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特許6861207高分解能電子顕微鏡用ロスレス低温グリッド調製ステージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861207
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】高分解能電子顕微鏡用ロスレス低温グリッド調製ステージ
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/42 20060101AFI20210412BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20210412BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   G01N1/42
   G01N1/28 F
   G01N1/28 J
   G01N1/00 101K
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-520018(P2018-520018)
(86)(22)【出願日】2015年7月6日
(65)【公表番号】特表2018-527584(P2018-527584A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】EP2015065398
(87)【国際公開番号】WO2017005297
(87)【国際公開日】20170112
【審査請求日】2018年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】518004543
【氏名又は名称】ウニヴェアズィテート バーゼル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アーノルト、シュテファン アレクザンダー
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、トマス
(72)【発明者】
【氏名】シュタールベルク、ヘニンク
【審査官】 西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0181495(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02381236(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0360286(US,A1)
【文献】 特開2009−008657(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0133410(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0068373(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00− 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡用試料を調製するための調製システムであって、
‐吐き出しヘッド(1)を備える液体ハンドリングシステム(0)であって、前記吐き出しヘッド(1)を介してある容量の試料を吸引しそして吐き出すように構成されている液体ハンドリングシステム(0)と、
‐前記試料を収容できるように構成されている支持構造体(2)と、
‐前記支持構造体(2)が温度制御されたステージ(4)の上に配置されているときに、前記支持構造体(2)を予め定義された温度に保つように構成されている温度制御されたステージ(4)と、
‐前記支持構造体(2)を保持するように構成されている第1のアダプタ(3)と、
‐前記支持構造体(2)を保持する前記第1のアダプタ(3)に接続され、液体寒剤(80)が入っている容器(8)に前記支持構造体(2)を移動させて、前記支持構造体(2)上の前記試料が前記寒剤(80)に接触するように構成されている移送機構(60)と、を備え、前記システムが、前記液体ハンドリングシステム(0)に対して前記温度制御されたステージ(4)を移動させ、その結果、前記吐き出しヘッド(1)および前記支持構造体(2)が、前記液体ハンドリングシステム(0)から前記支持構造体(2)まで前記試料を移送するように互いに接近させることができるように構成されている並進ステージアセンブリ(5)を備える、システム。
【請求項2】
