(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メルカプト変性(メタ)アクリレート、蛍光増白剤、及び光重合開始剤として、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及びチオキサントン系光重合開始剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型コーティングニス。
前記メルカプト変性(メタ)アクリレートの含有量が前記活性エネルギー線硬化型コーティングニスの全硬化性成分に対して、10〜90質量%である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型コーティングニス。
前記蛍光増白剤の含有量が前記活性エネルギー線硬化型コーティングニスの全硬化性成分に対して0.01〜2%質量%である請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型コーティングニス。
前記チオキサントン系光重合開始剤の含有量が前記活性エネルギー線硬化型コーティングニスの全硬化性成分に対して0.01〜5質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性コーティングニス。
前記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の含有量が前記活性エネルギー線硬化型コーティングニスの全硬化性成分に対して5〜20質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性コーティングニス。
基材上、又は、基材上に印刷された印刷インキ層の上に、請求項1〜5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型コーティングニスの層を形成し、350〜420nmにピーク波長を有する紫外線発光ダイオード光源で紫外線を照射することにより得られることを特徴とする印刷物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(メルカプト変性(メタ)アクリレート)
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティングニスに用いるメルカプト変性(メタ)アクリレートは、多官能チオール化合物と化学量論的に過剰な2官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物をマイケル付加反応させることによって得られる。好ましい多官能チオール化合物としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(分子量489g/mol)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(分子量399g/mol)、1,3−ビス(2−イソシアナト−2−プロピル)ベンゼンテトラチオール等のポリイソシアネートとトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)等の多官能チオール化合物との反応生成物である多官能チオール化合物、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネートとトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)等の多官能チオール化合物との反応生成物である多官能チオール化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートとトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)等の多官能チオール化合物との反応生成物である多官能チオール化合物、1,6−ヘキサンジチオール(分子量150g/mol)、エチレングリコールジ−2−メルカプトアセテート(分子量210g/mol)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)(分子量433g/mol)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオナート(分子量238g/mol)などが挙げられる。
【0012】
多官能チオールとマイケル付加反応を行う2官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチルー2−エチルー1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0013】
重合性オリゴマーとしては、アミン変性(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオレフィン(メタ)アクリレート、ポリスチレン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0014】
上記のマイケル付加反応により得られたメルカプト変性(メタ)アクリレートの市販品としては、ダイセルオルネクス社製のADDITOLED01、MIWON社製のMiramer ES100、Miramer ES110N、Miramer ES4420などを挙げることができ、この中でも、ADDITOLED01、Miramer ES110Nを使用すると好適な硬化性が得られる上、他の塗膜性能、安定性などが良好となるため好ましい。
【0015】
前記メルカプト変性(メタ)アクリレートは、全硬化性成分(ここでいう全硬化性成分とは、活性エネルギー線硬化型コーティングニスに含まれるメルカプト変性(メタ)アクリレートと、後述の活性エネルギー線硬化性モノマー及び又はオリゴマー反応性モノマー成分の全量を指す)に対して10〜90質量%含有することが好ましく、10〜80質量%含有することがなお好ましく、より好ましくは30〜80質量%であり、50〜80質量%が最も好ましい。
【0016】
