特許第6861096号(P6861096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861096
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】電動車両の電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20210412BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20210412BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20210412BHJP
   B60L 55/00 20190101ALI20210412BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20210412BHJP
【FI】
   H02J7/00 P
   H02J9/06 120
   H02J7/34 G
   H02J7/00 303C
   B60L55/00
   H02M7/48 E
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-107628(P2017-107628)
(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公開番号】特開2018-207584(P2018-207584A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】堀越 孝一郎
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−225014(JP,A)
【文献】 特開2006−320064(JP,A)
【文献】 特開2006−320074(JP,A)
【文献】 特開2010−028907(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0013438(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第105172787(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
B60L 55/00
H02J 7/34
H02J 9/06
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両のバッテリの直流電力を、スイッチング動作により、推進用モータ(M)に供給するための三相交流に変換して出力する三相出力インバータ(INV)と、
前記三相出力インバータ(INV)の各相の出力のうち1相の出力と前記推進用モータ(M)の中性点(N)との間に現れる単相交流電力を、前記電動車両の外部に出力する出力コネクタ(7)と、
前記出力コネクタ(7)からの単相交流電力の出力時に、前記1相の出力と前記中性点(N)との間に単相交流電力が現れるパターンで前記三相出力インバータ(INV)をスイッチングさせるコントローラ(3)と、
を備える電動車両の電源システム(1)。
【請求項2】
前記コントローラ(3)は、前記バッテリの電圧と、前記推進用モータ(M)の回転数に対応する回転周波数とに基づいて決定した、前記推進用モータ(M)のトルク指令値に対応するトルクを前記推進用モータ(M)に出力させるパターンで、前記三相出力インバータ(INV)をスイッチングさせる請求項1記載の電動車両の電源システム(1)。
【請求項3】
前記コントローラ(3)は、前記回転周波数に代わる所定周波数に基づいて決定した、前記推進用モータ(M)に出力させるトルクをゼロとするパターンで、前記三相出力インバータ(INV)をスイッチングさせる請求項2記載の電動車両の電源システム(1)。
【請求項4】
前記所定周波数は、前記電動車両の仕向け地域の商用電源周波数である請求項3記載の電動車両の電源システム(1)。
【請求項5】
前記所定周波数は、前記出力コネクタ(7)により単相交流電力を供給する供給先(V)の要求周波数である請求項3記載の電動車両の電源システム(1)。
【請求項6】
前記三相出力インバータ(INV)のスイッチングパターンを決定するのに用いる周波数を、前記推進用モータ(M)の回転センサ(43)で検出した回転数に対応する前記回転周波数と前記所定周波数との間で切り替える切替部(41)をさらに備える請求項3、4又は5記載の電動車両の電源システム(1)。
【請求項7】
前記切替部(41)は、前記出力コネクタ(7)に前記単相交流電力の出力先のコネクタ(13)が接続されると、前記三相出力インバータ(INV)のスイッチングパターンを決定するのに用いる周波数を前記回転周波数から前記所定周波数に切り替える請求項6記載の電動車両の電源システム(1)。
【請求項8】
