(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861111
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
A01D 69/06 20060101AFI20210412BHJP
A01F 12/56 20060101ALI20210412BHJP
A01D 41/12 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
A01D69/06
A01F12/56 Z
A01D41/12 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-129621(P2017-129621)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-10070(P2019-10070A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】平川 順一
(72)【発明者】
【氏名】迫 和志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勝秀
(72)【発明者】
【氏名】藤田 敏章
(72)【発明者】
【氏名】小田 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 実希
(72)【発明者】
【氏名】乙宗 拓也
(72)【発明者】
【氏名】安田 和男
【審査官】
小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−161153(JP,A)
【文献】
特開2010−187575(JP,A)
【文献】
特開2015−139437(JP,A)
【文献】
実開平07−030016(JP,U)
【文献】
特開2011−130671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D69/06
A01F12/18−12/395
A01F12/42−12/54
A01F12/60
B60J 5/00− 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前方に設けられ、圃場の作物を刈取る刈取部と、前記走行機体に設けられ、前記刈取部によって刈り取られた作物を脱穀する脱穀装置と、前記走行機体から前記刈取部へ延出され、前記刈取部によって刈り取られた作物を前記脱穀装置に供給する搬送部と、エンジンから動力が伝達され、伝達された動力を変速して前記脱穀装置の扱胴駆動部へ出力するギヤ変速式の扱胴変速装置と、が備えられ、
前記扱胴変速装置は、前記脱穀装置の前方かつ前記搬送部の下方の箇所において、前記走行機体の機体フレームよりも高い位置に設けられ、
前記扱胴変速装置の入力軸及び出力軸が上下並びに配置されている収穫機。
【請求項2】
走行機体の前方に設けられ、圃場の作物を刈取る刈取部と、前記走行機体に設けられ、前記刈取部によって刈り取られた作物を脱穀する脱穀装置と、前記走行機体から前記刈取部へ延出され、前記刈取部によって刈り取られた作物を前記脱穀装置に供給する搬送部と、エンジンから動力が伝達され、伝達された動力を変速して前記脱穀装置の扱胴駆動部へ出力する扱胴変速装置と、前記脱穀装置を走行機体横外側から覆う外装カバーと、が備えられ、
前記扱胴変速装置は、前記脱穀装置の前方かつ前記搬送部の下方の箇所において、前記走行機体の機体フレームよりも高い位置に設けられ、かつ、前記外装カバーによって走行機体横外側から覆われ、
前記扱胴変速装置の前端部に、前方に向けて突出する変速操作部が備えられ、
前記外装カバーは、前記脱穀装置及び前記扱胴変速装置を覆う閉じ状態と、前記脱穀装置及び前記扱胴変速装置を開放する開き状態とに状態変更可能に備えられ、
前記外装カバーの前端部に、機体横内側に向かって突設され、前記外装カバーが前記閉じ状態になると、前記変速操作部を前側から覆い、前記外装カバーが前記開き状態になると、前記変速操作部を開放する前横向きカバー部が備えられている収穫機。
【請求項3】