前記移送機構(60)が、前記第1のアダプタ(3)を前記支持構造体(2)と一緒に前記容器(8)の上方の垂直の位置に回転させ、前記回転の後、前記第1のアダプタ(3)および前記支持構造体(2)を下方に移動させ、その結果、前記支持構造体(2)上の前記試料が前記容器(8)の中の前記寒剤(80)に接触するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムが、調整可能な様式で前記温度制御されたステージ(4)に対して前記第1のアダプタ(3)を保持するように構成されている調整手段(40)を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記調整手段(40)が、前記第1のアダプタ(3)を解放可能に保持し、前記試料が前記支持構造体(2)の上に位置決めされたときに、前記第1のアダプタ(3)を自動的に解放するように構成されている、保持手段(50)を備え、予め定義された温度であることを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記移送機構(60)が、第2のアダプタ(30)を備え、前記2つのアダプタ(3、30)は、前記保持手段(50)が前記第1のアダプタ(3)を解放するときに、互いに係合するように設計されていることを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記移送機構(60)は、前記第1のアダプタ(3)が前記第2のアダプタ(30)と係合されて前記保持手段(50)から解放されたときに、前記容器(8)の上方に前記第2のアダプタ(30)を回転させるように設計されていることを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記移送機構(60)は、前記第1のアダプタ(3)および前記支持構造体(2)が前記垂直の位置で前記容器(8)の上方に位置決めされたときに、前記第2のアダプタ(30)を下方に移動させ、その結果、前記支持構造体(2)の上の前記試料が、前記容器(8)の中の前記寒剤(80)と接触するように構成されている、好ましくはソレノイドを含む移動発生手段を備えることを特徴とする、請求項2に従属する請求項5または請求項2に従属する請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムが、前記支持構造体の上に堆積された試料層の膜厚を推定するための手段を備えることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記吐き出しヘッド(1)は、前記液体ハンドリングシステム(0)の端部に、毛細管、特に微小毛細管により形成され、前記毛細管が、吸引された試料を収容するための先端部を備えることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムは、第1のリザーバ(100)を備え、試料のナノリットル容量を含んでいる前記吐き出しヘッド(1)は、拡散律速された試料の調整を可能にするように、前記第1のリザーバの中に浸漬されることができることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは、第2のリザーバを備え、試料のナノリットル容量を含んでいる前記吐き出しヘッドは、前記第2のリザーバから、認知分子を含んでいるわずかな容量を吸引することができることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
支持構造体(2)の上の試料を調製するための方法であって、前記方法は、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシステムを使用し、前記方法は、
‐温度制御されたステージ(4)の上に支持構造体(2)を設け、前記支持構造体(2)の温度を環境の露点温度に調整するステップと、
‐予め定義された前記試料の分量を液体ハンドリングシステム(0)の中に吸引するステップと、
‐前記試料を前記支持構造体(2)上に向けて吐き出すステップと、
‐前記支持構造体(2)を前記温度制御されたステージ(4)から自動的に取り出すステップと、
‐前記支持構造体(2)を液体寒剤(80)が入っている容器(8)の上の垂直の位置に自動的に移動させ、そして前記試料が非晶質固体になるまで冷却されるように、前記支持構造体(2)を前記液体寒剤(80)の中に挿入するステップと、
‐前記ガラス固化された試料と一緒に前記支持構造体(2)を前記液体寒剤(80)から取り出すステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡用試料を調製するための調製システムおよび対応する方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
