特許第6861212号(P6861212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861212
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】材料、その用途、及び材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20210412BHJP
   C04B 38/06 20060101ALI20210412BHJP
   C04B 33/13 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   C04B38/00 303Z
   C04B38/06 C
   C04B33/13 A
【請求項の数】27
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2018-532839(P2018-532839)
(86)(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公表番号】特表2018-529621(P2018-529621A)
(43)【公表日】2018年10月11日
(86)【国際出願番号】IB2016055382
(87)【国際公開番号】WO2017042727
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2019年5月15日
(31)【優先権主張番号】102015000050831
(32)【優先日】2015年9月11日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518084877
【氏名又は名称】シーニャ ラボ エス. アール. エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】シーニャニニ、 パトリツィオ
【審査官】 西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/036218(WO,A1)
【文献】 特開2000−092978(JP,A)
【文献】 特開2005−067966(JP,A)
【文献】 特開2015−113271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00−38/10
C04B 33/00−33/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性材料であって、
気孔率が50%〜80%の範囲内であり、
相互接続細孔を有し、
少なくとも、親水性材料からなる部分を有し、
透過係数(k)が10−6m/秒よりも大きいことを特徴とし、
所与の体積の前記多孔性材料において、径が0.1μm〜0.3nmの範囲内である細孔の総体積が、前記細孔の総体積の少なくとも15%である、
多孔性材料。
【請求項2】
前記細孔の体積の24%〜32%が、0.8mm〜6.25μmの範囲内の径を有する細孔で占められている、請求項1に記載の多孔性材料。
【請求項3】
前記細孔の体積の36%〜44%が、6.25μm〜0.1μmの範囲内の径を有する細孔で占められている、請求項1又は請求項2に記載の多孔性材料。
【請求項4】
所与の体積の前記多孔性材料において、0.3nm〜140pmの範囲内の径を有する細孔の総体積が、前記細孔の前記総体積の少なくとも5%である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の多孔性材料。
【請求項5】
前記多孔性材料は、相互接続細孔の割合が80%を超えている、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の多孔性材料。
【請求項6】
親水性である、即ち、前記多孔性材料の表面に接触している水滴の接触角(θ)が10°よりも小さくなるような、濡れ性を有することを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の多孔性材料。
【請求項7】
前記多孔性材料の前記透過係数(k)は、10−6m/秒よりも大きく10−4m/秒未満である、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の多孔性材料。
【請求項8】
水への浸漬により飽和した材料のサンプルの重量と水の毛細管上昇により飽和した同じサンプルの重量との比が、少なくとも90%である、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の多孔性材料。
【請求項9】
固体であることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の多孔性材料。
【請求項10】
剛性を有することを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の多孔性材料。
【請求項11】
粘土質の性質を有する材料に由来することを特徴とする、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の多孔性材料。
【請求項12】
サイズが1/256mmよりも小さい微粒を含み、径が数nmである細孔を有する、粘土;
径が1/16mm〜1/256mmの範囲内である粒子を含む、ローム;及び
径が2mm〜1/16mmの範囲内である粒子を含む、砂;
を含む、請求項11に記載の多孔性材料。
【請求項13】
出発材料を提供する工程;
前記出発材料を粉砕して、出発粉末を得る工程;
前記出発粉末を、液体、サブトラクションにより前記出発材料の内部に更なる細孔を形成することができる顆粒、及び酸化性成分と混合することにより原材料の混合物を形成する工程;
前記原材料の混合物を乾燥する工程;並びに
前記原材料を焼成して、前記顆粒の燃焼及び/又は気相への変化を可能とする工程、
を含み、
前記混合物を形成する工程において、以下の成分:
−前記混合物の固体分の総重量の40%〜80%の範囲内の割合の前記出発粉末、ここで、この前記混合物の固体分の総重量は、前記出発粉末の重量、前記顆粒の重量、及び存在してもよい固相状態の酸化性成分の重量の合計を意味する;
−前記混合物の固体分の10%〜40%の範囲内の割合の、粒子サイズが0.1mm〜0.1μmの範囲内である第一の顆粒分;及び
−前記混合物の固体分の5%〜20%の範囲内の重量パーセントの、粒子サイズが0.1mm〜1μmの範囲内である第二の顆粒分、
を混合する、請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の多孔性材料を製造するための方法。
【請求項14】
前記出発材料は:
サイズが1/256mmよりも小さい微粒を含み、径が数nmである細孔を有する、粘土;
径が1/16mm〜1/256mmの範囲内である粒子を含む、ローム;及び
径が2mm〜1/16mmの範囲内である粒子を含む、砂、
を含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記原材料の混合物を形成する工程において、前記粘土の割合を前記多孔性材料の用途の種類に従って変更する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物を形成する工程において、前記混合物の体積を増加させることが可能である及び/又は所定の温度に達すると燃焼及び酸素の生成が可能である酸化性成分を、前記出発粉末に添加する、
請求項13〜請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物を形成する工程が:
顆粒配合物を形成するサブ工程;及び
前記原材料の混合物のポケット針入度計試験による密度が0.1g/cmになるまで、液体を前記顆粒配合物と混合するサブ工程、
を含む、請求項13〜請求項16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記液体は、50重量%の水及び50重量%の過酸化水素を含む、120体積分の混合物である、請求項13〜請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記焼成工程は:
前記原材料を室温〜200℃の範囲内の温度で4時間焼成して、前記乾燥した原材料中に残存する前記液体を除去するサブ工程;
前記原材料を200℃〜500℃の範囲内の温度で4時間焼成して、前記原材料の混合物に添加した前記顆粒の燃焼及び/又は前記気相への変化を可能とするサブ工程;
前記原材料を500℃〜800℃の範囲内の温度で4時間焼成して、前記原材料の混合物中に存在する前記粘土の鉱物組成を変化させて、これにより硬化及び/又はセメンテーションを引き起こすサブ工程;
前記原材料を800℃〜1000℃の範囲内の温度で4時間焼成して、前記多孔性材料の前記硬化及び/又はセメンテーションを完了させるサブ工程;
を含む、請求項14又は請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記原材料を成形する工程を含み、前記成形工程は、前記混合物を形成する工程の後、前記乾燥工程の前に行う、請求項13〜請求項19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の多孔性材料の、冷却システム(20)における使用。
