(54)【発明の名称】水性合成樹脂エマルジョンの製造方法、再乳化性合成樹脂粉末の製造方法、ポリマーセメントモルタルの製造方法、水性合成樹脂エマルジョン及び再乳化性合成樹脂粉末
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
【0014】
〔水性合成樹脂エマルジョンの製造方法〕
本発明の水性合成樹脂エマルジョンの製造方法は、重合成分(以下、この発明で用いられる重合成分を「重合成分[I]」と称する。)をポリビニルアルコール系樹脂の存在下で乳化重合するものであり、水性媒体中に、重合成分[I]の全量を連続して添加しながら乳化重合することを特徴とするものである。
【0015】
重合成分[I]としては、例えば、アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、ビニルエステル系モノマーの少なくとも1種のモノマー成分を主成分として含有することが好ましい。本発明において、主成分とするとは全体の50重量%以上を占めることを意味し、全体が主成分のみからなる場合も含む意味である。
【0016】
上記アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族系(メタ)アクリレートや、フェノキシ(メタ)アクリレート等の芳香族系(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル等が挙げられ、中でもアルキル基の炭素数が1〜18、特には1〜10の脂肪族系(メタ)アクリレートが好適であり、また、これらは1種または2種以上を用いることができる。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートを意味するものである。
【0017】
上記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
【0018】
上記ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、直鎖状のまたは枝分かれした炭素原子数2〜12のモノカルボン酸のビニルエステルが挙げられ、具体的には、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
【0019】
また、官能基含有モノマー等を含有していてもよく、例えば、グリシジル基含有モノマー、アリル基含有モノマー、加水分解性シリル基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、分子構造中にビニル基を2個以上有するモノマー、ヒドロキシル基含有モノマー等が挙げられる。
【0020】
上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。このうち、特に物性ばらつきの少なく、加えて湿潤時の接着強度が向上する等の観点から、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0021】
上記アリル基含有モノマーとしては、例えば、トリアリルオキシエチレン、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリルオキシエタン等のアリル基を2個以上有するモノマー、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル等があげられる。このうち、湿潤時の接着強度の観点から、アリルグリシジルエーテルが好ましい。
【0022】
上記加水分解性シリル基含有モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。このうち、耐水性の向上や、下地や旧モルタル面への接着強度が向上する等の観点から、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0023】
上記アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、アセト酢酸ビニルエステル、アセト酢酸アリルエステル、ジアセト酢酸アリルエステル、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチルクロトナート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピルクロトナート、2−シアノアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。このうち、特に物性ばらつきの少なく、加えて耐水性の向上や、下地や旧モルタル面への接着強度が向上する等の観点から、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0024】
上記分子構造中にビニル基を2個以上有するモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
上記ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート等が挙げられる。このうち、乳化重合時における保護コロイド的作用およびセメントモルタル配合物等との混和性改良の観点から、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0026】
