特許第6861112号(P6861112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861112
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】自動車のロッカ部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   B62D25/20 F
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-132659(P2017-132659)
(22)【出願日】2017年7月6日
(65)【公開番号】特開2019-14357(P2019-14357A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2019年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岸 和彦
(72)【発明者】
【氏名】三井 陽介
(72)【発明者】
【氏名】白井 靖泰
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−106836(JP,A)
【文献】 特開2001−30950(JP,A)
【文献】 特開2004−224097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08,25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッカアウタリーンフォースメント及びロッカインナリーンフォースメントで中空の閉断面構造に形成され、車両フロアの側面下縁に設けられた自動車のロッカ部において、
フロントサイドドア開口部又はリヤサイドドア開口部の下縁に配置される前記ロッカ部の部位の閉断面高さ位置は、当該ロッカ部の他の部位の閉断面高さ位置より低く設けられ、且つ当該ロッカ部の中間位置にはその高さ位置の差異に基づき前記閉断面高さ位置が徐々に変化する徐変区間が設けられ、
前記ロッカ部の前記徐変区間と共に当該徐変区間の両端側それぞれに形成される変曲点は、車両上下方向に延設されたBピラーの車両前後幅方向内に収まるように当該Bピラーに接合され、
前記ロッカ部の前記閉断面高さ位置が低い部位には、前記ロッカアウタリーンフォースメントと前記ロッカインナリーンフォースメントとの結合側間に当該ロッカ部の当該低い部位の変形を抑制するためのシェアパネルが車両前後方向に亘って挟着され、
前記ロッカアウタリーンフォースメント及び前記ロッカインナリーンフォースメントは、少なくとも一部が、引張り強さが1180MPaの超高張力鋼板、若しくはそれ以上で当該各ロッカリーンフォースメントの形状をプレス成形可能な引張り強さの超高張力鋼板で構成されていることを特徴とする自動車のロッカ部構造。
【請求項2】
前記ロッカ部の前記閉断面高さ位置が低い部位における前記ロッカインナリーンフォースメントの上側部位の稜線における屈曲部を含む内側面には、当該ロッカインナリーンフォースメントの当該低い部位の変形を抑制するための補強部材が車両前後方向に亘って肩パッチ状に補強されていることを特徴とする請求項1記載の自動車のロッカ部構造。
【請求項3】
前記ロッカアウタリーンフォースメント及び前記ロッカインナリーンフォースメントはそれぞれ車両前後方向で2分割され、
前側の各ロッカリーンフォースメントは、それぞれ前記ロッカ部の前記閉断面高さ位置が低い部位となる部位が、車両後方向に向かって中間位置まで延設され、引張り強さが1180MPaの超高張力鋼板、若しくはそれ以上で当該各ロッカリーンフォースメントの形状をプレス成形可能な引張り強さの超高張力鋼板で構成されており、
後側の各ロッカリーンフォースメントは、引張り強さが590MPa以下の高張力鋼板で構成されていること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動車のロッカ部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両フロアの側面下縁に設けられた自動車のロッカ部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のサイドドアからの乗降性を向上させるために、サイドドア開口部の下縁に設けられたサイドシル(ロッカともいう。)の閉断面高さ位置を下げて足上げ量を低減させているものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照。)。