前記出力コネクタは、プラグインハイブリッド車両(V)の充電用電源コネクタ(13)と接続可能である請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の電動車両の電源システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)に搭載されたバッテリの直流電力をインバータで交流に変換して、緊急時の家庭用電源として供給することが、従来から提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−178234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車には、バッテリの直流電力を交流に変換して推進用モータに供給するインバータが搭載されているが、このインバータを、バッテリの直流電力を緊急時の家庭用電源として供給する際の交流変換に利用するかどうかは、上述した従来の提案では言及されていない。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)等の電動車両に搭載されたインバータを、バッテリの直流電力を交流に変換して電動車両の外部に供給する際にも利用できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の1つの態様による電動車両の電源システムは、
電動車両のバッテリの直流電力を、スイッチング動作により、推進用モータに供給するための三相交流に変換して出力する三相出力インバータと、
前記三相出力インバータの各相の出力のうち1相の出力と前記推進用モータの中性点との間に現れる単相交流電力を、前記電動車両の外部に出力する出力コネクタと、
前記出力コネクタからの単相交流電力の出力時に、前記1相の出力と前記中性点との間に単相交流電力が現れるパターンで前記三相出力インバータをスイッチングさせるコントローラと、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電動車両に搭載されたインバータを、バッテリの直流電力を交流に変換して電動車両の外部に供給する際にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る交流電動機の駆動制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図1のモータコントローラの具体的な構成を示すブロック図である。
図3図2の目標電流値算出部が走行モードのときに行う電動モータのd軸及びq軸の目標電流値の算出プロセスの概要を示すブロック図である。
図4図2の目標電流値算出部がVtoV充電モードのときに行う電動モータのd軸及びq軸の目標電流値の算出プロセスの概要を示すブロック図である。
図5図2の電圧変換部が電動モータのd軸及びq軸の電流目標値を指令電圧に変換するのに用いる電圧方程式の行列を示す説明図である。
図6図1のモータコントローラが行うモード判定処理のシーケンスを示すフローチャートである。
図7図2の電流目標値算出部が商用電源出力モードのときに行う電動モータのd軸及びq軸の各電流目標値の算出プロセスの概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係る電動車両の電源システムの概略構成を示すブロック図である。図1に示す本実施形態の電源システム1は、動力又は動力アシストとして電動モータM(請求項中の推進用モータに相当)を用いる電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)等の電動車両に搭載される。そして、電源システム1は、インバータINV、モータコントローラ3及び給電ケーブル5を有している。
【0010】
インバータINV(請求項中の三相出力インバータに相当)は、電動車両に搭載された例えばリチウムイオン電池等の不図示のバッテリの直流電力(例えば、直流400V)を、三相交流に変換して電動モータMに出力する。このインバータINVは、UVWの各相の上アームと下アームにそれぞれパワー半導体スイッチング素子Q1〜Q3,Q4〜Q6を有している。
【0011】
各パワー半導体スイッチング素子Q1〜Q6は、本実施形態では、それぞれIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor 、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)によって構成されている。
【0012】
また、インバータINVは、電動モータMのUVW各相に対する出力のうち1相の出力と、電動モータMの三相のステータコイルLu,Lv,Lwの中性点Nとの間に現れる単相交流電力を、給電ケーブル5のコンセント7(請求項中の出力コネクタに相当)から電気車両の外部に出力する。
【0013】
コンセント7には、単相交流電力の供給先(例えば、家庭用電化製品や家庭用蓄電池等)の電源ケーブルのプラグ(図示せず)を接続することができる。本実施形態では、コンセント7に、他の電気車両V(請求項中の単相交流電力を供給する供給先及びプラグインハイブリッド車両に相当)のバッテリ(図示せず)を普通充電するために、充電ケーブル11のプラグ13(請求項中の単相交流電力の出力先のコネクタ及び充電用電源コネクタ)が接続されるものとする。
【0014】
モータコントローラ3(請求項中のコントローラに相当)は、不図示のバッテリの直流電力をインバータINVにより三相交流に変換して電動モータMに供給する走行モードにおいて、車両統合コントローラVCMから入力されるトルク指令値に応じたトルクを電動モータMに出力させるパターンで、インバータINVの各パワー半導体スイッチング素子Q1〜Q6をオンオフ動作させる。
【0015】