【請求項22】
請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の多孔性材料の、液体及び/又は湿気吸収システムにおける使用。
【請求項23】
請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の多孔性材料の、水の解離及び/又は分極のための使用。
【請求項24】
少なくとも部分的に請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の多孔性材料から形成されている1又は複数のモジュール(22)を備える冷却ユニット(21)。
【請求項25】
脱湿流体(F1)用の第一の入口部(23)、前記脱湿流体(F1)用の第一の出口部(24)、1又は複数のモジュール(22)により形成される本体(25)、冷却対象の作動流体(F2)用の第二の入口部(26)、及び冷却された前記作動流体(F2)用の第二の出口部(27)を備え、
前記本体(25)は、1又は複数の内部導管(28)を有し、前記脱湿流体(F1)が前記本体(25)の外壁部と第一の方向に沿って接触するように、前記第一の入口部(23)と前記第一の出口部(24)との間に挿入されており、
前記本体(25)は、前記作動流体(F2)が各内部導管(28)を通って第二の方向に流れるように、前記第二の入口部(26)と前記第二の出口部(27)との間に挿入されている、
請求項24に記載の冷却ユニット(21)
【請求項26】
各導管(28)は、熱交換交換を確保することができる材料であるが、前記材料と前記作動流体(F2)との間の湿気の交換は防止する材料で内側が被覆されている、請求項25に記載の冷却ユニット(21)
【請求項27】
各モジュール(22)は、さらに、1又は複数のチャネル(29)を有し、前記導管(28)及び前記チャネル(29)は互いに交差しておらず、各チャネル(29)は、液体が通って流れるように構成されている、請求項25又は請求項26に記載の冷却ユニット(21)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、材料、その可能な用途、及び材料の製造方法に関する。
【0002】
本発明は、とりわけ、以下の目的のうちの1つ又は複数に好適に用いることができる材料に関する:液体の蒸発の最大化;水の解離の最大化;冷却;液体の吸収;液体のろ過;液体の毛細管上昇(capillary ascension)の促進;水からの水素の製造。
【背景技術】
【0003】
例えば、材料は、冷却システムの内部に用いてもよい。例えば、空気を、この空気の湿球温度まで冷却するために、水の蒸発を促進する様々な冷却システムが知られていることを思い起こされたい。これらの冷却システムは、直接システム及び間接システムに分類することができる。前者では、冷却対象の環境中に空気の流れを直接導入して、空気を冷却するために水を蒸発させるが、この場合、冷却対象の環境は水蒸気含有量が増加する。この欠点を補うために、水が蒸発する第一の外部空気回路により、第二の内部空気回路を冷却する間接システムが用いられている。しかしながら、上記2つの空気流の間で熱交換を行うには、空気−空気熱交換器又は水−空気−水熱交換器が必要であり、これらの交換器はかさばり、コストがかかる。
【0004】
直接冷却システム及び間接冷却システムにおいて水を最大限蒸発させるために、「ウォーターカーテン」又は噴霧器(しかしながら、エネルギーの供給が必要である)の使用が知られており、あるいは水を天然スポンジ類又は合成スポンジ類のような吸収材料中に含有させて、その中に空気流を通過させる。
【0005】
しかしながら、既知のスポンジ類には、内部に含有された液体の大部分が重力により滴り落ちてしまう(重力水)といった数多くの欠点が存在する。言い換えると、既知の吸収材料(即ち、スポンジ類)は濡れると、重力により、その内部に液体を保持して外部への水の浸出を回避することができない。従って、既知の吸収材料は、自由液体が存在するのを回避又は防止する必要がある環境中、例えば、電気材料が存在する環境中で用いることができない。
【0006】
間接冷却システムにおける熱交換器の全体サイズ及びコストにより、上記カスケードシステムのようなシステムを採用することは非経済的でもあるが、その一方で、このシステムによれば、直接冷却システムを用いて得られる周辺空気の湿球温度よりも低い最終温度に達することも可能である。
【0007】
直接冷却システムとしては、米国特許出願公開第2010/0281896号明細書に記載のものが挙げられ、このシステムでは、冷却対象の空気流を湿潤セルロースハニカムセル部材を通して吸引する。
【0008】
間接冷却システムとしては、国際公開第2013/021147号明細書に記載のものが挙げられる。間接冷却システムの別の例が、例えば、国際公開第2012/168929号明細書において知られている。しかしながら、国際公開第2012/168929号明細書に記載の材料及び相対冷却システム(relative cooling system)は、エネルギー効率に限界があるという欠点を有している。これは、記載されている材料の部材には水の蒸発/解離誘発能に限界があり、従って、フリゴリー(frigories)を十分に発生させることができず、この結果、エネルギー効率に限界があるためである。
【0009】
さらに、国際公開第2012/168929号明細書に記載の材料は、これを機能させるために、少なくともその片側を加熱しなければならない及び/又は太陽に曝さなければならない。
【0010】
中でも、特に効率的な冷却システムの構築を可能とし、並びに/又は、水の蒸発及び/若しくは水の解離及び/若しくは水素の製造及び/若しくは水の吸収及び/若しくは水の上昇及び/若しくは水のろ過に有用でもある材料は、従来技術には存在しない。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、水蒸気含有量を増加させることなく、フリゴリーを第二の空気流と交換するための冷却ユニットに用いることができ、高いエネルギー効率を有する材料を提供することである。
【0012】
本発明の目的は、水の蒸発を促進するのに用いることができる材料を提供することである。
【0013】
さらに、前記材料は、水をイオンに分離するのに用いることもできる。これに関して、例えば、水素製造のための準備段階として、水をイオンに分離するためのシステムは知られてはいるが、電解を例とするこれらのシステムは、莫大な電気エネルギーの供給を必要とする。
【0014】
本発明の目的は、簡素で安価な方法で水をイオンに解離することができる材料を提供することである。
【0015】
さらに、前記材料を用いて液体の吸収を促進することもできる。土壌から水を吸収するためのシステムは知られてはいるが、これらの既知のシステムは、土壌中の水を蒸発させるために及び/又は土壌を遠心分離するためにエネルギーを必要とする。
【0016】
本発明の目的は、水の毛細管上昇(液体の吸引)を可能とし、この結果、水を排出することもできるのに適した条件を内部に作り出すことができる材料を提供することである。
【0017】
本発明の目的は、少なくとも部分的に親水性であり、とりわけ、以下を可能とする気孔率を有する材料を提供することである:
材料内部での、液体、例えば水の毛細管上昇の速度上昇;
液体の毛細管上昇の最大化;
重力による液体の浸出(重力水)の防止;
液体に曝される親水性表面が広い、実質的にフラクタルな内部構造の提供;
材料内部の毛細管現象による減圧部形成の促進。
【0018】
本発明の目的は、水と接触した場合に温度が低下する材料を、限られたコストで提供することである。
【0019】
本発明の目的は、製造及び使用するのに容易且つ安価な材料を提供することである。
【0020】
本発明の目的は、添付の特許請求の範囲に記載された材料を提供することである。
【0021】
本発明の目的は、添付の特許請求の範囲に記載された材料の可能な用途を提供することである。
【0022】
本発明の目的は、添付の特許請求の範囲に記載された材料の製造方法を提供することである。
【0023】
本発明の目的は、添付の特許請求の範囲に記載された冷却ユニットを提供することである。
【0024】
ここで、本発明について添付の図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】グラフィックスケールで目視可能な拡大した顕微鏡画像である。
図2】グラフィックスケールで目視可能な拡大した顕微鏡画像である。
図3】グラフィックスケールで目視可能な拡大した顕微鏡画像である。
図4】濡れ性試験時に表面と接触している液滴を模式的に示す。
図5】本発明に係る材料のある実施形態に係る材料における、特定の径を有する細孔の範囲を、その径の関数として、細孔が占める空間の割合(%)で表したグラフである。
図6図5に示す合成に繋がる以下に示す様々な実験的試験によって得られた、本発明に係る材料のある実施形態に係る気孔率に関するデータを示すグラフである。
図7】本発明に係る材料のある実施形態に係るサンプルにおける、水の毛細管上昇速度を示すグラフである。