【0003】
また、特許文献1に開示された自動車の車体構造及び特許文献2に開示されたフロア構造においては、サイドシルは、車体前後方向における中間位置に設けられた傾斜部やその傾斜部の車体後方側にフロアクロスメンバが連結されている。これにより、フロアクロスメンバはサイドシルを補強することになる。
【0004】
さらに、特許文献3に開示された自動車の車体側部構造においては、サイドシルは、センターピラーの下端に設けられ、車体前後方向に延びると共に当該センターピラーの車体前側が車体後側より閉断面高さ位置が低く形成されている。これにより、センターピラーはサイドシルを補強することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3763146号公報
【特許文献2】特開2000−318654号公報
【特許文献3】特許第3736214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の自動車の車体構造では、フロントシートの下方に配置されるフロアクロスメンバの断面高さ位置にサイドシルの閉断面高さ位置を合わせていることから、サイドシルをフロアクロスメンバとの結合部から前方に向かって急激に下げる必要があるので、車体前方から衝突エネルギを受けた際に、その斜面の両端側それぞれに形成される変曲点に対して著しく応力が集中する虞があった。
【0007】
また、特許文献2のフロア構造では、フロアクロスメンバが、サイドシルに形成された斜面の後端側に形成される変曲点より前側で連結されると共に、その斜面の後端側に形成される変曲点の位置に連結されているので、車体前方から衝突エネルギを受けた際に、その斜面の両端側それぞれに形成される変曲点に対して著しく応力が集中する虞があった。
【0008】
また、特許文献3の自動車の車体側部構造では、センターピラーから車体前方に位置するフロアクロスメンバまでの間でサイドシルの閉断面高さ位置を下げているので、車体前方から衝突エネルギを受けた際に、サイドシルのセンターピラーとの車体前側の接続部位に対して著しく応力が集中する虞があった。
【0009】
このように、各構造ではサイドシルに対する応力集中により、その応力集中する部位で折れる虞があり、また、ボデー剛性が低下して、乗り心地の悪化やNVレベル(ドライバが感じる騒音や振動についての快適性の指標)の低下等が懸念されていた。
【0010】
なお、このようなサイドシルに対する応力集中を防ぐために、サイドシルを構成する部材の板厚を厚くすることが考えられるが、車両全体の重量増加を招くので、この対策では燃費を悪化させてしまう難点があった。
【0011】
本発明は、このような従来の難点を解消するためになされたもので、ロッカ部の一箇所のサイドドア開口部の下縁に設けられた部位だけの閉断面高さ位置を下げても、衝突安全性能及びボデー剛性を低下させることなく当該ロッカ部の重量を低下させることができる自動車のロッカ部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成する本発明の第1の態様である自動車のロッカ部構造は、ロッカアウタリーンフォースメント及びロッカインナリーンフォースメントで中空の閉断面構造に形成され、車両フロアの側面下縁に設けられたロッカ部に関するものである。
フロントサイドドア開口部又はリヤサイドドア開口部の下縁に配置されるロッカ部の部位の閉断面高さ位置は、当該ロッカ部の他の部位の閉断面高さ位置より低く設けられ、且つ当該ロッカ部の中間位置にはその高さ位置の差異に基づき閉断面高さ位置が徐々に変化する徐変区間が設けられているものである。
ロッカ部の徐変区間と共に当該徐変区間の両端側それぞれに形成される変曲点は、車両上下方向に延設されたBピラーの車両前後幅方向内に収まるように当該Bピラーに接合されているものである。なお、本明細書において、「延設」とは、一方向に延びるように設けることを意味する。
ロッカ部の閉断面高さ位置が低い部位には、ロッカアウタリーンフォースメントとロッカインナリーンフォースメントとの結合側間に当該ロッカ部の当該低い部位の変形を抑制するためのシェアパネルが車両前後方向に亘って挟着されているものである。なお、本明細書において、「挟着」とは、挟んだ状態に着けることを意味する。
ロッカアウタリーンフォースメント及びロッカインナリーンフォースメントの少なくとも一部は、引張り強さが1180MPaの超高張力鋼板、若しくはそれ以上で当該各ロッカリーンフォースメントの形状をプレス成形可能な引張り強さの超高張力鋼板で構成されているものである。
