特許第6861220号(P6861220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6861220掘削流体のためのベントナイト特性の改質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861220
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】掘削流体のためのベントナイト特性の改質
(51)【国際特許分類】
   E21B 21/00 20060101AFI20210412BHJP
   C09K 8/03 20060101ALI20210412BHJP
   C01B 33/40 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   E21B21/00 A
   C09K8/03
   C01B33/40
【請求項の数】21
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-551283(P2018-551283)
(86)(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公表番号】特表2019-518152(P2019-518152A)
(43)【公表日】2019年6月27日
(86)【国際出願番号】US2017025253
(87)【国際公開番号】WO2017173207
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2018年10月22日
(31)【優先権主張番号】15/088,990
(32)【優先日】2016年4月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】アル−シャフェル,マンスール,エー.
(72)【発明者】
【氏名】アルフリオウ,アクラム,エー.
(72)【発明者】
【氏名】アル−モフレー,アワド,エム.
(72)【発明者】
【氏名】アル−アームリ,ジャマル,エム.
(72)【発明者】
【氏名】アザイディ,サイド レハン,アフマド
(72)【発明者】
【氏名】アル−トゥワイリブ,アメール,エー.
【審査官】 柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−298393(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0284281(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0152838(US,A1)
【文献】 特開昭57−128734(JP,A)
【文献】 特開2006−206711(JP,A)
【文献】 特開平05−254823(JP,A)
【文献】 特開2004−196969(JP,A)
【文献】 特開2011−136851(JP,A)
【文献】 特開2001−087640(JP,A)
【文献】 特開2001−240852(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105174276(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 21/00
E21B 43/22
C01B 33/40
C09K 8/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベントナイトを変性させて、前記ベントナイトが掘削泥水用途において有用になるようにするための方法であって、
原水を使用してサウジアラビアのクライス地区に特有のナトリウム型ベントナイトを調製して、前記ベントナイトから汚染物質を除去するステップと、
前記ベントナイトを微粉末に粉砕するステップと、
50μm〜150μmの間の粒径になるように前記微粉末を篩にかけて、篩にかけた微粉末を生成するステップと、
前記篩にかけた微粉末と、固形粉末状のポリアニオン性セルロースポリマーと混合して、物理的に処理された変性ベントナイト組成物を生成するステップであって、前記変性ベントナイト組成物が重量で3%から11%の前記ポリアニオン性セルロースポリマーを含むステップと、
水中の変性ベントナイトの均質溶液が生成されるまで、前記変性ベントナイト組成物を水に加えるステップと、
前記水中の変性ベントナイトの均質溶液を室温で静置して、掘削泥水用途において有用な組成物を生成するステップであって、前記組成物は、塑性粘度に対して降伏点の比率が少なくとも0.7以上であって、掘削泥水用途に適した、カッティングスの運搬および懸濁を有するステップと
