(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861224
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】粒子検出用レーザーセンサ
(51)【国際特許分類】
G01S 17/58 20060101AFI20210412BHJP
G01S 17/95 20060101ALI20210412BHJP
G01N 15/06 20060101ALI20210412BHJP
G01N 21/47 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
G01S17/58
G01S17/95
G01N15/06 C
G01N21/47 Z
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-560079(P2018-560079)
(86)(22)【出願日】2017年5月12日
(65)【公表番号】特表2019-522779(P2019-522779A)
(43)【公表日】2019年8月15日
(86)【国際出願番号】EP2017061422
(87)【国際公開番号】WO2017198555
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2020年4月24日
(31)【優先権主張番号】16170311.1
(32)【優先日】2016年5月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520344981
【氏名又は名称】トルンプ フォトニック コンポーネンツ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】スプライト,ヨーハネス ヘンドリキュス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル レー,アレクサンデル マルク
(72)【発明者】
【氏名】コーイマン,ヘルベン
(72)【発明者】
【氏名】アウウェルチェス,オッケ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルミック,ヨーアヒム ウィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】ラス,アルノルデュス ヨーハネス マルティニュス ヨゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ユッテ,ペトリュス テオドリュス
【審査官】
藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0077735(US,A1)
【文献】
特表平11−514437(JP,A)
【文献】
特開平03−122549(JP,A)
【文献】
特表2008−541823(JP,A)
【文献】
特表2012−521003(JP,A)
【文献】
特表2011−510287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48− 7/51
G01S 17/00−17/95
G01N 15/06
G01N 21/47
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体における粒子密度検出のためのレーザーセンサモジュールであって、
少なくとも1つの第1のレーザーと、
少なくとも1つの第1の検出器と、
少なくとも1つの電気ドライバーと、
少なくとも1つの評価器とを有し、
前記第1のレーザーは前記少なくとも1つの電気ドライバーにより供給される信号に応じて第1のレーザー光を放射するように構成され、
前記少なくとも1つの第1の検出器は前記第1のレーザーの第1のレーザーキャビティにおける光波の第1の自己混合干渉信号を決定するように構成され、
前記第1の自己混合干渉信号は前記第1のレーザーキャビティに再入する第1の反射レーザー光により生じ、前記第1の反射レーザー光は前記第1のレーザー光の少なくとも一部を受光する前記流体中の粒子により反射され、
前記評価器は前記レーザーセンサモジュールに対する前記粒子の第1の速度成分に関する少なくとも1つの第1のパラメータを決定するように構成され、
前記第1の速度成分は前記流体の流れの速度を表し、
前記第1のパラメータは前記第1の自己混合干渉信号に基づき決定され、
前記評価器は所定時間内に決定された前記第1の自己混合干渉信号に基づいて粒子密度を決定するように構成され、
前記評価器は前記第1のパラメータにより前記粒子密度を補正するように構成されることを特徴とする、
レーザーセンサモジュール。
【請求項2】
前記レーザーセンサモジュールは、異なる検出ボリュームの前記第1の自己混合干渉信号を供給するように構成され、
前記評価器は、異なる検出ボリュームで反射された反射された第1のレーザー光により生成された前記第1の自己混合干渉信号に基づき前記第1のパラメータを決定するように構成される、
請求項1に記載のレーザーセンサモジュール。
【請求項3】
前記レーザーセンサモジュールは光学マニピュレータを有し、
前記光学マニピュレータは、異なる検出ボリュームの前記第1の自己混合干渉信号を供給するように構成される、
請求項1に記載のレーザーセンサモジュール。
【請求項4】
前記光学マニピュレータは前記第1のレーザー光をリダイレクトする第1の可動ミラーを有し、
前記評価器は、前記第1の可動ミラーの運動の異なる段階において受光される前記第1の自己混合干渉信号に基づいて、前記第1のパラメータを決定するように構成される、
請求項3に記載のレーザーセンサモジュール。
【請求項5】
前記第1の可動ミラーは回転軸のまわりで動くように構成され、
前記評価器は、前記第1の可動ミラーの少なくとも2つの異なる位相角において受光される前記第1の自己混合干渉信号に基づいて、前記第1のパラメータを決定するように構成される、
請求項4に記載のレーザーセンサモジュール。
【請求項6】
前記第1の可動ミラーは前記回転軸のまわりに所定振動数で振動するように構成される、
請求項5に記載のレーザーセンサモジュール。
【請求項7】
前記評価器は、前記第1の可動ミラーの少なくとも3つの異なる位相角において前記第1のパラメータを決定するように構成される、
請求項6に記載のレーザーセンサモジュール。
【請求項8】
前記評価器は、前記第1の可動ミラーの前記少なくとも3つの異なる位相角において決定される前記第1のパラメータに基づいて、前記レーザーセンサモジュールに関する前記粒子の第1の速度成分と第2の速度成分とを決定するように構成される、
請求項7に記載のレーザーセンサモジュール。
【請求項9】
前記レーザーセンサモジュールは少なくとも第2のレーザーを有し、
前記第2のレーザーは、前記第1のレーザー光が放射される第1の放射方向と異なる第2の放射方向に第2のレーザー光を放射するように構成され、
第2の検出器は前記第2のレーザーの第2のレーザーキャビティにおける光波の第2の自己混合干渉信号を決定するように構成され、
前記第2の自己混合干渉信号は前記第2のレーザーキャビティに再入する第2の反射レーザー光により生じ、前記第2の反射レーザー光は前記第2のレーザー光の少なくとも一部を受光する粒子により反射され、
前記評価器は前記レーザーセンサモジュールに対する前記粒子の第2の速度成分に関する少なくとも1つの第2のパラメータを決定するように構成され、
前記第2のパラメータは前記第2の自己混合干渉信号に基づき決定され、
前記評価器は前記第1のパラメータと前記第2のパラメータにより前記粒子密度を補正するように構成される、レーザーセンサモジュール。
請求項1乃至8いずれか一項に記載のレーザーセンサモジュール。
【請求項10】
前記評価器は、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとに基づき前記レーザーセンサモジュールに対する前記粒子の前記第1の速度成分と第2の速度成分とを決定するように構成される、
請求項9に記載のレーザーセンサモジュール。
【請求項11】
前記レーザーセンサモジュールは、検出された粒子密度に基づいて空気のクオリティを決定するように構成される、
請求項1乃至10いずれか一項に記載のレーザーセンサモジュール。
【請求項12】
検出される粒子密度はPM2.5値により特徴付けられる、
請求項11に記載のレーザーセンサモジュール。
【請求項13】
請求項1乃至12いずれか一項に記載の少なくとも1つのレーザーセンサモジュールを有する、
モバイル通信デバイス。
【請求項14】
流体における粒子密度検出の方法であって、
第1のレーザーにより第1のレーザー光を放射することと、
前記第1のレーザーの第1のレーザーキャビティにおいて第1の反射レーザー光を受光することとであって、前記第1の反射レーザー光は前記第1のレーザー光の少なくとも一部を受光する前記流体中の粒子により反射されることと、
前記第1のレーザーの第1のレーザーキャビティにおける光波の第1の自己混合干渉信号を決定することであって、前記第1の自己混合干渉信号は、前記第1のレーザーキャビティに再入する前記第1の反射レーザー光により生じることと、