【0013】
このような第1の態様である自動車のロッカ部構造によれば、第1に、主要断面構成部品であるロッカアウタリーンフォースメント及びロッカインナリーンフォースメントの少なくとも一部の材質に、引張り強さが1180MPaの超高張力鋼板、若しくはそれ以上で当該各ロッカリーンフォースメントの形状をプレス成形可能な引張り強さの超高張力鋼板を採用しているので、従来、ロッカ部に使用されていた引張り強さが590MPa以下の高張力鋼板の板厚より薄くしても、フロントサイドドア開口部又はリヤサイドドア開口部の下縁に配置されるロッカ部の閉断面高さ位置を下げることが可能になる。
これにより、地面及び車内フロア間における足上げ量を低減させることができ、特に、車内フロアから地面への降車時には車内フロア段差をなくすことができるので、足をサイドドア開口部から出し易くなる。また、従来、ロッカ部に使用されていた引張り強さが590MPa以下の高張力鋼板の板厚より薄くしても、ロッカ部のフロントサイドドア開口部又はリヤサイドドア開口部の閉断面高さ位置を下げることが可能になるので、ロッカ部は重量を増加させることなく必要とされている曲げ耐力(断面耐力)を得ることができる。
【0014】
第2に、ロッカ部の閉断面高さ位置が低い部位は、ロッカアウタリーンフォースメントとロッカインナリーンフォースメントとの結合側間に、車両前後方向に亘ってシェアパネルを配置させることから車両前後ベクトルのロッカ部の曲げを抑制でき、而も車両上下方向に沿うようにシェアパネルを配置させることができることから車両上下ベクトルのロッカ部の曲げ変形による折れ曲がり(断面崩れ)を抑制することができるので、ロッカ部の閉断面高さ位置をリヤサイドドア開口部の位置で低くしてもボデー剛性の低下を防ぐことができる。即ち、このシェアパネルはロッカ部の閉断面高さ位置が低い部位だけに挟着させるだけも、ロッカアウタリーンフォースメント及びロッカインナリーンフォースメントが上述のような超高張力鋼板で形成されているので、ロッカ部全体の断面耐力を得ることができる。
【0015】
第3に、ロッカ部の徐変区間と共に当該徐変区間の両端側それぞれに形成される変曲点は、車両上下方向に延設されたBピラーの車両前後幅方向内に収まるように当該Bピラーに接合されているので、車両前方あるいは車両後方から衝突エネルギを受けた際に、Bピラーの強度・剛性によってロッカ部の徐変区間の両端側それぞれに形成される変曲点に対して応力が集中してしまうことを防ぐことができる。
【0016】
本発明の第2の態様は第1の態様である自動車のロッカ部構造において、ロッカ部の閉断面高さ位置が低い部位におけるロッカインナリーンフォースメントの上側部位の稜線における屈曲部を含む内側面には、当該ロッカインナリーンフォースメントの当該低い部位の変形を抑制するための補強部材が車両前後方向に亘って肩パッチ状に補強されているものである。
【0017】
このような第2の態様である自動車のロッカ部構造によれば、車両前方あるいは車両後方から衝突エネルギを受けた際に、ロッカ部の閉断面高さ位置が低い部位における応力が集中し易いロッカインナリーンフォースメントに対して補強部材が車両前後方向に亘って肩パッチ状に補強されているので、この部位における車両前後方向に沿った稜線耐力を補強することができる。
【0018】
本発明の第3の態様は第1の態様又は第2の態様である自動車のロッカ部構造において、ロッカアウタリーンフォースメント及びロッカインナリーンフォースメントは、車両前後方向で2分割され、前側の各ロッカリーンフォースメントはそれぞれロッカ部の閉断面高さ位置が低い部位の車両前後方向における中間位置まで含んで形成され、引張り強さが1180MPaの超高張力鋼板、若しくはそれ以上で当該各ロッカリーンフォースメントの形状をプレス成形可能な引張り強さの超高張力鋼板で構成されており、後側の各ロッカリーンフォースメントは、引張り強さが590MPa以下の高張力鋼板で構成されているものである。
【0019】