によって特徴づけられる、方法。
【請求項2】
前記水中の変性ベントナイトの均質溶液が20分で生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記掘削泥水用途において有用な組成物が、掘削泥水に関するアメリカ石油協会の(APIの)要件を満たす、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ベントナイトを変性させるための前記方法において、ヒドロキシド組成物が使用されない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記サウジアラビアに特有のベントナイトが、重量パーセントで、58%ナトリウムモンモリロナイト、5%長石、25%石英−SiO、8%カオリナイト、2%岩塩および2%イライトの結晶鉱物相によって特徴づけられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ナトリウム型ベントナイトが、重量パーセントで、71%ナトリウムモンモリロナイト、5%長石、15%石英−SiO、6%カオリナイト、%岩塩および1%イライトの結晶鉱物相によって特徴づけられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記水中の変性ベントナイトの均質溶液の粘度が、掘削泥水の粘度に関するAPIの要件を満たすことを検証するステップによってさらに特徴づけられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記篩にかけた微粉末をポリアニオン性セルロースポリマーおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムと混合するステップによってさらに特徴づけられる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記変性ベントナイト組成物が、重量で3%〜11%の間のポリアニオン性セルロースポリマーによって特徴づけられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記変性ベントナイト組成物が、重量で4%〜10%の間のポリアニオン性セルロースポリマーによって特徴づけられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記変性ベントナイト組成物が、重量で4%〜9%の間のポリアニオン性セルロースポリマーによって特徴づけられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記変性ベントナイト組成物が、重量で5%〜8%の間のポリアニオン性セルロースポリマーによって特徴づけられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記変性ベントナイト組成物が、重量で8.5%のポリアニオン性セルロースポリマーによって特徴づけられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリアニオン性セルロースポリマーが、少なくとも第1のポリアニオン性セルロースポリマーおよび第2のポリアニオン性セルロースポリマーによって特徴づけられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記掘削泥水用途において有用な組成物が掘削泥水に関するAPIの要件を満たすことを検証するためにX線粉末回折(XRD)を実施するステップによってさらに特徴づけられる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記掘削泥水用途において有用な組成物を坑井孔炭化水素回収操作に適用するステップによってさらに特徴づけられる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記水中の変性ベントナイトの均質溶液を静置して、掘削泥水用途において有用な組成物を生成する前記ステップが16時間継続する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
掘削泥水用途において有用な変性ベントナイト組成物であって、
50μm〜150μmの間の粒径になる微粉末として存在する、90重量%のサウジアラビアのクライス地区に特有のナトリウム型ベントナイト、および10重量%の固形粉末状のポリアニオン性セルロースポリマー
によって特徴づけられる粉末状混合組成物、ならびに

によって特徴づけられ、
