特許第6861093号(P6861093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861093
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】加工装置及びそれを用いた加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/04 20060101AFI20210412BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20210412BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20210412BHJP
【FI】
   B24B7/04 Z
   H01L21/68 A
   B24B41/06 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-102890(P2017-102890)
(22)【出願日】2017年5月24日
(65)【公開番号】特開2018-196923(P2018-196923A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】391003668
【氏名又は名称】トーヨーエイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 省二
(72)【発明者】
【氏名】小浦 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】國重 正博
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−020949(JP,A)
【文献】 特開2001−326201(JP,A)
【文献】 特開平4−053601(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/104250(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/04
B24B 41/06
B23Q 7/00、7/02
H01L 21/677
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準面と成形面とを備えるワークを保持して割出し回転する割出し盤と、上記ワークを加工する加工部とを備えた加工装置において、
上記加工部は、上記割出し盤を間に挟んで並び設けられた基準面加工部と成形面加工部とを備え、
上記割出し盤は、上記基準面加工部及び上記成形面加工部の並び方向と平行する第1方向及び該第1方向と直角に交差する第2方向にて、上記ワークを脱着可能に保持する保持部を、周方向に等間隔に4つ備え、
上記加工装置は、上記第1方向にて上記保持部に保持された2つの上記ワークそれぞれを、上記基準面加工部及び上記成形面加工部に移載する移載機構と、上記第2方向にて一方の上記保持部に保持された上記ワークを上記保持部に対して搬出入する搬出入機構と、上記第2方向にて他方の上記保持部に保持された上記ワークを、上記基準面加工部で加工された姿勢から上記成形面加工部で加工される姿勢に変更させる姿勢変更機構と、をさらに備える
ことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加工装置において、
上記基準面加工部で加工される上記ワークを支持し、上記基準面加工部と上記割出し盤との間で移動可能な第1ワークテーブルと、
上記成形面加工部で加工される上記ワークを支持し、上記成形面加工部と上記割出し盤との間で移動可能な第2ワークテーブルと、をさらに備え、
上記第1ワークテーブル及び上記第2ワークテーブルは、上記移載機構を兼ねていることを特徴とする加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の加工装置において、
上記割出し盤は、回転中心軸を備え、
上記保持部はそれぞれ、上記割出し盤の外周から上記回転中心軸に向けて形成され、上記ワークを脱着可能に保持する切欠きを備え、
上記移載機構は、上記切欠きに保持された上記ワークを上記割出し盤の内周側から外周側にスライドさせて、上記ワークを上記保持部から上記基準面加工部及び上記成形面加工部に移載するようになっている
ことを特徴とする加工装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つの加工装置を用いてワークを加工する加工装置を用いた加工方法において、