前記第1の自己混合干渉信号に基づいて、レーザーセンサモジュールに対する前記粒子の第1の速度成分に関する少なくとも1つの第1のパラメータを決定することであって、前記第1の速度成分は前記流体の流れの速度を表すことと、
所定時間内に決定された前記第1の自己混合干渉信号に基づいて粒子密度を決定することと、
前記第1のパラメータにより前記粒子密度を補正することとを含む、
方法。
【請求項15】
請求項1乃至12いずれか一項に記載のレーザーセンサモジュールに含まれる少なくとも1つの処理デバイスに、または請求項1乃至12いずれか一項に記載のレーザーセンサモジュールを含むデバイスの少なくとも1つの処理デバイスに、請求項14に記載の方法の各ステップを実行させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子密度検出のための自己混合干渉を使用するレーザーセンサまたはレーザーセンサモジュール、関連する粒子密度検出方法、および対応するコンピュータプログラム製品に関する。本発明はさらに、そのようなレーザーセンサまたはレーザーセンサモジュールを含むデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、大気中粒子状物質のレーザー自己混合型多物理パラメータ測定方法およびレーザー自己混合型多物理パラメータ測定デバイスを開示している。レーザー自己混合型多物理パラメータ測定デバイスは、マイクロチップレーザー、コリメータレンズ、ビームスプリッタ、収束レンズ、光検出器、増幅器、データ取得カードおよびスペクトルアナライザを含む。記載された方法およびデバイスは複雑かつ高価である。
非特許文献1は、懸濁液中の小粒子のサイズを迅速かつ容易に測定する方法を開示している。この方法は、非常に高い光学感度を有するレーザーダイオード励起薄スライスLiNdP4O12レーザーによる自己混合レーザードップラー測定を使用する。ブラウン運動における粒子の平均サイズは、運動から生じる変調された自己混合レーザ光の測定されたパワースペクトルのローレンツフィッティングによって決定される。
特許文献2は、同一平面上にあり、かつ各放射方向が垂直放射方向に対応する異なる方向にビームを放射する少なくとも2つのレーザ源を有する、風速を決定する装置を開示している。
【0003】
【特許文献1】CN102564909A
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/077735A1号
【非特許文献1】SUDOL S ET AL著「Quick and easy measurement of particle size of Brownian particles and planktons in water using a self−mixing laser」(OPTICS EXPRESS, val. 14, no. 3, 6 February 2006 (2006−02−06), pages 1044−1054, XP002753399, DOl: 10.1364/OE.14.001044)
【発明の概要】
【0004】
本発明の1つの目的は、粒子密度検出のための改良されたレーザーセンサモジュールを提供することにある。
【0005】
第1の態様によれば、
流体における粒子密度検出のためのレーザーセンサモジュールが提供される。このレーザーセンサモジュールは、少なくとも1つの第1のレーザーと、少なくとも1つの第1の検出器と、少なくとも1つの電気ドライバーと、少なくとも1つの評価器とを有する。前記第1のレーザーは前記少なくとも1つの電気ドライバーにより供給される信号に応じて第1のレーザー光を放射するように構成される。前記少なくとも1つの第1の検出器は前記第1のレーザーの第1のレーザーキャビティにおける光波の第1の自己混合干渉信号を決定するように構成される。第1の自己混合干渉信号は、第1のレーザーキャビティに再入する第1の反射レーザー光により生じる。前記第1の反射レーザー光は前記第1のレーザー光の少なくとも一部を受光する
流体中の粒子により反射される。前記評価器は前記レーザーセンサモジュールに対する前記粒子の第1の速度成分に関する少なくとも1つの第1のパラメータを決定するように構成される。
第1の速度成分は流体の流れの速度を表す。前記第1のパラメータは
所定時間内に決定される前記第1の自己混合干渉信号に基づき決定される。前記評価器は前記第1の自己混合干渉信号に基づいて粒子密度を決定するように構成される。前記評価器は前記第1のパラメータにより前記粒子密度を補正するように構成される。
【0006】
第1のレーザーは、好ましくは、赤外線スペクトルにおいて波長が750nmより大きい、最も好ましくは780nmと1300nmとの間のレーザー光を放射するように構成されてもよい。
【0007】
第1のレーザーは、サイドエミッタとしての半導体レーザーまたは垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)であってもよい。
【0008】
電気ドライバーは、粒子を検出するのに適した任意の駆動方式または電流変調を提供するように構成され、第1のパラメータは、第1の速度成分に関連する。このような駆動方式または電流変調の例は、例えば、定電流、三角電流または矩形電流である。
【0009】
第1のパラメータは好ましくは第1の速度成分と1対1関係により関係づけられている。粒子密度は、信頼性が高い粒子密度を得るために、所定時間内に複数の粒子を決定することにより決定される。粒子密度を決定する時間は、レーザーセンサモジュールに含まれてもよい第2、第3、第4またはそれ以上のレーザーにより削減できる。レーザーセンサモジュールは、好ましくは、複数のレーザーを有する1次元または2次元のレーザーアレイを有する。各レーザーは、粒子の存在を決定するために、一体化された検出器を有する。代替的に、例えば、レーザーのレーザーキャビティにわたるインピーダンスを測定する共通検出器があってもよい。共通検出器は、各レーザーと、対応するインピーダンスまたは測定信号とを特定するように構成されてもよい。複数のレーザーを用いることで、検出ボリュームが増大し、そのために粒子検出の可能性が高まる。レーザーの数と、任意的に対応する検出器の数とは、期待される粒子密度に応じて構成されてもよい。粒子密度が高いことが期待される場合、レーザーは1つだけで十分であり得る。粒子密度がより低い場合、許容できる測定時間とするため、2つ、3つまたはそれ以上のレーザーを使用する場合がある。また、第1のパラメータを信頼できる方法で決定するために、異なる粒子の測定により生じる第1の自己混合干渉信号を使用してもよい。所定時間内に測定しなければならない粒子数は、第1のパラメータ(第1の速度成分)の分布に関連し得る。第1のパラメータの分布が狭いとき、少数の測定で十分であり得る。第1のパラメータの分布が広いとき、より多数の測定が必要になる可能性がある。レーザーセンサモジュールは、プロセッサまたはマイクロプロセッサと、対応するデータ記憶デバイスとを有し、粒子密度及び/又は第1のパラメータを信頼できる方法で決定するのに必要な粒子数を決定するために、これらは対応するソフトウェアコードにより統計的方法を適用するように構成される。代替的に、所定時間は、測定時間と、期待される粒子密度に応じて、測定値の統計的重要性とを規定するよう設けられても、予めプログラムされてもよい。
【0010】
第1のパラメータはさらに、第1の速度成分を決定するのに使用されてもよい。第1の速度成分(または対応する平均値)は、既知の態様で粒子を含む流体の全速度に関連し、第1の速度成分を使用して、第1の自己混合干渉信号により全速度を決定してもよい。例えば、レーザーセンサモジュールまたはより具体的には第1のレーザーの光軸(または複数のレーザーの光軸)に対する、粒子を含む流体(例えば、空気)の流体流の方向が分かっている場合、第1の速度成分と全速度との間の既知の関係が与えられる。
【0011】
第1のパラメータによる粒子密度の補正が必要なのは、粒子を含む流体の速度が、所定時間内に第1のレーザー(またはレーザーアレイ)によりスキャンされる測定ボリュームを決定するからである。速度が速いほど、測定ボリュームは大きくなる。基準ボリュームをゼロ風速に取ると、風速が大きいと、粒子密度が大きくなりすぎることがある。
【0012】
レーザーセンサモジュールは、異なる検出ボリュームに対して第1の自己混合干渉信号を提供するように構成されてもよく、評価器は、異なる検出ボリュームにおいて反射された第1のレーザー光により発生する第1の自己混合干渉信号に基づき、第1のパラメータを決定するように構成される。この点、検出ボリュームが異なるとは、検出ボリュームの少なくとも一部が重ならないことを意味する。
【0013】
レーザーセンサモジュールは好ましくは光学マニピュレータを有してもよい。前記光学マニピュレータは、異なる検出ボリュームの前記第1の自己混合干渉信号を供給するように構成されてもよい。前記評価器は、異なる検出ボリュームで反射された反射された第1のレーザー光により生成された前記第1の自己混合干渉信号に基づき前記第1のパラメータを決定するように構成されてもよい。