前記変性ベントナイト組成物は、塑性粘度に対する最大降伏点の比率が0.7〜1.5、12.5ml/30minの最大流体損失を有し、それにより、掘削泥水用途において、カッティングスの運搬および懸濁に適している、組成物。
【請求項19】
前記ナトリウム型ベントナイトが、重量パーセントで、71%ナトリウムモンモリロナイト、5%長石、15%石英−SiO、6%カオリナイト、%岩塩および1%イライトの結晶鉱物相によって特徴づけられる、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記変性ベントナイト組成物が、前記掘削泥水に関するAPIの要件を満たす、請求項18または19に記載の組成物。
【請求項21】
ソーダ灰によってさらに特徴づけられる、請求項18〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、炭化水素含有貯留層用の掘削流体における使用のための組成物に関する。特に、本開示の実施形態は、変性ベントナイトを含む掘削流体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素含有貯留層において、坑井孔は、形成の最初から完成および生産まで坑井孔流体を含む。坑井孔流体は、坑井の制御(炭化水素含有層内の流体に対する液圧)、坑井孔壁の完全性(坑井孔壁にかかる液圧および損失制御添加剤の供給)および潤滑性(機械操作)を含むいくつかの目的を果たす。坑井孔流体は、流路内部の管、坑井孔アニュラスおよび坑井孔壁を含む、流体的に隔離されていない坑井孔内のすべての部分およびあらゆるものと流体接触している。坑井孔に連結された他の流路は、多くの場合、少なくともいくらかの坑井孔流体を含む。
【0003】
掘削中、掘削流体(掘削泥水とも呼ばれる)は、坑井孔流体として坑井孔の内部を満たす。一部の泥水は石油系材料であり、一部は水系材料である。石油系材料は、少なくとも90重量パーセントの油系泥水(OBM)を含む。適したベース石油材料の例には、原油、原油の蒸留留分(ディーゼル油、灯油および鉱油を含む)および重質石油精製装置の液体残留物が含まれる。OBMの非主要部分は、一般的に、連続石油相内部に存在する水または水溶液である。他のOBMの成分には、乳化剤、湿潤剤、および望ましい物理特性を与える他の添加剤が含まれ得る。
【0004】
油系泥水には合成油系泥水(SOBM)も含まれる。合成油系泥水は、ある種の化学的または物理的特性を向上させるために、化学処理、改変または精製された原油誘導体である。数千もの個々の化合物のいくつかのクラス(例えば、アルカン、芳香族、硫黄含有、窒素含有)を含み得る、部分精製された原油の原油温度留分と比較すると、SOBMは、わずか数十の個々の化合物を含む1つのクラス(例えば、C8〜14の範囲のエステル化合物)を含み得る。SOBMのベース流体として使用される材料の例には、直鎖アルファオレフィン、異性化オレフィン、ポリアルファオレフィン、直鎖アルキルベンゼンならびに植物由来および炭化水素由来のエステル化合物が含まれる。SOBMは、油系泥水のように反応するが、より狭く、予測可能な範囲の化学的および物理的反応を示すモノリシックシステムである。
【0005】
掘削操作を実施する間、坑井孔流体は、流路を通じて地表と坑井孔内部の間を循環する。坑井孔流体は坑井孔の内部も循環する。第1の流路を通じて圧力下で掘削流体を坑井孔に導入すると、坑井孔流体における流体の流れの誘因となる。地表に繋がる第2の流路を通じて坑井孔流体を排水すると、坑井孔流体が、第1の流路から坑井孔内部の第2の流路に循環する。排水され、第2の流路を通じて地表に戻される坑井孔流体の予想量は、第1の流路を通じて坑井孔に導入される量と等しい。流体的に隔離されている坑井孔の部分は、循環を補助しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水系ではない掘削泥水は、掘削操作中に脱水して、添加剤を失いやすい。脱水された添加剤不足の残留物は、固体、ゲルおよび高粘性流体として、より低流速の部分に集まり得る。「濾過ケーキ」は、坑井孔壁および流路外部を含む坑井孔の内面に付着する、堆積した固体およびゲル化した掘削流体の層である。炭化水素含有貯留層における坑井孔の有益な掘削には、適切な密度、粘度および他の特性の掘削泥水が必要である。
【0007】
