特許第6861119号(P6861119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6861119ダイカスト成形機およびダイカスト成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861119
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】ダイカスト成形機およびダイカスト成形方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/00 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   B22D17/00 316
   B22D17/00 350
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-142090(P2017-142090)
(22)【出願日】2017年7月21日
(65)【公開番号】特開2019-18242(P2019-18242A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】中田 光栄
(72)【発明者】
【氏名】相田 悟
【審査官】 瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−219121(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0279479(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101007342(CN,A)
【文献】 特開2006−239708(JP,A)
【文献】 特開平10−296419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型および移動型を含む金型と、
前記固定型に取り付けられた筒形状の射出スリーブと、
前記移動型を前記固定型に対して移動させて前記金型の型締めを行う型締機構と、
型開き状態にある前記固定型と前記移動型との間に配置された筒形状の容器内の半凝固金属を前記射出スリーブ内に押し出して投入する押出機構と、
型締め状態にある前記金型に前記押出機構により前記射出スリーブ内に投入された前記半凝固金属を射出するプランジャと、を備える、ダイカスト成形機。
【請求項2】
前記押出機構は、前記移動型に設けられ、前記移動型の移動方向から見て、前記射出スリーブと重なる位置に配置されている、請求項1に記載のダイカスト成形機。
【請求項3】
前記移動型に設けられた前記押出機構は、前記型締機構により前記移動型とともに前記固定型側に移動されることにより、前記容器内の前記半凝固金属を押し出すように構成されている、請求項2に記載のダイカスト成形機。
【請求項4】
前記押出機構は、前記容器内の前記半凝固金属に接触して前記半凝固金属を押し出す押圧部と、前記移動型の移動方向に前記押圧部を移動させる本体部とを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のダイカスト成形機。
【請求項5】
前記移動型には、前記本体部が配置される空間部と、前記移動型の前記固定型側の端部と前記空間部とを連通する貫通穴とが設けられており、
前記押圧部は、前記貫通穴を塞ぐように、前記貫通穴に通されている、請求項4に記載のダイカスト成形機。
【請求項6】
前記押出機構は、前記型締機構により前記移動型とともに前記固定型側に移動されることにより、前記容器内の前記半凝固金属を押圧することによって、前記容器から前記半凝固金属を剥がした後、前記本体部により前記半凝固金属を押し出して、前記射出スリーブ内に前記半凝固金属を投入するように構成されている、請求項4または5に記載のダイカスト成形機。
【請求項7】
前記押出機構は、エアシリンダを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のダイカスト成形機。
【請求項8】
前記押出機構は、前記射出スリーブ内の前記固定型の分割面近傍に前記半凝固金属を押し出すように構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のダイカスト成形機。
【請求項9】
前記固定型が取り付けられる固定ダイプレートをさらに備え、
前記プランジャの前記移動型側の先端部は、射出のために移動を開始する際に、前記固定ダイプレートの内側に配置されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のダイカスト成形機。
【請求項10】
前記押出機構は、前記容器の一方開口部に配置され、前記半凝固金属の凝固した底部を押圧することにより、前記容器内の前記底部を含む前記半凝固金属を押し出すように構成されており、
前記移動型には、前記金型の湯道とは異なる位置で、前記移動型の移動方向から見て、前記射出スリーブと重なる位置に、前記プランジャにより射出された前記底部を格納する凹部が設けられている、請求項1〜9のいずれか1項に記載のダイカスト成形機。
【請求項11】
半凝固金属が収容された筒形状の容器を保持する搬送装置を用いて、固定型と移動型との間に前記容器を配置する工程と、
前記移動型に設けられた押出機構を用いて、前記固定型と前記移動型との間に配置された前記容器内の前記半凝固金属を射出スリーブ内に押し出す工程と、
前記移動型と、前記押出機構により押し出されて前記射出スリーブ内に前記半凝固金属が投入された前記固定型とを型締めする工程と、
