査方向に連続して並ぶ5個のノズル212のみを図示している。実際の構成において、インクジェットヘッド202は、より多くのノズル212(例えば、100個以上のノズル212等)を有することが好ましい。
【0061】
また、
図2(b)においては、図示及び説明の便宜上、インクジェットヘッド202として2値ヘッドを用いる場合について、ドット302の並び方の例を図示している。この場合、2値ヘッドとは、例えば、ドット302のサイズが固定されたインクジェットヘッドのことである。また、ドット302のサイズとは、例えば、設計上のドット302のサイズのことである。また、2値ヘッドについては、例えば、通常の吐出のタイミングで1種類の吐出量のみが設定可能なインクジェットヘッド等と考えることもできる。また、インクジェットヘッド202としては、例えば、ドット302のサイズが複数種類で可変なインクジェットヘッドである多値ヘッドを用いること等も考えられる。多値ヘッドを用いる場合の動作等については、後に更に詳しく説明をする。
【0062】
また、
図2(b)においては、ノズル列におけるノズル212の間隔と造形の解像度との関係について、副走査方向における造形の解像度に対応する距離よりもノズル212の間隔が大きい場合について、図示をしている。より具体的に、図示した場合において、副走査方向におけるノズル212の間隔は、副走査方向における造形の解像度に対応する距離の2倍になっている。そのため、この場合、造形装置12は、副走査方向におけるインクジェットヘッド202の位置をずらして複数回の主走査動作を行うマルチパス方式の動作により、一つのインクの層を形成する。
【0063】
また、上記においても説明をしたように、ヘッド部102におけるインクジェットヘッド202は、主走査動作において、主走査方向へ移動しつつ、インクを吐出する。また、これにより、インクジェットヘッド202におけるそれぞれのノズル212は、主走査方向へインクのドット302が並ぶライン304を形成する。この場合、ドット302とは、例えば、主走査動作中の1回の吐出タイミングで一つのノズル212から吐出されるインクが造形物50の被造形面に着弾することで形成されるインクのドットのことである。また、本例において、ライン304とは、例えば、一回の主走査動作において一つのノズル212から吐出するインクにより形成されるドット302が主走査方向へ複数個並ぶドット302の並びのことである。
【0064】
このように構成した場合、例えば、各回の主走査動作において、インクジェットヘッド202におけるそれぞれのノズル212により、一つのライン304を形成することになる。また、これにより、各回の主走査動作において、インクジェットヘッド202は、複数のノズル212に対応する複数のライン304を副走査方向へ並べて形成する。また、これにより、各回の主走査動作において、インクジェットヘッド202は、インクの層の少なくとも一部を形成する。
【0065】
ここで、高い精度で造形物50を造形するためには、インクの層を構成するそれぞれのライン304について、予め設定された量のインクを用いて、均一に形成することが好ましい。しかし、インクジェットヘッド202のノズル212は、極めて微細な構成を有しているため、吐出量のバラツキが生じる場合がある。また、その結果、それぞれのライン304を構成するインクの量に対応するライン密度について、バラツキが生じる場合がある。この場合、ライン密度とは、例えば、一つのライン304において単位長さあたりに含まれるインクの量のことである。また、ライン304の単位長さとは、例えば、主走査方向における予め設定された範囲のことである。
【0066】
また、より具体的に、この場合、例えば、インクジェットヘッド202におけるいずれかのノズル212が不良ノズル(異常ノズル)であると、そのノズル212により形成されるライン304のライン密度にずれが生じ、造形の品質に影響が生じる場合がある。この場合、不良ノズルとは、例えば、吐出特性が正常な正常ノズル以外のノズルのことである。また、正常ノズルとは、例えば、一回の吐出動作において1個のノズル212から吐出するインクの量(吐出量)が予め設定された基準の範囲内にあるノズルのことである。
【0067】
尚、上記においても説明をしたように、本例において、ヘッド部102は、平坦化ローラ206(
図1参照)を有する。そのため、例えば吐出量が多くなる不良ノズルの場合には、平坦化ローラ206で余分なインクを除去することで、造形の品質への影響を抑えることもできる。しかし、吐出量の少ない不良ノズル(例えば、インクを吐出しない不吐出のノズル等)が存在すると、そのノズルで本来ライン304を形成すべき位置において、インクの不足によりスジ等が発生する場合がある。また、この場合、複数のインクの層を重ねて形成することで、不良ノズルの影響が大きくなること等も考えられる。
【0068】
図3は、不良ノズルの影響について更に詳しく説明をする図であり、いずれかのノズルが不吐出ノズルになった場合の影響を模式的に示す。尚、
図3においては、図示の便宜上、M字形状のインクの層を形成する動作について、二つのドット分の細い線幅の領域へインクを吐出する動作の例を示している。しかし、実際の造形物50の造形時には、例えば、より広い面状の領域に対してインクを形成すること等が考えられる。
【0069】
図3(a)は、インクジェットヘッドにおける全てのノズルが正常ノズルである場合に主走査動作により形成されるインクのドットの並び方の一例を示す。図中において、縦横の線で構成されるグリッドは、造形の解像度に応じて設定される吐出位置である。また、この場合、各回の主走査動作において、ヘッド部102(
図1参照)の各インクジェットヘッドは、スライスデータにおいて指定されている吐出位置に対して、インクを吐出する。また、これにより、造形の解像度に応じて設定される各位置に対し、造形に必要なインクのドットを形成する。
【0070】
また、この場合、主走査動作時に各位置に対してインクを吐出するノズルは、制御PC14(
図1参照)において予め割り振られることで、スライスデータ内で指定されている。そのため、主走査動作時において、インクジェットヘッドの各ノズルは、スライスデータ内で指定されている吐出位置に対し、インクを吐出する。また、この場合、スライスデータは、通常、全てのノズルが正常ノズルであることを前提として、作成される。そのため、実際に全てのノズルが実際に正常であれば、
図3(a)に示すように、所望の位置へインクを吐出することができる。
【0071】