【0014】
光学マニピュレータは、各検出ボリュームにおける第1のレーザー光の方向と、粒子の運動の方向との間に、異なる関係を提供するように構成されてもよい。この異なる関係を、第1のパラメータを決定するために使用してもよい。光学マニピュレータは、例えば、複数の反射面を有する透明ブロックであってもよい。異なる反射面の反射率は交換可能であってもよい。第1のレーザー光は、入射窓を介して透明ブロックに入射し、(反射率をオフして)無視できる反射で面を介して透明ブロックを出射することができる。一般的に、検出ボリュームが、粒子の運動方向に対して、既知の態様で、相対位置が変化すれば十分である。代替的な一実施形態では、検出ボリュームを変更するため、第1のレーザーが動かされてもよい。第1のレーザーまたはその第1のレーザーを含むレーザーアレイは、検出ボリュームの相対位置を変更するため、コントローラにより制御され得る、例えば、MEMSデバイスの上に配置されてもよい。
【0015】
光学マニピュレータは、好ましくは、ミラー装置を有してもよい。ミラー装置は、好ましくは、第1のレーザー光をリダイレクトする第1の可動ミラーを有してもよく、前記評価器は、前記第1の可動ミラーの運動の異なる段階において受光される前記第1の自己混合干渉信号に基づいて、前記第1のパラメータを決定するように構成される。第1の可動ミラーの動きに関する知識には、スポット一と、それによるスポット速度とに関する知識が含まれる。
【0016】
評価器は、受光した第1の自己混合干渉信号に基づいて粒子密度を決定し、測定結果に基づいて粒子密度を補正する。この場合、第1の速度成分は、明示的には決定されないが、第1の可動ミラーの動きにより生じる粒子密度の変動に間接的に含まれる。この場合、レーザーセンサモジュールは、粒子の運動方向に対する可動ミラーの動きに関連する補正アルゴリズムを適用するように構成されてもよい。
【0017】
第1の可動ミラーは回転軸を中心として動くように構成されてもよい。回転軸の周りの動きは、回転軸の周りのあらゆる種類の非線形運動を含む。前記評価器は、前記可動ミラーの少なくとも2つの異なる位相角において受光される前記第1の自己混合干渉信号に基づいて、前記第1のパラメータを決定するように構成されてもよい。第1の光デバイスは、第1のレーザー光を、各検出ボリューム内の焦点領域にフォーカスするために使用される。少なくとも2つの異なる位相角により、可動ミラーによる第1のレーザー光のビームの動きの方向に平行な速度に関連する情報または第1のパラメータが得られる。上記の通りレーザーセンサモジュールまたは第1のレーザーに対する粒子の運動方向が分かる場合には、この情報で十分であり得る。
【0018】
代替的なアプローチでは、可動ミラーは2つの軸の周りを動くように構成されてもよい。
【0019】
レーザーセンサモジュールは、好ましくは、前記回転軸のまわりに所定振動数で振動するように構成されてもよい。前記評価器は、好ましくは、前記可動ミラーの少なくとも3つの異なる位相角において前記第1のパラメータを決定するように構成される。3つの異なる位相角での第1のパラメータ、またはより一般的に粒子の移動方向に対する検出ボリュームの3つの異なる相対位置または範囲における第1のパラメータの知識により、粒子の全速度ベクトルの決定が可能になる。
【0020】
この場合、前記評価器は、前記可動ミラーの前記少なくとも3つの異なる位相角において決定される前記第1のパラメータに基づいて、前記レーザーセンサモジュールに関する前記粒子の第1の速度成分と第2の速度成分とを決定するように構成されてもよい。第1のパラメータに加えて、例えば、ミラーの変調周波数、角度偏向振幅、および検出ボリュームまたは測定スポットの可動ミラーまでの距離を使用して、第1および第2の速度成分を決定することができる。レーザーセンサモジュールは、例えば、風速を決定するために風速計で使用されてもよい。
【0021】
レーザーセンサモジュールはさらに、第1のレーザー光を第1の焦点領域に集束する少なくとも1つの光学デバイスを備える。第1の光学デバイスは、レンズまたはレンズ装置を含むことができる。第1の光学デバイスは、第1のレーザー光を偏向させるように構成された光学ユニットをさらに備えてもよい。第1の光学デバイスは、第1のレーザーを含むレーザーアレイによって放出される第1、第2、第3、第4などのレーザー光を第1、第2、第3、第4などの焦点領域に集束するように構成されてもよい。焦点領域は、自己混合干渉信号を生成するために、検出可能なフィードバックを受け取ることができる検出ボリュームを決定する。第1の光学デバイスは、複数のレーザービームを集束する複数のレンズを含むことができる。第1の光学デバイスは、代替的に、例えば、マイクロレンズの集積アレイを備えることができる。レンズまたはマイクロレンズは、さらに、個々のレーザービームを異なる方向に偏向することによって検出ボリュームを広げるように構成されてもよい。別のアプローチでは、第1の光学デバイスは、レーザービームを異なる方向に偏向させることにより、レーザーアレイの異なるレーザーのレーザービーム(第1のレーザー光、第2のレーザー光、第3のレーザー光など)を異なる焦点領域に広げるように構成された、追加的光学ユニットを有してもよい。
【0022】
レーザーセンサモジュールは少なくとも第2のレーザーを有してもよい。前記第2のレーザーは、前記第1のレーザー光が放射される第1の放射方向と異なる第2の放射方向に第2のレーザー光を放射するように構成されてもよい。前記第2の検出器は、前記第2のレーザーの第2のレーザーキャビティにおける光波の第2の自己混合干渉信号を決定するように構成されてもよい。前記第2の自己混合干渉信号は前記第2のレーザーキャビティに再入する第2の反射レーザー光により生じ、前記第2の反射レーザー光は前記第2のレーザー光の少なくとも一部を受光する粒子により反射される。前記評価器は前記レーザーセンサモジュールに対する前記粒子の第2の速度成分に関する少なくとも1つの第2のパラメータを決定するように構成される。前記第2のパラメータは前記第2の自己混合干渉信号に基づき決定される。前記評価器はさらに、前記第1と第2のパラメータにより前記粒子密度を補正するように構成される。
【0023】
第2のレーザーによって検出された粒子は、第1のレーザーによって検出された粒子と同じ粒子であってもよいし、異なる粒子であってもよい。第1のレーザーは、この場合、第1の粒子を検出することができ、第2のレーザーは、この場合、第1の粒子とは異なる第2の粒子を検出することができる。
【0024】
第1および第2の自己混合干渉信号を分析または評価するために、第1の検出器を使用することができる。レーザーセンサモジュールは、好ましくは、第1の自己混合干渉信号とは独立して第2の自己混合干渉信号を決定するために、第2の検出器を備えることができる。レーザーセンサモジュールは、3つ以上のレーザー、例えば上述したように1次元または2次元のレーザーアレイに集積された複数のレーザーを含むことができる。この場合、レーザーセンサモジュールは、複数のレーザービームを平行に生成し、互いに独立して多数の自己混合干渉信号を決定するように構成されてもよい。この場合、レーザーセンサモジュールは、3つ、4つ、またはそれ以上の粒子によって生じる自己混合干渉信号を検出することができる。
【0025】
前記評価器はさらに、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとに基づき前記レーザーセンサモジュールに対する前記粒子の前記第1の速度成分と第2の速度成分とを決定するように構成されてもよい。
【0026】
評価器は、第3のレーザー、第4のレーザーまたはそれ以上のレーザーがある場合には、第1のパラメータ、第2のパラメータ、第3のパラメータ、またはさらに多くのパラメータに基づいて粒子の全速度ベクトルを決定するように構成されてもよい。評価器は、例えば、粒子が層流に含まれると仮定することができる理論的モデルを用いて、速度成分および/または全速度ベクトルを決定するように構成することができる。
【0027】
前記評価器はさらに、前記第1の自己混合干渉信号に基づいて粒子のサイズを決定するように構成される。評価器はさらに、複数の粒子のサイズの決定によって粒子サイズ分布を決定するように構成されてもよい。粒径の検出は、上述したレーザーセンサモジュールの任意の実施形態と組み合わせることができる。
【0028】
さらに別の態様によれば、空調システムが提示される。空調システムは、上述したように、少なくとも1つのレーザーセンサモジュールを備える。少なくとも1つのレーザーセンサモジュールは、空気の質および/または空気の速度を決定するように構成されてもよい。「空調システム」という用語は、少なくとも最低限の質の空気を提供するように構成されたあらゆるデバイスまたはシステムを含む。空調機は、上述したような空調システムを備えることができる。真空掃除機は、上述したような空調システムを備えることができる。
【0029】