プランジャを用いて、前記射出スリーブ内に押し出された前記半凝固金属を型締めされた金型内に射出する工程とを備える、ダイカスト成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダイカスト成形機およびダイカスト成形方法に関し、特に、半凝固金属を射出して成形品を成形するダイカスト成形機およびダイカスト成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半凝固スラリー状合金(半凝固金属)を射出して成形品を成形するダイカストマシンが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、固定金型および可動金型を含む金型と、固定金型に取り付けられたスリーブと、スリーブ内に投入された半凝固スラリー状合金を金型内に射出するためのプランジャとを備えるダイカストマシンが開示されている。なお、半凝固スラリー状合金は、半凝固スラリー形成用カップ(容器)から金型の外で取り出された後、ロボットチャックに直接保持されて、型開き状態の固定金型と移動金型との間から、スリーブ内に投入される。プランジャは、スリーブ内に投入された半溶融金属を、型締め後に、金型内に射出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−239708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたダイカストマシンでは、半凝固スラリー状合金(半凝固金属)をスリーブに投入する際に、半凝固スラリー状合金がロボットチャックに直接保持されることから、半凝固スラリー状合金の形状が崩れてしまうとともに、半凝固スラリー状合金の熱がロボットチャックに奪われてしまうという問題点がある。なお、半凝固スラリー状合金の形状が崩れると、射出時において半凝固スラリー状合金に空気が巻き込まれやすくなるため好ましくない。また、半凝固スラリー状合金の熱がロボットチャックに奪われると、半凝固スラリー状合金の流動性が低下して充填不良が生じやすくなるため好ましくない。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、射出スリーブに投入される半凝固金属の形状が崩れることを抑制しつつ、射出スリーブに投入される半凝固金属から熱が奪われることを抑制することが可能なダイカスト成形機およびダイカスト成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この第1の発明によるダイカスト成形機は、固定型および移動型を含む金型と、固定型に取り付けられた筒形状の射出スリーブと、移動型を固定型に対して移動させて金型の型締めを行う型締機構と、型開き状態にある固定型と移動型との間に配置された筒形状の容器内の半凝固金属を射出スリーブ内に押し出して投入する押出機構と、型締め状態にある金型に押出機構により射出スリーブ内に投入された半凝固金属を射出するプランジャと、を備える。
【0008】
このダイカスト成形機は、上記のように、型開き状態において、固定型と移動型との間に配置された筒形状の容器内の半凝固金属を射出スリーブ内に押し出して投入する押出機構を設ける。これにより、押出機構によって固定型と移動型との間に配置された容器内の半凝固金属を押し出して直接射出スリーブに投入することができる。その結果、従来のようにロボットチャックなどにより半凝固金属を直接保持する必要がないため、射出スリーブに投入される半凝固金属の形状が崩れることを抑制することができる。また、半凝固金属が容器に収容された状態を維持しながら固定型と移動型との間に配置され、押出機構により押し出されて射出スリーブに直接投入されるので、一旦、半凝固金属が容器から出されてロボットチャックに把持される場合と比較して、射出スリーブに投入される半凝固金属から熱が奪われることを抑制することができる。
【0009】
上記のダイカスト成形機において、好ましくは、押出機構は、移動型に設けられ、移動型の移動方向から見て、射出スリーブと重なる位置に配置されている。このように構成すれば、射出スリーブが固定型に設けられるとともに、押出機構が移動型に設けられることにより、射出スリーブと押出機構との間に容器が配置されるので、押出機構により、射出スリーブに向けて容器内の半凝固金属を、容易に押し出すことができる。また、移動型の移動方向から見て、押出機構が射出スリーブと重なる位置に配置されるので、押出機構から射出スリーブに向けて真っ直ぐに半凝固金属を押すことができる。その結果、射出スリーブに投入される半凝固金属の形状が崩れることを抑制することができる。
【0010】
この場合において、好ましくは、移動型に設けられた押出機構は、型締機構により移動型とともに固定型側に移動されることにより、容器内の半凝固金属を押し出すように構成されている。このように構成すれば、ダイカスト成形機の型締動作を利用して半凝固金属を容器から押し出すことができるので、大きな外力により半凝固金属を押すことができる。その結果、容器に密着した半凝固金属を容易に剥がすことができる。
【0011】
上記のダイカスト成形機において、好ましくは、押出機構は、容器内の半凝固金属に接触して半凝固金属を押し出す押圧部と、移動型の移動方向に押圧部を移動させる本体部とを含む。このように構成すれば、半凝固金属を射出スリーブに投入する際に、半凝固金属に直接接する部分と、接触しない部分とを分けることができる。このため、半凝固金属を射出スリーブに投入する際に、本体部が高温の半凝固金属に直接さらされるのを防止することができる。
【0012】
この場合において、好ましくは、移動型には、本体部が配置される空間部と、移動型の固定型側の端部と空間部とを連通する貫通穴とが設けられており、押圧部は、貫通穴を塞ぐように、貫通穴に通されている。このように構成すれば、押圧部により貫通穴が塞がれるので、射出時において、貫通穴を介して空間部に半凝固金属が到達することを防止することができる。これにより、射出時において、本体部が高温の半凝固金属に直接さらされるのを防止することができる。
【0013】
上記押出機構が押圧部と本体部とを含む構成において、好ましくは、押出機構は、型締機構により移動型とともに固定型側に移動されることにより、容器内の半凝固金属を押圧することによって、容器から半凝固金属を剥がした後、本体部により半凝固金属を押し出して、射出スリーブ内に半凝固金属を投入するように構成されている。ここで、一般的に、半凝固金属は、容器に対して強固に密着している。このため、半凝固金属を容器から出すためには、はじめに半凝固金属を容器から剥がすことが必要となり、比較的に大きな外力(押圧力)が必要となる。そこで、上記のように構成すれば、ダイカスト成形機の型締動作を利用して半凝固金属を容器から容易に剥がすことができるとともに、機械的に大きな外力を発揮することができない押出機構であったとしても、容器内から半凝固金属を確実に押し出して射出スリーブに投入することができる。
