(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861088
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】簡易式農業ハウス暖房システム
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20210412BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
A01G9/24 P
A01G9/24 J
A01G7/00 601Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-95823(P2017-95823)
(22)【出願日】2017年5月12日
(65)【公開番号】特開2018-191533(P2018-191533A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】599165968
【氏名又は名称】多摩火薬機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】児島 辰彦
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−204270(JP,A)
【文献】
特開2011−120569(JP,A)
【文献】
実公昭49−000304(JP,Y1)
【文献】
実公昭49−005563(JP,Y1)
【文献】
実開昭63−013546(JP,U)
【文献】
特開平01−171415(JP,A)
【文献】
特開昭52−081246(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0150743(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14 − 9/26
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業ハウス内に設置され、農業ハウス内の栽培設備で栽培される作物を当該作物に適した温度に加温・保温する簡易式農業ハウス暖房システムであって、
前記栽培設備に隣接設置され、水を貯留するタンクと、
前記タンク内に投入配置され、水を加熱する投げ込み型ヒーターと、
前記タンクに接続されて上方に向けて延ばされ、前記タンク内で水の加熱により発生する蒸気を通すダクトと、
前記タンク内で水の加熱により生成される温水を吸引し供給するポンプと、
一端が前記ポンプの吸引口に接続され他端が前記タンクに接続される吸引側のホース、及び一端が前記ポンプの吐出口に接続され他端側が前記栽培設備で栽培される作物に接触可能に近接して配管され、他端を前記タンクに接続される供給側のホースを有し、前記タンク内で生成された温水を作物の近傍で循環させるホースと、
前記栽培設備の周囲を少なくとも前記投げ込み型ヒーターを含むタンク、前記ダクト、前記ホースと共に包囲して、農業ハウス内に前記栽培設備専用の小さい保温空間を画成する保温カーテンと、
を備え、
前記保温カーテン内で前記タンクに入れた水の中に投げ込み型ヒーターを投入して加熱し、前記ダクトに蒸気を通して前記ダクトから発生する熱により前記保温カーテン内の保温空間を加温・保温し、前記ポンプにより前記タンクと前記ホースとの間で温水を循環して前記ホースから発生する熱を前記栽培設備の作物に伝達する、
ことを特徴とする簡易式農業ハウス暖房システム。
【請求項2】
農業ハウス内の栽培設備の上方所定の高さに開閉可能に張設され、農業ハウス内の空間を仕切り前記栽培設備を上から覆う仕切りカーテンを備える請求項1に記載の簡易式農業ハウス暖房システム。
【請求項3】
農業ハウス内で栽培設備の周囲に立ち上げられる複数の支柱により前記栽培設備の上方に支持され、作物のツル及びホースを這わせ配置するための栽培棚を備える請求項1又は2に記載の簡易式農業ハウス暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業ハウス内などの暖房に使用する簡易式農業ハウス暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、メロンやトマトなどの作物が所謂ビニールハウスと称せられる農業ハウスの中で栽培されている。また近時は、農業ハウス内に水耕栽培用の設備が設置され、かかる設備を使っての栽培も行われている。このようなハウス栽培では、例えばメロンの場合なら農業ハウス内の温度が夜間でも16℃以下にならないようにメロンに適した温度に保つ必要があるなど、農業ハウス内を暖房器具を使って各種作物に適した温度に加温しこれを保つ必要がある。