また、モータコントローラ3は、不図示のバッテリの直流電力をインバータINVにより単相交流に変換して給電ケーブル5から他の電気車両Vの充電ケーブル11に供給するV(車両)toV(車両)充電モードにおいて、商用電源と同じ周波数の単相交流電力を給電ケーブル5から出力させるパターンで、インバータINVの各パワー半導体スイッチング素子Q1〜Q6をオンオフ動作させる。
【0016】
なお、車両統合コントローラVCMは、ドライバのアクセル操作に応じた電動モータMのトルクを算出し、算出したトルクに対応するトルク指令値をモータコントローラ3に出力する。また、車両統合コントローラVCMは、不図示のバッテリの電圧値もモータコントローラ3に出力する。
【0017】
さらに、車両統合コントローラVCMは、給電ケーブル5のコンセント7に他の電気車両Vの充電ケーブル11のプラグ13が接続された場合に、他の電気車両Vの車両統合コントローラ(図示せず)との車−車間通信により、他の電気車両Vから情報を取得する。
【0018】
車両統合コントローラVCMが他の電気車両Vから取得する情報は、例えば、他の電気車両Vの不図示の充電器が充電ケーブル11から受け入れた単相交流電力でバッテリを充電する際の定格充電電流値の情報を含んでいる。車両統合コントローラVCMが取得した他の電気車両Vの情報は、モータコントローラ3に出力される。
【0019】
モータコントローラ3は、図2に示すように、電流目標値算出部31、電流電圧変換部33、dq軸−三相変換器35及び回転数出力部37を有している。これらは、ディスクリート回路やICチップ(メモリ内蔵のものを含む)等により、一部又は全体を個別に、あるいは、全体を一体に構成することができる。もちろん、コンピュータがプログラムを実行することで各部31〜37の各機能が実現される構成とすることも可能である。
【0020】
電流目標値算出部31には、回転数出力部37からパルス信号が入力される。回転数出力部37は、電源周波数パルス出力部39及び切替部41を有している。
【0021】
電源周波数パルス出力部39は、製造時に他の電気車両Vの仕向け地域(国内外を問わず)とした地域の商用電源の周波数(請求項中の所定周波数に相当)と同じ周波数のパルス信号を出力する。本実施形態では、東日本地区の単相交流50Hzのパルス信号を電源周波数パルス出力部39が出力するものとする。
【0022】
切替部41は、電流目標値算出部31に出力するパルス信号を、走行モード用の、回転数センサ43が出力する電動モータMの回転数に応じた周波数のパルス信号と、VtoV充電モード用の、電源周波数パルス出力部39が出力する商用電源の周波数のパルス信号との間で切り替える。
【0023】
そして、電流目標値算出部31は、車両統合コントローラVCMからの電動モータMのトルク指令値に対応する電動モータMのd軸及びq軸の各電流目標値Id,Iqを、電動車両のモード(走行モード、VtoV充電モード)に応じて、図2中に示す「走行用MAP」と「VtoV用MAP」とを使い分けて算出する。
【0024】
ここで、「走行用MAP」は、走行モードのときに電動モータMのd軸及びq軸の各電流目標値Id,Iqを算出するのに使用する。この「走行用MAP」は、車両統合コントローラVCMからモータコントローラ3に入力されるトルク指令値と、それに対応する電動モータMの目標回転数とを関連付けたテーブルである。
【0025】
一方、「VtoV用MAP」は、VtoV充電モードのときに電動モータMのd軸及びq軸の各電流目標値Id,Iqを算出するのに使用する。この「VtoV用MAP」は、VtoV充電モードのときに電源周波数パルス出力部39から電流目標値算出部31に入力されるパルス信号が示す商用電源の周波数と、それに対応する電動モータMの電流目標値とを関連付けたテーブルである。
【0026】
なお、単相交流電力を給電ケーブル5から出力させるパターンでインバータINVの各パワー半導体スイッチング素子Q1〜Q6をオンオフ動作させる際に、トルク電流成分であるq軸の電流目標値Iqが「0」以外の値であると、電動モータMが回転して電動車両が動いてしまう。
【0027】
このため、VtoV充電モードのときに「VtoV用MAP」を使用して算出するのは、励磁電流成分であるd軸の電流目標値Idのみとし、トルク電流成分であるq軸の電流目標値Iqは一律に「0」とする。したがって、「VtoV用MAP」は、電源周波数パルス出力部39から電流目標値算出部31に入力されるパルス信号が示す商用電源の周波数と、それに対応する電動モータMのd軸の電流目標値Idとを関連付けたテーブルとしてある。
【0028】
そして、電動車両が走行モードである場合は、電流目標値算出部31は、図3のブロック図に示すように、車両統合コントローラVCMからのトルク指令値に対応する電動モータMの目標回転数を、「走行用MAP」から特定する。
【0029】
さらに、電流目標値算出部31は、「走行用MAP」で特定した電動モータMの目標回転数と、切替部41から電流目標値算出部31に入力される走行モード用のパルス信号が示す電動モータMの回転数との差分に基づいて、電動モータMのd軸及びq軸の電流目標値Id,Iqを従来公知の方法で算出する。
【0030】
これに対し、電動車両がVtoV充電モードである場合は、電流目標値算出部31は、図4のブロック図に示すように、電源周波数パルス出力部39からのパルス信号が示す商用電源の周波数(50Hz)に対応する電動モータMのd軸の電流目標値Idを、「VtoV用MAP」から特定する。