ベントナイト粘土は掘削流体の主成分であり、どのような掘削流体も、坑井の安全で満足のいく完成を促進する特定の特性を有していなければならない。掘削操作におけるベントナイト粘土の消費量は、サウジアラビアだけで年間10万トン超に達し、実質的にすべてのベントナイトが国外から輸入されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は変性ベントナイト組成物を提示し、これらは、いくつかの実施形態において、掘削泥水に関するアメリカ石油協会の(APIの)規格を満たす。変性には、特定のAPI規格を満たすための1つ以上のポリマーの使用を伴う物理的および化学的処理の両方を含むことができる。変性ベントナイトは、以下の通り提示される本開示にしたがって、掘削泥水添加剤として使用され得る。現地のベントナイト露頭(サウジアラビア、特にジェッダの北70キロメートル、マッカ−マディーナ道路に隣接するクライス地区において特有のベントナイト)を、掘削泥水に関するアメリカ石油協会(API)の規格を満たすよう自社で変性させた。変性には、API規格を満たすためのPAC(商標)−Rポリマーの使用を伴う物理的および化学的処理の両方を含む。ここで変性ベントナイトは、集められる分析データにしたがって掘削泥水添加剤として使用され得る。
【0009】
現地のベントナイトの特性は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、DRISPAC(登録商標)ポリマー(多機能ポリアニオン性セルロースポリマー)およびベントナイト増量剤などの材料を含む材料を、調製された掘削泥水に加えて、粘度および濾過損失を改善することによって経済的に改良することができる。また、剪断速度は、粘土懸濁液の分散速度を改善し、したがって、粘度を上昇させ、濾過損失を減少させる改良方法として用いられ得る。ベントナイト増量剤は、塩またはポリマーのいずれかにすることができ、ベントナイト懸濁液をわずかに凝集させることによって粘度上昇を促進させる。
【0010】
したがって、開示されているように、実施形態には、ベントナイトを変性させて、ベントナイトが掘削泥水用途において有用になるようにするための方法が含まれる。本方法は、原水を使用してサウジアラビアに特有のベントナイトを調製して、ベントナイトから汚染物質を除去するステップと、ベントナイトを微粉末に粉砕するステップと、約50μm〜約150μmの間の粒径になるように微粉末を篩にかけて、篩にかけた微粉末を生成するステップと、篩にかけた微粉末をポリアニオン性セルロースポリマーと混合して、変性ベントナイト組成物を生成するステップと、水中の変性ベントナイトの均質溶液が生成されるまで、変性ベントナイト組成物を水に加えるステップと、水中の変性ベントナイトの均質溶液を静置して、掘削泥水用途において有用な組成物を生成するステップ、を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、水中の変性ベントナイトの均質溶液は約20分で生成される。他の実施形態において、掘削泥水用途において有用な組成物は、掘削泥水に関するアメリカ石油協会の(APIの)要件を実質的に満たす。さらに他の実施形態では、ベントナイトを変性させるための方法において、サウジアラビアに特有のベントナイトはナトリウム型ベントナイトであり、ヒドロキシド組成物は使用されない。
【0012】
いくつかの他の実施形態において、サウジアラビアに特有のベントナイトは、重量パーセントで、約58%ナトリウムモンモリロナイト、約5%長石、約25%SiO、約8%カオリナイト、約2%岩塩および約2%イライトを含む。特定の実施形態において、変性ベントナイト組成物は、重量パーセントで、約71%ナトリウムモンモリロナイト、約5%長石、約15%SiO、約6%カオリナイト、約0%岩塩および約1%イライトを含む。
【0013】
さらに他の実施形態において、本方法は、水中の変性ベントナイトの均質溶液の粘度が、掘削泥水の粘度に関するAPIの要件を実質的に満たすことを検証するステップを含む。他の実施形態において、本方法は、篩にかけた微粉末を低粘度カルボキシメチルセルロースナトリウムと混合するステップを含む。いくつかの実施形態において、変性ベントナイト組成物は、重量で約3%〜約11%の間のポリアニオン性セルロースポリマーを含む。さらに他の実施形態において、変性ベントナイト組成物は、重量で約4%〜約10%の間のポリアニオン性セルロースポリマーを含む。さらに別の実施形態において、変性ベントナイト組成物は、重量で約4%〜約9%の間のポリアニオン性セルロースポリマーを含む。特定の実施形態において、変性ベントナイト組成物は、重量で約5%〜約8%の間のポリアニオン性セルロースポリマーを含む。
【0014】
