【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題解決手段は、
作業用の前進走行時に作動する播種用又は苗植え付け用の主作業装置と施肥装置と
種子又は苗に対する防病及び防虫の少なくともいずれかの薬効を有する薬剤を施薬する施薬装置とを備え、
前記主作業装置は、種子又は苗を圃場に供給する複数の主供給部を左右方向に一定間隔をあけて整列配備し、
前記施肥装置は、肥料を圃場に供給する複数の肥料供給部を、対応する前記主供給部から機体横幅方向に所定間隔をあけた位置に配備し、
前記施薬装置
は、複数の薬剤供給部を、対応する前記主供給部との機体横幅方向での同じ位置で、且つ、対応する前記主供給部よりも機体前後方向における前方に配備している。
【0009】
この手段によると、機体横幅方向において同じ位置に配備する各主供給部と各薬剤供給部との機体前後方向での離間距離を大きくすることができる。これにより、作業用の前進走行時において、先行する作溝式の各薬剤供給部が施薬溝を形成してから、その施薬溝形成箇所に後続の各主供給部が種子又は苗を供給するまでの時間差を大きくすることができ、各薬剤供給部が作溝してから各主供給部が種子又は苗を供給するまでの間における施薬溝の埋め戻しに要する時間の確保が行い易くなる。
【0010】
つまり、種子又は苗が薬効を得易くするために、各主供給部と作溝式の各薬剤供給部とを機体横幅方向において同じ位置に配備して、機体横幅方向での種子又は苗の供給位置と施薬位置とを同じに設定しても、施薬装置の各薬剤供給部が施薬のために形成した施薬溝を、後続する主作業装置の各主供給部が種子又は苗を供給するまでの間において、各薬剤供給部の通過後に施薬溝に流入する泥土によって埋め戻すことができ、埋め戻された施薬溝形成箇所の圃場泥土に種子又は苗を供給することができる。
【0011】
その結果、各施薬溝の埋め戻しが不十分な状態で種子又は苗の供給が行われることに起因した、種子の埋没による出芽率や苗立ち率の低下、あるいは、植え付け不良による苗倒れの発生を防止することができる。
【0012】
又、各施薬溝の埋め戻し不良に起因して、各施薬溝に供給した薬剤が広域に拡散して薬効が弱まることを防止することができる。
【0013】
従って、種子又は苗及び薬剤の適正な圃場供給を精度良く行うことができ、これにより、施薬量の削減を図りながら種子又は苗に対する薬効を効果的に得られるようにすることができるとともに、種子の埋没による出芽率や苗立ち率の低下、あるいは、植え付け不良による苗倒れなどを防止することができ、結果、種苗の育成を促進させることができる。
【0014】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記複数の薬剤供給部が形成した施薬溝のそれぞれを埋め戻す複数の施薬用覆土部材を、前後に並ぶ前記薬剤供給部と前記主供給部との間に配備している。
【0015】
この手段によると、作業用の前進走行時に行われる各薬剤供給部の作溝に伴って左右方向に押し出される圃場泥土などを、後続する各施薬用覆土部材によって各施薬溝に案内することができる。
【0016】
これにより、圃場の泥土が硬くて施薬溝に流れ込み難い場合や、作業速度が速くて先行する各薬剤供給部が作溝してから後続の各主供給部が種子又は苗を供給するまでの間における施薬溝の埋め戻しに要する時間の確保が難しくなる場合などにおいても、各施薬溝の埋め戻しを速やかにかつ確実に行うことができる。
【0017】
その結果、圃場泥土の硬さや作業速度に関係なく、各施薬溝の埋め戻しが不十分な状態で種子又は苗の供給が行われることに起因した、種子の埋没による出芽率や苗立ち率の低下、あるいは、植え付け不良による苗倒れの発生を防止することができる。又、各施薬溝の埋め戻し不良に起因して、各施薬溝に供給した薬剤が広域に拡散して薬効が弱まることを防止することができる。
【0018】
