(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.実施形態:
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図3は、
図1のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図4以降についても同様である。
【0019】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0020】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108という場合がある。
【0021】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿入されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、
図2および
図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0022】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。
図1および
図2に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0023】
また、
図1および
図3に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0024】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、
図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、
図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0025】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0026】
(発電単位102の構成)
図4は、
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図5は、
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【0027】
図4および
図5に示すように、発電の最小単位である発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿入される連通孔108に対応する孔が形成されている。
【0028】
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(
図2および
図3参照)。
【0029】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0030】
電解質層112は、略矩形の平板形状部材であり、少なくともZrを含んでおり、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、CaSZ(カルシア安定化ジルコニア)等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114の構成については後で詳説する。
【0031】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。なお、セパレータ120が接合された単セル110をセパレータ付き単セルともいう。
【0032】
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0033】
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0034】
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
【0035】
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として形成されていてもよい。
【0036】
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図2および
図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、
図3および
図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0037】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0038】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、
図2および
図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、
図3および
図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0039】
A−3.単セル110の空気極114の構成:
本実施形態における単セル110の空気極114は、ZrO
2(ジルコニア)を含んでいる。また、空気極114に含まれるZrO
2の量は、Zr換算(空気極114におけるジルコニウム(Zr)の含有量)で0.2wt%以上、0.6wt%以下であることが好ましい。
【0040】
A−4.燃料電池スタック100の製造方法:
図6は、本実施形態における単セル110の製造方法の一例を示すフローチャートであり、
図7は、単セル110の製造工程の一部を模式的に示す説明図である。
図7(A)には、後述の空気極前駆体114A付きのハーフセル111とジルコニア含有部材300とのXZ断面構成が示されており、
図7(B)には、
図7(A)のB−Bの位置における空気極前駆体114A付きのハーフセル111とジルコニア含有部材300とのXY断面構成が示されている。
【0041】
A−4−1.電解質層112と燃料極116との積層体の作製工程:
図6に示すように、電解質層112の形成材料と燃料極116の形成材料とを焼成することにより、電解質層112と燃料極116との積層体(以下、「ハーフセル111」という)を形成する(S110)。より詳細には、例えば、BET法による比表面積が例えば5〜7m
2/gであるYSZ粉末に対して、ブチラール樹脂と、可塑剤であるジオクチルフタレート(DOP)と、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製する。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、例えば厚さ約10μmの電解質層用グリーンシートを得る。また、BET法による比表面積が例えば3〜4m
2/gであるNiOの粉末を、Ni重量に換算して55質量部となるように秤量し、BET法による比表面積が例えば5〜7m
2/gであるYSZの粉末45質量部と混合して混合粉末を得る。この混合粉末に対して、ブチラール樹脂と、可塑剤であるDOPと、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製する。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、例えば厚さ270μmの燃料極用グリーンシートを得る。電解質層用グリーンシートと燃料極用グリーンシートとを貼り付けて、乾燥させる。その後、互いに貼り付けられた電解質層用グリーンシートおよび燃料極用グリーンシートを焼成することにより、ハーフセル111を得る。
【0042】
A−4−2.ハーフセル111への空気極前駆体114Aの形成工程:
次に、ハーフセル111に空気極前駆体114Aを形成する(S120)。空気極前駆体114Aは、後述の熱処理(S140)が施されることによって空気極114となるものである。また、空気極前駆体114Aは、ABO
3で表されるペロブスカイト型酸化物を含んでおり、かつ、ペロブスカイト型酸化物のBサイトの元素に対するAサイトの元素のモル比率(以下、「A/Bモル比率」という)は、1.010以下であることが好ましい。
【0043】
具体的には、例えば、LSCF粉末と、アルミナ粉末と、有機バインダとしてのポリビニルアルコールと、有機溶媒としてのブチルカルビトールとを混合し、空気極用ペーストを調製する。調製された空気極用ペーストを、ハーフセル111における電解質層112側の表面に、例えばスクリーン印刷によって塗布し、乾燥させる。ハーフセル111上に塗布された空気極用ペーストが空気極前駆体114Aである。なお、空気極用ペーストの塗布方法として、例えば噴霧塗布といった他の方法も採用可能である。以下、空気極前駆体114Aが塗布されたハーフセル111を、「空気極前駆体114A付きハーフセル111」という。
【0044】
A−4−3.空気極前駆体114A付きハーフセル111の配置工程:
次に、
図7に示すように、空気極前駆体114A付きハーフセル111とジルコニア含有部材300とを、熱処理用の炉(図示せず)内の空間(以下、「炉内空間S」という)に配置する(S130)。ジルコニア含有部材300は、少なくとも外表面がZrO
2(ジルコニア)を含む材料により構成され、かつ、耐熱性を有する部材である。また、ジルコニア含有部材300は、ハーフセル111に形成された空気極前駆体114Aのうち、炉内空間Sに露出する外表面に対向するように配置される。炉内空間Sは、特許請求の範囲における空間に相当する。
【0045】
具体的には、ジルコニア含有部材300は、第1の部材310と第2の部材320とを備える。
図7(A)に示すように、第1の部材310は、空気極前駆体114A付きハーフセル111が載置される載置台(セッター)である。第1の部材310は、平板部312と、4本の脚部314とを備える。平板部312は、略矩形板状であり、上下方向(Z方向)視での面積は、空気極前駆体114A付きハーフセル111の面積より大きい。4本の脚部314は、平板部312の4つの角部のそれぞれから下方に延びるように形成されている。なお、上下方向において、各脚部314の長さは、空気極前駆体114A付きハーフセル111の高さ寸法より短い。また、第1の部材310は、例えば、該第1の部材310と略同一の外形を有するアルミナ製の基材と、該基材の全外周面に形成されたコートとを含む。コートは、例えば、主成分としてYSZ(Y
2O
3とZrO
2とを有する)を含む材料により形成されている。
【0046】
