(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861092
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】電子部品の外観検査方法及び外観検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20210412BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20210412BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20210412BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20210412BHJP
G06T 7/90 20170101ALI20210412BHJP
【FI】
G01N21/956 B
G01N21/88 H
G06T1/00 305A
G06T7/00 610Z
G06T7/90 Z
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-102197(P2017-102197)
(22)【出願日】2017年5月24日
(65)【公開番号】特開2018-197695(P2018-197695A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】大串 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】小松 規秀
(72)【発明者】
【氏名】森川 尚展
【審査官】
越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−191554(JP,A)
【文献】
特開2009−042202(JP,A)
【文献】
特開2008−058270(JP,A)
【文献】
特開2010−190871(JP,A)
【文献】
特開2007−303854(JP,A)
【文献】
再公表特許第2007/074770(JP,A1)
【文献】
中国特許出願公開第101676040(CN,A)
【文献】
特開昭61−29712(JP,A)
【文献】
特開2007−292576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01B 11/00−11/30
G06T 1/00− 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面の少なくとも一部を金属薄膜で覆った加工面を有する電子部品の外観検査方法であって、
前記加工面に対して第1照射部により偏光を照射し、偏光フィルタを介して前記加工面からの反射光を第1撮像部で受光することにより、第1撮像データを取得する第1データ取得工程と、
前記加工面に対して第2照射部により偏光していない可視光を照射し、前記加工面からの反射光を第2撮像部で受光することにより、第2撮像データを取得する第2データ取得工程と、
RGB色空間に基づく前記第1撮像データの輝度、及び、HSV色空間に基づく前記第2撮像データの彩度を用いた演算により、前記加工面の欠陥領域を検出する欠陥領域検出工程とを含むことを特徴とする外観検査方法。
【請求項2】
前記欠陥領域検出工程では、RGB色空間に基づく前記第1撮像データの輝度を第1閾値と比較することにより、前記第1撮像データを二値化し、二値化された前記第1撮像データに基づいて前記加工面の欠陥領域を検出することを特徴とする請求項1に記載の外観検査方法。
【請求項3】
前記欠陥領域検出工程では、HSV色空間に基づく前記第2撮像データの彩度を第2閾値と比較することにより、前記第2撮像データを二値化し、二値化された前記第2撮像データに基づいて前記加工面の欠陥領域を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の外観検査方法。
【請求項4】
前記欠陥領域検出工程では、RGB色空間に基づく前記第1撮像データの輝度を用いた演算により抽出される領域と、HSV色空間に基づく前記第2撮像データの彩度を用いた演算により抽出される領域との差分領域に基づいて、前記加工面の欠陥領域を検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の外観検査方法。
【請求項5】
前記半導体基板は、シリコン基板であり、
前記電子部品は、前記シリコン基板を分割させた太陽電池セルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の外観検査方法。
【請求項6】
前記欠陥領域検出工程では、分割させた前記シリコン基板の分割面においてチッピングが生じている領域を、前記金属薄膜が剥がれている領域と判別し、欠陥領域として検出することを特徴とする請求項5に記載の外観検査方法。
