(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2つのモータの動力を遊星機構で合流させて駆動力を得る際に、2つのモータの回転運動差によりうなり音などの騒音が発生する場合がある。例えば、特許文献2では、噛み合い音の周波数と歯付きベルトの振動音の周波数との偏差が所定範囲内にある場合にうなりが発生すると予測して制御を実行しているが、所定範囲内が例えば20Hz以下と極めて限定的な範囲に限られている。そのため、遊星機構を利用する装置に特許文献2の制御を適用しても、2つのモータの回転運動差に伴う騒音を実用的に満足できるレベルで低減することはできない。
【0007】
本発明の目的は、2つのモータの動力を遊星機構で合流させて駆動力を得る車両駆動装置において、2つのモータの回転により発生する騒音(例えば聴感として目立つ2つの音の不協和の程度)を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の具体例の一つである車両駆動装置は、第1モータの動力と第2モータの動力を遊星機構で合流させて駆動力を得る車両駆動装置であって、前記第1モータの回転により発生する音と前記第2モータの回転により発生する音の周波数比が不協和の低減条件を満たす設計値と制御量の少なくとも一方を備えることを特徴とする。
【0009】
例えば、前記第1モータと前記第2モータと前記遊星機構のうちの少なくとも一に含まれる設計事項が前記不協和の低減条件を満たす設計値に設定されてもよい。
【0010】
また、例えば、前記遊星機構に含まれる少なくとも一つの歯車が前記不協和の低減条件を満たす歯数とされてもよい。
【0011】
また、例えば、前記第1モータと前記第2モータのうちの少なくとも一方が前記不協和の低減条件を満たす回転数に制御されてもよい。
【0012】
また、例えば、前記第1モータと前記第2モータの回転数差が前記不協和の低減条件を満たすように前記第1モータと前記第2モータのうちの少なくとも一方が制御されてもよい。
【0013】
また、例えば、前記第1モータの回転により発生する音の周波数f
M1と前記第2モータの回転により発生する音の周波数f
M2の周波数比f
M1/f
M2が(条件1)f
M1/f
M2<0.87,(条件2)0.9943<f
M1/f
M2<1.0057,(条件3)1.14<f
M1/f
M2のうちのいずれかの条件を満たすことを前記不協和の低減条件としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、2つのモータの動力を遊星機構で合流させて駆動力を得る車両駆動装置において、2つのモータの回転により発生する騒音(例えば聴感として目立つ2つの音の不協和の程度)が低減される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の具体的な実施態様の一例を示す図であり、
図1には、車両駆動装置の具体例が図示されている。
図1に例示する車両駆動装置は、第1モータ11と第2モータ12と遊星機構20を備えている。
図1に例示する車両駆動装置は、第1モータ11と第2モータ12の2つのモータ(電動機)から得られる動力を遊星機構20が備える遊星歯車22で合流させて駆動力を得る。
【0017】
図2は、2つのモータの回転により発生するうねりを説明するための図である。
図2には、
図1の位置P1で発生する音の波形の具体例と、
図1の位置P2で発生する音の波形の具体例が図示されている。
【0018】
図1の位置P1は第1モータ11から得られる動力が遊星歯車22に入る(伝わる)直前の減速機におけるかみ合い部分であり、
図1の位置P2は第2モータ12から得られる動力が遊星歯車22に入る(伝わる)直前の減速機におけるかみ合い部分である。
【0019】
例えば、位置P1における音の周波数f
M1と位置P2における音の周波数f
M2が比較的近いと、
図2に例示するようなうねり音が発生する。
【0020】
図3は、2つの音の不協和を説明するための図である。
図3には、2つの純音の一方の周波数を固定して他方の周波数を変化させ、2つの純音を重ねて聴かせることにより得られる聴感の具体例が図示されている。
【0021】
図3(A)には、不協和度(不協和の程度)の具体例が図示されている。
図3(A)の縦軸に示す不協和度は、2つの純音を重ねて聴かせた場合に得られる聴こえ具合の良し悪しの程度を複数人の多数決で決定したものである。不協和度が高いほどうなりや違和感があり聴こえ具合が悪い。