また前記メルカプト変性(メタ)アクリレートは重量平均分子量が5000以下のものが好ましく、より好ましくは3000以下であり、2000以下であると更に好ましい。重量平均分子量が5000以上のものは、前記メルカプト変性(メタ)アクリレート分子の移動度が低下するため、本発明の活性エネルギー線硬化型コーティングニスの反応性が低下する傾向がある。例えば、UV−LEDで塗膜を硬化させた際に、硬化塗膜表面のタック感が増し、印刷物を積み上げた際に印刷物同士が貼り付くブロッキングと呼ばれる不具合が生じる可能性が高くなる。
【0017】
(活性エネルギー線硬化性モノマー及び又はオリゴマー)
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティングニスには、硬化性成分として、前記メルカプト変性(メタ)アクリレート以外の他の活性エネルギー線硬化性モノマー及び又はオリゴマーを含んでいてもよく好ましい。
本発明で使用する活性エネルギー線硬化性モノマー及び又はオリゴマーは、活性エネルギー線硬化性技術分野で使用されるモノマー及び又はオリゴマーであれば特に限定なく使用することができる。特に反応基として(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基等を有するものが好ましい。また反応基数や分子量にも特に限定はなく、反応基数の多いものほど反応性は高いが粘度や結晶性が高くなる傾向にあり、また分子量が高いものほど粘度が高くなる傾向にあることから、所望の物性に応じて適宜組み合わせて使用することができる。例えばUV−LEDのような低エネルギー照射で好適に硬化させるという点では、より反応性の高い3官能以上の活性エネルギー線硬化性モノマーを組み合わせ、用途に応じて印刷基材への接着性、皮膜の柔軟性等の必要物性を得る為に、適宜単官能、2官能のモノマーを単独もしくは併用することが好ましい。
【0018】
具体的には例えば、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、重合性オリゴマー等の、ランプ方式で実績のあるものが、本発明で述べる紫外線発光ダイオード方式においてもそのまま使用することが可能である。
【0019】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
2官能以上の(メタ)アクリレートとしては、前述の多官能チオールとマイケル付加反応を行う2官能以上の(メタ)アクリレートと同様のものが使用できる。
【0021】
重合性オリゴマーとしては、アミン変性ポリエーテルアクリレート、アミン変性エポキシアクリレート、アミン変性脂肪族アクリレート、アミン変性ポリエステルアクリレート、アミノ(メタ)アクリレートなどのアミン変性アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオレフィン(メタ)アクリレート、ポリスチレン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
また前記活性エネルギー線硬化性モノマー及び又はオリゴマーとして、特に4官能以上の(メタ)アクリレートは、硬化性や強度の向上に大きく寄与するが、使用量が過剰となると皮膜の柔軟性が損なわれ、割れが発生する場合がある。4官能以上の(メタ)アクリレートの使用量は、全硬化性成分に対し5〜50質量%が好ましい。
【0023】
(光重合開始剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティングニスは、メルカプト変性(メタ)アクリレートと、光重合開始剤としてアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及びチオキサントン系光重合開始剤を含有することが特徴である。
【0024】
アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、2−メチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル等のモノアシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられる。
【0025】
前記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の含有量は特に限定はないが、一般に前記活性エネルギー線硬化型コーティングニスの全硬化性成分に対して5〜20質量%使用することが多い。より好ましくは8〜15質量%の範囲である。
【0026】
これらの中でも、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド等が好ましく用いられる。これらのビス、モノアシルフォスフィン重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、併用して使用してもよいが、単独で使用する場合、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドは2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイドに比べ、(メタ)アクリレートに対する溶解性が劣る傾向にあり、経時で析出の懸念がある。そのため配合量が限定されてしまい所望する硬化性が得られない場合がある為、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイドがより好ましい。
【0027】
ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドの使用量は、前記の溶解性の問題から全硬化性分に対し、0〜5質量%が好ましい。一方、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイドの使用量は、全硬化性分に対し、5〜20質量%が好ましく、更に、10〜20質量%の範囲ならば、酸素による重合阻害を好適に軽減させることができ、より表面硬化性の良好な塗膜が得られるため、より好ましい。