【0014】
上記のダイカスト成形機において、好ましくは、押出機構は、エアシリンダを含む。このように構成すれば、電動式や油圧式の押出機構と比較して、エアシリンダにより、高温環境下で安定した性能を発揮することができる。
【0015】
上記のダイカスト成形機において、好ましくは、押出機構は、射出スリーブ内の固定型の分割面近傍に半凝固金属を押し出すように構成されている。このように構成すれば、キャビティに近い位置に半凝固金属を配置することができるので、プランジャにより射出する際に、比較的短い距離を押し出して半凝固金属をキャビティに導入することができる。その結果、プランジャのかじり(焼き付き)を抑制することができるとともに、半凝固金属がスリーブ内を移動される際の空気の巻込みを抑制することができる。
【0016】
上記のダイカスト成形機において、好ましくは、固定型が取り付けられる固定ダイプレートをさらに備え、プランジャの移動型側の先端部は、射出のために移動を開始する際に、固定ダイプレートの内側に配置されている。このように構成すれば、プランジャを固定ダイプレートの外側(金型から離間する側)に配置する場合と比較して、射出のためのプランジャの移動距離を短くすることができる。その結果、射出時間を短縮することができるので、成形サイクルを短縮することができる。
【0017】
上記のダイカスト成形機において、好ましくは、押出機構は、容器の一方開口部に配置され、半凝固金属の凝固した底部を押圧することにより、容器内の底部を含む半凝固金属を押し出すように構成されており、移動型には、金型の湯道とは異なる位置で、移動型の移動方向から見て、射出スリーブと重なる位置に、プランジャにより射出された底部を格納する凹部が設けられている。このように構成すれば、プランジャによって半凝固金属が金型内に押し出される射出時において、移動型の移動方向から見て、湯道とは異なる位置で、射出スリーブと重なる位置に設けられる凹部に半凝固金属の底部を格納することができる。その結果、底部を湯道から逸れた凹部内に置くことができるので、底部が湯道を塞ぐこと、および、底部が湯道を通る半凝固金属の流れを妨げることを抑制することができる。
【0018】
この第2の発明によるダイカスト成形方法は、半凝固金属が収容された筒形状の容器を保持する搬送装置を用いて、固定型と移動型との間に容器を配置する工程と、移動型に設けられた押出機構を用いて、固定型と移動型との間に配置された容器内の半凝固金属を射出スリーブ内に押し出す工程と、移動型と、押出機構により押し出されて射出スリーブ内に半凝固金属が投入された固定型とを型締めする工程と、プランジャを用いて、射出スリーブ内に押し出された半凝固金属を型締めされた金型内に射出する工程とを備える。
【0019】
このダイカスト成形方法は、上記のように、移動型に設けられた押出機構を用いて、固定型と移動型との間に配置された筒形状の容器内の半凝固金属を射出スリーブ内に押し出す。これにより、押出機構によって固定型と移動型との間に配置された容器内の半凝固金属を押し出して直接射出スリーブに投入することができる。その結果、従来のようにロボットチャックなどにより半凝固金属を直接保持する必要がないため、射出スリーブに投入される半凝固金属の形状が崩れることを抑制することが可能なダイカスト成形方法を得ることができる。また、半凝固金属が容器に収容された状態を維持しながら固定型と移動型との間に配置され、押出機構により押し出されて射出スリーブに直接投入されるので、一旦、半凝固金属が容器から出されてロボットチャックに把持される場合と比較して、射出スリーブに投入される半凝固金属から熱が奪われることを抑制することが可能なダイカスト成形方法を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上記のように、射出スリーブに投入される半凝固金属の形状が崩れることを抑制しつつ、射出スリーブに投入される半凝固金属から熱が奪われることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態によるダイカスト成形機の全体構成を示した模式図である。
図2】半凝固金属が収容される容器について説明するための図である。
図3】一実施形態による第1成形方法の第1工程について説明するための図である。
図4】一実施形態による第1成形方法の第2工程について説明するための図である。
図5】一実施形態による第1成形方法の第3工程について説明するための図である。
図6】一実施形態による第1成形方法の第4工程について説明するための図である。
図7】一実施形態による第1成形方法の第5工程について説明するための図である。
図8】一実施形態による第1成形方法の第6工程について説明するための図である。
図9】一実施形態による第2成形方法の第1工程について説明するための図である。
図10】一実施形態による第2成形方法の第2工程について説明するための図である。
図11】一実施形態による第2成形方法の第3工程について説明するための図である。
図12】一実施形態による第3成形方法の第1工程について説明するための図である。
図13】一実施形態による第3成形方法の第2工程について説明するための図である。
図14】一実施形態による第3成形方法の第3工程について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
[実施形態]
図1図14を参照して、一実施形態によるダイカスト成形機100の構成について説明する。
【0024】
(ダイカスト成形機の構成)
図1に示すように、ダイカスト成形機100は、固定ダイプレート101と、移動ダイプレート102と、移動ダイプレート駆動機構103と、ダイカスト成形用射出装置104と、固定型1aおよび移動型1bを含む金型105とを備えている。ダイカスト成形機100は、型締め状態の金型105内に、ダイカスト成形用射出装置104により半凝固金属Mを射出して成形品M0(図8参照)を形成するための装置である。また、移動ダイプレート駆動機構103は、特許請求の範囲の「型締機構」の一例である。
