特許第6861201号(P6861201)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6861201活性型肝細胞増殖因子(HGF)の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861201
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】活性型肝細胞増殖因子(HGF)の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/64 20060101AFI20210412BHJP
   C07K 14/475 20060101ALI20210412BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20210412BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20210412BHJP
   C12N 15/57 20060101ALN20210412BHJP
   A61K 38/18 20060101ALN20210412BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20210412BHJP
   A61P 37/04 20060101ALN20210412BHJP
   A61P 17/02 20060101ALN20210412BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20210412BHJP
【FI】
   C12N9/64 ZZNA
   C07K14/475
   C07K14/47
   C12P21/02 H
   !C12N15/57
   !A61K38/18
   !A61P35/00
   !A61P37/04
   !A61P17/02
   !A61P43/00 105
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-505972(P2018-505972)
(86)(22)【出願日】2017年3月15日
(86)【国際出願番号】JP2017010355
(87)【国際公開番号】WO2017159722
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2019年11月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-54128(P2016-54128)
(32)【優先日】2016年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、医療分野研究成果展開事業「組換えヒト肝細胞増殖因子を用いた急性肝不全治療薬」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】清水正史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤俊孝
(72)【発明者】
【氏名】有田貴久
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−103670(JP,A)
【文献】 特開平06−153966(JP,A)
【文献】 特開2002−356500(JP,A)
【文献】 J. Biol. Chem.,2003年,vol.278, no.38,p.36341-36349
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性型肝細胞増殖因子アクチベーター(HGFA)を製造する方法であって、
工程1:
不活性型肝細胞増殖因子アクチベーター(pro−HGFA)を発現する哺乳動物細胞を、血清を含まない培地において培養することにより、pro−HGFAを含む培養上清を取得する工程、および、
工程2:
前記工程により取得されたpro−HGFAを含む培養上清を、pH 4.0〜6.0に調整して、pro−HGFAを活性型HGFAに変換する工程、
を含む、
ことを特徴とする、
製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記工程が、前記培養上清に硫酸化多糖類を添加することをさらに含む、
ことを特徴とする、
製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法であって、
前記培養上清を弱酸性に調製する工程が、15〜40℃の温度で行われる、
ことを特徴とする、
製造方法。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法であって、
前記培養上清は、培養する哺乳動物細胞の生存率の低下後に取得される、
ことを特徴とする、
製造方法。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法であって、
前記哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、
ことを特徴とする、
製造方法。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法であって、
前記pro−HGFAは、配列番号2に示すアミノ酸配列を有する、
ことを特徴とする、
製造方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法であって、
前記培養上清が、前記培養上清そのものであるか、前記培養上清を希釈したものであるか、前記培養上清を濃縮したものであるか、または前記培養上清を部分精製したものである、
ことを特徴とする、
製造方法。
【請求項8】
活性型肝細胞増殖因子(HGF)を製造する方法であって、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法によって活性型HGFAを取得する工程;および
不活性型肝細胞増殖因子(pro−HGF)を含む培養上清に、前記工程で取得した活性型HGFAを作用させて、前記pro−HGFを活性型HGFに変換する工程、
を含み、
ここで、
前記pro−HGFを含む培養上清は、pro−HGFを発現する細胞を、血清を含まない培地において培養して得られる培養上清である、
ことを特徴とする、
製造方法。
【請求項9】
請求項に記載の製造方法であって、
前記pro−HGFを発現する細胞を培養する培地が動物由来の成分を含まない培地である
ことを特徴とする、
製造方法。
【請求項10】
請求項またはに記載の製造方法であって、
前記pro−HGFは、配列番号1に示すアミノ酸配列を有することを特徴とする、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物血清を使用せずに、活性型肝細胞増殖因子アクチベーター(本明細書中、「活性型HGFA」とも称する)、および活性型肝細胞増殖因子(本明細書中、「活性型HGF」とも称する)を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HGFは、ヒト劇症肝炎患者の血漿から精製された肝実質細胞増殖活性を有する因子であり(特許文献1、および非特許文献1)、抗腫瘍効果、細胞性免疫の増強、創傷治療効果、組織の再生促進効果など、様々な薬理学的効果があることが報告されている(特許文献2)。
【0003】