レーザーセンサモジュールは、流体、特に空気を濾過するためのフィルタを含む各用途またはデバイスにおいて有用であり得る。レーザーセンサモジュールを使用して、流体(例えば、空気)流の粒子密度および速度を決定することができる。フィルタを清掃または交換しなければならないか判断するため、速度を用いることもできる。汚れたフィルタまたはフィルタシステムの特徴として、流れ抵抗が高くなり、流体の速度が遅くなることがある。
【0030】
レーザーセンサモジュールは、さらに別の態様によれば、空気の質を決定するために使用され得る粒子検出器の一部であってもよい。このような粒子検出器は、例えば、モバイル機器、特にモバイル通信機器に組み込まれてもよい。レーザーセンサモジュールは、例えばモバイルデバイスに一体化することができる別個のデバイスであってもよく、又はレーザーセンサモジュールの少なくとも一部の機能は、モバイルデバイスによって提供されるインフラストラクチャによって実行されてもよい。特に、評価器の機能の全部または一部は、モバイルデバイスの1つまたは複数のプロセッサによって提供されてもよい。ソフトウェアコードは、例えば、評価器の機能の少なくとも一部を可能にするために、モバイルデバイスの記憶デバイスに格納することができる。
【0031】
さらに別の態様によれば、センサデバイスが提供される。このセンサデバイスは上記の少なくとも1つのレーザーセンサモジュールを有する。センサデバイスは、さらに少なくとも1つの通信インターフェースを有する。少なくとも1つのレーザーセンサモジュールは、空気の質および/または空気の速度を決定するように構成されてもよい。センサデバイスは、通信インターフェースにより、決定された空気の質および/または空気の速度に関するデータにアクセスできるように構成されてもよい。
【0032】
センサデバイスは、通信ネットワークによりデータにアクセスできるように、通信ネットワークに組み込まれていてもよい。通信ネットワークは、情報を配信するように構成された各ネットワークを有する。これは、例えば、GSM(登録商標)、UMTS、LTE通信システムなどのモバイル通信ネットワークであってもよい。通信ネットワークはさらに、インターネットやローカルネットワーク、特に、例えば、WLAN技術などに基づく無線ネットワークを含む。通信ネットワークは、モバイル通信ネットワーク、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの異なるネットワーク技術間の各相互作用を含んでもよい。センサデバイスは、異なる通信プロトコルおよびネットワーク技術によってアクセス可能な物のインターネットであってもよい。代替的に又は追加的に、通信インターフェースは、ピアツーピアネットワーク技術(例えば、Bluetooth(登録商標))によって通信するように構成されてもよい。例えば、スマートフォン等のモバイル通信デバイスを用いてBluetooth(登録商標)によりセンサデバイスと通信することが可能である。モバイル通信デバイスは、例えば、データを受信するために、センサデバイスと通信する対応するソフトウェアアプリケーションによって使用可能にすることができる。データは、粒子密度、粒子サイズまたは粒子サイズ分布、風速、風向などを含み得る。センサデバイスは、例えば、町または国の中の複数の地点でのデータの決定を可能にするために、例えば、電柱または同様の構造物に一体化または結合することができる。
【0033】
さらに別の態様によれば、
流体における粒子密度検出の方法が提供される。該方法は、第1のレーザーにより第1のレーザー光を放射することと、前記第1のレーザー光の少なくとも一部を受光する
流体中の粒子により反射される第1の反射レーザー光を、前記第1のレーザーの第1のレーザーキャビティにおいて受け取ることと、前記第1のレーザーの第1のレーザーキャビティにおける光波の第1の自己混合干渉信号を決定することであって、前記第1の自己混合干渉信号は、前記第1のレーザーキャビティに再入する前記第1の反射レーザー光により生じることと、前記第1の自己混合干渉信号に基づいて、前記レーザーセンサモジュールに対する前記粒子の第1の速度成分に関する少なくとも1つの第1のパラメータを決定すること
であって、前記第1の速度成分は前記流体の流れの速度を表すことと、所定時間内に決定された前記第1の自己混合干渉信号に基づいて粒子密度を決定することと、前記第1のパラメータにより前記粒子密度を補正することとを含む。
【0034】
この方法のステップは必ずしも上記の順序で実行しなくてもよい。
【0035】
さらに別の態様によれば、コンピュータプログラム製品が提供される。このコンピュータプログラム製品は、請求項1乃至
12いずれか一項に記載のレーザーセンサモジュールの少なくとも1つのメモリデバイスに、または前記レーザーセンサモジュールを有するデバイスの少なくとも1つのメモリデバイスに保存され得るコード手段を有する。前記コード手段は、請求項14に記載の方法が、請求項1乃至
12いずれか一項に記載のレーザーセンサモジュールに含まれる少なくとも1つの処理デバイスにより、または前記レーザーセンサモジュールを含むデバイスの少なくとも1つの処理デバイスにより実行できるように構成される。メモリデバイスまたは処理デバイスは、レーザーセンサモジュール(例えば、電気ドライバー、評価器など)により含まれてもよいし、デバイスがレーザーセンサモジュールを含んでもよい。レーザーセンサモジュールを有するデバイスの第1のメモリデバイスおよび/または第1の処理デバイスは、レーザーセンサモジュールに含まれる第2のメモリデバイスおよび/または第2の処理デバイスと相互作用してもよい。
【0036】
言うまでもなく、請求項1乃至10いずれか一項に記載のレーザーセンサと、請求項14に記載の方法とは、特に従属項に記載の、同様のおよび/または同一の実施形態を有する。
【0037】
言うまでもなく、本発明の好ましい実施形態は、従属項の、各独立項との任意の組合せであり得る。
【0038】
さらに別の有利な実施形態は以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明の上記その他の態様を、以下に説明する実施形態を参照して明らかにし、説明する。
【0040】
添付した図面を参照して実施形態に基づき例により本発明を説明する。図中、
【
図1】第1のレーザーセンサモジュールを示す原理図である。
【
図2】第2のレーザーセンサモジュールを示す原理図である。
【
図3】第3のレーザーセンサモジュールを示す原理図である。
【
図4】第4のレーザーセンサモジュールを示す原理図である。
【
図5】可動ミラーの位相角に依存する粒子数を示す第1のグラフである。
【
図6】可動ミラーの位相角に依存する粒子数を示す第2のグラフである。
【
図7】理論計算と実験測定結果の比較を示す図である。
【
図8】7m/sの速度での第1の自己混合干渉信号を示す図である。
【
図9】1m/sの速度での第1の自己混合干渉信号を示す図である。
【
図10】第5のレーザーセンサモジュールを示す原理図である。
【
図11】第6のレーザーセンサモジュールを示す原理図である。
【
図12】第7のレーザーセンサモジュールを示す主要上面図を示す。
【
図13】モバイル通信デバイスを示す原理図である。
【
図15】第1のセンサデバイスを示す原理図である。
【
図16】第2のセンサデバイスを示す原理図である。
【
図17】粒子密度検出方法を示す原理図である。 図中、同じ数字は同じオブジェクトを指す。図中のオブジェクトは必ずしもスケール通りに描いたものではない。
【発明を実施するための形態】
【0041】
ここで本発明の様々な実施形態を図により説明する。
【0042】
自己混合干渉はオブジェクトの動きと距離を検出するために用いられる。
自己混合干渉に関する背景情報は、Giuliani,G.;Norgia,M.;Donati,S.&Bosch,T.著「Laser diode self−mixing technique for sensing applications」(Journal of Optics A:Pure and Applied Optics, 2002, 4, S.283−S.294)に記載されている。この文献は参照援用する。光入力デバイス内のセンサに対する指先の動きの検出は、国際特許出願第WO02/37410号に詳細に記載されている。国際特許出願第WO02/37410号における距離および動きの検出に関する開示は参照援用する。
【0043】
自己混合干渉の原理を、国際特許出願第WO02/37410号に提示されている例に基づいて説明する。レーザーキャビティを有するダイオードレーザーが、レーザービームを放射するため、またはレーザービームを測定するために設けられる。デバイスにはその上側にオブジェクト、例えば人の指、が移動する透明な窓が設けられている。レンズ、例えば平凸レンズが、ダイオードレーザーと窓との間に配置される。このレンズは、透明窓の上側またはその近くにレーザービームを集束させる。オブジェクトがこの位置にあると、それが測定ビームを散乱させる。測定ビームの放射の一部は、照明ビームの方向に散乱され、この部分は、レーザーダイオードの放射面上のレンズによって収束され、このレーザーの空洞に再入射する。ダイオードレーザーのキャビティに再入射する放射は、レーザーの利得の変化、ひいてはレーザーによって放射される放射の強度の変化を引き起こし、これがダイオードレーザーの自己混合効果と呼ばれる現象である。