上記第1方向にて上記保持部に、上記基準面加工済みでその姿勢のままの上記ワークと、上記成形面加工済みの上記ワークとをそれぞれ保持させ、上記第2方向にて上記保持部に、上記基準面加工済みで上記成形面を加工する姿勢の上記ワークと、未加工の上記ワークをそれぞれ保持させた状態で、上記割出し盤を90°回転させる第1ステップと、
上記第1ステップに続いて、上記基準面加工済みで上記成形面を加工する姿勢のワークを上記成形面加工部に移載するとともに、未加工で上記基準面を加工する姿勢の上記ワークを上記基準面加工部に移載して、それぞれの上記ワークの加工を行う第2ステップと、
上記第2ステップで上記ワークが加工されている間に、上記第2方向にて上記保持部に保持された上記基準面加工済みでその姿勢のままの上記ワークを、上記成形面加工部で加工する姿勢に変更させる第3ステップと、
上記第2ステップで上記ワークが加工されている間に、上記第2方向にて上記保持部に保持された上記成形面加工済みの上記ワークを、上記搬出入機構によって搬出するとともに未加工で上記基準面を加工する姿勢のワークを搬入する第4ステップと、
上記第2ステップにおいて加工中であった2つの上記ワークの加工が完了すると、これらの該ワークを上記移載機構によって上記第1方向にある上記保持部にそれぞれ移載する第5ステップと、を備える
ことを特徴とする加工装置を用いた加工方法。
【請求項5】
請求項4に記載の加工方法において、
上記第5ステップの後で上記第1ステップに戻って、該第1ステップから該第5ステップまでが繰り返されることを特徴とする加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準面と成形面とを備えるワークを保持して割出し回転する割出し盤と、上記ワークを加工する加工部とを備えた加工装置及びこれを用いた加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワークを加工する加工部及び加工部に対してワークを搬送する割出し盤を備えた加工装置として、割出し盤を所定位置に間欠回転させて、加工部でワークを加工し、再度割出し盤を間欠回転させて、加工済みワークを搬出するものが知られている。
【0003】
例えば、割出し盤に3つの保持部を等間隔に設けてワークを搬送及び加工するものの例として、支持台(割出し盤)上に120°間隔で3つの回転テーブル(ワーク保持部)を設けたものが開示されている。回転テーブルにワークを保持させて、支持台を間欠回転させ、ワークの供給・取出ステーション、ワークの第1研磨ステーション、及びワークの第2研磨ステーションに順送りするようになっている。第1及び第2の研磨ステーションでは、回転テーブル上で、ワークに上方から研磨部材を押し付けて研磨するようになっている(特許文献1)。
【0004】
また、割出し盤に4つのワーク保持部を等間隔に設けて搬送及び加工するものの例として、基板(ワーク)のローディング/アンローディングステージ(搬出入位置)と粗研削ステージ、中仕上研削ステージ及び精密研削ステージをインデックス回転テーブル(割出し盤)に同心円上に配置し、基板を保持するインデックス回転テーブルを間欠回転させ、基板を各ステージに順送りして、インデックス回転テーブル上で加工するものが開示されている(特許文献2)。
【0005】
このように、特許文献1や2によると、ワークの搬出入や加工を1台の加工装置で行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−146747号公報
【特許文献2】特開2007−044786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般的に、各種の成形加工を行う前段階で、成形加工を行う装置とは別の装置で基準面を加工しておくことが行われている。
【0008】
そうしたところ、上記特許文献1及び2では、ワークの搬出入や加工は1台の加工装置で行うことができるものの、基準面の加工については考慮されておらず、別の装置を要するものと推測される。そうすると、加工スペースの大型化、制御の複雑化やサイクルタイムが長くなることが懸念される。
【0009】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複雑な構成を要さずに、基準面及び成形面の加工を1台で行うことができる加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明では、加工装置に、ワークの姿勢を変更させる機構を設けるようにした。
【0011】