近年、電子顕微鏡のための直接電子検出(DED)カメラにより、生物物理学および構造生物学に急速でかつ持続的な変化がもたらされた。現在、これらのカメラは、低温電子顕微鏡(低温EM)により、単粒子法を使った原子分解能でまたはその原子分解能の近傍で、巨大な生体分子の構造決定を可能にしている(Liao et al.,Nature 504,107‐112(2013);Lu et al.Nature 512,166‐170(2014))。画像の取得および処理は、その新しいDEDカメラから多くの恩恵を得ているが、試料調製は、依然としてDED以前の時代の中にある。ある程度の自動化および制御は、工業用ガラス固化ロボット(例えば、Vitrobot,FEI;Leica EM GP,Leica Microsystems)によって導入されているが、現在の方法は、2つの重要な欠点に悩まされている。第1に、高濃度の生体試料(0.1mg/ml〜3mg/mlのタンパク質)を含有する多量の試料容量(約3μl)が必要とされる。第2に、試料の99%超を除去する大量の吸い取りステップが採用されている。さらに、この後者は、EMグリッド上に代表的でない試料の母集団をもたらす下位クラスの試料を優先的に除去することに直結する。これらの問題を解決しようとした研究者は、それほど多くはなかった。Jainらは、ある装置を開発し、その装置は、インクジェット式ピコリットル吐き出しおよび急速凍結装置を組み合わせている(Jain et al.,J.Struct.Biol.179(1),68‐75(2012))。これは、グリッド毎に消費される試料の分量を効率的に減らす興味深いアプローチである。しかしながら、インクジェット式吐き出しは、その液滴が試料リザーバから放出されることができる、充填された当該試料リザーバを必要とする。このことは、そのリザーバを充填するのに利用可能の必要性がある最小限の試料容量に制限をもたらす。いくつかの検体、例えば単細胞からの溶解物またはマイクロ流体デバイスからの抽出物は、それ自体、単にマイクロリットル未満の容量でのみ利用可能である。その上、いくつかの試料は、インクジェット技術との親和性がない。
【0003】
したがって、本発明の根底に横たわる課題は、試料のほんのわずかな分量(数ナノリットル)しか消費せず、しかもいかなる吸い取りステップも伴わない、ロスレスの低温EM調製を可能にする方法、装置およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1に記載の特徴を備える低温グリッド調製システム(また、低温グリッド調製システムとも称される)により解決される。好ましい実施形態は、その対応する下位の請求項の中に記述されており、また以下に説明されている。
【0005】
請求項1によれば、電子顕微鏡(EM)、特に透過EM用の試料を調製するための調製システムは、
‐吐き出しヘッドを備える(高精度)液体ハンドリングシステムであって、その吐き出しヘッドの吸入口/放出口を介して(例えば、異種混在の)試料の(好ましくは、1nlと少ない)容量を吸引しそして吐き出すように構成されている当該液体ハンドリングシステムと、
‐当該試料を収容できるように構成されている支持構造体と、
‐温度制御されたステージであって、当該支持構造体が当該温度制御されたステージの上に配置されているときに、当該支持構造体を予め定義された温度に保つように構成されているステージ(例えば、その環境の露点温度で、例えばその支持構造体の近くで、蒸発/凝縮を引き起こすわずかな温度の偏差が確立する可能性がある場合、その露点は、周囲の気温および相対湿度に依存する(液体は蒸発も凝縮もしない))と、
‐当該支持構造体を(好ましくは、放出可能な仕方で)保持するように構成されている第1のアダプタであって、当該第1のアダプタは、好ましくは、当該アダプタが当該温度制御されたステージに熱的に接触しているように、当該温度制御されたステージの上に搭載されているアダプタと、
‐移送機構(また、持ち上げ/引き渡し機構または簡潔に引き渡し機構とも称する)であって、当該移送機構は、当該支持構造体を保持する当該第1のアダプタに接続され、当該支持構造体を液体寒剤を含んでいる容器の中へ移動させるように構成されており、その結果、当該支持構造体上の試料は、当該寒剤(好ましくは、エタンまたはエタンおよびプロパンの混合物を含む当該寒剤)と接触し、その結果、当該支持構造体上の当該試料(例えば、液膜)は、好ましくは非晶質固体水の膜に変換される移送機構と、を含む。
【0006】
本明細書において、nl(ナノリットル)の分量または容量は、好ましくは1nl〜100nl、好ましくは1nl〜10nlの範囲の容量である。
【0007】
本発明の1つの実施形態によれば、第1のアダプタは、支持構造体を保持するためのピンセットを含む。
【0008】
本発明の好ましい実施形態によれば、この移送機構は、容器の上方の位置に支持構造体と一緒に第1のアダプタを回転させ、支持構造体上の試料が容器の中で寒剤と接触するように、当該回転後にそのアダプタおよび支持構造体を下方に移動させるように構成されている。
【0009】
この支持構造体は、穴のある炭素膜または任意の他の好適な構造を有する公知の電子顕微鏡(EM)グリッドとすることができ、またはそのようなグリッドを含むことができる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、このシステムは、液体ハンドリングシステムに対して温度制御されたステージを移動させるように構成されている並進ステージアセンブリを備え、その結果、吐き出しヘッドおよび支持構造体は、液体ハンドリングシステムから支持構造体まで試料を移送するように互いに接近させることができる。
【0011】
