特許第6861216号(P6861216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィクの特許一覧 ▶ ユニヴェルシテ ドゥ ポワティエの特許一覧 ▶ サントル オスピタリエ ユニヴェルシテル ドゥ ポワティエの特許一覧 ▶ アンセル−アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカルの特許一覧

特許6861216医療手術シミュレータ、及び医療手術シミュレーションの方法
<>
  • 特許6861216-医療手術シミュレータ、及び医療手術シミュレーションの方法 図000002
  • 特許6861216-医療手術シミュレータ、及び医療手術シミュレーションの方法 図000003
  • 特許6861216-医療手術シミュレータ、及び医療手術シミュレーションの方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861216
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】医療手術シミュレータ、及び医療手術シミュレーションの方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/30 20060101AFI20210412BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   G09B23/30
   G09B9/00 Z
【請求項の数】19
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-541507(P2018-541507)
(86)(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公表番号】特表2018-536203(P2018-536203A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】EP2016075819
(87)【国際公開番号】WO2017076717
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2019年9月6日
(31)【優先権主張番号】1560488
(32)【優先日】2015年11月2日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】509025832
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】510256920
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ ポワティエ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE POITIERS
(73)【特許権者】
【識別番号】518154594
【氏名又は名称】サントル オスピタリエ ユニヴェルシテル ドゥ ポワティエ
【氏名又は名称原語表記】CENTRE HOSPITALIER UNIVERSITAIRE DE POITIERS
(73)【特許権者】
【識別番号】518027461
【氏名又は名称】アンセル(アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル)
【氏名又は名称原語表記】INSERM(Institut National de la Sante et de la Recherche Medicale)
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】リシェル,ジャン−ピエール
(72)【発明者】
【氏名】フォール,ジャン−ピエール
(72)【発明者】
【氏名】オリオ,ドニ
(72)【発明者】
【氏名】ブレク,シリル
(72)【発明者】
【氏名】デルペッシュ,ピエール−オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ガザーリー,ダニエル−アイハム
【審査官】 奈良田 新一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06824389(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0186203(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/00,23/28−23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療手術シミュレータであって、
その医療手術シミュレータが、
−心臓血管系回路に血管を形成するように配置された血管形成デバイス(1)、及び/又は
−呼吸系回路を換気するように配置された換気デバイス(2)
を含み、
ここで、前記血管形成デバイス(1)が、
○心臓が心臓血管系回路の一部を形成するように、死体(9)の心臓(92)に前記血管形成デバイス(1)を接続するように配置された接続手段(931,932,933)、○前記心臓血管系回路内に液体を注入するように配置され、更に心臓血管系回路内におけるその液体についての少なくとも1つの注入パラメータを設定するように配置された液体注入システム、
○前記心臓血管系回路内における液体の流れを表す少なくとも1つのパラメータを測定するように配置された液体測定システム(151,152,153,16)
を含み、
前記換気デバイスが、
○肺が前記呼吸系回路の一部を形成するように、死体の肺(941,942)に前記換気デバイスを接続するように配置された接続手段(96)、
○前記呼吸系回路にガスを注入するように配置され、更に呼吸系回路内におけるそのガスの少なくとも1つの注入パラメータを設定するように配置されたガス注入システム、
○前記呼吸系回路内におけるガスの流れを表す少なくとも1つのパラメータを測定するように配置されたガス測定システム(25)
を含み;
前記医療手術シミュレータが、さらに、調節デバイス(3)を備え、
その調節デバイス(3)が、
−少なくとも1つの入力パラメータを読み取り、
−前記液体注入システム及び/又は前記ガス注入システムを介して、少なくとも1つの出力パラメータを少なくとも1つの入力パラメータに応じて設定する
ように配置され、
ここで、前記の少なくとも1つの入力パラメータが、
○前記液体測定システム及び/又は前記ガス測定システムによって測定される少なくとも1つのパラメータのうちの1つ又は複数のパラメータ、及び/又は
○前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータ及び/又は前記気体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数のパラメータ
を含み、
前記少なくとも1つの出力パラメータが、前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータ及び/又は前記気体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数のパラメータを含み、前記の少なくとも1つの出力パラメータが、前記の少なくとも1つの入力パラメータとは異なる、
前記医療手術シミュレータ。
【請求項2】
前記血管形成デバイス及び前記換気デバイスを含むことを特徴とする、請求項1に記載の医療手術シミュレータ。
【請求項3】
前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータが、前記心臓血管系回路における前記液体の注入についての圧力及び/又は流速及び/又は頻度を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の医療手術シミュレータ。
【請求項4】
前記液体注入システムが、
−前記心臓血管系回路内における前記液体についての流速及び/又は注入頻度を調節するように配置された1つ又は複数の注入電磁弁(111,121,131)、及び/又は
−前記心臓血管系回路における前記液体についての注入圧力を調節するように配置された液圧調節器(14)
を含むことを特徴とする、請求項3に記載の医療手術シミュレータ。
【請求項5】
前記心臓血管系回路内における液体の流れを表す前記の少なくとも1つのパラメータが、前記心臓血管系回路内における前記液体についての流速を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療手術シミュレータ。
【請求項6】
前記液体測定システムが、前記心臓血管系回路内における前記液体についての流速を測定するように配置された1つ又は複数の流量計(151,152,153)を含むことを特徴とする、請求項5に記載の医療手術シミュレータ。
【請求項7】
前記液体測定システムが、前記心臓内の前記液体の心内圧を測定するように配置された心内圧センサ(16)をさらに含み、前記心内圧が、前記心臓血管系回路内における前記液体の流れを表すパラメータを構成することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医療手術シミュレータ。
【請求項8】
前記ガスの前記の少なくとも1つの注入パラメータが、前記呼吸系回路内における前記ガスの注入についての圧力及び/又は流速及び/又は頻度を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医療手術シミュレータ。
【請求項9】
前記ガス注入システムが、
−前記呼吸系回路内における前記ガスの注入についての流速及び/又は頻度を調節するように配置された気相分配器(21)、及び/又は
−前記呼吸系回路内における前記ガスの注入圧力を調節するように配置されたガス圧力調節器(24)