【請求項7】
半導体基板の表面の少なくとも一部を金属薄膜で覆った加工面を有する電子部品の外観検査装置であって、
前記加工面に対して偏光を照射する第1照射部と、
前記加工面に対して偏光していない可視光を照射する第2照射部と、
前記第1照射部により偏光が照射された前記加工面からの反射光を、偏光フィルタを介して受光する第1撮像部と、
前記第2照射部により可視光が照射された前記加工面からの反射光を受光する第2撮像部と、
前記第1撮像部から第1撮像データを取得する第1データ取得処理部と、
前記第2撮像部から第2撮像データを取得する第2データ取得処理部と、
RGB色空間に基づく前記第1撮像データの輝度、及び、HSV色空間に基づく前記第2撮像データの彩度を用いた演算により、前記加工面の欠陥領域を検出する欠陥領域検出処理部とを備えることを特徴とする外観検査装置。
【請求項8】
前記欠陥領域検出処理部は、RGB色空間に基づく前記第1撮像データの輝度を第1閾値と比較することにより、前記第1撮像データを二値化し、二値化された前記第1撮像データに基づいて前記加工面の欠陥領域を検出することを特徴とする請求項7に記載の外観検査装置。
【請求項9】
前記欠陥領域検出処理部は、HSV色空間に基づく前記第2撮像データの彩度を第2閾値と比較することにより、前記第2撮像データを二値化し、二値化された前記第2撮像データに基づいて前記加工面の欠陥領域を検出することを特徴とする請求項7又は8に記載の外観検査装置。
【請求項10】
前記欠陥領域検出処理部は、RGB色空間に基づく前記第1撮像データの輝度を用いた演算により抽出される領域と、HSV色空間に基づく前記第2撮像データの彩度を用いた演算により抽出される領域との差分領域に基づいて、前記加工面の欠陥領域を検出することを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の外観検査装置。
【請求項11】
前記半導体基板は、シリコン基板であり、
前記電子部品は、前記シリコン基板を分割させた太陽電池セルであることを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の外観検査装置。
【請求項12】
前記欠陥領域検出処理部は、分割させた前記シリコン基板の分割面においてチッピングが生じている領域を、前記金属薄膜が剥がれている領域と判別し、欠陥領域として検出することを特徴とする請求項11に記載の外観検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の外観検査方法及び外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、裏面にアルミ膜が成膜された太陽電池セルを半分に分割し、モジュール化する場合などには、分割された太陽電池セル(電子部品)の外観検査を行うことがある。このような電子部品の外観検査を作業者が目視で行うことは、作業負担が大きい上、誤検出も生じやすい。そこで、電子部品の外観検査を光学的に自動で行う種々の検査方法が提案されている(例えば、下記特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−151693号公報
【特許文献2】特開平7−167794号公報
【特許文献3】特開2002−122555号公報
【特許文献4】特表2010−503862号公報
【特許文献5】特開2015−22192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子部品の加工面にチッピング(欠け)が生じた場合、そのチッピングが生じた領域は滑らかな表面となっているため、照射された光を正反射させるという特性がある。一方で、電子部品の加工面自体には微小な凹凸があるため、チッピングが生じていない正常な加工面に照射された光は拡散反射する。
【0005】
そこで、検査対象となる電子部品の加工面に対して偏光を照射し、偏光フィルタを介して加工面からの反射光をカメラで受光することにより、得られた撮像データに基づいてチッピングを検出する方法が知られている。すなわち、チッピングが生じた領域で正反射した偏光を偏光フィルタで遮ることにより、その領域だけが黒色領域となって現れた撮像データを得ることができる。したがって、撮像データから黒色領域を抽出することにより、チッピングを検出することができる。
【0006】
電子部品の加工面は、チッピング以外にも、単に金属薄膜が部分的に剥がれただけの状態(膜剥がれ)となる場合がある。チッピングは、金属薄膜だけでなく半導体基板にまで欠けが生じた状態であるため、チッピングが生じた電子部品は不良品として扱われる。これに対して、膜剥がれは、金属薄膜が部分的に剥がれただけであるため、良品として扱われている。したがって、電子部品の外観検査の際には、チッピングと膜剥がれの判別を行う必要がある。
【0007】