【0025】
なお、各図においては、移動型1bの移動方向をX方向とする。また、X方向のうち固定ダイプレート101から移動ダイプレート102に向かう方向をX1方向押し、その反対方向をX2方向とする。また、上下方向をZ方向とする。
【0026】
固定型1aは、固定ダイプレート101に取り付けられ、固定されている。移動型1bは、固定ダイプレート101のX1方向側に設けられる移動ダイプレート102に取り付けられ、固定されている。固定ダイプレート101は、固定されており、移動ダイプレート102は、移動ダイプレート駆動機構103によりX2方向またはX1方向に移動可能に構成されている。また、ダイカスト成形機100には、移動ダイプレート102の移動をガイドするための複数のタイバー106が設けられている。タイバー106は、X方向に延びる棒形状を有しており、移動ダイプレート102に挿通されている。移動型1bは、タイバー106に沿った移動ダイプレート102のX方向への移動に伴って、固定型1aに対して接近または離れるように構成されている。
【0027】
移動ダイプレート駆動機構103によって固定型1aに対して移動型1bを接近させて型締めすることにより、金型105内には、ダイカスト製品(成形品)を成形するためのキャビティ(空洞部分)1c(図7参照)が形成される。固定型1aには、キャビティ1cに通じており、半凝固金属Mの流通通路となる湯道1d(図8参照)が設けられている。湯道1dは、固定型1aの移動型1bとの合わせ面(分割面)に沿って設けられている。また、湯道1dは、後述する射出スリーブ23に連通している。なお、半凝固金属Mとは、固相と液相とが混在した相状態の金属である。
【0028】
ダイカスト成形用射出装置104は、ダイカスト成形機100に固定され、型締めされた状態の金型105内に半凝固金属Mを射出するための装置である。ダイカスト成形用射出装置104は、プランジャ21と、駆動ユニット22と、射出スリーブ23とを備えている。
【0029】
射出スリーブ23は、固定型1aに取り付けられており、円筒形状を有している。射出スリーブ23の内周面には、プランジャ21の先端部(プランジャチップ)21aの外周面が嵌合されている。また、プランジャ21は、X2方向端部が駆動ユニット22に接続されている。また、プランジャ21は、射出スリーブ23内に投入された半凝固金属Mを、金型105内に射出するように構成されている。駆動ユニット22は、プランジャ21を射出スリーブ23内においてX方向に進退移動させるように構成されている。駆動ユニット22は、たとえば、油圧回路22aによって駆動される油圧シリンダである。なお、エアシリンダ3は、特許請求の範囲の「押出機構」の一例である。
【0030】
プランジャ21の移動型1b側(X1方向側)の先端部21aは、射出のために移動を開始する際に、固定ダイプレート101の内側に配置されている。すなわち、X方向において、先端部21aは、少なくとも、固定ダイプレート101のX2方向端面よりもX1方向側に配置されている。射出スリーブ23は、湯道1dを介して、金型105内に形成されるキャビティ1cと連通している。
【0031】
ここで、図1を参照して、ダイカスト成形用射出装置104によるダイカスト成形方法の工程の一例について簡単に説明する。
【0032】
まず、搬送用ロボットTにより、半凝固金属Mが収納された容器Cが搬送用ロボットTに把持された状態で、型開き状態の固定型1aと移動型1bとの間の所定位置に配置される。次に、移動型1bに設けられる後述するエアシリンダ3により、容器Cから半凝固金属Mが押し出されて、射出スリーブ23内に半凝固金属Mが投入される。なお、搬送用ロボットTは、特許請求の範囲の「搬送装置」の一例である。
【0033】
次に、空の容器Cを把持する搬送用ロボットTが退避する。次に、移動ダイプレート駆動機構103により、金型105が型締めされる。最後に、プランジャ21が固定型1a(湯道1d)に向けて前進(X1方向に移動)することにより、半凝固金属Mが湯道1dを介してキャビティ1c内に射出される。なお、ダイカスト成形方法の工程の詳細については後述する。
【0034】
図2に示すように、容器Cは、両端部が開口した円筒形状で、一方開口部C1から他方開口部C2に向けて内径および外形が拡がるテーパ形状(逆テーパ形状)を有している。すなわち、一方開口部C1の内径d1は、他方開口部C2の内径d2よりも小さい(d2>d1)。また、容器Cの他方開口部C2近傍の外側面には、一方開口部C1と他方開口部C2とが並ぶ方向の所定範囲において外径の大きさが変わらない非テーパ形状部C3が設けられている。非テーパ形状部C3は、搬送用ロボットTに把持される部分である。
【0035】
搬送用ロボットTは、容器Cを把持する把持部T1と、把持部T1が先端に設けられるロボットアーム部T2とを備えている。搬送用ロボットTは、把持部T1により把持した容器Cを、ロボットアーム部T2により、固定型1aと移動型1bとの間で、かつ、X方向において、容器Cの大径側の他方開口部C2が射出スリーブ23のX1方向端部に対向する位置に配置するように構成されている。なお、容器CのX方向の位置決めは、容器Cの大径側の他方開口部C2を、固定型1aの平坦な分割面10aに突き当てる(当接させる)ことにより行われる。この際、搬送用ロボットTは、射出スリーブ23の中心軸線αに容器Cの中心軸線が略一致するように容器Cを配置する。また、搬送用ロボットTは、空の容器Cを固定型1aと移動型1bとの間から退避させるように構成されている。
【0036】
ここで、図2を参照して、容器Cに収容される半凝固金属Mの製造(ダイカスト成形前の準備)について簡単に説明する。
【0037】
まず、容器Cの一方開口部C1が冷却設置台Sに接触するように、空の容器Cが冷却設置台S上に設置される。冷却設置台Sは、水などの冷媒が循環される冷媒通路S1を内部に有している。次に、空の容器Cに予め製造された半凝固金属Mがラドル(図示せず)などにより流し込まれる。
【0038】