を含むことを特徴とする、請求項8に記載の医療手術シミュレータ。
【請求項10】
呼吸系回路内における前記ガスの流れを表す前記の少なくとも1つのパラメータが、前記呼吸系回路内における前記ガスの流速を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医療手術シミュレータ。
【請求項11】
前記ガス測定システムが、前記呼吸系回路内における前記ガスの流速を測定するように配置された空気流量計(25)を含むことを特徴とする、請求項10に記載の医療手術シミュレータ。
【請求項12】
前記調節デバイスが、前記液体の少なくとも1つの注入パラメータ及び/又は前記ガスの少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数のパラメータを、入力パラメータとして手動で入力するための手段を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の医療手術シミュレータ。
【請求項13】
調節デバイスが、コンピュータメモリ(4)を含み、そのコンピュータメモリにおいて、下記のモデル:
−心臓−呼吸モデルであって、
前記調節デバイスが、前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を入力パラメータとして読み取り、そして、前記入力パラメータに応じて、前記ガスの前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を、前記ガス注入システムを介して、出力パラメータとして設定する、前記心臓−呼吸モデル;
−呼吸−心臓モデルであって、
前記調節デバイスが、前記ガスの前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を入力パラメータとして読み取り、そして、前記入力パラメータに応じて、前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を、前記液体注入システムを介して、出力パラメータとして設定する、前記呼吸−心臓モデル;
−心臓−心臓モデルであって、
前記調節デバイスが、前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を入力パラメータとして読み取り、そして、前記入力パラメータに応じて、前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を、前記液体注入システムを介して、出力パラメータとして設定し、出力パラメータが入力パラメータとは異なる、前記心臓−心臓モデル;
−呼吸−呼吸モデルであって、
前記調節デバイスが、前記ガスの少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を入力パラメータとして読み取り、そして、前記入力パラメータに応じて、前記ガスの前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を、ガス注入システムを介して、出力パラメータとして設定し、出力パラメータが入力パラメータとは異なる、前記呼吸−呼吸モデル;
のうちの1つ又は複数のモデルが格納されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の医療手術シミュレータ。
【請求項14】
出力パラメータの設定が、前記入力パラメータの線形又は放物線形又は多項式の関数であることを特徴とする、請求項13に記載の医療手術シミュレータ。
【請求項15】
コンピュータメモリが、いくつかの格納されたシナリオを含み、各シナリオは、いくつかのモデルの組み合わせに相当し、この組み合わせはそのシナリオに特有であることを特徴とする、請求項13又は14に記載の医療手術シミュレータ。
【請求項16】
血管形成デバイスが、3つの導管(A1、A2、A3)をさらに含み、
前記血管形成デバイスの接続手段が、前記3つの導管にそれぞれ接続された3つのカニューレ(931,932,933)を含み、
前記のカニューレ及び導管が、前記カニューレによって、前記死体の3つのそれぞれの動脈(911,912,913)に血管形成デバイスを接続するように配置され、
前記のカニューレのうちの少なくとも1つを介して動脈網内に前記液体を注入できるようにする方法でその動脈網を形成することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の医療手術シミュレータ。
【請求項17】
前記血管形成デバイスが、更に、
−3つの導管の各々に載置された3つの循環機構(11,12,13)、
−選択器
を含み、
前記の導管の各々に関連する前記循環機構が、下記の2つの位置を選択的に取るように配置される:
○注入位置
なお、この注入位置において、前記液体が、前記液体注入システムから前記動脈網への前記循環機構を介して、前記導管内を循環することができ、そして、前記液体が、前記動脈網から前記液体注入システムへの循環機構を介して、前記導管内を循環できないようにする、
○排出位置
なお、この排出位置において、前記液体が、前記動脈網から前記液体注入システムへの前記循環機構を介して、前記導管内を循環することができ、そして、前記液体が、前記液体注入システムから前記動脈網への前記循環機構を介して、前記導管内を循環できないようにする;
前記選択器が、下記のモードのうちから少なくとも2つの液体注入モードを選択するように配置される
○加圧モード
なお、この加圧モードにおいて、前記3つの循環機構が、前記注入位置に配置される、
○循環モード
なお、この循環モードにおいて、1つ又は2つの前記循環機構が、注入位置に配置され、そして、他の循環機構が、前記排出位置に配置される;
請求項16に記載の医療手術シミュレータ。
【請求項18】
気管が前記呼吸系回路の一部を形成するように、前記換気デバイスの接続手段が前記換気デバイスを前記死体の気管(95)に接続するように配置され、そして、前記ガス注入システムが、前記気管にガスを注入するための気管内チューブ(96)を含むことを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の医療手術シミュレータ。
【請求項19】
医療手術シミュレーション方法であって、
そのシミュレーション方法が、
−血管形成デバイス(1)によって心臓血管系回路において血管を形成する血管形成工程ここで、この血管形成工程が、下記の工程を含み:
○接続工程
なお、この工程では、心臓が心臓血管系回路の一部を形成するように、接続手段(931,932,933)によって、死体(9)の心臓(92)に前記血管形成デバイスを接続する、
○液体注入工程
なお、この工程では、液体注入システムによって、液体を心臓血管系回路に注入する、
○調節工程
なお、この工程では、液体注入システムによって、前記液体の少なくとも1つの注入パラメータを設定する、
○液体測定工程
なお、この工程では、液体測定システム(151,152,153,16)によって、前記心臓血管系回路内の液体の流れを表す少なくとも1つのパラメータを測定する;
及び/又は
−呼吸系回路が換気デバイス(2)によって換気される換気工程
ここで、この換気工程が、下記の工程を含み:
○接続工程
なお、この工程では、肺が前記呼吸系回路の一部を形成するように、接続手段(96)によって、前記死体(9)の肺(941,942)に前記換気デバイスを接続する、
○ガス注入工程
なお、この工程では、ガス注入システムによって、ガスを前記呼吸系回路に注入する、
○調節工程
なお、この工程では、ガス注入システムによって、前記ガスの少なくとも1つの注入パラメータを設定する、
○測定工程
なお、この工程では、ガス測定システム(25)によって、前記呼吸系回路内の前記ガスの流れを表す少なくとも1つのパラメータを測定する;
を含み、
前記医療手術シミュレーション方法が、さらに、調節工程を含み、
ここで、この調節工程において、
−調節デバイス(3)が、少なくとも1つの入力パラメータを読み取り
ここで、前記の少なくとも1つの入力パラメータが、
○前記液体測定システム及び/又は前記ガス測定システムによって測定された少なくとも1つのパラメータのうちの1つ又は複数のパラメータ、及び/又は
○前記液体の少なくとも1つの注入パラメータ及び/又は前記ガスの少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数のパラメータ
を含み、
−前記調節デバイス(3)が、前記の少なくとも1つの入力パラメータに応じて、前記液体注入システム及び/又は前記ガス注入システムを介して、少なくとも1つの出力パラメータを設定し、前記の少なくとも1つの出力パラメータが、前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータ及び/又は前記気体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数のパラメータを含み、前記の少なくとも1つの出力パラメータが、前記の少なくとも1つの入力パラメータとは異なる、
前記医療手術シミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療手術シミュレータの分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、非常に高度な現実感を有する医療手術シミュレータ、及びそれに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
医療手術シミュレータの目的は、手術室の状況に外科医を配置し、外科医が手術中に遭遇する可能性のある複雑な外科手術手順に外科医を直面させることである。
【0004】
