(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、天然に存在する化石燃料であり、メタンを主成分とした炭化水素ガスである。近年では、埋蔵残存量に不安のある重油や灯油に替わり、上記天然ガスが、工業用・発電用の産業用ガス燃料や都市ガスの原料などとして需要が増加している。
【0003】
液化天然ガス(LNG)は、天然ガスの輸送や貯蔵を目的として、上記天然ガスを−162℃以下に冷却して液化したものである。
【0004】
北米や中国など、天然ガスが産出する大陸においては一般に、ガス状の天然ガスをそのままパイプラインを用いて運搬し供給する。近隣地域で天然ガスの産出が少ない日本やアジア諸国などでは、天然ガスを液化したLNGとして運搬し貯蔵することが行われる。
【0005】
上記LNGの運搬と貯蔵は、一般的につぎのように行われる。まず、LNGをタンカーなどで海上輸送し、LNG受入基地(「一次基地」ともいう)へ陸揚げする。その後、LNG用のタンクローリーによって使用場所の近辺に設置したLNGサテライト設備まで陸上搬送される。
【0006】
上記LNGサテライト設備は一般に、LNGの貯蔵と供給を兼ね備えた設備である。上記LNGサテライト設備は、貯槽・加圧蒸発器・気化器などを備えて構成されるのが一般的である。
【0007】
このようなLNGサテライト設備に関する先行技術文献として、本出願人は、下記の特許文献1を把握している。
【0008】
特許文献1は、屋外の据え付け場所において、短期間で正確にかつ安全に設置するのに適したLNGサテライト設備に関するものである。
特許文献1には以下の記載がある。
【0009】
[0015]
図1および
図2に示すように、本実施形態のLNGサテライト設備Xは、液化天然ガス(LNG)を貯蔵する貯槽ユニット1と、LNGを気化する気化ユニット3と、配管ユニット2とを備えて構成されており、屋外の据え付け場所に設置固定されたものである。
[0018]配管ユニット2は、貯槽ユニット1からのLNGを気化ユニット3に移送するためのLNG用配管21と、気化ユニット3から導出されるガス状の天然ガスを通すガス用配管22とを備えて構成されている。(以下略)
[0024]
図1に示すように、気化ユニット3は、LNGを蒸発気化するための気化器31と、LNG導入配管32と、ガス導出配管33とを備えて構成されている。気化器31は、底板311と、シェル状のハウジング312と、コイル状に巻かれた伝熱管313と、熱媒導入配管314と、熱媒オーバーフロー管315と、熱媒オーバーフロー管315に通じる熱媒導出配管316とを備えて構成されている。(以下略)
[0026]熱媒導入配管314および熱媒導出配管316には、手動弁317,318が設けられており、熱媒導入配管314を通じて、例えば熱媒としての温水がハウジング312内に導入される。温水の温度は、例えば60℃程度とされる。伝熱管313の周囲は温水で満たされており、伝熱管313内のLNGは、熱媒である温水による加熱を受けて昇温し、蒸発気化されてガス状態(天然ガス)となる。蒸発気化した天然ガスは、ガス導出配管33を通じて配管ユニット2側に供給される。このとき、天然ガスの温度は、0℃程度となる。一方、ハウジング312内の温水は、ハウジング312内でLNGにより冷却されて降温した後、熱媒オーバーフロー管315の上端からその内部に流れ込み、熱媒導出配管316を通じて外部に導出される。(以下略)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
LNGサテライト設備では、LNG貯槽や高圧LNG配管の存在する領域を、火気や電気のない防爆エリアとする必要がある。したがって、上記防爆エリアの近くには、火気設備や電気機器を配置できない。上記防爆エリアと火気設備や電気機器のあいだには、一定以上の安全距離(たとえば最低8m)を確保することが必要とされている。
【0012】
たとえば上記特許文献1では、気化器31には、熱媒導入配管314から60℃程度の温水を導入することが記載されている。上記温水を得るためには、ボイラなどの火気設備が必要になる(上記特許文献1では言及されていない)。この火気設備は、気化器31や貯槽ユニット1から、最低でも8mは隔てたところに設置される。
【0013】