具体的には、第1の発明では、基準面と成形面とを備えるワークを保持して割出し回転する割出し盤と、上記ワークを加工する加工部とを備えた加工装置を前提とする。そして、上記加工部は、上記割出し盤を間に挟んで並び設けられた基準面加工部と成形面加工部とを備え、上記割出し盤は、上記基準面加工部及び上記成形面加工部の並び方向と平行する第1方向及び該第1方向と直角に交差する第2方向にて、上記ワークを脱着可能に保持する保持部を、周方向に等間隔に4つ備え、上記加工装置は、上記第1方向にて上記保持部に保持された2つの上記ワークそれぞれを、上記基準面加工部及び上記成形面加工部に移載する移載機構と、上記第2方向にて一方の上記保持部に保持された上記ワークを上記保持部に対して搬出入する搬出入機構と、上記第2方向にて他方の上記保持部に保持された上記ワークを、上記基準面加工部で加工された姿勢から上記成形面加工部で加工される姿勢に変更させる姿勢変更機構と、をさらに備える。
【0012】
この第1の発明では、姿勢変更機構を設けることで、基準面加工部と成形面加工部との間の割出し盤上で、基準面加工部で加工された姿勢から成形面加工部で成形加工される姿勢に変更することができる。なお、本発明において、移載機構で「基準面加工部及び成形面加工部に移載する」とは、「基準面加工部及び成形面加工部で加工される位置に移載する」ことをいうものとする。
【0013】
第2の発明では、第1の発明において、上記基準面加工部で加工される上記ワークを支持し、上記基準面加工部と上記割出し盤との間で移動可能な第1ワークテーブルと、上記成形面加工部で加工される上記ワークを支持し、上記成形面加工部と上記割出し盤との間で移動可能な第2ワークテーブルと、をさらに備え、上記第1ワークテーブル及び上記第2ワークテーブルは、上記移載機構を兼ねている。
【0014】
この第2の発明では、第1ワークテーブル及び第2ワークテーブルは、ワークを保持部からそれぞれ基準面加工及び成形面加工に移載するように移動することができるとともに、基準面加工部及び該成形面加工部で加工される状態のワークを支持できる。なお、本発明において、「上記基準面加工部と上記割出し盤との間で移動可能」「上記成形面加工部と上記割出し盤との間で移動可能」とは、それぞれ、「基準面加工部で加工される位置と上記割出し盤との間で移動可能」「成形面加工部で加工される位置と上記割出し盤との間で移動可能」であることをいうものとする。
【0015】
第3の発明では、第1または第2の発明において、上記保持部はそれぞれ、上記割出し盤の外周から上記回転中心軸に向けて形成され、上記ワークを脱着可能に保持する切欠きを備え、上記移載機構は、上記切欠きに保持された上記ワークを上記割出し盤の内周側から外周側にスライドさせて、上記ワークを上記保持部から上記基準面加工部及び上記成形面加工部に移載するようになっている。
【0016】
この第3の発明では、移載機構により、切欠きに保持されたワークが割出し盤の内周側から外周側にスライドして保持部から加工部に移載されるため、直線的な動きでワークを保持部から外すことができる。
【0017】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明を用いてワークを加工する加工装置を用いた加工方法において、上記第1方向にて上記保持部に、上記基準面加工済みでその姿勢のままの上記ワークと、上記成形面加工済みの上記ワークとをそれぞれ保持させ、上記第2方向にて上記保持部に、上記基準面加工済みで上記成形面を加工する姿勢の上記ワークと、未加工の上記ワークをそれぞれ保持させた状態で、上記割出し盤を90°回転させる第1ステップと、上記第1ステップに続いて、上記基準面加工済みで上記成形面を加工する姿勢のワークを上記成形面加工部に移載するとともに、未加工で上記基準面を加工する姿勢の上記ワークを上記基準面加工部に移載して、それぞれの上記ワークの加工を行う第2ステップと、上記第2ステップで上記ワークが加工されている間に、上記第2方向にて上記保持部に保持された上記基準面加工済みでその姿勢のままの上記ワークを、上記成形面加工部で加工する姿勢に変更させる第3ステップと、上記第2ステップで上記ワークが加工されている間に、上記第2方向にて上記保持部に保持された上記成形面加工済みの上記ワークを、上記搬出入機構によって搬出するとともに未加工で上記基準面を加工する姿勢のワークを搬入する第4ステップと、上記第2ステップにおいて加工中であった2つの上記ワークの加工が完了すると、これらの該ワークを上記移載機構によって上記第1方向にある上記保持部にそれぞれ移載する第5ステップと、を備える。
【0018】
この第4の発明では、上記基準面加工部及び上記成形面加工部においてワークが加工されている間に、第2方向にて一方の保持部に保持された成形面加工済みのワークを割出し盤から搬出してから未加工のワークを搬入し、第2方向にて他方の保持部に保持された基準面加工済みでその姿勢のままのワークを、成形面を加工する姿勢に変更することができるため、2つのワークを並行して加工中に、加工済みワークの搬出及び未加工ワークの搬入と、ワークの姿勢変更とを行うことができる。