走行機体の前方に設けられ、圃場の作物を刈取る刈取部と、前記走行機体に設けられ、前記刈取部によって刈り取られた作物を脱穀する脱穀装置と、前記走行機体から前記刈取部へ延出され、前記刈取部によって刈り取られた作物を前記脱穀装置に供給する搬送部と、エンジンから動力が伝達され、伝達された動力を変速して前記脱穀装置の扱胴駆動部へ出力する扱胴変速装置と、が備えられ、
前記扱胴変速装置は、前記脱穀装置の前方かつ前記搬送部の下方の箇所において、前記走行機体の機体フレームよりも高い位置に設けられ、
前記扱胴変速装置の入力軸から前記搬送部の駆動軸に動力伝達される収穫機。
【請求項4】
走行機体の前方に設けられ、圃場の作物を刈取る刈取部と、前記走行機体に設けられ、前記刈取部によって刈り取られた作物を脱穀する脱穀装置と、前記走行機体から前記刈取部へ延出され、前記刈取部によって刈り取られた作物を前記脱穀装置に供給する搬送部と、エンジンから動力が伝達され、伝達された動力を変速して前記脱穀装置の扱胴駆動部へ出力する扱胴変速装置と、が備えられ、
前記扱胴変速装置は、前記脱穀装置の前方かつ前記搬送部の下方の箇所において、前記走行機体の機体フレームよりも高い位置に設けられ、
前記扱胴変速装置は、前記脱穀装置が有する唐箕の前方に位置し、
前記エンジンは、前記走行機体の両横側部のうち、前記扱胴変速装置が位置する側と反対側の横側部に位置し、
前記エンジンの動力が前記唐箕を介して前記扱胴変速装置の入力軸に伝達される収穫機。
【請求項5】
前記脱穀装置を走行機体横外側から覆う外装カバーが備えられ、
前記扱胴変速装置は、前記外装カバーによって走行機体横外側から覆われている請求項1、3、4の何れか一項に記載の収穫機。
【請求項6】
前記扱胴変速装置において、入力軸が出力軸より上方に位置している請求項1から5の何れか一項に記載の収穫機。
【請求項7】
前記搬送部の駆動軸及び前記扱胴駆動部が前記扱胴変速装置の上方に位置し、
前記出力軸の動力が前記扱胴駆動部へ伝達され、かつ、前記入力軸の動力が前記駆動軸へ伝達され、
前記出力軸と前記扱胴駆動部とを連係する伝動系が前記入力軸と前記駆動軸とを連係する伝動系よりも走行機体横外側に位置している請求項6に記載の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の前方に設けられ、圃場の作物を刈取る刈取部と、前記走行機体に設けられ、前記刈取部によって刈り取られた作物を脱穀する脱穀装置と、前記走行機体から前記刈取部へ延出され、前記刈取部によって刈り取られた作物を前記脱穀装置に供給する搬送部と、が備えられた収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した収穫機において、エンジンから動力が伝達され、伝達された動力を変速して脱穀装置の扱胴駆動部へ出力する扱胴変速装置を備えると、性状や品種などが異なる作物を収穫する場合、あるいは、脱穀装置に供給される作物の量が変化する場合でも、扱胴変速装置によって扱胴の駆動速度を変更し、扱き残しなどを生じにくくできる。
【0003】
この種の収穫機として、従来、たとえば特許文献1に示されるコンバインがある。特許文献1に示されるコンバインでは、エンジンの動力が伝動ベルトを介して伝動ケースの入力軸に伝達され、伝動ケースの出力軸の動力が伝動ベルト及び伝動軸を介して扱胴の入力軸に伝達される。伝動ケースの内部に、入力軸の回転速度を高中低の3段階に変速して出力軸に伝達するギヤ変速機構が備えられている。伝動ケースは、脱穀装置の前部と、グレンタンクの前部(底部)との間に備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3907596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術を採用した場合、扱胴変速装置を変速操作するとき、脱穀装置あるいはグレンタンクが扱胴変速装置の手前に位置するため、脱穀装置等が変速操作の障害になり、扱胴変速装置の変速操作を行ないにくい。
【0006】
本発明は、扱胴変速装置を変速操作しやすい収穫機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による収穫機は、
走行機体の前方に設けられ、圃場の作物を刈取る刈取部と、前記走行機体に設けられ、前記刈取部によって刈り取られた作物を脱穀する脱穀装置と、前記走行機体から前記刈取部へ延出され、前記刈取部によって刈り取られた作物を前記脱穀装置に供給する搬送部と、エンジンから動力が伝達され、伝達された動力を変速して前記脱穀装置の扱胴駆動部へ出力する