図8-1】本発明に係る材料のある実施形態におけるサンプルについての、水銀ピクノメータによる第一の試験により得られた気孔率に関するグラフを示す。
図8-2】本発明に係る材料のある実施形態におけるサンプルについての、水銀ピクノメータによる第一の試験により得られた気孔率に関するグラフを示す。
図8-3】本発明に係る材料のある実施形態におけるサンプルについての、水銀ピクノメータによる第一の試験により得られた気孔率に関するグラフを示す。
図9-1】本発明に係る材料のある実施形態におけるサンプルについての、水銀ピクノメータによる第二の試験により得られた気孔率に関するグラフを示す。
図9-2】本発明に係る材料のある実施形態におけるサンプルについての、水銀ピクノメータによる第二の試験により得られた気孔率に関するグラフを示す。
図9-3】本発明に係る材料のある実施形態におけるサンプルについての、水銀ピクノメータによる第二の試験により得られた気孔率に関するグラフを示す。
図10-1】本発明に係るある実施形態における材料のサンプルについての、水銀ピクノメータによる第三の試験により得られた気孔率に関するグラフを示す。
図10-2】本発明に係るある実施形態における材料のサンプルについての、水銀ピクノメータによる第三の試験により得られた気孔率に関するグラフを示す。
図10-3】本発明に係るある実施形態における材料のサンプルについての、水銀ピクノメータによる第三の試験により得られた気孔率に関するグラフを示す。
図11-1】本発明に係る材料のある実施形態における表面による水滴の吸収に関する、ストロボカメラにより得られた一連の画像を示す。
図11-2】本発明に係る材料のある実施形態における表面による水滴の吸収に関する、ストロボカメラにより得られた一連の画像を示す。
図11-3】本発明に係る材料のある実施形態における表面による水滴の吸収に関する、ストロボカメラにより得られた一連の画像を示す。
図11-4】本発明に係る材料のある実施形態における表面による水滴の吸収に関する、ストロボカメラにより得られた一連の画像を示す。
図11-5】本発明に係る材料のある実施形態における表面による水滴の吸収に関する、ストロボカメラにより得られた一連の画像を示す。
図11-6】本発明に係る材料のある実施形態における表面による水滴の吸収に関する、ストロボカメラにより得られた一連の画像を示す。
図11-7】本発明に係る材料のある実施形態における表面による水滴の吸収に関する、ストロボカメラにより得られた一連の画像を示す。
図12】本発明に係る材料のサンプルが液体で飽和している時点でのリトマス試験の平面図である。
図13-1】本発明に係る材料のサンプルについて、実験的試験における異なる時点でサーモカメラにより得られた画像である。
図13-2】本発明に係る材料のサンプルについて、実験的試験における異なる時点でサーモカメラにより得られた画像である。
図13-3】本発明に係る材料のサンプルについて、実験的試験における異なる時点でサーモカメラにより得られた画像である。
図13-4】本発明に係る材料のサンプルについて、実験的試験における異なる時点でサーモカメラにより得られた画像である。
図14】本発明に係る材料を用いた冷却システムの模式図であるが、明瞭性の観点でパーツは取り除いている。
図15図14の詳細を示す。
図16図15の詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1図3において、符号1は、すべて本発明に係る材料のサンプルを示す。好適には、材料1は多孔性材料である。材料1は、全気孔率が50%〜80%の範囲内である。好適には、材料1は気孔率が60%〜70%の範囲内である。気孔率とは、細孔で占められる体積の割合と総体積との比を意味する。材料1は、相互接続細孔の割合が80%を超えている。好適には、材料1は相互接続細孔の割合が90%を超えており、95%を超えていることが好ましい。
【0027】
「細孔」との用語は、一般的に「毛細管」としても知られる構造を含み得る、様々なサイズの中空構造を示すものとする。
【0028】
材料1は、少なくとも親水性材料からなる部分を含む。細孔の内表面の少なくとも一部は親水性材料からなる。好適には、材料1は親水性である。または、材料1は非親水性材料からなるものの、細孔の内壁の表面が、少なくとも部分的に親水性材料で被覆されている。細孔の内壁は親水性材料からなることが好ましい。
【0029】
従来からの定義では、親水性との用語は、水を吸収又は吸着する物質を意味する。一般的に、材料の親水性の特性は、吸湿性、溶解性、又は濡れ性として示され得る。以下、本明細書においては、親水性とは接触角θの関数として特定される濡れ性を意味する。
【0030】
図4によれば、接触角θは、固相、液相、及び気相の間の接触線において、液体−流体界面に対する接線と固体表面に対する接線とで形成される角度である。接触角θを特定するため方法としては様々なものが知られており、例えば、液滴形状分析(DSA)法、ウィルヘルミープレート法、ウォッシュバーン法を用いた粉末接触角測定、及び上面観測法(Top−view distance method)が挙げられる。材料は、接触角θが90°未満である場合、親水性である。
【0031】
好適には、材料1は接触角θが10°未満である。材料1は、接触角θが5°未満であることが好ましい。好適には、部分的に濡れた材料1の接触角θが、乾燥した材料1の接触角θと実質的に等しい。
【0032】
親水性材料としては、天然及び人工的に製造されたものが数多く知られている。天然に採掘される粘土は、親水性材料である。人工親水性材料としては、Nafion(登録商標);コンタクトレンズに用いるPolymeric Sciences社のBiogel(登録商標);押出し又は射出成形してもよい、AdvanSource biomaterials社のHydroThame(登録商標)及びHydroMed(登録商標);並びに、HMOF(Heterometal Organic Frameworks)として知られるものを例とする、金属−有機材料が挙げられる。
【0033】
上記で挙げた親水性材料の多くは、乾燥時にも濡れた時にも親水性の特性を維持する。粘土のような一部の親水性材料は、本質的には可塑的変形が可能であるが、例えば焼成することにより固化することができる。
【0034】
好適には、材料1は透過係数kが10−6m/秒より大きい。透過係数kは、定水位透水試験機を用いた標準試験により算出される。具体的には、透過係数kは、参照標準UNI CEN ISO/TS 17892−11に従って算出される。材料1の透過率は、10−6m/秒より大きく10−4m/秒より小さいことが好ましい。好適には、材料1の透過率はおよそ10−5m/秒である。
【0035】
好適には、液体への浸漬により飽和した材料1のサンプルの重量とこの液体の毛細管上昇により飽和した同じサンプルの重量との比は、少なくとも90%であり、93%であることが好ましい。
【0036】
好適には、所与の体積の材料1において、径が0.3nm〜およそ0.1μmの範囲内である細孔の総体積が少なくとも15%である。好適には、所与の体積の材料1において、径がおよそ0.1μm〜およそ0.3nmの範囲内である細孔の総体積は、細孔の全体積の15%〜40%である。
【0037】
所与の体積の材料1において、径が0.3nm〜140pmの範囲内である細孔の総体積が、細孔の全体積の5%を超えていてもよい。
【0038】
好適には、材料1は固体である。言い換えると、材料1が(脱塩水により)濡れている場合の細孔のサイズ及び相対的分布が、材料が乾燥している場合の細孔のサイズ及び相対的分布に等しい。
【0039】
好適には、材料1は剛性を有しており、互いに重ねることが可能な固形体の製造に用いることができる。
【0040】
本発明の更なる特徴は、以下の実施例により明らかにされるが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
<実施例1>
・材料1の製造方法
材料1は、例えば3Dプリンターを用いて、親水性材料を1層ずつ付与して細孔及び所望の相互接続部を形成する「アディティブ」法により製造してもよい。
【0042】
別途、例えば、アディティブ法又はサブトラクティブ法を含む任意の方法により、必ずしも親水性ではない化合物から必要とされる構造を有する材料を製造して、続いて、ポア及びキャビティの内壁を親水性材料で被覆してもよい。例えば、非親水性材料を液体状態の親水性材料浴中に浸漬して、少なくとも細孔の内壁上に親水性材料を付与し、固化させてもよい。
【0043】
(シリコン及びガラス等の)様々な材料の表面を、高出力で非常に短い時間(フェムト秒のオーダー)レーザーインパルスに曝すことにより、この材料の表面を極度の親水性にする方法も知られている。従って、この技術に基づいて、シリコン及びガラスを例とする非親水性化合物を用いてアディティブ法を行い、各層の付与工程において、上述の技術により材料を処理して、形成したキャビティの内表面の少なくとも一部を高い親水性にすることができる。
【0044】
上述の技術は、特にコストがかかるという欠点を有し、適用するには複雑であり時間が掛かるものである。
【0045】