これまでに、当該HGFをコードする遺伝子がクローニングされ、組み換えDNA技術により製造されている(特許文献3〜5)。また、HGFは、2種類のサブユニット(およそ60kDaのα鎖;およそ30kDaのβ鎖)から構成される一本鎖型および二本鎖型の形態をとり、一本鎖型は生理活性を有さず、二本鎖型で生理活性を有することが知られている。さらに、組み換えDNA技術による製造において、動物血清を用いた培養下では、二本鎖型の活性形態で取得することができるが、動物血清を含まない培養下では、製造されるHGFの大半は、一本鎖型の不活性形態で取得されることが知られている(例えば特許文献6)。一本鎖型の不活性型肝細胞増殖因子(本明細書中、「pro−HGF」とも称する)から二本鎖型の活性型HGFへの変換には、動物血清中に含まれるプロテアーゼが関与しているため、活性型HGFを効率的に取得するためには、動物血清を使用することが必要であると考えられている。
【0004】
一方、近年では、ウイルス混入などの危険性を回避するために、組み換えDNA技術による生物材料の製造において、動物血清を用いない培養が主流になっている。そこで、動物血清を含まない培地を用いて活性型HGFを製造するためには、一本鎖型pro−HGFを、何らかの手段で活性型HGFに変換する必要がある。そのような手段として、pro−HGFを活性型HGFに変換できるHGFAや(特許文献7)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーターなどのセリンプロテアーゼ(非特許文献2)が知られている。しかし、pro−HGFを活性型HGFに変換できるこれらの酵素は、血清由来であったり、微生物や動物細胞に遺伝子を組み込んで産生する必要があり、無血清培養ではそれ自体が前駆体で産生されることから、そのまま使用することが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−22526号公報
【特許文献2】日本国特許第2747979号
【特許文献3】日本国特許第2577091号
【特許文献4】日本国特許第2859577号
【特許文献5】日本国特許第3072628号
【特許文献6】日本国特許第3213985号
【特許文献7】特開平5−103670号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Clin.Invest.,81,414(1988)
【非特許文献2】JGH 26(2011) Suppl.1;188−202、192頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、動物血清を使用せずに、活性型HGFA、および活性型HGFを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明はまた、本発明の方法により製造される、活性型HGFA、活性型HGFおよびこれらの調製物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、不活性型肝細胞増殖因子アクチベーター(pro−HGFA)を発現する哺乳動物細胞を、血清を含まない培地で培養してその培養上清を取得し、当該培養上清に特定の処理を施すことで、当該培養上清に含まれるpro−HGFAを活性型のHGFAに変換できることを見出した。これにより、動物血清を含まない培養下で製造されたpro−HGFを、同様に、動物血清を含まない培養下で製造された活性型HGFAにより、活性型HGFを変換することができるため、動物血清由来の成分を含まない活性型HGFまたはこれを含む調製物を製造することができる。
【0009】
したがって、本発明は以下の態様を包含する:
[1] 活性型肝細胞増殖因子アクチベーター(HGFA)を製造する方法であって、
工程1:
不活性型肝細胞増殖因子アクチベーター(pro−HGFA)を発現する哺乳動物細胞を、血清を含まない培地において培養することにより、pro−HGFAを含む培養上清を取得する工程、および、
工程2:
前記工程により取得されたpro−HGFAを含む培養上清を、弱酸性に調整して、pro−HGFAを活性型HGFAに変換する工程、
を含む、
ことを特徴とする、
製造方法。
【0010】
[2] [1]に記載の製造方法であって、
前記工程が、前記培養上清に硫酸化多糖類を添加することをさらに含む、
ことを特徴とする、
製造方法。
【0011】
[3] [1]または[2]に記載の製造方法であって、
前記培養上清を弱酸性に調製する工程が、pHを4.0〜6.0に調整する工程である、
ことを特徴とする、
製造方法。
【0012】
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法であって、
前記培養上清を弱酸性に調製する工程が、15〜40℃の温度で行われる、
ことを特徴とする、
製造方法。
【0013】
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法であって、
前記培養上清は、培養する哺乳動物細胞の生存率の低下後に取得される、
ことを特徴とする、
製造方法。
【0014】
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法であって、
前記哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、
ことを特徴とする、
製造方法。
【0015】
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法であって、
前記pro−HGFAは、配列番号2に示すアミノ酸配列を有する、
ことを特徴とする、
製造方法。
【0016】
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法であって、
前記培養上清が、前記培養上清そのものであるか、前記培養上清を希釈したものであるか、前記培養上清を濃縮したものであるか、または前記培養上清を部分精製したものである、
ことを特徴とする、
製造方法。
【0017】
[9] [1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法によって取得される、
ことを特徴とする、
活性型HGFA。
【0018】
[10] 活性型肝細胞増殖因子(HGF)を製造する方法であって、
不活性型肝細胞増殖因子(pro−HGF)を含む培養上清に、活性型HGFAを作用させて、前記pro−HGFを活性型HGFに変換する工程、
を含み、
ここで、
前記pro−HGFを含む培養上清は、pro−HGFを発現する細胞を、血清を含まない培地において培養して得られる培養上清であり、
前記活性型HGFAが、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法によって製造されたものである、
ことを特徴とする、
製造方法。
【0019】
[11] [10]に記載の製造方法であって、
前記pro−HGFを発現する細胞を培養する培地が動物由来の成分を含まない培地である
ことを特徴とする、
製造方法。
【0020】
[12] [10]または[11]に記載の製造方法であって、
前記pro−HGFは、配列番号1に示すアミノ酸配列を有することを特徴とする、
製造方法。
【0021】
[13] [10]〜[12]のいずれかに記載の製造方法によって取得される、
ことを特徴とする、
活性型HGF。
【0022】
以上述べた本発明の一または複数の特徴を任意に組み合わせた発明も、本発明の範囲に含まれることを、当業者であれば理解するであろう。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、動物血清を使用せずに、活性型HGFA、および活性型HGFを製造する方法が提供される。
本発明の活性型HGFの製造方法においては、その製造プロセスにおいて、動物血清を一切使用する必要がないため、当該製造方法によって得られた活性型HGFを含む組成物には、動物血清由来の成分が含まれず、極めて安全にヒトに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、pro−HGFA培養上清の活性化により調製されたHGFA培養上清が、pro−HGFを含むCHO細胞由来の培養上清中のpro−HGFを活性化することを示す。