本発明においては、耐水圧縮強度や耐水折り曲げ強度を向上させる観点から、重合成分[I]として、20℃の水に対する溶解度が0.1%以下である疎水性モノマー(以下、単に「疎水性モノマー」と記載することがある。)を必須成分として含有するものであり、その含有量が、重合成分[I]全体に対して30重量%以上であることが必要であり、好ましくは40重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。なお、上限は、通常、100重量%以下である。疎水性モノマーの含有量が少なすぎるとモルタルの耐水圧縮強度や耐水折り曲げ強度が低下し好ましくない。
【0027】
上記20℃の水に対する溶解度が0.1%以下である疎水性モノマーとして具体的には以下のものがあげられる。
アクリル系モノマー;例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が4以上、好ましくは6〜18の(メタ)アクリレート、特に脂肪族系(メタ)アクリレートや、フェノキシアクリレート等の芳香族系(メタ)アクリレート、メタクリル酸トリフルオロエチルなどが挙げられる。
スチレン系モノマー;例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
ビニル系モノマー;例えば、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどが挙げられる。
【0028】
上記疎水性モノマーの中でも、アルキル基の炭素数が4以上の脂肪族系(メタ)アクリレート系モノマー、スチレン系モノマーを用いることが好ましく、特にはスチレン、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
上記疎水性モノマーは、1種または2種以上併用して用いることができる。
【0029】
本発明においては、特に、疎水性モノマーとしてスチレンを含有し、疎水性モノマー全体に対するスチレンの含有割合が80重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは70重量%以下、更に好ましくは60重量%以下である。一方、スチレン含有量の下限は、30重量%以上が特に好ましく、40重量%以上が更に好ましい。
スチレン含有割合が80重量%より多いと、紫外線によるポリマーの劣化や変色など、耐候性が低下するという問題点を生じる場合がある。一方、スチレン含有割合が、30重量%であると、耐水性により優れる点で好ましい。
【0030】
本発明で用いられるポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と記載することがある。)は、重合中のプレエマルジョンの分散安定性を付与する目的、および、得られる水性合成樹脂エマルジョンに安定性を付与すると共に、該エマルジョンを噴霧乾燥されて得られる再乳化性合成樹脂粉末を水に再分散し易くする目的で用いるものである。
【0031】
PVA系樹脂の平均ケン化度としては、70モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは80モル%以上、更に好ましくは85モル%以上である。一方、平均ケン化度の上限は、99.9モル%が好ましく、99.5モル%が特に好ましく、99.0モル%が更に好ましい。
かかる平均ケン化度が低すぎると安定的に重合が進行しにくく、重合が完結したとしてもエマルジョンの保存安定性が低下してしまう傾向があり、高すぎると再乳化性合成樹脂粉末が再乳化し難くなる傾向がある。
【0032】
なお、平均ケン化度は、JIS K 6726に記載のケン化度の算出方法にしたがって求めることができる。
【0033】
また、PVA系樹脂の平均重合度としては、50以上であることが好ましく、特に好ましくは100以上であり、更に好ましくは200以上である。一方、平均重合度の上限は、3,000が好ましく、2,000が特に好ましく、1,000が更に好ましい。
かかる平均重合度が低すぎると、乳化重合時の保護コロイド能力が不充分となり重合が安定的に進行しにくい傾向があり、高すぎると、重合時に増粘して反応系が不安定になり分散安定性が低下する傾向がある。
【0034】
なお、平均重合度は、JIS K 6726に記載の平均重合度の算出方法にしたがって求めることができる。
【0035】
本発明において、PVA系樹脂として、PVA、または、各種変性種によって変性された変性PVA系樹脂を用いることができ、その変性量は、通常20モル%以下、好ましくは15モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。なお、下限値としては0.01モル%である。
【0036】
変性PVA系樹脂としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基をはじめとするアニオン性基で変性されたアニオン変性PVA系樹脂、四級アンモニウム基等のカチオン性基で変性されたカチオン変性PVA系樹脂、アセトアセチル基、ジアセトンアクリルアミド基、メルカプト基、シラノール基をはじめとする各種官能基等により変性された変性PVA系樹脂や、側鎖に1,2−ジオール結合を有するPVA系樹脂等を挙げることができる。