ギヤ変速式の扱胴変速装置と、が備えられ、
前記扱胴変速装置は、前記脱穀装置の前方かつ前記搬送部の下方の箇所において、前記走行機体の機体フレームよりも高い位置に設けられ
、
前記扱胴変速装置の入力軸及び出力軸が上下並びに配置されている。
【0008】
本構成によると、脱穀装置が扱胴変速装置よりも後側に位置し、搬送部が扱胴変速装置よりも上側に位置し、機体フレームが扱胴変速装置よりも下側に位置するので、扱胴変速装置を走行機体の外部から変速操作するのに、脱穀装置、搬送部及び機体フレームが障害になりにくく、変速操作しやすい。
【0009】
本発明においては、前記脱穀装置を走行機体横外側から覆う外装カバーが備えられ、
前記扱胴変速装置は、前記外装カバーによって走行機体横外側から覆われていると好適である。
【0010】
本構成によると、脱穀装置を覆う外装カバーを扱胴変速装置のカバーに活用して安価に扱胴変速装置を保護できる。
【0011】
本発明による収穫機は、
走行機体の前方に設けられ、圃場の作物を刈取る刈取部と、前記走行機体に設けられ、前記刈取部によって刈り取られた作物を脱穀する脱穀装置と、前記走行機体から前記刈取部へ延出され、前記刈取部によって刈り取られた作物を前記脱穀装置に供給する搬送部と、エンジンから動力が伝達され、伝達された動力を変速して前記脱穀装置の扱胴駆動部へ出力する扱胴変速装置と、前記脱穀装置を走行機体横外側から覆う外装カバーと、が備えられ、
前記扱胴変速装置は、前記脱穀装置の前方かつ前記搬送部の下方の箇所において、前記走行機体の機体フレームよりも高い位置に設けられ、かつ、前記外装カバーによって走行機体横外側から覆われ、
前記扱胴変速装置の前端部に、前方に向けて突出する変速操作部が備えられ、前記外装カバーは、前記脱穀装置及び前記扱胴変速装置を覆う閉じ状態と、前記脱穀装置及び前記扱胴変速装置を開放する開き状態とに状態変更可能に備えられ、前記外装カバーの前端部に、機体横内側に向かって突設され、前記外装カバーが前記閉じ状態になると、前記変速操作部を前側から覆い、前記外装カバーが前記開き状態になると、前記変速操作部を開放する前横向きカバー部が備えられてい
る。
【0012】
本構成によると、外装カバーを閉じるだけで、変速操作部が前横向きカバー部によって前側から覆われて変速操作部を保護できる。外装カバーを開くだけで、前横向きカバー部による変速操作部の覆いが解除されて変速操作部が開放され、変速操作部を操作できる。
【0013】
本発明による収穫機は、
走行機体の前方に設けられ、圃場の作物を刈取る刈取部と、前記走行機体に設けられ、前記刈取部によって刈り取られた作物を脱穀する脱穀装置と、前記走行機体から前記刈取部へ延出され、前記刈取部によって刈り取られた作物を前記脱穀装置に供給する搬送部と、エンジンから動力が伝達され、伝達された動力を変速して前記脱穀装置の扱胴駆動部へ出力する扱胴変速装置と、が備えられ、
前記扱胴変速装置は、前記脱穀装置の前方かつ前記搬送部の下方の箇所において、前記走行機体の機体フレームよりも高い位置に設けられ、
前記扱胴変速装置の入力軸から前記搬送部の駆動軸に動力伝達され
る。
【0014】
本構成によると、エンジンからの動力を扱胴と搬送部とに分岐させる手段に扱胴変速装置を活用しつつ、扱胴の変速による影響を受けない一定回転速度の動力を搬送部に伝達できる。
【0015】
本発明による収穫機は、
走行機体の前方に設けられ、圃場の作物を刈取る刈取部と、前記走行機体に設けられ、前記刈取部によって刈り取られた作物を脱穀する脱穀装置と、前記走行機体から前記刈取部へ延出され、前記刈取部によって刈り取られた作物を前記脱穀装置に供給する搬送部と、エンジンから動力が伝達され、伝達された動力を変速して前記脱穀装置の扱胴駆動部へ出力する扱胴変速装置と、が備えられ、
前記扱胴変速装置は、前記脱穀装置の前方かつ前記搬送部の下方の箇所において、前記走行機体の機体フレームよりも高い位置に設けられ、
前記扱胴変速装置は、前記脱穀装置が有する唐箕の前方に位置し、前記エンジンは、前記走行機体の両横側部のうち、前記扱胴変速装置が位置する側と反対側の横側部に位置し、前記エンジンの動力が前記唐箕を介して前記扱胴変速装置の入力軸に伝達されると好適である。
【0016】