手術訓練の分野における費用効果に関する制約が大きくなっていることを考慮すると、手術室において経験豊富な外科医の指導の下で助言によって従来から行われている外科医の実際の訓練は、そのような助言は特に時間がかかるので、すなわち費用が掛かるので、実用的でなくなってきている。そのため、ここ数年の間に、(非常に正確で、プラスチックで、マネキンのようなデバイス、又はロボット式デジタルコンソールデバイスを使用する)医療手術シミュレーションセンターが登場し始めた。しかしながら、そのようなセンターにおける外科的トレーニングは不十分であることが証明されており、このようなデバイスを使用し維持するコストが非常に高いままである。他の外科手術シミュレーションセンターではブタモデルを使用している。しかしながら、臨床的又は準臨床的な状況における手術の動きの繰り返しは、訓練の最初において、及び外科医の継続的な教育において不可欠である。さらに、動物実験は、まもなく、米国において、及び世界の他の国々において完全に禁止される可能性がある。
【0005】
従来技術から、我々は、人間の死体に血管を通すことから成り、これによってシミュレーションの現実性が高められる医療手術シミュレーション方法を認識している。そのような方法は、特に以下の文献に開示されている:
−Novel simulation for training trauma surgeons, Aboud, Krisht, O’Keeffe, Nader, Hassan, Stevens, Ali, Luchette, Journal of traumatology 2011 Dec, 71(6):1487-90 (hereinafter Aboud 2011);
−米国特許第6,824,389号明細書。
【0006】
それにもかかわらず、人間の死体に血管を通すこのような方法は、少なくとも以下の理由のために、現実的な点及び/又はコストの点で、依然として不十分である:
−それらの方法は、比較的形式的なシミュレーション技術(例えば、大動脈内バルーン又は輸液貯蔵部)を使用している;
−死体の静脈及び動脈系に注入される液体は、一般に、一定の圧力及び脈動で注入される;
−すべての血液残留物を除去するために、ヘパリンナトリウム注入は、人間の死体の胴体における動脈及び静脈系の洗浄プロセスの終わりに行われる;
−手術シナリオは、人間のオペレータによって手動で監督される;
−人間の死体の血管形成では、(特に胴体手術中における)生体の機能によって生ずる困難性を再現することができない。
【0007】
本発明の目的は、そのような訓練のための予算を削減する状況の下での手術訓練についての増え続ける必要性を満たす、非常に高度な現実感のある医療手術シミュレータを提供することにある。
【発明の概要】
【0008】
この趣旨で、本発明は、医療手術シミュレータであって、
その医療手術シミュレータが、
−心臓血管系回路に血管形成するように配置された血管形成デバイス、及び/又は
−呼吸系回路を換気するように配置された換気デバイス
を含み、
ここで、前記血管形成デバイスが、
○心臓が心臓血管系回路の一部を形成するように、死体(好ましくは、人間)の心臓に前記血管形成デバイスを接続するように配置された接続手段、
○前記心臓血管系回路内に液体を注入し、そして心臓血管系回路内におけるその液体についての少なくとも1つの注入パラメータを設定するように配置された液体注入システムであって、その液体が、好ましくは、標準的な血液のものに匹敵する色、温度、質感及び/又は粘度を有する、前記液体注入システム、
○前記心臓血管系回路内における液体の流れを表す少なくとも1つのパラメータを測定するように配置された液体測定システム、
を含み、
前記換気デバイスが、
○肺が前記呼吸系回路の一部を形成するように、死体の肺に前記換気デバイスを接続するように配置された接続手段、
○前記呼吸系回路にガスを注入し、その呼吸系回路内におけるそのガスの少なくとも1つの注入パラメータを設定するように配置されたガス注入システムであって、
そのガスが、好ましくは、空気である、前記ガス注入システム、
○前記呼吸系回路内におけるガスの流れを表す少なくとも1つのパラメータを測定するように配置されたガス測定システム、
を含み;
前記医療手術シミュレータが、さらに、調節デバイスを備え、
その調節デバイスが、
−少なくとも1つの入力パラメータを読み取り、
−前記液体注入システム及び/又は前記ガス注入システムを介して、少なくとも1つの入力パラメータに応じて少なくとも1つの出力パラメータを設定する
ように配置され、
ここで、前記の少なくとも1つの入力パラメータが、
○前記液体測定システム及び/又は前記ガス測定システムによって測定された少なくとも1つのパラメータのうちの1つ又は複数のパラメータ、及び/又は
○前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータ及び/又は前記気体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数のパラメータ
を含み、
前記少なくとも1つの出力パラメータが、
前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータ及び/又は前記気体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうち、1つ又は複数のパラメータを含み、
前記の少なくとも1つの出力パラメータが、前記の少なくとも1つの入力パラメータとは異なる、前記医療手術シミュレータを提供する。
【0009】
そのような医療手術シミュレータは、それによって身体の心臓血管及び/又は呼吸機能をシミュレートすることができるので、非常に高いレベルの現実感を有する。
【0010】
好ましくは、医療手術シミュレータは、血管形成デバイス及び換気デバイスを含むことができる。
【0011】
前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータは、前記心臓血管系回路における前記液体の注入についての圧力及び/又は流速及び/又は頻度を含むことができる。
【0012】
一実施形態において、前記液体注入システムは、
−前記心臓血管系回路内における前記液体の注入についての流速及び/又は頻度を調節するように配置された1つ又は複数の注入電磁弁、及び/又は
−前記心臓血管系回路における前記液体についての注入圧力を調節するように配置された液圧調節器
を含むことができる。
【0013】
前記心臓血管系回路内における液体の流れを表す前記の少なくとも1つのパラメータは、前記心臓血管系回路内における前記液体の流速を含むことができる。
【0014】
一実施形態において、前記液体測定システムは、前記心臓血管系回路内における前記液体の流速を測定するように配置された1つ又は複数の流量計を含むことができる。
【0015】
前記液体測定システムが、前記心臓内の前記液体の心内圧を測定するように配置された心内圧センサをさらに含み、この心内圧が、前記心臓血管系回路内における前記液体の流れを表すパラメータを構成することができる。
【0016】
前記ガスの前記の少なくとも1つの注入パラメータが、前記呼吸系回路内における前記ガスの注入についての圧力及び/又は流速及び/又は頻度を含むことができる。
【0017】
一実施形態において、前記ガス注入システムが、
−前記呼吸系回路内における前記ガスの注入についての流速及び/又は頻度を調節するように配置された気相分配器、及び/又は
−前記呼吸系回路内における前記ガスの注入圧力を調節するように配置されたガス圧力調節器
を含むことができる。
【0018】
呼吸系回路内における前記ガスの流れを表す前記の少なくとも1つのパラメータが、前記呼吸系回路内における前記ガスの流速を含むことができる。
【0019】
一実施形態において、前記ガス測定システムが、前記呼吸系回路内における前記ガスの流速を測定するように配置された空気流量計を含むことができる。
【0020】
本発明の1つの変形例によれば、前記調節デバイスが、前記液体の少なくとも1つの注入パラメータ及び/又は前記ガスの少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数のパラメータを、入力パラメータとして手動で入力するための手段を含むことができる。
【0021】
他の変形例又は実施形態と互換性のある本発明の別の変形例によれば、調節デバイスが、コンピュータメモリを含み、そのコンピュータメモリにおいて、下記のモデル:
−心臓−呼吸モデル
(この心臓−呼吸モデルにおいて、前記調節デバイスが、前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を入力パラメータとして読み取り、そして、前記入力パラメータに応じて前記ガスの前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を、前記ガス注入システムを介して、出力パラメータとして設定する);
−呼吸−心臓モデル
(この呼吸−心臓モデルにおいて、前記調節デバイスが、前記ガスの前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を入力パラメータとして読み取り、そして、前記入力パラメータに応じて前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を、前記液体注入システムを介して、出力パラメータとして設定する);
−心臓−心臓モデル
(この心臓−心臓モデルにおいて、前記調節デバイスが、前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を入力パラメータとして読み取り、そして、前記入力パラメータに応じて前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を、前記液体注入システムを介して、出力パラメータとして設定し、出力パラメータが、入力パラメータとは異なる);
−呼吸−呼吸モデル