【0019】
第5の発明では、第4の発明において、上記第5ステップの後で上記第1ステップに戻って、該第1ステップから該第5ステップまでが繰り返される。
【0020】
この第5の発明では、第1ステップから第5ステップまでが繰り返されることで、加工済みのワークを搬出するとともに未加工のワークを搬入して加工することが順次行われる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、第1の発明によると、ワークの姿勢を変更させることによって、基準面及び成形面の加工を1台の加工装置で行うことができるため、複数台で基準面及び成形面の加工を行う場合に比して省スペースとなり、制御を簡素化することができる。
【0022】
第2の発明によると、移載機構を別に設けることを要さず、加工装置全体を小型化することができる。
【0023】
第3の発明によると、移載機構が複雑な動きを要しないため、短時間でワークを移動させることができる。
【0024】
第4の発明によると、ワークの姿勢を変更させることによって、基準面及び成形面の加工を1台の加工装置で行うことができるため、複数台で基準面及び成形面の加工を行う場合に比して省スペースとなり、制御を簡素化することができる。
【0025】
第5の発明によると、搬入及び搬出を繰り返すことで、生産効率良くワークの加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の実施形態に係る加工装置の概略斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る加工装置の一部を示す概略斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る加工装置の割出し盤及び加工部における作業状態を説明するための概略図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る加工装置による加工工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0028】
図1及び図2に示すように、加工装置1は、直方体形状のベッド2と該ベッド2の後方側に立設する直方体形状のコラム3とを備え、ベッド2とコラム3とで側面視略L字形状をなすように構成されている。また、加工装置1は、コラム3に設けられ、ワークWを加工する加工部4と、加工部4に隣接して設けられ、ワークWを保持して割出し回転する円板状の割出し盤5と、をさらに備える。
【0029】
コラム3は、左右方向に並び設けられた第1コラム31と第2コラム35とを備える。加工部4は、第1コラム31に取り付けられた成形面加工部41及び第2コラム35に取り付けられた基準面加工部45を備える。割出し盤5は、基準面加工部45と成形面加工部41との間で加工装置1の幅方向(図1における矢印X方向)中間部分に設けられている。
【0030】
なお、以下においては、コラム3の正面側を加工装置1の前側、背面側を後側、上下をそのまま上側、下側と称し、加工装置1が正面を向いた状態での右側(図1の紙面における左側)及び左側(図1の紙面における右側)をそれぞれ右側、左側と称す。また、左右方向を第1方向X、前後方向を第2方向Y、上下方向を第3方向Zと称す。
【0031】
割出し盤5は、ワークWを脱着可能に保持する4つの保持部52を、回転中心軸51から等距離で且つ周方向に等間隔に備える。各保持部52は、略鉛直方向に延びる回転中心軸51を中心とする割出し盤5の間欠回転によって、基準面加工部45及び成形面加工部41の並び方向と平行する第1方向Xと、第1方向Xと直角に交差する第2方向Yとに2つずつ位置付けられる。
【0032】
加工装置1はさらに、第1方向Xに位置付けられた保持部52にて保持された2つのワークWがそれぞれ、保持部52から脱して基準面加工部45及び成形面加工部41に移載されるようにワークWを動かす移載機構6と、第2方向Yに位置付けられた2つの保持部52のうち一方の保持部52にて保持されたワークWを保持部52に対して搬出入する搬出入機構7と、第2方向Yに位置付けられた2つの保持部52のうち他方の保持部にて保持されたワークWを保持部52に対して、基準面を加工された姿勢から成形面を加工する姿勢に変更する姿勢変更機構8と、を備える。なお、搬出入機構7は、図1及び図2では図示を省略し、図3に模式的に示すものとする。
【0033】
次に、加工装置1の詳細構造を図1及び図2に基づいて説明する。
【0034】