このような第3の態様である自動車のロッカ部構造によれば、後側の各ロッカリーンフォースメントをそれぞれ複雑な3次元形状に形成されるサイメンアウタのリヤピラー部位やホイールハウスに接合可能な形状に形成させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の自動車のロッカ部構造によれば、自動車のサイドドアからの乗降性を向上させるために、ロッカ部の一箇所のサイドドア開口部の下縁に設けられた部位だけの閉断面高さ位置を下げても、衝突安全性能及びボデー剛性を低下させることなく当該ロッカ部の重量を低下させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の自動車のロッカ部構造における好ましい実施の形態例を示す図で、(A)はロッカ部のロッカインナリーンフォースメント及びそれに関連する部材を除いた側面図、(B)はロッカ部のロッカアウタリーンフォースメント及びそれに関連する部材を除いた側面図、(C)は(A)及び(B)のA−A線断面を重ねた図である。
図2図1に示したロッカ部の説明図で、(A)はサイメンアウタとの関係を示す側面図、(B)はサイメンアウタ及びフロアパネルとの関係を示す断面図である。
図3図1に示したロッカ部の各部材を示す分解図である。
図4図1に示したロッカ部の閉断面高さ位置が低い部位の変形動作状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の自動車のロッカ部構造を実施するための形態例について、図面を参照して説明する。なお、本発明の自動車のロッカ部構造は車幅方向における左右同一構造なので、図1図3では車幅方向の一方向側のみを示し、この一方向側について説明する。また、この発明を実施するための形態で使用する各図中において矢印で方向を示してあるが、これは運転席に着座した乗員から見た方向を示している。矢印UPRは車両上方向、矢印FRは車両前方向、矢印LHは車両左方向をそれぞれ示している。
【0023】
本発明の自動車のロッカ部構造が適用されるロッカ部は、車両フロアの側面下縁に車両前後方向に亘って設けられ、車両の側面開口部を構成する強度メンバの中のひとつである。このロッカ部は、例えば図2(A)、(B)に示すように、水平に回動して開閉するヒンジドアをサイドドア(図示せず。)に有する4ドア車や5ドア車のボデー本体の側面を構成するサイドアウタパネル(以下、「サイメンアウタ」と称する。)8のフロントサイドドア開口部81及びリヤサイドドア開口部82の下縁に配置され、車両前部がフロントピラーロワ(図示せず。)に接合され、車両後部がサイメンアウタ8やホイールハウス(図示せず。)に接合されている。また、ロッカ部1は、車両外側側部がサイメンアウタ8に接合され、車両底部がフロアパネル9に接合されている。
【0024】
なお、ここで言うサイメンアウタ8は、ロッカ部1に接合するためのロッカ部位83に対して、車両前側にフロントピラーロア部位84、車両後側にリヤピラー部位85、車両前後間にBピラー(センターピラー)部位86がそれぞれ形成されている。
【0025】
このような4ドア車や5ドア車に採用される本発明の自動車のロッカ部構造は、図1(A)、(B)、(C)、図2(A)、(B)、図3に示すように、ロッカアウタリーンフォースメント2と、ロッカインナリーンフォースメント3と、シェアパネル4と、第1の補強部材5と、第2の補強部材6とを備えている。このロッカ部1は、車両外側方向に配置されるロッカアウタリーンフォースメント2と、車両内側方向に配置されるロッカインナリーンフォースメント3とを接合することにより中空の閉断面構造に形成されている。
【0026】
例えば、ロッカアウタリーンフォースメント2は、当該ロッカアウタリーンフォースメント2の長手方向(軸線方向)において車両後側から見た形状が、開口部が車両内方向に向いている断面略ハット形状に形成され、ロッカインナリーンフォースメント3は、当該ロッカインナリーンフォースメント3の長手方向(軸線方向)において車両後側から見た形状が、開口部が車両外方向に向いている断面略ハット形状に形成されている。即ち、ロッカアウタリーンフォースメント2及びロッカインナリーンフォースメント3は、開口側が互いに対向して配置されている。
【0027】
また、ロッカアウタリーンフォースメント2及びロッカインナリーンフォースメント3を接合することにより形成される閉断面における両端の接合部には、ロッカ部1の長手方向に沿ってロッカアウタリーンフォースメント2及びロッカインナリーンフォースメント3それぞれにフランジ2a、2b、3a、3bが延設され、ロッカアウタリーンフォースメント2の上側となる一方のフランジ2aと、ロッカインナリーンフォースメント3の上側となる一方のフランジ3aとを接合させ、ロッカアウタリーンフォースメント2の下側となる他方のフランジ2bと、ロッカインナリーンフォースメント3の下側となる他方のフランジ3bとを接合させることで、ロッカ部1の両端の接合部にフランジ部11a、11bが延設されることになる。