しかしながら、上述のような偏光を用いた検出方法では、チッピングが生じた領域だけでなく、膜剥がれが生じた領域も黒色領域となって撮像データに現れる。そのため、チッピングが生じた領域と膜剥がれが生じた領域とが、撮像データ中で区別できないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電子部品の加工面において、チッピングが生じた領域と膜剥がれが生じた領域とを判別することができる電子部品の外観検査方法及び外観検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る電子部品の外観検査方法は、半導体基板の表面の少なくとも一部を金属薄膜で覆った加工面を有する電子部品の外観検査方法であって、第1データ取得工程と、第2データ取得工程と、欠陥領域検出工程とを含む。前記第1データ取得工程では、前記加工面に対して第1照射部により偏光を照射し、偏光フィルタを介して前記加工面からの反射光を第1撮像部で受光することにより、第1撮像データを取得する。前記第2データ取得工程では、前記加工面に対して第2照射部により偏光していない可視光を照射し、前記加工面からの反射光を第2撮像部で受光することにより、第2撮像データを取得する。前記欠陥領域検出工程では、RGB色空間に基づく前記第1撮像データの輝度、及び、HSV色空間に基づく前記第2撮像データの彩度を用いた演算により、前記加工面の欠陥領域を検出する。
【0010】
(2)本発明に係る電子部品の外観検査装置は、半導体基板の表面の少なくとも一部を金属薄膜で覆った加工面を有する電子部品の外観検査装置であって、第1照射部と、第2照射部と、第1撮像部と、第2撮像部と、第1データ取得処理部と、第2データ取得処理部と、欠陥領域検出処理部とを備える。前記第1照射部は、前記加工面に対して偏光を照射する。前記第2照射部は、前記加工面に対して偏光していない可視光を照射する。前記第1撮像部は、前記第1照射部により偏光が照射された前記加工面からの反射光を、偏光フィルタを介して受光する。前記第2撮像部は、前記第2照射部により可視光が照射された前記加工面からの反射光を受光する。前記第1データ取得処理部は、前記第1撮像部から第1撮像データを取得する。前記第2データ取得処理部は、前記第2撮像部から第2撮像データを取得する。前記欠陥領域検出処理部は、RGB色空間に基づく前記第1撮像データの輝度、及び、HSV色空間に基づく前記第2撮像データの彩度を用いた演算により、前記加工面の欠陥領域を検出する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、RGB色空間に基づく第1撮像データの輝度に基づいて、チッピングが生じた領域及び膜剥がれが生じた領域を抽出し、さらにHSV色空間に基づく第2撮像データの彩度に基づいて、膜剥がれが生じた領域のみを抽出することができる。したがって、これらの抽出された領域の差分を求めることにより、チッピングが生じた領域のみを判別することができる。その結果、電子部品の加工面において、チッピングが生じた領域と膜剥がれが生じた領域とを判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る外観検査装置の構成例を示した概略図である。
【
図2A】検査対象における反射の態様について説明するための概略断面図であり、検査対象の加工面が正常な状態を示している。
【
図2B】検査対象における反射の態様について説明するための概略断面図であり、検査対象の加工面にチッピングが生じた状態を示している。
【
図2C】検査対象における反射の態様について説明するための概略断面図であり、検査対象の加工面に膜剥がれが生じた状態を示している。
【
図3】外観検査装置の電気的構成の一例を示したブロック図である。
【
図4】撮像データを取得する際のデータ処理装置による処理の一例を示したフローチャートである。
【
図5】撮像データを取得する際のデータ処理装置による処理の一例を示したフローチャートである。
【
図6】第1撮像データに対して第1画像処理を行う際のデータ処理装置による処理の一例を示したフローチャートである。
【
図7】第2撮像データに対して第2画像処理を行う際のデータ処理装置による処理の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.外観検査装置の全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る外観検査装置100の構成例を示した概略図である。この外観検査装置100は、太陽電池セルなどの電子部品を検査対象1として、その検査対象1の外観を検査することにより、欠陥を検出するための装置である。
【0014】
検査対象1は、半導体基板の表面の少なくとも一部を金属薄膜で覆った加工面11を有する。金属薄膜は、例えばアルミ膜からなり、その表面が白色に近い加工面11を形成している。金属薄膜の材料は、アルミに限らず、鉄などの他の金属でもよいが、その表面が白色に近い(灰色も含む。)加工面11を形成している場合に、本実施形態に係る外観検査装置100を好適に用いることができる。