さらに別の実施形態において、変性ベントナイト組成物は、重量で約8.5%のポリアニオン性セルロースポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ポリアニオン性セルロースポリマーは、少なくとも第1のポリアニオン性セルロースポリマーおよび第2のポリアニオン性セルロースポリマーを含む。本方法のいくつかの実施形態は、掘削泥水用途において有用な組成物が掘削泥水に関するAPIの要件を実質的に満たすことを検証するためにX線粉末回折(XRD)を実施するステップを含む。特定の実施形態において、本方法は、掘削泥水用途において有用な組成物を坑井孔炭化水素回収操作に適用するステップを含む。
【0015】
本方法のさらに別の実施形態において、水中の変性ベントナイトの均質溶液を静置して、掘削泥水用途において有用な組成物を生成するステップは、約16時間継続する。
【0016】
さらに開示されているのは、掘削泥水用途において有用な変性ベントナイト組成物であり、本組成物は、約50μm〜約150μmの間の粒径になる微粉末として存在する、約90重量%のサウジアラビアに特有のベントナイト、および約10重量%のポリアニオン性セルロースポリマーを含む粉末状混合組成物、ならびに水を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、粉末状混合組成物は、重量パーセントで、約71%ナトリウムモンモリロナイト、約5%長石、約15%SiO、約6%カオリナイト、約0%岩塩および約1%イライトを含む。さらに他の実施形態において、変性ベントナイト組成物は、掘削泥水に関するAPIの要件を実質的に満たす。さらに別の実施形態において、本組成物はソーダ灰を含む。
【0018】
これらおよび他の本開示の特徴、態様および利点は、以下の説明、特許請求の範囲および添付図面を参照することでよりよく理解されるであろう。しかし、図面は、本開示のいくつかの実施形態のみを示しており、したがって、本開示の範囲は、等しく効果的な他の実施形態が認められるため、その範囲を限定するものと見なされるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】非アメリカ石油協会(API)ベントナイトを、API規格にしたがって掘削泥水に適した組成物に変性させる方法の1つの実施形態のプロセス図である。
図2】APIベントナイトのサンプル、非APIベントナイト(「未処理のベントナイト」)のサンプルおよび変性非APIベントナイト(「処理したベントナイト」)のサンプルの組成物を比較する回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
変性非APIベントナイトの組成物および変性非APIベントナイトを調製するための方法についての実施形態の特徴および利点、ならびに明らかになるであろうその他がさらに詳細に理解されるように、本明細書の一部をなす添付図に示すこれらの実施形態を参照することにより、先に簡潔にまとめた本開示の実施形態をさらに具体的に説明する場合がある。しかし、図面は、本開示の種々の実施形態のみを示しており、したがって、本開示の範囲には、他の効果的な実施形態も含み得るため、その範囲を限定するものと見なされるべきではないことに留意されたい。
【0021】
ベントナイトは、吸収性フィロケイ酸アルミニウムであり、大部分がモンモリロナイトからなる実質的に純粋でない粘土である。モンモリロナイトは、最も豊富なスメクタイト粘土鉱物である。良好な品質のベントナイトは、主にスメクタイト(モンモリロナイト)を含み、二番目に石英、方解石およびマイカなどの鉱物を含む。ベントナイトは、多くの形態で市場に存在する。産業界において、モンモリロナイトは一般に、どちらの交換イオンが優勢であるかによってナトリウム(Na)型またはカルシウム(Ca)型に分類される。ベントナイトは、負電荷、微細なサイズ、および非常に高い比表面積、および水和に対する高い感度などの特定の特性を有する。掘削泥水におけるベントナイトの機能には、掘削操作における掘削流体の流動特性および濾過速度の制御が含まれ、これらは掘削流体技術の重要な部分である。
【0022】
望ましいレオロジー特性には、高い剪断減粘性が含まれる。言い換えれば、剪断速度が高いほど粘度は低く、カッティングスの運搬および懸濁のため、塑性粘度に対して高比率な降伏点を有する、比較的高いゲル強度が存在する。
【0023】
ここで図1を参照すると、非アメリカ石油協会(API)ベントナイトを、API規格にしたがって掘削泥水に適した組成物に変性させる方法の1つの実施形態のプロセス図が示されている。プロセス100において、掘削泥水における使用に関するAPI規格を満たしていない、サウジアラビアに特有の非変性ベントナイトを、ステップ102において洗浄し、原水ですすいで汚染物質を除去した。ステップ104において、洗浄してすすいだ非変性ベントナイトを、Retsch(登録商標)製Mortar Grinder RM 200を使用して、非常に微細な粉末に粉砕した。ステップ106において、粉砕した非変性ベントナイトを、電子式篩振盪機カラムを使用して粒径約75μm(200メッシュ)まで篩にかけた。ステップ108において、約91.5重量%の非変性ベントナイト対約8.5重量%のPAC(商標)−Rポリマーの重量比で、篩にかけた非変性ベントナイトをポリアニオン性セルロースポリマー(PAC(商標)−R)と混合した。