しかし、いずれかのノズルが不良ノズルである場合、スライスデータに従って各ノズルからインクを吐出しても、一部の位置へインクを吐出できないことになる。
図3(b)は、インクジェットヘッドにおける一部のノズルが不良ノズルである場合に主走査動作により形成されるインクのドットの並び方の一例を示す。また、より具体的に、
図3(b)では、図中にノズル2として示したノズルが不吐出の不良ノズルである場合について、主走査動作により形成されるインクのドットの並び方の一例を示している。
【0072】
図中に示すように、いずれかのノズルが不良ノズルの場合、そのノズルに割り当てられている吐出位置へのインクの吐出が正しく行われなくなる。また、その結果、図中に示すグリッド上に正しくインクのドットを形成できなくなる。より具体的に、例えば不吐出の不良ノズルが存在する場合、そのノズルで本来ドットを形成すべき位置に、ドットが形成されないことになる。
【0073】
図3(c)は、不良ノズルの影響を模式的に示す図であり、
図3(b)において不良ノズルの影響によりドットが形成されていない位置について、円を描いて示している。この場合、図中に矢印で示した位置のように、ドットが形成されないことで、インクの不足による隙間が主走査方向へ延伸して、スジ(白スジ)が発生することになる。これに対し、本例においては、不良ノズルにより形成される周辺のラインのライン密度を増やすことにより、スジの影響を抑える。以下、この動作について、更に詳しく説明をする。
【0074】
図4は、本例において不良ノズルの影響を抑える方法について更に詳しく説明をする図であり、不良ノズルの影響の抑え方の基本的な概念について、模式的に示す。
図4(a)は、不良ノズルがない状態で形成する複数のライン304を模式的に示す図であり、一つのインクの層の形成時に形成される複数のライン304のうち、副走査方向へ連続して並ぶ三つのライン304の状態を模式的に示す。また、これらの三つのライン304は、図中にnz1〜nz3として示す互いに異なる複数のノズルにより形成される。
【0075】
図4(b)は、不吐出の不良ノズルが発生した状態で形成する複数のライン304を模式的に示す図であり、
図4(a)において符号nz2を付したノズルが不吐出の不良ノズルになった場合に他のノズル(nz1、nz3)により形成されるライン304の状態を模式的に示す。図中に示すように、この場合、不良ノズル(nz2)の位置のノズルで本来形成するはずだったドットが形成されないため、対応するライン304の位置に生じる隙間によりスジ306が形成されることになる。
【0076】
これに対し、本例においては、不良ノズルの影響で生じる隙間について、周辺のライン304の形成時に吐出するインクの量を増やすことで、造形の品質への影響を低減する。
図4(c)は、不良ノズルの影響を抑えるように周辺のライン304を形成した状態を模式的に示す。図中に示すように、本例においては、不良ノズルの影響で形成されるスジ306の周辺のライン304について、ライン304を構成する少なくとも一部のドットを大きくすることで、スジ306となる隙間の少なくとも一部を埋める(塞ぐ)ように形成する。このように構成すれば、例えば、不良ノズルの影響を適切に抑えることができる。
【0077】
ここで、本例において、周辺のライン304とは、例えば、不良ノズルに対応するライン304と副走査方向において隣接するライン304のことである。この場合、不良ノズルに対応するライン304とは、例えば、不良ノズルに位置に本来形成されるはずだったライン304のことである。また、より高い精度で造形を行うためには、例えば、不良ノズルに対応するライン304の位置のすぐ隣のライン304以外のラインについても、インクの量の調整を行うことが考えられる。また、周辺のライン304の選択の仕方については、後に更に詳しく説明をする。また、不良ノズルの影響で形成されるスジ306とは、例えば、周辺のライン304におけるラインを大きくしなければ隙間になる部分のことである。そのため、
図4(c)に示す状態において、スジ306として示した部分は、実際に隙間になっているのではなく、周辺のライン304のドットにより埋められていてもよい。
【0078】
また、ライン304の形成時に吐出するインクの量を増やすとは、例えば、そのライン304のライン密度を正常時密度よりも大きくすることである。また、ライン密度について、正常時密度とは、例えば、インクジェットヘッドにおける全てのノズルが正常ノズルである場合にそれぞれのノズルにより形成されるライン304のライン密度のことである。
【0079】
また、ライン密度の設定に関し、本例において、インクジェットヘッドの全てのノズルが正常ノズルである場合、造形装置12における制御部110(
図1参照)は、それぞれのノズルにより形成されるライン304のライン密度が予め設定された正常時密度になるように設定して、インクジェットヘッドに主走査動作を行わせる。また、いずれかのノズルが吐出量の少ない不良ノズルである場合、制御部110は、少なくとも一部の回の主走査動作において、その不良ノズル以外のいずれかのノズルにより形成されるライン304のライン密度について、正常時密度よりも大きくなるように設定して、インクジェットヘッドに主走査動作を行わせる。この場合、吐出量の少ない不良ノズルとは、例えば、予め設定された基準の範囲よりも吐出量が少ない不良ノズルのことである。
【0080】
また、より具体的に、この場合、制御部110は、不良ノズルにより本来ライン304が形成される位置に対して副走査方向の両側で隣接するライン304について、少なくとも一部のドットを大きくして形成することにより、ライン密度を大きくする。この場合、ドットを大きくするとは、例えば、そのドットを形成するインクの吐出時におけるノズルからの吐出量を通常時よりも大きくすることである。このように構成すれば、例えば、不吐出等の不良ノズルにより一部のライン304に対応する位置に対するインクの吐出量が少なくなった場合にも、他のノズルから吐出するインクにより不足分を適切に補うことができる。また、これにより、例えば、インクの層において、インクが不足したスジ等が発生することを適切に抑えることができる。
【0081】
また、上記においても説明をしたように、本例において、インクの層の形成時には、平坦化ローラ206(
図1参照)を用いて平坦化を行う。そして、この場合、正常ノズルの吐出量を大きくすることで多くのインクが吐出されたとしても、過剰なインクを適切に除去できる。そのため、本例によれば、インクの層を高い精度でより適切に形成できる。
【0082】