第2の部材320は、第1の部材310の上に配置される部材である。第2の部材320は、平板部322と、4本の脚部324とを備える。平板部322は、略矩形板状であり、上下方向(Z方向)視で、第1の部材310の平板部312と略同一のサイズである。4本の脚部324は、平板部322の4つの角部のそれぞれから下方に延びるように形成されている。なお、上下方向において、各脚部324の長さは、空気極前駆体114A付きハーフセル111の高さ寸法より長い。また、第2の部材320は、上述の第1の部材310と同様、例えば、該第2の部材320と略同一の外形を有するアルミナ製の基材と、該基材の全外周面に形成されたコートとを含む。コートは、例えば、主成分としてYSZを含む材料により形成されている。
【0047】
図7(A)に示すように、第1の部材310における平板部312の上面上に空気極前駆体114A付きハーフセル111が載置される。第2の部材320は、空気極前駆体114A付きハーフセル111が載置された第1の部材310を上から覆うように、第1の部材310上に配置される。上述したように、上下方向(Z方向)視で、第2の部材320の平板部322の面積は、空気極前駆体114A(ハーフセル111)の面積より大きく、第1の部材310は、空気極前駆体114Aの全体を含むように配置されている。すなわち、第2の部材320の平板部322の下面は、ハーフセル111に形成された空気極前駆体114Aのうち、炉内空間Sに露出する外表面(上面)の全体に対向している。ただし、平板部322は、空気極前駆体114Aの外表面(上面)から離間している。また、平板部322と空気極前駆体114Aの上面との距離は、空気極前駆体114Aの上面の全体にわたって略均等である。平板部322と空気極前駆体114Aの上面との間の距離は、1mm以上であることが好ましい。また、平板部322と空気極前駆体114Aの上面との間の距離は、10mm以下であることが好ましく、7mm以下であることがより好ましい。
【0048】
また、
図7(B)に示すように、第2の部材320の4本の脚部324は、上下方向(Z方向)視で、ハーフセル111に形成された空気極前駆体114Aの周囲に配置されている。なお、4本の脚部324は、上下方向視で、空気極前駆体114Aの周方向において略等間隔で配置されることが好ましい。ただし、各脚部324は、空気極前駆体114Aの外表面(側面)から離間している。各脚部324と空気極前駆体114Aとの間の距離は、1mm以上であることが好ましい。また、各脚部324と空気極前駆体114Aとの間の距離は、10mm以内であることが好ましく、7mm以下であることがより好ましい。
【0049】
A−4−4.熱処理工程:
次に、炉内空間S内に配置された空気極前駆体114A付きハーフセル111とジルコニア含有部材300とに熱処理を施すことにより、空気極114を形成する(S140)。具体的には、空気極前駆体114A付きハーフセル111とジルコニア含有部材300とが配置された炉内空間S内の温度を、所定の焼付温度(例えば1000℃〜1100℃)に上昇させる。これにより、ハーフセル111に形成された空気極前駆体114Aに熱処理(例えば焼付処理)が施されることにより、空気極114が形成され、単セル110が製造される。この際、ジルコニア含有部材300にも熱処理が施されることによって、ジルコニア含有部材300に含まれるZrO
2がガス化し、Zr(ジルコニウム)を含むガスは、熱処理過程の空気極前駆体114A内または空気極114内に拡散する。その結果、ZrO
2を含む空気極114が形成される。なお、Zrを含むガスは、例えば、Zrの単体と、Zrの酸化物(ZrO
2等)と、Zrの酸化物以外の化合物(例えばLa
2Zr
2O
7等)との少なくとも一種を含むガスであると想定される。
【0050】
なお、その後、残りの組み立て工程(例えば、空気極114と空気極側集電体134との接合やボルト22による燃料電池スタック100の締結)が行われ、燃料電池スタック100の組み立てが完了する。
【0051】
A−5.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態における単セル110の製造方法では、空気極前駆体114Aは、ZrO
2を含む材料により形成されたジルコニア含有部材300が面する炉内空間S内に配置され(
図6のS130)、熱処理が施される(S140、
図7参照)。空気極前駆体114Aに熱処理が施されることによって空気極114が形成される。この際、ジルコニア含有部材300にも熱処理が施されることによって、ジルコニア含有部材300に含まれるZrO
2がガス化し、Zrを含むガスは、熱処理過程の空気極前駆体114A内または空気極114内に拡散する。その結果、ZrO
2を含む空気極114を形成することができる。これにより、本実施形態の製造方法によれば、固体のZrO
2を空気極の材料に添加する製造方法とは異なり、空気極114に添加するために固体のZrO
2を粉砕するための工程を別途、要することなく、比較的に簡単な方法により、ZrO
2を含む空気極114を形成することができる。
【0052】
ここで、固体のZrO
2を空気極の材料に添加する上述の製造方法では、製造される単セルの出力特性が比較的に低い。すなわち、ZrO
2を含む空気極114を備える単セル110では、単セル110の出力特性の低下を抑制するためには、空気極114内におけるZrO
2の分布が略均一であることが好ましい。その理由は次の通りである。仮に、空気極114内におけるZrO
2の分布が不均一である場合、空気極114におけるZrO