割出し盤5は、その回転中心軸51が、ベッド2の上面側の中央に突設された回転支持台21に支持され、回転中心軸51回りに略水平方向に回転可能となっている。
【0035】
回転支持台21の左側且つ第1コラム31の前側におけるベッド2の上面に、第1ワーク台22が設けられている。第1ワーク台22は、ベッド2に取り付けられた矩形状の第1ワークスライドガイド23と、断面コ字状からなり、第1ワークスライドガイド23に第1方向Xにスライド可能に設けられ、加工されるワークWが載置される第1ワークテーブル24と、第1ワークテーブル24上に自転可能に設置され、加工されるワークWを支持する円筒状の第1主軸25と、を備える。ワークWは、第1主軸25に対して治具10を介在して、例えば磁石等で支持されるようになっている。回転支持台21の右側には、左側と対称に、第2ワーク台26、第2ワークスライドガイド27、移載機構6としての第2ワークテーブル28、及び第2主軸29が設けられている。第1ワークテーブル24及び第2ワークテーブル28は、例えば電動モータ等からなる駆動機構(図示省略)で第1方向Xにスライド移動させるようになっている。
【0036】
詳細は後述するが、第1ワークテーブル24及び第2ワークテーブル28がそれぞれ第1方向Xにスライドして、ワークWを保持部52と成形面加工部41及び基準面加工部45とに移載する移載機構6を兼ねる構成となっている。この構成とすることによって、移載機構を別途設ける必要がなく、加工装置1全体をコンパクトに収めることができる。
【0037】
第1コラム31の前側に第1ツールテーブル33が設けられ、この第1ツールテーブル33を第3方向Z(上下方向)に案内する第1ツールスライドガイド32が、第1コラム31と第1ツールテーブル33との間に設けられている。第1ツールテーブル33の前側に、第1ツールボックス34が取り付けられている。そして、この第1ツールボックス34に、ワークWを加工する成形面加工部41が取り付けられている。第1ツールボックス34及び成形面加工部41は、第1ツールスライドガイド32に案内されて、第1ツールテーブル33と一緒に第3方向Zにスライド移動し、下方に位置付けられた加工対象のワークWに対して接近または離間して加工を施すようになっている。
【0038】
成形面加工部41は、第1ツールボックス34に取り付けられた第1ツール回転体42と、第3方向Zに延びる軸を中心として自転可能に第1ツール回転体42の下部に取り付けられた棒状の第1スピンドル43と、第1スピンドル43の下端に固定された第1砥石44と、を備える。第1ツール回転体42の内部に、第1スピンドル43を自転させるモータ(図示省略)等が設けられている。
【0039】
例えば、ワークWの成形面が内周面である場合には、成形面加工部41の下方に位置付けられたワークWに対して、第1ツールテーブル33を、第1ツールスライドガイド32をガイドとして第3方向Zに下降させることで、成形面加工部41をワークWに接近させる。そして、第1砥石44がワークWの筒内に挿入され、この第1砥石44がワークWの内面に当接しながら第1スピンドル43と一緒に自転するとともに、第1ワークテーブル24上のワークWが第1主軸25と一緒に自転することで、ワークWの内周面が研削されて成形加工されるようになっている。
【0040】
第2コラム35も第1コラム31と同様に、第2ツールスライドガイド36、第2ツールテーブル37、第1ツールボックス38を備え、第1ツールボックス38に基準面加工部45が取り付けられている。そして、基準面加工部45には、第2ツール回転体46、第2スピンドル47、及び第2砥石48が設けられている。例えば、ワークWの基準面が水平面である場合には、基準面加工部45の下方に位置付けられたワークWに対して、第2ツールテーブル37を、第2ツールスライドガイド36をガイドとして第3方向Zに下降させることで、基準面加工部45をワークWに接近させる。そして、第2砥石48がワークWの基準面となる上面に当接しながら第2スピンドル47と一緒に自転するとともに、第2ワークテーブル28上のワークWが第2主軸29と一緒に自転することで、ワークWの基準面が研削加工されるようになっている。
【0041】
割出し盤5に設けられた4つの保持部52はそれぞれ同形状をなしており、割出し盤5の外周から回転中心軸51に向けて略U字状に切欠き52aが形成されている。切欠き53は、割出し盤5の径方向外側から第1方向Xに、第1ワークテーブル24の第1主軸25及び第2ワークテーブル28の第2主軸29が出入り可能な形状となっている。
【0042】
治具10は、ワークWを、割出し盤5、または第1主軸25及び第2主軸29に支持させるためのものであって一般的に使われているものであり、詳細な説明は省略する。
【0043】