従って、圃場泥土の硬さや作業速度に関係なく、種子又は苗及び薬剤の適正な圃場供給を精度良く行うことができ、これにより、施薬量の削減を図りながら種子又は苗に対する薬効を効果的に得られるようにすることができるとともに、種子の埋没による出芽率や苗立ち率の低下、あるいは、植え付け不良による苗倒れなどを防止することができ、結果、種苗の育成を促進させることができる。
【0019】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記複数の肥料供給部のそれぞれを、施肥用の作溝器により圃場の泥面に作溝して溝内に肥料を供給する作溝式に構成し、
前記複数の肥料供給部が形成した施肥溝のそれぞれを埋め戻す複数の施肥用覆土部材を備え、
前記複数の施薬用覆土部材は、それらが埋め戻す施薬溝に隣接する施肥溝とは反対側に備えた第1固定部から埋め戻す施薬溝に向けて斜め後ろ向きの傾斜姿勢で延出し、
前記複数の施肥用覆土部材は、それらが埋め戻す施肥溝に隣接する施薬溝とは反対側に備えた第2固定部から埋め戻す施肥溝に向けて斜め後ろ向きの傾斜姿勢で延出している。
【0020】
この手段によると、作業用の前進走行時に行われる各薬剤供給部の作溝に伴って左右方向に押し出される圃場泥土のうちの各第1固定部側に押し出される圃場泥土などを、後続する各施薬用覆土部材によって各施薬溝に案内することができる。
【0021】
これにより、圃場の泥土が硬くて施薬溝に流れ込み難い場合や、作業速度が速くて先行する各薬剤供給部が作溝してから後続の各主供給部が種子又は苗を供給するまでの間における施薬溝の埋め戻しに要する時間の確保が難しくなる場合などにおいても、各施薬溝の埋め戻しを速やかにかつ確実に行うことができる。
【0022】
又、作業用の前進走行時に行われる各肥料供給部の作溝に伴って左右方向に押し出される圃場泥土のうちの各第2固定部側に押し出される圃場泥土などを、後続する各施肥用覆土部材によって各施肥溝に案内することができる。
【0023】
これにより、圃場の泥土が硬くて施肥溝に流れ込み難い場合などにおいても、各施肥溝の埋め戻しを速やかにかつ確実に行うことができる。
【0024】
その結果、圃場泥土の硬さや作業速度に関係なく、各施薬溝の埋め戻しが不十分な状態で種子又は苗の供給が行われることに起因した、種子の埋没による出芽率や苗立ち率の低下、あるいは、植え付け不良による苗倒れの発生を防止することができる。又、各施薬溝及び各施肥溝の埋め戻し不良に起因して、各施薬溝又は各施肥溝に供給した薬剤又は肥料が広域に拡散して薬効又は肥効が弱まることを防止することができる。
【0025】
従って、圃場泥土の硬さや作業速度に関係なく、種子又は苗並びに薬剤及び肥料の適正な圃場供給を精度良く行うことができ、これにより、施薬量及び施肥量の削減を図りながら種子又は苗に対する薬効及び肥効を効果的に得られるようにすることができるとともに、種子の埋没による出芽率や苗立ち率の低下、あるいは、植え付け不良による苗倒れなどを防止することができ、結果、種苗の育成を促進させることができる。
【0026】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
圃場の泥面を整地する整地フロートを上下揺動可能に装備し、
前記複数の肥料供給部のそれぞれを、施肥用の作溝器により圃場の泥面に作溝して溝内に肥料を供給する作溝式に構成して、側面視で前記整地フロートの揺動支点と重なる配置で前記整地フロートに装備している。
【0027】
この手段によると、圃場泥面の整地のために上下揺動可能に装備した整地フロートを、各肥料供給部を支持する支持部材に兼用することができる。そして、このように整地フロートを支持部材に兼用しながらも、整地フロートの上下揺動にかかわらず、各肥料供給部による施肥深さを精度良く一定にすることができる。
【0028】
従って、部品点数の削減による構成の簡素化を図りながら施肥精度の向上を図ることができ、種苗の育成を更に促進させることができる。
【0029】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
圃場の泥面を整地する整地フロートを装備し、
前記複数の薬剤供給部のそれぞれを、前記整地フロートにおいて底面が反り上がった状態になる前端側部分に配備している。