2の含有量が相対的に少ない特定の部分において、空気極114と電解質層112との界面における剥離や、発電の繰り返しによる空気極114の劣化などの不具合が生じやすい。その結果、単セル110の出力特性が低下する。
【0053】
しかし、固体のZrO
2を空気極の材料に添加する上述の製造方法では、空気極材料に添加するZrO
2粉体を形成するためにZrO
2片を粉砕する工程が必要になる。この工程において、ZrO
2粉体の粒径が略均一になるようにZrO
2片を粉砕することは困難である。空気極材料に添加されるZrO
2粉末の粒径が不均一である場合、そのZrO
2粉末の粒径の不均一に起因して、空気極114内におけるZrO
2の分布が不均一になる。これに対して、ZrO
2片の粉砕により形成されるZrO
2粉末の平均粒径を小さくすれば、ZrO
2粉体同士の粒径の差が小さくなるため、ZrO
2粉末の粒径の不均一に起因する、空気極114内におけるZrO
2の分布の不均一を低減できる。しかし、ZrO
2粉末が微小な粒子になると、微小なZrO
2粉末同士が空気極114内の特定箇所に集まって二次粒子を形成する、いわゆる濃集が起こることに起因して、空気極114内におけるZrO
2の分布が不均一になる。
【0054】
これに対して、本実施形態の製造方法では、上述したように、空気極前駆体114Aの熱処理過程において、空気極前駆体114Aが配置される炉内空間S内に、Zrを含むガスを拡散させることにより、ZrO
2を含む空気極114が形成される。Zrを含むガスは、固体のZrO
2に比べて、拡散性(分散性)が高い。このため、本実施形態の製造方法によれば、固体のZrO
2を空気極に添加する製造方法に比べて、空気極114内におけるZrO
2の分布が不均一になることが抑制される。その結果、比較的に出力特性が高い単セル110を製造することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、空気極前駆体114A付きハーフセル111の配置工程(S130)において、ジルコニア含有部材300は、空気極前駆体114Aの近傍に配置される(
図7参照)。これにより、ジルコニア含有部材300が空気極前駆体114Aから遠く離れた位置に配置される場合に比べて、多くのZrO
2を空気極前駆体114A内に拡散させることができるため、効率よく、ZrO
2を含む空気極114を形成することができる。
【0056】
また、仮に、
図7(A)において、ジルコニア含有部材300の一部(例えば第2の部材320の平板部322の下面)が空気極前駆体114Aに接触して配置される場合、空気極前駆体114Aのうち、ジルコニア含有部材300に接触している部分と接触していない部分とでZrO
2の分布に若干の差が生じるおそれがある。これに対して、本実施形態の製造方法によれば、ジルコニア含有部材300の全体が空気極前駆体114Aの外表面から離間して配置されている。このため、ジルコニア含有部材300からのZrを含むガスは、ジルコニア含有部材300と空気極前駆体114Aとの間に形成された隙間内で分散されるため、空気極114内におけるZrO
2の分布が不均一になることを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態の製造方法では、空気極前駆体114A付きハーフセル111の配置工程(S130)および熱処理工程(S140)において、
図7(A)に示すように、第2の部材320の平板部322の下面は、ハーフセル111に形成された空気極前駆体114Aのうち、炉内空間Sに露出する外表面(上面)に対向するように配置される。これにより、ジルコニア含有部材300が空気極前駆体114Aに対向しないように配置される場合に比べて、ZrO
2が空気極114内に効果的に拡散されることによって、空気極114内におけるZrO
2の分布が不均一になることを抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態の製造方法では、
図7(B)に示すように、第2の部材320の4本の脚部324は、上下方向(Z方向)視で、ハーフセル111に形成された空気極前駆体114Aの周囲に配置されている。これにより、ジルコニア含有部材300が空気極前駆体114Aの周囲に配置されない場合に比べて、ZrO
2が空気極114の周縁部側にも効果的に拡散されることによって、空気極114内におけるZrO
2の分布が不均一になることを抑制することができる。また、本実施形態では、複数のジルコニア含有部材(4本の脚部324)は、上下方向視で、空気極前駆体114Aの周方向において略等間隔で配置されている。また、複数のジルコニア含有部材は、上下方向視で、空気極前駆体114Aからの距離が略同一である。これにより、複数のジルコニア含有部材の配置の偏りに起因して空気極114内におけるZrO
2の分布が不均一になることを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態の製造方法によって製造された単セル110において、空気極114に含まれるZrO
2の量が、Zr換算で0.2wt%以上であれば、空気極114に含まれるZrO
2の量が、Zr換算で0.2wt%未満である場合に比べて、空気極にZrO
2が含まれることによる単セル110の出力特性の低下抑制の効果を、より確実に得ることができる。また、本実施形態の製造方法によって製造された単セル110において、空気極114に含まれるZrO