続いて、特定のライン304のライン密度を大きくする動作について、更に詳しく説明をする。上記のように、本例において、ライン304のライン密度を大きくする場合には、そのライン304を構成する少なくとも一部のドットについて、通常時よりも吐出量を大きくして、大きなドットを形成する。この場合、通常時とは、例えば、不良ノズルが存在しない場合のことである。また、通常時よりも吐出量を大きくして、大きなドットを形成する方法としては、例えば、不良ノズルが存在しない場合には形成しない大きなサイズのドットを形成すること等が考えられる。
【0083】
より具体的に、本例においては、ライン密度を大きくするための設定として、通常の動作時における最大の吐出量である正常時最大吐出量よりも大きな吐出量でインクを吐出させる設定を用いる。この場合、正常時最大吐出量とは、例えば、不良ノズルが存在しない場合の最大吐出量のことである。また、
図4(a)〜(c)に示す場合においては、
図4(a)、(b)において形成されているライン304を構成するドットのサイズに対応する吐出量が、正常時最大吐出量になる。また、この場合、
図4(c)において補償用と示した大きなサイズのドット(補償用の大玉)に対応する吐出量が、正常時最大吐出量よりも大きな吐出量になる。また、この場合、インクジェットヘッドにおける全てのノズルが正常ノズルであれば、主走査動作時において、それぞれのノズルは、正常時最大吐出量以下の吐出量でインクを吐出する。また、いずれかのノズルが吐出量の少ない不良ノズルである場合、少なくとも主走査動作時のいずれかのタイミングにおいて、制御部110は、ライン密度を正常時密度よりも大きくするノズルに、正常時最大吐出量よりも大きな吐出量でインクを吐出させる。
【0084】
ここで、
図4(a)〜(c)においては、インクジェットヘッドとして2値ヘッドを用いる場合について、形成されるライン304等を図示している。そして、この場合、正常時最大吐出量よりも大きな吐出量については、この1種類の吐出量よりも大きな吐出量と考えることもできる。これに対し、上記においても説明をしたように、インクジェットヘッドとしては、例えば、ドットのサイズが複数種類で可変な多値ヘッドを用いること等も考えられる。
【0085】
図4(d)は、多値ヘッドを用いる場合に形成するドットのサイズの一例を示す。インクジェットヘッドとして多値ヘッドを用いる場合において、インクジェットヘッドにおける全てのノズルが正常ノズルである場合、制御部110は、インクジェットヘッドにおけるそれぞれのノズルに、予め設定された複数種類の吐出量から選択される吐出量で、インクを吐出させる。また、この場合、正常時最大吐出量よりも大きな吐出量は、複数種類の吐出量のうちの最大の吐出量よりも大きな吐出量になる。より具体的に、この場合、不良ノズルが存在していない通常時において、例えば、図中に示すように、小(S)、中(M)、大(L)の3種類のサイズのドットに対応する3種類の吐出量を設定可能にすること等が考えられる。また、この場合、大(L)サイズのドットに対応する吐出量が、正常時最大吐出量になる。
【0086】
また、この場合、不良ノズルに対する補償に用いる正常時最大吐出量よりも大きな吐出量として、図中に示すように、大(L)サイズのドットよりも大きな補償用のLLサイズのドットに対応する吐出量を用いる。そして、吐出量が少ない不良ノズルが存在する場合、少なくとも主走査動作時のいずれかのタイミングにおいて、制御部110は、ライン密度を正常時密度よりも大きくするノズルに、このLLサイズのドットに対応する吐出量でインクを吐出させる。このように構成すれば、例えば、多値ヘッドを用いる場合においても、不良ノズルの影響を適切に抑えることができる。
【0087】
尚、ライン密度の変化のさせ方の変形例においては、必ずしも補償に用いる専用の吐出量の設定を用意せずに、多値ヘッドの動作を利用して不良ノズルの影響を抑えること等も考えられる。より具体的に、この場合、例えば、ライン密度を大きくするライン304について、少なくとも一部のドットの形成時に、ドットのサイズを通常時よりも大きくすること等が考えられる。この場合、通常時のドットのサイズとは、例えば、不良ノズルが存在しない場合に形成するドットのサイズのことである。また、この場合、通常時には小(S)サイズや、中(M)サイズでドットを形成する位置に対し、ワンサイズ又はそれ以上大きなサイズのドットである中(M)サイズや大(L)サイズのドットを形成すること等が考えられる。また、この場合、サイズを大きくするドットについて、複数のサイズを混在させてもよい。また、この場合、各ラインを構成するそれぞれのドットの大きさを考慮して、ドット同士のオーバーラップ量を最小にするようにドットサイズを選定すること等も考えられる。
【0088】
続いて、制御PC14(
図1参照)でスライスデータを生成する動作等も含めて、本例における造形システム10(
図1参照)の全体の動作等について、更に詳しく説明をする。
図5は、本例の造形システム10の動作の一例を示すフローチャートである。
【0089】
尚、
図5に示した動作のうち、ステップS102及びS104の動作は、造形システム10における制御PC14が行う動作の一例である。また、本例において、ステップS102及びS104で制御PC14が行う動作については、例えば造形装置12へ供給するスライスデータを生成するRIP処理等を考えることができる。また、ステップS106及びS108の動作は、造形システム10における造形装置12(
図1参照)が行う動作の一例である。
【0090】
本例の造形システム10において、造形物50を造形する場合、先ず、制御PC14において、造形データに基づき、造形装置12へ供給するスライスデータを生成する。この場合、造形データとは、例えば、造形装置12において造形しようとする造形物50の形状や色等を示すデータである。また、造形データとしては、例えば、造形装置12の機種に依存しない汎用の形式のデータを用いることが考えられる。
【0091】
また、スライスデータを生成する処理において、制御PC14は、先ず、造形データに対するレンダリングやカラーマッチング等を行う(S102)。この場合、制御PC14は、例えば、外部の他のコンピュータから造形データを受け取り、これらの処理を行う。また、これにより、造形データに基づき、造形物50の断面を示すラスタデータを生成する。また、より具体的に、この場合、制御PC14は、例えば、造形データに基づき、例えば、造形装置12において積層するそれぞれのインクの層の位置に対し、その位置における造形物の形状や色等を算出する。また、この算出の動作において、レンダリングやカラーマッチング等を適宜行う。また、これにより、それぞれのインクの層に対応するラスタデータを生成する。