【0015】
この例では、2枚に分割された検査対象1としての太陽電池セルが、その加工面11を上に向けた状態で搬送ステージ101に載置される。そして、搬送機構102の駆動により搬送ステージ101が搬送方向Lに沿って移動する過程で、検査対象1に対する外観検査が行われる。搬送機構102には、ロータリエンコーダ103が備えられており、モータ(図示せず)の駆動によって移動する搬送ステージ101の位置をロータリエンコーダ103からの出力信号により検知することができる。
【0016】
外観検査装置100は、搬送ステージ101の上方に、搬送方向Lに沿って第1検査部110及び第2検査部120を備えている。これらの第1検査部110及び第2検査部120は、それぞれ異なる方法で検査対象1の加工面11を検査する。具体的には、第1検査部110は、偏光を検査対象1の加工面11に照射することにより、偏光照明を用いて加工面11の撮像を行う。一方、第2検査部120は、偏光していない可視光を検査対象1の加工面11に照射することにより、明視野照明又は暗視野照明を用いて加工面11の撮像を行う。
【0017】
第1検査部110は、第1照射部111及び第1撮像部112を備えている。この例では、搬送方向Lに一定間隔を隔てて配置された1対の第1照射部111が設けられており、これらの第1照射部111から検査対象1の加工面11に対して同時に光が照射される。第1撮像部112は、加工面11からの反射光を1対の第1照射部111の間を通して受光することにより、加工面11の撮像を行う。ただし、第1照射部111は、1対(2つ)に限らず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0018】
各第1照射部111は、光源113と、光源113からの光を透過させて偏光を生じさせる偏光フィルタ114とを備えている。光源113は、例えば白色LEDなどのLED照明により構成される。光源113からの光が偏光フィルタ114を透過して検査対象1の加工面11に照射されることにより、各第1照射部111から加工面11に対して偏光が照射されるようになっている。
【0019】
第1撮像部112は、各第1照射部111により偏光が照射された加工面11からの反射光が透過する偏光フィルタ115と、偏光フィルタ115を透過した光を受光するカメラ116とを備えている。偏光フィルタ115は、加工面11において正反射した偏光を遮断し、拡散反射した偏光を透過させる。したがって、カメラ116により撮像される画像は、加工面11において拡散反射した光に基づく画像となり、正反射した領域は黒色領域として現れる。カメラ116は、例えばR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の各色に対応する3つのCCDセンサを備えている。
【0020】
第2検査部120は、第1検査部110に対して搬送方向Lの下流側に設けられており、第2照射部121及び第2撮像部122を備えている。この例では、搬送方向Lに一定間隔を隔てて配置された1対の第2照射部121が設けられており、これらの第2照射部121から検査対象1の加工面11に対して同時に光が照射される。第2撮像部122は、加工面11からの反射光を1対の第2照射部121の間を通して受光することにより、加工面11の撮像を行う。ただし、第2照射部121は、1対(2つ)に限らず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0021】
各第2照射部121は、検査対象1の加工面11に対して、偏光していない可視光を照射する光源により構成されている。当該光源は、例えば白色LEDにより構成されており、面発光によって可視光を均一に照射するドーム照明からなる。第2撮像部122は、各第2照射部121により可視光が照射された加工面11からの反射光を受光するカメラにより構成されている。第2撮像部122は、例えばR、G、Bの各色に対応する3つのCCDセンサを備えている。第2撮像部122により撮像される加工面11の画像は、加工面11上の任意の領域で特定波長の光が吸収された場合などに、その領域に青、紫、赤などの色成分が現れる。
【0022】
2.検査対象における反射の態様
図2A〜
図2Cは、検査対象1における反射の態様について説明するための概略断面図である。検査対象1は、例えば単結晶シリコン又は多結晶シリコンにより形成されたシリコン基板からなる半導体基板12の表面に、中間膜13を介して金属薄膜14が成膜され、当該金属薄膜14の表面が加工面11を構成している。中間膜13は、例えばハードコート層などの任意の層からなり、特定波長の光を吸収する特性を有している。
【0023】
図2Aは、検査対象1の加工面11にチッピング及び膜剥がれが生じていない正常な状態を示している。このような正常な状態における検査対象1の加工面11の表面には、金属薄膜14の微小な凹凸があるため、加工面11に照射された光は、