本構成によると、唐箕をカウンター手段に活用した簡素な動力伝達構造によってエンジンからの動力を扱胴変速装置に伝達できる。
【0017】
本発明においては、前記扱胴変速装置において、入力軸が出力軸より上方に位置していると好適である。
【0018】
本構成によると、入力プーリの直径が出力プーリよりも大きい入力プーリを採用するのに、入力軸が出力軸より下方に位置するものに比べ、プーリが扱胴変速装置から下方に突出することを回避あるいは抑制しつつ採用できる。
【0019】
本発明においては、前記搬送部の駆動軸及び前記扱胴駆動部が前記扱胴変速装置の上方に位置し、前記出力軸の動力が前記扱胴駆動部へ伝達され、かつ、前記入力軸の動力が前記駆動軸へ伝達され、前記出力軸と前記扱胴駆動部とを連係する伝動系が前記入力軸と前記駆動軸とを連係する伝動系よりも走行機体横外側に位置していると好適である。
【0020】
本構成によると、搬送部の駆動負荷よりも扱胴の駆動負荷の方が大きく、搬送部用の伝動部材の交換頻度よりも扱胴駆動部用の伝動部材の交換頻度の方が高くなりがちであるが、扱胴駆動部用の伝動部材が搬送部用の伝動部材よりも走行機体横外側に位置するので、扱胴駆動部用の伝動部材を交換しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】扱胴変速装置の配設部及び動力伝達構造を示す左側面図である。
【
図5】扱胴変速装置の配設部及び動力伝達構造を示す正面図である。
【
図6】扱胴変速装置の配設部及び動力伝達構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を収穫機の一例であるコンバインに適用した場合について、図面に基づいて説明する。
図1は、コンバインの全体を示す左側面図である。
図2は、コンバインの全体を示す平面図である。
図1,2に示す[F]の方向が走行機体1の前方向、[B]の方向が走行機体1の後方向、
図2に示す[L]の方向が走行機体1の左方向、[R]の方向が走行機体1の右方向と定義する。
【0023】
図1,2に示すように、コンバインは、左右一対のクローラ走行装置2が装備された走行機体1を備えている。走行機体1の前部における右側部位に運転部3が形成されている。運転部3に運転座席4が設けられている。運転部3は、キャビン5によって覆われている。走行機体1の後部に脱穀装置6、及び、脱穀物タンク7が設けられている。脱穀装置6と脱穀物タンク7とは、脱穀物タンク7が運転部3の後側に位置する状態で走行機体1の横幅方向に並んでいる。脱穀装置6の後部に排ワラ細断装置8が装備されている。走行機体1の前部における脱穀装置側の部位から刈取り搬送装置9が前方向きに延出されている。刈取り搬送装置9には、走行機体1から前方へ上下揺動操作可能に延出された搬送部10、及び、走行機体1の前方に設けられ、後部が搬送部10の前端部に連結された刈取部11を備えている。刈取部11は、搬送部10が昇降シリンダ12の伸縮によって揺動操作されることによって、下降作業状態と上昇非作業状態とにわたって昇降操作される。
【0024】
コンバインにおいては、刈取部11を下降作業状態に下降させ、この状態で走行機体1を走行させることにより、作物としての稲、麦、大豆などの収穫作業を行なえる。すなわち、刈取部11において、圃場の植立穀稈のうち、走行機体の前方に位置する植立穀稈の穂先側が回転リール13によって後方に掻き込まれつつ、植立穀稈の株元側が刈取装置14によって切断されて、作物としての植立穀稈の刈取りが行われ、刈取り穀稈の株元から穂先までの全体がオーガ15によって搬送部10へ搬送される。搬送部10へ搬送された刈取穀稈が搬送部10によって後方へ搬送されて脱穀装置6に供給される。脱穀装置6において、刈取り穀稈が扱胴6aによって脱穀処理され、脱穀処理によって得られた脱穀粒を塵埃と選別する選別処理が行われる。脱穀排ワラが排ワラ細断装置8によって細断処理される。細断ワラは、排ワラ細断装置8の下部に備えられた排出口カバー8aによって案内されて走行機体1の後方へ排出される。選別処理後の脱穀粒が揚穀装置16によって脱穀物タンク7に供給されて貯留される。脱穀物タンク7に貯留された脱穀粒は、脱穀物排出装置17によって脱穀物タンク7から取出すことができる。
【0025】