【0030】
この手段によると、整地フロートを、各薬剤供給部を支持する支持部材に兼用することができる。そして、このように整地フロートを支持部材に兼用しながら、各主供給部と各薬剤供給部との機体前後方向での離間距離を大きくすることができ、これにより、各薬剤供給部が作溝してから各主供給部が種子又は苗を供給するまでの間における施薬溝の埋め戻しに要する時間の確保が行い易くなる。
【0031】
従って、部品点数の削減による構成の簡素化を図りながら、各施薬溝の埋め戻しが不十分な状態で各主供給部による種子又は苗の供給が行われることに起因した、種子の埋没による出芽率や苗立ち率の低下、あるいは、植え付け不良による苗倒れの発生を防止することができる。
【0032】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
圃場の泥面を整地する整地フロートを上下揺動可能に装備し、
前記複数の薬剤供給部のそれぞれを、側面視で前記整地フロートの揺動支点と重なる配置で前記整地フロートに装備している。
【0033】
この手段によると、圃場泥面の整地のために上下揺動可能に装備した整地フロートを、各薬剤供給部を支持する支持部材に兼用することができる。そして、このように整地フロートを支持部材に兼用しながらも、整地フロートの上下揺動にかかわらず、各薬剤供給部による施薬深さを精度良く一定にすることができる。
【0034】
従って、部品点数の削減による構成の簡素化を図りながら施薬精度の向上を図ることができ、種苗の育成を更に促進させることができる。
【0035】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記複数の肥料供給部のそれぞれを、施肥用の作溝器により圃場の泥面に作溝して溝内に肥料を供給する作溝式に構成し、
前記施肥用の作溝器のそれぞれは、それらの前端から前方に延出して前記施肥用の作溝器による作溝を補助する作溝補助具を備え、
前記複数の薬剤供給部のそれぞれを
、施薬用の作溝器の後端部が前記作溝補助具の前端部と側面視で重なる位置に配備している。
【0036】
この手段によると、各肥料供給部と各薬剤供給部とを、それらの作溝器が左右に近接して並ぶように配備する場合に生じる施肥用の作溝器と施薬用の作溝器との間での泥詰まりを防止することができ、この泥詰まりに起因した作溝不良や各施薬溝及び各施肥溝の埋め戻し不良を防止することができる。
【0037】
又、作業用の前進走行時に行われる各薬剤供給部の作溝に伴って左右方向に押し出される圃場泥土のうち、肥料供給部側に押し出される圃場泥土を、後続する各施肥用の作溝補助具によって機体後方側に案内することができ、この案内した圃場泥土を、各肥料供給部の作溝に伴って左右方向に押し出される圃場泥土のうちの施薬溝側に押し出される圃場泥土などとともに、各施薬溝に向けて流動させることができる。
【0038】
従って、各施薬溝の埋め戻しをより速やかに行うことができ、各施薬溝の埋め戻しが不十分な状態で各主供給部による種子又は苗の供給が行われることをより効果的に防止することができる。
【0039】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記作溝器のそれぞれを、作溝負荷が大きくなると狭い溝幅で作溝し、かつ、作溝負荷が小さくなると広い溝幅で作溝するように、溝幅方向に弾性変形可能に構成している。
【0040】
作溝負荷は、圃場の泥土が硬いほど大きくなり、軟らかいほど小さくなる。又、作業速度が速いほど大きくなり、遅いほど小さくなる。
【0041】
そのため、この手段によると、圃場泥土が硬いことや作業速度が速いことに起因して各施薬溝又は各施肥溝の埋め戻しが行われ難くなるほど、各作溝器により作溝する施薬溝又は施肥溝の溝幅が狭くなり、その分、各施薬溝又は各施肥溝の埋め戻しが行い易くなる。
【0042】