次に、冷却設置台Sにより、容器Cの冷却設置台S近傍に収納された一部の半凝固金属Mが凝固されて、固体状の底部(凝固金属)M1が形成される。この際、底部M1以外の半凝固金属Mが凝固しないように、電磁撹拌装置(図示せず)などを用いて、容器C内を撹拌してもよい。なお、本実施形態の説明では、便宜上、容器Cに収納された半凝固状態の金属部分M2と、容器Cに収納された固体状の金属部分(凝固部分)である底部M1とを合わせて、半凝固金属Mと記す。
【0039】
(金型の詳細な構成)
次に、図1を参照して金型105の詳細な構成について説明する。
【0040】
移動型1bには、エアシリンダ3が設けられている。
【0041】
エアシリンダ3は、型開き状態において、固定型1aと移動型1bとの間の所定位置に配置された筒形状の容器C内の半凝固金属Mを射出スリーブ23内に押し出して投入するように構成されている。エアシリンダ3は、移動型1bに設けられ、移動型1bの移動方向(X方向)から見て、射出スリーブ23と重なる位置に配置されている。
【0042】
エアシリンダ3は、容器C内の底部M1に接触して半凝固金属Mを押し出す押圧部31と、移動型1bの移動方向(X方向)に押圧部31を移動させる本体部(エアシリンダ本体部)32とを含んでいる。また、移動型1bには、本体部32が内側に配置される空間部33と、移動型1bの固定型1a側の端部(後述する平坦面35a)と空間部33とを連通する貫通穴34とが設けられている。
【0043】
空間部33は、移動型1bのX1方向端面からX2方向へ向けて凹状に窪むように形成された部分である。また、空間部33は、移動型1bの移動方向(X方向)から見て、射出スリーブ23と重なる位置に配置されている。また、空間部33は、本体部32を収納可能な大きさのスペースを有している。貫通穴34は、空間部33のX2方向端部からX2方向に延びており、移動型1bを貫通している。貫通穴34は、X方向に直交する縦断面が円形状を有している。
【0044】
移動型1bには、金型105の湯道1dとは異なる位置で、移動型1bの移動方向(X方向)から見て、射出スリーブ23と重なる位置に、凹部35が設けられている。凹部35は、射出スリーブ23の中心軸線上に配置されている。また、凹部35は、X方向に直交し、貫通穴34のX2方向端部が接続される平坦面35aと、平坦面35aの周縁部からX2方向に延びる傾斜面35bとを有している。つまり、凹部35の底面である平坦面35aには、貫通穴34が開口している。傾斜面35bは、平坦面35aからX2方向に向かうにつれて拡がるテーパ形状を有している。凹部35は、プランジャ21により射出された底部M1を、平坦面35aおよび傾斜面35bにより囲まれた所定領域に格納するように構成されている。
【0045】
押圧部31は、X方向に延びる直径d3(図3参照)の丸棒形状の部材である。直径d3は、容器Cの一方開口部C1の内径d1(図2参照)よりも小さい(d1>d3)。また、押圧部31は、X1方向端部が本体部32に接続されており、X2方向端部が自由端である。また、押圧部31の中心軸線は、射出スリーブ23の中心軸線αと略一致している。また、押圧部31の外周面は、貫通穴34の内周面に嵌合している。また、押圧部31は、移動型1bに対して摺動してX方向に進退可能なように貫通穴34に嵌合している。
【0046】
押圧部31と貫通穴34とは、押圧部31の外周面と貫通穴34の内周面との間に半凝固金属Mが侵入することがない程度の精度により嵌合されている。すなわち、押圧部31は、貫通穴34を塞ぐように貫通穴34に通されている。要するに、押圧部31および貫通穴34は、成形品を取り出す際に使用される突き出しピン(図示せず)および突き出しピンの配置穴(図示せず)と同様の構成を有している。
【0047】
押圧部31は、本体部32により、移動型1bに対する前進限界位置Fと、移動型1bに対する後退限界位置Bとの間で水平方向(X方向)に移動される。
【0048】
後退限界位置Bは、移動型1bに対して押圧部31が最もX1方向に移動された位置であり、押圧部31のX2方向端部が、凹部35の平坦面35aと略面一になる位置(略同一平面上に配置される位置)である。前進限界位置Fは、移動型1bに対して押圧部31が最もX2方向に移動されて移動型1bから最も突き出した位置である。この際、前進限界位置Fでの押圧部31の移動型1bからX2方向への突出量は、少なくとも、容器Cの長さ(一方開口部C1と他方開口部C2との間の距離D)(図2参照)よりも大きい。
【0049】
押圧部31(エアシリンダ3)は、型開き状態で、移動型1bと固定型1aとの間に配置された容器Cの一方開口部C1(図2参照)に配置された底部M1をX1方向側からX2方向に押圧するように構成されている。これにより、押圧部31(エアシリンダ3)は、容器C内の底部M1を含む半凝固金属Mを押し出す(容器Cを空にする)ように構成されている。その結果、射出スリーブ23に、半凝固金属Mが投入される。
【0050】
押圧部31(エアシリンダ3)は、射出スリーブ23内の固定型1aの分割面10a近傍に半凝固金属Mを押し出して投入するように構成されている。すなわち、押圧部31(エアシリンダ3)は、前進限界位置F(X方向において、容器Cが配置される範囲を越える位置)まで半凝固金属Mを押し出して投入するように構成されている。
【0051】
(ダイカスト成形方法の工程)
次に、図3図14を参照して、ダイカスト成形機100によるダイカスト成形方法の工程について説明する。ダイカスト成形方法には第1成形方法、第2成形方法、第3成形方法の3つがある。以下、第1〜第3成形方法について順に説明する。
【0052】
<第1成形方法>
図3図8を参照して、第1成形方法の工程を第1〜第6工程の6つの工程に分けて説明する。6つの工程は、第1工程、第2工程、第3工程、第4工程、第5工程、第6工程の順に行われる。
【0053】
[第1工程]