図1,2に示すように、脱穀装置6の前方において、梯子18が機体フレーム1aに立設されている。梯子18を利用して脱穀装置6の上にあがることが可能になっている。梯子18の支柱部は、脱穀装置6を走行機体横外側から覆う外装カバー19の前端縁の傾斜に沿って傾斜している。梯子18の上端は、外装カバー19の上端と同じ又はほぼ同じ高さ位置に位置している。梯子18から支持部材20が延出され、支持部材20の延出端部にバックミラー21が支持されている。支持部材20は、梯子18に揺動操作可能に支持されている。梯子18を使用するとき、支持部材20を揺動操作することにより、支持部材20及びバックミラー21を梯子18から離すことができる。梯子18の上部と支柱部材22とが補強部材23によって連結されている。支柱部材22は、脱穀装置6の前側に設けられ、脱穀物排出装置17のうちの横コンベヤ部17aを格納姿勢で支持するように構成されている。梯子18は、横コンベヤ部17aを支持するべく高い剛性を有する支柱部材22によって補強部材23を介して支持され、揺れ動き難いようにしっかり支持される。これにより、バックミラー21の揺れ動きが生じにくい。
【0026】
〔動力伝達構造について〕
運転座席4の下方にエンジン25(
図3参照)が設けられている。エンジン25は、出力軸25a(
図3参照)が走行機体1の横幅方向に延びる搭載姿勢で走行機体1の右横側部に設けられている。エンジン25の動力が
図3に示す動力伝達構造によってクローラ走行装置2、脱穀装置6における扱胴6a及び選別部6bなどに伝達される。
【0027】
図3に示すように、エンジン25の出力軸25aの動力がベルト伝達機構26を介して走行ミッション27に入力され、走行ミッション27から左右のクローラ走行装置2の駆動輪体2aに出力される。走行ミッション27においては、エンジン25からの動力が静油圧式無段変速部27aに入力され、静油圧式無段変速部27aによって変速された動力が副変速部(図示せず)を介して分配ミッション(図示せず)に伝達され、分配ミッションから左右の駆動輪体2aに出力される。
【0028】
エンジン25の出力軸25aの動力がベルト伝達機構28を介して脱穀物タンク7の底スクリュー29に伝達され、底スクリュー29から脱穀物排出装置17の縦コンベヤ部17b及び横コンベヤ部17aに伝達される。
【0029】
エンジン25の出力軸25aの動力がベルト伝達機構30aを介して選別部6bにおける唐箕31の回転支軸31aに伝達され、回転支軸31aからベルト伝達機構30bを介して扱胴変速装置32の入力軸32aに伝達される。扱胴変速装置32の出力軸32bの動力がベルト伝達機構33を介して扱胴駆動部34の入力軸34aに伝達される。扱胴変速装置32には、入力軸32aの回転速度を変速して出力軸32bに伝達するギヤ変速機構35が内装されている。
図4,5,6に示すように、扱胴変速装置32の前端部に、変速操作部32cが前方に向けて突出する状態で備えられている。扱胴変速装置32においては、変速操作部32cを操作することにより、シフトギヤ35aがスライドして3つの伝動ギヤ35b,35c,35dに掛けかわり、高、中、低速の3段階の変速状態に切り換わって出力軸32bの回転速度が変更される。扱胴駆動部34によって駆動される扱胴6aの回転速度を扱胴変速装置32によって3段階に変更できる。
【0030】
扱胴変速装置32の入力軸32aの動力がベルト伝達機構36を介して選別部6bの1番スクリューコンベヤ37及び2番スクリューコンベヤ38に伝達される。1番スクリューコンベヤ37の動力が揚穀装置16のバケットコンベヤ部16a及びスクリューコンベヤ部16bに伝達される。ベルト伝達機構36の動力がカウンター軸39及びベルト伝達機構40を介して選別部6bの揺動選別装置41に伝達される。2番スクリューコンベヤ38の動力がチェーン伝達機構63を介して還元装置64に伝達される。還元装置64は、2番スクリューコンベヤ38からの未処理粒を揺動選別装置41に還元するものである。唐箕31の回転支軸31aの動力がベルト伝達機構42、カウンター軸43及びベルト伝達機構44を介して排ワラ細断装置8の回転刃8bに伝達される。1番スクリューコンベヤ37、2番スクリューコンベヤ38、揺動選別装置41及び回転刃8bは、扱胴変速装置32による扱胴6aの変速にかかわらず、一定の回転速度で駆動される。
【0031】