【0028】
また、チオキサントン系光重合開始剤としては、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げられる。
【0029】
前記チオキサントン系光重合開始剤の好ましい使用量は、前記チオキサントン系光重合開始剤の含有量が前記活性エネルギー線硬化型コーティングニスの全硬化性成分に対して0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜1.0質量%であり、なお好ましくは0.1〜0.5質量%であり、最も好ましいのは0.05〜0.5質量%である。該範囲では好適な硬化性が得られ、更に塗膜の黄変性を抑制できるので、さらに好ましい。
【0030】
光重合開始剤としては、本発明の効果を損なわない範囲において、その他汎用の光重合開始剤を使用することも可能である。例えば、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2[オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ−]−エチルエステルとオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルの混合物、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等が挙げられ、黄変の発現性はある程度あるものの、前記したアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤やチオキサントン系開始剤と併用することが可能である。
【0031】
(蛍光増白剤)
本発明で使用する蛍光増白剤としては、ベンゾオキサザール、ピラゾリン、スチルベン、トリアジン、チアゾール、トリアゾール、オキサゾール、チオフェン、キサントン、及びクマリンの各誘導体が挙げられ、例えば、2,5−チオフェンジイル(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾオキサゾール)、4,4’−ビス(ジフェニルトリアジニル)スチルベン、スチルベニル−ナフトトリアゾール、2,2’−(チオフェンジイル)−ビス(tert−ブチル−ベンゾオキサゾール)、2−(スチルビル−4)−(ナフト−1’,2’,4,5)−1,2,3−トリアゾール−2’’−スルホン酸フェニルエステル、7−(4’−クロロ−6’’−ジエチルアミノ−1’,3’,5’−トリアジン−4’−イル)−アミノ−3−フェニル−クマリン、2,5−ビス(6,6’−ビス(tert−ブチル)−ベンゾオキサゾール−2−イル)チオフェン、4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン、ジベンゾオキサゾリルエチレン、及びN−メチル−5−メトキシナフトールイミド等が挙げられ、これらの中でも、2,5−チオフェンジイル(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾオキサゾール)のベンゾオキサゾール誘導体、2,2’−(チオフェンジイル)−ビス(tert−ブチル−ベンゾオキサゾール)が好ましく用いられ、特に2,5−チオフェンジイル(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾオキサゾール)のベンゾオキサゾール誘導体は、硬化性が得られ、且つ、硬化皮膜の黄変が少ない点でより好ましい。
【0032】
これら蛍光増白剤は単独で用いても、2種以上を混合して使用しても良い。蛍光増白剤の最大吸収波長は360〜400nmの範囲にあることが好ましく、350〜420nmの紫外線発光ダイオードによりコーティングニス硬化性の向上効果を示す。
【0033】
前記蛍光増白剤の含有量は、前記活性エネルギー線硬化型コーティングニスの全硬化性成分に対して0.01〜2%質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0質量%であり、なお好ましくは0.3〜0.7質量%である。この範囲において、本発明の効果である硬化性の向上効果が十分に得られ、また保存安定性が良好であり、溶解し切れない蛍光増白剤成分が析出する恐れが少ない。
【0034】
また紫外線発光ダイオード発光波長領域に合致するUV吸収特性を有していないものであっても、上述したアミン変性アクリレート以外の3級アミン化合物を水素供与体として併用することでも、好適なUV硬化を得ることが可能である。例えば、脂肪族アミン誘導体としてトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、ジブチルエタノールアミン等が、安息香酸誘導体のアミンとして2−ジメチルアミノエチル安息香酸、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル等が、アニリン誘導体のアミンとしてN,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン等が挙げられる。
【0035】
(安定剤)
前記メルカプト変性(メタ)アクリレートは反応性に優れる反面、保存安定性を低下させ、増粘やゲル化を誘発する懸念がある為、下記の酸化防止剤、重合禁止剤などを使用することが好ましい。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、HALSと称される2,2,6,6−テトラメチルピペリジン誘導体の酸化防止剤、リン系、硫黄系の二次酸化防止剤が挙げられる。
一方、重合禁止剤としては、ニトロソアミン塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの酸化防止剤、重合禁止剤は単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの添加量は、本発明の活性エネルギー線硬化型コーティングニスの全硬化性成分に対して、0.01〜3.0質量%であることが好ましい。
【0036】
(光硬化性組成物 他の成分)