図3に示す第1工程は、型開き状態において、半凝固金属Mが収容された容器Cを固定型1aと移動型1bとの間の所定位置に配置する工程である。詳細には、第1工程では、半凝固金属Mが収容された容器Cが、搬送用ロボットTの把持部T1により把持されて、搬送用ロボットTのロボットアーム部T2により射出スリーブ23の中心軸線α上に配置される。この際、容器Cの小径側の一方開口部C1(図2参照)は、押圧部31から離間した状態で、押圧部31のX2方向側に配置される。また、容器Cの大径側の他方開口部C2(図2参照)は、固定型1aに当接状態で配置される。また、他方開口部C2は、射出スリーブ23のX1方向側に、射出スリーブ23と対向するように配置される。
【0054】
[第2工程]
図4に示す第2工程は、エアシリンダ3により半凝固金属Mを容器Cから押し出して、半凝固金属Mを射出スリーブ23に投入する工程である。詳細には、第2工程では、押圧部31がX2方向に前進し、容器C内に進入して前進限界位置Fまで移動することにより、容器Cから半凝固金属Mが押し出される。押圧部31により押し出された半凝固金属Mは、射出スリーブ23上に投入される。この際、底部M1(凝固金属)は、半凝固金属MのX1方向端部(射出方向の前方)に配置されている。なお、半凝固金属Mが容器Cに密着しているため、エアシリンダ3は、押圧部31が半凝固金属Mを最初に移動させる際に、比較的大きな力により、半凝固金属Mを容器Cから剥がす必要がある。このため、本体部32(エアシリンダ3)が必要な力を発揮して押圧部31を介して底部M1を押圧する。
【0055】
[第3工程]
図5に示す第3工程では、空の容器C内に配置されている押圧部31が、容器Cから引き抜かれる。そして、押圧部31が後退限界位置Bまで移動されて、押圧部31のX2方向端部と、凹部35の平坦面35aとが略面一になる(略同一平面上に配置される)。
【0056】
[第4工程]
図6に示す第4工程では、搬送用ロボットTの把持部T1に把持される空の容器Cが、搬送用ロボットTのロボットアーム部T2により固定型1aと移動型1bとの間から退避される。
【0057】
[第5工程]
図7に示す第5工程では、移動ダイプレート駆動機構103により、固定ダイプレート101および移動ダイプレート102に固定された移動型1bがX2方向に移動されて型締めが行われる。その結果、金型105内に製品形状に対応するキャビティ1cが形成される。
【0058】
[第6工程]
図8に示す第6工程は、半凝固金属Mを金型105内に射出する工程であり、ダイカスト成形方法の最終工程である。詳細には、第6工程では、後退限界位置B0に位置するプランジャ21が、駆動ユニット22によりX1方向に前進されて、前進限界位置F0まで移動する。そして、第2工程でエアシリンダ3により押し出されて射出スリーブ23内に投入された半凝固金属Mがプランジャ21により金型105内に射出される。この際、底部M1(凝固金属)は、湯道1dを塞いで、キャビティ1cに向かう流動性を有する半凝固金属Mの流れを妨げないように、移動型1bの凹部35に格納される。その後、型開きされて、突き出しピン(図示せず)により成形品M0が付き出される。そして、所定の取出装置により、成形品M0が金型105から取り出される。なお、所定の取出装置としては、半凝固金属Mが収容された容器Cを固定型1aおよび移動型1bの間に配置した搬送用ロボットTを用いてもよい。
【0059】
<第2成形方法>
図9図11を参照して、第2成形方法の工程を第1〜第8工程の8つの工程に分けて説明する。なお、第2成形方法の第4〜第8工程は、上記第1成形方法の第2〜第6工程と同様であるため説明を省略する。
【0060】
[第1工程]
図9に示す第1工程では、型開き状態において、半凝固金属Mが収容された容器Cを固定型1aと移動型1bとの間の所定位置に配置する工程である。詳細には、第1工程では、半凝固金属Mが収容された容器Cが、搬送用ロボットTの把持部T1により把持されて、搬送用ロボットTのロボットアーム部T2により射出スリーブ23の中心軸線α上に配置される。この際、容器Cの小径側の一方開口部C1(図2参照)は、押圧部31のX2方向に、押圧部31から離間して配置される。また、容器Cの大径側の他方開口部C2(図2参照)は、固定型1aに当接状態で配置される。また、容器Cの大径側の他方開口部C2は、射出スリーブ23のX1方向側に、射出スリーブ23と対向するように配置される。
【0061】
[第2工程]
図10に示す第2工程では、押圧部31が後退限界位置Bから容器CのX1方向端部(もしくは容器CのX1方向端部よりもX1方向側の所定位置)までX2方向に移動して移動型1bから突出する。具体例として、押圧部31が、凹部35よりもX2方向に位置するように移動する。なお、第2工程は、上記第1工程と同時に行われてもよいし、上記第1工程よりも先に行われてもよい。ただし、第2工程を第1工程よりも先に行う場合には、押圧部31と容器Cとが互いに干渉しないようにする必要がある。
【0062】
[第3工程]
図11に示す第3工程では、移動ダイプレート駆動機構103により、固定ダイプレート101および移動ダイプレート102に固定された移動型1bがX2方向に移動されて型締め動作が行われる。ただし、金型105は、完全に型締めされるのではなく、押圧部31が半凝固金属Mに接触して、半凝固金属Mが僅かにX2方向に移動した時点で型締め動作(移動型1bが固定型1aに近づく動作)は一時的に停止(中断)される。すなわち、容器Cから半凝固金属Mが剥がされた時点で型締め動作は一時的に停止(中断)される。半凝固金属Mを容器Cから剥がす際、押圧部31は、半凝固金属Mからの反力に押し負けて本体部32に対してX1方向に移動しないようにロックされるのが好ましい。
【0063】
以降は、上記第1成形方法の第2〜第6工程と同様の工程が行われる。第2成形方法は、エアシリンダ3により容器Cから半凝固金属Mを剥がす第1成形方法とは異なり、ダイカスト成形機100の型締め力を利用して、容器Cから半凝固金属Mを剥がす成形方法である。
【0064】
<第3成形方法>
図12図14を参照して、第3成形方法の工程を第1〜第7工程の7つの工程に分けて説明する。なお、第3成形方法の第4〜第7工程は、上記第1成形方法の第3〜第6工程と同様であるため説明を省略する。
【0065】
[第1工程]