より安価な技術は「サブトラクションによる」技術であり、これは、親水性材料を出発材料として、「サブトラクティブ」法により、例えば、燃焼又は溶解により所望のキャビティを形成する材料と加熱時の体積の増加により細孔の相互接続を確保する他の材料/気体とを導入することにより、所望の特徴を有する多孔性内部構造を形成することから主として成る。
【0046】
材料1を用いて作製される最終製品を製造するための、特に安価で容易な方法について更に詳細に述べる。とりわけ、天然に既に存在し、親水性である出発材料を用いる場合のサブトラクティブ法について以下に述べる。
【0047】
好適には、出発材料が粘土質の性質を有する材料に由来する、言い換えると、材料1は、レンガの製造に通常用いられる、採石した粘土質材料である。一般に、天然の状態では、出発材料は、焼成後、気孔率が約25%であり、比重がおよそ2.4g/cmである非常に緻密な物体を与える。
【0048】
好適には、出発材料は親水性であり、オーブンで加熱すると固化する。
【0049】
好適には、出発材料は:
サイズが1/256mmよりも小さい微粒をその中に含み、径が数nmである細孔を有する、粘土(例えば、フィロシリケート類);
径がおよそ1/16mm〜およそ1/256mmの範囲内である粒子を含む、ローム;及び
径がおよそ2mm〜およそ1/16mmの範囲内である粒子を含む、砂、
等の天然の既知の成分を含んでいる。
【0050】
好適には、出発材料は、重量基準で:
およそ30%〜50%の粘土;
最大およそ35%の砂;
最大およそ35%のローム、
を含んでいる。
【0051】
好適には、出発材料のローム及び砂は、焼成の過程で変化せずに残存するため、材料1に多孔性構造を部分的に作り出すことができる。
【0052】
好適には、出発材料は、主として、炭酸カルシウムの重量パーセントが15%未満であるシリケート材料である。
【0053】
材料1の製造方法は:
出発材料を提供する工程;
出発材料を粉砕して、出発粉末を得る工程;
前記出発粉末を、液体、顆粒、とりわけ、燃焼することができる及び/又は気相に変化することができる顆粒、酸化性成分、及び所望により粘土と混合することにより、原材料の混合物を形成する工程;
前記原材料の混合物を乾燥する工程;並びに
前記原材料を焼成して、顆粒の燃焼及び/又は気相への変化を可能とし、所望により材料1からなる最終製品を得る工程、
を含む。
【0054】
前記方法は、原材料の混合物を成形して、特定の形状を有する未処理品を得る工程を含んでいてもよい。成形工程が存在する場合、成形工程は原材料の混合物を形成する工程の後、乾燥工程の前に行う。
【0055】
前記方法は、原材料を焼成する工程の後に、材料1を冷却する工程を含んでいてもよい。
【0056】
出発材料を提供する工程において、後者を分析するが、とりわけ、粘土の重量パーセントを特定する。
【0057】
粉砕する工程において、出発材料を、砥石の使用を例とするレンガ製造において知られる技術により破砕して、径が1ミリメートルより小さい微粒を含む出発粉末を得る。出発粉末の微粒のサイズは、順序だったサイズの開口部を有するふるい群を用いて測定する。
【0058】
好適には、混合物を形成する工程は:
出発粉末を、顆粒、とりわけ、燃焼することができる及び/又は気相に変化することができる顆粒、酸化性成分、及び所望により粘土と混合することにより、顆粒配合物を形成するサブ工程;並びに
前記顆粒配合物を液体と混合して、原材料の混合物を得るサブ工程、
を含む。
【0059】
顆粒配合物は原材料の混合物の固体分を構成するものであり、以下、混合物の「固体分」との表現は、出発粉末、顆粒、及び固体状態のあらゆる酸化性成分の重量の合計を意味する。固体分の1又は複数の成分を液体とただちに混合して、固体分以外の成分を、混合物が完成するまで順次添加することにより、材料の混合物を形成してもよい。
【0060】
顆粒配合物を形成するサブ工程において、出発粉末の重量パーセントは、顆粒配合物の総重量に対しておよそ40%〜およそ80%である。好適には、出発粉末の重量パーセントは、固体分の総重量、即ち、顆粒配合物の総重量に対して、60%〜70%である。
【0061】
顆粒配合物を形成するサブ工程において、出発粉末に、材料1の内部に所望のサイズを有する更なる細孔をサブトラクションにより形成可能な顆粒を添加する。顆粒の種類、サイズ、及び量は、生じさせる更なる細孔のサイズ及び量、並びに所望の空隙に応じて選択する。
【0062】
好適には、顆粒は、ミリメートルからミクロンの範囲内にわたるスペクトル帯をカバーする更なる細孔を、材料1の内部に形成可能である。更なる細孔は、おが屑顆粒の燃焼を行う焼成工程において形成される。
【0063】
顆粒は、おが屑粒子、又は木粉若しくは他の既知の可燃性材料の粒子であってもよい。おが屑又は木粉としては市販のものを容易に入手可能であり、一般的に、粒子サイズがmmからμmの範囲内であり、希望に応じてさらに小さいサイズのものも見つけることができる。
【0064】
あるいは、例えば、塩化アンモニウム又は硝酸アンモニウム等の特定の温度で気相に変化する材料で顆粒を形成して、所望の更なる細孔を得てもよい。
【0065】
明示されていない限り、本明細書において、顆粒のナノ粒子の平均径はTEM(Transmission Electron Microscope)により測定する。より正確には、平均径は、(ランダムに採取した)100個の粒子の最大サイズを測定して、その平均を取ることにより算出する。具体的には、JEOL 3010−UHR装置を用いる(加速電圧:300kV;フィラメント LaB)。
【0066】
好適には、顆粒配合物を形成するサブ工程において、粒子サイズが0.1mm〜0.1μmの範囲内である顆粒分を、固体分の総重量又は顆粒配合物の総重量に対しておよそ10%〜およそ40%の範囲内の割合で出発粉末に添加する。より具体的に挙げれば、顆粒配合物を形成するサブ工程において、粒子サイズが0.1mm〜0.1μmの範囲内である顆粒分を、固体分の総重量又は顆粒配合物の総重量に対して20%〜25%の範囲内の割合で出発粉末に添加する。
【0067】
好適には、顆粒配合物を形成するサブ工程の過程において、粒子サイズが0.1μm〜1nmの範囲内である顆粒分を、固体分の総重量又は顆粒配合物の総重量に対して5%〜20%の範囲内の重量パーセントで出発粉末に添加する。より具体的に挙げれば、顆粒配合物を形成するサブ工程の過程において、粒子サイズが0.1μm〜1nmの範囲内である顆粒分を、固体分の総重量又は顆粒配合物の総重量に対して8%〜15%の範囲内の重量パーセントで出発粉末に添加する。
【0068】
顆粒配合物混合物を形成するサブ工程において、所定の温度に達すると原材料の混合物の体積を増加させることができる及び/又は燃焼して酸素を生成することができる酸化性成分を、出発粉末に添加する。
【0069】
好適には、焼成工程前及び焼成工程中においては材料が収縮して更なる細孔が閉塞してしまう傾向があるのに反して、酸化性成分は更なる細孔を開口状態に維持可能な酸素を燃焼中に生成する。より具体的に挙げれば、酸化性成分は、続く成形、乾燥、及び焼成の工程において、原材料の内部から気体を排出して、空隙及び更なる細孔を開口状態に維持可能であり、これにより細孔と空隙との相互接続が確保される。酸化性成分は、材料1の細孔を相互接続させることもできる。例えば、酸化性成分は、過酸化水素及び過ホウ酸ナトリウムである。
【0070】
好適には、顆粒配合物を形成する工程において、過ホウ酸ナトリウムを、固体分の総重量又は顆粒配合物の総重量に対して0.1%〜1%の範囲内の重量パーセントで出発粉末に添加する。過ホウ酸ナトリウムは、混合サブ工程において混合物を膨張させることができる。過ホウ酸ナトリウムは、焼成の過程で酸素を放出して、細孔を開口状態に維持する。
【0071】
顆粒配合物を形成するサブ工程において、粘土の重量パーセントは材料1の用途に応じて変化させてもよい。
【0072】
材料1の粘土の重量パーセントは、顆粒配合物を形成するサブ工程において、粉末カオリン(カオリナイト)及び/又は粉末ベントナイトを例とする粘土微粒を出発粉末に添加することにより、出発材料における粘土の割合に比べて増加させてもよい。粘土の割合が大きくなると、材料1の堅固性が上がり、材料1の剛性が上がり、例えば、積層可能な製品の製造に用いることができるようになる。
【0073】
例えば、材料1を用いてレンガを製造する場合、顆粒配合物を形成するサブ工程において、粉末カオリン(カオリナイト)及び/又は粉末ベントナイトを例とする粘土微粒を、顆粒配合物の総重量に対しておよそ2%〜およそ10%の範囲内の割合で出発粉末に添加することが好ましい。この方法により、材料1が最大およそ50重量%の粘土を含むようにすることができる。
【0074】
これに関して、出発顆粒配合物を形成するサブ工程において粘土微粒を添加しない場合、材料1は、市販されている採石された粘土質材料を用いている場合、一般的にはおよそ28重量%の粘土を含む。
【0075】
混合サブ工程において、顆粒配合物に液体を添加して原材料の混合物を得る。好適には、前記液体は、およそ50重量%の水及びおよそ50重量%の過酸化水素を含む、120体積分の混合物である。好ましくは、ポケット針入度計試験により測定される原材料の混合物の密度が0.1kg/cmになるまで、前記液体を添加する。
【0076】