更に必要に応じて、本発明の目的を逸脱しない範囲、とりわけ保存安定性、耐熱性、耐溶剤性等を保持できる範囲内で、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、各種のカップリング剤;充填剤等を添加することができる。
【0037】
カップリング剤は、無機材料と有機材料において化学的に両者を結び付け、あるいは化学的反応を伴って親和性を改善し複合系材料の機能を高める化合物であり、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン系化合物、テトラ−イソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン等のチタン系化合物、アルミニウムイソプロピレート等のアルミニウム系化合物が挙げられる。これらの添加量は、活性エネルギー線硬化型コーティングニスの全硬化性成分に対して、0.1〜10質量%であり、好ましくは0.2〜5質量%である。
【0038】
耐摩擦性、ブロッキング防止性、スベリ性またはスリキズ防止性を付与する目的で、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、シリコン化合物等を添加することができる。その他、要求性能に応じて、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗菌剤、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂等の添加剤も添加することができる。これらの添加剤の添加量は活性エネルギー線硬化型コーティングニスの全硬化性成分に対して、0〜10質量%である。
【0039】
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティングニスは、無溶剤で使用することもできるし、必要に応じて適当な溶媒を使用する事も可能である。溶媒としては、上記各成分と反応しないものであれば特に限定されるものではなく、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
(色相調整剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティングニスは塗膜の色相を調整するため、微量の着色剤を使用してもよい。使用する着色剤としては染料、顔料のいずれであってもよいが、印刷物の耐久性の点から顔料を使用することが好ましく、これらの添加量は活性エネルギー線硬化型コーティングニスの全硬化性成分に対して0〜0.5質量%であることが好ましい。
【0041】
本発明で使用することができる染料としては、特に限定はないが、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料、などの各種染料が挙げられる。
【0042】
本発明で使用することができる顔料としては、特に限定はないが、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料などを挙げることができる。
【0043】
(印刷物)
本発明の第二の形態は、基材上、又は、基材上に印刷された印刷インキ層の上に、前記活性エネルギー線硬化型コーティングニスの層を形成し、350〜420nmにピーク波長を有する紫外線発光ダイオード光源で紫外線を照射することにより得られることを特徴とする印刷物である。
【0044】
本発明の印刷物で使用する印刷基材としては、特に限定は無く、例えば、上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、ナイロン、ポリ乳酸、ポリカーボネート等のフィルム又はシート、セロファン、アルミニウムフォイル、その他従来から印刷基材として使用されている各種基材を挙げることが出来る。
【0045】
本発明の印刷物の製造に用いられる印刷インキとしては、紫外線発光ダイオードより発せられる紫外線に対して好適に硬化する組成物であれば特に限定は無く、例えば印刷方式に応じて、オフセット、水無し、グラビア、フレキソ、シルクスクリーン、インクジェット、その他従来から印刷用途に使用されているUV硬化性インキを採用することが可能である。
【0046】
本発明の印刷物を製造するために使用する紫外線発光ダイオード光源より発せられる紫外線の発光波長としては、例えば、発光ピーク波長が350〜420nm程度であるものが好ましい。
【0047】
紫外線発光ダイオード光源よりUV硬化性組成物へ照射される紫外線の積算光量値に関しては、印刷基材上のUV硬化性組成物の種別や印刷層の厚み等により異なる為、厳密には特定出来ず、適宜好ましい条件を選択するものであるが、例えば、積算光量の総和が5〜200mJ/cm
2程度であり、より好ましくは、10〜100mJ/cm
2程度である。
【0048】
積算光量値5mJ/cm
2を下回る条件では十分な硬化性を得ることが困難となり、一方、積算光量値200mJ/cm
2を超える条件は、本発明で述べる印刷方式においては不必要であり、紫外線発光ダイオード光源の特徴である省エネルギー性を維持する目的においても過剰量のエネルギー照射は行わない。
【0049】
紫外線発光ダイオード光源より印刷基材上のUV硬化性組成物へ照射される紫外線の照射強度(mW/cm2)に関しては、印刷方向に並べる紫外線発光ダイオード光源の個数、光源から組成物までの照射距離等の諸条件によっても適切な照射強度範囲が変動することから特に規定はしないが、本発明で述べる印刷方式における印刷基材の移動速度は60〜400m/min.程度であるから、該印刷速度で移動する印刷基材上のUV硬化性組成物に対して、積算光量値が先に述べた程度となる照射強度であることが好ましい。
【実施例】
【0050】
次に実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでは無い。
(活性エネルギー線硬化型コーティングニスの調製)
【0051】
後述の表1の組成に従って各原料を配合したのち、ミキサーを使用して撹拌分散し、光重合開始剤、光増感剤、および蛍光増白剤を完全に溶解させることで、実施例1、2及び比較例1〜5のコーティングニスを調製した。