これまでの農業ハウスの夜間暖房では、重油やガスなどの燃料を燃焼させて温風を発生させる暖房器具を使って、農業ハウス内全体を温めている(特許文献1、2参照)。
ところが、このような燃料を燃やす暖房器具は燃費、暖房効率が悪く、冬のような寒冷期には燃料にかかるコストが増大し、栽培農家の経済的な負担が大きいものとなっていた。そこで、近年は、重油などの燃料に代えて、ヒートポンプを用いた暖房装置(特許文献1参照)や有機物の発酵熱を利用した農業用ハウス暖房装置(特許文献2参照)など各種の暖房装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−268427号公報
【特許文献2】特開2012− 19781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2などの暖房装置は、重油などの燃料を使用しないことで燃料に要する費用が生じないものの、暖房装置それ自体が簡便で低廉なものではないために、栽培農家の負担が大幅に軽減されたものとはまだまだ言い難い。
【0005】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、例えば、メロンやトマトなどを栽培する農業ハウスなどの特に寒冷期の夜間暖房に最適で、コストパフォーマンスに優れた簡易式農業ハウス暖房システムを提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、
農業ハウス内に設置され、農業ハウス内の栽培設備で栽培される作物を当該作物に適した温度に加温・保温する簡易式農業ハウス暖房システムであって、
前記栽培設備に隣接設置され、水を貯留するタンクと、
前記タンク内に投入配置され、水を加熱する投げ込み型ヒーターと、
前記タンクに接続されて上方に向けて延ばされ、前記タンク内で水の加熱により発生する蒸気を通すダクトと、
前記タンク内で水の加熱により生成される温水を吸引し供給するポンプと、
一端が前記ポンプの吸引口に接続され他端が前記タンクに接続される吸引側のホース、及び一端が前記ポンプの吐出口に接続され他端側が前記栽培設備で栽培される作物に接触可能に近接して配管され、他端を前記タンクに接続される供給側のホースを有し、前記タンク内で生成された温水を作物の近傍で循環させるホースと、
前記栽培設備の周囲を少なくとも前記投げ込み型ヒーターを含むタンク、前記ダクト、前記ホースと共に包囲して、農業ハウス内に前記栽培設備専用の小さい保温空間を画成する保温カーテンと、
を備え、
前記保温カーテン内で前記タンクに入れた水の中に投げ込み型ヒーターを投入して加熱し、前記ダクトに蒸気を通して前記ダクトから発生する熱により前記保温カーテン内の保温空間を加温・保温し、前記ポンプにより前記タンクと前記ホースとの間で温水を循環して前記ホースから発生する熱を前記栽培設備の作物に伝達する、
ことを要旨とする。
また、この簡易式農業ハウス暖房システムは、次の(1)、(2)の構成を備えることが好ましい。
(1)農業ハウス内の栽培設備の上方所定の高さに開閉可能に張設され、農業ハウス内の空間を仕切り前記栽培設備を上から覆う仕切りカーテンを備える。
(2)農業ハウス内で栽培設備の周囲に立ち上げられる複数の支柱により前記栽培設備の上方に支持され、作物のツル及びホースを這わせ配置するための栽培棚を備える。
さらに、この簡易式農業ハウス暖房システムは、次の(イ)−(ホ)のように具体化されることが好ましい。
(イ)タンクはドラム缶が採用される。
(ロ)ダクトは亜鉛鋼板又はステンレス鋼板からなるスパイラルダクト又はフレキシブルダクトが採用される。
(ハ)ポンプはマグネットポンプが採用される。
(ニ)ホースは使用温度範囲−5℃〜60℃の合成樹脂製のホースが採用される。