(この調節デバイスにおいて、前記調節デバイスが、前記ガスの少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を入力パラメータとして読み取り、そして、前記入力パラメータに応じて前記ガスの前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を、ガス注入システムを介して、出力パラメータとして設定し、出力パラメータが、入力パラメータとは異なる);
のうちの1つ又は複数のモデルが格納されている。
【0022】
好ましくは、入力パラメータの増加は、出力パラメータの増加をもたらし、入力パラメータの減少は、出力パラメータの減少をもたらす。
【0023】
出力パラメータの設定は、好ましくは、前記入力パラメータの線形又は放物線形又は多項式の関数である。線形の関数は、単純さの利点を提供する。 多項式の関数は、線形又は放物線形の関数よりも現実的である生理的機能をシミュレートするという利点を提供する。
【0024】
好ましくは、コンピュータメモリが、いくつかの記録されたシナリオを含み、各シナリオは、いくつかのモデルの組み合わせに相当し、この組み合わせはそのシナリオに特有である。
【0025】
一実施形態において、血管形成デバイスが、3つの導管をさらに含み、
前記血管形成デバイスの接続手段が、前記3つの導管にそれぞれ接続された3つのカニューレを含み、前記カニューレ及び導管が、カニューレによって、前記死体の3つのそれぞれの動脈に血管形成デバイスを接続するように配置され、これらのカニューレのうちの少なくとも1つによって動脈網内に前記液体を注入できるようにする方法で、その動脈網を形成する。
【0026】
そのような実施形態において、前記血管形成デバイスが、更に、
−3つの導管のそれぞれに載置された3つの循環機構
(ここで、これらの導管の各々に関連する前記循環機構が、2つの位置:
○注入位置
(この注入位置において、前記液体が、前記液体注入システムから前記動脈網への前記循環機構を介して、前記導管内を循環することができ、そして、前記液体が、前記動脈網から前記液体注入システムへの循環機構を介して、前記導管内を循環できないようにする)、
○排出位置
(この排出位置において、前記液体が、前記動脈網から前記液体注入システムへの前記循環機構を介して、前記導管内を循環することができ、そして、前記液体が、前記液体注入システムから前記動脈網への前記循環機構を介して、前記導管内を循環できないようにする)
を選択的に取るように配置される)、
−選択器
(ここで、この選択器が、
○加圧モード(この加圧モードにおいて、前記3つの循環機構が、前記注入位置に配置される)、
○循環モード(この循環モードにおいて、1つ又は2つの前記循環機構が、注入位置に配置され、そして、他の循環機構が、前記排出位置に配置される)
のうちから少なくとも2つの液体注入モードを選択するように配置される)
を含むことができる。
【0027】
加圧モードは、動脈ネットワークに注入された液体を節約し、胸部及び/又は腹部の内臓又は器官を再血管形成し、現実に似た色、質感、温度を与え、例えば頚部及び大腿部のレベルに配置された静脈カニューレを介して液体が排出される前において、静脈系の流量、圧力、及び緊張状態を獲得する。
【0028】
循環モードは、各動脈及び死体の心臓血管系回路の漏れを評価することを可能にする。また、最も適切なシナリオ、又はモデルの組み合わせ、又は出力パラメータの設定を見つけることもできる。循環モードは、また、死体の血管系における液体の流れを学習者が感じることを可能にする(例えば、クランプの下又は上(しかし、各側にはない)の動脈の腫脹、等)。
【0029】
一実施形態では、換気デバイスの接続手段は、気管が呼吸系回路の一部を形成するような方法で、身体の気管に換気デバイスを接続するように配置することができ、そして、この手段において、ガス注入システムが、気管内にガスを注入するように配置された気管チューブを含む。
【0030】
本発明は、また、医療手術シミュレーションの方法に関し、
その医療手術シミュレーションの方法が、
−心臓血管系回路を血管形成デバイスによって血管を形成する血管形成工程
(ここで、この血管形成工程が、
○接続工程(この工程において、心臓が心臓血管系回路の一部を形成する方法で、死体(好ましくは、人間)の心臓への接続手段によって、前記血管形成デバイスを接続する)、
○液体注入工程(この工程において、液体注入システムによって、液体を心臓血管系回路に注入する)、
○調節工程(この工程において、液体注入システムによって、前記液体の少なくとも1つの注入パラメータを設定する)、
○好ましくは、液体測定工程(この工程において、液体測定システムによって、前記心臓血管系回路内の液体の流れを表す少なくとも1つのパラメータを測定される測定する)
を含む)、
及び/又は
−呼吸系回路が換気デバイスによって換気される換気工程
(ここで、この換気工程が、
○接続工程(この工程において、肺が前記呼吸系回路の一部を形成するように、接続手段によって、前記死体の肺に前記換気デバイスを接続する)、
○ガス注入工程(この工程において、ガス注入システムによって、ガスを前記呼吸系回路に注入する)、
○調節工程(この工程において、ガス注入システムによって、前記ガスの少なくとも1つの注入パラメータを設定する)、
○好ましくは、測定工程(この工程において、ガス測定システムによって、前記呼吸系回路内の前記ガスの流れを表す少なくとも1つのパラメータを測定する)
を含む)
を含み、
前記医療手術シミュレータ方法が、さらに、調節工程を含み、
ここで、この調節工程において、
−調節デバイスが、少なくとも1つの入力パラメータを読み取り
(ここで、前記の少なくとも1つの入力パラメータが、
○前記液体測定システム及び/又は前記ガス測定システムによって測定された少なくとも1つのパラメータのうちの1つ又は複数のパラメータ、及び/又は
○前記液体の少なくとも1つの注入パラメータ及び/又は前記ガスの少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数のパラメータ
を含み)、
−前記調節デバイスが、前記の少なくとも1つの入力パラメータに応じて、前記液体注入システム及び/又は前記ガス注入システムを介して、少なくとも1つの出力パラメータを設定し、
前記の少なくとも1つの出力パラメータが、前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータ及び/又は前記気体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数のパラメータを含み、
前記の少なくとも1つの出力パラメータが、前記の少なくとも1つの入力パラメータとは異なる。
【0031】
好ましくは、医療手術シミュレーション方法は、血管形成工程及び換気工程を含むことができる。
【0032】
前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータは、前記心臓血管系回路における前記液体の注入についての圧力及び/又は流速及び/又は頻度を含むことができる。
【0033】
一実施モードにおいて、液体注入システムは、
−1つ又は複数の注入電磁弁によって、心臓血管系回路内の液体の注入の流量及び/又は頻度を調節する工程、及び/又は
−液体圧力調節器によって、心臓血管系回路内の液体の注入圧力を調節する工程
を含むことができる。
【0034】
前記心臓血管系回路内における液体の流れを表す前記の少なくとも1つのパラメータは、前記心臓血管系回路内における前記液体の流速を含むことができる。
【0035】
一実施モードでは、血管形成工程において、測定工程が、1つ以上の流量計によって、心臓血管系回路内の液体の流速についての測定を含むことができる。
【0036】
血管形成工程において、測定工程は、心内圧センサによって、心臓内の液体の心内圧の測定をさらに含むことができ、この心内圧は、心臓血管系回路内の液体の流れを表すパラメータを構成する。
【0037】
ガスの少なくとも1つの注入パラメータは、呼吸系回路内のガスの圧力及び/又は流速及び/又は注入頻度を含むことができる。
【0038】
一実施モードでは、ガス注入ステップは、
−気相分配器によって、呼吸系回路内のガスの注入の流速及び/又は頻度を調節する工程、及び/又は
―ガス圧力調節器によって、呼吸系回路内のガスの注入圧力を調節する工程
を含むことができる。
【0039】
呼吸系回路内における前記ガスの流れを表す前記の少なくとも1つのパラメータは、前記呼吸系回路内における前記ガスの流速を含むことができる。
【0040】
換気工程において、測定工程は、呼吸系回路内のガスの流速の測定(ガス測定システム)を含むことができる。
【0041】
一実施モードでは、医療手術シミュレーションの方法は、液体の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数のパラメータ、及び/又は入力パラメータとしてのガスの少なくとも1つの注入パラメータを、ユーザインタフェースを介して、手動で入力するための手段を含むことができる。
【0042】
調節工程は、下記のモデルのうちの、コンピュータメモリに格納された1つ又は複数のモデルの使用を含むことができる:
−心臓−呼吸モデル
(この心臓−呼吸モデルにおいて、前記調節デバイスが、前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を入力パラメータとして読み取り、そして、前記入力パラメータに応じて前記ガスの前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を、前記ガス注入システムを介して、出力パラメータとして設定する);
−呼吸−心臓モデル