【0031】
なお、電流目標値算出部31の「VtoV用MAP」は、給電ケーブル5から出力する単相交流電力の電流値別に複数用意されている。このため、電動車両がVtoV充電モードである場合に電流目標値算出部31は、車両統合コントローラVCMから入力される他の電気車両Vの定格充電電流値に対応する「VtoV用MAP」を用いて、電動モータMのd軸の電流目標値Idを特定する。
【0032】
さらに、電流目標値算出部31は、「VtoV用MAP」で特定した電動モータMのd軸の電流目標値Idと、車両統合コントローラVCMからのバッテリの電圧値とに基づいて、給電ケーブル5から出力される50Hzの単相交流電力の電流値が車両統合コントローラVCMから入力される他の電気車両Vの定格充電電流値となるような、d軸の電流目標値Idを従来公知の方法で算出する(q軸の電流目標値Iqは「0」)。
【0033】
図2に示す電流電圧変換部33は、回転数出力部37から出力されるパルス信号の周波数を基準にして、電流目標値算出部31が算出した電動モータMのd軸及びq軸の各電流目標値Id,Iqを、d軸及びq軸の各指令電圧vd,vqに変換する。
【0034】
具体的には、電動モータMの電圧方程式は、図5に記載した行列式によって表すことができる。なお、この行列式中、Rは電動モータMのステータコイルの巻線抵抗、Ld,Lqは電動モータMのd軸及びq軸の自己インダクタンス、ωΦaは、電動モータMのロータの永久磁石によるステータコイルの鎖交磁束でq軸側だけに発生する誘導電圧である。
【0035】
なお、これらの情報は、予め取得されてモータコントローラ3に設定されている。そして、電動モータMの回転数及びd軸及びq軸の各電流目標値Id,Iqを上述した電圧方程式に代入すれば、トルク指令値τに対応する電動モータMのd軸及びq軸の各電流目標値や、商用電源の周波数(50Hz)に対応する電動モータMのd軸の電流目標値Idを、指令電圧vd,vq(のピーク値)に電流電圧変換することができる。
【0036】
dq軸−三相変換器35は、電流電圧変換部33が電動モータMのd軸及びq軸の各電流目標値Id,Iqから変換した電動モータMのd軸及びq軸の各指令電圧vd,vqを、UVWの3相の電圧Vu,Vv,Vwに変換してインバータINVに出力する。
【0037】
以上に説明した動作を各部31〜37が行うモータコントローラ3は、電源システム1を走行モードとVtoV充電モードとのどちらのモードとで動作させるかを、イグニッションスイッチ(図示せず)のオン時に判定する。以下、イグニッションスイッチのオン時にモータコントローラ3が行うモード判定処理の手順について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0038】
まず、モータコントローラ3は、イグニッションスイッチがオンされた(ステップS1)後に、電動車両がVtoV充電モードであるか否かを確認する(ステップS3)。VtoV充電モードであるか否かは、例えば、給電ケーブル5のコンセント7に他の電気車両Vの充電ケーブル11のプラグ13が接続されているか否かによって確認することができる。
【0039】
電動車両がVtoV充電モードでない場合は(ステップS3でNO)、モータコントローラ3は、走行モードのシーケンスに移行して(ステップS5)、モード判定処理のシーケンスを終了する。
【0040】
一方、電動車両がVtoV充電モードである場合は(ステップS3でNO)、モータコントローラ3は、他の電気車両Vの車両統合コントローラとの車−車間通信により取得した定格充電電流値の情報を車両統合コントローラVCMから読み込む(ステップS7)。そして、モータコントローラ3は、電動モータMのd軸の電流目標値Idを特定するのに用いる「VtoV用MAP」を、読み込んだ他の電気車両Vの定格充電電流値に対応するものに切り替える。
【0041】
また、モータコントローラ3は、回転数出力部37が出力するパルス信号を切替部41により、走行モード用のパルス信号からVtoV充電モード用のパルス信号に切り替えさせる(ステップS11)。
【0042】
そして、モータコントローラ3は、31が「VtoV用MAP」を用いて特定した、電動モータMのd軸の電流目標値Idと、「0」としたq軸の電流目標値Iqとから、電動モータMのUVWの3相の電圧Vu,Vv,Vwに変換してインバータINVに出力する。
【0043】
これにより、50Hzの単相交流電力を給電ケーブル5から出力させるパターンで、インバータINVの各パワー半導体スイッチング素子Q1〜Q6をオンオフ動作させて給電ケーブル5から50Hzの単相交流電力を出力させる。即ち、給電ケーブル5に充電ケーブル11が接続された他の電気車両Vのバッテリの充電を開始させる(ステップS13)。
【0044】
続いて、モータコントローラ3は、VtoV充電モードのシーケンスに移行して(ステップS15)、モード判定処理のシーケンスを終了する。
【0045】
以上に説明した本実施形態の電源システム1によれば、電動車両が走行モードであるときには、電流目標値算出部31が「走行用MAP」から特定した電動モータMのd軸及びq軸の電流目標値Id,Iqを用いて、車両統合コントローラVCMからのトルク指令値τに応じたトルクを電動モータMに出力させるパターンで、インバータINVの各パワー半導体スイッチング素子Q1〜Q6をオンオフ動作させるようにした。