特定の形状を有する最終製品を得ることを望む場合、混合物を形成する工程の後に成形する工程を行ってもよく、この工程において、混合物を既知の技術により成形して所望の形状を有する原製品を得る。例えば、レンガを製造するために、原材料の混合物を、直方体のキャビティを有する金型内部に挿入してプレスする。成形工程において、一般的に、原材料の混合物に2〜5kg/cmの範囲内の圧力をかける。
【0077】
乾燥工程において、全体において収縮に差異が生じて、この結果破損してしまうという問題を回避するために、原材料は周辺温度で乾燥する。焼成前に、原材料を可能な限り十分に且つ可能な限りゆっくり乾燥するが(乾燥により不均一な収縮が起こり、これにより破損する可能性がある)、この理由は、非残留性の水分(non−residual quantity of water)が内部に残っている場合、原材料の焼成により原材料内部で液体の「激しい」蒸発が起こり、これにより原材料内部にクラックが生じるためである。内部部分と比較して表面部分の乾燥が急速である場合にも、破損する可能性がある。したがって、乾燥は実質的に周辺温度で行ってもよい。時間を短縮するために、原材料の内部に形成することが有用な場合があり、そのような孔形成は、最終製品の実際の用途によっては、例えば、冷却システムに用いられる最終製品において有用となる。
【0078】
好適には、乾燥工程において、既知の方法により、湿度が次第に低下して温度が次第に上昇する環境に原材料を曝す。乾燥工程は、典型的には1ヶ月〜2ヶ月継続してよく、原材料が硬くなって接触変形(tactile deformations)しなくなって時点で終了する。好適には、乾燥工程の終了時に、ポケット針入度計試験により測定される原材料の密度が5kg/cmのオーダーである。
【0079】
焼成工程において、細孔の所望のサイズ及び細孔の相互接続を維持できるように原材料を固化させる。
【0080】
焼成工程において、原材料を16時間のオーダーの焼成サイクルで処理する。
【0081】
焼成工程は:
A)前記原材料を周辺温度〜200℃の範囲内の温度で4時間焼成して、前記乾燥した原材料中に残存している液体を除去するサブ工程、ここで、とりわけ、前記温度は周辺温度から200℃まで上昇させてもよく、温度上昇はたとえ非直線的なものであっても構わない;
B)前記原材料を200℃〜500℃の範囲内の温度で4時間焼成して、前記原材料の混合物に添加した顆粒の燃焼及び/又は気相への変化を可能とするサブ工程、ここで、とりわけ、前記温度は200℃から500℃まで上昇させてもよく、温度上昇はたとえ非直線的なものであっても構わない;
C)前記原材料を500℃〜800℃の範囲内の温度で4時間焼成して、前記原材料の混合物中に存在する粘土の鉱物組成の変化を誘発して、硬化及び/又はセメンテーションを引き起こすサブ工程、ここで、とりわけ、前記温度は500℃から800℃まで上昇させてもよく、温度上昇はたとえ非直線的なものであっても構わない;
D)前記原材料を800℃〜1000℃の範囲内の温度で4時間焼成して、材料(1)の硬化及び/又はセメンテーションを完了させるサブ工程、ここで、とりわけ、前記温度は800℃から1000℃まで上昇させてもよく、温度上昇はたとえ非直線的なものであっても構わない、
を含む。
【0082】
上記で挙げた焼成サブ工程はすべて、出発材料の親水性を低下させないもの、又は僅かしか低下させないもの、又は上昇させるものであるため、細孔の内壁が所望の構造を有し且つ親水性を有する材料1が得られる。
【0083】
サブ工程A及びBにおいて、過ホウ酸ナトリウム還元プロセスが起こる場合に酸素が放出される。
【0084】
サブ工程Aにおいて、前記原材料は、残存している液体を乾燥させるものの原材料のセメンテーションは回避されるような温度で処理する。
【0085】
続くサブ工程では、より高い順々の温度群で原材料を処理するが、この温度は、サブトラクションにより所望の細孔の少なくとも一部を形成するために添加した種々の化合物を燃焼させる温度ではあるものの、原材料を固化させてしまうほど高い温度ではない。これらのサブ工程の各々において、前記原材料中に依然として含有される前記種々の液体を燃焼させて、これと同時に気体を放出させることにより、細孔を開口状態に維持して、細孔間の相互接続チャネルを作り出す。
【0086】
その後、上記で挙げた効果が継続し得ることに加えて、存在する粘土の鉱物組成の変化が誘発され、これにより硬化及び固化が起こるようなより高い温度へとシフトすることが可能である。
【0087】
最終的に、固化を完了させて材料1を完成させる温度に達する。
【0088】
前記のより高い温度に達するとき、原材料の粘土は鉱物組成が変化する。800〜1000°の温度で行う最後の焼成サブ工程では、存在する炭酸カルシウムが全て酸化カルシウムに変換される。炭酸カルシウムの重量パーセントが15%未満である出発材料を選択すると、材料1の内部にクレーターを発生させたり該クレーターを破壊したりする傾向がある酸化カルシウム(専門用語では石灰塊(in jargon lime lump))の形成が低減される。
【0089】
焼成の終了時、材料1を冷却して、所望により、所望の特性を有する最終製品を得る。
【0090】
出発材料及び材料1の鉱物学的な相違を評価する目的で、上述の方法に従って、出発物質及び材料1の両方に関して一連の回折測定試験を行った。この試験は、Siemens−Bruker D5005、光学系 Bragg−Brentano θ−2θにより、回折計を用いて行った。
【0091】
得られた結果は、出発材料が主に以下の鉱物を含むことを示した:石英、カルサイト、ドロマイト、アルバイト、並びにモンモリロナイト、カオリナイト、及びイライト等の粘土。
【0092】
前述の方法に従って製造した材料1は、石英及びアルバイトがそのまま残っている及び/又は増加している一方で、カルサイト、ドロマイト、及びイライトは減少している。さらに、材料1では、カオリナイト及びモンモリロナイトが存在しない一方で、いくつかの小さなピークが記録されており、これらの帰属は困難であるものの、恐らく長石及び/又は角閃岩鉱物に関連していると考えられる。
【0093】
<実施例2>
・実施例1において得られた材料1の気孔率の測定
好適には、材料1は、1/10ミリメートル〜1/100ミクロンまで変動する、かなり広い気孔率スペクトルを有する。とりわけ、材料1はナノメートルサイズの細孔も有する。
【0094】
図5は、材料1の気孔率スペクトルを近似的に表したグラフである。図5に示される内容から考えると、材料1は、径の関数として、占有空間あたりの細孔の実質的に直線的な分布を有する。好適には、材料1は:
全気孔率が50%〜80%の範囲内、とりわけ、60%〜70%の範囲内であり;
細孔の総体積のおよそ28%が、0.2mm〜6.25μmの範囲内の径を有する細孔で占められており;
細孔の総体積のおよそ40.8%が、6.25μm〜0.1μmの範囲内の径を有する細孔で占められており;
細孔の総体積のおよそ22.5%が、0.1μm〜0.3nmの範囲内の径を有する細孔で占められており;
細孔の総体積のおよそ8.7%が、0.3nmよりも小さい径、とりわけ、0.3nm〜140pm(ヘリウム分子のサイズ)の範囲内の径を有する細孔で占められている。
【0095】
上記で示した材料1の細孔に関するデータは、以下の3つの方法を用い、互いに組み合わせることにより得られたものである:
ヘリウムピクノメータ;
水銀ピクノメータ;
水による実験的試験。
【0096】
3つの異なる方法を用いることにより、実際のサンプルに関して得られた結果について最良の近似が可能となり、実際に、異なる飽和手段を用いることは、サンプルを飽和させるのに用いる液体に応じて、特定のサイズ範囲内の細孔の割合をより高い精度で調べることが可能であることを意味する。
【0097】
具体的には、ヘリウムが材料のより小さいサイズの細孔(ピコメートルのオーダー)にも浸透することができることから、ヘリウムピクノメータを用いて行う試験により材料1の全気孔率を得た。
【0098】
以下で詳細に示す方法に従い、水を用いる実験的試験を行うことにより、材料の外部への重力水の浸出が防止されるサイズを有する細孔の割合を特定した。
【0099】
水銀ピクノメータを用いる試験を行うことにより、サイズが6.25μm〜0.1μmの範囲内である細孔の割合を特定した。
【0100】
水銀ピクノメータを用いる試験は、径が0.1μmよりも小さい細孔に対しては信頼性がないとされており、これは、圧力をかけた水銀が細孔及び相互接続チャネルを破壊する傾向にあるためである。
【0101】
6.25μmというサイズは、これ未満では重力の影響下にある水が浸出しない平均サイズであり、実質的に、ローム〜粘土の中の導路のサイズに相当する。
【0102】
ヘリウムピクノメータを用いる試験は、±0.01%の精度で、AccuPyc II 1340(Micrometrics Company社)により行った。2つのサンプルについて試験し、材料の2つのサンプルについて得られたパラメータ及び結果を以下の2つの表に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
ヘリウムピクノメータを用いる実験的試験から、材料1は有効気孔率がおよそ65%であることが明らかとなった。
【0106】
0.3nm(即ち、水分子のサイズ)以下の径を有する細孔の範囲を調べるために、材料1のサンプル3に対して実験的試験を行った。さらに、この実験的試験により、材料1内部における液体の毛細管上昇の速度を確認することもできる。