図2図2は、実験計画法(DoE)を用いた、pro−HGFA培養上清が活性化する条件についての検証結果を示す。
図3図3は、クロマトグラフィー担体としてマルチモーダル陰イオン交換体のCapto Adhereを用い、0.25Mアルギニンおよび0.7Mアルギニンを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を溶出液として用いたクロマトグラフィー精製後のSDS−PAGEを示す。
図4図4は、クロマトグラフィー担体としてマルチモーダル陰イオン交換体のCapto Adhereを用い、1Mアルギニンを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を溶出液として用いたクロマトグラフィー精製後のSDS−PAGEを示す。
図5図5は、実施例5と同様の精製をHGFA培養上清によって活性化されていないpro−HGFを含む培養上清液を用いて行った、精製の各段階における精製品の非還元および還元のSDS−PAGE結果を示す。
図6図6は、実施例5で得た精製HGFについて、TGFβ存在下における細胞増殖活性を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書中、「活性型肝細胞増殖因子(活性型HGF)」と記載される場合には、特段の明示がない限り、二本鎖型の活性化HGFを指すものと解釈され、その一本鎖型の不活性の形態である不活性型肝細胞増殖因子(pro−HGF)とは区別して使用される。
【0026】
本発明において、HGFは、ヒト、マウス、ラット、ラビット、その他の動物に由来するHGFを含み得る。本発明において、HGFは、好ましくはヒト由来のHGFである。
【0027】
本発明において、ヒトHGF(hHGF)には、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその変異体が含まれる。配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの変異体には、配列番号1に示すアミノ酸配列において、1個または複数個のアミノ酸の付加、欠失または置換を有するアミノ酸配列を有し、かつ、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドと同等またはそれ以上のHGF活性を有するか、または有するように活性化し得る、ポリペプチドが含まれる。ここでいう「複数個」は、2〜150個、より好ましくは2〜80個、より好ましくは2〜70個、より好ましくは2〜60個、より好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜40個、より好ましくは2〜30個、より好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個、またはより好ましくは2〜5個である。
【0028】
配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの変異体には、また、配列番号1に示すアミノ酸配列と、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドと同等またはそれ以上のHGF活性を有するか、または有するように活性化され得る、ポリペプチドが含まれる。
【0029】
配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの変異体には、また、配列番号1に示すアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドでコードされるアミノ酸配列を有し、かつ、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドと同等またはそれ以上のHGF活性を有するか、または有するように活性化され得る、ポリペプチドが含まれる。
【0030】
本発明において、「ストリンジェントな条件」とは、ポストハイブリダイゼーションの洗浄において、例えば「2×SSC、0.1%SDS、50℃」の条件、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」の条件、または「1×SSC、0.1%SDS、37℃」の条件における洗浄でハイブリダイズしていること、よりストリンジェントな条件としては、例えば「2×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」、「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」、または「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」の条件における洗浄でハイブリダイズしていることが挙げることができる(1×SSCは150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム、pH 7.0)。より詳細には、Rapid−hyb buffer(Amersham Life Science)を用いた方法として、68℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを行った後、プローブを添加して1時間以上68℃に保ってハイブリッドを形成させ、その後、2×SSC、0.1%SDS中、室温で20分の洗浄を3回、1×SSC、0.1%SDS中、37℃で20分の洗浄を3回、最後に、1×SSC、0.1%SDS中、50℃で20分の洗浄を2回行うことも考えられる。より好ましくは、プレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの溶液としては、例えば5×SSC、7%(W/V)SDS、100μg/mL変性サケ精子DNA、5×デンハルト液(1×デンハルト溶液は0.2%ポリビニールピロリドン、0.2%牛血清アルブミン、および0.2%フィコールを含む)を含む溶液を用い、プレハイブリダイゼーションを65℃30分から1時間、ハイブリダイゼーションを同じ温度で一晩(6〜8時間)行う。その他、例えばExpresshyb Hybridization Solution(CLONTECH)中、55℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを行い、標識プローブを添加し、37〜55℃で1時間以上インキュベートし、2×SSC、0.1%SDS中、室温で20分の洗浄を3回、1×SSC、0.1%SDS中、37℃で20分の洗浄を1回行うこともできる。ここで、例えば、プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーションや2度目の洗浄の際の温度を上げることにより、よりストリンジェントな条件とすることができる。例えば、プレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの温度を60℃、さらにストリンジェントな条件としては65℃または68℃とすることができる。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件を加味し、本発明の遺伝子のアイソフォーム、アレリック変異体、および対応する他種生物由来の遺伝子を得るための条件を設定することができる。ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、“Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.”(Cold Spring Harbor Press (1989);特にSection9.47−9.58)、“Current Protocols in Molecular Biology”(John Wiley & Sons (1987−1997);特にSection6.3−6.4)、“DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach 2nd ed.”(Oxford University (1995);条件については特にSection2.10)等を参照することができる。