【0092】
尚、それぞれのインクの層に対応するラスタデータとは、例えば、それぞれのインクの層の各位置の色を示すデータである。また、このラスタデータについては、例えば、造形物の断面の形状及び色を示すデータ等と考えることもできる。また、このラスタデータについては、例えば、2値化を行う前のスライスデータ等と考えることもできる。
【0093】
また、ステップS102の動作の後、制御PC14は、生成したラスタデータに対してハーフトーン処理(ハーフトーニング)等を行うことにより、造形物の各断面に対応するラスタデータを2値化した2値化データを生成する(S104)。また、本例において、制御PC14は、ラスタデータを2値化する処理の中で、不良ノズルの影響を抑える処理であるスジ補正処理を更に行う。
【0094】
この場合、スジ補正処理とは、例えば、
図4等を用いて説明をした方法で不良ノズルの影響を抑えることができるように2値化データを調整する処理である。また、より具体的に、本例において、制御PC14は、不良ノズル情報及びノズル割当マトリクスを造形装置12から受け取り、これらに基づき、スジ補正処理を行う。この場合、不良ノズル情報とは、例えば、造形装置12のヘッド部102(
図1参照)が有する各インクジェットヘッドに存在する不良ノズルを示す情報である。不良ノズル情報としては、例えば、吐出量の少ないノズル(不吐出のノズル)等を示す番号(ノズル番号)等を一覧形式で示すデータ等を好適に用いることができる。また、ノズル割当マトリクスとは、2値化データの各画素に割り当てられるノズルを示すマトリクスである。ノズル割当マトリクスとしては、例えば、各画素の位置とノズルの番号とを対応付けたマトリクス等を好適に用いることができる。
【0095】
尚、2値化データの各画素とは、例えば、2値化データを構成する値の並びにおいて、造形の解像度に応じた間隔で設定されるそれぞれの立体画素に対応する各位置のことである。また、本例において、制御PC14は、2値化データとして、ヘッド部102におけるそれぞれにインクジェットに対し、造形時に形成するインクのドットのサイズ毎に、2値化データを生成する。
【0096】
より具体的に、例えば、本例においては、上記においても説明をしたように、造形時に形成するインクのドットの一部について、通常時よりも吐出量を大きくして大きなドットを形成することで、不良ノズルの影響を抑える。そのため、スジ補正処理においては、例えば、通常のサイズで形成するドット用の2値化データに加え、この大きなドットを形成する位置を示す大きなドット用の2値化データを生成する。
【0097】
また、上記のように、本例において、2値化データの生成時には、不良ノズル情報及びノズル割当マトリクスを用いてスジ補正処理を行う。そして、この場合、生成される2値化データについては、各インクジェットヘッドにおけるそれぞれのノズルによりインクを吐出する位置を指定するデータ(吐出位置指定データ)等と考えることもできる。そのため、本例において、2値化データは、吐出位置指定データの一例になっている。また、2値化データについては、例えば、2値化を行った状態のスライスデータ等を考えることもできる。また、本例において、制御PC14は、この2値化データを、スライスデータとして、造形装置12へ供給する。
【0098】
また、制御PC14から2値化データを受け取った造形装置12は、2値化データに基づき、ヘッド部102における各インクジェットヘッドの動作を制御するデータであるヘッド制御データを生成する(S106)。この場合、造形装置12は、例えば、造形時に実際に行う主走査動作の設定等に基づき、2値化データで指定されているそれぞれの吐出位置について、パス分割を行う。この場合、パス分割とは、例えば、一つのインクの層の形成時に層の各位置に対して行う主走査動作の回数であるパス数に合わせて、いずれの回の主走査動作で各位置へインクを吐出するかを設定することである。
【0099】
尚、パス数を複数にするマルチパス方式で造形を行う場合において、少なくとも一部の不良ノズルに対して代替ノズルの設定が可能な場合、パス分割において、代替ノズルの設定(ノズルリカバリ)を行ってもよい。また、この場合、代替ノズルの設定が可能な不良ノズルについては、上記において説明をしたスジ補正処理を行わなくてもよい。そのため、この場合、制御PC14で行うステップS106の処理において、このような代替可能な不良ノズルについては、不良ノズルとして扱わないことも考えられる。このように構成すれば、例えば、代替ノズルを設定する方法を併用して用いることで、不良ノズルの影響をより適切に抑えることができる。
【0100】
また、パス分割等を行ってヘッド制御データを生成した後、造形装置12における制御部110(
図1参照)は、ヘッド制御データに従ってそれぞれのインクジェットヘッドにインクを吐出させる(S108)。このように構成すれば、例えば、造形装置12が受け取る2値化データにおいて指定されているそれぞれの吐出位置に対し、それぞれのインクジェットヘッドに適切にインクを吐出させることができる。また、これにより、例えば、造形物の造形を適切に行うことができる。
【0101】
続いて、制御PC14において行うハーフトーン処理について、更に詳しく説明をする。本例において、制御PC14は、2値化データを生成する動作において、造形物の少なくとも一部に対応する部分について、誤差拡散法又はディザ法を用いてハーフトーン処理を行う。また、この場合において、上記においても説明をしたように、不良ノズルの影響を抑えるための処理を更に行う。
【0102】
そして、この場合において、単純に誤差拡散法やディザ法を適用すると、インクを吐出させない不良ノズルも誤差拡散法やディザ法の処理の対象になることが考えられる。しかし、インクを吐出させない不良ノズルが存在する場合において、より適切にハーフトーン処理を行うためには、不良ノズルにインクを吐出させないことを考慮して処理を行う方が好ましい。そのため、本例のハーフトーン処理においては、不良ノズルによりインクを吐出する位置を除外して、誤差拡散法又はディザ法を用いる。この場合、不良ノズルによりインクを吐出する位置とは、例えば、その不良ノズルが正常ノズルであった場合にはインクを吐出する位置(本来の吐出位置)のことである。このように構成すれば、例えば不良ノズルが存在する状態に合わせて、ハーフトーン処理をより適切に行うことができる。
【0103】
図6及び
図7は、本例において行うハーフトーン処理について更に詳しく説明をする図である。先ず、誤差拡散法を用いて行う場合のハーフトーン処理について、説明をする。