図3(A)に示す具体例において、不協和度1が最大(最悪)であり0(ゼロ)が最小(最良)である。
【0022】
また、
図3(A)の横軸は、2つの純音の周波数差に対応している。なお、
図3(A)の横軸の値は、
図3(B)に示す臨界帯域幅で周波数差を除した値である。例えば、周波数が近接した2つの音を聴いた場合に、うなりや違和感やゴロゴロ感の有る周波数差の領域を臨界帯域という。
【0023】
図4は、臨界帯域を説明するための図である。
図4(A)には、2つの音の平均周波数と臨界帯域の関係が図示されている。
図4(A)に示すように、2つの音の平均周波数(横軸)が大きくなるに従って臨界帯域(縦軸)も大きくなる傾向にある。
【0024】
図4(B)には、2つの音の周波数比と不協和度の関係が図示されている。
図4(B)は、2つの音の一方の周波数を固定して他方の周波数を変化させることにより周波数比を変化させて得られる不協和度が図示されている。
図4(B)に示す周波数(100Hz,200Hz,400Hz,600Hz,1000Hz)は、固定した方の周波数を示している。なお、
図4(B)の横軸を周波数比から周波数差/臨界帯域幅に代えると
図3(A)に示す波形に整理される。
【0025】
図1の第1モータ11と第2モータ12の回転により発生する音についても、
図2に例示するように、周波数f
M1と周波数f
M2の関係によってはうなり音を生じさせる。そこで、
図3,
図4に説明される不協和度を2つの周波数f
M1と周波数f
M2から導出する式を次のように定義する。
【0027】
図5は、2つの周波数に関連する設計値と制御量の具体例を示す図である。
図5には、
図1に示す車両駆動装置の設計値の具体例として、位置P1における第1モータ11側(ドライブ側)のギアの歯数Z
DR1と、位置P1における遊星歯車22側(ドリブン側)のギアの歯数Z
DN1と、位置P2における第2モータ12側(ドライブ側)のギアの歯数Z
DR2と、位置P2における遊星歯車22側(ドリブン側)のギアの歯数Z
DN2が例示されている。
【0028】
また、
図5には、
図1に示す車両駆動装置の制御量の具体例として、第1モータ11の回転数N
M1と、第1モータ11と第2モータ12の遊星歯車22(合流部)における回転数差Δωが例示されている。
【0029】
さらに、
図5には、
図1に示す車両駆動装置において不協和を引き起こす2つの周波数の具体例として、位置P1におけるギアのかみ合いによって発生する音の基本波(1次)成分の周波数f
M1と、位置P2におけるギアのかみ合いによって発生する音の基本波(1次)成分の周波数f
M2が例示されている。
図5に示す具体例において、周波数f
M1と周波数f
M2がそれぞれ(1)式と(2)式により算出される。
【0030】
図6は、かみ合い1次音の不協和度を説明するための図である。
図6には、
図1の遊星歯車22が一体となって回転する運転条件(効率良)におけるかみ合い1次周波数比が示されている。
図5に示した具体例において、回転数差Δω=0(ゼロ)とする運転条件を適用すると、
図6に示すように、かみ合い1次周波数比はf
M1/f
M2=Z
DN1/Z
DN2となる。つまり、回転数差Δω=0とする運転条件では、周波数比(f
M1/f
M2)が遊星歯車22側のギアの歯数比(Z
DN1/Z
DN2)で決定される。
【0031】
図6(B)は、回転数差Δω=0の条件で第1モータ11の回転数を変化させて得られる不協和度の具体例を示している。
図6(B)の横軸は、第1モータ11の回転数を示している。第1モータ11の回転数に応じて、
図1の車両駆動装置が搭載される車両の速度(車速)が変化する。また、
図6(B)の縦軸は、かみ合い1次音の不協和度であり、例えば数1式を利用して算出される。そして、
図6(B)には、基準となる設計値で得られる波形(1)と、基準となる設計値から設計値を変更して得られる波形(2)〜(5)が図示されている。つまり、基準となる歯数比(=周波数比)で得られる波形(1)から、歯数比(=周波数比)を変更することにより波形(2)〜(5)が得られる。
【0032】
図6(A)は、不協和度と周波数比の対応関係を示している。
図6(A)の横軸に示すかみ合い1次周波数比は、周波数比(f
M1/f
M2)であり、回転数差Δω=0の条件下では、歯数比(Z
DN1/Z
DN2)で決定される。
【0033】
図6(A)の縦軸に示すかみ合い1次音の不協和度平均値は、周波数比(f
M1/f
M2)ごとに得られる不協和度の平均値である。例えば、