扱胴変速装置32の入力軸32aと、搬送部10の駆動軸10aにおける一端側部分とにわたって正回転伝達のベルト伝達機構45が設けられている。扱胴駆動部34の逆転出力軸34bと駆動軸10aの他端側部分とにわたって逆回転伝達のベルト伝達機構46が設けられている。逆転出力軸34bは、ベベルギヤ機構34cを介し入力軸34aに連動連結され、入力軸34aの回転方向とは逆の回転方向に駆動される。
【0032】
正回転伝達のベルト伝達機構45が張り側に操作されて伝達入り状態に切り換えられ、逆回転伝達のベルト伝達機構46が緩み側に操作されて伝達切り状態に切り換えられることにより、入力軸32aの動力が正回転伝達のベルト伝達機構45を介して駆動軸10aに伝達され、搬送部10が搬送方向に駆動される。このとき、搬送部10は、扱胴変速装置32による扱胴6aの変速にかかわらず、一定の回転速度で駆動される。正回転伝達のベルト伝達機構45が緩み側に操作されて伝達切り状態に切り換えられ、逆回転伝達のベルト伝達機構46が張り側に操作されて伝達入り状態に切り換えられることにより、出力軸32bの動力がベベルギヤ機構34c、逆転出力軸34b及び逆回転伝達のベルト伝達機構46を介して駆動軸10aに伝達され、搬送部10が搬送回転方向とは逆回転方向に駆動される。
【0033】
搬送部10の駆動軸10aの動力がチェーン伝達機構47を介して、刈取部11の背後に位置する刈取部11の入力軸11aに伝達される。
図3に示す48は、運転部空調の冷媒に作用するコンプレッサーである。
【0034】
図4,5,6に示すように、扱胴変速装置32は、脱穀装置6の前方かつ搬送部10の下方の箇所において、機体フレーム1aよりも高い位置に設けられている。扱胴変速装置32は、脱穀装置6のうちの唐箕31の前方に設けられている。扱胴変速装置32と機体フレーム1aとの間に台部材49が介装されており、扱胴変速装置32が機体フレーム1aより高い位置に位置している。
【0035】
扱胴変速装置32は、走行機体1の左側の横側部に配置され、走行機体1の両横側部のうち、エンジン25が位置する側と反対側の横側部に位置している。本実施形態では、扱胴変速装置32は、左側の横側部に配置されているが、エンジン25が左側の横側部に設けられる場合、右側の横側部に配置するとよい。扱胴変速装置32の変速操作部32cは、扱胴変速装置32の前部において、前方に向けて突出されている。本実施形態では、変速操作部32cは、上下揺動操作可能に設けられているが、左右揺動可能な変速操作部、あるいは、上下方向又は左右方向にスライド操作可能な変速操作部を採用してもよい。
【0036】
図1に示すように、脱穀装置6を走行機体横外側から覆う外装カバー19は、5つの分割外装カバー50によって構成されている。各分割外装カバー50は、脱穀装置6の横側壁部に設けられた支持部(図示せず)に脱着可能に支持され、脱穀装置6を開放する開き状態と、脱穀装置6を覆う閉じ状態とに脱着によって切換え可能になっている。
図4,5,6に示すように、5つの分割外装カバー50のうち、外装カバー19の前下部を構成する分割外装カバー50aの前端部に、走行機体横内側に向かって延びる前横向きカバー部51が備えられている。
【0037】
図6に実線で示すように、分割外装カバー50aを閉じ状態にすると、扱胴変速装置32が分割外装カバー50aによって走行機体横外側から覆われ、かつ、変速操作部32cが前横向きカバー部51によって前側から覆われる。扱胴変速装置32及び変速操作部32cを分割外装カバー50a及び前横向きカバー部51によって保護できる。
【0038】
扱胴6aの変速を行なう場合、
図6に二点鎖線で示すように、分割外装カバー50aを開き状態にすることにより、扱胴変速装置32の分割外装カバー50aによる覆いが解除され、かつ、変速操作部32cの前横向きカバー部51による覆いが解除され、扱胴変速装置32及び変速操作部32cが走行機体横外側に向けて、かつ、走行機体前方に向けて開放される。さらに、搬送部10が扱胴変速装置32よりも上側に位置し、脱穀装置6が扱胴変速装置32よりも後側に位置し、機体フレーム1aが扱胴変速装置32よりも下側に位置しており、搬送部10、脱穀装置6及び機体フレーム1aが変速操作の障害になりにくく、扱胴変速装置32を走行機体横外側から変速操作しやすい。
【0039】