【0028】
また、サイメンアウタ8のリヤサイドドア開口部82の下縁に配置されるロッカ部1の部位12の閉断面高さ位置は、サイメンアウタ8のフロントサイドドア開口部81の下縁に配置されるロッカ部1の部位13の閉断面高さ位置より低く設けられている。さらに、当該ロッカ部1の中間位置にはその高さ位置の差異に基づき閉断面高さ位置が徐々に変化する徐変区間14が設けられている。
【0029】
このロッカ部1の閉断面高さ位置が低い部位12には、ロッカアウタリーンフォースメント2とロッカインナリーンフォースメント3との結合側間に当該ロッカ部1の当該低い部位12の変形を抑制するためのシェアパネル4が車両前後方向に亘って挟着されている。即ち、シェアパネル4は、上側がロッカアウタリーンフォースメント2の上側となる一方のフランジ2aと、ロッカインナリーンフォースメント3の上側となる一方のフランジ3aとの間に接合され、下側がロッカアウタリーンフォースメント2の下側となる他方のフランジ2bと、ロッカインナリーンフォースメント3の下側となる他方のフランジ3bとの間に接合されることになる。
【0030】
このようなシェアパネル4は、ロッカ部1の上部接合部であるフランジ部11aと、下部接合部であるフランジ部11bとに挟着させることができるので、垂直に設置、即ち、車両上下方向に沿うように配置させることが可能になる。
【0031】
また、ロッカ部1の徐変区間14と共に当該徐変区間14の両端側それぞれに形成される変曲点14a、14bは、車両上下方向に延設されたBピラー7の車両前後幅方向内に収まるように当該Bピラー7に接合されている。なお、Bピラー7は、車両外側方向に配置されるBピラーアウタリーンフォースメント71と、車両内側方向に配置されるBピラーインナリーンフォースメント72とを接合することにより中空の閉断面構造に形成されている。したがって、ロッカアウタリーンフォースメント2はBピラーアウタリーンフォースメント71に接合され、ロッカインナリーンフォースメント3はBピラーインナリーンフォースメント72に接合されている。
【0032】
このようなロッカ部1の構成要素であるロッカアウタリーンフォースメント2及びロッカインナリーンフォースメント3は、引張り強さが1180MPaの超高張力鋼板、若しくはそれ以上で当該各ロッカリーンフォースメントの形状をプレス成形可能な引張り強さの超高張力鋼板で構成されている。
【0033】
なお、ロッカアウタリーンフォースメント2及びロッカインナリーンフォースメント3が、各々断面略ハット形状に形成されている場合には、当該ロッカ部1に必要な剛性強度を確保する断面積となる部位においてはその断面形状の大きさが実質的に同一になるように形成されている。したがって、ロッカアウタリーンフォースメント2とロッカインナリーンフォースメント3との断面形状の大きさは、当該ロッカ部1に必要な剛性強度を確保する断面積を有していれば、完全一致でなくてもよい。
【0034】
また、ロッカ部1の閉断面高さ位置が低い部位12におけるロッカインナリーンフォースメント3の上側部位の稜線における屈曲部3cを含む内側面には、当該ロッカインナリーンフォースメント3の当該低い部位12の変形を抑制するための第1の補強部材5が車両前後方向に亘って肩パッチ状に補強されている。この第1の補強部材5は、各ロッカリーンフォースメントと同一鋼板であり、ロッカインナリーンフォースメント3に対して接合されている。
【0035】
また、ロッカ部1の閉断面高さ位置が低い部位12におけるロッカアウタリーンフォースメント2の内側面には、そこに嵌合するような大きさの断面略ハット形状に形成された第2の補強部材6が車両前後方向に亘って固定されている。この第2の補強部材6は、ロッカアウタリーンフォースメント2と同一鋼板であり、ロッカアウタリーンフォースメント2に対して接合されている。
【0036】
また、ロッカ部1のロッカアウタリーンフォースメント2及びロッカインナリーンフォースメント3は、車両前後方向で2分割されていてもよい。この場合、前側の各ロッカリーンフォースメント21、31はそれぞれロッカ部1の閉断面高さ位置が低い部位12の車両前後方向における中間位置まで含んで形成されている。前側の各ロッカリーンフォースメント21、31は、引張り強さが1180MPaの超高張力鋼板、若しくはそれ以上で当該各ロッカリーンフォースメントの形状をプレス成形可能な引張り強さの超高張力鋼板で構成され、後側の各ロッカリーンフォースメント22、32は、引張り強さが590MPa以下の高張力鋼板で構成されている。