【0037】
本発明において、PVA系樹脂の使用量は、前述の重合成分[I]100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましく、特に好ましくは10重量部以下、更に好ましくは7重量部以下である。一方、PVA系樹脂使用量の上限は、0.01重量部が好ましく、0.1重量部が特に好ましく、0.5重量部が更に好ましい。
かかるPVA系樹脂の使用量が少なすぎると、乳化重合の際の乳化力不足となって、重合成分の分散安定性が低下し、重合安定性が低下する傾向があり、使用量が多すぎると、合成樹脂エマルジョンの粘度が高まり安定性が低下する傾向がある。
【0038】
また、本発明においては、PVA系樹脂は、通常、水性媒体を用いて水溶液とし、これが乳化重合の過程において使用される。かかる水性媒体としては、例えば水、または水を主体とするアルコール性溶媒があげられ、好ましくは水である。
【0039】
上記水溶液におけるPVA系樹脂の含有割合(固形分)については、取り扱いの容易性の観点からは、5〜30重量%であることが好ましい。
【0040】
乳化重合の方法としては、PVA系樹脂の存在下で、水性媒体中に、重合成分[I]の全量を連続して添加しながら乳化重合することが必要であり、例えば、反応缶に、水性媒体、PVA系樹脂を仕込み、昇温し、そこに重合成分[I]を全量、連続して滴下し、重合することができる。
上記水性媒体としては、例えば、水、または水を主体とするアルコール性溶媒があげられ、好ましくは水である。
【0041】
また、本発明においては、予め重合成分[I]の全量を、PVA系樹脂の存在下、水性媒体中に乳化分散させてプレエマルジョンを調製し、該プレエマルジョンの全量を水性媒体中に連続して添加しながら乳化重合することが好ましい。
【0042】
かかるプレエマルジョンの調整方法としては、例えば、PVA系樹脂の水溶液を攪拌しながら重合成分[I]を滴下する方法が挙げられる。その際の攪拌装置としては、攪拌翼による攪拌混合や、ステティックミキサー、バイプロミキサー、ホモジナイザーなどの公知の分散機を用いることができるが、これらの中でも攪拌翼による攪拌混合が好適である。
【0043】
本発明においては、水性媒体中に、重合成分[I](又は上記プレエマルジョン)の全量を連続して添加しながら乳化重合することが必要である。
ここで、全量を連続して添加しながら乳化重合するということは、初期重合を行うことなく、全量を連続して添加しながら乳化重合することをいい、従前の方法である、所定量を初期重合した後、残り成分を滴下などにより乳化重合する方法とは異なる乳化方法のことを意味するものである。
【0044】
上記連続した添加方法としては、例えば、滴下漏斗やロータリーポンプを用いて重合成分[I]を水性媒体中に滴下する方法があげられる。
【0045】
かかる滴下速度については、一般的に連続滴下とみなされる条件で滴下すればよく、用いる重合成分の反応性や下記重合開始剤の使用量、反応温度などを考慮し適宜調整すればよいが、具体的には、例えば、滴下間隔を、通常10秒以内、好ましくは5秒以内とし、一回の滴下量が、通常全モノマー量の2重量%以下、好ましくは1重量%以下であればよい。
なお、上記滴下間隔、および一回の滴下量は、均一であってもよいし、不均一であってもよい。
【0046】
また、重合成分[I]を全量滴下した後、一定時間の熟成期間を設けることも好ましい。
【0047】
乳化重合条件としては、重合成分の種類、重合スケール等に応じて適宜選択することができるが、反応時の温度条件としては、通常、通常40℃以上であり、特に好ましくは60℃以上である。反応時の温度条件の上限は、通常90℃であり、特に好ましくは80℃である。
【0048】
また、乳化重合時には、撹拌することが好ましく、その際の攪拌装置としては、上記、プレエマルジョンの調整に用いられるものと同様のものを用いることができ、なかでも攪拌翼による攪拌混合が好ましい。
【0049】
また、通常、乳化重合においては、重合開始剤を用いることが好ましく、その他必要に応じて、重合調整剤、補助乳化剤、可塑剤等を用いることができる。
【0050】
上記重合開始剤としては、通常の乳化重合に使用できるものであればよく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物;有機過酸化物、アゾ系開始剤、過酸化水素、ブチルパーオキサイド等の過酸化物;およびこれらと酸性亜硫酸ナトリウムやL−アスコルビン酸等の還元剤とを組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。これらは、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、これらの中でも、皮膜物性や強度増強に悪影響を与えず重合が容易な点で、無機過酸化物を用いることが好ましく、特には過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムが好ましい。
【0051】