【0044】
レーザーによって放射される放射線の強度の変化は、この目的のために設けられる、フォトダイオードによって検出される。このダイオードは放射変動を電気信号に変換し、この電気信号を処理するために電子回路が設けられる。
【0045】
測定ビームに対するオブジェクトの移動は、それによって反射された放射線をドップラーシフトさせる。これは、この放射の周波数が変化する、または周波数シフトが生じることを意味する。この周波数シフトは、オブジェクトが移動する速度に依存し、数kHzからMHzのオーダーである。レーザーキャビティに再入射する周波数シフトされた放射は、このキャビティで生成された光波または放射と干渉し、すなわち、このキャビティ内で自己混合効果が生じる。光波とキャビティに再入射する放射線との間の位相シフトの量に依存して、干渉は建設的であるかまたは否定的であり、すなわちレーザー放射の強度は周期的に増減する。このようにして生成されたレーザー放射変調の周波数は、キャビティ内の光波の周波数と、キャビティに再入射するドップラーシフト放射の周波数との間の差と正確に等しい。周波数差は数kHzからMHzのオーダーであり、検出は容易である。自己混合効果とドップラーシフトとの組み合わせは、レーザーキャビティの挙動の変化を引き起こす。特にその利得または光増幅が変化する。レーザーキャビティのインピーダンスまたはレーザーによって放射される放射の強度が、例えば、測定されてもよく、センサに対するオブジェクトの移動量(すなわち移動距離)を評価することができるだけでなく、国際特許出願第WO02/37410号に詳細に記載されているように、運動の方向も決定することができる。
【0046】
図1は、第1のレーザーセンサモジュール100を示す原理図である。第1のレーザーセンサモジュールは、第1の検出器120が集積された第1のレーザー110を含む。集積された第1の検出器120は、集積されたフォトダイオードであり、これは第1のレーザー110のレイヤ構造の一部である。集積されたフォトダイオードは、第1のレーザーの第1のレーザーキャビティ内の光波の振動を決定する。第1のレーザーセンサモジュール100は、電気ドライバー130および評価器140をさらに備える。評価器140は、第1のレーザー110またはより正確には第1の検出器120および電気ドライバー130に接続される。電気ドライバー130は、第1のレーザー光を放射するために、第1のレーザー110に電力を供給する。第1のレーザー110は、この場合、フォトダイオードが集積された垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)である。レーザーセンサモジュール100は、電気ドライバー130によって変調されて供給される電力を供給する電源(図示せず)に接続される。電気ドライバー130は、第1のレーザー110に交互の順序で異なる変調方式を提供する。定電流が第1の変調方式で供給される。第2の変調方式では、三角波変調方式による駆動電流が供給される。三角波変調方式は、第1のレーザー110と粒子との間の相対距離、および任意的に第1の自己混合干渉信号による第1の速度成分を決定するために使用される。低電流は、この場合、第1のパラメータと同一の第1の速度成分を決定するために使用される。評価器140は、第1の自己混合干渉信号によって引き起こされる第1の検出器120によって供給される電気信号を受信する。評価器140はさらに、電気ドライバー130から駆動方式に関する情報を受け取る。評価器140は、この情報によって、第1のレーザー110と第1の速度成分との間の相対距離を決定することが可能になる。矢印は、粒子の移動方向を示す。第1の速度成分のみの決定は、第1のレーザー光のビームに対する移動方向が分かっている場合に適している。この場合、例えば、第1の速度成分と既知の関係とによって粒子の全速度を決定することが可能である。
【0047】
図2は、第2のレーザーセンサモジュール100を示す原理図である。第2のレーザーセンサモジュールは、第1のレーザー110を備える。第2の検出器120は、第1のレーザーキャビティにかかる電圧、より一般的には、第1の自己混合干渉信号の影響を受ける第1のレーザーキャビティのインピーダンスを決定する外部測定回路として構成される。第1のレーザーセンサモジュール100は、電気ドライバー130および評価器140をさらに備える。評価器140は、第1のレーザー110、第1の検出器120および電気ドライバー130に接続される。電気ドライバー130は、第1のレーザー光を放射するために、第1のレーザー110に電力を供給する。第1のレーザー110は、この場合、面発光型半導体レーザーである。レーザーセンサモジュール100は、電気ドライバー130によって変調されて供給される電力を供給する電源(図示せず)に接続される。レーザーセンサモジュール100は、電気ドライバー130によって変調されて供給される電力を供給する電源(図示せず)に接続される。電気ドライバー130は、粒子の存在および決定された粒子の第1の速度成分を決定するために使用される一定の電流を供給する。評価器140は、第1の自己混合干渉信号によって引き起こされる第1の検出器120によって供給される電気信号を受信する。評価器140は、電気ドライバー130から情報を受信する。評価器140はさらに、第1のレーザーデバイスから温度情報を受信する。評価器140は、この情報によって、粒子の存在を決定し、この場合第1のパラメータと同一である第1の速度成分を決定する。矢印は、粒子の移動方向を示す。第1の速度成分のみの決定は、第1のレーザー光のビームに対する移動方向が分かっている場合に適している。この場合、例えば、第1の速度成分によって総速度を決定することが可能である。
【0048】
図3は、第3のレーザーセンサモジュール100を示す原理図である。第3のレーザーセンサモジュールは、第1の検出器120が一体化された第1のレーザー110を含む。集積された第1の検出器120は、集積された光ダイオードであり、これは第1のレーザー110のレイヤ構造の一部である。第3のレーザーセンサモジュール100はさらに、電気ドライバー130と、評価器140と、第1の光学デバイス150とを備える。評価器140は、第1のレーザー110またはより正確には第1の検出器120および電気ドライバー130に接続される。電気ドライバー130は、第1のレーザー光を放射するために、第1のレーザー110に電力を供給する。第1のレーザー110は、この場合、フォトダイオードが集積された垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)である。レーザーセンサモジュール100は、電気ドライバー130によって変調されて供給される電力を供給する電源(図示せず)に接続される。電気ドライバー130は、第1のレーザー110に交互の順序で異なる変調方式を提供する。定電流が第1の変調方式で供給される。第2の変調方式では、三角波変調方式による駆動電流が供給される。評価器140は、第1の自己混合干渉信号によって引き起こされる第1の検出器120によって供給される電気信号を受信する。第1の自己混合干渉は、第1のレーザー光の第1の焦点領域155内の粒子の存在によって引き起こされる振動のバーストを含むことができる。評価器140はさらに、電気ドライバー130から情報を受信する。評価器140は、この情報によって、粒子の存在およびそれぞれの粒子の対応する第1の速度成分を決定することが可能になる。第1のレーザー110によって放出された第1のレーザー光は、第1の光学デバイス150によって第1の焦点領域155に集束される。粒子は、第1の焦点領域155の周囲の範囲内で検出することができる。矢印は、粒子の移動方向を示す。第1の速度成分のみの決定は、第1のレーザー光のビームに対する移動方向が分かっている場合に適している。この場合、例えば、第1の速度成分によって総速度を決定することが可能である。
【0049】
第1の光学デバイス150は、例えば、規定された直径rlensを有する1つのレンズのみを備えていてもよい。第1の自己混合干渉信号は、(1−exp[−(rlens/wpupil)^2])^2としてスケーリングされ、wpupilはレンズ瞳における第1のレーザー光のガウスビームのウエストパラメータである。レンズは、第1のレーザー光の後方散乱または反射ビームのケラレによる信号損失を回避するために、ある最小直径を有さなければならない。好ましい実施形態では、レンズ直径>1.1瞳直径(これは3dBの信号損失に相当する)を有する。ガウスビームの1.5瞳直径(1dBの信号損失)ではレンズはより優れています。
【0050】