つまり、LNGサテライト設備には、LNG貯槽や高圧LNG配管等の設備に加え、ボイラなどの火気設備が必要であり、さらに両者を隔てる安全距離を確保しなければならない。したがって、LNGサテライト設備を構築するためには、LNG貯槽や高圧LNG配管等が設置される防爆エリアの用地と、ボイラなどの火気設備や電気機器を設置する用地と、上記安全距離を確保するための用地が必要となる。このように、LNGサテライト設備にはかなりの面積の用地を必要とする。用地が広ければ、基礎工事にも費用がかかる。これが、LNGサテライト設備を普及を妨げる要因になっている。
【0014】
上述したLNGサテライト設備の設置工事では、配管や機器の位置合わせに高い精度が要求される。上記設置工事では、液状のLNGを移送する配管やガス状の天然ガスを移送する配管などに、圧力計や流量計などの機器を介在させる。このとき、上記配管や機器を、液やガスが漏れないよう、位置合わせを高精度にして溶接しなければならない。
【0015】
このようなLNGサテライト設備の設置工事は、一般に屋外での作業となる。したがって、溶接作業も天候の影響を受け、精度を確保しながら作業するのが困難である。組立後の耐圧検査や気密検査なども同様である。このように、上記LNGサテライト設備の設置工事には大変な手間がかかるという問題がある。上記特許文献1でも、依然として組立作業の多くを設置現場の屋外で行う必要があり、設置工事に手間がかかる問題は十分に解決されていない。
【0016】
〔目的〕
本発明は、上記の課題を解決するため、つぎの目的をもってなされたものである。
設備に要する用地面積を縮小し、さらには、現地工事を簡略化して工期の短縮や作業員の節減に寄与するLNGサテライト設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1記載のLNGサテライト設備は、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
液化天然ガスを気化して天然ガスを得る気化手段と、
上記気化手段で得られた天然ガスを天然ガス使用設備に対して供給するための供給手段と、
上記気化手段に供給する熱媒体を加熱する熱媒体加熱手段と、
を備え、
上記熱媒体加熱手段を含む非防爆性の機器類が、少なくとも所定の高さを有する壁
と天板によって周囲を囲まれた非防爆
室内に配置され、
上記気化手段と供給手段を含む防爆性の機器類が、上記非防爆
室の外に配置され
、
上記防爆性の機器類としてさらにLNG貯槽を備え、
上記非防爆室が上記LNG貯槽を上に配置しうるもので、上記LNG貯槽が上記非防爆室の上に配置され、
上記LNG貯槽と上記非防爆性の機器類が、上記非防爆室を構成する上記天板によって隔てられている。
【0019】
請求項
2記載のLNGサテライト設備は、請求項
1記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記壁と上記天板のうち少なくともいずれかには、上記熱媒体加熱手段に対して吸排気を行うための開口が設けられ、
上記開口は、上記所定の高さよりも高い位置に配置されている。
【0022】
請求項
3記載のLNGサテライト設備は、請求項1
または2記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記非防爆
室を構成する上記壁と、その内部に配置する非防爆性の機器類が、ユニット化されている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載のLNGサテライト設備は、気化手段と供給手段と熱媒体加熱手段とを備えている。上記気化手段は、液化天然ガスを気化して天然ガスを得る。上記供給手段は、上記気化手段で得られた天然ガスを天然ガス使用設備に対して供給する。上記熱媒体加熱手段は、上記気化手段に供給する熱媒体を加熱する。
請求項1記載の発明は、少なくとも所定の高さを有する壁によって周囲を囲まれた非防爆
室を設ける。上記熱媒体加熱手段を含む非防爆性の機器類を、上記非防爆
室内に配置する。上記気化手段と供給手段を含む防爆性の機器類を、上記非防爆
室の外に配置する。
本発明では、上記非防爆性の機器類と上記防爆性の機器類が、少なくとも所定の高さを有する壁
と天板によって隔てられる。このため、
上記LNG貯槽と上記非防爆性の機器類とを、所定の高さの壁で隔て、従来の設備のように、非防爆性の機器類と防爆性の機器類のあいだに、一定以上の安全距離を確保する必要がなくなる。したがって、本発明では、LNGサテライト設備を設置するにあたって、上記安全距離を確保するための用地が不要となる。つまり、設備に要する用地面積が縮小され、それに伴って基礎工事の費用も節減できる。