【0107】
実験的試験は、以下の工程を含む:
乾燥した材料1のサンプルを秤量すること P
前記材料1のサンプルを完全に水中に浸漬すること;
前記材料1のサンプルを、少なくとも24時間浸漬したままにすること;
前記材料1のサンプルを水から取り出して、秤量して、浸漬により飽和した前記サンプルの重量を得ること(PSI);
重量が48時間変化しなくなる(且つ、乾燥したサンプルと同等の重量になる)まで、繰り返し、前記サンプルを放置して完全に乾燥させて、秤量すること;
外部温度T=24℃及び相対周辺湿度U=54%で、前記サンプルの底から1cmを溜めた水に浸漬すること;
サーモカメラを用いて、前記サンプルの外表面における低温サーマルフロント(cold thermal front)の上昇を特定すること(このサーマルフロントの上昇は、実質的に、前記サンプル内部の毛細管現象による液体の上昇に相当する);
前記サンプルを、飽和するまで溜めた水に浸漬したままにすること;
前記サンプルを、溜めた水から取り出すこと;
前記サンプルを秤量して、毛細管現象により飽和した前記サンプルの重量を特定すること(PSC)。
【0108】
【表3】
【0109】
図7は、サーモカメラにより特定した、サンプル内部の液体の毛細管上昇速度を示すグラフである。図7から、およそ13分間の間に、サンプルが毛細管現象により実質的に完全に水で飽和したことが分かる(用いたサンプルの高さに相当する、9cmの高さ)。浸漬により飽和したサンプルの重量と(およそ13分後の)毛細管現象により飽和したサンプルの重量との比は、93%であることが分かる。
【0110】
したがって、本発明に係る材料1は、短時間で毛細管現象により実質的に完全に飽和し得る。
【0111】
この試験により、互いに連結している細孔の相互接続を確認することもでき、このような相互接続無しにはサンプルの飽和は不可能であろう。
【0112】
この試験により、材料内部の水の毛細管上昇の速度が0.1mm/秒〜1mm/秒の範囲内であることも確認することができる。
【0113】
図8−1、図8−2、図8−3、図9−1、図9−2、図9−3、図10−1、図10−2、及び図10−3は、水銀ピクノメータを用いたISO 15901−1標準に従う3つの標準試験の結果を示す。3つの試験すべてにおいて、条件は下記の通りとしている。
【0114】
【表4】
【0115】
図8−1、図8−2、及び図8−3は、下記の初期パラメータを用いる試験を行うことにより得られた結果を示すグラフである。
【0116】
【表5】
【0117】
図9−1、図9−2、及び図9−3は、下記の初期パラメータを用いる試験を行うことにより得られた結果を示すグラフである。
【0118】
【表6】
【0119】
図10−1、図10−2、及び図10−3は、下記の初期パラメータを用いる試験を行うことにより得られた結果を示すグラフである。
【0120】
【表7】
【0121】
水銀ピクノメータを用いて測定した気孔率に関する図5に示されるパーセント値は、上記で示した3つの異なる試験により得られた値の平均である。
【0122】
水銀ピクノメータ試験により得られた実験値が、0.1μmまでの細孔径範囲内において信頼性があると見なされることを思い起こすべきであり、実際に、この値を下回る場合、圧力をかけた水銀によりサンプルの細孔及び最小の相互接続流路が破壊される。
【0123】
上記材料1は、気孔率が50%〜80%の範囲内である。好適には、材料1の気孔率は60%〜70%の範囲内であり、この場合、細孔の総体積の少なくとも70%の体積が、6.25μmよりも小さい径を有する細孔で占められている。
【0124】
とりわけ、細孔の総体積の24%〜32%が、0.8mm〜6.25μmの範囲内の径を有する細孔で占められている。好適には、細孔の総体積のおよそ28%が、0.8mm〜6.25μmの範囲内の径を有する細孔で占められている。
【0125】
細孔の総体積の36%〜44%が、6.25μm〜0.1μmの範囲内の径を有する細孔で占められていることが好ましい。好適には、細孔の総体積のおよそ40%が、6.25μm〜0.1μmの範囲内の径を有する細孔で占められている。
【0126】
細孔の総体積の15%〜34%が、0.1μm〜0.3nmの範囲内の径を有する細孔で占められている。とりわけ、細孔の総体積のおよそ22%が、0.1μm〜0.3nmの範囲内の径を有する細孔で占められている。
【0127】
細孔の総体積の6%〜10%が、0.3nmよりも小さい径を有する細孔で占められている。好適には、細孔の総体積のおよそ8%が、0.3nmよりも小さい径を有する細孔で占められている。
【0128】
<実施例3>
・実施例1において得られた材料の表面濡れ性
図11−1〜図11−7は、材料1の外表面による水滴2の経時吸収を、ストロボカメラにより得られた一連の画像で示したものである。
【0129】
具体的には、材料1上に水滴2が重力により落下するようにしており、径3.13mm、質量0.13g、及び体積128.64mmの水滴を放出可能な滴下装置3により、水滴2を材料1の表面から8.9mmの位置で発生させる。一連の図11−1〜図11−7から、水滴2が、0.5秒間で材料1により完全に吸収されていることが分かる。
【0130】
<実施例4>
・実施例1において得られた材料のサンプルに対するリトマス試験
図12は、pHを特定するためにリトマス紙が上に置かれている、水で飽和した材料1の上面図である。図12から、これらのリトマス紙が、材料1より吸収した水の解離を示すパッチを示していることが分かる。
【0131】
したがって、材料1は、液体、とりわけ水を解離可能であり(横方向のpHの変動)、材料1内部において電圧の変動ΔVを発生可能であることが分かる。
【0132】
<実施例5>
・実施例1において得られた材料は、液体による飽和時に重力の影響がないこと
図13−1〜図13−4は、実質的に中央に水を導入したサンプル15を示す。図13−2〜図13−4は、サーモカメラにより得られた画像であり、それぞれ、t=t0、t=t1、及びt=t2の時点でのサンプル15を示しており、t0<t1<t2である。図13−1〜図13−4に示すように、水は、支持表面に対して実質的に垂直な壁の中央領域でサンプル12と接触させられる。図13−2〜図13−4において、サンプル15内部の水のフロント(water front)が、実質的に均一に半径方向に広がっていることが分かる。実際に、材料1のある特定の気孔率を考えた場合、材料1により吸収される水は、実質的に重力に影響されるものではなく、言い換えると、水は、実質的に均一に半径方向に上向きにも広がる。
【0133】
<実施例6>
・実施例1において得られたサンプルの内部における減圧部の発生
更なる試験、即ち、外部温度23.5℃及び相対湿度50%で、真空計を材料1の円筒形状サンプル(図示せず)の内部に配置する試験により、サンプルの内部に少なくとも40mbarの減圧部が生じていることが分かった。言い換えると、液体で濡れした材料1の内部に、外部からの液体を更に吸収することが可能な減圧部が生じている。
【0134】
・材料1の利点
Gerald H.Pollackは、”The Fourth Phase of Water,Beyond Solid Liquid Vapor”において、ある条件下で、水は、通常の液体水とは異なる特性を有する「液晶」状態になると教示している。具体的には、液体水が親水性表面(例えば、Nafion(登録商標))と接触して、外部放射線(例えば、光、熱、赤外線)に曝されると、親水性表面から、負電荷(OH)及びより稀な場合には正電荷(H)を有する水の層が形成するが、これは、通常の液体水とは異なる特性を有しており、即ち、「液晶」水の層である。残りの水は、反対の電荷を有する。
【0135】
Pollackの理論によれば、細孔又は親水性毛細管構造中に閉じ込められた液体水の場合、水の「液晶」状態の領域が親水性の壁に沿って生じることがある。この理論によれば、「結晶性液体」が、細孔/毛細管に沿った重力に逆らう水の上昇に寄与しているはずであり、少なくとも部分的にこの上昇の説明がつく。
【0136】
Pollackは、通常の水の液体状態とは異なる水の「液晶」状態の存在を、「液晶」水と液体水とで異なる一連の特性を測定することにより証明しており、この一連の特性としては少なくとも下記が挙げられる:
異なる光の吸収曲線(一般的により高く、250〜300nmの範囲内に更により高い吸収ピーク);
「ミクロスフィア」等の粒子を自然に排除する「液晶」水の傾向;
負電荷を、稀な場合には正電荷を帯びて、水の液晶形態に変換していない部分に反対の電荷を発生させる「液晶」水の傾向;
通常の液体水よりも大きい「液晶」水の赤外放射線吸収;
通常の液体水よりも高い粘度。
【0137】
さらに、上記通常の水から「液晶」水への変化プロセスは、液相から気相への変化の準備段階であるとの仮説も立てられている。この通常の水から「液晶」水への変化プロセスは、周辺環境からのエネルギーの吸収、ひいては、水そのもの及び/又は親水性材料を例とする水と接触している材料からのエネルギーの吸収に伴い発生すると考えられる。このエネルギーは、赤外線の光度エネルギーであってもよく、熱放射バンドの光度エネルギーであってもよい。
【0138】