【0024】
ベントナイト鉱石は通常、ベントナイトが採掘または採石される場所によって量および組成が異なる他の鉱物材料を伴う。水によって除去されるベントナイト中のいくつかの共通の不純物は、粘土の大きさのシリカ、石膏、イライトおよび非結晶性化合物である。
【0025】
PAC(商標)−Rポリマーは、Halliburtonの製品であり、白色の自由流動性粉末である変性させた天然のポリアニオン性セルロース系ポリマーである。PAC(商標)−Rポリマーは、大部分がカルボキシメチルセルロースナトリウム塩から成る。本明細書および実施例は、PAC(商標)−Rポリマーの使用について論じているが、PAC(商標)−Rポリマーに加えて、またはこれに代わって、他の適したポリマーが本開示の実施形態において使用され得ることを当業者なら理解するであろう。ステップ110において、篩にかけた非変性ベントナイトおよびPAC(商標)−Rポリマーの混合物(混合物は、全体を通じて「変性ベントナイト」とも呼ばれる。)を蒸留水に加え、溶液が約20分後に均質になるまで混合した。ステップ112において、水中の変性ベントナイト(例の掘削溶液)を覆い、約16時間、一晩保管した。
【0026】
ステップ114において、ベントナイト掘削泥水に関するAPI規格にしたがって変性ベントナイトを分析した。分析は、変性ベントナイトが市販のベントナイトに似ていることを示す。
【0027】
表1は、変性させた「現地のベントナイト」を用いて掘削泥水を調製するためのアメリカ石油協会の規格を満たすベントナイト、またはPAC(商標)−Rポリマーを用いて変性させたサウジアラビアに特有のベントナイトの特定の特性を比較している。本開示のいくつかの実施形態において、サウジアラビアに特有のベントナイトはナトリウム型ベントナイトであるため、ベントナイトを変性させるために水酸化ナトリウムは使用されず、または必要とされない。
【表1】
【0028】
表2は、サウジアラビアに特有の非変性ベントナイトおよびサウジアラビアに特有の(PAC(商標)−Rポリマーを使用した)変性ベントナイトの組成物を比較するX線粉末回折(XRD)データを示す。XRDは、粘土鉱物の同定に利用される分析手法である。非変性サンプルについて、砂の予備除去後、遠心分離法を利用することによって粘土をシルトから分離した。空気乾燥したサンプル、ならびにエチレングリコール蒸気で処理したサンプルまたは350℃および550℃まで加熱したサンプルについて、XRDパターンを得た。鉱物を同定するために、回折パターンを標準と比較した。
【0029】
APIベントナイト、非APIベントナイトおよび変性非APIベントナイトのサンプルをXRDによって分析した。McCrone Micronizingミル内で粉砕することによってサンプルを微細な粉末に粉砕した。以下の表2および図2に示す個々の化合物の3つの主要なピークによってサンプルを同定した。主要なピークそれぞれの下の面積を使用することによって、同定された化合物の定量化を実施した。面積は実際の既知の値に一致していたため、既知の成分濃度を含むベントナイトのサンプルを分析して、ピークの面積によって濃度を計算した。次に、非APIベントナイトサンプルおよび変性非APIベントナイトサンプルを試験した。ピークの面積によって成分濃度を計算した。ナトリウムモンモリロナイトのピークが変化し、変性非APIベントナイト(図2中の「処理したベントナイト」)のピーク下の面積が増大した。変性非APIベントナイトサンプルの石英濃度は低下した。長石濃度は大きな影響を受けず、粘土鉱物も大きな影響を受けなかった。
【表2】
【0030】
結晶鉱物相の同定は、PANalytical製X’Pert HighScoreソフトウェアを使用して実現した。XRDデータの半定量化は、ピークの面積に基づいてMDI Products製JADEソフトウェアを使用することによって実施した。結晶相の相対的な概算値を表2に一覧にした。
【0031】
図2は、APIベントナイトのサンプル、非APIベントナイトのサンプルおよび変性非APIベントナイトのサンプルの組成物を比較する回折データを示す。表3は、サウジアラビアに特有の5つの非変性ベントナイトサンプル(異なる場所および異なる深さで採取)およびこれらの特性のデータの比較を示す。示す通り、その特性の多くは、収率、分散塑性粘度、分散濾過水、メチレンブルー試験、および100メッシュ上の残渣(乾燥)などの要求規格を満たさない。