上記防爆性の機器類としてさらにLNG貯槽を備え、上記非防爆室が上記LNG貯槽を上に配置しうるもので、上記LNG貯槽が上記非防爆室の上に配置されている。さらに、上記LNG貯槽と上記非防爆性の機器類が、上記非防爆室を構成する上記天板によって隔てられている。このため、上記非防爆室の上にLNG貯槽を配置すれば、LNG貯槽を設置するための用地面積をその分だけ縮小できる。より小さな用地面積内にLNGサテライト設備を設置できる。また、基礎工事の面積が小さくてすむ。また、上記熱媒体加熱手段を含む非防爆性の機器類は、周囲の壁と上部の天板で囲まれる。このため、非防爆性の機器類と防爆性の機器類が隔離される。
【0025】
請求項
2記載の発明は、上記壁と上記天板のうち少なくともいずれかには、上記熱媒体加熱手段に対して吸排気を行うための開口が設けられる。上記開口により、上記熱媒体加熱手段に対する吸排気を確保する。上記開口を、上記所定の高さよりも高い位置に配置する。これにより、上記非防爆性の機器類と上記防爆性の機器類を、所定の高さの壁で隔てる。
【0028】
請求項
3記載の発明は、上記非防爆
室を構成する上記壁と、その内部に配置する非防爆性の機器類を、ユニット化する。
これにより、本発明は、設置工事を簡略化して工期を短縮できる。つまり、配管や機器の取り付けといった作業を環境のよい屋内で行なってユニットを作りあげ、それをそのまま設置現場まで搬送して設置することができる。設置現場での作業は、たとえばべた基礎のうえに上記ユニットを設置し、あとは簡単な配管接続を行えばすむ。つまり、配管や機器の取り付けといった煩雑な作業のうち大部分を、天候に左右される屋外で行わなくてすむ。このように、本発明のLNGサテライト設備は、設置工事を簡略化し、工期の短縮や作業員の節減を可能とする。
【0029】
本発明において「防爆性の機器類」とは、可燃物の貯留や状態変化をさせる機器や、電気や直火を使う機器のうち防爆性能を有しているものをいう。上記可燃物の貯留や状態変化をさせる機器として、上記気化手段、上記供給手段、上記LNG貯槽を含む。上記気化手段としては、たとえばLNG気化器等をあげることができる。上記供給手段としては、たとえば減圧装置や流量計をあげることができる。また、これら以外の高圧用の流体機器を上記「防爆性の機器類」に含めることができる。上記高圧用の流体機器としては、たとえばバッファタンク等をあげることができる。ここでいう「高圧」とは、ガスの場合が1MPaG以上、液の場合は0.2MPaG以上をいう。つまり上記「防爆性の機器類」とは、防爆性の環境に配置すべき機器類である。
【0030】
本発明において「非防爆性の機器類」とは、上述したように、上記熱媒体加熱手段を含む。上記熱媒体加熱手段としては、たとえば温水ボイラーのような火気を使用する機器をあげることができる。温水ボイラー以外の火気を使用する機器を上記「非防爆性の機器類」に含めることができる。また、電気機器を上記「非防爆性の機器類」に含めることができる。上記電気機器としては、たとえば制御盤、温水ポンプ、コンプレッサー等をあげることができる。また、低圧用の流体機器も「非防爆性の機器類」に含めることができる。低圧用の流体機器としては、たとえば、減圧装置や流量計等をあげることができる。ここでいう「低圧」とは、ガスの場合は1MPaG未満をいう。つまり上記「非防爆性の機器類」とは、上記壁等によって上記「防爆性の機器類」から隔てた環境に配置すべき機器類である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
【0033】
◆第1実施形態
図1および
図2は、本発明が適用されたLNGサテライト設備を示す第1実施形態である。
図1において主要な構造を説明し、
図2において詳細な配管構造を含む構成を説明している。
【0034】
◇全体構成
本実施形態のLNGサテライト設備は、LNG貯槽10と、非防爆室22とを備えている。この例では、上記LNG貯槽10が、上記非防爆室22の上に配置されている。
【0035】
また、本実施形態のLNGサテライト設備は、気化手段と供給手段と熱媒体加熱手段とを備えている。
上記気化手段は、具体的には気化器41を含み、上記LNG貯槽10から取り出した液化天然ガスを気化して天然ガスを得る。
上記供給手段は、具体的には第1減圧弁43および第1流量計44を含み、上記気化器41で得られた天然ガスを、図示しない天然ガス使用設備に対して供給する。
上記熱媒体加熱手段は、具体的には温水ボイラー31を含み、上記気化器41に供給する熱媒体を加熱する。
【0036】
〔非防爆室22〕