(ホ)保温カーテンは内側に遮光カーテン、外側に断熱カーテンを配置した2重のカーテンをなす。
【発明の効果】
【0007】
本発明の簡易式農業ハウス暖房システムによれば、保温カーテン内でタンクに入れた水の中に投げ込み型ヒーターを投入して加熱し、ダクトに蒸気を通してダクトから発生する熱により保温カーテン内の保温空間を加温・保温し、ポンプによりタンクとホースとの間で温水を循環してホースから発生する熱を栽培設備の作物に伝達するようにしたので、このシステムを、タンクにドラム缶、ダクトに亜鉛鋼板又はステンレス鋼板からなるスパイラルダクト又はフレキシブルダクト、ポンプにマグネットポンプ、ホースに使用温度範囲−5℃〜60℃の合成樹脂製のホース、保温カーテンは内側に遮光カーテン、外側に断熱カーテンを配置した2重のカーテンなどの簡便な機器機材で実現することができ、暖房効果は十分であり、例えば、メロンやトマトなどを栽培する農業ハウスなどの特に寒冷期の夜間暖房に最適で、優れたコストパフォーマンスを発揮することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】本発明の一実施の形態による簡易式農業ハウス暖房システムの構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1、
図2に農業ハウスを示し、
図3、
図4に簡易式農業ハウス暖房システムを示している。
図1、
図2に示すように、農業ハウスHは、屋根、外壁の各骨組みが鋼製のパイプで構成され、屋根、外壁を合成樹脂製のフィルムで被覆する所謂ビニールハウスであり、正面のフィルムは出入り口として開閉可能に、左右両側面のフィルムは巻き上げ可能になっている。
また、この農業ハウスHでは、
図2に示すように、作物の栽培設備Eとして、水耕栽培槽(以下、水耕栽培槽Eという。)が設置される。この水耕栽培槽Eは、町田式水耕栽培槽と称せられ、特許第5357954号公報に開示されているように、栽培槽本体e1と、栽培槽本体e1に載置される上蓋e2とからなり、栽培槽本体e1の略中心部に液肥を供給する給水部、栽培槽本体e1の周囲壁に隣接して液肥を排水する複数の排水部がそれぞれ設けられ、上蓋e2の略中心領域に少なくとも1つの培地が配置されて、水耕栽培槽E内で液肥をゆらぎを伴った放射状の水流にして流すようになっている。このような栽培槽Eが複数台農業ハウスH内に農業ハウスHの幅方向中央の床に所定の間隔で一列に並べて設置される。なお、これらの水耕栽培槽Eではメロンを栽培する。
このような農業ハウスHにおいて、
図3、
図4に示すように、簡易式農業ハウス暖房システムSは、農業ハウス内Hに設置され、農業ハウスH内の各水耕栽培槽Eで栽培される作物(メロン)を当該作物に適した温度に加温・保温しようとするもので、
図3、
図4に示すように、農業ハウスH内に張設される仕切りカーテン1、農業ハウスH内に各水耕栽培槽E毎に装備される栽培棚2、タンク3、投げ込み型ヒーター4、ダクト5、ポンプ6、ホース7、保温カーテン8などにより構成される。
【0010】
仕切りカーテン1は、
図1、
図3に示すように、農業ハウスH内の水耕栽培槽Eの上方所定の高さに開閉可能に張設され、農業ハウスH内の空間を仕切り、水耕栽培槽Eを上から覆うようになっている。
この場合、仕切りカーテン1は、農業ハウスH内の各保温カーテン8で画成される各保温空間80の上方所定の高さで農業ハウスHの正面部と背面部との間にワイヤー10を介して張着される中央の遮光シート11と、中央の遮光シート11から農業ハウスHの左右両側面に向けて下方斜めに張着される複数の左右一対の棚ワイヤー12の各下端部に折り畳まれた状態から各棚ワイヤー12の各上端部に向けて展開可能に配置されるアコーディオン式の左右一対の遮光カーテン13と、左右の各遮光カーテン13の上端部に連結され、各遮光カーテン13を展開駆動する複数の駆動ワイヤー14と、ここでは図示を省略するが、各駆動ワイヤー14を巻き取り可能なドラム、ドラムを回転駆動する駆動軸、駆動軸を回動操作するための操作部などにより構成される。なお、左右の各遮光カーテン13は農業ハウスHの正面部及び背面部の内側の正面側、背面側を覆う長さを有している(
図1参照)。
【0011】
栽培棚2は、
図3に示すように、各水耕栽培槽Eの周囲に立ち上げられる複数の支柱21により各水耕栽培槽Eの上方に支持され、ホース7及び作物のツルなどを這わせ配置するためのものである。