【0037】
なお、本発明の自動車のロッカ部構造における部材の接合には、例えばスポット溶接やレーザー溶接が採用される。
【0038】
このように構成された本発明の自動車のロッカ部構造によれば、以下のような作用、効果を奏することができる。
【0039】
第1に、主要断面構成部品であるロッカアウタリーンフォースメント2及びロッカインナリーンフォースメント3の材質に、引張り強さが1180MPaの超高張力鋼板、若しくはそれ以上で当該各ロッカリーンフォースメント2、3の形状をプレス成形可能な引張り強さの超高張力鋼板を採用しているので、従来、ロッカ部1に使用されていた引張り強さが590MPa以下の高張力鋼板の板厚より薄くしても、サイメンアウタ8のリヤサイドドア開口部82の下縁に配置されるロッカ部1の閉断面高さ位置を下げることが可能になる。
【0040】
これにより、リヤサイドドアにおける地面及び車内フロア間における足上げ量を低減させることができ、特に、車内フロアから地面への降車時には車内フロア段差をなくすことができるので、足をリヤサイドドア開口部から出し易くなる。また、従来、ロッカ部1に使用されていた引張り強さが590MPa以下の高張力鋼板の板厚より薄くしても、ロッカ部1のリヤサイドドア開口部の閉断面高さ位置を下げることが可能になるので、ロッカ部1は重量を増加させることなく必要とされている曲げ耐力(断面耐力)を得ることができる。
【0041】
第2に、ロッカ部1の閉断面高さ位置が低い部位12は、ロッカアウタリーンフォースメント2とロッカインナリーンフォースメント3との結合側間に、車両前後方向に亘ってシェアパネルを配置させることから車両前後ベクトルのロッカ部の曲げを抑制でき、而も車両上下方向に沿うようにシェアパネルを配置させることができることから車両上下ベクトルのロッカ部の曲げ変形による折れ曲がり(断面崩れ)を抑制することができるので、ロッカ部1の閉断面高さ位置をリヤサイドドア開口部の位置で低くしてもボデー剛性の低下を防ぐことができる。即ち、このシェアパネルはロッカ部の閉断面高さ位置が低い部位だけに挟着させるだけも、ロッカアウタリーンフォースメント2及びロッカインナリーンフォースメント3が上述のような超高張力鋼板で形成されているので、ロッカ部全体の断面耐力を得ることができる。
【0042】
このようにシェアパネル4を用いるのは、シェアパネル4を用いずにロッカ部1の閉断面高さ位置をリヤサイドドア開口部において低くすると、ロッカ部1の閉断面高さ位置が高い部位に比べて強度・剛性が低下するからである。
【0043】
また、このようなシェアパネル4は、車両前後ベクトルのロッカ部1の曲げと共に車両上下ベクトルのロッカ部の断面崩れを抑制するために、極力シェア面とすることで効果が得られる。
【0044】
第3に、ロッカ部1の徐変区間14と共に当該徐変区間14の両端側それぞれに形成される変曲点14a、14bは、車両上下方向に延設されたBピラー7の車両前後幅方向内に収まるように当該Bピラー7に接合されているので、車両前方あるいは車両後方から衝突エネルギを受けた際に、Bピラー7の強度・剛性によってロッカ部1の徐変区間14の両端側それぞれに形成される変曲点14a、14bに対して応力が集中してしまうことを防ぐことができる。
【0045】
このように、本発明の自動車のロッカ部構造では、ロッカ部1のリヤサイドドア開口部の下縁に設けられた部位だけの閉断面高さ位置を下げても、衝突安全性能及びボデー剛性の低下を防ぐことができるので、乗り心地の悪化やNVレベルの低下等を防ぐことができる。
【0046】
また、ロッカアウタリーンフォースメント2及びロッカインナリーンフォースメント3が、各々断面略ハット形状に形成され、且つBピラー7の車両前後幅の中で最大限緩やかに断面高さを徐変していれば、引張り強さが1180MPaの超高張力鋼板、若しくはそれ以上で当該各ロッカリーンフォースメントの形状をプレス成形可能な引張り強さの超高張力鋼板で構成されているロッカアウタリーンフォースメント2及びロッカインナリーンフォースメント3においてもプレス成形が可能になり、また、これらリーンフォースメントの当該ロッカ部1に必要な剛性強度を確保する断面積となる部位においてはその断面形状の大きさが実質的に同一になるように形成されているので、当該ロッカ部全体の強度・剛性を向上させることができる。
【0047】
