特許第6861204号(P6861204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861204
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】自己注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20210412BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   A61M5/32 510P
   A61M5/20 572
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-515239(P2018-515239)
(86)(22)【出願日】2016年9月20日
(65)【公表番号】特表2018-528016(P2018-528016A)
(43)【公表日】2018年9月27日
(86)【国際出願番号】FR2016052384
(87)【国際公開番号】WO2017051113
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2019年8月15日
(31)【優先権主張番号】1558927
(32)【優先日】2015年9月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502343252
【氏名又は名称】アプター フランス エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ダヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ヒス オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】ソーセー アントニー
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−517369(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/075399(WO,A1)
【文献】 特表2010−532189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己注射器であって、
貯蔵器(S)を収容するよう構成された本体(1)を備え、
前記貯蔵器(S)は、流体を貯蔵し、ピストン(P)と注射針(A)とを備え、
前記自己注射器はさらに、前記本体(1)から少なくとも部分的に突出した各突出位置と前記本体(1)内へ軸方向に移動した作動位置との間で前記本体(1)に対して移動可能な駆動スリーブ(10)を備え、
前記駆動スリーブ(10)は、前記自己注射器の作動前は第1突出位置にあり、前記自己注射器の作動後は第2突出位置にあり、バネ(9)によって前記各突出位置に向かって付勢され、
前記自己注射器は、前記自己注射器の使用前に前記本体(1)に固定される取り外し可能なキャップ(20)を備え、
前記取り外し可能なキャップ(20)は、前記本体(1)に固定されると、前記駆動スリーブ(10)と協働し、前記駆動スリーブは前記第1突出位置に対して軸方向に距離(d)だけ前記本体(1)内へ移動して、前記バネ(9)の力に対抗し、そのため前記取り外し可能なキャップ(20)が前記本体(1)から取り外されると、前記駆動スリーブ(10)は前記バネ(9)によって前記第1突出位置に向かって付勢され、
前記駆動スリーブ(10)と前記本体(1)の一方は可撓性タブ(110)を有し、
前記可撓性タブ(110)は、前記駆動スリーブ(10)が移動したときに前記駆動スリーブ(10)及び/又は前記本体(1)に対して横方向及び/又は半径方向に変形するよう構成され、
前記駆動スリーブ(10)と前記本体(1)の他方はガイド側面を有し、
前記ガイド側面は、前記取り外し可能なキャップ(20)が前記本体(1)から取り外されることにより前記駆動スリーブ(10)が軸方向に前記第1突出位置に向けて移動している間前記可撓性タブ(110)と協働し、
前記ガイド側面は、前記駆動スリーブ(10)が前記第1突出位置にあるときに前記可撓性タブ(110)と協働する肩部(13)によって少なくとも部分的に規定される初期構(100)を備え、
前記可撓性タブ(110)は、前記第1突出位置において、前記肩部(13)と接触点(C)で協働し、そのため前記バネ(9)は前記可撓性タブ(110)を軸方向に付勢し、
前記取り外し可能なキャップ(20)が前記本体(1)から取り外される前において前記本体(1)に固定されているときには、前記可撓性タブ(110)と前記肩部(13)とが軸方向に前記距離(d)だけ離隔している
ことを特徴とする自己注射器。
【請求項2】
前記可撓性タブ(110)は、前記駆動スリーブ(10)が前記第1突出位置から前記作動位置へ移動するとき、そしてその後前記作動位置から前記第2突出位置へ移動するときに、前記駆動スリーブ(10)及び/又は前記本体(1)に対して横方向及び/又は半径方向に変形する