図2Aに示すように拡散反射する。
【0024】
図2Bは、検査対象1の加工面11にチッピングが生じた状態を示している。チッピングは、半導体基板12にまで達する欠けが検査対象1の加工面11に生じた状態であり、チッピングが生じた検査対象1は不良品として扱われる。チッピングにより加工面11に露出した半導体基板12の表面は、微小な凹凸を有する加工面11とは異なり滑らかな表面となる。そのため、チッピングにより露出した半導体基板12の表面に照射される光は、
図2Bに示すように正反射する。
【0025】
図2Cは、検査対象1の加工面11に膜剥がれが生じた状態を示している。膜剥がれは、加工面11を形成している金属薄膜14が部分的に剥がれただけの状態であり、膜剥がれが生じた検査対象1は良品として扱われる。検査対象1の加工面11における膜剥がれが生じた部分では、中間膜13が露出するが、チッピングのように半導体基板12の表面は露出しない。そのため、膜剥がれにより露出した中間膜13の表面における反射光は、
図2Cに示すように完全な正反射とはならないが、主に正反射した光となる。
【0026】
このように、検査対象1の加工面11で反射する光は、チッピング及び膜剥がれが生じていない状態(
図2Aの状態)と、チッピングが生じた状態(
図2Bの状態)と、膜剥がれが生じた状態(
図2Cの状態)とで、その反射の態様が異なる。本実施形態に係る外観検査装置100は、このような反射の態様が異なることを利用することにより、分割させた半導体基板12の分割面において、チッピングが生じた領域(チッピング領域)と膜剥がれが生じた領域(膜剥がれ領域)とを判別することができる。
【0027】
具体的には、第1撮像部112により撮像される画像において、正常な加工面11では拡散反射した光に基づく画像となるが、チッピング領域及び膜剥がれ領域では正反射した光に基づく黒色領域となる。この黒色領域のうち膜剥がれ領域については、第2撮像部112により撮像される画像において色成分が現れるため、チッピング領域と膜剥がれ領域とを判別することができる。
【0028】
3.外観検査装置の電気的構成
図3は、外観検査装置100の電気的構成の一例を示したブロック図である。外観検査装置100は、上述の第1撮像部112、第2撮像部122及びロータリエンコーダ103の他に、データ処理装置200、搬送制御部300、照明制御部400及び表示部500などを備えている。
【0029】
データ処理装置200は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む構成であり、第1撮像部112及び第2撮像部122から入力される撮像データに基づいてデータ処理を行う。データ処理装置200は、CPUがプログラムを実行することにより、データ取得処理部201、画像処理部202及び表示処理部203などとして機能する。
【0030】
搬送制御部300は、搬送機構102におけるモータ等の駆動源(不図示)を制御することにより、搬送ステージ101を搬送方向Lに沿って移動させる。照明制御部400は、第1照射部111及び第2照射部121の動作を制御する。表示部500は、例えば液晶表示器により構成されており、データ処理装置200によるデータ処理の結果などを表示画面に表示させる。
【0031】
データ取得処理部201は、第1撮像部112及び第2撮像部122から撮像データを取得する処理を行う。データ取得処理部201には、第1撮像部112から第1撮像データを取得する第1データ取得処理部211と、第2撮像部122から第2撮像データを取得する第2データ取得処理部212とが含まれる。データ取得処理部201は、ロータリエンコーダ103及び搬送制御部300からの入力信号に基づくタイミングで、撮像データの取得を開始又は終了させる。また、照明制御部400は、データ取得処理部201が撮像データを取得するタイミングに同期させて、第1照射部111及び第2照射部121の動作を制御する。
【0032】
画像処理部202は、データ取得処理部201が取得した撮像データに対する画像処理を行う。画像処理部202には、検査対象1の加工面11における欠陥が生じている領域(欠陥領域)を検出する欠陥領域検出処理部221が含まれる。なお、本実施形態において、欠陥領域とはチッピング領域を意味しており、膜剥がれ領域は欠陥領域には含まれない。
【0033】
表示処理部203は、表示部500の表示画面に対する表示を制御する処理を行う。検査対象1の外観検査を行ったときには、表示処理部203は、欠陥領域検出処理部221による欠陥領域の検出結果などを表示部500に表示させる。
【0034】
4.撮像データの取得処理
図4及び
図5は、撮像データを取得する際のデータ処理装置200による処理の一例を示したフローチャートである。撮像データを取得する際には、まず、第1照射部111が点灯され(ステップS101)、搬送機構102による搬送ステージ101の搬送が開始される(ステップS102)。