図12に示す第1工程では、型開き状態において、半凝固金属Mが収容された容器Cを固定型1aと移動型1bとの間の所定位置に配置する工程である。詳細には、第1工程では、半凝固金属Mが収容された容器Cが、搬送用ロボットTの把持部T1により把持されて、搬送用ロボットTのロボットアーム部T2により射出スリーブ23の中心軸線α上に配置される。この際、容器Cの小径側の一方開口部C1(図2参照)は、押圧部31のX2方向に、押圧部31から離間して配置される。また、容器Cの大径側の他方開口部C2(図2参照)は、固定型1aに当接状態で配置される。また、容器Cの大径側の他方開口部C2は、射出スリーブ23のX1方向側に、射出スリーブ23と対向するように配置される。
【0066】
[第2工程]
図13に示す第2工程では、押圧部31が、後退限界位置Bから前進限界位置Fまで移動する。すなわち、押圧部31が限界まで移動型1bから突出する。移動型1bと固定型1aとは、X方向に容器Cおよび突出した押圧部31とを並べて配置できる距離だけ離間している。なお、第2工程は、上記第1工程と同時に行われてもよいし、上記第1工程よりも先に行われてもよい。ただし、押圧部31と容器Cとが互いに干渉しないように、固定ダイプレート101と移動ダイプレート102との間の距離(ダイハイト)を調整する必要がある。
【0067】
[第3工程]
図14に示す第3工程では、移動ダイプレート駆動機構103により、固定ダイプレート101および移動ダイプレート102に固定された移動型1bがX2方向に移動されて型締め動作が行われる。金型1は、完全に型締めされる。この際、押圧部31は、半凝固金属Mからの反力に押し負けて本体部32に対してX1方向に移動しないようにロックされるのが好ましい。
【0068】
以降は、上記第1成形方法の第3〜第6工程と同様の工程が行われる。第3成形方法は、半凝固金属Mを容器Cから剥がすことをダイカスト成形機100が行ない、半凝固金属Mを容器Cから押し出すことをエアシリンダ3が行う第2成形方法とは異なり、半凝固金属Mを容器Cから剥がすこと、および、半凝固金属Mを容器Cから押し出すことの両方をダイカスト成形機100が行う成形方法である。
【0069】
(実施形態の効果)
以下に、本実施形態の効果について説明する。
【0070】
本実施形態では、上記のように、型開き状態において、固定型1aと移動型1bとの間に配置された筒形状の容器C内の半凝固金属Mを射出スリーブ23内に押し出して投入するエアシリンダ3を設ける。これにより、エアシリンダ3によって固定型1aと移動型1bとの間に配置された容器C内の半凝固金属Mを押し出して直接射出スリーブ23に投入することができる。その結果、従来のようにロボットチャックなどにより半凝固金属Mを直接保持する必要がないため、射出スリーブ23に投入される半凝固金属Mの形状が崩れることを抑制することができる。また、半凝固金属Mが容器Cに収容された状態を維持しながら固定型1aと移動型1bとの間に配置され、エアシリンダ3により押し出されて射出スリーブ23に直接投入されるので、一旦、半凝固金属Mが容器Cから出されてロボットチャックに把持される場合と比較して、射出スリーブ23に投入される半凝固金属Mから熱が奪われることを抑制することができる。また、エアシリンダ3により、電動式や油圧式などの半凝固金属Mを押し出す機構と比較して、高温環境下で安定した性能を発揮することができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、エアシリンダ3を、移動型1bに設け、移動型1bの移動方向から見て、射出スリーブ23と重なる位置に配置する。これにより、射出スリーブ23が固定型1aに設けられるとともに、エアシリンダ3が移動型1bに設けられることにより、射出スリーブ23とエアシリンダ3との間に容器Cが配置されるので、エアシリンダ3により、射出スリーブ23に向けて容器C内の半凝固金属Mを、容易に押し出すことができる。また、移動型1bの移動方向から見て、エアシリンダ3が射出スリーブ23と重なる位置に配置されるので、エアシリンダ3から射出スリーブ23に向けて真っ直ぐに半凝固金属Mを押すことができる。その結果、射出スリーブ23に投入される半凝固金属Mの形状が崩れることを抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、移動型1bに設けたエアシリンダ3を、移動ダイプレート駆動機構103により移動型1bとともに固定型1a側に移動されることにより、容器C内の半凝固金属Mを押し出すように構成する。これにより、ダイカスト成形機100の型締動作を利用して半凝固金属Mを容器Cから押し出すことができるので、大きな外力により半凝固金属Mを押すことができる。その結果、容器Cに密着した半凝固金属Mを容易に剥がすことができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、エアシリンダ3に、容器C内の半凝固金属Mに接触して半凝固金属Mを押し出す押圧部31と、移動型1bの移動方向に押圧部31を移動させる本体部32とを設ける。これにより、半凝固金属Mを射出スリーブ23に投入する際に、半凝固金属Mに直接接する部分と、接触しない部分とを分けることができる。このため、半凝固金属Mを射出スリーブ23に投入する際に、本体部32が高温の半凝固金属Mに直接さらされるのを防止することができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、移動型1bに、本体部32が配置される空間部33と、移動型1bの固定型1a側の端部と空間部33とを連通する貫通穴34とを設け、貫通穴34を塞ぐように、貫通穴34に押圧部31を通す。これにより、押圧部31により貫通穴34が塞がれるので、射出時において、貫通穴34を介して空間部33に半凝固金属Mが到達することを防止することができる。これにより、射出時において、本体部32が高温の半凝固金属Mに直接さらされるのを防止することができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、エアシリンダ3を、移動ダイプレート駆動機構103により移動型1bとともに固定型1a側に移動されることにより、容器C内の半凝固金属Mを押圧することによって、容器Cから半凝固金属Mを剥がした後、本体部32により半凝固金属Mを押し出して、射出スリーブ23内に半凝固金属Mを投入するように構成する。