【0031】
本明細書中、「活性型肝細胞増殖因子アクチベーター(活性型HGFA)」と記載される場合には、特段の明示がない限り、活性化HGFAを指すものと解釈され、その不活性の形態である不活性型肝細胞増殖因子アクチベーター(pro−HGFA)とは区別して使用される。
【0032】
本発明において、HGFAは、ヒト、マウス、ラット、ラビット、その他の動物に由来するHGFAを含み得る。本発明において、HGFAは、好ましくはヒト由来のHGFAである。
【0033】
本発明において、ヒトHGFAには、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその変異体が含まれる。配列番号2に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの変異体には、配列番号2に示すアミノ酸配列において、1個または複数個のアミノ酸の付加、欠失または置換を有するアミノ酸配列を有し、かつ、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドと同等またはそれ以上のHGF活性を有するか、または有するように活性化し得る、ポリペプチドが含まれる。ここでいう「複数個」は、2〜150個、より好ましくは2〜80個、より好ましくは2〜70個、より好ましくは2〜60個、より好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜40個、より好ましくは2〜30個、より好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個、またはより好ましくは2〜5個である。
【0034】
配列番号2に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの変異体には、また、配列番号2に示すアミノ酸配列と、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドと同等またはそれ以上のHGFA活性を有するかまたは有するように活性化され得る、ポリペプチドが含まれる。
【0035】
配列番号2に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの変異体には、また、配列番号2に示すアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドでコードされるアミノ酸配列を有し、かつ、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドと同等またはそれ以上のHGF活性を有するか、または有するように活性化され得る、ポリペプチドが含まれる。
【0036】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0037】
本発明は、一態様において、動物血清を使用することなく、活性型HGFAを製造する方法に関する。具体的に、本発明の活性型HGFAの製造方法は、哺乳動物細胞で組み換え発現されたpro−HGFAを含む培養上清を、所定の処理に付することによって活性型HGFAに変換することで、活性型HGFAを製造する方法である。この方法によれば、活性型HGFAへの変換に、動物血清が使用されないため、得られるpro−HGFAまたはこれを含む組成物は、他種動物または他の個体の細胞由来のウイルス等、感染物質を混入するリスクを招く可能性が著しく低減され、安全性の高い生物材料として様々な用途に用いることができる。
【0038】
具体的に、本発明の活性型HGFAの製造方法は、一実施形態において、以下の工程:
工程1:
pro−HGFAを発現する哺乳動物細胞を、血清を含まない培地において培養することにより、pro−HGFAを含む培養上清を取得する工程、および、
工程2:
前記工程により取得されたpro−HGFAを含む培養上清を、弱酸性に調整して、pro−HGFAを活性型HGFAに変換する工程、
を含むことを特徴とする。
【0039】
本発明のHGFA製造方法は、別の実施形態において、pro−HGFAを含む培養上清を、弱酸性に調整して、pro−HGFAを活性型HGFAに変換する工程を含んでおり、その際、前記培養上清が、pro−HGFAを発現する哺乳動物細胞を、血清を含まない培地において培養して得られる培養上清であることを特徴とする。
【0040】
培養上清の弱酸性化は、pro−HGFAを活性型HGFAに変換するための処理である。培養上清に対して、外的に酵素等の添加を行わずに、弱酸性化のみによって、pro−HGFAから活性型HGFAへの変換が起こることから、哺乳動物細胞由来の成分が、pro−HGFAから活性型HGFAへの変換に関与しており、弱酸性化は、前記哺乳動物細胞由来の成分を活性化するための手段であると考えられる。弱酸性化は、例えば酸性溶液(塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、酢酸、コハク酸、クエン酸などの有機酸)を適切な濃度で添加するなど、当業者に周知の手段によって行えばよい。本発明の一実施形態において、「弱酸性」は、pH4.0〜6.0の範囲であり、好ましくは5.0〜6.0であり、より好ましくは5.3〜5.6であり、例えばpH5.5である。
【0041】
本発明において、「pro−HGFAを含む培養上清」は、pro−HGFAを発現する哺乳動物細胞を細胞培養することによって取得される、pro−HGFAを含む画分であり、当業者は、常法に従って、前記哺乳動物細胞の細胞培養物から取得することができる(本明細書中、「pro−HGFA培養上清」とも称する)。例えば、pro−HGFA培養上清は、前記哺乳動物細胞の細胞培養物から、遠心分離などの手段によって、残渣が取り除かれた画分であり得る。
【0042】
本発明において、培養上清は、pro−HGFAの生物学的活性を損なわない程度に、培養上清に任意の処理を行うことによって、調製された任意の画分であってもよい。したがって、本発明において、培養上清は、これに限定されるものではないが、培養上清そのものであってもよいし、培養上清を希釈したもの、濃縮したもの、または部分精製したものなどが含まれる。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、「pro−HGFAを活性型HGFAに変換する工程」は、前記培養上清に硫酸化多糖類を添加することをさらに含んでいる。硫酸化多糖類の添加により、pro−HGFAから活性型HGFAへの変換を、より効率的に行うことができる。硫酸化多糖類を添加するタイミングは、前記培養上清の弱酸性化前、弱酸性化と同時、または弱酸性化後のいずれの時点であってもよい。また、硫酸化多糖類の添加量は、使用される硫酸化多糖類の種類等に応じて変化し得るが、前記pro−HGFA培養上清1mLに対して、0.01〜50mg、より好ましくは0.1〜20mg、例えば1mgの量で、添加すればよい。
【0044】