重合開始剤の添加方法としては、初期に一括添加する方法や重合の経過に伴って分割して添加する方法等を用いることができ、分割して添加する方法等においては、複数回に分けて反応缶に添加する方法や、重合成分とともに連続して滴下する方法等を用いることができる。
【0052】
かかる重合開始剤の使用量は、用いる重合成分の種類や重合条件などによって異なるが、通常、重合成分[I]100重量部に対して0.01重量部以上、好ましくは0.5重量部以上である。また、使用量の上限は、通常、5重量部であり、好ましくは3重量部である。
【0053】
上記重合調整剤としては、公知のものの中から適宜選択することができる。このような重合調整剤としては、例えば、連鎖移動剤、バッファーなどが挙げられる。
【0054】
上記連鎖移動剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;および、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ノルマルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール等のメルカプタン類などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0055】
上記バッファーとしては、例えば、酢酸ソーダ、酢酸アンモニウム、第二リン酸ソーダ、クエン酸ソーダなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0056】
補助乳化剤としては、通常乳化重合に用いることができるものであればよく、例えば、アニオン性、カチオン性、およびノニオン性の界面活性剤、PVA系樹脂以外の保護コロイド能を有する水溶性高分子、および水溶性オリゴマー等があげられる。
【0057】
上記界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアニオン性界面活性剤、および、プルロニック型構造を有するものやポリオキシエチレン型構造を有するもの等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。また、界面活性剤として、構造中にラジカル重合性不飽和結合を有する反応性界面活性剤を使用することもできる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
【0058】
上記界面活性剤の使用は、乳化重合をスムーズに進行させ、コントロールし易くしたり(乳化剤としての効果)、重合中に発生する粗粒子やブロック状物の発生を抑制する効果がある。ただし、これら界面活性剤を乳化剤として多く使用すると、グラフト率が低下する傾向がある。このため、界面活性剤を使用する場合には、その使用量はPVA系樹脂に対して補助的な量であること、すなわち、できる限り少なくすることが好ましい。
【0059】
PVA系樹脂以外の保護コロイド能を有する水溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いられる。これらは、エマルジョンの安定性やエマルジョンの粒子径を変えて粘性を変化させる点で効果がある。ただし、その使用量によっては皮膜の耐水性を低下させることがあるため、使用する場合には少量で使用することが望ましい。
【0060】
水溶性オリゴマーとしては、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、アルキレングリコール基等の親水性基を有する重合体が好ましく、中でも10〜500程度の重合度を有する重合体または共重合体が好適にあげられる。水溶性オリゴマーの具体例としては、例えば、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体等のアミド系共重合体、メタクリル酸ナトリウム−4−スチレンスルホネート共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリ(メタ)アクリル酸塩等が挙げられる。さらに、具体例としては、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、アルキレングリコール基等を有するモノマーやラジカル重合性の反応性乳化剤を予め単独または他のモノマーと共重合してなる水溶性オリゴマー等も挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いられる。
【0061】
上記可塑剤としては、アジペート系可塑剤、フタル酸系可塑剤、リン酸系可塑剤等が使用できる。
【0062】
かくして、本発明の製造方法、即ち、PVA系樹脂の存在下で、水性媒体中に、重合成分[I]の全量を連続して添加しながら乳化重合する方法により、水性合成樹脂エマルジョンを製造することができる。
得られる水性合成樹脂エマルジョンは、PVA系樹脂により合成樹脂粒子が水性媒体中に分散安定化されてなるものである。
【0063】
本発明において、乳化重合より得られる水性合成樹脂エマルジョンは、典型的には、均一な乳白色であって、水性合成樹脂エマルジョン中の合成樹脂粒子の平均粒子径は、0.2μm以上であることが好ましく、特に好ましくは0.3μm以上である。また、平均粒子径の上限は2μmであることが好ましく、1.5μmであることが特に好ましい。かかる合成樹脂粒子の平均粒子径が大きすぎると重合安定性が低下する傾向があり、小さすぎると水性合成樹脂エマルジョンの粘度が高くなりすぎる傾向がある。