【0032】
API規格にしたがってベントナイトのレオロジー特性を測定するために実施された4つの主要な試験があった。降伏点:塑性粘度の比については、Fan Viscometer装置を使用することによって、600rpmおよび300rpmにおけるサンプルの粘度を測定した。粘度を測定した後、降伏点:塑性粘度の比を計算した。サンプルのpH値を試験した。分散塑性粘度を試験するために、ヘキサメタリン酸ナトリウム(10wt.%)を調製し、5μlを変性非APIベントナイトに加えた。その後、600rpmおよび300rpmにおける粘度を再び測定した。分散塑性粘度は、600rpmにおける粘度と300rpmにおける粘度の差を取ることによって計算される。
【0033】
分散濾過水の体積を測定するために、サンプルを窒素ガスで約100psiまで加圧した。窒素加圧の開始から7.5分後、30分経過するまで、加圧されたセルから出てくる濾過水を集めた。最後に、水の体積に2を掛けて、濾過水の体積を計算した。
【表3】
【0034】
表4は、変性非APIベントナイトの5つのサンプルを比較するデータを示し、ベントナイトは、低粘度カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−LV)を用いて変性させた。変性時、300rpmおよび600rpmの両方における粘度、pH値、塑性粘度(cp)および降伏点(lbs./100ft.)を、API規格を満たすよう調整した。
【0035】
表3は、非変性非APIベントナイトの収率を示す一方、表4は、変性非APIベントナイトの降伏点を示す。収率は、収率試験を用いて計算され、ある内部の最低規格要件は90バレル/ショートトンである。降伏点については、ある内部の最大規格要件には、1.5の降伏点:塑性粘度の最大比が含まれる。
【表4】
【表4B】
【0036】
表5は、変性非APIベントナイト性能に対する粒度の一定の影響を示す。
【表5】
【0037】
表6は、変性非APIベントナイト性能に対するソーダ灰の一定の影響を示す。
【表6】
【表6B】
【0038】
表7は、変性非APIベントナイトに対するPAC(商標)−R濃度の一定の影響を示す。
【表7】
【表7B】
【表8】
【0039】
表8中、分散濾過水は、掘削流体に使用される試験手順を概説するAPI規格13Aによる。流体損失は、低浸透率の濾過ケーキを形成するベントナイトスラリーの能力の尺度である。試験の最大内部要件は12.5ml/30minであった。
【0040】
本開示の実施形態において有利に、非変性ベントナイトから汚染物質を除去するために、カルボキシメチルセルロースによるその変性の前に原水を使用した。ベントナイト鉱石の化学的特性に対する何らかの悪影響を避けるため、汚染物質の除去には酸を使用しなかった。特に、調製法において市販のベントナイトは使用しなかった。水中のベントナイト鉱石の粘度を上昇させるために、PAC(商標)−Rポリマーを使用した。特定の実施形態において、ベントナイト鉱石の粘度を上昇させるために、他の添加剤を使用しなかった。
【0041】
ソーダ灰の添加は、塑性粘度に関してプラスの影響を示す。しかし、ソーダ灰の量が増加するにつれて、組成物のpHも上昇する。
【0042】
単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそれ以外に明確に定めていなければ、複数の指示対象を含む。
【0043】
図面および本明細書では、変性ベントナイトの組成物および変性ベントナイトを調製するための方法の実施形態が開示され、特定の用語が用いられているが、それらの用語は記述的な意味でのみ使用されており、限定するために使用されているのではない。本開示の実施形態は、これらの例示した実施形態を特に参照して、かなり詳細に説明されてきた。しかし、前述の明細書に記載の本開示の趣旨および範囲内で様々な修正および変更が行われ得ること、およびこのような修正および変更は、本開示の均等物および一部と見なされるべきであることが明らかになるであろう。
【0044】
本明細書または添付の特許請求の範囲に値の範囲が記載されている場合、その区間は、上限と下限の間に挟まれたそれぞれの値ならびに上限および下限を包含するものと理解される。本開示は、記載されている任意の特定の除外を受ける区間のさらに狭い範囲を包含し、その境界を定める。本明細書および添付の特許請求の範囲が、2つ以上の定義されたステップを含む方法について言及している場合、定義されたステップは、文脈によりその可能性が排除される場合を除き、任意の順番で、または同時に実施することができる。
図1
図2