【0035】
その後、搬送ステージ101上の検査対象1が、第1検査部110による検査の開始位置である第1撮像開始位置に到達すれば(ステップS103でYes)、第1撮像部112により撮像データの取り込みが開始される(ステップS104)。そして、搬送ステージ101がさらに搬送され、搬送ステージ101上の検査対象1が、第1検査部110による検査の終了位置である第1撮像終了位置に到達すれば(ステップS105でYes)、第1撮像部112による撮像データの取り込みが終了する(ステップS106)。
【0036】
第1撮像部112による撮像データの取り込みが完了したときには、第1照射部111が消灯されるとともに(ステップS107)、取り込まれた撮像データに対する画像処理部202による画像処理が行われる(ステップS108:第1画像処理)。
【0037】
第1照射部111が消灯されると、次に、
図5に示すように、第2照射部121が点灯される(ステップS201)。その後、搬送ステージ101上の検査対象1が、第2検査部120による検査の開始位置である第2撮像開始位置に到達すれば(ステップS202でYes)、第2撮像部122により撮像データの取り込みが開始される(ステップS203)。そして、搬送ステージ101がさらに搬送され、搬送ステージ101上の検査対象1が、第2検査部120による検査の終了位置である第2撮像終了位置に到達すれば(ステップS204でYes)、第2撮像部122による撮像データの取り込みが終了する(ステップS205)。
【0038】
第2撮像部122による撮像データの取り込みが完了したときには、第2照射部121が消灯されるとともに(ステップS206)、取り込まれた撮像データに対する画像処理部202による画像処理が行われる(ステップS207:第2画像処理)。
【0039】
5.第1撮像データに対する画像処理
図6は、第1撮像データに対して第1画像処理を行う際のデータ処理装置200による処理の一例を示したフローチャートである。第1画像処理では、まず、第1撮像部112により取り込まれた撮像データが、第1撮像データとして取得される(ステップS301:第1データ取得工程)。このとき、第1撮像部112により取り込まれたカラー画像に対して、例えばR、G、Bの各値からなるRGB画像(RGB色空間に基づく第1撮像データ)に変換する処理が行われる。
【0040】
その後、RGB色空間に基づく第1撮像データのうち、分割させた半導体基板12の分割面の周辺領域、すなわちチッピングが生じ得る領域が検査領域として絞り込まれる。(ステップS302)。そして、必要に応じて、その検査領域に対して平滑化処理が行われる(ステップS303)。平滑化処理は、第1撮像データに含まれるノイズ成分を除去するための処理である。
【0041】
平滑化処理が行われた第1撮像データには、二値化処理が行われる(ステップS304)。この二値化処理では、RGB色空間に基づく第1撮像データの輝度を第1閾値と比較する演算が行われることにより、第1撮像データが二値化される。具体的には、輝度が第1閾値以上の画素は白色とされ、第1閾値未満の画素は黒色とされることにより、第1撮像データが二値化される。上記輝度は、R、G、Bの各値に係数を乗算し、互いに加算することにより得られる値であり、例えば下記式(1)で表される。
Y=0.299R+0.587G+0.144B ・・・(1)
【0042】
二値化された第1撮像データには、モフォロジー処理が行われる(ステップS305)。モフォロジー処理における膨張処理は、互いに離間している黒色の画素について、それらの画素の周辺画素を黒色に変換して、黒色の画素同士を結合させ、膨張された黒色領域を生成する。続く、モフォロジー処理における収縮処理は、膨張処理により結合した領域を除く領域を膨張処理前の領域サイズに戻すための処理である。このようなクロージング(膨脹処理→収縮処理)を行うことによって生成された黒色領域は、欠陥領域(チッピング領域)である可能性があるため、そのサイズが計測された後(ステップS306)、所定サイズ以上であれば(ステップS307でYes)、欠陥領域の候補領域に決定される(ステップS308)。なお、クロージングに限らず、二値化データに応じて、オープニング(収縮処理→膨脹処理)を行って黒色領域が生成されても構わない。
【0043】
6.第2撮像データに対する画像処理
図7は、第2撮像データに対して第2画像処理を行う際のデータ処理装置200による処理の一例を示したフローチャートである。第2画像処理では、まず、第2撮像部122により取り込まれた撮像データが、第2撮像データとして取得される(ステップS401:第2データ取得工程)。このとき、第2撮像部122により取り込まれたカラー画像に対して、例えばRGB画像に変換する処理が行われる。そして、さらにRGB画像に対して、非線形変換により、H(色相)、S(彩度)、V(明度)の各値からなるHSV画像(HSV色空間に基づく第2撮像データ)に変換する処理が行われる(ステップS402)。