その結果、圃場泥土の硬さや作業速度に関係なく、各施薬溝の埋め戻しが不十分な状態で種子又は苗の供給が行われることに起因した、種子の埋没による出芽率や苗立ち率の低下、あるいは、植え付け不良による苗倒れの発生を防止することができる。又、各施薬溝又は各施肥溝の埋め戻し不良に起因して、各施薬溝又は各施肥溝に供給した薬剤又は肥料が広域に拡散して薬効又は肥効が弱まることを防止することができる。
【0043】
逆に、圃場泥土が軟らかいことや走行速度が遅いことに起因して各施薬溝又は各施肥溝の埋め戻しが行われ易くなるほど、各作溝器により作溝する施薬溝の溝幅が広くなり、その分、各施薬溝又は各施肥溝の埋め戻しに要する時間を長くすることができる。
【0044】
これにより、圃場の泥土が軟らかくて各施薬溝又は各施肥溝に流れ込み易い場合や、作業速度が遅くて各施薬溝又は各施肥溝を作溝してから直ぐに埋め戻しが行われる場合などにおいても、各施薬溝又は各施肥溝の埋め戻しに要する所定時間を確保することができる。
【0045】
その結果、圃場泥土の硬さや作業速度に関係なく、各薬剤供給部又は各肥料供給部による各溝内への薬剤又は肥料の供給途中の段階から各溝の埋め戻しが行われることに起因した薬剤又は肥料の各溝内からの拡散を防止することができる。
【0046】
そして、作溝器のそれぞれが作溝負荷に応じて溝幅方向に弾性変形することにより、作溝器に付着した泥土や薬剤又は肥料を作溝器から自動的に取り除くことができる。これにより、作溝器に泥土や薬剤又は肥料が付着堆積することに起因した施薬不良又は施肥不良を防止することができる。
【0047】
従って、圃場泥土の硬さや作業速度に関係なく、種子又は苗及び薬剤又は肥料の適正な圃場供給を精度良く行うことができ、これにより、種子又は苗に対する薬効又は肥効を効果的に得られるようにすることができるとともに、種子の埋没による出芽率や苗立ち率の低下、あるいは、植え付け不良による苗倒れなどを防止することができ、結果、種苗の育成を促進させることができる。
【0048】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記作溝器のそれぞれは、弾性変形不能な第1部材と、溝幅方向に弾性変形可能な第2部材とを備え、前記第1部材を前記第2部材の内側に配備して、溝幅を狭くする方向への前記第2部材の弾性変形を前記第1部材との接触により制限している。
【0049】
この手段によると、圃場泥土が硬いことや作業速度が速いことに起因して、作溝負荷が大きくなり過ぎて各作溝器の下端側が塞がってしまう虞を効果的に抑制することができる。
【0050】
従って、圃場泥土が硬いことや作業速度が速いことに起因して作溝負荷が大きくなり過ぎても、各作溝器の作溝により、施薬又は施肥に必要な最小限の溝幅を確保することができ、適正な施薬又は施肥を行うことができる。
【0051】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、圃場の泥面を整地する整地フロートを装備し、
前記複数の肥料供給部を、施肥用の作溝器により圃場の泥面に作溝して溝内に肥料を供給する作溝式に構成し、
前記施薬用の作溝器と前記施肥用の作溝器とを前記整地フロートに装備し、
前記整地フロートは、前記施薬用の作溝器と前記施肥用の作溝器との間において、後端が前記施肥用の作溝器よりも後方に位置するように形成した作溝器間整地部を備えている。
【0052】
この手段によると、整地フロートを、各薬剤供給部及び各肥料供給部を支持する支持部材に兼用することができる。
【0053】
又、作業走行に伴って整地フロートの下方に入り込んだ圃場泥土が、このときの走行に伴う施薬用の作溝器の作溝によって施薬用の作溝器の左右に押し出され、かつ、施肥用の作溝器の作溝によって施肥用の作溝器の左右に押し出されることにより、施薬用の作溝器と施肥用の作溝器との間に集中して浮き上がり易くなったとしても、それらの間に位置する作溝器間整地部の作用によって、施薬用の作溝器と施肥用の作溝器との間からの圃場泥土の浮き上がりを防止することができる。
【0054】
これにより、施薬用の作溝器と施肥用の作溝器との間から圃場泥土が浮き上がることや、浮き上がった圃場泥土が整地フロートに乗り上がることに起因した整地性能の低下などを防止することができる。