図4は、第4のレーザーセンサモジュール100を示す原理図である。第4のレーザーセンサモジュールは、第1の検出器120が集積された第1のレーザー110を含む。第4のレーザーセンサモジュール100はさらに、電気ドライバー130、評価器140、第1の光学デバイス150、可動ミラー170、および可動ミラー170を制御するコントローラ160を備える。評価器140は、第1の検出器120、電気ドライバー130およびコントローラ160に接続されている。電気ドライバー130は、第1のレーザー光を放射するために、第1のレーザー110に電力を供給する。電気ドライバー130は、粒子の存在と、それぞれの粒子の第1の速度成分に関連する第1のパラメータを決定するのに適した一定の駆動電流を提供する。評価器140は、第1の自己混合干渉信号によって引き起こされる第1の検出器120によって供給される電気信号を受信する。評価器140はさらに、第1の検出器120によって測定された第1の自己混合干渉信号を解釈するために、電気ドライバー130およびコントローラ160から情報を受信する。電気ドライバー130によって提供される情報は、電流振幅を含むことができる。コントローラ160によって提供される情報は、角速度、ミラーの動きの振幅、ミラーの動きの位相、任意的に、異なる角度での保持時間などを含むことができる。評価器140は、この情報によって、粒子の存在と、および粒子の第1の速度成分に対応するそれぞれの第1のパラメータとを決定することが可能になる。第1のレーザー110によって放出された第1のレーザー光は、第1の光学デバイス150によって、可動ミラー170の振動中に走査方向に沿って移動する第1の焦点領域155に集束される。粒子は、第1の焦点領域155の周囲の範囲内で検出することができる。
【0051】
第1の自己混合干渉信号の粒子信号振幅は、集束スポットの開口数(またはガウスビームのビームウエスト)と可動ミラー170のミラー移動との間の相互作用である。まず、検出される最小粒子サイズが決定される。これは、フィルタリング後に第1の自己混合干渉信号内に存在することができる最大ノイズ電力を制限する。上述のように、スポットと粒子の相対速度は、信号の周波数帯域幅を決定する。速度が遅い場合、サンプリングされる空気量は少なく、速度が増加するとサンプリングされる体積が増え、したがって検出される粒子が多くなる。またSNRもより大きな速度では減少するが、これは、所望の最小粒子が依然として検出可能である限り重要ではない。レーザービームの形状もサンプリングされる空気量に影響し、ウエストがより大きいガウスビームは、ウエストがより小さい(開口数がより大きい)ビームよりも、直径およびレイリー範囲がより大きくなり、断面積がより大きくなる。ウエストがより大きいことは、局所強度が低いので、散乱信号がより低いことを意味する。これは、ビームを集束させるために使用されるレンズの開口数と、相対速度との間にトレードオフの関係があることを意味する。
【0052】
空気の動きが制御されていない場合には、スキャニングミラーを使用してスポットを移動させる。速度は、0.1−1m/sの通常の風速より速い速度を選択することが好ましい場合がある。したがって、値は5−20m/sとすると便利である。その場合、300nmより大きい粒子を検出可能とすべき場合、焦点レンズの開口数の値は0.05−0.2の間の値が最適である。(開口数は、ガウスビームのファーフィールド角の強度値の1/e^2を使用して定義される)。
【0053】
図5は、
図4に示す可動ミラーの位相角に依存する粒子数を示す第1のグラフである。y軸は粒子数軸10である。x軸は、ミラー170のミラーサイクルの時間軸である。ドット30はミラーサイクルの異なる時間における、より正確には可動ミラー170の異なる位相角における粒子数を示す。t=0において、速度は最大であり、ほとんどの粒子が検出される。ミラーの転換点のt=0.25では、検出ボリュームが小さいために粒子がほとんど検出されない。
【0054】
言っておくが、測定点は、評価器140において予めプログラムされることができる所定の期間を指す。したがって、位相角は、常に、発振周波数および所定の期間によって決定される位相角の範囲を指す。
【0055】
図6は、可動ミラー170の位相角に依存する粒子数を示す第2のグラフである。振動するスポットまたは検出ボリュームの移動と平行な(例えば、空気の移動により生じる)粒子移動の場合、これは、t=0およびt=0.5における最大値におけるシフトにより分かる。検出ボリュームの移動に平行な粒子の速度成分が可動ミラー170により生じる検出ボリュームの移動方向と反対である場合、有効検出ボリュームは増加する。検出ボリュームの動きに平行な粒子の速度成分は、同じ速度であるが反対方向の結果を示す曲線35および33に示すように、可動ミラー170により生じる検出ボリュームの移動方向と同じ方向に向く場合、有効検出容積は減少する。移動スポットまたは検出ボリューム(x方向)に垂直なyまたはz方向の空気移動の場合、曲線34に示すように、粒子検出の効率において、両方の速度のベクトル加算が生じる。
【0056】
一般的な場合、粒子の移動は、スポットまたは検出ボリュームの移動に対して平行および垂直の両方の成分を有することができる。一例を曲線34で示す。
【0057】
可動ミラー170の振動軸まわりの振動または回転の場合には、検出ボリュームまたはスポットの移動方向が変化する。したがって、この既知の変化により、可動ミラー170の所与または所定の位相角または位相角範囲における検出ボリュームの移動方向に平行な第1の速度成分と、可動ミラー170の所定の位相角または位相角範囲における検出ボリュームの移動方向に垂直な第2の速度成分とを決定することが可能である。
【0058】
第1と第2の速度成分を決定するために、検出ボリュームと速度との間の線形関係を求める次のアルゴリズムを使用してもよい。
【0059】
【数1】
ここで、#は観測されたカウント数(#1がtmirror=0.25サイクルに属し、#2がtmirror=0サイクルに属し、#3がtmirror=0.5サイクルに属する)であり、cは定数であり、vは速度であり、vparは移動するスポットに平行な速度であり、vperpは移動するスポットに垂直な速度であり、vmaxは移動するスポットまたは検出ボリューム(特定のシステム設計では既知)の最大速度である。
【0060】
可動ミラー170の各位相での補正された粒子数は、以下の絶対値によって得られる:
【0061】
【数2】
したがって、粒子密度は、粒子を含む流体の速度とは独立に決定することができる。さらに、粒子の総速度は、粒子の速度ベクトルが本質的に2次元に制限されている場合に決定することができる(一般に、これは風速測定の場合に有効である−風速計)。
【0062】
図7は、理論と実験測定結果の比較を示す図である。y軸はPM2.5=1000μg/m3の1秒当たりのカウント数としての粒子密度を示し、x軸は速度軸である。曲線61は、理論モデルによって得られた速度の関数としての粒子数を示す。曲線61は、この立方根の依存性を示す曲線60によって確認される速度の立方根に比例する依存性を示す。曲線62に示される実験結果は、理論的データと一致する。したがって、
図6の状況のような線形関係はないが、粒子の数はv^0.333に比例する。この場合、補正式は下記で与えられる:
【0063】
【数3】
可動ミラー170の各位相での補正された粒子数は、以下の絶対値によって得られる:
【0064】
【数4】
他の検出方式の場合、観測数と速度との間の他の関係が適用される。粒子数と速度との相関が分かると、検出された粒子の補正数が決定される。
【0065】
確認されたこととして、可動ミラー170の異なる位相角における粒子密度の粒子数の決定により、粒子密度データの補正が行われる。
【0066】
また、
図8および
図9は、第1の自己混合干渉信号を使用して補正された粒子密度を決定する別の実施形態を示す。
図8は、速度7m/sにおける第1の自己混合干渉信号(または第1の自己混合干渉信号から抽出できる信号)を示す。
図9は、1m/sの速度における第1の自己混合干渉信号を示す図である。さらに、2つの計算を示す。1つでは、第1の信号91が、第1のレーザー光のビームを90°の角度で通過する粒子を指し、もう1つでは、第2の信号が、第1のレーザー光のビームを45°の角度で通過する粒子を指す。
図8に示す振動パターンは、粒子と第1のレーザー光の焦点または領域との間の距離に依存する。示した例は、焦点を、または50μmの距離で光軸を通る領域を通過する粒子を指す。開口数(NA)は0.1であり、粒子のサイズは0.5μmである。焦点領域の焦点の直径は、粒子のサイズよりも大きい。この方法は、粒子サイズの分布がより広い場合にも構成させることができる。この場合、第1のパラメータについて信頼できる結果を得るために較正が必要である。振動の周波数成分を検出することができる。これらの周波数成分は、第1の速度成分と線形関係にある。したがって、周波数成分は、第1のパラメータとして使用することができる。個々の粒子は個々の周波数成分を生じさせることがあるが、多くの粒子にわたって周波数成分を平均化することで、粒子の速度が良好に測定される。この場合、周波数成分の平均値を第1のパラメータとして使用することができる。第1のパラメータは、例えば
図8および