図2は、第1ワークテーブル24及び第2ワークテーブル28が、割出し盤5の回転中心軸51、即ち左右方向で中央に近付くように、図1に示す基準面加工部45及び成形面加工部41の下方の位置から、割出し盤5の下方に入り込む位置まで第1方向Xにスライドした状態を示す。
【0044】
図2に示すように、ワークWを保持部52から加工部4に移載する時には、第1ワークテーブル24を割出し盤5の回転中心軸51に近付くように、第1方向Xにスライドさせて、第1ワークテーブル24(移載機構6)の右半分が割出し盤5の下方に入り込み、切欠き53に第1主軸25が遊嵌し、第1主軸25の上面が治具10の下面に相対する状態とする。そして、第1主軸25で、治具10を支持して、保持部52から治具10を動かせるようにする。その後、第1ワークテーブル24を割出し盤5の回転中心軸51から離れるように第1方向Xにスライドさせる。この動作によって、第1主軸25が切欠き53から半径方向外側に抜け出るとともに、治具10及びワークWが割出し盤5から離れる。さらに、第1ワークテーブル24をスライドさせて、ワークWを成形面加工部41で加工できる位置に移動させる。
【0045】
基準面加工部45で加工できる位置に移動する第2ワークテーブル28は、成形面加工部41の第1ワークテーブル24と同期して逆方向に動くようになっており、左右対称な動きであるため説明を省略する。なお、第1主軸25及び第2主軸29は、保持部52に保持されたワークWの下方に入り込めばよいものであり、切欠き53に対して、遊嵌ではなく当接させるようにしてもよい。
【0046】
なお、「成形面加工部41で加工できる位置」とは、図1に示すように、第1ワークテーブル24上の第1主軸25が成形面加工部41の前側にあり、第1主軸25に支持されたワークWが成形面加工部41の下方にある位置をいう。「基準面加工部45で加工できる位置」も同様に、ワークWが基準面加工部45の下方にある位置をいう。
【0047】
保持部52に切欠き53を設けて、割出し盤5と加工部4との間で第1ワークテーブル24及び第2ワークテーブル28を第1方向Xにスライドさせる構成とすることで、ワークWを上方に持ち上げなくても、左右方向の直線的な動きで保持部52と加工部4とに移載できるので、簡単な構成で且つ短時間で移載することができる。
【0048】
搬出入機構7は、図3に模式的に示すように、加工装置1の前部に、割出し盤5の半径方向外側位置で、保持部52のうち第2方向Yに位置付けられた一方の保持部52に隣接してベッド2に取り付けられている。搬出入機構7は、隣接する第2方向Yの保持部52にて保持された加工済みのワークWを同保持部52から搬出したり、第2方向Yの保持部52に未加工のワークWを搬入したりできるように配設されている。
搬出入機構7は、例えば、後述する姿勢変更機構8のロボットハンド81と同様な構造を用いればよいものであり、図1及び図2では図示を省略し、図3にブロックで示すものとする。
【0049】
姿勢変更機構8は、図1に示すように、割出し盤5の半径方向外側位置で、保持部52に隣接して、割出し盤5の後方側に設けられている。なお、実施形態では、姿勢変更機構8は、例えば、ロボットハンド81等を有し、基準面加工部45で基準面を加工した姿勢のままで保持部52にて保持されたワークWを、ロボットハンド81で把持して持ち上げてロボットハンド81を前後軸回りに回転させることで、上下反転させて成形面を加工できる姿勢に変更してから、ロボットハンド81を下降させてワークWを元の保持部52に戻すようになっている。
【0050】
加工装置1はさらに、割出し盤5を時計回り方向に回転させる回転機構(図示省略)を備える。図1に示すように、回転機構を制御する制御部9は、割出し盤5が90°時計回り方向に割出し回転するように制御する回転制御部9aを備える。
【0051】
なお、4つの保持部52を区別して説明するために、図3では、後述する第1ステップS1の状態において、成形面加工部41に隣接する位置にある保持部52を第1保持部52a、第1方向Xにて対向する基準面加工部45に隣接する位置にある保持部52を第3保持部52cとする。また、第2方向Yにて姿勢変更機構8に隣接する位置にある保持部52を第2保持部52b、第2方向Yにて搬出入機構7に隣接する位置にある保持部52を第4保持部52dとする。即ち、順次反時計回り方向に52a、52b、52c、52dとして説明する。また、ワークWを区別して説明するために、図3及び図4では、第1ステップS1において、4つの保持部52a、52b、52c、52dに保持されるワークWをそれぞれワークW1、W2、W3、W4として説明する。
【0052】