2の量が、Zr換算で0.6wt%以下であれば、空気極114に含まれるZrO
2の量が、Zr換算で0.6wt%より高い場合に比べて、空気極114にZrO
2が過度に含まれることに起因して空気極114における酸素イオン導電性が低下し、単セル110の出力特性が低下することを抑制することができる。
【0060】
また、ハーフセル111への空気極前駆体114Aの形成工程(S120)において、ハーフセル111に形成される空気極前駆体114Aは、ABO
3で表されるペロブスカイト型酸化物を含んでおり、かつ、ペロブスカイト型酸化物のA/Bモル比率は、1.010以下であることが好ましい。このような場合、空気極前駆体114Aに含まれるペロブスカイト型酸化物のA/Bモル比率が、1.010より高い場合に比べて、空気極114へのZrO
2の拡散が促進されるため、空気極114内におけるZrO
2の分布が不均一になることを抑制することができる。
【0061】
A−6.性能評価:
複数の単セルのサンプルを作製し、作製された複数の単セルのサンプルを用いて性能評価を行った。
図8は、性能評価結果を示す説明図である。
【0062】
A−6−1.各サンプルについて:
図8に示すように、性能評価は、サンプル1〜7を対象として行った。サンプル1〜7は、いずれも、電解質層112と空気極114と燃料極116とを備える単セルであり、上述した
図6に示す製造方法によって製造されたものである。なお、第2の部材320の平板部322と空気極前駆体114Aの上面との間の距離は、7mmであり、熱処理工程(S140)における熱処理の最高温度(炉内温度)は1075℃である。
【0063】
ただし、サンプル1〜7は、空気極前駆体114Aに含まれるペロブスカイト型酸化物のA/Bモル比率と、空気極前駆体114Aにおける原料Zr量との少なくとも一方が互いに異なる。
図8における「A/Bモル比率」は、各サンプルの製造段階における空気極前駆体114Aに含まれるペロブスカイト型酸化物のA/Bモル比率を意味する。また、
図8における「原料Zr量(wt%)」は、各サンプルの製造段階における空気極前駆体114Aの形成材料に含まれるZrO
2の量を、Zr換算した値を意味する。また、
図8における「セルZr量(wt%)」は、熱処理工程(S140)後、各サンプルにおける空気極114に含まれるZrO
2の量を、Zr換算した値を意味する。「原料Zr量(wt%)」と「セルZr量(wt%)」との差は、空気極114内に拡散したZrO
2の量の多さを示す。なお、「原料Zr量」は、空気極前駆体114Aに対して、XRF分析(X−Ray Fluorescence Analysis)を行うことによって特定した。また、「セルZr量」は、空気極114に対して、XRF分析を行うことによって特定した。また、
図8における「初期IR(Ωcm
2)」は、各サンプルを、約700℃で発電させた際の単セル110の初期のIR抵抗の値である。なお、各サンプルの出力特性を評価するために、単セル110の初期の電圧を測定して評価してもよい。
【0064】
A−6−2.評価結果について:
図8に示すように、サンプル1〜6では、空気極前駆体114Aに含まれるペロブスカイト型酸化物のA/Bモル比率が、1.010以下であり、「原料Zr量(wt%)」と「セルZr量(wt%)」との差が0.2wt%以上である。これに対して、サンプル7では、A/Bモル比率が、1.010より高く、「原料Zr量(wt%)」と「セルZr量(wt%)」との差が0.2wt%未満である。これらの評価結果からも、空気極前駆体114Aに含まれるペロブスカイト型酸化物のA/Bモル比率が1.010以下であれば、空気極114へのZrO
2の拡散が促進されるため、空気極114内におけるZrO
2の分布が不均一になることを抑制できることが分かる。また、この評価結果から、A/Bモル比率が、1.006以下であれば、空気極114内に拡散したZrO
2の量がさらに多くなるため、より好ましいことが分かる。
【0065】
また、サンプル1〜6では、セルZr量が0.2wt%以上、0.6wt%以下であり、初期IRは、0.136Ωcm
2以下であり、判定結果は「○」とされている。これに対して、サンプル7では、セルZr量が0.2wt%未満であり、初期IRは、0.138Ωcm
2であり、やや大きいため、判定結果は「Δ」とされている。これらの評価結果からも、セルZr量が0.2wt%以上であれば、空気極にZrO
2が含まれることによる単セル110の出力特性の低下抑制の効果を、より確実に得ることができることが分かる。
【0066】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0067】
上記実施形態において、単セル110は、電解質層112と空気極114との間、および、電解質層112と燃料極116との間の少なくとも一方に、中間層(反応防止層)を備える構成であるとしてもよい。中間層が電解質層112と空気極114との間に備えられた単セルの製造方法は、例えば、次のようになる。
図6におけるハーフセル111の作製工程(S110)において、中間層の形成材料と電解質層112の形成材料と燃料極116の形成材料とを焼成することにより、中間層と電解質層112と燃料極116との積層体を作製する。ハーフセル111への空気極前駆体114Aの形成工程(S120)において、作製された積層体における中間層上に空気極前駆体114Aを形成する。
【0068】