現行技術では、上記原理を利用した、液体、とりわけ水を最大限蒸発させることができ、及び/又は水をEZ−及びH+に最大限解離させることができ、及び/又は水を通常の液体状態から「液晶」状態に最大限変換することができる、実用的な意味での有効な材料は存在しない。
【0139】
例えば、Pollackが行った実験では、用いられた親水性材料のストリップ又はチューブのような部材の表面積が、部材の全体積に対して限られているため、「液晶」水の層はごく僅かしか形成しない。さらに、この限られた親水性表面には、所望の現象を引き起こすために、Nafionのような非常に高価な高親水性材料が用いられている。したがって、これらの部材は、この現象を最大限引き起こして水の解離及び/又は水の蒸発を最大限行うのに適していない。さらに、これらの材料は、バルク製品中に用いるのにも適していない。
【0140】
Pollackが用いた部材とは異なり、材料1は、250cmの体積に対して何百mもの細孔の内表面を有する。さらに、細孔の表面が親水性材料からなる又は親水性材料で被覆されているため、材料1と接触した液体、とりわけ水、の解離/分極が最大限行われ、言い換えると、「液晶」状態への変化が最大限行われ、周辺の熱が解離/分極の現象に実質的に用いられるため、材料1の冷却が促進される。
【0141】
このことは、とりわけ、親水性内表面を有し、径が0.1μm〜およそ0.3nmの範囲内である細孔により可能であり、これは、これらの細孔のサイズが水分子を通すのに適した最小のサイズであるためである(水分子は、およそ0.3nmの径を有するはずである)。したがって、これらのサイズを有する細孔により、体積は同じであっても、水との接触面積が最大限大きくなる。一般的に、所与の体積を占める細孔の内表面は、細孔の径が減少するに従って二乗倍されることを思い起こされたい。さらに、細孔が小さいほど、毛細管上昇により、材料1中の液体、とりわけ水の高さが高くなる。したがって、径が0.1μm〜0.3nmである種々の細孔を有する材料1により、拡散及び液体による材料1の迅速な飽和が可能となる。
【0142】
好適には、材料1は、材料1内部で水が極めて高度に拡散することができるように、1/10ミリメートル〜1/100ミクロンの範囲内の均一な細孔分布を有する。好適には、径が大きい細孔の方が、材料1の透過性及び液体の迅速な吸収が可能となる。
【0143】
さらに、材料1では、細孔の相互接続と、より大きいサイズを有する細孔の存在、とりわけ、0.1μm〜0.3nmの範囲内の細孔の存在に影響される、10−6m/秒を超える、好ましくは10−5m/秒を超える透過率と、により、最小細孔中における水の解離及び/又は蒸発の際にも、材料1の内部が乾燥しなくなる。言い換えると、細孔の相互接続と、10−6m/秒を超える、好ましくは10−5m/秒を超える透過率と、により、材料1は、液体源と接触していれば内部が常に濡れた状態に維持され、更に、材料の熱効率が改善する。これにより、材料は、吸収された熱がその内部に導入された場合であっても、熱の吸収を最大化することができる。透過率及び/又は相互接続が異なる場合、とりわけ、より小さい場合は、液体の蒸発/解離の現象が大きく制限されるため材料1の効率が低下する。
【0144】
さらに、Pollackによる既知の実験では、液体水が「液晶」状態の水に変化することが示されているだけであり、水の蒸発及び/又は水の蒸発/解離に応用して、技術的な意味での効果を得ること及び/又は水素の製造を促進することにまでは踏み込んでいない。さらに、Pollackによる既知の実験には、Nafionのような通常非常に高価な材料が使用されている。
【0145】
これまでに述べてきたことによれば、細孔の数、分布、及び相互接続の全てにより、およそ250cmを例とする小サイズのサンプルにおいて数百mもの蒸発(及び親水性接触)表面を構築すること、及びこれと同時に液体を吸収する能力を高めることが可能であり;とりわけ、径が0.1μm〜0.3nmの範囲内である細孔により、材料1は、特に多量の熱が材料内部にかかった場合でも、蒸発により乾燥することがないため、本発明に係る材料1は冷却システムに用いるのに特に適していることが確認された。
【0146】
好適には、本発明に係る材料1は、液体(特に、水)で濡れた場合、材料1の温度を、外部環境及び材料1を飽和した液体の両方に比べて数度(通常、周辺空気の湿球温度のオーダーの温度まで)自然に低下させることができる。
【0147】
材料1は、その温度を、外部環境よりも低く安定して維持することができるものである。言い換えると、材料1は、一方の端部において液体で湿潤され続ける場合、常に液体で飽和した状態を維持することができ、達成された外部環境との温度差及び液体源との温度差を、時間が経過しても安定して維持することができる。
【0148】
細孔が小さいほど、毛細管上昇により、材料中の液体の高さが高くなる。したがって、0.1μm〜0.3nmの範囲内の径を有するあらゆる細孔を有する材料1は、拡散及び液体による迅速な飽和が可能となる。
【0149】
さらに、材料1の細孔が小さいほど、内部で液体が凍結する温度が低くなる。したがって、材料1により、摂氏数十度 ℃のオーダーで、材料1内部に含有される液体、とりわけ水の凍結温度を低下させることが可能である。言い換えると、材料1は、低温の環境で用いることができ、0℃未満の環境ですら用いることができる。
【0150】
[材料1の考え得る用途]
好適には、本発明に係る材料1は以下の用途に適している。
【0151】
[冷却のための使用]
図14は、材料1を用いて作製した複数のモジュール22(詳細を図16に示す)を備えた冷却ユニット21(詳細を図15に示す)を備える冷却システム20を模式的に示すものである。材料1は剛性を有しており、特に、材料1の剛性は、既に詳細に述べたように、原材料の混合物の形成に用いる粘土の重量パーセントに応じて変更することができる。このため、モジュール22を重ね方により、重ね合わせ可能な独立したユニットを作製して、複雑さの程度がより高い又はより低い異なる形態の構造を作り出すことが可能である。
【0152】
特に、図15によれば、冷却ユニット21は:液体流又は脱湿気体流(この例では、脱湿空気流F1)用の、これらの水蒸気含有量を増加させることのない、入口部23;空気流F1用の出口部24;本体25;冷却する気体流又は液体流F2用の入口部26;及び、冷却した気体流又は液体流F2用の出口部27を備える。
【0153】
本体25は、長さ方向の軸線Lを有する。本体25は、複数のモジュール22で形成される。本体25は、空気流F1が本体25の長さ方向に沿って流れるように、入口部23と出口部24との間に挿入される。本体25は、空気流F2が軸線Lを横切る方向に本体25を通過するように、入口部26と出口部27との間に挿入される。
【0154】
本体25は、モジュール22により形成され、互いに隣り合うように配置される複数の壁部Pを備える。図16によれば、壁部Pのモジュール22が互いに重ねられている。
【0155】
各モジュール22は、1又は複数の導管28を備え、導管28の各々は、気体流又は液体流F2が横切るように構成されている。各導管28は、熱交換を可能とし、同時にモジュール22の材料1と気体流又は液体流F2との間の湿気の交換を防止するように、内側が被覆されている。好適には、各導管28は金属膜又は塗料で被覆されている。より具体的に挙げれば、各導管28は、防水性熱伝導性材料、例えば銅で被覆されている。
【0156】
各モジュール22は、1又は複数のチャネル29を更に有する。導管28及びチャネル29は互いに交差していない。
【0157】
図16に示されるように、壁部Pのモジュール22は互いに同一であり、隣接するモジュール(例えば、22a及び22b)の導管28が互いに連結するようになっている。壁部Pのモジュール22は互いに同一であり、壁部Pの隣接するモジュール(例えば、22a及び22c)のチャネル29が互いに連結するようになっている。
【0158】
図16に示されるように、壁部Pのモジュール22は、気体流又は液体流F2が導管28の内部を流れ、空気流F1が外表面と接触しながらモジュール22の外部を流れるように形成する。特に、空気流F1は、2つの隣接する壁部Pの間にある隙間Iを流れる。
【0159】
好適には、冷却ユニット21は、チャネル29の内部に挿入されるスポンジ30を備える。スポンジ30は、一般的にスポンジクロスとの用語で示されるタイプのものであり、コットン−セルロースからなる。
【0160】
使用時、スポンジ30は、図示していないが、液体源、特に水により濡れた状態に維持される。この液体には、材料1の細孔を閉塞させ得る粒子が混入していてはならない。モジュール22の材料1は、吸引によりスポンジ30から液体を吸収して、モジュール22全体及び壁部P全体が液体で飽和する。スポンジ30の使用は、モジュール22がクラックを有する又はチャネル22の近傍で部分的に破壊した場合に、液体の意図しない漏出が起きず、液体がスポンジ30中に維持されることから、特に好適である。さらに、材料1が破損しても、スポンジ30は液体を材料1の破損部に移動させない。言い換えると、スポンジ30の使用により、材料1は、スポンジ30からの吸引のみにより液体を吸収するため、冷却ユニット内部を自由液体が循環することが回避される。
【0161】