詳細な方法は後述するが、第1方向Xにて第2保持部52bに保持されたワークW2及び第4保持部52dに保持されたワークW4が、移載機構6により、それぞれ成形面加工部41及び基準面加工部45に移載されて加工されている状態(図3のS2)で、第2方向Yの一方の保持部52である第1保持部52aに保持されたワークW1を搬出入機構7によって搬出して、この第1保持部52aに未加工のワークW5を搬入する(図3のS3)。それとともに、第2方向Yの他方の保持部52である第3保持部52cに保持されたワークW3を姿勢変更機構8によって反転させて成形面を加工する姿勢に変更する(図3のS4)。このことによって、2つのワークWを基準面加工部45及び成形面加工部41でそれぞれ加工している間に、残りの2つのワークWのうち一方のワークを搬出するとともに新たな未加工のワークを搬入し、且つ他方のワークを反転させることができるので、加工設備全体の省スペース化を図れるとともに効率的に加工できる。また、ワークWの加工中に割出し盤5を回転することによって次の作業工程の準備ができるので、より生産効率を高めることができる。
【0053】
また、本実施形態では、基準面加工部45、割出し盤5、及び成形面加工部41が横並びに配置されており、加工部4よりも前側が開放された空間となっていて、加工装置1の前側からワークWの加工状態が視認できる構成となっている。よって、ワークWの搬出入が行われる加工装置1の前方から、加工部4の砥石交換や点検等のメンテナンスも行うことができるので、作業性に優れる。また、姿勢変更機構8は、ワークWの姿勢を変更するだけであり加工や複雑な作業を要しないため、メンテナンスの頻度が少なくて済むところ、この姿勢変更機構8を、割出し盤5の後側で、且つ両側に設けられた第1コラム31と第2コラム35との間で、作業性が他の部分よりも相対的に劣るスペースに設けるようにしたので、スペースを有効に活用できる。
【0054】
次に、本実施形態の加工工程を図3及び図4に基づいて説明する。なお、図3及び図4では、ワークWの姿勢を区別して説明するために、基準面を加工する姿勢のワークを小文字の「w」とし、成形面を加工する姿勢のワークを大文字の「W」として示す。
【0055】
まず、第1ステップS1として、第1方向Xにて、第1保持部52aに成形面加工部41で成形面加工済みでその姿勢のままのワークW1を保持させるとともに、第3保持部52cに基準面加工部45で基準面加工済みでその姿勢のままのワークw3を保持させる。また、第2方向Yにて、第2保持部52bに、基準面加工済みで成形面未加工であり、成形面を加工する姿勢に反転されたワークW2を保持させるとともに、第4保持部52dに、基準面及び成形面ともに未加工で、基準面を加工する姿勢のワークw4を保持させる。この状態で、割出し盤5をその回転中心軸51を中心に、回転制御部9aによって時計回り方向に90°割出し回転させる。
【0056】
この回転によって、第1方向Xに第2保持部52b及び第4保持部52d、第2方向Yに第1保持部52a及び第3保持部52cがそれぞれ位置付けられる。
【0057】
次に、第2ステップS2として、第2ワークテーブル28(移載機構6)を割出し盤5の回転中心軸51に近付くように第1方向Xに動かして、第2主軸29を第4保持部52dに保持されたワークw4の下方に入り込ませる(図2)。そして、第2主軸29にワークw4を支持させ、第2ワークテーブル28を割出し盤5の回転中心軸51から離れるように第1方向Xに動かしてワークw4を基準面加工部45に移載し、基準面加工部45を下降させて基準面の加工を開始する。第2ワークテーブル28の動きと同期するように、第1ワークテーブル24(移載機構6)を左右対称に動かして、第2保持部52bのワークW2を成形面加工部41に移載して、成形面加工部41を下降させて成形面の加工を開始する。なお、図3における1点鎖線で囲まれた部分は、この加工中の状態であることを示す。
【0058】
次に、第3ステップS3として、ワークw4及びワークW2がそれぞれ、基準面加工部45及び成形面加工部41で加工されている間に、姿勢変更機構8のロボットハンド81を作動させて、第3保持部52cのワークw3を把持して第3保持部52cから取り出した後、ワークw3を上下反転させて成形面を加工する姿勢のワークW3として、第3保持部52cに戻す。
【0059】
次に、第4ステップS4として、ワークw4及びワークW2がそれぞれ、基準面加工部45及び成形面加工部41で加工されている間に、第1保持部52aのワークW1を搬出入機構7で搬出するとともに、この第1保持部52aに、基準面及び成形面ともに未加工で基準面を加工する姿勢の新たなワークw5を搬入する。なお、第3ステップS3と第4ステップS4はどちらの工程が先でもよいが、よりサイクルタイムを短縮するためには、並行して行うことが好ましい。
【0060】