また、上記実施形態における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。例えば、空気極114に含まれるZrO
2の量は、Zr換算で、0.2wt%未満でもよいし、0.6wt%より高くてもよい。また、空気極前駆体114Aは、ペロブスカイト型酸化物のA/Bモル比率が、1.010より高くてもよいし、ペロブスカイト型酸化物以外の材料により形成されているとしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、ジルコニア含有部材300は、外表面がYSZを含むコートにより構成されているとしたが、外表面が、YSZ以外であって、かつ、ZrO
2を有する複合酸化物を含む材料により構成されているとしてもよい(例えば、CSZ(カルシウム安定化ジルコニア)、SSZ(サマリア安定化ジルコニア))し、ZrO
2単体を含む材料により構成されているとしてもよいし、ZrO
2単体と複合酸化物とを含む材料により構成されているとしてもよい。また、ジルコニア含有部材300は、ZrO
2およびZrO
2を有する複合酸化物以外の材料を含むとしてもよい。また、ジルコニア含有部材300は、コートが、基材の全外周面ではなく、外周面の一部(例えば、空気極前駆体114Aにおける炉内空間Sに露出する外表面に対向する第2の部材320の平板部322の下面)だけに形成されているとしてもよい。また、ジルコニア含有部材300は、外表面から内部まで全体がZrO
2を含む材料により構成されているとしてもよい。また、ジルコニア含有部材300に代えて、例えば炉の内壁に、ZrO
2を含む材料により構成されたコートを形成してもよい。この場合、炉は、特許請求の範囲におけるジルコニア含有部材に相当する。
【0070】
また、上記実施形態の空気極前駆体114A付きハーフセル111の配置工程(S130)において、空気極前駆体114Aとジルコニア含有部材300とが一部接触しているとしてもよいし、空気極前駆体114Aとジルコニア含有部材300との距離が、10mmより長くてもよい。要するに、ジルコニア含有部材に含まれるがZrO
2が空気極前駆体内に拡散する位置にジルコニア含有部材を配置すればよい。また、ジルコニア含有部材300が空気極前駆体114Aに対向しないように配置されているとしてもよいし、ジルコニア含有部材300が空気極前駆体114Aの周囲に配置されないとしてもよい。
【0071】
また、上記実施形態において、第1の部材310と第2の部材320とは、一体であるとしてもよい。また、ジルコニア含有部材300は、第1の部材310と第2の部材320とのいずれか一方を備えないとしてもよい。また、第1の部材310は、脚部314を備えないとしてもよい。また、第2の部材320は、平板部322を備えないとしてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、複数のジルコニア含有部材(4本の脚部324)が、上下方向(Z方向)視で、ハーフセル111に形成された空気極前駆体114Aの周囲に間隔を空けて配置されているとしたが、これに限らず、上下方向視で、空気極前駆体114Aの全周を囲む枠状のジルコニア含有部材であるとしてもよい。その一例を具体的に説明する。
図9は、変形例における単セル110の製造工程の一部を模式的に示す説明図である。
図9(A)には、空気極前駆体114A付きのハーフセル111とジルコニア含有部材300aとのXZ断面構成が示されており、
図9(B)には、
図9(A)のC−Cの位置における空気極前駆体114A付きのハーフセル111とジルコニア含有部材300aとのXY断面構成が示されている。
図9に示すように、本変形例のジルコニア含有部材300aは、上述の第1の部材310と、第2の部材320aとを備える。第2の部材320aは、上下方向に開放した略矩形状の枠状である。
図9(B)に示すように、第2の部材320aは、上下方向視で、空気極前駆体114A(ハーフセル111)の全周を囲んでいる。また、第2の部材320aと空気極前駆体114Aとの距離は、空気極前駆体114Aの全周にわたって略同一である。このような構成であれば、ZrO
2が空気極114の周縁部側にも効果的に拡散されることによって、空気極114内におけるZrO
2の分布が不均一になることを、より効果的に抑制することができる。なお、第2の部材320aは、上側が閉塞している構成であるしてもよい。
【0073】
例えば、本明細書で開示される技術は、円筒型や円筒平板型等の燃料電池の公知の構造にも適用することができる。
【0074】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(SOEC)の最小単位である電解セル単位や、複数の電解セル単位を備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2014−207120号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セル単位および電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様に、電解セルを
図6に示す製造方法によって製造すれば、固体のZrO
2を空気極の材料に添加する方法とは異なり、固体のZrO
2を粉砕するための工程を要することなく、比較的に簡単な方法により、ZrO
2を含む空気極を形成することができる。