図9で説明したように、第1の自己混合干渉信号に基づいて決定される第1のパラメータである。第1のパラメータは、信号の持続時間(SNRより大きい粒子の検出に関連する信号)、位相情報、およびゼロ交差間、または相対的な最大値または最小値間の1つまたは複数の距離を含んでもよい。振動の数と、相対的最大または最小の数と、相対的最大または最小の振幅の第1の自己混合干渉信号比の定義された区間におけるゼロ交差の数と、第1の自己混合干渉信号の包絡線の形状とは、第1のレーザー光のレーザービームと、粒子または複数の粒子の速度ベクトルとの間の角度を決定するために使用される。さらに、スポットまたは焦点領域の直径が考慮されてもよい。これはさらに、スポットから50ミクロンの距離にあるビームを通る粒子について、レーザービームに対して垂直に通る場合(第1の信号91と第3の信号93)と、レーザービームに対して45度で通る場合(第2の信号92および第4の信号94)との、2つの図に示されている。速度はそれぞれ7m/s(第1の信号91と第2の信号92)と1m/s(第3の信号93と信号94)とである。
図8および
図9は、第1のレーザー光のレーザービームの様々な位置での粒子検出における位相効果による振動を示している。比較により、信号の幅が粒子の速度に比例してスケールすることが分かる。さらに、速度がより速いとノイズレベルが増加するので、信号のSNRは速度がより速くなると減少する。実際の生活では、図に示した通りにはならない。フィルタは未知の速度に構成されないが、この計算ではフィルタが速度に対して最適化されているからである。しかし、後処理において、速度の推定値を得ることが可能である。この推定値を使用して、フィルタを最適化して、図に示すようなデータを得ることができる。これの上に、動く粒子によるドップラー周波数が来る。粒子の速度がレーザービームに対して垂直である場合、ドップラー効果は存在しない。平均時間を使用して速度の表示を得ることができる。
【0067】
ドップラー効果は、45度の場合には、速度に対して線形な周波数成分を追加する(図示せず)。45度および1m/sの場合のドップラー周波数は1.7MHzである。ドップラー周波数は最も高い周波数であり、レーザービームの方向における第1の速度成分を検出するために付加的に使用することができる。直交する設定を使用して、2つの直交する速度成分を求める。第1のパラメータを決定するこの代替的方法は、可動ミラーのような光学マニピュレータまたはそのような光学マニピュレータなしで使用されてもよい。可動ミラーは、検出ボリュームの増加のために好ましいことがある。さらに、可動ミラーを使用して、粒子の速度ベクトルと第1のレーザー光のビームとの間の異なる角度における情報を得ることができる。
【0068】
図10は、第5のレーザーセンサモジュール100を示す原理図である。第5のレーザーセンサモジュール100は、第1の検出器120が集積された第1のレーザー110と、第2の検出器121が集積された第2のレーザー111とを備える。第1のレーザー110と第2のレーザー111は、同じ波長の第1及び第2のレーザー光を出射する。別のアプローチでは、異なる波長を使用することも可能である。第6のレーザーセンサモジュール100は、第1のレーザー110および第2のレーザー111に駆動電流を供給するように構成された電気ドライバー130を備える。電気ドライバーは、第1のレーザー110および第2のレーザー110に接続される評価器140を備える。第6のレーザーセンサモジュール100はさらに、第1のレーザー光を第1の焦点領域155に集束するための第1の光学デバイス150を備える。第6のレーザーセンサモジュール100はさらに、第2のレーザー光を第2の焦点領域158に集束するための第2の光学デバイス156を備える。第1のレーザー光と第2のレーザー光は、互いに対して傾いている。この実施形態では、第1の焦点領域155は第2の焦点領域158と重なる。評価器140は、第1の自己混合干渉信号によって引き起こされる第1の検出器120によって供給される電気信号を受信する。評価器140は、第2の自己混合干渉信号によって引き起こされる第2の検出器121によって供給される電気信号を受信する。評価器140はさらに、電気ドライバー130から情報を受信する。評価器140は、この情報により、第1の自己混合干渉信号により、粒子の存在と第1の速度成分とを決定することができる。評価器140はさらに、この情報により、第2の自己混合干渉信号により、粒子の存在と第2の速度成分とを決定することができる。2つの斜めになったレーザービームを使用することにより、2つの速度成分、または粒子の異なる速度成分に関連する第1および第2のパラメータを決定することが可能になる。レーザービームは、第1および第2の光学デバイス150,156によって、あるいは第1および第2のレーザー110,111の位置決めによって傾斜させることができる。第1のレーザー光および第2のレーザー光のビームは、好ましくは、90°の角度をなす。第1および第2の速度成分(または第1および第2のパラメータ)は、矢印によって示される粒子の速度に応じて粒子密度を補正するために使用される。
【0069】
図11は、第6のレーザーセンサモジュール100を示す原理図である。第6のレーザーセンサモジュールの概略構成は、
図10に示す構成と同様である。2つのレーザーの代わりに、第1のレーザー110を含む複数のレーザーが線形レーザーアレイ状に構成される。各レーザーは、それぞれの自己混合干渉信号を決定するために、集積された検出器(例えば、第1のレーザー110の第1の検出器120)を備える。電気ドライバー130は、レーザーアレイのすべてのレーザーに一定の駆動電流を供給し、粒子の検出、およびレーザーの1つによって放射されるそれぞれのレーザービームに平行な速度成分の検出をできるようになっている。評価器140は、検出器アレイにより提供される測定信号を分析し、その測定信号を各検出器に割り当てるように構成される。第6のレーザーセンサモジュール100はさらに、レーザーにより放射されたレーザービームを異なる方向に向くように拡散するように構成された第1の光学デバイス150を有する。評価器140は、レーザーセンサモジュールに対する各レーザービームの方向に関する情報を含むデータ記憶デバイスを備え、各自己混合干渉信号を使用して、粒子の速度の(矢印で示す)異なる速度成分を決定するために使用することができる。さらに、異なる速度成分の全部または一部が、第6のレーザーセンサモジュール100によって決定された粒子密度を補正するために使用される。さらに、粒子の速度は、評価器140によって決定される。レーザービームの少なくとも一部の間の角度は90°であることが好ましい。
【0070】
図12は、第7のレーザーセンサモジュール100の主要上面図を示す。第7のレーザーセンサモジュール100の構成は、
図9に示す第6のレーザーセンサモジュール100の構成とほぼ同じである。レーザーの線形アレイの代わりに、第1のレーザー110を含むレーザーの2次元アレイが使用される。各レーザーは、集積された検出器を含む。この場合、第1の光学デバイス150は、レーザービームを3次元的に広げるように構成されている。したがって、
図9に関して説明したような2次元の広がりと比較して、3次元の速度ベクトルを決定することが可能である。さらに、異なる自己混合干渉信号の並列検出は、有効検出ボリュームを増大させ、したがって、補正された粒子密度を決定する測定時間を短縮する。
【0071】
図9および
図10に示されるレーザー(例えば、第1のレーザー110)のそれぞれは、統計量を増加および/または測定時間を短縮するために、レーザーのサブアレイまたはさらにはレーザーのアレイによって置き換えられてもよい。
【0072】
実際には、
図11および
図12の角度の差は、単一のレンズ系の収差が大きいフィールド/大きい角度になるため、小さくてもよい。したがって、個々のレーザーの前に個々のレンズを使用することは、好ましい解決策であり得る。このようにして、
図11についても、三次元速度ベクトルを決定することができる。
【0073】
図13は、レーザーセンサモジュール100を含むモバイル通信デバイス190示す原理図である。モバイル通信デバイス190は、ユーザインターフェース191、処理デバイス192及びメインメモリデバイス193を有する。メイン処理デバイス192はメインメモリデバイス193及びレーザーセンサモジュール100と接続されている。メイン処理デバイス192は、上記の評価器140の機能の少なくとも一部を有する。メイン処理デバイス192は、メインメモリデバイス193に粒子検出に関するデータを格納する。別の一実施形態では、メイン処理デバイス192およびメインメモリデバイス193のみを使用して、レーザーセンサモジュール100により供給されるデータを準備または構成し、ユーザインターフェース191によりモバイル通信デバイス190のユーザにデータが提示できるようにすることができる。レーザーセンサモジュール100は、モバイル通信デバイス190の電源により電源供給される。モバイル通信デバイス190はさらに、方向検出デバイス(図示せず)を有してもよい。方向検出デバイスは、例えば、モバイル通信デバイス190の地面に対する相対位置を決定するように構成されてもよい。方向検出デバイスは、レーザーセンサモジュール100により提供されるデータと、方向検出デバイスにより提供されるデータとを結合するために、評価器140またはメイン処理デバイスと結合されていてもよい。方向検出デバイスとレーザーセンサモジュール100とをカップリングすると、風の速度や粒子密度の信頼性がより高い検出が可能となり、風の方向に関する情報も提供できる。
【0074】