次に、第5ステップS5として、ワークw4及びワークW2それぞれの加工が基準面加工部45及び成形面加工部41で完了すると、移載機構6(第1ワークテーブル24及び第2ワークテーブル28)をそれぞれ中心に向けて第1方向Xに動かして、ワークw4及びワークW2をそれぞれ加工された姿勢のままで、第1方向Xにある第4保持部52d及び第2保持部52bに移載する。
【0061】
第1ステップS1から第5ステップS5までの工程によって、第1保持部52aでは、基準面及び成形面ともに加工済みのワークW1から基準面及び成形面ともに未加工で基準面を加工する姿勢のワークw5に入れ替わる。第2保持部52bでは、基準面加工済みで成形面未加工であったワークW2が成形面も加工済みの状態となる。第3保持部52cでは、基準面加工済みでそのままの姿勢であったワークw3が上下反転されて成形面を加工する姿勢のワークW3となる。第4保持部52dでは、基準面及び成形面ともに未加工で基準面を加工する姿勢であったワークw4が基準面加工済みの状態となる。
【0062】
これら一連の工程を繰り返すことによって、順次、基準面を加工する姿勢で搬入された未加工のワークWが、基準面及び成形面加工済みの状態で成形面を加工する姿勢で搬出されることとなる。このように、基準面加工と成形面加工との間の工程でワークの姿勢を変更させる構成としたことで、複雑な構成を要することなく、1台の加工装置1で基準面加工と成形面加工とを並行して行うことができる。よって、基準面及び加工面を複数の装置で加工する場合と比して、加工装置1全体の小型化やハンドリングの簡素化、ワークWの搬入、加工から搬出までのサイクルタイムの短縮化に貢献できる。
【0063】
また、成形面加工部41では、割出し盤5の動きと干渉せずに加工作業を行うことができるので、成形面加工部41でワークWを加工する場合に、必要に応じて、第2主軸29の向きや第2砥石48の高さや向きを変更することも可能であり、より高精度な加工を行うことができる。基準面加工部45においても同様である。
【0064】
また、ワークWを加工する際は位置出しの精度を高めることが求められるところ、本発明では割出し盤5上でワークWを加工しないので、割出し盤5上でワークWを加工する場合に比して、割出し位置の制御が容易である。
【0065】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態では、第1ワークスライドガイド23及び第2ワークスライドガイド27を共通のベッド2の上に設けているが、共通のベッド2ではなく、第1ワークスライドガイド23及び第2ワークスライドガイド27を別々に定置するベッドとしてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、姿勢変更機構8を使用してワークWを上下方向に反転させたが、これに限られるものではなく、基準面を加工する姿勢と成形面を加工する姿勢とに姿勢変更できればよいものであって、別の機構を用いてもよいし、ワークWの形状によっては斜めに傾ける或いは三次元で姿勢変更するようにしてもよい。
【0067】
また、割出し盤5は、上記実施形態の円板状に限られるものではなく、4つの上記保持部52を備え、割出し回転できればよいものであり、例えば、矩形状であったり、4つのアームを放射状に備え、その先に保持部を備える形状等であってもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、成形面加工部41は、第1砥石44によって内面研削加工するものとしたが、これに限られるものではなく、他の加工、例えば切削加工やホーニング加工等を施すものでもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、移載機構6を第1ワークテーブル24、第2ワークテーブル28が兼ねる構成としたが、これに限られるものではなく、他の機構、例えばロボットハンド、アーム機構等を用いて移載するようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、治具10を介してワークWを割出し盤5の保持部52や第1及び第2主軸25、29に支持させるようにしているが、ワークWの形状等によっては、治具10を省略して直接支持させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 加工装置
24 第1ワークテーブル
28 第2ワークテーブル
4 加工部
41 成形面加工部
45 基準面加工部
5 割出し盤
51 回転中心軸
52 保持部
53 切欠き
6 移載機構
7 搬出入機構
8 姿勢変更機構
W ワーク
X 第1方向
Y 第2方向
S1 第1ステップ
S2 第2ステップ
S3 第3ステップ
S4 第4ステップ
S5 第5ステップ
図1
図2
図3
図4