本発明の活性型HGFAの製造方法に使用することができる硫酸化多糖類として、これに限定されるものではないが、ペパリン、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、フコイダンおよびそれらの塩などを挙げることができる。本発明の好ましい実施形態では、デキストラン硫酸が使用される。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、「pro−HGFAを活性型HGFAに変換する工程」は、15〜40℃、好ましくは20〜37℃、例えば25℃の温度で行われる。かかる温度範囲とすることで、pro−HGFAの活性型HGFAへの変換をより効率的なものとすることができる。
【0046】
本発明の活性型HGFAの製造方法において、「pro−HGFAを活性型HGFAに変換する工程」は、弱酸性化してから、所望のHGFAの活性が認められるのに十分な時間で行われる。そのような時間は、pH、硫酸化多糖の併用の有無、温度条件等によって変化し得るが、弱酸性化後1〜15時間、例えば6〜8時間とすることができる。
【0047】
本発明の一実施形態において、pro−HGFA培養上清は、培養する哺乳動物細胞の生存率の低下後に取得される培養上清である。哺乳動物細胞の生存率の低下に伴い、pro−HGFAから活性型HGFAへの変換に関与する動物細胞由来の成分が、死滅した細胞から溶出し、pro−HGFA培養上清中に十分に回収することができる。ここでいう「培養する哺乳動物細胞の生存率の低下」とは、最大の細胞密度にまで増殖した後の哺乳動物細胞の生存率の低下を指す。本発明において、pro−HGFA培養上清における哺乳動物細胞の生存率は、好ましくは95%以下、より好ましくは80%以下、例えば70%である。
【0048】
pro−HGFAから活性型HGFAへの活性化には、宿主細胞のライソゾーム由来の酵素が関与していると考えられることから、ライソゾーム由来の酵素を添加して処理を施してもよい。
【0049】
本発明の活性型HGFAの製造方法で使用可能な哺乳動物細胞としては、これに限定されるものではないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、HEK細胞(HEK293細胞を含む)、COS細胞、NS0マウスミエローマ細胞、Sp2/0マウスミエローマ細胞などを挙げることができる。本発明の好ましい実施形態では、pro−HGFAを発現する哺乳動物細胞として、CHO細胞が使用される。
【0050】
本発明はまた、本発明の活性型HGFAの製造方法によって製造された活性型HGFAまたは活性型HGFAを含む組成物に関する。本発明の活性型HGFAまたは活性型HGFAを含む組成物は、動物血清を使用することなく、組み換え発現されたpro−HGFAから動物血清を使用することなく製造することができるため、安全の高い生物材料として、例えば下記に説明する活性型HGFの製造方法に使用することができる。
【0051】
本発明は、別の態様において、活性型HGFを製造する方法に関する。本発明の活性型HGFの製造方法は、本発明の活性型HGFAの製造方法によって取得された活性型HGFAを、同じく血清を用いない培地で組換え発現されたpro−HGFを含む培養上清に作用させて、pro−HGFを活性型HGFに変換することを含んでいる。この方法によれば、活性型HGFへの変換に用いる活性型HGFAの取得を含め、全ての工程で動物血清を用いることなく活性型HGFを製造することができるため、得られる活性型HGFまたはこれを含む組成物は、ウイルス等の感染物質を混入するリスクが排除された安全性の高い医薬品として使用することができる。
【0052】
具体的に、本発明の活性型HGFの製造方法は、一実施形態において、
pro−HGFを含む培養上清に、活性型HGFAを作用させて、前記pro−HGFを活性型HGFに変換する工程、
を含み、
ここで、
前記pro−HGFを含む培養上清は、pro−HGFを発現する細胞を、血清を含まない培地において培養して得られる培養上清であり、
前記活性型HGFAが、上記本発明の活性型HGFAの製造方法によって製造されたものである、
ことを特徴とする方法である。
【0053】
また、本発明の活性型HGFの製造方法は、別の実施形態において、以下の工程:
工程A:
pro−HGFAを含む培養上清を、弱酸性に調整して、pro−HGFAを活性型HGFAに変換する工程、ここで、前記培養上清が、pro−HGFAを発現する哺乳動物細胞を、血清を含まない培地において培養して得られる培養上清であり、
工程B:
pro−HGFを発現する細胞を、血清を含まない培地において培養することにより、pro−HGFを含む培養上清を取得する工程、
工程C:
前記工程Bで得られたpro−HGFを含む培養上清に、前記工程Aで得られた活性型HGFAを作用させ、前記pro−HGFを活性型HGFに変換する工程、
を含む、
ことを特徴とする方法である。
【0054】
本発明において、「pro−HGFを含む培養上清」は、pro−HGFを発現する細胞の細胞培養によって取得されるpro−HGFを含む画分であり、当業者は、常法に従って、前記細胞の細胞培養物から取得することができる。例えば、pro−HGFを含む培養上清は、前記細胞の細胞培養物から、遠心分離などの手段によって、残渣が取り除かれた画分であり得る。
【0055】
本発明の活性型HGFの製造方法において、「pro−HGFを含む培養上清」に作用させる活性型HGFAとして、pro−HGFAを発現する哺乳動物細胞を血清を含まない培地中で培養して得られる培養上清をそのまま用いてもよいし、当該培養上清を希釈したもの、濃縮したもの、部分的にまたは完全に精製したものを用いてもよい。
【0056】
本発明において、pro−HGFAを発現する哺乳動物細胞は、これに限定されるものではないが、pro−HGFAをコードする核酸を含むベクターを作製し、これを宿主細胞である哺乳動物細胞に導入して形質転換することによって得ることができる。同様に、pro−HGFを発現する細胞は、pro−HGFをコードする核酸を含むベクターを作製し、これを宿主細胞に導入して形質転換することによって得ることができる。
【0057】
上述のベクターとして、遺伝子発現ベクターなどを使用することができる。「遺伝子発現ベクター」は、目的の核酸が有する塩基配列を発現させる機能を有するベクターであり、前記塩基配列の発現を制御するためのプロモーター配列、エンハンサー配列、リプレッサー配列、インスレーター配列等が含まれていてもよい。これらの配列は、宿主細胞において機能するものであれば特に限定はされない。
【0058】
目的の核酸を含むベクターを作製する手法は、当業者に公知であり、当業者は適宜適切な方法を選択することができる。例えば、そのような手法として、これに限定されるものではないが、制限酵素サイトを利用したリガーゼ反応などを挙げることができる(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987) Section 11.4−11.11; Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Press (1989) Section 5.61−5.63)。
【0059】
pro−HGFを発現する細胞は、pro−HGFを発現できるものであれば特に限定はされず、例えば昆虫細胞、真核細胞、哺乳動物細胞等が挙げられる。好ましくは、ヒト由来のpro−HGFをコードする核酸を効率的に発現させる観点から、哺乳動物細胞であるCHO細胞、HEK細胞(HEK293細胞を含む)、HeLa細胞、NS0細胞またはSP2/0マウスミエローマ細胞が使用される。発明の好ましい実施形態では、pro−HGFを発現する哺乳動物細胞として、CHO細胞が使用される。
【0060】