(この呼吸−心臓モデルにおいて、前記調節デバイスが、前記ガスの前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を入力パラメータとして読み取り、そして、前記入力パラメータに応じて前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を、前記液体注入システムを介して、出力パラメータとして設定する);
−心臓−心臓モデル
(この心臓−心臓モデルにおいて、前記調節デバイスが、前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を入力パラメータとして読み取り、そして、前記入力パラメータに応じて前記液体の前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を、前記液体注入システムを介して、出力パラメータとして設定し、出力パラメータが、入力パラメータとは異なる);
−呼吸−呼吸モデル
(この調節デバイスにおいて、前記調節デバイスが、前記ガスの少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を入力パラメータとして読み取り、そして、前記入力パラメータに応じて前記ガスの前記の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を、ガス注入システムを介して、出力パラメータとして設定し、出力パラメータが、入力パラメータとは異なる)。
【0043】
好ましくは、出力パラメータの設定は、前記入力パラメータの線形又は放物線形又は多項式の関数である。
【0044】
コンピュータメモリは、いくつかの保存されたシナリオを含み、各シナリオは、そのシナリオに特有であるいくつかのモデルの組み合わせに相当する。
【0045】
一実施モードでは、血管形成工程は、死体の3つのそれぞれの動脈へ(血管形成デバイスの3つのそれぞれの導管に接続された3つのカニューレによる)血管形成デバイスを連結し、前記カニューレの少なくとも1つによって前記動脈網内へ前記液体の注入を可能にするような方法で動脈網を形成することを更に含むことができる。
【0046】
血管形成工程は、以下のモード:
−加圧モード(この加圧モードにおいて、3つの循環機構が、注入位置に配置される)、
−循環モード(この循環モードにおいて、循環機構の1つ又は2つが注入位置に配置され、そして、他の循環機構が排出位置に配置される)
の中で、選択器によって、液体注入モードの選択工程をさらに含むことができ、
ここで、注入位置は、液体注入システムから動脈網に向かう前記導管上に載置された循環機構を通って所定の導管内を液体が循環することができ、そして、動脈網から液体注入システムに向かう循環機構を通って導管内を液体が循環することができない位置であり、
排出位置は、動脈網から液体注入システムに向かう導管上に載置された循環機構を通って所定の導管内を液体が循環することができ、そして、液体注入システムから動脈網に向かう循環機構を通って導管内を液体が循環することができない位置である。
【0047】
好ましくは、換気工程において、接続工程は、気管が呼吸系回路の一部を形成するような方法で、換気デバイスを死体の気管に接続することを含み、そして、この換気工程において、ガス注入工程は、気管内チューブを介して気管にガスを注入することを含む
【図面及び実施形態の説明】
【0048】
本発明の他の利点及び特有の特徴は、実施及び実施形態の非限定的な詳細な説明、並びに以下の添付図面を読むことによって明らかになるであろう。
図1は、本発明による医療手術シミュレータの実施形態を概略的に示す。
図2及び図3は、本発明による医療手術シミュレータが接続されることのある人間の死体についての心臓血管系回路及び呼吸系回路をそれぞれ示す。
【0049】
以下に記載される実施形態は、網羅的ではないが、説明される特徴の選択のみを含み、(この選択が、他の特徴を含む文章中において分離されていても)他の記載された特徴から分離されている、本発明の変形形態であると特に考えることができる。但し、この特徴の選択は、技術的利点を与えるために、又は従来技術に対して本発明を区別するのに十分である場合に限る。この選択は、(好ましくは、構造的な詳細がない機能的部分を有するか、又は構造的な詳細な部分のみを有する)少なくとも1つの特徴を含む。但し、この部分のみが、技術的な利点を与えるのに十分であるか、又は先行技術に対して本発明を区別する場合に限る。
【0050】
図1において、本発明による医療手術シミュレータの実施形態の一実施例を示す。
【0051】
この実施例では、外科手術シミュレータは、血管形成デバイス1、換気デバイス2、及びその血管形成デバイス1とその換気デバイス2とを制御する調節デバイス3を含む。
【0052】
図1は、血管形成デバイス1が、図の右側に向けられた矢印によって表される3つの経路A1、A2、及びA3を含むことを示している。前記経路A1、A2、及びA3は、図2に表された3つのカニューレ931,932、及び933にそれぞれ接続された血管形成デバイス1の導管である。例えば、導管A1は、カニューレ931に接続され、導管A2は、カニューレ932に接続され、導管A3は、カニューレ933に接続される。図1及び2には示されていないが、前記導管とカニューレとの接続は、従来の接続によって達成することができる。例えば、前記導管A1、A2及びA3は、内径10mmのパイプであってもよい。カニューレ931,932及び933は、前記パイプに挿入されるか、及び/又は、既知の取り付け手段によってこれらのパイプに取り付けられる血管カニューレであってもよい。
【0053】
図1及び図2の実施例では、カニューレ931,932及び933、並びに導管A1、A2及びA3は、カニューレを介して、人間の死体の3つのそれぞれの動脈911,912,913に血管形成デバイス1を接続するように配置されている。動脈911,912、及び913は、動脈網を形成し、言い換えると、それらは、これらの動脈の1つ(例えば、動脈911)を介して注入された液体が、前記動脈911内を循環し、動脈網を通って移動する(この結果、動脈912及び913内を循環する)ように、相互に接続している。特に、カニューレ931,932,及び933、並びに導管A1、A2、及びA3の配置によって、液体がカニューレの少なくとも1つを介して動脈網に注入することが可能になる。
【0054】
好ましくは、動脈911は、死体9の左総頸動脈であり、動脈912は、死体9の右大腿動脈であり、そして動脈913は、死体9の左大腿動脈である。
【0055】
したがって、血管形成デバイス1は、接続手段を含み、そのような接続手段は、カニューレ931,932、及び933を含み、心臓が心臓血管系回路の一部を形成するような方法で、血管形成デバイス1を人間の死体9の心臓92に接続するように配置されている。
【0056】
換気デバイス2に関して、図1は、換気デバイスが図の右側に向いた矢印によって表される経路E1を含むことを示している。この実施例では、前記経路E1は、図3に示される気管内チューブ96に接続された換気デバイス2の導管である。
【0057】
図1及び図3の実施例では、換気デバイス2は、接続手段を備え、これらの接続手段は気管内チューブ96を含み、肺941及び942が換気デバイス2の呼吸系回路の一部を形成するような方法で、換気デバイス2を人間の死体9の肺941及び942に接続するように配置されている。さらに、この実施例では、換気デバイス2の接続手段は、気管95が呼吸系回路の一部を形成するような方法で、換気デバイス2を人間の死体9の気管95に接続するように配置されている。
【0058】
従って、本発明によれば、
−血管形成デバイス1は、心臓血管系回路(この実施例では、図2に示されているように、動脈911,912、及び913、並びに人間の死体9の心臓92)を血管形成するように配置されており;
−換気デバイス2は、呼吸系回路(この実施例では、図3に示すように、気管95、並びに人間の死体9の肺941及び942)を換気するように配置されている。
【0059】
血管形成デバイスの説明
血管形成デバイス1は、心臓血管系回路に液体を注入し、更に心臓血管系回路内における少なくとも1つの液体の注入パラメータを設定するために配置されている液体注入システムを含む。
【0060】
図1を参照すると、液体注入システムは、3つの注入電磁弁111,121、及び131を含む。前記注入電磁弁111,121,131は、血管形成デバイス1の注入導管A11、A21、A31それぞれに載置されている。注入電磁弁111,121及び131は、心臓血管系回路内の液体についての流速及び/又は注入頻度を設定するように配置されている。より正確には、流速及び/又は注入頻度の点で注入電磁弁111,121,131の設定についての変更を、流速及び/又は(液体が動脈網内に注入される)頻度についての変更に変換するような方法で、注入導管A11は導管A1に接続され、注入導管A21は導管A2に接続され、注入導管A31は導管A3に接続される。
【0061】
注入導管A11、A21、A31(注入電磁弁111,121,131は、これらの注入導管に載置される)には、共通の供給導管A1Cによって液体が供給される。この供給導管A1Cは、注入電磁弁111,121,131の上流の3つの注入導管A11、A21、A31に接続されている。
【0062】
あるいは、血管形成デバイス1の液体注入システムは、共通の供給導管A1C(図示せず)に載置された1つだけの注入電磁弁を含むことができる。
【0063】
図1の実施例では、血管形成デバイス1は、3つの排出電磁弁112,122、及び132も含む。前記排出電磁弁112,122,132は、血管形成デバイス1の排出導管A12、A22、A32にそれぞれ載置されている。排出導管A12、A22及びA32は、一方では、導管A1、A2及びA3(すなわち、動脈網)に接続され、他方では、共通の排出導管A4に接続される。
【0064】