図6(B)の波形(1)〜(5)の各々ついて、全車速域に亘って不協和度の平均値を算出すると、
図6(A)における(1)〜(5)に対応した周波数比(f
M1/f
M2)の不協和度平均値が得られる。
【0034】
図3を利用して説明したように、不協和度が高いほど、うなりや違和感があり聴こえ具合が悪い。一方、不協和度が低くなるほど、うなりや違和感が少なくなる。そこで、例えば、
図6(A)に示す具体例において、不協和度(平均値)を0.2以下に抑えようとすると、横軸に示す周波数比(f
M1/f
M2)は、次式に示す条件1から条件3のうちのいずれかの条件を満たす必要がある。
【0036】
周波数比(f
M1/f
M2)が数2式の条件1から条件3のいずれかの条件を満たすことにより、不協和度(平均値)を0.2以下に低く抑えることができるようになり、第1モータ11の回転により発生する音(周波数比f
M1)と第2モータ12の回転により発生する音(周波数f
M2)が重なることによる不協和の程度が低減される。
【0037】
例えば、
図5,
図6に示す具体例では、位置P1のかみ合い1次音(周波数f
M1)と位置P2のかみ合い1次音(周波数f
M2)の周波数比(f
M1/f
M2)が、回転数差Δω=0の条件下で、位置P1,P2の遊星歯車22側のギアの歯数比(Z
DN1/Z
DN2)で決定される。そこで、例えば、歯数比(Z
DN1/Z
DN2=f
M1/f
M2)が数2式の条件1から条件3のいずれかの条件を満たすように、位置P1の遊星歯車22側の歯数Z
DN1と位置P2の遊星歯車22側の歯数Z
DN2が決定される。これにより、位置P1のかみ合い1次音(周波数f
M1)と位置P2のかみ合い1次音(周波数f
M2)による不協和の程度を軽減することができる。
【0038】
なお、
図5,
図6では、聴感として目立つ2つの音の具体例として、位置P1のかみ合い1次音と位置P2のかみ合い1次音を例示したが、聴感として目立つ音は、
図1の車両駆動装置内の位置P1,P2以外の位置で発生する音であってもよいし、1次音(基本波の音)に限らず2次以上の高調波の音であってもよい。
【0039】
例えば、位置P1,P2以外の位置で発生する音の騒音を低減する場合には、その音に対応した設計事項(例えば歯数Z
DN1と歯数Z
DN2以外の設計事項)が、数2式の条件1から条件3のいずれかの条件を満たす設計値とされてもよい。
【0040】
また、例えばモータ(第1モータ11と第2モータ12)の回転により発生するトルク変動(トルクリップル)が振動や騒音の要因になる場合がある。例えば、永久磁石モータを使用する場合には、永久磁石の極数とコイルが巻かれている突極数との最小公倍数に対応した脈動が発生する。その脈動による振動や騒音が聴感として目立つ場合に、モータの性能を考慮しつつ永久磁石の極数とコイルの突極数を適宜な設計値とすることにより周波数を調整して、例えば、数2式の条件1から条件3のいずれかの条件を満たす設計が実現されてもよい。
【0041】
さらに、設計に代えてあるいは設計と共に、制御によって不協和の低減条件(例えば数2式の条件1から条件3のいずれかの条件)を満たすようにしてもよい。
【0042】
図7は、回転数差の制御による不協和度の低減を説明するための図である。
図7(A)は、第1モータ11の回転数(
図1の車両駆動装置が搭載される車両の車速)を変化させて得られる不協和度の具体例を示している。
図7(A)に示す回転数差Δω=0の波形(破線)は、
図6(B)に示す基準となる設計値で得られる波形(1)である。
【0043】
基準となる設計値を維持した状態で、つまり設計値を変更せずに、例えば
図7(B)に示すように回転数差Δωを制御して変更すると、
図7(A)に例示する実線(直線)ように、回転数差Δω=0の場合よりも不協和度を低減することができる。
【0044】
なお、
図7(B)に例示するように回転数差Δωを制御するためには、例えば
図7(B)に示すように、第1モータ11(M1)と第2モータ12(M2)の回転数を制御すればよい。
【0045】
図7を利用して説明したように、例えば回転数差Δωを制御することによって不協和度を低減させることができる。そのため、例えば、不協和の低減条件(例えば数2式の条件1から条件3のいずれかの条件)を満たすように、例えばモータ(第1モータ11と第2モータ12の少なくとも一方)の回転数などが制御して、騒音(例えば聴感として目立つ2つの音の不協和の程度)が低減されてもよい。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。