図14は、空調システム200を示す原理図である。空調システム200は、エアムーバー210(例えば、ファン)、フィルタシステム220及び上記実施形態のいずれか1つによるレーザーセンサモジュールを有する。ファンとフィルタシステム220は、例えば空気が流れるチューブ中に配置される。ファンは、チューブの軸方向で空気を加速し、粒子の移動方向が分かるようにする。レーザーセンサモジュールは粒子密度と粒子速度を決定する。粒子密度及び/又は粒子速度は、フィルタシステム220がよごれているか否か判定するために使用されてもよい。粒子速度は、例えば、フィルタシステム220がよごれていると遅くなることがある。空調システム200はこの場合、フィルタシステム220の交換または清掃をトリガーするアラートを発生するように構成されていてもよい。空調システム200は、代替的にまたは追加的に、粒子密度が粒子密度閾値より上か下か示す、または情報信号を提供するように構成されていてもよい。空調システム200は、例えば真空掃除機に組み込まれていても良い。真空掃除機は、例えば、粒子密度がリュウし密度閾値より低い場合、信号を供給してもよい。真空掃除機のユーザには、この場合、例えば、真空掃除機により掃除されたカーペット(少なくとも真空掃除機により掃除された領域)がきれいになることが分かる。空調システム200は、別の一実施形態では、空調機に一体化されてもよい。空調機は、例えば、粒子密度が(真空掃除機の閾値としての閾値であってもよい)粒子密度閾値より大きい場合、信号を供給してもよい。空調機のユーザには、この場合、空調機により吸引された空気が汚れているか分かる。レーザーセンサモジュール100は、好ましくは、例えば、エアムーバー210により生じる空気の速度に対して測定を較正するため、エアムーバー210から情報を受信してもよい。空調システムは、代替的に、エアムーバー210とレーザーセンサモジュール100からのデータを受信するため、プロセッサおよび対応する記憶デバイスを有してもよい。空調システム200は、代替的にまたは追加的に、大2のレーザーセンサモジュール100(図示せず)を有する。これは(
図14に示した粒子流に対して)フィルタシステム220の後に配置される。第2のレーザーセンサモジュール100は、フィルタシステム220の状態のより敏感な測定を可能にできる。空調システム200はさらに、レーザーセンサモジュール100により生成されるデータへのアクセスを可能にする通信インターフェースを有する。
【0075】
図15は、第1のセンサデバイス300を示す原理図である。第1のセンサデバイス300は、方向デバイス330、レーザーセンサモジュール100、通信インターフェース310、回転軸320および粒子を含む空気が流れ得るチューブを有する。第1のセンサデバイス300は、例えば、風の速度と空気の汚染(例えば、PM2.5の値)を決定するために使用できる。方向デバイス330は、第1のセンサデバイス300を回転軸320の周りで回転することにより、風方向に第1のセンサデバイスを向けるように構成された羽(vane)である。第1のセンサデバイス300に対する粒子の運動方向は、風の方向が地面と平行であると仮定する限り、既知である。レーザーセンサモジュール100は、粒子密度と風の速度とを測定する。レーザーセンサモジュール100は、通信インターフェース310に接続され、補正された粒子密度と風の速度とに関するデータは、他のデバイスでも利用可能である。通信インターフェース310はこの場合Bluetooth(登録商標)インターフェースである。Bluetooth(登録商標)インターフェースおよび対応ソフトウェアアプリケーションを有するモバイル通信デバイスのユーザは、通信インターフェース310を解して第1のセンサデバイス300と通信できる。ユーザは、例えば、第1のセンサデバイス300により測定される粒子密度と風の速度とを読み出すことができる。
【0076】
図16は、第2のセンサデバイス300を示す原理図である。第2のセンサデバイス300は、第1のレーザーセンサモジュール100、第2のレーザーセンサモジュール100および通信インターフェース310を有する。第2のセンサデバイス300は地面に平行に配置される。第1のレーザーセンサモジュール100は第1のレーザー光ビームを放射する。第2のレーザーセンサモジュール100は、第1のレーザー光ビームと約90°の角度をなす第2のレーザー光ビームを放射する。レーザーセンサモジュール100は、粒子密度と風の速度とを測定する。レーザーセンサモジュール100は、通信インターフェース310に接続され、補正された粒子密度と風の速度とに関するデータは、他のデバイスでも利用可能である。通信インターフェース310はこの場合WLANインターフェースである。第2のセンサデバイス300により測定される風の速度と粒子密度は、対応するインターフェースと通信する、インターネットおよびWLANインターフェースを介して評価し得る。
【0077】
流体または空気流の方向が3次元である場合、第3のレーザー光ビームの異なる放射角を有する第3のレーザーセンサモジュール100が、第2のセンサデバイス300に追加されてもよい。あるいは、上記の通り、2つまたは3つの斜めのレーザービームを放射する1つのレーザーセンサモジュール100があってもよい。
【0078】
図17は、粒子密度検出方法を示す原理図である。ステップ410において、第1のレーザー光が第1のレーザー110により放射される。ステップ420において、第1のレーザー光の少なくとも一部を受光した粒子により反射された第1の反射レーザー光が、第1のレーザー110の第1のレーザーキャビティにおいて反射される。第1のレーザー110の第1のレーザーキャビティ中の光波の第1の自己混合干渉信号がステップ430で検出される。第1の自己混合干渉信号は、第1のレーザーキャビティに再入する第1の反射レーザー光により生じる。第1のパラメータはステップ440で決定される。ステップ450において、粒子密度は、第1の自己混合干渉信号により所定時間内に検出される粒子数に基づいて決定される。粒子密度は第1のパラメータによりステップ460で補正される。
【0079】
本発明の基本的なアイデアは、自己混合干渉信号により粒子を検出し、対応する粒子密度を決定することである。また、検出ボリュームと粒子との間に相対的な運動があれば、粒子密度を補正するために、粒子の少なくとも1つの速度成分に関する少なくとも1つの第1のパラメータが決定される。このような相対的な運動は、例えば、粒子を輸送する流体の速度(例えば、風速)に関連してもよい。さらに、自己混合干渉信号に基づいて、粒子の速度の少なくとも1つの速度成分を決定することも可能である。
【0080】
図面と上記の説明に詳しく示し本発明を説明したが、かかる例示と説明は例であり限定ではない。
【0081】
本開示を読めば、当業者にはその他の修正が明らかとなろう。かかる修正は、本技術分野ですでに知られ、本明細書で説明した特徴の替わりに又はそれに加えて使用され得る他の特徴を含んでもよい。
【0082】
図面、本開示、及び添付した特許請求の範囲を研究して、開示した実施形態のバリエーションを、当業者は理解して実施することができるであろう。請求項において、「有する(comprising)」という用語は他の要素やステップを排除するものではなく、「1つの(「a」又は「an」)」という表現は複数の要素やステップを排除するものではない。相異なる従属クレームに手段が記載されているからといって、その手段を組み合わせて有利に使用することができないということではない。
【0083】
請求項に含まれるどの参照符号も、その請求項の範囲を限定するものと解してはならない。
【符号の説明】
【0084】
10 粒子数軸
20 時間軸(ミラーサイクル)
30 時間にわたる粒子数Vpar=0及びVper=0m/s
32 時間にわたる粒子数Vpar=0及びVper=3m/s
33 時間にわたる粒子数Vpar=3及びVper=0m/s
34 時間にわたる粒子数Vpar=3及びVper=3m/s
35 時間にわたる粒子数Vpar=−3及びVper=0m/s
40 粒子数軸
50 速度軸
60 速度立方根依存性
61 理論的依存性
62 実験結果
70 時間軸
80 SNR軸
91 第1の信号
92 第2の信号
93 第3の信号
94 第4の信号
100 レーザーセンサモジュール
110 第1のレーザー
111 第2のレーザー
120 第1の検出器
121 第2の検出器
130 電気ドライバー
140 評価器
150 第1の光学デバイス
155 第1の焦点領域
156 第2の光学デバイス
158 第2の焦点領域
160 コントローラ
170 可動ミラー
190 モバイル通信デバイス
191 ユーザインターフェース
192 メイン処理デバイス
193 メインメモリデバイス
200 空調システム
210 エアムーバー
220 フィルタシステム
300 センサデバイス
310 通信インターフェース
320 センサデバイスの回転軸
330 方向付けデバイス
410 第1のレーザー光を放射するステップ
420 第1の反射レーザー光を受光するステップ
430 第1の自己混合干渉信号を決定するステップ
440 第1のパラメータを決定するステップ
450 粒子密度を決定するステップ
460 粒子密度を補正するステップ