請求項1に記載の自己注射器。
【請求項3】
前記取り外し可能なキャップ(20)は、前記本体(1)に固定するための固定手段(21)を含む
請求項1又は2に記載の自己注射器。
【請求項4】
前記固定手段(21)は、内側に突出した半径方向ビードなどの固定側面(25)を備え、
前記固定側面(25)は、一般的には外側に突出した半径方向ビードである前記本体(1)の相補的外側部分(15)と協働する
請求項3に記載の自己注射器。
【請求項5】
前記固定手段(21)は、直径方向に対向し前記本体(1)の周囲に延在する2つの軸方向タブを備え、
当該各軸方向タブは固定側面(25)を備える
請求項4に記載の自己注射器。
【請求項6】
前記駆動スリーブ(10)は、ユーザーの体と接触する接触端(101)を備える
請求項1〜5のいずれかに記載の自己注射器。
【請求項7】
前記本体(1)は前記可撓性タブ(110)を備え、前記駆動スリーブ(10)は前記ガイド側面を備える
請求項1〜6のいずれかに記載の自己注射器。
【請求項8】
前記本体(1)は前記ガイド側面を備え、前記駆動スリーブ(10)は前記可撓性タブ
(110)を備える
請求項1〜6のいずれかに記載の自己注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自己注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
自己注射器は公知技術である。そのような注射器の目的は主に、シリンジの内容物を自動的に患者の体内に注入することである。患者の体内へ注射針を穿刺し、シリンジに収容された流体を自動的に注入するための様々な方法が存在している。自己注射器は比較的複雑な装置であり、信頼性を確保するには一定数の制約要件を満たす必要がある。装置の頑健性、取扱性、及びユーザビリティも重要な要素である。また、こうした自己注射器の大部分は一回使用型であるため、製造や組み立てにかかるコストも留意すべき要素である。
【0003】
市場には多くの自己注射器が存在するが、何れもいくつかの欠点を有している。
【0004】
そのため、例えば輸送中や保管中に意図せず自己注射器が作動しないように、信頼性のあるロック手段を備えるべきである。また、ユーザーが自己注射器を使用したいときに、意図せず自己注射器が作動するのではなく、ユーザーが実際に注射を望むとき、つまり注射すべき体の部位に自己注射器を当てたときに、初めて作動するべきである。しかしながら、特に高齢者や障害者は、使用中に自己注射器を落としてしまうことがある。そのような場合に自己注射器が作動しないことが望ましい。したがって自己注射器には信頼性の高い作動ロック手段を備えることが重要である。同時に、身体的弱者による自己注射器の使用を妨げないよう、使用が難しくなり過ぎないようにしなければならない。さらに、装置の使用後における怪我の危険を防止するため、注射針が使用後に露出したままになるのを防ぐ注射針安全装置を備えていなければならない。当然、安全装置も、信頼性が高く簡単には外れないものであるべきである。また、安全装置は、例えばユーザーが注射完了前に自己注射器を体から早く外した場合など、自己注射器を不適切に作動した場合にも適切に機能すべきである。
【0005】
しかしながら、自己注射器は組み立て後、比較的長期間が経過してから使用される場合がある。そのため様々な構成部品、とりわけトリガーロックと注射針安全装置が、長期保管後も信頼できる機能性を維持することが重要である。本発明の目的は、この問題を解決することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/175140号
【特許文献2】国際公開第2013/175142号
【特許文献3】国際公開第2015/075399号
【特許文献4】国際公開第2012/045833号
【特許文献5】仏国特許出願公開第2884722号明細書
【特許文献6】国際公開第96/32974号
【特許文献7】国際公開第2012/000832号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した欠点を有しておらず、自己注射器の安全かつ確実な使用のための種々の主要な要件及び制約を満たす自己注射器を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、安全かつ長期保管後においても怪我の危険を防止する使用上の信頼性の高い、製造や組み立てが容易で安価な自己注射器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、自己注射器であって、貯蔵器を収容するよう構成された本体を備え、前記貯蔵器は、例えばプレフィルドシリンジであって、流体を貯蔵し、ピストンと注射針とを備え、前記自己注射器はさらに、前記本体から少なくとも部分的に突出した各突出位置と前記本体内へ軸方向に移動した作動位置との間で前記本体に対して移動可能な駆動スリーブを備え、前記駆動スリーブは、前記自己注射器の作動前は第1突出位置にあり、前記自己注射器の作動後は第2突出位置にあり、バネによって前記各突出位置に向かって付勢され、前記自己注射器は、前記自己注射器の使用前に前記本体に固定される取り外し可能なキャップを備え、前記取り外し可能なキャップが前記本体に固定されると、前記駆動スリーブは前記第1突出位置に対して軸方向に距離dだけ前記本体内へ移動して、前記バネの力に対抗し、そのため前記取り外し可能なキャップが前記本体から取り外されると、前記駆動スリーブは前記バネによって前記第1突出位置に向かって付勢されることを特徴とする、自己注射器を提供する。
【0010】
有利には、前記駆動スリーブと前記本体の一方は可撓性タブを有し、前記可撓性タブは、前記駆動スリーブが移動したときに前記駆動スリーブ及び/又は前記本体に対して横方向及び/又は半径方向に変形するよう構成され、前記駆動スリーブと前記本体の他方はガイド側面を有し、前記ガイド側面は、前記駆動スリーブが移動している間前記可撓性タブと協働する。
【0011】
有利には、前記可撓性タブは、駆動スリーブが前記第1突出位置から前記作動位置へ移動するとき、そしてその後前記作動位置から前記第2突出位置へ移動するときに、前記駆動スリーブ及び/又は前記本体に対して横方向及び/又は半径方向に変形する。
【0012】
有利には、前記ガイド側面は、前記駆動スリーブが前記第1突出位置にあるときに前記可撓性タブと協働する肩部によって少なくとも部分的に規定される初期構を備える。
【0013】
有利には、前記第1突出位置において、前記バネは、前記可撓性タブと前記肩部との接触点に応力を与える。
【0014】
有利には、前記取り外し可能なキャップは、前記本体に固定するための固定手段を含む。
【0015】
有利には、前記固定手段は、内側に突出した半径方向ビードなどの固定側面を備え、前記固定側面は、一般的には外側に突出した半径方向ビードである前記本体の相補的外側部分と協働する。
【0016】
有利には、前記固定手段は、直径方向に対向し前記本体の周囲に延在する2つの軸方向タブを備え、当該各軸方向タブは固定側面を備える。
【0017】
有利には、前記駆動スリーブは、ユーザーの体と接触する接触端を備える。
【0018】
有利には、前記本体は前記可撓性タブを備え、前記駆動スリーブは前記ガイド側面を備える。
【0019】
変形例として、前記本体は前記ガイド側面を備え、前記駆動スリーブは前記可撓性タブを備える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の特徴や利点等は、非限定的な例に基づき以下に示す詳細な説明及び添付図面を参照することにより、さらに明確となる。
図1】(a)は、本発明に有利な実施形態の、保護キャップを取り外す前の自己注射器の模式側面図であり、(b)は、(a)の自己注射器の一部を切り欠いた模式側面を別方向から見た図であり、(c)は、(a)及び(b)の自己注射器の部分模式断面図であり、(d)は、(b)の切欠部を詳細に示す部分模式図である。
図2】(a)〜(d)はそれぞれ図1(a)〜(d)に類似した図であり、保護キャ ップを取り外してから、自己注射器を作動させるまでの状態を示す。
図3】(a)は、保護キャップの取り外し前後の位置を比較した、自己注射器の近位部の詳細を示す模式図であり、(b)は、(a)を別の方向から見た類似図である。
【0021】
以下の説明において、「上部」、「下部」、「高」、及び「低」という用語は図1(a)〜図3(b)における位置を示す。また、「近位」及び「遠位」という用語は自己注射器の注射針に対する位置を示す。また、「軸方向」及び「半径方向」という用語は、図1(c)における長手方向中心軸Xに対する方向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、自己注射器について有利な実施形態を参照しながら説明する。ただし自己注射器は複雑な装置であり、複数の機能を実行するために複数のモジュールから成ることに留意すべきである。様々なモジュールは、必ずしも他のモジュールと組み合わせることなく、それぞれ個別かつ独立して使用してもよく、具体的には、図示の形状と異なる形状の自己注射器に使用することもできる。また、図面は模式図であり、自己注射器の構成要素の形状を必ずしも正確には反映しておらず、発明を明確に示すことを目的とするため寸法も正確であるとは限らない。加えて、図面は自己注射器の全構成要素を必ずしも示してはおらず、本発明の動作に必要な構成要素だけを示している。したがって、図示の自己注射器には様々な追加的、及び/又は補足的な構成要素及びモジュールを組み合わせることができる。
【0023】