上記非防爆室22は、前後左右が壁22Aで囲まれ、さらに上部が天板22Bで覆われ、下部が底板22Cによって塞がれている。上記壁22Aは、少なくとも所定の高さを有している。上記高さは、具体的には、たとえば2m以上の高さとすることができる。
【0037】
上記壁22Aは、爆発を遮って防爆するためのものであり、耐火性と剛性を備えた壁材または板材である。具体的には、所定厚みの鋼板を使用することができる。上記所定厚みとは、具体的には、たとえば6mm厚以上の厚みとすることができる。
【0038】
上記非防爆室22は、上記壁22A,天板22B,底板22C以外に、図示しない柱,梁,筋交い,大引き,根太等の補強部材により補強することができる。
【0039】
〔非防爆エリア20〕
これにより、上記壁22Aによって周囲を囲まれた領域が、本発明の非防爆エリア20として機能する。本実施形態では、上記非防爆エリア20は、上部がさらに天板22Bで覆われ、下部が底板22Cで塞がれている。
【0040】
本実施形態では、上記非防爆エリア20内に後述する非防爆性の機器類を配置し、上記非防爆エリア20の外に後述する防爆性の機器類を配置する。これにより、上記防爆性の機器類に対する防爆性を確保している。
【0041】
〔LNG貯槽10〕
上記LNG貯槽10は、縦型の円筒状であり、真空断熱層を有する二重構造の容器である。
【0042】
この例では、上記LNG貯槽10は、上記非防爆室22の上に配置されている。すなわち、上記LNG貯槽10は、上記非防爆エリア20の上に配置される。図において、符号17は、LNG貯槽10を上記非防爆室22の天板22B上に支受する筒状または柱状の脚部17である。
【0043】
〔機器の配置〕
本実施形態では、防爆性の機器類が上記非防爆エリア20の外に配置され、非防爆性の機器類が上記非防爆エリア20内に配置されている。
【0044】
〔防爆性の機器類〕
本実施形態において「防爆性の機器類」とは、上記気化器41、上記第1減圧弁43および第1流量計44、上記LNG貯槽10を含む。また、これら以外の高圧用の流体機器や配管類を上記「防爆性の機器類」に含めることができる。ここでいう「高圧」とは、ガスの場合は1MPaG以上をいう。つまり、上記「防爆性の機器類」は、LNGまたは1MPaG以上の高圧天然ガスが流通する流体機器であり、防爆環境に配置することが求められる。
【0045】
〔非防爆性の機器類〕
本発明において「非防爆性の機器類」とは、上記温水ボイラー31のような火気を使用する機器をあげることができる。上記温水ボイラー31以外の火気を使用する機器を上記「非防爆性の機器類」に含めることができる。また、電気機器を上記「非防爆性の機器類」に含めることができる。上記電気機器としては、たとえば制御盤35、温水ポンプ32等をあげることができる。また、低圧用の流体機器や配管類も「非防爆性の機器類」に含めることができる。低圧用の流体機器としては、たとえば、第2減圧弁37や第2流量計38等をあげることができる。ここでいう「低圧」とは、ガスの場合は1MPaG未満をいう。つまり、上記「非防爆性の機器類」は、上記壁22A等によって上記「防爆性の機器類」から隔てた環境に配置することが求められる。
【0046】
〔吸排気〕
上記壁22Aと上記天板22Bのうち少なくともいずれかには、上記温水ボイラー31に対して吸排気を行うための開口23が設けられている。この例では、上記開口23に、排気ダクト23Aが通っている。上記開口23は、上記所定の高さよりも高い位置に配置される。
【0047】
上記壁22Aには、防爆性を損なわない構造と剛性を有する開閉扉(図示せず)を設けることができる。
【0048】
〔ユニット21〕
本実施形態のLNGサテライト設備では、上記非防爆エリア20を構成する非防爆室22(上記壁22A,天板22B,底板22C)と、その内部に配置する上記非防爆性の機器類が、ユニット21にユニット化されている。
【0049】
本実施形態では、上記ユニット21は、非防爆室22に対して、上記防爆性の機器類の一部である気化器41,バッファタンク42,第1減圧弁43とそれらに対する配管を含めてひとつのユニット21としてユニット化することができる。
【0050】
上記天板22Bの上面の四隅近傍には、上記ユニット21を搬送可能とするための吊金具21Aが設けられている。
【0051】
したがって、本実施形態のLNGサテライト設備では、上記ユニット21とLNG貯槽10をあらかじめ工場で製作しておく。また、設備を設置する現場では、ユニット21を設置しうる面積の用地についてあらかじめ基礎工事を行なっておく。工場製作した上記ユニット21とLNG貯槽10を、基礎工事が終わった設置現場まで搬送し、それぞれ据え付けることが行われる。