【0064】
なお、平均粒子径は、慣用の方法、例えばレーザー解析/散乱式粒度分布測定装置「LA−950S2」(株式会社堀場製作所製)により測定することができる。
【0065】
また、本発明の製造方法により得られる水性合成樹脂エマルジョン中の合成樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、−40℃以上であることが好ましく、特に好ましくは−30℃以上であり、更に好ましくは−20℃以上である。また、ガラス転移温度の(Tg)の上限は、30℃であることが好ましく、20℃であることが特に好ましく、10℃であることが更に好ましい。かかるガラス転移温度が高すぎると、低温時において、樹脂の接着剤としての効果が十分に発揮できない傾向があり、低すぎると、圧縮強度や折り曲げ強度が低下する傾向がある。
ガラス転移温度は下記の数式1で示されるFoxの式より算出されるものである。
【0067】
なお、合成樹脂を構成するモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものである。
【0068】
本発明の製造方法により得られる水性合成樹脂エマルジョンの23℃での粘度は、100mPa・s以上であることが好ましく、特に好ましくは300mPa・s以上、更に好ましくは500mPa・sで以上ある。一方、粘度の上限は5,000mPa・sが好ましく、3,000mPa・sが特に好ましく、2,000mPaが更に好ましい。かかる粘度が高すぎても低すぎても水性合成樹脂エマルジョンを粉末化し難くなる傾向がある。
なお、粘度の測定法はB型粘度計による。
【0069】
また、本発明の製造方法により得られる水性合成樹脂エマルジョンの固形分濃度は、30重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは35重量%以上、更に好ましくは40重量%以上である。一方、固形分濃度の上限は、60重量%が好ましく、55重量%が特に好ましく、50重量%が更に好ましい。かかる固形分濃度が低すぎると、水性合成樹脂エマルジョンを粉末化する際の製造効率が低下し、高すぎると水性合成樹脂エマルジョンを粉末化し難くなる傾向がある。
【0070】
本発明においては、乳化重合後の水性合成樹脂エマルジョンは、必要に応じて各種添加剤をさらに加えてもよい。このような添加剤としては、例えば、有機顔料、無機顔料、水溶性添加剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0071】
このようにして、本発明の製造方法によりで得られた水性合成樹脂エマルジョンは、そのまま使用する際には、固形分濃度として通常40〜60重量%に調整することが好ましい。
【0072】
〔再乳化性合成樹脂粉末の製造方法〕
上記の製造方法で得られた水性合成樹脂エマルジョンを乾燥することにより、本発明に係る再乳化性合成樹脂粉末が得られる。再乳化性合成樹脂粉末は、水と混合することにより再び乳化する機能を有し、例えばポリマーセメント用として有効に使用することができる。
【0073】
水性合成樹脂エマルジョンの乾燥方法は、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、凝析後の温風乾燥等があげられる。これらの中でも、生産コスト、省エネルギーの観点や連続生産性の観点から噴霧乾燥することが好ましい。
【0074】
噴霧乾燥の場合、その噴霧形式は、例えばディスク式、ノズル式等の形式により実施することができる。噴霧乾燥の熱源としては、例えば、熱風、加熱水蒸気等があげられる。噴霧乾燥の条件としては、噴霧乾燥機の大きさ、種類、合成樹脂エマルジョンの不揮発分、粘度、流量等に応じて適宜選択することができる。噴霧乾燥の温度は、通常は、80℃以上が好ましく、より好ましくは120℃以上である。また、噴霧乾燥温度の上限は、180℃が好ましく、160℃がより好ましい。
乾燥温度が低すぎると乾燥に時間を要し、生産的効率が低下する傾向があり、高すぎると熱による樹脂自体の変質が起こり易くなる傾向がある。
【0075】
具体的には、例えば、水性合成樹脂エマルジョンを噴霧乾燥機のノズルより連続的に供給し、霧状にしたものを温風により乾燥させて粉末化させる。場合により、調整した噴霧液を噴霧に際して予め加温してノズルより連続的に供給し、霧状にしたものを温風により乾燥させて粉末化させることも可能である。加温することで乾燥スピードが速くなり、かつ噴霧液の粘度低下に伴い噴霧液の高不揮発分化が可能で、生産コストの低減にも寄与する。
【0076】
また、再乳化性合成樹脂粉末の水への再乳化性をより向上させるために、水溶性添加剤を配合することができる。通常、水溶性添加剤は、乾燥前の水性合成樹脂エマルジョンに配合する。この配合量は、乾燥前の水性合成樹脂エマルジョンの不揮発分100重量部に対して、2〜50重量部である。配合量が少なすぎると、水への再乳化性の向上が充分に図れない傾向があり、多すぎると、水への再乳化性の向上には大いに役立つが皮膜の耐水性が低下し、期待する物性が発揮できなくなる傾向がある。
【0077】