図示の自己注射器は本体1を有し、駆動スリーブ10は本体1内を軸方向に摺動し、駆動スリーブ10の下端部101は、患者の体の注射領域の周囲に接触する。図の実施形態によれば、本自己注射器は下部本体1a、中間本体1b、及び上部本体1cを含み、これらを組み合わせることで図1(a)及び図2(a)に示す自己注射器の本体1が形成される。以下、「本体」という用語及び参照番号「1」を使用し、下部本体1aを中間本体1b及び上部本体1cと組み合わせて形成した単一の本体を示すものとする。本体1は任意の数、例えば2つの本体部分から構成され、図の実施形態では3つの本体部分から構成されるが、これに限定されない。
【0024】
貯蔵器Sは自己注射器内に挿入される。貯蔵器Sは流体を収容しており、ピストンP及び注射針Aを含む。ピストンPは貯蔵器S内を移動するように構成され、注射針Aを介して流体が注射される。本明細書はあらゆる型のシリンジSについて言及している。より一般的には、本明細書における「シリンジ」という用語は、注射針と組み合わせたあらゆる型の貯蔵器を含むものである。好ましくは、貯蔵器Sはプレフィルドシリンジである。
【0025】
自己注射器には自動注射システムも含まれる。具体的には、ピストンPと協働して、貯蔵器S内を移動し注射針Aを介して流体を投与するピストンロッド5を備えるものである。従来技術においては、ピストンロッド5は、注射バネ8によって投与位置に向かって付勢され、作動前には適切な注射ロックによって休止位置に保持されている。注射ロックの好ましい事例は、具体的には国際公開第2013/175148号及び同時係属出願である国際出願PCT/FR2015/050940号に開示されている。図1(c)及び図2(c)に示すように、注射ロックは遮断リング7によって遮断位置に保持された少なくとも1つの(好ましくは3つの)遮断エレメント6を備えてもよい。ピストンロッド5は、遮断位置と遮断解除位置との間で移動可能な遮断エレメントを収容する半径方向の凹部を備えてもよい。遮断エレメントは、好ましくは略球形、例えばボールのような形状である。有利には、遮断エレメントとしてのボールは、ピストンロッド5によって半径方向外向きに付勢され、遮断リング7によって遮断位置に保持されている。遮断リング7は、ボールを遮断位置で保持するロック位置とボールを解放するロック解除位置との間で、ピストンロッド5に対して軸方向上方に移動可能である。ボールが解放されると注射ロックの遮断が解除され、注射バネ8はピストンロッド5を注射位置に向かって移動できるようになる。有利には、シリンジSの注射針Aがユーザーの体に穿刺されると、遮断リング7が軸方向上方に移動してボールを遮断位置から解放し、ボールは半径方向外向きに移動する。するとピストンロッド5はもはやボールによって保持されないため、軸方向下方に移動し、流体を注射する。
【0026】
自己注射器は、さらに、ユーザーに対する視覚、聴覚、及び/又は触覚による表示装置、具体的には可聴音、振動、及び/又は視覚及び/又は触覚によってユーザーに自己注射器を注射部位から離してもよいことを示す表示装置を備えてもよい。具体的には、表示装置は、本体1の1つ以上の窓11における適切な表示による視覚的表示と、聴覚的及び/又は触覚的表示との両方を提示する1つ以上の表示エレメントを備えてもよい。
【0027】
駆動スリーブ10は、その突出位置方向にバネ9によって付勢される。バネ9は任意の種類のバネでよい。バネ9は、駆動スリーブ10及び本体1に固定された部分12と協働する。作動前の駆動スリーブ10は、図2(a)〜(c)に示すように、第1突出位置にあり、注射針Aの周囲に配される。作動中、駆動スリーブ10は本体1内を作動位置に向かって摺動し、注射針Aを露出させて穿刺及び流体の注射を可能にする。注射後、ユーザーが注射部位から自己注射器を離すと、駆動スリーブ10は注射針による怪我の危険を防ぐため、使用後の第2突出位置に移動し、そこで再び注射針Aの周囲に配される。なお、駆動スリーブ10の第1突出位置と第2突出位置はそれぞれ別の位置でも同一の位置でもよい。
【0028】
本発明では、自己注射器は、ユーザーが作動前に取り外すべき取り外し可能なキャップ20を含む。
【0029】
自己注射器の使用前には、シリンジSの注射針Aは、有利にはガード2によって保護される。ガード2は、一般的にはエラストマーからなり、その内部に注射針の端部が突き刺さるようになっている。本構造では、有利には、取り外し可能なキャップ20を取り外すことによりガード2を注射針Aから取り外すことができる。
【0030】
キャップ20は、本体1の近位部分に固定される固定手段21を含む。有利には、固定手段21は、内側に突出した半径方向ビードなどの固定側面25を有し、固定側面25は、一般的には外側に突出した半径方向ビードである本体1の相補的外側部分15と協働する。よって、ビード15と25の協働により、取り外し可能なキャップ20は本体1に保持され、キャップ20を本体1から外すには、ユーザーは(予め決定される)軸方向の力を加えなければならない。
【0031】