気体流又は液体流F2は、導管28中及び壁部Pを通って運ばれ、モジュール1の材料1と熱交換する。既に述べたように、モジュール22の材料1が液体と接触することにより、周辺にある空気F1の湿球温度まで冷却される。したがって、気体流又は液体流F2が空気流である場合、空気流F2は、導管28を通る際に、材料1と熱交換して冷却されるものの湿気は吸収せず、ひいては、空気流F2は、導管28の壁部が防水性熱伝導性材料で覆われているため更に湿気を取り込むことがない。
【0162】
既に述べたように、これは、データセンター内部を例とする、湿気の発生を防止する必要がある環境中で用いられる空気流F2を冷却するのに好適である。
【0163】
好適には、空気流F1を壁部P及びモジュール22の外部の間にある隙間Iに流して、モジュール22の内部及び/又はモジュール22の表面に沿った液体の蒸発により、本体25内部で発生した湿気を除去する。空気流F1は、その後、外部へと運ばれる。
【0164】
低コスト及び冷却ユニット21の全体サイズを考えた場合、多大なエネルギー供給を必要とするカルノーサイクルに基づいたユニットを用いずに、2つ以上の冷却ユニット21をカスケード状に用いて、水の蒸発のみにより外部空気の湿球温度未満にまで到達させてもよい。例えば、冷却ユニット21を用いて、内部空気ではなく外部空気を、その水分含有量を増加することなく、外部空気の湿球温度付近の温度まで冷却してもよい。次に、この空気流を、外部空気の代わりにカスケードにおける次の冷却ユニット21に導入してもよく、水の蒸発により温度をさらに低下させて、これにより、第三の空気流を外部空気の湿球温度未満としてもよい。更なる冷却ユニット21をカスケード状に追加することにより、更なる改善が可能となることがある。理論的には、流入空気を、種々の冷却ユニット21から排出される空気で前処理することにより効率を改善することも可能であるはずだが、この場合、空気−空気交換器が必要であろう。
【0165】
冷却ユニット21は、冷却システム20を、それ単独で多大なエネルギーを必要とするカルノーサイクルに基づく従来のシステムと共に用いる場合にも好適に用いることができる。例えば、図14には冷却ユニット21の特定の用途を示しており、ここでは、データセンターを冷却するための空調機31に送られる空気流F1を予備冷却するために冷却ユニット21が用いられている。
【0166】
図14の回路は、冷却ユニット21内部の空気流F1を吸収して運び、本体25の内部で発生した湿気を除去する。
【0167】
水に浸漬したスポンジのように、蒸発表面を直接覆う空気流を用いる断熱系システムを例とする、既知の冷却システムと比較して、冷却システム20は、水の蒸発に起因して空気中の湿気を増加させることなく空気流を冷却するために空気−空気熱交換器を必要とすることなく、又は水を冷却するために空気−水交換器を必要としないという利点がある。さらに、好適には、ある条件下において、冷却システム20は、空気流F2を空気流F1の湿球温度(水の蒸発による通常の冷却システムによって到達し得る最低値)よりも低くするという利点もある。さらに、好適には、空気−空気交換器又は空気−水−空気交換器を必要としないこと及び材料1が安価であることにより、複数の冷却システム20をカスケード状に使用することを実現可能とし、これにより、単一の冷却システム20を用いた場合よりもさらに大きく温度を低下させることができる。
【0168】
既に示したように、材料1は、冷却だけではなく、以下の環境にも好適に用いることができる:液体の吸引;湿気の吸収;「ゼーベック効果」エネルギー電池;水素製造。
【0169】
[水及び太陽/電磁/熱放射線からの水素製造のための使用]
材料1が水と接触して、熱を例とする放射線源に曝された場合、(図12に示されるように)少なくとも材料1の表面上にpHが異なるゾーンが形成して、pHが酸性である領域は水素イオン(H+)が過剰に存在することに起因し、他のpHが塩基性である領域はOH−イオンが過剰に存在するものと考えられる。この現象は、材料1が、吸収され親水性材料と接触している水の少なくとも一部をPollackの理論による「液晶」状態に変化させることに起因しており、材料の少なくとも内部と、熱、更には他のプロセスによる廃熱又は太陽の放射線と、の接触がこれに効果的に作用するという仮説が立てられる。
【0170】
水素イオン(H+)が過剰である水成分を用いることができれば、電子を添加することにより水素(H2)を製造することができる。このプロセスの場合、現在知られているシステムに比べて、必要とされる追加エネルギーを減らすことができる可能性がある。
【0171】
特に、材料1により解離した水を得ることができるため、図12に示されるような細孔の中央部分でpHが7よりも低く、細孔の境界に沿ってpHが7よりも高い場合において、図12に見られるように、水は、材料1の蒸発表面に到達すると、pHが7よりも低い部分とpHが7よりも高い部分とがパッチ状に配置する傾向にある。したがって、材料1を水素製造プロセスの水の前処理に用いて、水素イオン含有量が高いプロセス準備水(process preparation water)を得ることができる。
【0172】
[高エネルギー効率プロセスによる、内部に水が存在する土壌/壁/材料からの水の抽出のための使用]
材料1は、その親水性に起因して、表面を通して自由水を吸収する傾向にあり、材料1自体よりも親水性が低い材料から水を抽出する。抽出され、毛細管現象により上昇し、例えば材料1と同じ程度の親水性を有するスポンジと接触した水は、このスポンジにより除去及び排出することができる。このプロセスは、自然に起こり、外部熱の形態で材料1により吸収されるエネルギー以外のエネルギーを消費しない。これにより、土木工事の前を例とする土壌の乾燥の目的、又は、粘土質土壌からの灌漑及び/若しくは他の目的のための水の抽出の目的のいずれにおいても、例えば粘土質土壌から、低エネルギー消費で水を抽出するシステムの構築が可能となる。このような水の抽出は、現在利用可能な手段では、多大なエネルギー消費を必要とする。
【0173】
[高エネルギー効率プロセスによる、水のろ過及び/又は水溶液の組成改変のための使用]
自由水及び材料1よりも親水性が低い材料中に存在する水のいずれも、毛細管現象により抽出することができ、続いて、この毛細管水を上述のスポンジに透過させて重力水に変換することができる既述のプロセスは、上述の回路により回収した水について抽出した水の化学組成(即ち、最初の水の化学組成)を変化させる。
【0174】
[最終的な考察]
上述の内容から、材料1は、水等の液体を最大限蒸発させることができ、及び/又は水をEZ−(OH−)及びH+に最大限解離させることができるということになり、この場合、この解離は、水の通常の液体状態から「液晶」状態への変化を示している。
【0175】
材料1の特性を利用する冷却システム内部に用いられる材料1は、既知の材料に対して種々の利点をもたらすものであり、これらの利点には、製造が簡素で安価であり、空気−空気又は空気−水熱交換器を必要とせず、経済的にカスケード状に用いることも可能である間接蒸発冷却システム(又は二重空気−空気若しくは空気−水−空気回路)の製造が含まれる。
【0176】
実際に、既知の冷却システムでは、冷却は、固体材料の内部ではなく、水が蒸発する空気に関与する。したがって、上述の冷却ユニット21の内部にある材料1は、熱交換器としての役割も果たすことができる。この方法では、材料1が蒸発部材及び熱交換器の両方として作用するため、空気を、湿度を高めることなく冷却するための別個の空気−空気交換器又は空気−水交換器が必要ではなくなり、したがって、よりコンパクトな、製造がより簡素で安価な間接システムが構築される。
【0177】
更なる利点は、システム中に導入した水の一部しか蒸発せず、残りは回収又は排出される従来の「断熱系」システムとは異なり、材料1は、蒸発する水と実質的に等しい量の水を吸収することである。さらに、水は、空気との直接接触により蒸発(例えば、空気流中に噴霧された水、又は空気流により接触している表面上に付着した水のように)するのではなく、蒸発する水と空気流とが直接接触することなく、材料1の内部で蒸発する。
【0178】
既知の「断熱系」冷却システムと冷却システム20又は材料1を利用する冷却システムとの更なる相違点は、水の蒸発により発生するフリゴリーを主として用いる他のシステムとは異なり、材料1の内部に発生するフリゴリーが、少なくとも主として、水がまだ気相ではない段階から得られることである。
【0179】
また、材料1は、廃熱及び/又は太陽放射線を用いて水素を製造するための水前処理システム内部;周辺環境から材料が吸収するエネルギーに関して、外部エネルギー源を必要とする土壌/壁/材料からの水の抽出のためのシステム;高エネルギー効率プロセスによる水のろ過及び/又は水溶液の組成の改変のためのシステムに、効果的に用いることができる。さらに、材料1は、やはり外部環境からである熱放射線等の放射線の吸収に加えて、エネルギー寄与が低い水の蒸発/解離を必要とし得るプロセスに用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図11-4】
図11-5】
図11-6】
図11-7】
図12
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図13-2】
図13-3】
図13-4】
図14
図15
図16