【0046】
また、電動車両がVtoV充電モードであるときには、電流目標値算出部31が「VtoV用MAP」から特定した電動モータMのd軸及びq軸の電流目標値Id,Iq(但し、Iq=0)を用いて、電源周波数パルス出力部39からのパルス信号が示す商用電源の周波数(50Hz)の単相交流電力を給電ケーブル5から出力させるパターンで、インバータINVの各パワー半導体スイッチング素子Q1〜Q6をオンオフ動作させるようにした。
【0047】
このため、電動車両の電動モータMにバッテリの直流電力を三相交流に変換して供給するために搭載されたインバータINVを、他の電気車両Vのバッテリを充電するためにバッテリの直流電力を50Hzの単相交流に変換して給電ケーブル5から出力する際にも利用することができる。
【0048】
また、VtoV充電モードのときに電流目標値算出部31が「VtoV用MAP」から特定するのを、励磁電流成分であるd軸の電流目標値Idのみとし、トルク電流成分のq軸の電流目標値Iqは一律に0とすることから、VtoV充電モードにおいて電動モータMが回転して電動車両が動いてしまうのを、確実に防止することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、給電ケーブル5のコンセント7に他の電気車両Vの充電ケーブル11のプラグ13が接続されたことをトリガとして、回転数出力部37が出力するパルス信号を切替部41が走行モード用のパルス信号からVtoV充電モード用のパルス信号に切り替えるものとした。
【0050】
しかし、例えば、ドライバが電動車両の停車中に切替指示操作を行ったことをトリガとして、回転数出力部37が出力するパルス信号を切替部41が走行モード用のパルス信号からVtoV充電モード用のパルス信号に切り替えるようにしてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、給電ケーブル5のコンセント7に他の電気車両Vの充電ケーブル11のプラグ13を接続して、他の電気車両Vのバッテリを充電するための単相交流電力を、他の電気車両Vの充電器の定格充電電流値で給電ケーブル5から出力させる場合について説明した。しかし、商用電源の代わりに家庭用電源を給電ケーブル5から出力させるように構成してもよい。
【0052】
その場合には、給電ケーブル5のコンセント7には家庭側のプラグ(図示せず)が接続されて、商用電源と同じ50Hzの単相交流電力が電源として家庭内の機器に給電ケーブル5を介して供給されることになる。
【0053】
ここで、給電ケーブル5を介して供給する単相交流電力を商用電源として使用する場合、家庭内の機器による負荷が高いと、単相交流電力の電流が不足して給電ケーブル5からの出力電圧が低下する可能性がある。
【0054】
そこで、商用電源の代わりに家庭用電源を給電ケーブル5から出力させるときに電動モータMのd軸及びq軸の各電流目標値Id,Iqを算出するのに使用する「VtoV用MAP」を、給電ケーブル5からの出力電圧別に電流目標値算出部31に複数用意する。
【0055】
そして、図7に示すように、電流目標値算出部31において、車両統合コントローラVCMあるいはモータコントローラ3等でモニタした給電ケーブル5の出力電圧に対応する「VtoV用MAP」を用いて、電動モータMのd軸の電流目標値Idを特定する。
【0056】
このようにして特定した電動モータMのd軸の電流目標値Idと、「0」としたq軸の電流目標値Iqとを用いて、他の電気車両Vのバッテリを充電するVtoV充電モードの時と同じようにインバータINVの各パワー半導体スイッチング素子Q1〜Q6をオンオフ動作させて、給電ケーブル5から50Hzの単相交流電力を出力させる。
【0057】
これにより、給電ケーブル5に接続する家庭内の機器の負荷の変動に合わせて必要な電流値を維持した状態で、50Hzの単相交流電力を給電ケーブル5から安定して出力させることができる。
【0058】
なお、本発明は、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)等の電動車両の電源システムに広く適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、電動車両の電源システムにおいて利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 電源システム
3 モータコントローラ(コントローラ)
5 給電ケーブル
7 コンセント(出力コネクタ)
11 充電ケーブル
13 プラグ(単相交流電力の出力先のコネクタ、充電用電源コネクタ)
31 電流目標値算出部
33 電流電圧変換部
35 三相変換器
37 回転数出力部
39 電源周波数パルス出力部
41 切替部
43 回転数センサ
INV インバータ(三相出力インバータ)
Id 電流目標値
Id,Iq 電流目標値
Iq 電流目標値
Lu,Lv,Lw ステータコイル
M 電動モータ(推進用モータ)
N 中性点
Q1〜Q6 パワー半導体スイッチング素子
V 電気車両(単相交流電力を供給する供給先、プラグインハイブリッド車両)
VCM 車両統合コントローラ
Vu,Vv,Vw 電動モータ各相電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7