ここで、一般的に、半凝固金属Mは、容器Cに対して強固に密着している。このため、半凝固金属Mを容器Cから出すためには、はじめに半凝固金属Mを容器Cから剥がすことが必要となり、比較的に大きな外力(押圧力)が必要となる。そこで、上記のように構成することにより、ダイカスト成形機100の型締動作を利用して半凝固金属Mを容器Cから容易に剥がすことができるとともに、機械的に大きな外力を発揮することができないエアシリンダ3であったとしても、容器C内から半凝固金属Mを確実に押し出して射出スリーブ23に投入することができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、エアシリンダ3を、射出スリーブ23内の固定型1aの分割面10a近傍に半凝固金属Mを押し出すように構成する。これにより、キャビティ1cに近い位置に半凝固金属Mを配置することができるので、プランジャ21により射出する際に、比較的短い距離を押し出して半凝固金属Mをキャビティ1cに導入することができる。その結果、プランジャ21のかじり(焼き付き)を抑制することができるとともに、半凝固金属Mがスリーブ内を移動される際の空気の巻込みを抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、プランジャ21の移動型1b側の先端部21aを、射出のために移動を開始する際に、固定ダイプレート101の内側に配置する。これにより、プランジャ21を固定ダイプレート101の外側(金型105から離間する側)に配置する場合と比較して、射出のためのプランジャ21の移動距離を短くすることができる。その結果、射出時間を短縮することができるので、成形サイクルを短縮することができる。
【0078】
また、本実施形態では、上記のように、エアシリンダ3を、容器Cの一方開口部C1に配置して、半凝固金属Mの凝固した底部M1を押圧することにより、容器C内の底部M1を含む半凝固金属Mを押し出すように構成し、移動型1bに、金型105の湯道1dとは異なる位置で、移動型1bの移動方向から見て、射出スリーブ23と重なる位置に、プランジャ21により射出された底部M1を格納する凹部35を設ける。これにより、プランジャ21によって半凝固金属Mが金型105内に押し出される射出時において、移動型1bの移動方向から見て、湯道1dとは異なる位置で、射出スリーブ23と重なる位置に設けられる凹部35に半凝固金属Mの底部M1を格納することができる。その結果、底部M1を湯道1dから逸れた凹部35内に置くことができるので、底部M1が湯道1dを塞ぐこと、および、底部M1が湯道1dを通る半凝固金属Mの流れを妨げることを抑制することができる。
【0079】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0080】
たとえば、上記実施形態では、押出機構がエアシリンダからなる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、押出機構が油圧シリンダやモータなどのエアシリンダ以外の構成からなるように構成してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、押出機構が移動型に設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、押出機構が固定型に設けられていてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、押出機構により容器に密着した半凝固金属を剥がす例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、押出機構により容器に密着した半凝固金属を剥がすのではなく、専用の剥がし装置などの押出機構以外の構成により、容器に密着した半凝固金属を剥がしてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、移動型に凹部を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移動型に凹部を設けなくてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、プランジャの移動型側の先端部が、射出のために移動を開始する際に、固定ダイプレートの内側に配置される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、プランジャの移動型側の先端部が、射出のために移動を開始する際に、固定ダイプレートの外側に配置されてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、押出機構と射出スリーブとが移動型の移動方向において互いに重なる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、押出機構と射出スリーブとが移動型の移動方向において互いに重ならなくてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、所定方向(X方向)に直線動作をする押出機構を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、回転動作などの直線動作以外の動作をする押出機構を設けてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1a 固定型
1b 移動型
3 エアシリンダ(押出機構)
10a 分割面
21 プランジャ
21a プランジャの先端部
23 射出スリーブ
31 押圧部
32 本体部
33 空間部
34 貫通穴
35 凹部
100 ダイカスト成形機
101 固定ダイプレート
103 移動ダイプレート駆動機構(型締機構)
105 金型
C 容器
C1 一方開口部
M 半凝固金属
M1 底部
T 搬送用ロボット(搬送装置)
α 射出スリーブの中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14