【0104】
図6は、誤差拡散法を用いて行う場合のハーフトーン処理の一例を示す。この場合、制御PC14は、先ず、造形装置12と通信することで、不良ノズル情報の取得(S202)と、ノズル割当マトリクスの取得(S204)とを行う。そして、不良ノズルに対応する画素である不良画素の隣接画素について、画素値を大きくする変更を行う(S206)。この場合、不良ノズルに対応する画素とは、例えば、2値化を行う前のラスタデータにおいて、不良ノズルと対応付けられる位置の画素のことである。また、ラスタデータの画素とは、例えば、造形物を構成する立体画素の位置に対応する位置の画素のことである。また、不良画素の隣接画素とは、例えば、造形物の同じ断面内で、副走査方向において不良画素と隣接する画素のことである。
【0105】
また、隣接画素の画素値を変更した後、制御PC14は、量子化の処理で用いる閾値を示す閾値マトリクス(ディザマトリクス)について、不良ノズルを考慮した変形処理である閾値マトリクス変形処理を行う。閾値マトリクス変形処理については、後に更に詳しく説明をする。
【0106】
そして、変形をした閾値マトリクスを用いて、ラスタデータの各画素に対し、量子化を行う。この場合、量子化とは、造形に使用するドットのサイズ毎に2値化を行うことである。また、量子化の処理においては、先ず、画素の選択を行い(S210)、画素の入力値と閾値を算出する(S212)。そして、両者を比較することで量子化を行う(S214)。そして、誤差を拡散するための拡散マトリクスを変形する処理である拡散マトリクス変形処理(S216)と、誤差を分配する誤差分配処理(S218)とを更に行う。拡散マトリクス変形処理についても、後に更に詳しく説明をする。
【0107】
そして、処理を行っている画素が最後の画素(最終画素)でなければ(S220:False)、ステップS210へ戻って次の画素を選択して、以降の動作を繰り返す。また、ステップS220において、処理を行っている画素が最終画素である場合には(S220:True)、処理を終了する。このように構成すれば、誤差拡散法を用いたハーフトーン処理を適切に行うことができる。
【0108】
続いて、ディザ法を用いて行う場合のハーフトーン処理について、説明をする。
図7は、ディザ法を用いて行う場合のハーフトーン処理の一例を示す。この場合も、制御PC14は、先ず、不良ノズル情報の取得(S252)と、ノズル割当マトリクスの取得(S254)とを行う。そして、閾値マトリクス変形処理(S256)を行い、不良ノズルに対応する画素である不良画素の隣接画素について、画素値を大きくする変更を行う(S258)。
【0109】
尚、この場合、ステップS252、S254、S256、及びS258の動作については、例えば、
図6に示したステップS202、S204、S208、及びS206の動作と同一又は同様に行うことができる。また、ステップS256及びステップ258を行う順番については、
図6におけるステップS206及びステップS208を行う順番と同様に、ステップS258の動作を先に行ってもよい。また、
図6の動作において、ステップS206の動作よりも先にステップS208の動作を行ってもよい。
【0110】
また、ステップS258の動作を行った後、制御PC14は、ラスタデータの各画素に対し、量子化を行う。また、量子化の処理においては、先ず、画素の選択を行い(S260)、ディザ法での量子化の処理を行う(S262)。そして、処理を行っている画素が最後の画素(最終画素)でなければ(S264:False)、ステップS260へ戻って次の画素を選択して、以降の動作を繰り返す。また、ステップS260において、処理を行っている画素が最終画素である場合には(S264:True)、処理を終了する。このように構成すれば、ディザ法を用いたハーフトーン処理を適切に行うことができる。
【0111】
続いて、閾値マトリクス変形処理及び拡散マトリクス変形処理について、更に詳しく説明をする。
図8及び
図9は、閾値マトリクス変形処理及び拡散マトリクス変形処理について更に詳しく説明をする図であり、不良ノズルを考慮して行う閾値マトリクス変形処理及び拡散マトリクス変形処理の一例を模式的に示す。
【0112】
図8は、閾値マトリクス変形処理について更に詳しく説明をする図である。
図8(a)は、変形を行う前の閾値マトリクス(ディザマトリスク)の一例を示す。
図8(b)は、不良ノズルを考慮して行う閾値マトリクス変形処理の一例を示す。また、
図8(b)においては、模式的に示したノズル列において黒く塗りつぶした円で表示しているノズルが、不良ノズルになっている。
【0113】
上記においても説明をしたように、本例においては、吐出量の少なくなる不良ノズルにインクを吐出させずに、造形物の造形を行う。そのため、ラスタデータや2値化データにおいて、不良ノズルに対応する不良画素が、インクのドットを形成しない画素になる。そして、本例においては、不良画素には閾値マトリクスの値を割り当てないように、閾値マトリクスの変形を行う。また、より具体的に、この場合、本来であれば不良画素に割り当てられる予定であった閾値マトリクスの値について、
図8(b)に示すように、次の画素へのシフトをさせる。
【0114】
ここで、閾値マトリクスについては、例えば、単位長さあたりに形成するドットの数や位置等を考慮して設計がされる。しかし、不良画素が存在して、本来の位置にインクのドットが形成されないことになると、マトリクスとしての連続性や位置関係が大幅に損なわれるおそれがある。これに対し、上記のように閾値マトリクスの変形を行えば、不良画素にマトリクスの値を割り当てないことにより、このような問題を適切に抑えることができる。
【0115】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、拡散マトリクスについても、不良ノズルを考慮した変形を行う。
図9は、拡散マトリクス変形処理について更に詳しく説明をする図である。
図9(a)は、変形を行う前の拡散マトリクスの一例を示す。
図9(b)は、不良ノズルを考慮して行う拡散マトリクス変形処理の一例を示す。また、
図9(b)においては、模式的に示したノズル列において黒く塗りつぶした円で表示しているノズルが、不良ノズルになっている。
【0116】
本例においては、上記のように、不良ノズルにはインクを吐出させないように設定する。そのため、誤差分配の処理において、不良画素には誤差を分配させないように設定する。より具体的に、この場合、
図9(b)に示すように、不良画素を除外して、それ以外の画素に対して誤差の分配を行う。