このような注入電磁弁111,121,131と排出電磁弁112,122及び132とによって、共通の供給導管A1Cからの液体を、注入導管A11、A21及びA31を介して動脈網内に注入することが可能となり、そして、その動脈網からの液体を、排出導管A12、A22、及びA32を介して導管A4に向かって排出することを可能にする。
【0065】
また、図1の液体注入システムは、心臓血管系回路内における液体の注入圧を調節するように配置されている液圧調節器14を含む。前記液圧調節器14は、注入管路A11、A21、A31からの液体についての圧力が液圧調節器14によって調節されるような方法で、共通の供給導管A1Cに載置される。
【0066】
したがって、液体の少なくとも1つの注入パラメータは、液体注入システム(この実施例では、心臓血管系回路内の液体についての(液圧調節器14によって調節される)圧力、並びに流速及び/又は(注入電磁弁111,121,131によって調節される)注入頻度を含む)によって設定される。
【0067】
更に、血管形成デバイス1は、また、心臓血管系回路内の液体の流れを表す少なくとも1つのパラメータを測定するように配置された液体測定システムを含む。
【0068】
心臓血管系回路内の液体の流れを表す前記の少なくとも1つのパラメータは、心臓血管系回路内の液体の流量を含む。これを達成するために、液体測定システムは、心臓血管系回路内の液体の流速を測定するように配置された少なくとも1つの流量計(図1の実施例では、3つの流量計151,152、及び153)を含む。この実施例では、流量計151,152,153は、注入電磁弁111,121,131の上流に配置されている注入管路A11、A21、A31のそれぞれに載置されている。
【0069】
あるいは、液体測定システムは、共通の供給導管A1C(図示せず)に載置された1つだけの流量計を含むことができる。
【0070】
図1の実施例では、液体測定システムは、心臓内における液体の心内圧を測定するように配置された心内圧センサ16を含み、前記心内圧は、心臓血管系回路内の液体の流れを表すパラメータを構成する。
【0071】
心内圧センサ16は、例えば、死体9の右総頸動脈914を介して、図2の死体9の心臓92に挿入される。
【0072】
様々な液体注入モードが、本発明による血管形成デバイス1によって実施されてもよい。
【0073】
注入電磁弁111,121,131及び排出電磁弁112,122,132は、対をなす、循環機構を配置する:
注入電磁弁111及び排出電磁弁112は、導管A1に載置された循環機構11を構成する;
注入電磁弁121及び排出電磁弁122は、導管A2に載置された循環機構12を構成する;
注入電磁弁131及び排出電磁弁132は、導管A3に載置された循環機構13を構成する。前記循環機構11,12,13は、選択的に2つの位置を取るように配置される:
−注入位置(液体は、液体注入システムから動脈網に向かう循環機構11,12及び/又は13を介して、導管A1、A2及び/又はA3内を循環させることができ、そして、液体は、動脈網から液体注入システムへの循環機構11,12及び/又は13を介して、導管A1、A2及び/又はA3内を循環させることはできない)、
−排出位置(液体は、動脈網から液体注入システムへの循環機構11,12及び/又は13を介して、導管A1、A2及び/又はA3内を循環させることができ、そして、
液体は、液体注入システムから動脈網への循環機構11,12及び/又は13を介して、導管A1、A2及び/又はA3内を循環させることはできない)。
【0074】
液体注入モードを選択するために、血管形成デバイス1は、
−加圧モード(3つの循環機構11,12,13が、注入位置に配置される)、
−循環モード(1つ又は2つの循環機構が、注入位置に配置され、そして、他の循環機構(1つ又は複数)が、排出位置に配置される)
のうちの少なくとも2つの液体注入モードを選択するように配置された選択器(図示せず)を含む。
【0075】
選択器(図示せず)は、例えば、グラフィックユーザインタフェースに関するグラフィック選択器からなるか、又は3つのポジションを有する機械的なスイッチからなってもよい。
【0076】
循環モードは、好ましくは、以下の2つの異なる方法で実施される:
−発散循環:
循環機構(例えば、11)は注入位置に配置され、他の2つの循環機構(実施例では、12,13)は排出位置に配置される:本明細書に記載の実施例では、液体は、この場合、左総頸動脈を介して動脈網内に注入され、右大腿動脈及び左大腿動脈を介して動脈網から排出され、人間の死体9の上部から下部までの動脈網内において液体循環を引き起こす。
−集束循環:
循環機構(例えば、11)が排出位置に配置され、他の2つの循環機構(実施例では、12,13)を注入位置に配置される。本明細書に記載の例では、液体は、この場合、右大腿動脈及び左大腿動脈を介して動脈網内に注入され、左総頸動脈を介して動脈網から排出され、人間の死体の上部から下部への動脈網内において液体循環を引き起こす。
【0077】
好ましくは、本発明による血管形成デバイス1は、図1に示すように、さらに、下記を含む:
−温度調節混合器171(この温度調節混合器171には、例えば、共通の供給導管A1Cに約37℃、±1℃の温度で液体(水)を供給するような方法で温水17aと冷水17bとが供給される;あるいは、これは、2バール以上で調節され加圧される水加熱器172、又は別の手段によって達成することができる);及び/又は
−供給栓173(この供給栓173は、自動温度調節混合器171又は水加熱器172の後において、共通の供給導管A1Cに載置される。前記供給栓173は、好ましくは、手動であり、前記デバイスに液体を供給する);及び/又は
−圧力計圧力センサ174(この圧力計圧力センサ174は、デジタル式又は針式のいずれかであり、液圧調節器14の下流側及び流量計151,152,153の上流側において共通の供給導管A1C上に載置される。この圧力計圧力センサ174は、この導管内の液体の圧力を視覚的に監視することができる);及び/又は
−熱電対温度計175(この熱電対温度計175は、液体圧力調節器14の下流側及び流量計151,152,153の上流側において共通の供給導管A1C上に載置される。この熱電対温度計175は、導管内の液体の温度を視覚的に監視することができる);及び/又は
−注入器176(この注入器176は、ローラーポンプを有し、例えば、共通の供給導管A1Cにおいて循環する液体に溶液を追加するように配置される。前記溶液は、色及び/又は粘度の点で、血液に類似する液体を作る)。
【0078】
この説明から明らかなように、用語「心臓血管系回路」は、
−本発明による医療手術シミュレータに属する部分(特に、導管A1、A2、及びA3);
−本発明による医療手術シミュレータに属さない部分(特に、動脈911,912,913及び人間の死体9の心臓92)
を含む回路を指す。
【0079】
換気デバイスの説明
換気デバイス2は、呼吸系回路にガスを注入するように配置されたガス注入システムを含む。図1の実施例では、前記ガス注入システムは、呼吸系回路内のガスの流速及び/又は注入頻度を設定するように配置された気相分配器21を含む。この実施例では、ガス注入システムは、また、気相分配器21の上流側に載置されそして呼吸系回路内のガスの注入圧を調節するように配置されたガス圧力調節器24を含む。さらに、ガス注入システムは、人間の死体9の気管95にガスを注入するように配置された気管内チューブ96も含む(図3参照)。
【0080】
ガス注入システムは、呼吸系回路内のガスの少なくとも1つの注入パラメータを設定するように配置され、ガスの少なくとも1つの注入パラメータは、呼吸系回路内のガスの圧力及び/又は流速及び/又は注入の頻度を含む。
【0081】
換気デバイス2は、呼吸系回路内のガスの流れを表す少なくとも1つのパラメータを測定するように配置されたガス測定システムをさらに含む。好ましくは、呼吸系回路内のガスの流れを表す少なくとも1つのパラメータは、呼吸系回路内におけるガスの流速を含む。これを達成するために、図1のガス測定システムは、呼吸系回路内におけるガスの流速を測定するように配置された空気流量計25を含む。
【0082】
好ましくは、本発明の換気デバイス2は、図1に示すように、更に、下記を含む:
−圧縮空気モジュール271(この圧縮空気モジュール271は、例えば、少なくとも2バールに調節され加圧された空気加熱器であり、約37℃+1℃の温度の空気の形態のガスを導管E1に注入することが可能である。この加熱モード271には、例えば、8バールに圧縮された空気が供給される);及び/又は
−供給栓272(この供給栓272は、加熱モジュール271の後において、又はガス圧力調節器24の上流側において、共通の導管E1に載置されている。この供給栓272は、好ましくは、手動であり、デバイスに圧縮空気を供給する);及び/又は
−圧力計273(この圧力計273は、例えば、ガス圧力調節器24の下流側であり、そして空気流量計25の上流側において、載置されている。前記圧力計273は、前記導管E1内を循環する空気圧の圧力を視覚的に監視することを可能にする);及び/又は
−空気フィルタ274(この空気フィルタ274は、死体9の肺941及び942を通って医療手術シミュレータの環境に入ることによって汚染された空気が放出されるのを避けるために、呼吸系回路から来る空気を濾過するように配置されている)。
【0083】
本明細書から明らかなように、用語「呼吸系回路」は、
−本発明による医療手術シミュレータに属する部分(特に、導管E1);
−本発明による医療手術シミュレータに属さない部分(特に、気管95、並びに人間の死体9の肺941及び942)
を含む回路を指す。
【0084】
調節デバイスの説明
調節デバイス3は、以下のように配置される:
−少なくとも1つの入力パラメータを読み取ること
(ここで、前記の少なくとも1つの入力パラメータが、
○液体測定システムによって及び/又はガス測定システムによって測定される少なくとも1つのパラメータのうちの1つ又は複数のパラメータ、及び/又は