上記水溶性添加剤としては、例えば、PVA系樹脂類、ヒドロキシエチルセルロース類、メチルセルロース類、ポリビニルピロリドン、でんぷん類、デキストリン類、水溶性アルキッド樹脂、水溶性アミノ樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリカルボン酸樹脂、水溶性ポリアミド樹脂等の水溶性樹脂があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。これらの中でも、PVA系樹脂類が好ましい。PVA系樹脂類としては、上記PVA系樹脂と同様のものを用いることができ、未変性PVAの部分又は完全ケン化品や各種変性PVAの部分又は完全ケン化品、及びこれらを併用しても良い。
【0078】
上記PVA系樹脂類としては、平均ケン化度85モル%以上のPVAが好ましく、特に好ましくは87モル%以上のPVAである。また、平均ケン化度の上限値としては、99.5モル%であることが好ましく、95モル%であることがより好ましい。平均ケン化度が小さすぎると、得られるポリマーセメントモルタルの耐水性が著しく低下する傾向があり、大きすぎると、水への再乳化性が低下する傾向がある。
【0079】
また、この平均重合度は、50以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、300以上であることが更に好ましい。また、平均重合度の上限は、3,000であることが好ましく、2,000であることがより好ましく、600であることが更に好ましい。平均重合度が小さすぎると、耐水性が低下する傾向があり、大きすぎると、再乳化性が低下する傾向がある。
【0080】
かくして、本発明の再乳化性合成樹脂粉末が得られる。
【0081】
本発明の再乳化性合成樹脂粉末には、さらに、膠着防止剤、減水剤、分散剤、モルタル流動化促進剤、撥水剤、酸化防止剤、防錆剤等を含有させてもよい。
なお、膠着防止剤は、水性合成樹脂エマルジョンに混合したり、噴霧乾燥後の樹脂エマルジョン粉末に混合したり、噴霧乾燥時に水性合成樹脂エマルジョンと別のノズルから噴霧するなどして含有させることができる。
【0082】
[再乳化して得られる水性合成樹脂エマルジョン]
前記の再乳化性合成樹脂粉末は、前記水性媒体を加えることにより再乳化させることができ、水性合成樹脂エマルジョンを得ることができる。この再乳化して得られる水性合成樹脂エマルジョンは、再乳化性合成樹脂粉末とする前の水性合成樹脂エマルジョンと同様の効果を発揮することができる。
【0083】
〔ポリマーセメント組成物・ポリマーセメントモルタル〕
かくして得られる再乳化性合成樹脂粉末は、セメントと配合してポリマーセメント組成物として使用することができ、更に水や砂・砂利を配合することにより、モルタルやコンクリートとして使用することができる。なお、このポリマーセメント組成物に水が配合されると、再乳化性合成樹脂粉末は再乳化されて水性合成樹脂エマルジョンが再生することとなる。
【0084】
上記セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、アルミナセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等があげられ、中でもポルトランドセメントが作業性の点から好適である。
【0085】
上記セメントの配合量は、再乳化性合成樹脂粉末100重量部に対して3重量部以上であることが好ましく、更には30重量部以上であることが好ましい。また、上記セメント配合量の上限は、500重量部であることが好ましく、350重量部であることが更に好ましい。
【0086】
モルタルやコンクリートとして使用する際の水の配合量は、ポリマーセメント組成物全量に対して50重量%以下であることが好ましく、更には30重量%以下であることが好ましい。
【0087】
また、モルタルやコンクリートとして使用する際の砂・砂利の配合量としては、ポリマーセメント組成物全量に対して30重量%以上であることが好ましく、更には50重量%以上であることが好ましい。上記砂・砂利の配合量の上限は、300重量部であることが好ましく、150重量部であることが更に好ましい。
【0088】
なお、上記ポリマーセメント組成物には、必要に応じて、セメントの減水剤あるいは流動化剤(例えば、リグニン系、ナフタレン系、メラミン系、カルボン酸系等)、収縮低減剤(例えば、グリコールエーテル系、ポリエーテル系等)、耐寒剤(例えば、塩化カルシウム等)、防水剤(例えば、ステアリン酸等)、防錆剤(例えば、リン酸塩等)、粘度調整剤(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール等)、分散剤(例えば、ポリカルボン酸系、無機リン系等)、消泡剤(例えば、シリコン系、鉱油系等)、防腐剤、補強剤(例えば、鋼繊維、ガラス繊維、合成繊維、炭素繊維等)等を、単独でもしくは2種以上併用することができる。
【0089】
ポリマーセメント組成物を用いて、ポリマーセメントモルタルを調製する場合には、一般のモルタルと同様、必須成分、および任意成分を加え、これに適当量の水を加えた上で、混練機等を用いて混練することにより調製することができる。
【0090】
ポリマーセメントモルタルは、通常、JIS A 6203の手順に従い、JIS R 5201の試験においてフロー値が170±5mmとなるよう調整して用いられるものである。