【0117】
ここで、誤差拡散法においては、ある画素を量子化した際に生じる誤差について、拡散マトリクスによって、周辺の未処理の画素へ分配をする。そして、この場合、誤差を分散させていくことにより、ドットの連続性や位置関係が決まることになる。これに対し、例えば不良画素に対して誤差を分配すると、本来形成すべきドットが形成されないことで、誤差の流れの連続性が損なわれるおそれがある。これに対し、上記のように拡散マトリクス変形処理を行えば、このような問題を適切に抑えることができる。
【0118】
以上のように、本例によれば、例えば、閾値マトリクス変形処理及び拡散マトリクス変形処理を行うことにより、形成するドットの連続性をより適切に高めることができる。また、これにより、例えば、より高い精度で造形を行うこと等が可能になる。
【0119】
続いて、本例の造形システム10において造形装置12と制御PC14とが連携して行う動作等について、更に詳しく説明をする。
図10は、造形装置12と制御PC14との間で行う通信について更に詳しく説明をする図である。
図10(a)〜(c)は、様々なタイミングで造形物の造形を行う場合について、造形装置12と制御PC14との間で行う通信の例を示す。また、
図10において、RIP又はRIP処理と示す動作は、
図5に示したステップS102及びS104に対応する動作である。また、造形処理とは、
図5に示したステップS106及びS108に対応する動作である
【0120】
上記においても説明をしたように、本例においては、制御PC14において2値化したスライスデータ(2値化データ)を生成して、このデータに基づき、造形装置12において造形物50の造形を行う。また、制御PC14におけるスライスデータの生成時には、不良ノズルを考慮したデータの処理を行う。そのため、制御PC14では、スライスデータの生成時に、造形装置12における不良ノズルの状態を把握する必要がある。そのため、本例においては、上記においても説明をしたように、造形装置12と制御PC14との間で通信を行い、不良ノズル情報及びノズル割当マトリクスを造形装置12から制御PC14へ伝達する。
【0121】
また、実際に造形物を造形する場合においては、必ずしも制御PC14でのスライスデータの生成と造形装置12での造形の動作とを連続的に行うのではなく、制御PC14でスライスデータが生成された後、時間がたってから造形装置12で造形を行うこと等も考えられる。そして、この場合、制御PC14でのスライスデータの生成時に考慮した不良ノズルと、造形装置12の造形時に実際に存在している不良ノズルが一致しないこと等も考えられる。
【0122】
例えば、制御PC14でのスライスデータの生成時には正常であったノズルが造形装置12での造形の実行時までに不良ノズルになること等が考えられる。また、制御PC14でのスライスデータの生成時には不良ノズルであったノズルについて、造形の実行時までに正常ノズルに回復すること等も考えられる。そして、このような場合、スジ補正処理の対象となるノズルが変化するため、不良ノズルの影響を適切に抑えることができなくなるおそれがある。そのため、制御PC14でのスライスデータの生成と造形装置12での造形の動作とを連続的に行う場合以外には、その時点で存在している不良ノズルに正しく対応しているスライスデータであることを確認することが好ましい。また、この場合、必要に応じて造形装置12から制御PC14への問い合わせを行うことが考えられる。
【0123】
より具体的に、
図10(a)は、制御PC14でのスライスデータの生成と造形装置12での造形の動作とを連続的に行う場合について、造形装置12と制御PC14との間で行う通信の一例を示す。この場合、制御PC14は、スライスデータを生成する処理において、造形装置12に対し、不良ノズルがあるか否かの問い合わせを行う。また、この場合、造形装置12は、この問い合わせに応じて、不良ノズル情報を制御PC14へ送信する。また、制御PC14は、更に、造形装置12に対し、ノズルの割り当て方の問い合わせを行う。そして、造形装置12は、この問い合わせに応じて、ノズル割当マトリクスを制御PC14へ送信する。
【0124】
そして、これらの通信を行った後、制御PC14は、不良ノズルの情報を反映して、2値化したスライスデータを生成する処理を行う。また、生成したスライスデータについて、例えば、順次造形装置12へ送信する。また、造形装置12は、例えば、制御PC14から順次受け取るスライスデータに基づき、造形を行う。また、造形が完了した時点で、造形装置12は、その旨を制御PC14へ通知する。
【0125】
このように構成すれば、例えば、造形物の造形を適切に行うことができる。また、この場合、制御PC14でのスライスデータの生成と造形装置12での造形の動作とを連続的に行うため、スライスデータと不良ノズルとの対応付けに関する確認を行う必要はない。これに対し、制御PC14でのスライスデータのみを先に行い、その後に別のタイミングで造形装置12での造形を行う場合には、上記のように、スライスデータと不良ノズルとの対応付けに関する確認を行うことが好ましい。
【0126】
図10(b)は、制御PC14でのスライスデータのみを先に行い、その後に別のタイミングで造形装置12での造形を行う場合について、造形装置12と制御PC14との間で行う通信の一例を示す。この場合も、制御PC14は、スライスデータを生成する処理において、造形装置12に対し、不良ノズルがあるか否かの問い合わせと、ノズルの割り当て方の問い合わせとを行う。また、造形装置12は、これらの問い合わせに応じて、不良ノズル情報及びノズル割当マトリクスを送信する。また、これらの通信を行った後、制御PC14は、不良ノズルの情報を反映して、2値化したスライスデータを生成する処理を行う。
【0127】
また、この場合、制御PC14でのスライスデータの生成が完了した後のいずれかのタイミングにおいて、造形装置12は、造形の動作を開始する。そして、この場合、造形装置12と制御PC14との間で行う通信において、制御PC14は、再度、不良ノズルがあるか否かの問い合わせを行う。また、造形装置12は、この問い合わせに応じて、不良ノズル情報を制御PC14へ送信する。
【0128】
そして、この場合、制御PC14は、生成済みのスライスデータと不良ノズル情報とを比較する処理である補正ノズル比較処理を行う。また、これにより、スライスデータの生成時に考慮した不良ノズルと、不良ノズル情報に示されている不良ノズルとが一致しているか否かの確認(不良ノズルの一致の確認)を行う。