○液体の少なくとも1つの注入パラメータ及び/又はガスの少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数のパラメータ
を含むこと);
−液体注入システム及び/又はガス注入システムを介して、少なくとも1つの入力パラメータに応じて少なくとも1つの出力パラメータを設定すること
(ここで、前記の少なくとも1つの出力パラメータが、液体の少なくとも1つの注入パラメータ及び/又は気体の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数のパラメータを含むこと、前記少なくとも1つの出力パラメータが、前記少なくとも1つの入力パラメータとは異なること)。
【0085】
調節デバイス3は、好ましくは、前記の液体の少なくとも1つの注入パラメータ及び/又は前記の気体の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数のパラメータを入力パラメータとして手動で入力するために、手段又は「ユーザインタフェース」(例えば、ボタン、スクロールホイール、コンピュータキーボード、及び/又はタッチスクリーンなど、図示せず)を含む。このような手段(図示せず)によって、指導者は、(例えば、心停止又は心臓及び/又は呼吸リズムの変化を)シミュレートするために、出来事を手動で引き起こすことができる。
【0086】
このような入力手段(図示せず)は、また、指導者が下記のようなシナリオを手動で引き起こすことを可能にする。
【0087】
これを達成するために、図1の実施例における調節デバイス3は、コンピュータメモリ4を含み、このコンピュータメモリ4において、下記のモデルのうちの1つ又は複数のモデルが格納されている:
−心臓−呼吸モデル
(この心臓−呼吸モデルにおいて、調節デバイス3は、液体の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を入力パラメータとして読み取り、そして、前記入力パラメータに応じて前記ガスの前記少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を、前記ガス注入システムを介して、出力パラメータとして設定する);
−呼吸−心臓モデル
(この呼吸−心臓モデルにおいて、調節デバイスは、ガスの少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を入力パラメータとして読み取り、そして、前記入力パラメータに応じて前記液体の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を、前記液体注入システムを介して、出力パラメータとして設定する);
−心臓−心臓モデル
(この心臓−心臓モデルにおいて、調節デバイスは、液体の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を入力パラメータとして読み取り、そして、前記入力パラメータに応じて前記液体の少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を、前記液体注入システムを介して、出力パラメータとして設定し、出力パラメータは、入力パラメータとは異なる);
−呼吸−呼吸モデル
(この呼吸−呼吸モデルにおいて、調節デバイスは、ガスの少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を入力パラメータとして読み取り、そして、入力パラメータに応じてガスの少なくとも1つの注入パラメータのうちの1つ又は複数を、ガス注入システムを介して、出力パラメータとして設定し、出力パラメータは、入力パラメータとは異なる)。
出力パラメータの設定は、例えば、入力パラメータの線形又は放物線形又は多項式の関数であり、好ましくは、多項式の関数である。
【0088】
さらに、この実施例では、コンピュータメモリ4は、いくつかの格納されたシナリオを含み、各シナリオは、そのシナリオに特有のいくつかのモデルの組み合わせに相当する。シナリオの実施例を以下に示す。
【0089】
調節デバイス3は、コンピュータ(図示せず)、及びその機能をコンピュータが実行することを可能にするソフトウェア(図示せず)を含む。
【0090】
調節デバイス3は、技術手段(コンピュータ及び/又はソフトウェア及び/又は電子的手段及び/又は機械的手段)のみを含む。
【0091】
医療手術シミュレータの実行の実施例
左大腿動脈913及び右大腿動脈912及び左総頸動脈911におけるカニューレ931,932及び933の挿入(心臓に向いている)、及び心臓内プローブ16の右総頸動脈914への挿入のほかに、カニューレ(図示せず)は、内頸静脈(図示せず、心臓に向いたカニューレ)及び大腿静脈(図示せず、下大静脈に向いたカニューレ)にも挿入される。さらに、頭部と死体9の4つの体の一部の四肢とは、両頚部レベルと両側大腿部及び上腕部レベルで、カニューレの下流の腸骨血管の結紮によって排除される。この遠位及び末梢の排除によって、体幹(胸部又は腹部)の血管形成を最適に達成することが可能になる。しかし、カニューレと結紮の位置を見直して、必要に応じてメンバーの血管再生を可能にすることができる。
【0092】
初期化プロセス
第1のステップは、初期の液体及びガス注入圧を決定することからなる。これを行うために、指導者は、液圧調節器14を用いて、心臓内プローブ16によって測定された心内圧140mmHgになるように、その注入圧を設定する。まず、調節デバイスは、初期に定めた心拍数(通常は、毎分60回、31%の収縮)で3つの注入電磁弁111,121,131を制御する。これを達成するために、相当する矩形波信号(通常は、1Hz、31%の中間サイクル)が、調節デバイスのコンピュータによって、I/Oカードを介して、注入電磁弁を制御する。第2に、液体注入圧は、I/Oカードを介してPCによって電圧が制御される液体注入圧調節器14の設定によって決定され、0.05バール(最初は弱い初期注入圧)の値を得る。次に、調節デバイスソフトウェア3は、液体注入圧調節器14の駆動電圧を、心臓内プローブ16による測定値が140mmHgになるまで徐々に増加させる。デバイスを設定する指導者は、圧力センサ174によって提供される情報を使用することができる。
【0093】
この段階で、呼吸レベルで、ガス注入圧に関して、ソフトウェアは、I/Oカードを介して送信された方形波信号を使用して、通常毎分40サイクル(0.66Hz、50%の吸気)である頻度で気相分配器21を制御し始める。調節デバイスソフトウェア4は、セッションの開始時に肺941,942に注入されたガスに対して0.05バールの圧力(流量計273によって測定され、例えば、制御スクリーン上に表示されるようにコンピュータに送信される値)に達するように、ガス圧力調節器24を電圧で駆動する。次に、0.4バールの注入空気圧に達するまで(この値は、死体9の胸郭の所望の動きに応じて指導者によって変更することができる)、ガス圧力調節器24の制御電圧を増加させる。肺941及び942を徐々に加圧し、肺コンプライアンス及び胸郭コンプライアンスを使用し、そして呼吸運動(コンプライアンスサイクル)を損なう可能性のある胸膜肺の圧外傷を回避するために、増加は徐々に起こる(持続時間=約2〜3分)。
【0094】
この初期化プロセスからの初期値は、例えば、コンピュータメモリ4によって記憶され以下のように定義される。
− 初期心拍数(F card init)、
− 初期収縮期/拡張期比(%収縮期初期)、
− 合成血液の初期注入圧(P card initial)、
− 初期呼吸数(F resp init)、
− 吸気/呼気率(%insp init)、
− 呼吸ガス注入圧(P resp init)。
【0095】
指導者によって開始された心停止のシミュレーション
心停止シナリオの状況では、指導者は、血管形成した死体9の心停止をシミュレートし、それを開始することを望むかもしれない。指導者がこのシナリオを開始するとき、学習者は、(進行性徐脈による心臓リズムの変更、それに次ぐ心収縮不全の形態の形で、)医療モニタ(医療スコープ)の仲介を介して視覚情報を受け取る。
【0096】
このシナリオが開始されると、コンピュータは、コンピュータメモリ4に記憶された所定のシナリオに従って、3つの注入電磁弁111,121,131に対して(順次に又はその頻度を非常に急速に減少させるように)送信される方形波信号、並びに中間サイクル比を適応させる(収縮期/拡張期比の低下は、心拍数の低下(心停止、心拍数の構成式=f(時間))と相関する)。心拍数についてのこの減少段階の間において、3つの注入電磁弁のみが時間基準の方法で作動され、3つの排出電磁弁112,122、及び132は、変更されない。この減少は、電磁弁に送られる信号が停止される(心停止)まで続けられる。この心臓リズムの減少の間ずっと、心臓内プローブ16によって得られた情報は、医療モニタを介して視覚的に学習者に伝達される。
【0097】
同様に、心臓血管系回路における圧力の低下が誘発される(その結果、学習者は、血管形成した死体9(大動脈の脈拍についての消滅)を感じることができる)。この現象をシミュレートするために、(I/Oカードを介したコンピュータによる)ソフトウェアは、共通供の供給導管A1Cに圧力(圧力センサ174によって測定)がなくなるまで、液圧調節器14に送られる電圧を減少させる。コンピュータは、動脈圧=f(時間)の構成式から、関数についてのこの減少を計算する。これは、(心臓内プローブ16によって測定され、医療モニタ上に表示される)心内圧を低下させる効果を有する。
【0098】
呼吸系回路には物理的な変化はない。胸郭は、同じ動きを維持する(実際の手術室では、機械によってガスが注入され続ける)。
【0099】
一方、医療モニタでは、酸素測定は60%まで徐々に減少し、患者が死亡したことを学習者に知らせる。コンピュータは、医療モニタ上でこの変更を実行する。酸素測定の減少速度は、コンピュータで予め定められている。
【0100】