本発明の製造方法により得られた再乳化性合成樹脂粉末を用いると、従来の製造方法により得られる再乳化性合成樹脂粉末に比べて少量の水を配合することで所望のフロー値に調製でき、更に減水剤等の添加剤を添加しなくとも所望のフロー値に調整することが可能であるため、本発明の製造方法により得られた再乳化性合成樹脂粉末は塗工性にも優れるものであるといえる。なお、一般的に、配合する水の量が多いと、硬化速度が低下したり、得られる硬化物の強度が低下するため好ましくない。
【0091】
このようにして得られたポリマーセメント組成物は、セメントモルタルに混和した際に、良好な流動性、作業性を示し、旧モルタル面や樹脂塗面等に対する密着性に優れる。また、物性ばらつきが少なく、加えて接着強度が向上する等の優れた効果を奏する。そして、これらポリマーセメント組成物は、セメントモルタル混和剤として、補修モルタル用、下地調整塗材用、セルフレベリング材、タイル接着モルタル、モルタルシーラー・プライマー、モルタル養生剤、及び石膏系材料等の改質剤として有用であり、さらに、土木・建材用原料、ガラス繊維収束剤、難燃剤用等にも有用である。
【実施例】
【0092】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0093】
<実験例1>
〔プレエマルジョンの調製〕
フラスコにポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製、ゴーセノールGL−03)を5部、水49部を添加して80℃で1時間、十分に溶解した後、室温に冷却し、ついでスチレン46部、ブチルアクリレート54部を添加し、タービン翼で30分撹拌し続けて乳化させ、プレエマルジョンを調製した。
【0094】
〔水性合成樹脂エマルジョンの製造〕
パドル型撹拌翼、還流冷却器、滴下漏斗、温度計を備えたセパラブルフラスコに水52部、酢酸ナトリウム1部を加え、150rpmで撹拌しながらフラスコ内の温度を80℃に昇温した。次に、過硫酸アンモニウム10%水溶液3部をフラスコに添加し、続いて、上記で調製したプレエマルジョン154部と過硫酸アンモニウム10%水溶液4.6部を滴下漏斗より5時間掛けて滴下して重合反応を行った。引き続き80℃で2時間熟成を行い、その間に過硫酸アンモニウム10%水溶液3.5部を3回に分割して添加し反応を完結させ、室温に冷却し、不揮発分48.7%、粘度2,940mPa.s(ブルックフィールド型粘度計BM12rpm、23℃)の水性合成樹脂エマルジョンを得た。
【0095】
〔再乳化性合成樹脂粉末の製造〕
得られた水性合成樹脂エマルジョン100重量部にポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製、ゴーセノールGL−05)の20%水溶液を20部添加した後、抗粘結剤(商品名INCOMP SE−SUPER、Paltentaler Minerals GmbH&Co KG)14部の存在下において、140℃の気流雰囲気下でスプレー噴霧しながら乾燥させ、樹脂粉末(再乳化性合成樹脂粉末)を得た。
【0096】
<比較例1>
〔プレエマルジョンの調製〕
実施例1と同様にして、プレエマルジョンを調製した。
〔水性合成樹脂エマルジョンの製造〕
パドル型撹拌翼、還流冷却器、滴下漏斗、温度計を備えたセパラブルフラスコに水52部、酢酸ナトリウム1部を加え、150rpmで撹拌しながらフラスコ内の温度を80℃に昇温した。次に、過硫酸アンモニウム10%水溶液3部をフラスコに添加し、さらに、上記で調製したプレエマルジョン15.4部(重合モノマー全量の10%)を一括して添加して、60分間初期重合を行った後、続いてプレエマルジョン138.6部と過硫酸アンモニウム10%水溶液4.6部を滴下漏斗より5時間掛けて滴下して重合反応を行った。引き続き80℃で2時間熟成を行い、その間に過硫酸アンモニウム10%水溶液3.5部を3回に分割して添加し反応を完結させ、室温に冷却し、不揮発分48.6%、粘度6,390mPa.s(ブルックフィールド型粘度計BM12rpm、23℃)の水性合成樹脂エマルジョンを得た。
〔再乳化性合成樹脂粉末の製造〕
得られた水性合成樹脂エマルジョンを用いて、実施例1と同様にして、樹脂粉末(再乳化性合成樹脂粉末)を得た。
【0097】
<比較例2>
〔プレエマルジョンの調製〕
実施例1と同様にして、プレエマルジョンを調製した。
〔水性合成樹脂エマルジョンの製造〕
パドル型撹拌翼、還流冷却器、滴下漏斗、温度計を備えたセパラブルフラスコに水52部、酢酸ナトリウム1部を加え、150rpmで撹拌しながらフラスコ内の温度を80℃に昇温した。次に、過硫酸アンモニウム10%水溶液3部をフラスコに添加し、さらに、上記で調製したプレエマルジョン3.1部(重合モノマー全量の2%)を一括して添加して、60分間初期重合を行った後、続いてプレエマルジョン150.9部と過硫酸アンモニウム10%水溶液4.6部を滴下漏斗より5時間掛けて滴下して重合反応を行った。引き続き80℃で2時間熟成を行い、その間に過硫酸アンモニウム10%水溶液3.5部を3回に分割して添加し反応を完結させ、室温に冷却し、不揮発分49.1%、粘度34,600mPa.s(ブルックフィールド型粘度計BM12rpm、23℃)の水性合成樹脂エマルジョンを得た。