【0129】
そして、不良ノズルの一致が確認できれば、制御PC14から造形装置12へスライスデータを送信して、造形装置12に造形を実行させる。また、不良ノズルの一致の確認において、一致していないと判断した場合、制御PC14は、例えば、新たに取得した不良ノズル情報に基づき、新たなスライスデータを生成する。そして、この場合、新たなスライスデータを造形装置12へ送信することにより、造形装置12に造形を行わせる。このように構成すれば、造形時に存在している不良ノズルに合った正しいスライスデータを用いることを適切に確認できる。
【0130】
また、造形装置12で行う造形については、例えば、
図10(c)に示すように、過去に生成されたスライスデータを用いて、造形のみを行うこと等も考えられる。そして、この場合、
図10(b)に示した動作の後半の動作のみを行うことが考えられる。この場合も、造形の開始前に不良ノズルの一致を確認することで、造形時に存在している不良ノズルに合った正しいスライスデータを用いることを適切に確認できる。
【0131】
ここで、本例において、不良ノズルの一致を確認する動作は、上記のとおり、造形装置12が造形の動作を開始する前に行う確認の動作である。また、
図10(b)、(c)等に示した場合、具体的な確認の動作について、制御PC14において行っている。また、この確認の動作について、造形装置12の動作に着目した場合、造形装置12の側においても、制御PC14と通信することで、不良ノズルの一致を確認していると考えることができる。この場合、例えば、造形装置12における制御部110(
図1参照)が、制御PC14と通信することにより、造形装置12のヘッド部102(
図1参照)におけるインクジェットヘッドに存在している不良ノズルと、制御PC14でのスライスデータの生成時に考慮した不良ノズルとが同一である否かを確認する。また、本例において、不良ノズルの一致が確認できなかった場合には、上記のように、制御PC14で新たなスライスデータを生成する。また、造形装置12及び制御PC14の動作の変形例においては、例えば、不良ノズルの一致が確認できなかった場合には造形の動作を開始せずに、一致が確認できた場合にのみ造形装置12での造形を行うこと等も考えられる。
【0132】
また、本例において、不良ノズルを考慮して制御PC14で生成するスライスデータは、不良ノズルを考慮して生成した吐出位置指定データである不良ノズル存在時データの一例である。また、この場合、制御PC14は、例えば、不良ノズルにインクを吐出させず、不良ノズル以外のいずれかのノズルにより形成されるラインのライン密度が正常時密度よりも大きくなるようにした不良ノズル存在時データを生成する。また、この場合、造形装置12における制御部110は、例えば、不良ノズル存在時データに基づいて各インクジェットヘッドのそれぞれのノズルにインクを吐出させることにより、不良ノズル以外のいずれかのノズルにより形成されるラインのライン密度が正常時密度よりも大きくなるように設定する。このように構成すれば、例えば、不良ノズルの影響を適切に抑えることができる。
【0133】
続いて、本例において行うスジ補正処理等について、補足説明等を行う。先ず、ライン密度を大きくするラインの選択の仕方等について、更に詳しく説明をする。上記においては、
図4等を用いて、不良ノズル以外のノズルで形成されるラインのうち、ライン密度を大きくするラインについて、不良ノズルに対応するライン(以下、不良ラインという)の位置のすぐ隣のラインを選択する場合等について、説明をした。
【0134】
この点について、例えばマルチパス方式で造形を行う場合、このような隣のラインは、必ずしも不良ラインが本来形成される主走査動作と同じ回の主走査動作で形成されるわけではない。そのため、この場合、マルチパス方式の動作を考慮して、隣のラインを選択することも考えられる。
【0135】
より具体的に、例えば、インクジェットヘッドにおけるノズルの間隔(副走査方向における間隔)が副走査方向における造形の解像度の整数倍になっており、マルチパス方式で一つのインクの層を形成する場合、一つのインクの層の中で副走査方向において隣接するラインは、異なる回の主走査動作により形成されることになる。そして、このような構成において、吐出量が少ない不良ノズルが存在する場合、一つのインクの層を構成するラインの中で副走査方向において不良ラインと隣接するラインが形成される主走査動作時において、その隣接するラインのライン密度について、正常時密度よりも大きくなるように設定すること等が考えられる。また、この場合、例えば、インクジェットヘッドのノズル列中で不良ノズルに隣接しているノズルではなく、不良ノズルに対応するラインと隣接するラインを実際に形成するノズルについて、ライン密度が正常時密度よりも大きくなるように設定することが考えられる。このように構成すれば、例えば、一つの層の中で不良ラインと隣接するラインのライン密度を適切に大きくすることができる。また、これにより、例えば、不良ノズルの影響を適切に抑えることができる。
【0136】
また、不良ラインと隣接するラインについては、インクの層毎ではなく、主走査動作を単位に考えることもできる。この場合、各インクジェットヘッドのノズル列において不良ノズルと隣接するノズルで形成されるラインについて、不良ラインと隣接するラインと考えることができる。また、より具体的に、この場合、ノズル列中で副走査方向において不良ノズルと隣接するノズルにより形成されるラインのライン密度について、正常時密度よりも大きくなるように設定することが考えられる。このように構成した場合も、例えば、不良ノズルの影響を適切に抑えることができる。
【0137】
また、不良ノズルの影響を抑えるためには、隣接するラインに限らず、他のラインについて、ライン密度を大きくすること等も考えられる。この場合、例えば、副走査方向において不良ラインとの間に1個のラインを挟む位置にあるラインのライン密度について、正常時密度よりも大きくなるように設定すること等が考えられる。また、主走査動作を単位にラインを選択する場合、このようなラインは、例えば、副走査方向において不良ノズルとの間に1個のノズルを挟む位置にあるノズルにより形成されるラインである。
【0138】
また、ライン密度の調整については、例えば、予め設定された複数のラインのグループ毎に、グループ内でのライン密度の平均を調整すること等も考えられる。この場合、例えば、副走査方向における中心に不良ラインが位置する3個又は5個程度の連続するラインをグループにして、平均のライン密度を調整すること等が考えられる。
【0139】