指導者によって開始される心臓リズムの簡単な変更のシミュレーション
指導者は新しい心拍数値(すなわち、収縮期/拡張期比)を定義する。次に、ソフトウェアは、所望のパラメータに相当する方形波信号を、注入電磁弁111,121,131に送る。新しい心拍数値に達するまでの時間は、指導者によっても定義される(10分の1秒)。心拍数の変更は、医療モニタを介して、視覚的に学習者に与えられる。
【0101】
初期心拍数値への復帰は、同じプロセスに従うが、逆方向である。
【0102】
指導者によって開始された呼吸リズムの変更のシミュレーション
呼吸数及び吸気/呼気比は、シナリオに応じて変更することもできる。死体9に関する物理的な結果は、胸郭の拡張回数及び横隔膜の動きについての変更によって特徴付けられ、手術中に学習者を邪魔する可能性がある。これは、パラメータ(カプノグラフィ(CO濃度)パルス酸素測定、呼吸数)を変更することにより、医療モニタ上において学習者に視覚的に示されなければならない。ソフトウェアは、医療モニタ上でリアルタイムに視覚的に再表示される。
【0103】
次いで、ソフトウェアは、指導者によって提供された呼吸データ(1分あたりのサイクル数及び吸気/呼気比)から計算され、気相分配器21に送られた方形波信号を変更しなければならない。ソフトウェアによって計算されたこの変更(呼吸数の増減)は、指導者によって定められた一定期間(呼吸数の加速又は減速)にわたって実行されてもよい。
【0104】
ガス注入圧に変化はない。
【0105】
この呼吸の変更は、呼吸停止(すなわち、胸部及び横隔膜の動きの完全な停止、カプノグラフィ、及びパルス酸素測定の低下による医療モニタ上における相当する変換)を含む。この場合、ソフトウェアは、気相分配器21のスイッチを切る。
【0106】
換気を再開することは、同じ方法で行われるが、反対方向に行われる。言い換えれば、指導者は、ソフトウェアに新しい呼吸パラメータ(1分あたりのサイクル数及び吸気/呼気比)を与える。初期の呼吸パラメータを再初期化することもできる。次に、ソフトウェアは、(I/Oカードを介して)空気式分配器21に送られた新しい適切な矩形波信号の回数を計算する。呼吸の漸進的な再開(呼吸数の増加)は、「再開する呼吸回数=f(時間)」の構成式に応じて、指導者によって定められた期間にわたって行われる。呼吸パラメータ(カプノグラフィ、パルス酸素測定、及び呼吸回数)は、リアルタイムで医療モニタ上で更新され、情報を学習者に与える。
【0107】
本明細書において、用語「=f(X)」は、「Xの関数である」ことを意味する。
【0108】
動脈圧迫モード(非循環)から動脈血液循環モードへの移行
上述したように、死体9の(拍動性の)血管形成は、3つの液体注入モードに応じて機能することができる。
【0109】
加圧モード(この加圧モードにおいて、心臓血管系回路内の液体の有意な循環は存在しない)。これによって、漏れがより容易に検出され、使用される液体の量が最小限に抑えられる。これが使用されるメインモードである。3つの排出電磁弁112,122,132が閉じられているときに、すなわち、(I/Oカードを介して)コンピュータによって電圧制御されていないときに、血管形成された死体の動脈網の拍動は、動脈網の流体カラムの加圧によって達成される。拍動性は、3つの注入電磁弁112,122,132を駆動することによって達成される。液体は、器官(心臓92)を通過した後に静脈系を通ってのみ流れる。この動作モードは、より少ない液体を消費する利点を提供し、死体の胸部及び/又は腹部の器官又は内臓の血行を再開し、現実に似たより良い色(より高い濃度の着色剤)、質感、及び温度を与え、静脈カニューレから外部に向かう液体の流れの前に、静脈系の流速、圧力、及び緊張状態を得る。
【0110】
発散循環モード(上半身から下半身への循環):この場合、コンピュータは、指導者からコマンドを受信した後に、以下のタスクを実行する。
−液体を頸動脈911に注入する注入電磁弁111に矩形波信号を送る(心拍数、及び収縮/拡張比の関数);
−大腿動脈912,913に接続された2つの他の注入電磁弁121,131を閉じる(スイッチオフ);
−大腿動脈に接続された2つの排出バルブ122,132をI/Oカードを介して連続的な(非拍動性の)電圧を送ることによって開く(スイッチオン);
−頸動脈に接続された排出電磁弁112を閉じる(スイッチオフ)。
【0111】
集束循環モード(下半身から上半身への循環):指導者は、PCに命令することによって循環の方向を逆転することもできる:
−大腿動脈912,913に接続された2つの注入電磁弁121,131に方形波信号を送る(心拍数、及び収縮/拡張比の関数);
−頸動脈911に接続された注入電磁弁111を閉じる(スイッチオフ);
−I/Oカードを介して連続的な(非拍動性の)電圧を送ることによって、頸動脈に接続された排出電磁弁112を開く;
−大腿動脈に接続された2つの排出電磁弁122,132を閉じる(電圧無し)。
【0112】
指導者によって開始されなかったシナリオ:偶発的な血管創傷
手短に言えば、外科手術のシナリオの過程で学習者によって作成された偶発的な血管創傷は、液体(模擬の血液)の漏れをもたらし、したがって心臓血管系回路の圧力を低下させる。
【0113】
このような場合には、流量計151,152,153によって測定された注入液の流速が大幅に増加する。ソフトウェアがこのような流速の増加を検出した場合は、以下を行わなければならない:
−心臓内プローブ16によって収集されたデータを使用して医療モニタ上に血圧降下を表示する;
−シナリオによって定義された構成式(心臓周波数=f(注入流速))に応じて、心拍数の増加(並びに収縮/拡張比)を計算する。収縮/拡張比は、心拍数を用いて決定される。心拍数についてのこの変更は、医療モニタに表示されるであろう。計算された新しい方形波信号は、3つの注入電磁弁111,121,131に送られ、血管形成された死体9に対して物理的に感じる脈動を変更する;
−呼吸数に変化はない。
【0114】
血管創傷の制御なしに(したがって、測定された上昇流速が持続した状態で)、指導者によって予め定義された期間の後に、(学習者に血行力学的な状況の重症を示す)心拍数の減少(したがって、循環圧力の崩壊)を伴う新たな反応が引き起こされる。
【0115】
ソフトウェアは、指導者によって定義された(心拍数=f(時間)、又はコンピュータメモリ4内で利用可能な所定のモデルから取られた)構成式に応じて、3つの注入電磁弁を駆動する矩形波信号周波数を減少させることを指令する。
【0116】
同様に、心拍数及び心内圧は、医療モニタ上でリアルタイムに変更され、視覚情報を学習者に与える。
【0117】
(I/Oカードを介して)コンピュータによって液圧調節器に送られる電圧を低下させることによって、液体の注入圧を低下させる。注入圧が低下する速度は、指導者によって定義されるか、(例えば10秒間)予めプログラムされる。
【0118】
血管の創傷が修復された場合、記録された流速は最初の基本状態に戻り、自動反応はすべての定数を初期状態に戻す。このような場合において、コンピュータは、3つの注入電磁弁111,121,131の各々、及び気相分配器21に送られた方形波信号を、上述の最初に定義した値に変更する。
【0119】
血管世界が修復されない場合には、循環停止のシナリオが始まる。これは、3つの注入電磁弁及び気相分配器の完全な停止に変換される。コンピュータは、方形波信号をこれらのアクチュエータにもはや送信しない。
【0120】
上記のシナリオは、心臓内プローブ16によって測定された心内圧の損失によっても開始することができる。
【0121】
場合により、3つの注入電磁弁のうちの1つがコンピュータから(I/Oカードを介して)矩形波信号を受信した場合には、後者は、共通の供給導管A1C内の液体に赤色着色剤を注入するようにインジェクタ(ローラーポンプ)176の始動を指令し、それにより血液をシミュレーションする。
【0122】
熱電対(例えば、温度計175)によって、注入された液体及び気体の温度を、医療モニタ上にリアルタイムで表示することが可能となる。
【0123】
腸骨血管の透過性及び意図されるシナリオに応じて1つ又は複数のカニューレによって注入された液体は、血液の色、温度、質感、及び粘度をシミュレーションする。このシミュレーションの液は、従来の機能的解剖学的な方向の動脈網を使用し、内臓に到達し、毛細血管を介してそれらを血管再生し、そして血液の生理学的方向に従って、静脈カニューレに戻る。その後、それは体から除去される。
【0124】
動脈の入力によって、動脈系において圧力カラムを維持することを可能にする。電磁弁111,121及び131は、この液体カラムの脈動寸法を提供し、それによって、外科医用の血管に送られる鼓動を最小にする。
【0125】
臓器内における模擬血液の流れは、それらに現実的な色、温度、質感を与える。
【0126】
提案されたシナリオにおいてECC及び冷心筋保護の下でそれが臨床的に行われるので、心臓の鼓動がないことは、心臓の手術における問題をもたらさない。
【0127】
上記の説明において、死体(9)は、人間の死体である。しかしながら、本発明は、人間以外の動物の死体で実施することができる。
【0128】
もちろん、本発明は、上記の実施例に限定されず、そして、本発明の範囲を逸脱することなく、これらの実施例に対して多くの修正を行うことができる。例えば、吸引デバイス(図示せず)を使用して、死体の胃から液体を吸引し、胃が腫脹するのを防ぐことができる。そのような吸引デバイス(図示せず)は、吸引(真空)システムに接続された胃チューブ(Faucherチューブ)からなり、それによって胃の液体を吸引することができる。このような胃チューブは、胃の中に吸引端部を位置させるために、死体の口を介して挿入することができる。
さらに、本発明の異なる特徴、形態、変形例、及び実施形態は、さまざまな組み合わせに応じて、それらに互換性がないか又は互いに排他的でない限り、互いに組み合わせることができる。
図1
図2
図3