【0052】
◇配管構造
図2は、詳細な配管構造を含む構成を示す図である。
【0053】
本実施形態のLNGサテライト設備は、LNG貯槽10、気化器41、第1減圧弁43および第1流量計44、温水ボイラー31を備えている。
上記LNG貯槽10は、LNGローリー51またはLNGコンテナから受け入れたLNGを貯留する。上記気化器41は、上記LNG貯槽10から取り出したLNGを気化して天然ガスを得る。上記第1減圧弁43および第1流量計44は、上記気化器41で得られた天然ガスを、図示しない天然ガス使用設備に対して供給する。上記温水ボイラー31は、上記気化器41に供給する熱媒体である水を加熱する。
【0054】
〔防爆性の機器類〕
上記LNG貯槽10は、LNG導入路11から貯留するためのLNGが導入される。上記LNG導入路11には、第1LNG受入路18Aが接続されている。
この例では、上記第1LNG受入路18AにおいてLNGローリー51からLNGを受入れる状態を示している。
【0055】
上記LNG貯槽10に貯留されているLNGは、LNG取出路12から取り出され、気化器41に送り込まれる。また、LNGローリー51のLNGを直接気化器41に送り込むこともできる。上記気化器41には、加熱された熱媒体である温水が満たされ、送り込まれたLNGは、上記温水との熱交換により気化して天然ガスとなる。
【0056】
上記気化器41で得られた天然ガスはバッファタンク42を経由して、第1減圧弁43および第1流量計44を経て天然ガス供給路45より、図示しない天然ガス使用設備に供給される。なお、上記バッファタンク42の設置を省略することもできる。
【0057】
上記LNG貯槽10には、放出路14が接続されている。上記放出路14は、上記LNG貯槽10内のボイルオフガスを放出する。
【0058】
上述したように、上記LNG貯槽10,気化器41,バッファタンク42,第1減圧弁43および第1流量計44,放出路14は、防爆性の機器類である。つまり、LNGまたは主として1MPaG以上の高圧天然ガスが流通する流体機器であり、防爆環境に配置することが求められる。したがって、上記防爆性の機器類は、上述した非防爆エリア20の外に配置されている。また、図示しない窒素集合装置,自動弁操作用電磁弁,圧力・差圧・温度伝送器等も、上記非防爆エリア20の外に配置される。なお、1MPaG未満の低圧天然ガスが流通する流体機器を、上記非防爆エリア20の外に配置することを妨げるものではない。
【0059】
〔非防爆性の機器類〕
上記温水ボイラー31は、上記気化器41に供給する熱媒体である水を加熱する。上記気化器41に貯留された温水は、温水ポンプ32と循環路32Aにより、上記温水ボイラー31と気化器41のあいだを循環する。つまり、気化器41でLNGとの熱交換により冷えた水が、上記温水ポンプ32で加熱されて温水となって再び気化器41に導入される。上記循環路32Aを循環する水は、給水タンク33から補充される。
【0060】
上記温水ボイラー31の燃料には、上記気化器41で得られた天然ガスの一部が用いられる。つまり、上記天然ガス供給路45の第1減圧弁43の下流に燃料路39が分岐している。上記燃料路39が、第2減圧弁37および第2流量計38を経由して温水ボイラ31に接続されている。これにより、上記気化器41で得られた天然ガスの一部を燃料として温水ボイラー31に供給される。上記温水ボイラー31には、排気ダクト23Aが接続されている。
【0061】
図において符号35は、電気制御を行う制御盤35である。
【0062】
上述したように、温水ボイラー31,制御盤35,温水ポンプ32,第2減圧弁37および第2流量計38は、非防爆性の機器類である。上記温水ボイラー31は火気を使用する機器であり、制御盤35,温水ポンプ32は電気機器である。また、第2減圧弁37および第2流量計38は、1MPaG未満の低圧天然ガスが流通する流体機器である。したがって、上記非防爆性の機器類は、上記壁22A等によって上記「防爆性の機器類」から隔てた環境に配置することが求められ、非防爆エリア20内に配置される。この例では、給水タンク33も非防爆エリア20内に配置されている。
【0063】
〔第1実施形態の効果〕
本実施形態は、非防爆エリア20とそれ以外の防爆エリアを分けて、非防爆エリア20を非防爆室22とし、非防爆室22の上にLNG貯槽10を配置した。
【0064】