1つの実施形態では、当該並進ステージアセンブリは、2つの別々の並進ステージを備えることができ、一方のステージは、温度制御されたステージまたは支持構造体をX‐方向およびY‐方向(例えば、水平面)に移動させるように構成されており、これに対して、他方のステージは、Z‐方向(垂直方向)に吐き出しヘッド(例えば、毛細管または微小毛細管)を位置決めするように構成されている。
【0012】
別の選択肢として、1つの実施形態では、当該並進ステージアセンブリは、XYZステージアセンブリとすることができ、このXYZステージアセンブリは、すべての次元(X、Y、およびZ)において、吐き出しヘッド(例えば、毛細管または微小毛細管)に対して温度制御されたステージを位置決めするように構成されている。
【0013】
さらにこれ以降説明される方法に関して、当該試料移送は、試料の物理的および化学的性質に依存する複数のやり方で実行されることができる。(i)表面張力効果による支持表面上のナノリットル容量液滴の直接堆積およびその次に起こる拡大。(ii)支持表面上でのナノリットル容量液滴の堆積、続いて、初期に堆積した容量よりも少ない容量で試料の再吸引。(iii)支持構造体表面上でのナノリットル容量液滴の堆積、続いて、支持構造体と液体ハンドリングシステムとの間の相対的な移動、これに対して、支持構造体上の堆積された試料を拡大させるため、これら2者間の液体架橋が、依然として確立されている。(iv)支持構造体上の堆積された試料を拡大するため、堆積中に支持構造体と液体ハンドリングシステムとの間の相対的な移動を組み合わせた、支持構造体表面上でのナノリットル容量液滴の堆積。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、このシステムは、支持構造体の温度を適切な温度(例えば、露点温度)に調整するため、支持構造体が温度制御されたステージに接近するように、温度制御されたステージに対して第1のアダプタを移動させるように構成されている調整手段を備える。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、この調整手段は、好ましくは電磁石の形態の保持手段を備え、この保持手段は、第1のアダプタ(好ましくは、第1のアダプタのピンセット)を解放可能に保持するように、好ましくは試料が支持構造体上に置かれているときに、第1のアダプタを自動的に解放するように構成されており、またこの調整手段には、好ましくは予め定義された温度が含まれる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、この移送機構は、第2のアダプタを備え、これら2つのアダプタは、その保持手段が第1のアダプタを解放するとき(例えば、ピンセットを解放するとき)、互いに係合するように設計されている。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、この移送機構は、第1のアダプタが第2のアダプタと係合して保持手段から解放されるとき、第2のアダプタを当該容器の上方に回転させるように設計されている。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、この移送機構は、好ましくはソレノイドを含む移動生成手段を備え、その移動生成手段は、第1のアダプタおよび支持構造体がその容器の上方に位置決めされているときに、第2のアダプタを下方に移動させるように構成されており、その結果、支持構造体上の試料は、容器の中の寒剤と接触する。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、このシステムは、支持構造体の上に堆積された試料層の膜厚を推定するための手段、例えば赤外線吸着、干渉法、または水晶発振子微量天秤測定による手段を含む。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、この吐き出しヘッドは、液体ハンドリングシステムの端部に、毛細管、特に微小毛細管により形成され、その毛細管は、吸引された試料を収容するための先端部を備える。
【0021】
好ましくは、その微小毛細管の内径は、1ナノメートル〜900マイクロメートルの範囲内、特に1nm〜100マイクロメートルの範囲内とすることができる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、このシステムは、第1のリザーバを備え、(場合によっては)試料のナノリットル容量を含んでいる吐き出しヘッドが、拡散律速された試料調整を可能にするように、例えば試料緩衝液を交換し、洗浄剤を添加し、または電子顕微鏡の妨げとなる問題物質を取り除くように、この第1のリザーバの中に浸漬されることができる。さらに、このシステムは、モリブデン酸アンモニウムなどの生物学上のエフェクタ分子またはコントラスト増強剤の中に吐き出しヘッドを導き入れることができる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、このシステムは、第2のリザーバを備え、試料のナノリットル容量を含む吐き出しヘッドは、その第2のリザーバから、認知分子、例えば試料中の標的分子または標的粒子と結合する抗体を含んでいる、わずかな容量を吸引することができる。