【0044】
その後、HSV色空間に基づく第2撮像データから検査領域が絞り込まれ(ステップS403)、その検査領域における候補領域の位置合わせ処理が行われる(ステップS404)。これにより、第1撮像データにおいて候補領域に決定された領域が、第2撮像データにおいて対応付けられる。このとき、候補領域に対して膨張処理が行われる(ステップS405)。第1撮像データと第2撮像データは、それぞれ異なる撮像部から取得されるため、画像サイズに若干のずれが生じる場合があるが、このずれを膨張処理により修正することができる。
【0045】
膨張処理が行われた第2撮像データには、二値化処理が行われる(ステップS406)。この二値化処理では、候補領域のみについて、HSV色空間に基づく第2撮像データの彩度を第2閾値と比較する演算が行われることにより、第2撮像データが二値化される。具体的には、彩度が第2閾値以上の画素は白色とされ、第2閾値未満の画素は黒色とされることにより、第2撮像データが二値化される。
【0046】
このような彩度を用いた二値化処理により、膜剥がれ領域を抽出することができる(ステップS407)。すなわち、彩度を用いた二値化処理により、色成分を有する膜剥がれ領域は白色領域とされる一方で、チッピング領域は黒色領域とされる。したがって、彩度を用いた二値化処理によれば、白色領域からなる膜剥がれ領域を抽出することができる。
【0047】
抽出された膜剥がれ領域は、モフォロジー処理が行われることにより(ステップS408)、候補領域と対応するサイズに修正される。そして、候補領域と膜剥がれ領域の差分領域が取得され(ステップS409)、その差分領域が所定サイズ以上であれば(ステップS410でYes)、欠陥領域(チッピング領域)として検出される(ステップS411:欠陥領域検出工程)。すなわち、候補領域はチッピング領域又は膜剥がれ領域である可能性があるため、抽出された膜剥がれ領域を候補領域から差し引く演算が行われることにより、残りの候補領域をチッピング領域として検出することができる。
【0048】
7.作用効果
本実施形態では、RGB色空間に基づく第1撮像データの輝度に基づいて、チッピング領域及び膜剥がれ領域を候補領域として抽出し(ステップS308)、さらにHSV色空間に基づく第2撮像データの彩度に基づいて、膜剥がれ領域のみを抽出することができる(ステップS407)。したがって、これらの抽出された領域の差分を求めることにより、チッピングが生じた領域のみを判別することができる(ステップS411)。その結果、検査対象1の加工面11において、チッピング領域と膜剥がれ領域とを判別することができる。
【0049】
特に、本実施形態では、RGB色空間に基づく第1撮像データの輝度を第1閾値と比較することにより、第1撮像データを二値化して、チッピング領域及び膜剥がれ領域を候補領域として容易に抽出することができる。また、HSV色空間に基づく第2撮像データの彩度を第2閾値と比較することにより、第2撮像データを二値化して、候補領域から膜剥がれ領域のみを容易に抽出することができる。そして、抽出されたそれぞれの領域の差分領域に基づいて、チッピング領域を欠陥領域として容易に検出することができる。
【0050】
8.変形例
以上の実施形態では、検査対象1が、太陽電池セルである場合について説明した。しかし、検査対象1は、半導体基板の表面の少なくとも一部を金属薄膜で覆った加工面11を有する電子部品であれば、太陽電池セルに限らず、他の電子部品であってもよい。
【0051】
また、RGB色空間に基づく第1撮像データの輝度、及び、HSV色空間に基づく第2撮像データの彩度を用いた演算により、検査対象1の加工面11の欠陥領域を検出するような構成であれば、二値化処理を用いた演算に限られるものではない。また、検出される欠陥領域は、チッピング領域に限らず、他の領域であってもよい。
【0052】
外観検査装置100は、検査対象1を搬送しながら検査するような構成に限らず、静止状態の検査対象1を撮像するような構成であってもよい。この場合、第1撮像部112と第2撮像部122を1つの撮像部で共用することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 検査対象
11 加工面
12 半導体基板
13 中間膜
14 金属薄膜
100 外観検査装置
101 搬送ステージ
102 搬送機構
103 ロータリエンコーダ
110 第1検査部
111 第1照射部
112 第1撮像部
113 光源
114 偏光フィルタ
115 偏光フィルタ
116 カメラ
120 第2検査部
121 第2照射部
122 第2撮像部
200 データ処理装置
201 データ取得処理部
202 画像処理部
203 表示処理部
211 第1データ取得処理部
212 第2データ取得処理部
221 欠陥領域検出処理部
300 搬送制御部
400 照明制御部
500 表示部