本実施形態のLNGサテライト設備は、つぎの効果を奏する。
【0065】
本実施形態は、気化器41、第1減圧弁43および第1流量計44、温水ボイラー31とを備えている。上記気化器41は、LNGを気化して天然ガスを得る。上記第1減圧弁43および第1流量計44は、上記気化器41で得られた天然ガスを天然ガス使用設備に対して供給する。上記温水ボイラー31は、上記気化器41に供給する熱媒体である水を加熱する。
本実施形態は、少なくとも所定の高さを有する壁22Aによって周囲を囲まれた非防爆エリア20を設ける。上記温水ボイラー31を含む非防爆性の機器類を、上記非防爆エリア20内に配置する。上記気化器41と第1減圧弁43および第1流量計44を含む防爆性の機器類を、上記非防爆エリア20の外に配置する。
本実施形態では、上記非防爆性の機器類と上記防爆性の機器類が、少なくとも所定の高さを有する壁22Aによって隔てられる。このため、従来の設備のように、非防爆性の機器類と防爆性の機器類のあいだに、一定以上の安全距離を確保する必要がなくなる。したがって、本発明では、LNGサテライト設備を設置するにあたって、上記安全距離を確保するための用地が不要となる。つまり、設備に要する用地面積が縮小され、それに伴って基礎工事の費用も節減できる。
【0066】
本実施形態は、上記非防爆エリア20が、さらに上部が天板22Bで覆われたものである。
したがって、上記温水ボイラー31を含む非防爆性の機器類は、周囲の壁22Aと上部の天板22Bで囲まれる。非防爆性の機器類と防爆性の機器類が隔離される。
【0067】
本実施形態は、上記壁22Aと上記天板22Bのうち少なくともいずれかには、上記温水ボイラー31に対して吸排気を行うための開口23が設けられる。上記開口23により、上記温水ボイラー31に対する吸排気を確保する。上記開口23を、上記所定の高さよりも高い位置に配置する。これにより、上記非防爆性の機器類と上記防爆性の機器類を、所定の高さの壁で隔てる。
【0068】
本実施形態は、上記防爆性の機器類としてさらに、LNG貯槽10を備えている。上記LNG貯槽10と上記非防爆性の機器類とを、所定の高さの壁で隔てる。
【0069】
本実施形態は、上記LNG貯槽10を上記非防爆エリア20の上に配置する。このように、上記非防爆エリア20の上にLNG貯槽10を配置すれば、LNG貯槽10を設置するための用地面積をその分だけ縮小できる。より小さな用地面積内にLNGサテライト設備を設置できる。また、基礎工事の面積が小さくてすむ。
【0070】
本実施形態は、上記非防爆エリア20を構成する上記壁22Aと、その内部に配置する非防爆性の機器類を、ユニット化する。
これにより、本実施形態は、設置工事を簡略化して工期を短縮できる。つまり、配管や機器の取り付けといった作業を環境のよい屋内で行なってユニット21を作りあげ、それをそのまま設置現場まで搬送して設置することができる。設置現場での作業は、たとえばべた基礎のうえに上記ユニット21を設置し、あとは簡単な配管接続を行えばすむ。つまり、配管や機器の取り付けといった煩雑な作業のうち大部分を、天候に左右される屋外で行わなくてすむ。このように、本発明のLNGサテライト設備は、設置工事を簡略化し、工期の短縮や作業員の節減を可能とする。
【0071】
◆第2実施形態
図3は、本発明が適用されたLNGサテライト設備を示す第2実施形態であり、主として配管構造を示す図である。
【0072】
この実施形態は、LNG貯留槽10を備えていない。LNGコンテナ52から受け入れたLNGを直接、気化器41に送り込んで天然ガスとし、天然ガス供給路45より、図示しない天然ガス使用設備に供給される。2基のLNGコンテナ52から交互にLNGを受け入れることにより、途切れないようにLNGを気化器41に送り込み、天然ガスを得ることができる。
それ以外は、上記第1実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付して説明を省略している。上記第2実施形態でも、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0073】
◆変形例
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は図示した実施形態に限定する趣旨ではなく、各種の態様に変形して実施することができ、本発明は各種の変形例を包含する趣旨である。
【0074】
たとえば、第1実施形態において、LNG貯槽10を非防爆室22の上ではなく、基礎工事を行った地面の上に配置してもよい。