〔再乳化性合成樹脂粉末の製造〕
得られた水性合成樹脂エマルジョンを用いて、実施例1と同様にして再乳化性合成樹脂粉末を製造しようとしたが、粘度が高く、スプレー噴霧が不可能だった。
【0098】
<比較例3>
〔プレエマルジョンの調製〕
実施例1と同様にして、プレエマルジョンを調製した。
〔水性合成樹脂エマルジョンの製造〕
パドル型撹拌翼、還流冷却器、滴下漏斗、温度計を備えたセパラブルフラスコに水52部、酢酸ナトリウム1部を加え、150rpmで撹拌しながらフラスコ内の温度を80℃に昇温した。次に、過硫酸アンモニウム10%水溶液3部をフラスコに添加し、さらに上記で調製したプレエマルジョン7.7部(重合モノマー全量の5%)を一括して添加して、30分間初期重合を行った後、続いてプレエマルジョン146.3と過硫酸アンモニウム10%水溶液4.6部を滴下漏斗より5時間掛けて滴下して重合反応を行った。引き続き80℃で2時間熟成を行い、その間に過硫酸アンモニウム10%水溶液3.5部を3回に分割して添加し反応を完結させ、室温に冷却し、不揮発分49.1%、粘度26,200mPa.s(ブルックフィールド型粘度計BM12rpm、23℃)の水性合成樹脂エマルジョンを得た。
〔再乳化性合成樹脂粉末の製造〕
得られた水性合成樹脂エマルジョンを用いて、実施例1と同様にして再乳化性合成樹脂粉末を製造しようとしたが、粘度が高く、スプレー噴霧が不可能だった。
【0099】
<比較例4>
〔プレエマルジョンの調製〕
実施例1と同様にして、プレエマルジョンを調製した。
〔水性合成樹脂エマルジョンの製造〕
パドル型撹拌翼、還流冷却器、滴下漏斗、温度計を備えたセパラブルフラスコに水52部、酢酸ナトリウム1部を加え、150rpmで撹拌しながらフラスコ内の温度を80℃に昇温した。次に、過硫酸アンモニウム10%水溶液3部をフラスコに添加し、さらに、上記で調製したプレエマルジョン15.4部(重合モノマー全量の10%)を一括して添加して、10分間初期重合を行った後、続いてプレエマルジョン138.6部と過硫酸アンモニウム10%水溶液4.6部を滴下漏斗より5時間掛けて滴下したが、途中で反応が不安定となり、良好な重合反応が行えず、水性合成樹脂エマルジョンを得ることができなかった。
【0100】
上記実施例1および比較例1で得られた再乳化性合成樹脂粉末を用いて、以下の方法により再乳化性、ポリマーセメントモルタルの流動性を評価した。
【0101】
<樹脂粉末の再乳化性>
脱イオン水100部に、攪拌しながら再乳化性水性合成樹脂エマルジョン粉末100部を添加し、その後1000回転で10分間撹拌して再乳化した。この再乳化液のブルックフィールド型粘度計BM12rpm、23℃における粘度を測定した。評価基準は以下のとおりである。結果を表2に示す。
(評価基準)
○・・・再乳化したエマルジョン溶液の粘度が3,000mPa.s未満
△・・・再乳化したエマルジョン溶液の粘度が3,000mPa.s以上、5,000mPa.s未満
×・・・再乳化したエマルジョン溶液の粘度が5,000mPa.s以上
【0102】
<ポリマーセメントモルタルの流動性>
JIS A6203に準拠して、下記表1のように再乳化性合成樹脂粉末と各種成分を配合し、ポリマーセメントモルタルが規定のフロー値:170±5mmに適合するまで加水してポリマーセメントモルタルを作製した。
各加水量におけるポリマーセメントモルタルのフロー値を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
JIS A6203規定のフロー値を満たすまで加水したポリマーセメントモルタルについて、水/セメント(%)を求め、下記の基準で評価した。結果を表2に示す。
(評価基準)
○・・・水/セメントが80%未満
×・・・水/セメントが80%以上
【0105】
【表2】
【0106】
表2に示すように、本発明の製造方法で得られたに実施例1の合成樹脂エマルジョンは粘度が低く、これを乾燥して得られた乳化性合成樹脂粉末は、再乳化性に優れ、これを用いてなるセメントモルタルの流動性が良好であることがわかる。
【0107】
一方、本発明の製造方法とモノマーの重合方法が異なる製造方法で得られた比較例1の合成樹脂エマルジョンは、粘度が高く、これを乾燥して得られた再乳化性合成樹脂粉末は、再乳化後の粘度も高く再乳化性に劣るものであった。
また、表1及び表2の結果からわかるように、比較例1の製造方法で得られた合成樹脂エマルジョンを乾燥して得られた再乳化性合成樹脂粉末を用いたポリマーセメントモルタルは、実施例1と同量の加水量ではJIS A 6203に規定のフロー値に適合させることができず、規定のフロー値に適合するよう調整するためにはより多くの水を加える必要があるものであり、実施例1の製造方法で得られた合成樹脂エマルジョンを乾燥して得られた再乳化性合成樹脂粉末と比べて流動性に劣るものであることがわかる。ポリマーセメントモルタルの加水量が多いと、ポリマーセメントの硬化速度が低下し、また得られる硬化物の強度が低下するため、実用性に劣るものであった。
【0108】
また、比較例2、3の製造方法で得られた合成樹脂エマルジョンは粘度が高いため再乳化性合成樹脂粉末を得ることができず、比較例4の製造方法においては、重合安定性が悪く、合成樹脂エマルジョンを得ることができなかった。