これらの認知分子は、例えば超常磁性のナノビーズの表面に結合されることができ、例えば診断目的で高電子密度標識として使用されることができる。この結合は、安定な化学結合または光分解性リンカーを形成する結合とすることができる。このアセンブリの磁気特性により、吐き出しヘッドの中で発生した磁気勾配による、そのアセンブリおよび結合された標的分子のトラッピングを可能にする。保温および洗浄ステップの後、この標的分子は、外部磁界が停止されている間、または試料が、光分解性リンカーを切断するのに必要とされる適切な波長の光で照射された後に、試料を吐き出すことによって選択的に放出されることができる。
【0024】
本発明のさらなる態様は、特に透過電子顕微鏡用の支持構造体の上の試料を調製するための方法に関し、この方法は、特に本発明に基づくシステムを使用した方法であり、またこの方法は、次のステップ、すなわち、
‐温度制御されたステージの上に支持構造体を設け、好ましくは当該試料の当該容量を一定に保つように、当該支持構造体の当該温度を環境の露点温度に調整するステップと、
‐予め定義された試料の分量[nlの分量]を毛細管、好ましくは微小毛細管の形態の中に吸引するステップと、
‐当該試料を当該支持構造体の上に向けて吐き出すステップと、
‐当該支持構造体を当該温度制御されたステージから自動的に取り出すステップと、
‐当該支持構造体をある垂直の位置に自動的に持ってきて好ましくは回転させて、当該試料が非晶質固体(また、ガラス固化とも称される)になるまで冷却されるように、当該支持構造体を液体寒剤の中に挿入するステップと、
‐ガラス固化された試料を伴った当該支持構造体を当該液体寒剤から取り出すステップと、を含む。
【0025】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の図を参照しながら実施形態の詳細な記載により説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明に基づく低温グリッド調製システムの概略図である。
図2図2は、吐き出しヘッド中の試料の中の分子と交換リザーバ中の分子との間の拡散交換を例示する略図である。
図3図3は、認知分子、例えば抗体による標的分子の小型隔離機構の概略を示す図である。
図4図4は、本発明に基づくシステムの斜視図である。
図5A図5Aは、図1および4に示されたシステムを使用して調製された低温グリッドの外観を示す図であり、穴のある炭素膜の上に吐き出された5nlの液滴を示している。
図5B図5Bは、非晶質緩衝液中に埋め込まれたタバコモザイクウイルス(TMV)のより高倍率の低温EM画像を示す図である。
図5C図5Cは、非晶質緩衝液中に埋め込まれたPDMS系小胞のより高倍率の低温EM画像を示す図である。
【0027】
図1は、本発明に基づく低温グリッド調製システムの概略図を示し、このシステムは、高精度吐き出しシステム0、吐き出しヘッド1、支持構造体2(また、本明細書ではグリッドを指す)、当該支持構造体2を可逆的に保持するアダプタ3、温度制御されたステージ4、並進ステージ5、持ち上げ/引き渡し機構60、および寒剤容器8を備える。この並進ステージ5は、すべての次元XYおよびZにおいて、または次元XYにおいてのみ、ステージ4を移動させるように構成されていることができる。後者の場合、別個のZステージ10aが、当該並進ステージの一部を形成して存在し、このため、そのZステージ10aは、Z(垂直)方向に吐き出しヘッド1を移動させるように構成されている。
【0028】
特に、この低温グリッド調製は、好ましくは、A)温度制御されたステージ4の上の(例えば、EMグリッドおよび特にそのグリッド上に配置された、穴のある炭素膜を備える)支持構造体2の上に向けて試料を吐き出すステップと、B)持ち上げ/引き渡し機構60が、アダプタ3および支持構造体2をつかむステップと、C)アダプタ3、30により形成された支持構造体ホルダが、下方へ回転して並進機構を作動させるステップと、(D)その支持構造体2を容器8の中の寒剤80の中へ速やかに移送するステップと、を使って達成される。
【0029】
図2は、吐き出しヘッドの中の試料中の分子と交換リザーバ中の分子との間の拡散交換を例示する概略図を示す。
【0030】
図3は、認知分子、例えば抗体によって、標的分子に対して、本発明に基づくシステムと併せて使用されることができる小型化された隔離機構の概略図を示す。当該機構は、常磁性ビーズ9を用いた磁気トラップN、Sを構築する磁石を備える。図3は、常磁性ビーズ9に連結された抗体10と、標的分子11、例えばタンパク質複合体と、その標的分子の結合パートナー12および第2の認知分子13、例えば結合パートナー12を認識する抗体と、ならびに第2の認知分子13に接合された電子密度の高いマーカ14をさらに示す。
【0031】