また、このようにしてグループ毎にライン密度を調整する動作については、例えば、一つの不良ノズルに対して複数のノズルを選択して、対応するライン密度を変更する動作等と考えることができる。また、例えば、不良ノズルにより形成されるラインと、1個以上のいずれかの正常ノズルにより形成されるラインとを含む複数のラインにおける平均のライン密度が予め設定される範囲内になるように調整する動作等を考えることもできる。この場合、例えば、いずれかの正常ノズルにより形成されるラインのライン密度について、正常時密度よりも大きくなるように設定することが考えられる。
【0140】
また、この場合、不良ノズルが存在することで生じるインクの量の誤差(体積の誤差)を最小にするように、周囲のラインを構成するドットのサイズ等を決定して、ライン密度を調整することが好ましい。また、この場合、グループ内の一部のラインについて、ライン密度が少なくなるように調整すること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、グループ内でのライン密度の平均をより柔軟に調整することができる。また、ライン密度の調整の仕方の変形例においては、例えば、吐出量が多くなる不良ノズルが存在する場合において、不良ラインの周辺のラインについて、ライン密度が小さくなるように調整すること等も考えられる。
【0141】
また、平均のライン密度を算出する複数のノズルのグループについては、マルチパス方式の動作を考慮して設定することも考えられる。この場合、例えば、一つのインクの層の中で副走査方向において連続して並ぶ複数のラインを形成する複数のノズルを含むグループを設定して、そのグループにける平均のライン密度について、所定の範囲内に設定する。また、上記においては、主に、不良ラインの両側(副走査方向の両側)のラインのライン密度を大きくする場合について、説明をした。しかし、ライン密度を変化させるラインについては、副走査方向における不良ラインの片側のみに選択してもよい。
【0142】
続いて、ライン密度の調整等について、補足説明を行う。上記においても説明をしたように、本例においては、補償用の大きなサイズのドットを含むラインを形成することで、ライン密度を大きくする。この場合において、ラインの中でサイズを大きくするドットは、必ずしも全てのドットではなく、ラインを構成するドットの一部であってもよい。また、この場合、単位面積あたりの平均のインクの量(吐出量)が所定の範囲内になるように、サイズを大きくするドットの割合を設定することが好ましい。
【0143】
また、ライン密度をどの程度大きくするかについては、例えば、造形の条件(使用するインク等)に合わせて調整を行うことが好ましい。この場合、例えば、予め設定されたテストパターンでの造形を行い、不良ノズルの影響を抑えることができるライン密度を適用すること等が考えられる。
【0144】
また、吐出量の少ない不良ノズルの影響を抑えるためには、上記において説明をした方法に限らず、何らかの方法で周辺のインクの濃度を高めること等も考えられる。また、この点に関し、ライン密度を大きくする方法について、より一般化して考えた場合、ドットサイズを大きくする方法に限らず、何らかの方法でドットの数を増やす方法等も考えられる。より具体的には、例えば、一部のノズルによるラインの形成時において、主走査方向における間隔を小さくしてドットを並べることにより、ライン密度を大きくすること等も考えられる。
【0145】
ここで、上記においても説明をしたように、本例において、造形装置12は、
図2に示すような様々な領域を有する造形物を造形する。この場合において、上記において説明をしたライン密度の調整等は、造形物の各部の形成時に行うことが考えられる。より具体的に、ライン密度の調整等については、例えば、造形物において、1種類のインクのみで形成される領域である単一材料領域の形成時に適用すること等が考えられる。この場合、単一材料領域とは、例えば、造形物における内部領域、光反射領域、及び保護領域等のように、1種類のインクのみで形成される領域のことである。また、この場合、ライン密度の調整の対象となるインクジェットヘッドは、このような単一材料領域用のインクを吐出するインクジェットヘッドである。
【0146】
このような単一材料領域用においては、1種類のインクのみを用いて大きな吐出量で形成をすることが考えられる。そのため、このような領域の形成時には、不良ノズルの影響が大きくなりやすい。一方で、このような領域の場合、不良ラインの周辺へのインクの吐出量を大きくしても、造形の品質への影響が生じ難い。そのため、このような領域においては、上記のようにライン密度を調整することで、不良ノズルの影響をより適切に抑えることができる。
【0147】
また、ライン密度の調整等については、造形物の着色領域のように、複数種類のインクを用いて形成する領域の形成時に適用してもよい。より具体的に、この場合、ライン密度の調整の対象となるインクジェットヘッドは、着色用のインクを吐出するインクジェットヘッドである。また、着色領域の形成時には、制御PC14において行うハーフトーン処理等が特に重要になる。そのため、この場合、上記において説明をした閾値マトリクス変形処理及び拡散マトリクス変形処理等を行うことが特に好ましいとも考えられる。
【0148】
続いて、本例において得られる効果等について、補足説明を行う。上記においても説明をしたように、本例においては、不良ノズルの両隣のノズル等で形成するラインのライン密度を大きくすることで、副走査方向における不良ラインの周辺(例えば、両側)のインクの濃度を大きくする。また、これにより、例えば、不良ノズルの影響を抑えて、インクの量の不足によるスジ等が発生することを適切に防ぐことができる。
【0149】
また、この点について、不良ノズルの影響を抑えるためには、例えば、積層するインクの層毎にインクジェットヘッドの副走査方向における位置をずらして、同じ位置で重なるラインを層毎に違うノズルで形成すること等も考えられる。しかし、この場合、インクジェットヘッドの位置の制御が複雑になるおそれもある。また、位置をずらしたとしても、それぞれのインクの層の形成時において、スジ等が発生することになる。また、その結果、造形の品質に影響が生じるおそれもある。これに対し、本例によれば、例えば、層毎にインクジェットヘッドの副走査方向における位置をずらす制御等を行わなくても、不良ノズルの影響を適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、より簡易な制御により、不良ノズルの影響をより適切に抑えることができる。