上記のベクターを宿主細胞に導入する手法は、周知であり、当業者は適宜適切な方法を選択することができる。例えば、これに限定されるものではないが、宿主細胞へのベクターの導入は、エレクトポレーション法(Chu et al. (1987) Nucleic Acids Res. 15: 1311−26)、カチオニックリポソーム法、電気パルス穿孔法(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987) Section 9.1−9.9)、微小ガラス管を使用した直接注入法、マイクロインジェクション法、リポフェクション(Derijard (1994) Cell 7: 1025−37; Lamb (1993) Nature Genetics 5: 22−30; Rabindran et al. (1993) Science 259: 230−4)、リポフェクタミン法(Thermo Fisher Scientific)、リン酸カルシウム法(Chen and Okayama (1987) Mol. Cell. Biol. 7: 2745−52)、DEAEデキストラン法(Lopata et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12: 5707−17; Sussman and Milman (1985) Mol. Cell. Biol. 4: 1642−3)、FreeStyle MAX Reagent試薬(Thermo Fisher Scientific)などを挙げることができる。
【0061】
pro−HGFAを発現する細胞、およびpro−HGFを発現する細胞の培養に使用される無血清培地は、使用する宿主細胞の種類等に応じて、当業者は適宜適切な組成を選択することができる。また、その他の培養条件も、当業者は適宜選択することができ、例えばこれに限定されるものではないが、培養温度は、35.5〜37.5℃の間で適宜選択することができ、培養期間は、5〜20日間の間で選択することができる。pro−HGFAについては、目的とする生存率に応じて、培養期間を設定してもよい。培養中の二酸化炭素濃度は、一般的なプロトコールにしたがって、5%COとすることができる。
【0062】
本発明の活性型HGFの製造方法は、一実施形態において、前記工程に続き、さらに、活性型HGFを精製する工程を含むことを特徴とする。本工程には、活性型HGFを含む調製物中に残存し得るpro−HGFの精製が含まれてもよい。
【0063】
本発明で使用し得る精製方法は、タンパク質の生理的活性を失わせることなく、精製することが可能なものであれば、特に制限されないが、本発明においては、特に、ミックスモード担体を用いたクロマトグラフィー精製を使用することが好ましい。
【0064】
ミックスモード担体は、混合モード担体とも称し、2種類以上の特性を有するモードのリガンドを1つの担体に結合したクロマトグラフィー担体である。本発明において、活性型HGFの精製には、特に、疎水性とイオン交換担体の特徴をもつミックスモード担体を用いたクロマトグラフィー精製によって、効率的に活性型HGFを精製することができる。
【0065】
本発明の方法に使用し得る「疎水性とイオン交換担体の特徴をもつミックスモード担体」として、これに限定されるものではないが、例えばCapto adhere、Capto MMC、HEA HyperCel、PPA HyperCel、MEP HyperCelおよびTOYOPEARL MX−Trp−650Mなどを挙げることができる。
【0066】
前記ミックスモード担体を用いたクロマトグラフィー精製は、前記ミックスモード担体にカラム負荷液中の活性型HGFを吸着させた後、緩衝液で洗浄して不純物を除去し、次いで溶出することにより行うことができる。不純物を除去するための緩衝液は、精製の対象となるタンパク質と担体との吸着性が維持される一方で、不純物と担体との親和性が低下するようなpH、電気伝導度、緩衝液成分、塩濃度または添加物に基づいて設定することができる。
【0067】
使用されるカラム負荷液および緩衝液としては、これに限定されるものではないが、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ホウ酸塩、Tris(base)、HEPES、MES、PIPES、MOPS、TESまたはTricineなどが挙げられる。
【0068】
使用されるカラム負荷液および緩衝液には、アミノ酸を含有させることができる。そのようなアミノ酸としては、これに限定されるものではないが、例えばグリシン、アラニン、アルギニン、セリン、スレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジン、およびその誘導体などを挙げることができる。
【0069】
本発明において、前記ミックスモード担体に活性型HGFを吸着させるために、適当なpHおよび塩濃度を有するカラム負荷液を使用することができる。そのようなpHの範囲は、pH6.0〜10.0、より好ましくはpH7.0〜9.0、例えばpH8.0である。また、そのような塩濃度は、0.01〜5M、好ましくは0.1〜2M、例えば1Mである。上記の塩濃度は、例えば、0.001M〜4Mの塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムまたはこれらの組み合わせを用いて調製することができる。
【0070】
本発明において、活性型HGFの溶出は、前記ミックスモード担体と活性型HGFとの親和性が低下するような緩衝液を用いることによって行うことができる。そのような緩衝液としては、少なくとも0.1Mのアルギニン、より好ましくは少なくとも0.3Mのアルギニン、さらに好ましくは少なくとも0.4Mのアルギニン、例えば0.7Mのアルギニンを含む緩衝液が挙げられる。また、アルギニンと併せて、またこれに代えて、マグネシウムイオン(Mg2+)を含む緩衝液を用いることもできる。あるいは、活性型HGFの溶出は、段階的にpHを低下させて活性型HGFを溶出させるステップワイズ法によってもよい。
【0071】
本発明の一実施形態において、前記精製は、イオン交換基および疎水性相互作用基を含む混合モード担体による精製後に、単回または複数回の追加のクロマトグラフィーによる精製をさらに含んでもよい。これにより、活性型HGFをより高純度で取得することができる。そのようなクロマトグラフィー精製には、これに限定されるものではないが、例えばミックスモード担体、陰イオン交換担体、陽イオン交換担体、疎水性相互作用担体、サイズ排除担体、ゲルろ過担体、逆相担体、ヒドロキシアパタイト担体、フルオロアパタイト担体、硫酸化セルロース担体、または硫酸化アガロース担体等を用いたクロマトグラフィー精製が含まれる。
【0072】
なお、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。
【0073】
また、本明細書において用いられる「含む」との用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記述された事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを排除しない。
【0074】
異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語および科学用語を含む。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書および関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、または、過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。
【0075】
第一の、第二のなどの用語が種々の要素を表現するために用いられる場合があるが、これらの要素はそれらの用語によって限定されるべきではないことが理解される。これらの用語は一つの要素を他の要素と区別するためのみに用いられているのであり、例えば、第一の要素を第二の要素と記し、同様に、第二の要素は第一の要素と記すことは、本発明の範囲を逸脱することなく可能である。