【0052】
(印刷物の製造方法)
前記のように調製され活性エネルギー線硬化型コーティングニス(実施例ニス−1〜5及び比較例ニス−1〜7)を、簡易展色機(RIテスター、豊栄精工社製)を用い、0.45mlを使用して、PETフィルム(DIC社製、ダイタックUVPET透明25FL)上、約220cm2の面積範囲に、コーティング膜厚が約5μmとなるよう印刷した。
【0053】
(紫外線発光ダイオード光源による乾燥方法)
紫外線発光ダイオード光源として、発光波長ピークが385nmである紫外線発光ダイオード照射装置(パナソニック電工社製、ANUD8002T01)を使用し、活性エネルギー線硬化型コーティングニスを印刷したPETフィルムに対して、紫外線発光ダイオード光源の直下を通過させるよう、ラインスピードを振って紫外線照射を施した。積算光量測定にはUNIMETER UIT−150−A(ウシオ電機社製)を使用し、紫外線受光機としてはUVD−C405を用い、ラインスピード120m/min.における積算光量の値を測定したところ、22mJ/cm
2であった。
【0054】
(印刷物の評価方法1:硬化性)
紫外線照射後における印刷物の硬化性の評価方法としては、上質紙によるラビングテストにより硬化皮膜の強度を確認し、皮膜に傷が発生し始めるコンベアスピード(m/min.)を記載した。
【0055】
(印刷物の評価方法2:割れ)
紫外線照射後に硬化皮膜を、印刷表面に対して反対方向に180°の角度で折り曲げ、皮膜表面の状態を目視で確認し、次の3段階で評価した。
〇・・・ひび、割れ共に全く発生しない
△・・・若干の亀裂が部分的に確認できる
×・・・皮膜が完全に割れる
【0056】
(印刷物の評価方法3:60℃安定性)
上記で調整した実施例1〜3及び比較例1〜5に組成の活性エネルギー線硬化型コーティングニスを60度のオーブンで2週間保管し、増粘の大きさやゲル化の有無を確認した。
〇・ ・ ・殆ど増粘も起こらない。
△・ ・ ・顕著に増粘した。
×・ ・ ・ゲル化が確認された。
【0057】
(印刷物の評価方法4:80℃高温安定性)
上記で調整した実施例1〜3及び比較例1〜5に組成の活性エネルギー線硬化型コーティングニスを80度のオーブンで2週間保管し、増粘の大きさやゲル化の有無を確認した。
〇・ ・ ・殆ど増粘も起こらない。
△・ ・ ・顕著に増粘した。
×・ ・ ・ゲル化が確認された。
【0058】
(印刷物の評価方法5:臭気)
前記硬化方法で硬化させた印刷物を縦5cm横2.5cmに切り取り、この切片を10枚用意した。この切片10枚を素早く外径40mm、高さ75mm、口内径20.1mm、容量50mlのコレクションバイアルに入れ、ふたを閉めて60℃の恒温槽に1時間保管し、コレクションバイアル中に臭気を充満させた。つぎに、このコレクションバイアルを室温になるまで放置し、臭気の強さを評価するモニター10名により、各サンプルの臭気の強さを10段階で評価した。
10名の臭気評価結果を平均し、そのサンプルの臭気の強さとした。なお、数値が高い方が、低臭であることを意味している。
○: 10〜7
△: 6〜3
×: 2〜0
【0059】
(印刷物の評価方法6:黄変)
紫外線照射後における硬化皮膜の黄変に起因する色変化を目視で確認し、次の基準で評価した。
〇・・・色変化が全く無い、もしくは殆ど無い
△・・・若干の色変化が確認できる
×・・・明確に黄変による色変化が確認できる
表1に実施例及び比較例に記載のコーティングニスの組成、及び評価結果を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1中、空欄は未配合の略である。表中の硬化性の評価結果で>300とは、使用したUV−LED照射装置の最大コンベアスピードである300m/minにおいて、上記の硬化性評価を行ったところ、塗膜に傷がつかなかったことを意味している。
【0062】
使用した原料の詳細は下記である。
Miramer ES110N (ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)とトリメチロールプロパントリアクリレートの混合によって得られる MIWON社製)
ADDITOLLED01 (メルカプト変性ポリエステルアクリレート、ダイセルオルネクス社製)
EBECRYL80 (アミン変性ポリエステルアクリレート、ダイセルオルネクス社製)
Miramer M300 (トリメチロールプロパントリアクリレート MIWON社製)
アロニックス M−402 (ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとペンタアクリレートの混合物、東亞合成社製)
SH28PA (ジメチルポリシロキサンーポリオキシアルキレン共重合体、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)
Omnirad TPO (2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキサイド、IGM Resins社製)
Omnirad DETX(2,4−ジエチルチオキサントン、IGM Resins社製)
Omnirad369 (2−ベンジルー2−{ジメチルアミノ}−4’−モルフォリノブチロフェノン、IGM Resins社製)
ユビテックスOB(2,5ーチオフェンジイル(5−tertーブチルー1,3―ベンゾオキサゾール、BASF社製)
ステアラーTBH (2−tert−ブチルヒドロキノン、精工化学社製)
重合禁止剤コンパウンド(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアルミニウム塩5部をMiwon社製 Miramer M240:ビスフェノールAEO変性ジアクリレート95部に溶解させた)
SPRAY40(サゾールワックスSPRAY40、ポリエチレンパウダー、サゾールワックス社製)
【0063】
この結果、実施例1,2の活性エネルギー線硬化型コーティングニスは硬化性に優れることが明らかである。