図4は、本発明に基づいたシステムの1つの実施形態を、図1と併せて示す。このシステムは、吐き出しシステム0、および例えば、微小毛細管1(図1を参照)により形成された吐き出しヘッド1とは別に、温度制御されたステージ4と、支持構造体2(例えば、EMグリッド)を保持するアダプタ3のピンセット20と、ピンセット20を保持する電磁石50と、温度制御されたステージ4上のEM2グリッドの水平の位置決めを確実にするための、例えばxyz手動位置合わせ40の形態の調整手段40と、を備え、当該調整手段40は、温度制御されたステージ4の上に搭載され、第1のアダプタ3は、アダプタ3のピンセット20を開閉するねじと一緒にピンセット20の上に搭載され、移送機構60(また、インジェクタアセンブリとも称される)上の第2のアダプタ30から間隙Gだけ離間されている。2つの引き付け合うネオジム磁石は、アダプタ3、30の端部の中に挿入され、図4に示すように、第3のネオジム磁石は、その第2のアダプタ30を水平の位置に保持している。このシステム/移送機構60は、例えば30mmのハブを有するソレノイド6と、二次回路スイッチ7であってピンセット20がそのスイッチに命中したときに閉じられる当該スイッチとをさらに備え、このスイッチは、ソレノイド6を作動させそして容器8の中に含まれている寒剤80の中へEMグリッド2を下方へと移動させる。
【0032】
詳細には、この液体ハンドリングシステム0は、吐き出しヘッド1を形成している溶融石英微小毛細管に接続された高精度の注射器ポンプから成る。これら微小毛細管および注射器ポンプ両方とも、システム液(例えば、水)で完全に満たされている。この注射器ポンプは、その微小毛細管の先端部1の自由端を介して、異種混在の試料(例えば、20Sプロテアソーム、タバコモザイクウイルス、リポソーム)の1nlのわずかな容量を吸引しそして吐き出すことができる。
【0033】
この試料は、システム液と直接接触させて吸引されることができ、または数ナノリットルのわずかなエアプラグは、試料吸引前に吸引されて試料およびシステム液を効果的に分離することができる。
【0034】
この微小毛細管の先端部1は、特定の内径に対して真っ直ぐとするかまたはテーパ形状とすることができる。ここでは、内径40μmのテーパ形状先端部を有する内径250μmの微小毛細管を使用した。
【0035】
試料を含む微小毛細管の先端部1は、図2に示すように、第1のリザーバ100、例えば試料から第1のリザーバ100の中へ塩イオン103の拡散律速交換を可能にするエッペンドルフチューブの中へ浸漬されることができる。巨大な分子またはタンパク質102は、より小さい拡散定数を示し、培養時間中は喪失しない。生物学上のエフェクタ分子またはコントラスト増強剤、例えばモリブデン酸アンモニウムなどの他の小さい分子101は、微小毛細管1に含まれている試料の中に拡散することができる。この交換は、吸引の間中(試料とシステム液との間には空気間隙はない)、その試料をシステム液(この場合は、HO)と直接接触させることによって増強されることができる。
【0036】
一般に、すべての実施形態において、温度制御されたステージ4は、ペルチエコントローラにより制御された水冷式ペルチエ素子を備えることができる。このペルチエコントローラは、そのステージ4の上に搭載された温度センサからそのステージの温度を取得している。実際の露点温度は、実験用チャンバ内部の周囲温度および相対湿度の両方を測定する露点センサにより送り出され、そして連続的にその露点温度を計算し、その計算された露点温度は、制御ソフトウエアを介してペルチエコントローラにフィードバックされる。制御ソフトウエアを通じて、わずかな温度偏差を加えて蒸発または凝縮を増やすことが可能である。
【0037】
穴のある炭素膜を有するEMグリッドの形態の支持構造体2は、アダプタ3の小型ピンセット20により保持されている。このピンセット20は、例えば2本のねじにより当該第1のアダプタ3の中にしっかりと固定して搭載されている。例えば、第3のねじにより、ピンセット上に圧力を加えることによって、そのピンセット20の開閉を可能にする。この第1のアダプタ3の後端には、ネオジウム磁石が挿入されている。
【0038】
この支持構造体2、ピンセット20、および第1のアダプタ3は、1つのアセンブリを形成する。このアセンブリは、例えばピンセット20と接触している当該電磁石50の形態の保持手段50により水平の位置に保持されている。この電磁石50自体は、当該調整手段40に取り付けられ、この調整手段により、あらゆる次元での手動による位置合わせをすることができ、その結果、支持構造体/グリッド2を、温度制御されたステージ4と完全に位置合わせすることが可能となり、そこではグリッド2が、良好な熱接触および効果的な試料堆積のために、水平に置かれていなければならない。
【0039】
例えば、複数のモータ駆動式リニアステージの組み合わせを備える並進ステージアセンブリ5(例えば、図1を参照)により、温度制御されたステージ4上の支持構造体2の表面の上方にある微小毛細管の先端部1を正確に位置決めすることが可能となる。吐き出しヘッド1およびグリッド2の表面は、微小毛細管の先端部1から支持構造体(例えば、グリッド)2まで試料を移送するように接近している。