【0076】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、しかしながら、本発明はいろいろな形態により具現化することができ、ここに記載される実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。
【実施例】
【0077】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
pro−HGFA全長を組み換え発現するCHO細胞をEX−CELL特注培地 (SAFC社製)を用いてT75フラスコ(コーニング社製、430421)に融解し250mL シェーカーフラスコ(コーニング社製、431144)で拡大培養を行った後、7L培養槽(ABLE/Biott社製、BCP−07)で121rpm、36.5℃設定で10日間培養した。培養10日目の細胞の生存率は47.1%であった。培養終了後、遠心分離により細胞を除去し0.2μmフィルター(ザルトリウス社製、5445307H7-―00)を通して精密ろ過し、回収したpro−HGFA上清液は使用するまで冷蔵保存した。
【0078】
上記と同様にして得たpro−HGFA培養上清50mLを100mLのガラスビーカーに入れ、10g/Lデキストラン硫酸ナトリウム(Mw.500,000)水溶液を1/10量である5mLを加えた後、2M塩酸を用いてpH5.3に調整した。pH調整後、0.2μmフィルターろ過を行った後、250mLシェーカーフラスコに入れた。5%炭酸ガスを60秒吹き込み後、室温、設定攪拌数80rpmで6時間反応させた。活性化反応はpH5.5付近で推移した。 反応6時間後にサンプリングし合成ペプチドを基質としたHGFA活性測定を行った。0.25%BSAを含む50mM Tris−HCl−0.15M塩化ナトリウム−10mM塩化カルシウム(pH7.5)バッファーに合成基質H−D−Val−Leu−Arg−pNA・2AcOH(Bachem社製、L−1885)を溶解し、2mMになるよう調製した。これを100μL/wellで96穴プレートに必要なwell数分をアプライし、活性化処理されたHGFA培養上清、ポジティブコントロール、未処理のpro−HGFA培養上清を各10μLずつ添加した。ポジティブコントロールには、予め活性化させ、pro−HGFを十分に活性化できることを確認した、HGFA培養上清を用いた。アルミ箔で遮光し、37℃、1時間インキュベートした。TECAN社製プレートリーダー(405nm)で吸光度を読み取り、未処理のpro−HGFA培養上清の数値を差し引いた値をHGFA活性値とした。その結果、活性化後のHGFAサンプルの活性値は0.577を示し、ポジティブコントロールの活性値とほぼ同程度であることを確認した。本反応液中に酵素等を外来的に添加していないことから、宿主であるCHO細胞由来の酵素の働きによってpro−HGFAが活性化されると推測される。また、反応7.6時間後の溶液に1M Trisを加えてpHを7.0に調整した後、2日間冷蔵保存しHGFA活性値の変化を調べたところ、活性値は、中和直後が0.653、冷蔵1日目が0.667、冷蔵2日目が0.679と、活性値に大きな低下は見られず、活性化後2日間は安定であった(表1)。
【0079】
【表1】
【0080】
pro−HGFを組換えて発現するCHO細胞をEX−CELL特注培地を用いてT75フラスコに融解し、250mLシェーカーフラスコおよび7L培養槽で拡大培養を行った後、20L培養槽で144rpm、36.5℃設定で9日間培養した。培養9日目の細胞の生存率は90.6%であった。除細胞ろ過後、0.2μmフィルター(ザルトリウス社製、5445307H9-―00)を通して精密ろ過した19.14kgのpro−HGF培養上清を30L培養槽に投入した。そこに、活性化してpHを7.0に戻し、2日間冷蔵保存しておいたHGFA培養上清を、1/20量である0.96kg加え、30rpm、25℃設定で攪拌しながら反応させた。なお、投入した活性化済みのHGFA培養上清は、HGFA活性測定でポジティブコントロールと同程度の活性値が得られたものを使用した。約20時間反応後にサンプリングを行い、5−20%ポリアクリルアミドゲル(DRC社製、NXV−271HP)を用いたSDS−PAGEで、pro−HGFの活性化状態を確認した。非還元条件下で見られる1本鎖のバンドが、還元条件下では、活性化後は1本鎖体が消失し、α鎖とβ鎖に分離していることから、pro−HGFが十分に活性化されていることを確認できた(図1)。
【0081】
[実施例2]
実験計画法(DoE)を用いて、実施例1に記載のpro−HGFA活性化パラメーターであるpH(5.3〜5.5)および反応温度(室温)の妥当性を検証した。JMPソフトウェア(SASインスティチュート社製)を用いて中心複合計画で実験条件を設定し、実施例1に記載の方法と同様にしてpro−HGFA活性化処理のための溶液調製を行った。なお、pHは2M塩酸を用いてpH5.0、5.5および6.0の3条件に調整した。100μLずつ1.5mLチューブに入れ、20℃、28.5℃および37℃で静置反応させた。反応3、6、9、15時間後にサンプリングし、合成ペプチドを基質としたHGFA活性測定を行った。未処理のpro−HGFA培養上清の数値(A405)を差し引いた値をHGFA活性値とした。得られた計27条件のHGFA活性値から統計学的解析により応答曲面プロットを作成し、0.4以上の活性値を有する範囲を白抜きで示した。本結果から、最も高いHGFA活性値が得られる条件は、pH5.4、反応温度26.1℃であり、また広い範囲でHGFA活性値を得られることが分かった(図2)。
【0082】
[実施例3]
マルチモーダル陰イオン交換体のCapto Adhere(GEヘルスケア社製、28−4058−44)2mLを、2M塩化ナトリウムを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)であらかじめ平衡化した。活性型HGFを含む培養上清32mLには、1Mになるように塩化ナトリウムを添加した。この培養上清を、流速2mL/分でカラムに負荷して素通り液を回収した。負荷終了後に2M塩化ナトリウムを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を3カラム体積相当流して洗浄し、溶出液を回収した。洗浄終了後に、0.25Mアルギニンを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を3カラム体積相当流して洗浄し、溶出液を回収した。次に、0.7Mアルギニンを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を1カラム体積相当流して溶出液を回収する操作を5回繰り返し行った。最後に、1.0Mアルギニンを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を3カラム体積相当流して溶出液を回収した。図3に、この工程で回収した溶液を用いて、非還元条件下でSDS−PAGEを行った結果を示す。SDS−PAGE用のゲルは、DRC社製のXV−PANTERA(NXV−271HP)を、分子量マーカーはBIORAD社製のPrecision Plus Protein All Blue Standards(161−0373)を用いた。試料は、Laemmliのサンプルバッファー中で60℃、10分間の加熱処理を行った後に、SDS−PAGE分析に供した。電気泳動は150Vの定電圧下で行い、電気泳動終了後にコスモバイオ社製のPAGE Blue83を用いてゲルを染色し、分離されたタンパク質の確認を行った。カラム負荷液と素通り液を比較すると、素通り液では分子量7万5千付近のHGFのバンドが減少し、担体に吸着されたことが示された。HGFは、2M塩化ナトリウムを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を通液しても溶出されなかった。引き続く0.25Mアルギニンを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)での洗浄で、不純物を多く含む成分が溶出されてきた。そして0.7Mアルギニンを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を通液することにより、活性型HGFが溶出された。