有利には、図1(a)及び図3(b)に示すように、固定手段21は、直径方向に対向し本体1の周囲に延在する2つの軸方向タブを備え、各軸方向タブは固定側面25を備える。
【0032】
駆動スリーブ10は、溝、特に初期溝100を備えたガイド側面を有し、本体1は可撓性タブ110を有しており、可撓性タブ110は、自己注射器の作動中に駆動スリーブが本体1に対して移動する際に駆動スリーブ10の溝と協働する。本体1の可撓性タブ110と駆動スリーブ10のガイド側面がこのように協働することで、作動開始時に使用されるトリガーロックと、駆動スリーブの第2突出位置である安全位置に固定するためのロックとの両方を提供できる。
【0033】
特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に特に開示されているとおり、可撓性タブ110は、自己注射器が確実に作動され、そして作動後にロックされるように、ガイド側面内で横方向及び/又は半径方向に移動する。そのため可撓性タブが確実に機能することが重要である。しかしながら、作動前に取り外し可能キャップ20が無い場合、バネ9は駆動スリーブを第1突出位置に向けて付勢するため、可撓性タブ110のヘッド部は、可撓性タブ110のヘッド部と、ガイド側面の端壁、特に初期溝100の端壁を規定する本体1の肩部13との間の接触点Cでバネからの応力を受ける。接触点Cは図2(d)に明示されている。
【0034】
しかしながら、バネ9によって接触点Cに加えられる力は、可撓性タブ110を軸方向に変形させ、伸ばしてしまう傾向にある。この張力によって、可撓性タブ110の強度特性が損なわれる可能性があり、結果として、特に作動終了時の注射針安全位置における強度性能が低下する場合がある。この張力が維持される時間が長いほど、強度性能低下の危険性は増大する。つまり、自己注射器を使用前に長期間保管すると、その危険性が増大することになる。
【0035】
本発明は、取り外し可能キャップ20を本体1に固定することによって駆動スリーブ10を軸方向上方に移動させ、可撓性タブをバネ9から受ける応力から解放するものである。
【0036】
より具体的には、取り外し可能なキャップ20が本体1に固定されると、駆動スリーブ10が距離dだけ軸方向上方へ(すなわち、本体1の遠位方向へ向かって)移動し、それによってバネ9は少し圧縮される。すると、図1(d)に示すように、本体1の肩部13と可撓性タブ110のヘッド部とは接触せず、可撓性タブはバネ9から受ける軸方向の応力から解放される。つまり、取り外し可能なキャップ20は、バネ9が駆動スリーブ10に及ぼす力よりも強く本体1に固定されなければならない。具体的には、可撓性タブ110と本体1の肩部13との間に接触点がない場合、バネ9の力は、距離dだけ上方の位置に駆動スリーブを保持する取り外し可能なキャップ20に加えられる。より具体的には、その力は取り外し可能なキャップ20を本体1に固定する固定手段、すなわち、本明細書の図3(b)に示すビード15、25に加えられる。したがってユーザーは、取り外し可能なキャップ20を本体1から取り外すためには、バネ9によって加えられる力よりも大きい軸方向の力で、取り外し可能なキャップ20を軸方向下方に引っ張らなければならない。
【0037】
ユーザーが取り外し可能なキャップ20を取り外すと、図2(d)のように、バネ9は駆動スリーブを距離dだけ軸方向下方に移動させ、可撓性タブ110のヘッド部が本体の肩部13と接触する第1突出位置へと移動させる。
【0038】
図3(a)及び図3(b)は、取り外し可能なキャップ20が本体1に固定されている場合に駆動スリーブ10が距離dだけ上方へ移動する様子を異なる2つの方向から示した図であり、キャップ取り付け時の位置を示す左図とキャップ取り外し後の位置を示す右図とを比較するためのものである。
【0039】
駆動スリーブの両ロック、すなわち、作動前の起動を防止するトリガーロック及び作動後の自己注射器を固定するロックは、このように、特に効果的で信頼性が高く、しかも頑健で操作が容易であり、安価な成型や組み立てが可能である。両ロックは具体的には2つの部分、すなわち駆動スリーブ10と本体1のみで構成される。
【0040】
なお、ガイド側面及び可撓性タブの形状は、必要な機能や所望の特性に応じて変更してもよい。
【0041】
また、上述の手段は逆の態様で実現することができる。たとえば、本体1がガイド側面、特に初期溝100を有することができ、駆動スリーブ10が可撓性タブ110を有することができる。
【0042】
本発明は、特に、関節リウマチ、多発性硬化症、クローン病などの自己免疫疾患の治療、癌の治療、肝炎などの抗ウイルス療法による治療、糖尿病の治療、貧血の治療、及びアナフィラキシーショックなどのアレルギー性発作の治療などに用いる装置に適用される。
【0043】
以上、本発明を有利な実施形態を参照しながら説明したが、当然のことながら本発明はこの実施形態に限られない。添付の請求項によって規定された本発明の範囲を超えない限り、当業者による様々な変形が可能である。
図1
図2
図3