図4,6に示すように、扱胴変速装置32は、入力軸32aが出力軸32bより上方に位置するよう構成されている。入力軸32aに相対回転不能に支持され、唐箕31からの動力を入力する入力プーリ52は、出力軸32bに相対回転不能に支持され、扱胴駆動部34へ出力する出力プーリ53の外径より大きい外径を備えている。搬送部10は、駆動軸10aが扱胴変速装置32の上方に位置するよう構成されている。扱胴駆動部34は、扱胴変速装置32の上方に位置する配置で脱穀装置6の前部に支持されている。
図4,5,6に示すように、出力軸32bと扱胴駆動部34とを連係する伝動系としての扱胴用のベルト伝達機構33は、入力軸32aと駆動軸10aと連係する伝動系としての搬送部用のベルト伝達機構45よりも走行機体横外側に配置されている。ベルト伝達機構33のベルト交換は、ベルト伝達機構45のベルト交換よりも走行機体横外側から行ないやすい。
【0040】
〔唐箕31の風量調節〕
図7に示すように、唐箕31の両横側の吸気口31bの外側に開度調節部材55が設けられている。左右の開度調節部材55に連動ロッド56の両端側のアーム部56aが連結され、左右の開度調節部材55は、連動ロッド56によって連動連結されている。連動ロッド56のうち、脱穀装置6の横幅方向に延びる支点軸部56bがブラケット57に相対回動可能に支持されている。ブラケット57は、脱穀装置6の前部に支持されている。左右の開度調節部材55は、連動ロッド56を介して支持作用するブラケット57、及び、開度調節部材55の長穴55aに係入している支持ピン58によって支持され、支点軸部56bの軸芯Pを揺動支点にして、かつ、長穴55aをガイドにして揺動可能になっている。連動ロッド56の支点軸部56bから延出された操作アーム59と、電動モータ60とがリンク機構61を介して連動連結されている。電動モータ60が駆動されると、操作アーム59がリンク機構61を介しての電動モータ60の操作によって揺動操作される。操作アーム59が揺動操作されると、左右のアーム部56aが軸芯Pを揺動支点にして揺動操作され、左右の開度調節部材55がアーム部56aによって揺動操作される。開度調節部材55が揺動操作されると、吸気口31bのうちの開度調節部材55によって閉じられる部分の面積が変化し、吸気口31bの開度が変化する。
【0041】
電動モータ60による左右の開度調節部材55の揺動操作により、左右の吸気口31bの開度調節が行われて唐箕31の吸気量が調節され、唐箕31によって供給される選別風の風量調節が行われる。
【0042】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、扱胴変速装置32が分割外装カバー50bによって走行機体横外側から覆わる例を示したが、扱胴変速装置32がカバーによって覆われず、開放されたままになる構成を採用してもよい。
【0043】
(2)上記した実施形態では、前横向きカバー部51を備えた例を示したが、前横向きカバー部51を備えないで実施してもよい。
【0044】
(3)上記した実施形態では、扱胴変速装置32の入力軸32aから搬送部10に動力伝達される構成を示したが、扱胴変速装置32を介さないで搬送部10に動力伝達される構成を採用してもよい。
【0045】
(4)上記した実施形態では、エンジン25からの動力が唐箕31をカウンター手段にして扱胴変速装置32に伝達される構成を示したが、専用のカウンター軸を設けて実施してもよい。
【0046】
(5)上記した実施形態では、扱胴変速装置32において、入力軸32aが出力軸32bより上方に位置する例を示したが、入力軸32aが出力軸32bより下方に位置する構成、あるいは、入力軸32a及び出力軸32bが前後方向に並ぶ構成を採用してもよい。
【0047】
(6)上記した実施形態では、出力軸32bから扱胴駆動部34への伝動系が入力軸32aから搬送部10への伝動系よりも走行機体横外側に位置する例を示したが、逆になる配置構成を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、稲、麦、大豆の他、トウモロコシなどの各種の作物を収穫対象とする各種の収穫機に適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 走行機体
1a 機体フレーム
6 脱穀装置
10 搬送部
10a 駆動軸
11 刈取部
31 唐箕
32 扱胴変速装置
32a 入力軸
32b 出力軸
32c 変速操作部
34 扱胴駆動部
50a 外装カバー(分割外装カバー)
51 前横向きカバー部