この場合、各栽培棚2は、各水耕栽培槽Eの左右両側に沿って支柱21として複数のパイプ材が立設され、これらのパイプ材の上部間に梁22としてパイプ材が前後左右方向に架設され、これら梁22としてのパイプ材間に複数のワイヤー23が格子状に張架されて構成される。
【0012】
タンク3は、
図4に示すように、各水耕栽培槽Eに隣接設置され、水を貯留するためのものである。
この場合、各タンク3に180リットルの水を貯留可能なドラム缶(以下、ドラム缶3という。)が採用され、各水耕栽培槽E1つに付き、ドラム缶3が1つ各水耕栽培槽Eに隣接して設置される。また、この場合、各ドラム缶3は上面が開口されており、各ドラム缶3の上面開口はゴム板31で閉塞される。なお、ゴム板31の一部にはドラム缶3の開口に連通する所定の径の穴が形成される。これらのドラム缶3には水道の水がホースなどにより注入される。
【0013】
投げ込み型ヒーター4は、
図4に示すように、各ドラム缶3内に投入配置されて、水を加熱するためのものである。
この場合、各投げ込み型ヒーター4は、略U字形をなす発熱部41と、発熱部41の上部を取り付けられ、内部に温度調節用の回路などを有し、外部に温度調節つまみを有する温度調節部42と、温度調節部42から延び発熱部41と並列に配置される温度センサー43と、温度調節部42から延ばされる電源コード44とを備え、発熱部41を温度センサー44とともにドラム缶3内に入れた水の中に投入し水の中に略垂直に立てて置き、発熱部41を通電することにより、水を所定の温度まで加熱するようになっている。
【0014】
ダクト5は、
図4に示すように、各ドラム缶3に接続されて上方に向けて延ばされ、各ドラム缶3内で水の加熱により発生する蒸気を通すためのものである。
この場合、各ダクト5は亜鉛鋼板又はステンレス鋼板からなるスパイラルダクト又はフレキシブルダクトが採用される。また、この場合、各ダクト5は各ドラム缶3の上面にゴム板31を介してゴム板31の穴の上に設置される。
【0015】
ポンプ6は、
図4に示すように、ホース71、72を接続され、各ドラム缶3内で水の加熱により生成される温水を吸引し供給するためのものである。
この場合、各ポンプ6にマグネットポンプ(以下、マグネットポンプ6という。)が採用される。各マグネットポンプ6は、ポンプ部への回転力の伝達を、筒状の磁気を帯びた回転子(駆動マグネット)と筒状の磁石を樹脂で包み込んだ羽根車(従動マグネット)を重ね合わせ、同期回転させることによって行うマグネット駆動式になっている。
【0016】
ホース7は、
図4に示すように、一端がマグネットポンプ6の吸引口61に接続され他端がドラム缶3に接続される吸引側のホース71、及び一端がマグネットポンプ6の吐出口62に接続され他端側を水耕栽培槽Eで栽培される作物に接触可能に近接して配管されて(
図3参照)、他端をドラム缶3に接続される供給側のホース72を有し、ドラム缶3内で生成された温水を作物の近傍で循環させるためのものである。
この場合、吸引側、供給側の各ホース71、72に使用温度範囲−5℃〜60℃の合成樹脂製のホースが採用される。
【0017】
保温カーテン8は、
図3に示すように、各水耕栽培槽Eの周囲を少なくとも投げ込み型ヒーター4を含むドラム缶3、ダクト5、ホース7と共に包囲して、農業ハウスH内に水耕栽培槽E専用の小さい保温空間80を画成するためのものである。
この場合、各保温カーテン8は内側に遮光カーテン、外側に断熱カーテンを配置した2重のカーテンになっている。
また、この場合、遮光カーテン、断熱カーテンはそれぞれ、各水耕栽培槽E上方の栽培棚2の梁22として設けられたパイプ材をカーテンレールとして用い、これらのパイプ材にカーテンクリップを介して吊り下げられる。
【0018】
この農業ハウス暖房システムSはかかる構成を備え、各水耕栽培槽E毎に、保温カーテン8内でドラム缶3に入れた水の中に投げ込み型ヒーター4を投入して加熱し、ダクト5に蒸気を通してダクト5から発生する熱により保温カーテン8内の保温空間80を加温・保温し、マグネットポンプ6によりドラム缶3と吸引側、供給側の各ホース71、72との間で温水を循環して供給側のホース72から発生する熱(温水の熱)を水耕栽培槽Eの作物に伝達するようになっている。