【0083】
[実施例4]
マルチモーダル陰イオン交換体のCapto Adhere(GEヘルスケア社製、28−4058−44)1mLを、あらかじめ2M塩化ナトリウムを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で平衡化した。活性型HGFを含む培養上清8mLには、1Mになるように2M塩化ナトリウムを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を等量添加した。この培養上清を、カラムに負荷して素通り液を回収した。負荷終了後に2M塩化ナトリウムを含む20mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)を3カラム体積相当流して洗浄し、溶出液を回収した。1Mアルギニンを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を5カラム体積相当流して溶出液を回収した。図4に、この工程で回収した溶液を用いて非還元条件下でSDS−PAGEを行った結果を示す。SDS−PAGE用のゲルは、DRC社製のXV−PANTERA(NXV−271HP)を、分子量マーカーはBIORAD社製のPrecision Plus Protein All Blue Standards(161−0373)を用いた。試料は、Laemmliのサンプルバッファー中で60℃、10分間の加熱処理を行った後に、SDS−PAGE分析に供した。電気泳動は150Vの定電圧下で行い、電気泳動終了後にコスモバイオ社製のPAGE Blue83を用いてゲルを染色し、分離されたタンパク質の確認を行った。カラム負荷液と素通り液を比較すると、素通り液ではHGFのバンドが減少し、担体に吸着されたことが示された。HGFは、2M塩化ナトリウムを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を通液しても溶出されなかった。引き続く1Mアルギニンを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)での溶出で、活性型HGFが溶出された。
【0084】
[実施例5]
実施例1の方法で得られた活性型HGFを含む培養上清液に、2M塩化ナトリウムを含む40mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を等量加えた後、pH8.0に調整した。2M塩化ナトリウムを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したCapto adhere(GEヘルスケア17−5444−05)カラムに上記溶液を負荷して、負荷終了後に平衡化に用いた緩衝液で洗浄した。カラムは0.25Mアルギニン塩酸を含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で洗浄した後、0.7Mアルギニン塩酸を含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で溶出して、HGFを含む画分を回収した。
【0085】
Capto adhere精製画分をプールし、0.012%ポリソルベート80を含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で7倍希釈した溶液を、0.012%ポリソルベート80を含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したCapto Q(GEヘルスケア17−5316−05)カラムに負荷し、負荷終了後に平衡化に用いた緩衝液で洗浄した。カラム素通り液および洗浄液をプールして、Capto Q精製画分とした。
【0086】
Capto Q精製画分を、20mMリン酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したUNOsphere S(バイオラッド156−0117)カラムに負荷し、負荷終了後に平衡化に用いた緩衝液で洗浄を行った。同溶液での洗浄終了後、0.4M塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)による洗浄操作を行った後、0.6M塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)を用いて、吸着したHGFを溶出してUNOsphere S精製画分とした。
【0087】
UNOsphere S精製画分に、5M塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)を加えて、溶液の塩化ナトリウム濃度が3.3Mになるように調製し、pHが7.5になるように調整した。Phenyl Sepharose HP(GEヘルスケア17−1082−04カラム)を、3.3M塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したのち、上記HGF溶液を負荷した。負荷終了後、平衡化に用いた緩衝液でカラムを洗浄した。吸着したHGFは、平衡化緩衝液(A)と、20mMリン酸緩衝液(pH7.5)(B)とのリニアグラジエント(Bを30から100%)により溶出した。
【0088】
[実施例6]
活性型HGFAが添加されず、活性化されていないpro−HGFを含む培養上清液について実施例5と同じようにCapto adherese精製、CaptoQ精製、UNOsphereS精製、UF濃縮バッファー交換を実施した。活性化されていないPro−HGFも本精製工程で精製されることを示している、各工程で得られたサンプルの非還元および還元のSDS−PAGE結果を図5に示す。
【0089】
[実施例7]
実施例5で得られた活性型HGFにつき、TGFβ−1存在下における細胞増殖活性を測定した。ミンク肺上皮細胞Mv 1 Lu(細胞番号:JCRB9128)を用い、Transforming Growth Factor β−1(TGFβ−1)存在下で増殖抑制された細胞に活性型HGFを添加し、そのTGFβ−1活性への拮抗作用に基づいた活性型HGFの増殖活性を検出することで力価を測定した(Journal of Immunological Methods、258、1−11、2001)。
【0090】
96wellプレートの各wellにTGFβ−1(4ng/mL)を50μL、国際HGF標準品(NIBSC code:96/564)またはHGF(0、4、8、16、32、64、128、256、512、1024 ng/mL)を各々50μL、ミンク肺上皮細胞懸濁液(1×10 cell/mL)を100μL添加後、37℃、CO濃度5%で3日間培養後、Cell counting kit(同仁化学研究所、Cat No.343−07623)により生細胞を着色した。マイクロプレートリーダーを使用し、450nmの吸光度から、国際HGF標準品およびHGFにつき、各々シグモイドカーブを得た(図6)。国際HGF標準品およびHGFのEC50は、各々13.4,15.4ng/mLであり、上記の製造方法で得られたHGFは国際HGF標準品と同等の活性を有していた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]