【0040】
特に、調整手段40は、温度制御されたステージ4の上に搭載されているが、これに対して、微小毛細管1は、その温度制御されたステージ4に接続されていないので、その結果、後者は、図4に示されていない好適な保持手段により保持されることができる毛細管1に対して、ステージアセンブリ5によって少しずつ移動することができる。特に、当該微小毛細管(吐き出しヘッド)1は、別個のZ‐軸ステージ10a(図1を参照)の上に搭載されており、このZ‐軸ステージにより、支持構造体2に対して、微小毛細管の垂直の位置の調整が可能となる。特に、ステージアセンブリ5により、ステージ4が伸長するXY平面で、その温度制御されたステージ4を自動的に移動させることが可能となる。
【0041】
当該試料移送は、その試料の物理的なおよび化学的な特性に依存する複数のやり方で行われることができる。(i)表面張力効果による支持構造体2(例えば、EMグリッド)上でのナノリットル容量液滴の直接堆積およびその次に起こる拡大。(ii)支持構造体2(例えば、EMグリッド)上でのナノリットル容量液滴の堆積、続いて、初期に堆積した容量よりも少ない容量を有する試料の再吸引。(iii)支持構造体2(例えば、EMグリッド)上でのナノリットル容量液滴の堆積、続いて、そのEMグリッドと微小毛細管の先端部との間の相対的な移動、これに対して、EMグリッド上の堆積された試料を拡大させるため、これら2者間の液体架橋が、依然として確立されている。(iv)支持構造体2上での堆積された試料を拡大するため、堆積中の支持構造体2(例えば、EMグリッド)および微小毛細管の先端部の相対的な移動を組み合わせた、支持構造体2(例えば、EMグリッド)上でのナノリットル容量液滴の堆積。
【0042】
好ましくは、その膜厚は、カメラを通じた目視検査により推定され、そのカメラは、当該厚さを検査するために好適ないかなる場所にでも配置されることができる。
【0043】
この移送機構(引き渡し機構)60は、第2のアダプタ30を備え、その第2のアダプタもまた、一方の端部にネオジム磁石が挿入され、他方の端部上には大きいソレノイド6を有する回転ヒンジ61を介して接続されている。この第2のアダプタ30を水平の位置に保つため、第3のネオジム磁石が、それに応じて設置されている。第1のおよび第2のアダプタ3、30は、わずかな間隙Gにより離間されている。これら2つの挿入されたネオジムは、互いに引き合うが、しかしながら、これら2つの接合は、アセンブリ2、20、3(例えば、ピンセット20)に対して堅固に保持している電磁石50によって阻止されている。
【0044】
試料堆積の後、EMグリッド2を極低温の液体80、通常、エタンまたはエタン/プロパン(40/60)の混合物の中に素早く投入する必要がある。この投入は、電磁石(ソフトウエア制御された)50の電源を切ることにより実行され、この切断によりこれら2つのアダプタ3、30が、一緒にパチンと合体しそして新しいより一層重いアセンブリを形成する。この新しいアセンブリは、第3のネオジム磁石により元の位置に保持されるには、重すぎる。そのアセンブリは、すぐさま垂直の位置(第2のアダプタ30の他方の側面上にあるヒンジ61)に落下する。そのアセンブリがその垂直の位置に到達すると、そのアセンブリは、それが前後にはね返るのを防ぐ別の磁石により適切な位置で保持される。同時に、電気回路は、落下するアセンブリの金属部分(例えば、スイッチ7)を通じて閉じられる。これにより、ソレノイドコントローラを制御する二次回路を作動させる。その結果、ソレノイド6が作動し、30mmハブが下方へ発射され、最後には支持構造体(例えば、EMグリッド)2が容器8の寒剤80の中に投入される。ソレノイド6の電源投入から支持構造体2が寒剤80の中に発射されるまでの全工程は、3分の1秒以内に生じ、そして堆積された液膜のガラス固化を可能にする。
【0045】
実施例:本発明に基づいて調製された試料の画像
低温グリッドは、図1および4に示すシステムで調製された。
【0046】
図5Aは、穴のある炭素膜上に吐き出された5nlの液滴を示す低温EMの概観画像を示す。その均質な非晶質水の層に注目せよ。黒い矢印は、吐き出された緩衝液の周辺を示す。スケールバーは、50μmである。挿入図は、穴の中の非晶質緩衝液(PBS)のより高い倍率の拡大図を示す。「*」で表示された黒い点は、試料堆積前のグロー放電処理の間に、EMグリッドを支持しているアルミニウム表面からもたらされたものと思われる。その挿入図のスケールバーは、80nmである。
【0047】
図5Bは、ガラス状の氷に埋め込まれたタバコモザイクウイルス(TMV)の、より高い倍率の低温EM画像を示す。スケールバーは、80nmである。
【0048】
図5Cは、非晶質緩衝液中に包埋されたPDMS系小胞の、より高倍率の低温EM画像を示す。そのスケールバーは、80nmである。この緩衝液の非晶質固体層は、均質であり、かつほとんど汚染されていない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C