【0019】
図3、
図4を用いてこの農業ハウス暖房システムSの使用方法について説明する。
図3、
図4に示すように、農業ハウスH内での準備に当たり、まず、仕切りカーテン1を折り畳んだ状態にして(
図2参照)上部空間を開放し、各水耕栽培槽Eの各保温カーテン8を開いておく。この状態から、各ドラム缶3のゴム板31を取り外して、各ドラム缶3の中に水道の水を注入する。水の注入が終わったら、各ドラム缶3の水の中に投げ込み型ヒーター4を投入し垂直に立てる。次いで、各ドラム缶3の近傍にマグネットポンプ6を設置する。続いて、吸引側のホース71の一端をマグネットポンプ6の吸入口61に接続し他端をドラム缶3の水の中に投入し、供給側のホース72の一端をマグネットポンプ6の供給口62に接続し他端側を栽培棚2の上に這わせ配置し(
図3参照)、他端はドラム缶3の水の中に投入する。併せて、各水耕栽培槽Eの作物の成育により延びた作物(メロン)のツルを栽培棚2の上に這わせ配置して栽培棚2上に配管した供給側のホース72に絡ませる。次いで、各ドラム缶3の上面開口上にゴム板31を置いて蓋をし、ゴム板31の穴の上にダクト5を設置する。次いで、水耕栽培槽E毎に各保温カーテン8を閉め、続いて、農業ハウスH内の仕切りカーテンを閉める。そして、各ドラム缶3内の各投げ込み型ヒーター4を通電し、各ドラム缶3の中の水を加熱して温水を生成する。水が所定の温度に達したら、各ドラム缶3の中で発生する水蒸気を各ドラム缶3上部の各ダクト5に通して各ダクト5から発生する熱で各保温カーテン8で画成された保温空間80の空気を暖房(加温・保温)する。さらに、各マグネットポンプ6を駆動し、各ドラム缶3内の温水を吸引側、供給側の各ホース71、72に循環させて、供給側のホース72から発生する熱(温水の熱)を各水耕栽培槽Eの作物(植物やその枝葉、つるなど)に直接伝達し暖房(加温・保温)する。このような温水式の暖房設備により各水耕栽培槽Eの作物をこの作物に適した温度に加温し、当該温度に保温する。
【0020】
以上説明したように、このシステムSでは、農業ハウスH内の各水耕栽培槽E毎に、各保温カーテン8内で各ドラム缶3に入れた水の中に投げ込み型ヒーター4を投入して水を加熱し、各ダクト5に蒸気を通して各ダクト5から発生する熱により各保温カーテン8内の保温空間80を加温・保温し、各マグネットポンプ6により各ドラム缶3と吸引側、供給側の各ホース71、72との間で温水を循環して供給側のホース72から発生する熱を水耕栽培槽Eの作物に直接伝達するようにしたので、このシステムSを、既述のとおり、タンク3にドラム缶、ダクト5に亜鉛鋼板又はステンレス鋼板からなるスパイラルダクト又はフレキシブルダクト、ポンプ6にマグネットポンプ、ホース7に使用温度範囲−5℃〜60℃の合成樹脂製のホース、保温カーテン8に内側に遮光カーテン、外側に断熱カーテンを配置した2重のカーテンなど簡便な機器機材で実現することができ、暖房効果は十分で、例えば、メロンやトマトなどを栽培する農業ハウスHなどの特に寒冷期の夜間暖房に最適であり、優れたコストパフォーマンスを発揮することができる。
【0021】
また、このシステムSでは、各水耕栽培槽Eの上方所定の高さに仕切りカーテン1を開閉可能に張設し、この仕切りカーテン1により農業ハウスH内の空間を(所定の高さで)仕切り、各水耕栽培槽Eを上から覆っているので、農業ハウスH内を小空間化して、このシステムSの暖房効率をより高めることができる。
さらに、このシステムSでは、水耕栽培槽Eの上方にホース7及び作物のツルなどを這わせ配置するための栽培棚2を備えたので、ホース7を通る温水の温度で作物のツルなどを効果的に加温・保温することができる。
【符号の説明】
【0022】
H 農業ハウス
E 栽培設備(水耕栽培槽)
S 簡易式農業ハウス暖房システム
1 仕切りカーテン
10 ワイヤー
11 中央の遮光シート
12 棚ワイヤー
13 遮光カーテン
14 駆動ワイヤー
2 栽培棚
21 支柱
22 梁
23 ワイヤー
3 タンク(ドラム缶)
31 ゴム板
4 投げ込み型ヒーター
41 発熱部
42 温度調節部
43 温度センサー
5 ダクト
6 ポンプ(マグネットポンプ)
61 吸引口
62 吐出口
7 ホース
71 吸引側のホース
72 供給側のホース
8 保温カーテン
80 保温空間