また、車両前方あるいは車両後方から衝突エネルギを受けた際に、ロッカ部1の閉断面高さ位置が低い部位12における応力が集中し易いロッカインナリーンフォースメント3に対して第1の補強部材5が車両前後方向に亘って肩パッチ状に補強されていれば、この部位における車両前後方向に沿った稜線耐力を補強することができる。なお、ロッカ部1の閉断面高さ位置が低い部位12のロッカインナリーンフォースメント3に対して応力が集中し易くなるのは、このロッカインナリーンフォースメント3がフロントピラーロワ及びホイールハウスに接合されているからである。
【0048】
また、第1の補強部材5に加えて、ロッカ部1の閉断面高さ位置が低い部位12におけるロッカアウタリーンフォースメント2の内側面に、上述したような第2の補強部材6が車両前後方向に亘って固定されていれば、この部位におけるロッカアウタリーンフォースメント2を補強することができるので、ロッカ部1の閉断面高さ位置が低い部位12の強度・剛性を向上させることができる。
【0049】
また、第1の補強部材5を各ロッカリーンフォースメントと同一鋼板で構成することで、当該ロッカ部1の閉断面高さ位置が低い部位12におけるロッカ部1の全断面塑性モーメントの値を上げることができる。したがって、ロッカ部1を軽量化させても衝突安全性能を確保することができる。
【0050】
また、ロッカアウタリーンフォースメント2及びロッカインナリーンフォースメント3を、それぞれ車両前後方向で2分割にすると共に、前側の各ロッカリーンフォースメント21、31をそれぞれロッカ部1の閉断面高さ位置が低い部位12の車両前後方向における中間位置まで含んで形成し、後側の各ロッカリーンフォースメント22、32は、引張り強さが590MPa以下の高張力鋼板で構成することで、後側の各ロッカリーンフォースメント22、32をそれぞれ複雑な3次元形状に形成されるサイメンアウタ8のリヤピラー部位85やホイールハウスに接合可能な形状に形成させることができる。
【0051】
上述した実施例においては、本発明の自動車のロッカ部構造は、ロッカ部1の閉断面高さ位置が低い部位12が、サイメンアウタ8のリヤサイドドア開口部82の下縁に配置されていたが、これに限らず、サイメンアウタ8のフロントサイドドア開口部81の下縁に配置されていてもよい。即ち、サイメンアウタ8のフロントサイドドア開口部81の下縁に配置されるロッカ部の閉断面高さ位置が低い部位に、シェアパネル、第1の補強部材、第2の補強部材を上述のように設けることで、サイメンアウタ8のリヤサイドドア開口部82の下縁に配置されるロッカ部の閉断面高さ位置が低い部位と同様の作用、効果を得ることができる。したがって、サイドドアが車両の両側面に1箇所ずつしかない2ドア車や3ドア車にも採用することができる。
【0052】
次に、本発明の自動車のロッカ部構造が適用されたロッカ部の変位解析を行った。解析装置は、FEM(有限要素法)による汎用解析プログラムである構造解析ソルバをインストールしたパーソナルコンピュータを使用した。また、解析に使用した自動車のフレームは4ドアセダン系である。ロッカ部の変位解析は、車両の捻り剛性解析荷重を所定値に設定して行った。
【0053】
解析結果は図4に示すもので、実線部が捻る前、一点鎖線部が捻った後の図である。即ち、本発明の自動車のロッカ部構造が適用されたロッカ部1は左図に示すように、シェアパネル4を有しているので、上方向に向かって少し変形しているが、車両上下ベクトルのロッカ部の断面崩れを抑制できることがわかった。これに対してシェアパネル4を有していないロッカ部1は右図に示すように、上方向に向かって本発明の自動車のロッカ部構造より大きく変形してしまうので、車両上下ベクトルのロッカ部の断面崩れを抑制できないことがわかった。
【0054】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0055】
1……ロッカ部
12……閉断面高さ位置が低い部位
14……徐変区間
14a、14b……変曲点
2……ロッカアウタリーンフォースメント
21……前側のロッカアウタリーンフォースメント
22……後側のロッカアウタリーンフォースメント
3……ロッカインナリーンフォースメント
31……前側のロッカインナリーンフォースメント
32……後側のロッカインナリーンフォースメント
3c……上側部位の稜線における屈曲部
4……シェアパネル
5……第1の補強部材(肩パッチ)
7……Bピラー
71……Bピラーアウタリーンフォースメント
72……Bピラーインナリーンフォースメント
8……サイメンアウタ
81……フロントサイドドア開口部
82……リヤサイドドア開口部
83……ロッカ部位
84……フロントピラーロア部位
85……リヤピラー部位
図1
図2
図3
図4