(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
  以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
 
【0016】
  これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
  なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
  以下に、本発明の一実施形態を、図面を用いて説明する。
 
【0017】
(実施の形態1)
  
図1は、喘息検出、肺機能検出などを行う際に使用する呼気測定装置1を示している。
  本実施形態の呼気測定装置1は、例えば、呼気に含まれる一酸化窒素の量(呼気の一酸化窒素の濃度)を測定する。呼気測定装置1では、呼気の吸い込みと吹き込みを行うハンドル部2が、チューブ3を介して測定装置本体4に接続されている。
 
【0018】
  ハンドル部2は、ハンドル部本体5と、ハンドル部本体5の上方に装着されるマウスピース6と、を有している。
  そして、使用者がマウスピース6の呼気口7に口をつけて呼気の吸い込みを行うと、給気口(図示せず)から大気がハンドル部本体5内に取り込まれる。取り込まれた大気は、フィルタ部(図示せず)に含まれる一酸化窒素除去剤によって一酸化窒素が除去される。
 
【0019】
  ここから、使用者が呼気を呼気口7に吹き込むと、吹き込まれた呼気は、チューブ3を通過して、
図1の測定装置本体4内へと流れ込む。呼気には、使用者の気道で発生した一酸化窒素が含まれる。
 
【0020】
  図2は、測定装置本体4の制御ブロック図である。
  測定装置本体4内には、
図2に示すように、吹き込まれる呼気の圧力を測定する圧力センサ8と、圧力センサ8の値を用いて呼気を所定の流量(単位時間あたりに流れる呼気の量で、例えば、50ml/秒)に調整する流量調整器9と、流量調整器9で流量調整された呼気を一時的に溜め込むチャンバ10と、が設けられている。
 
【0021】
  チャンバ10内の呼気は、入力ガス切替器11および流量検出器12を介して、ポンプ13から測定部14に送られる。測定部14は、呼気の測定を行う。
  なお、圧力センサ8、流量調整器9、入力ガス切替器11、流量検出器12、ポンプ13、および測定部14は、
図2に示すように、制御部15に電気的に接続されている。さらに、制御部15には、表示部16、電源スイッチ17、メモリ18が電気的に接続されている。制御部15は、接続された各部の制御を行うと共に、ポンプ13の動作制御を行う。
 
【0022】
  呼気内に含まれる一酸化窒素を測定する際には、一旦、呼気がチャンバ10内に溜められた後、チャンバ10内の呼気がポンプ13によって吸い出されて測定部14に供給される。つまり、ポンプ13が動作すると、呼気の圧力は、チャンバ10側よりもポンプ13側の方が小さくなるので、呼気は、
図2に示すように、チャンバ10から測定部14に向けて流れる。
 
【0023】
  ここで、呼気の測定を行うためには、呼気が所定の流量で測定部14に供給される必要がある。
  このため、ポンプ13によって供給される呼気の流量を流量検出器12が検出し、この検出値に基づいてポンプ13を制御することにより、呼気は所定の流量で測定部14に供給される。
 
【0024】
  この所定の流量は、予め設定された所定の流量値として、メモリ18に格納されている。また、制御部15が使用する各種の制御プログラムも、メモリ18に格納されている。
  また、入力ガス切替器11には、ゼロガス生成器19が接続されている。呼気の測定において、入力ガス切替器11は、チャンバ10と流量検出器12との接続を、ゼロガス生成器19と流量検出器12との接続に切り替える。
 
【0025】
  以下に、基本的な呼気の測定動作を説明する。
  なお、ここでは、使用者によって吹き込まれた呼気がチャンバ10内に溜め込まれている状態から説明する。
 
【0026】
  呼気の測定においては、まず、チャンバ10内の呼気を測定して実測値を求める。
  具体的には、制御部15が、呼気が所定の流量(例えば、2ml/秒)になるようにポンプ13を制御しながら、チャンバ10内の呼気を、入力ガス切替器11および流量検出器12を介して、測定部14に供給する。
 
【0027】
  この時、制御部15は、流量検出器12によって検出された呼気の流量の検出値に基づいてポンプ13を制御することにより、呼気が所定の流量で測定部14に供給される。
  測定部14は、呼気中に含まれる一酸化窒素の濃度を測定する。この測定により、呼気の実測値が得られる。
 
【0028】
  次に、測定環境の大気を測定して基準値を求める。
  具体的には、制御部15が、ポンプ13および入力ガス切替器11を制御して、測定環境の大気を、ゼロガス生成器19、入力ガス切替器11を介して取り込み、測定部14に供給する。
 
【0029】
  この時、測定環境の大気は、ゼロガス生成器19を通過することにより、一酸化窒素が除去される。測定部14は、一酸化窒素が除去された測定環境の大気を測定する。この測定により基準値が得られる。
 
【0030】
  その後、制御部15が、基準値と呼気の実測値とを比較して、呼気に含まれる一酸化窒素の量(呼気中の一酸化窒素の濃度)を算出し、その値を表示部16に表示させる。
  本実施形態では、
図2の流量検出器12が検出する呼気の流量の検出精度を高めることで、検出された呼気の流量に基づいてポンプ13が適切に制御され、呼気が所定の流量で測定部14に供給される。その結果として、呼気中に含まれる一酸化窒素の濃度の測定精度を高めることができる。
 
【0031】
  ここで、
図2の流量検出器12の構成について、
図3〜
図8を用いて、詳細に説明する。
  
図3は、流量検出器12の分解斜視図である。
図4は、流量検出器12の上面図である。
図5は、流量検出器12の側面図である。
図6は、
図4のA−A線矢視断面図である。
図7は、
図5のB−B線矢視断面図である。
図8は、流量検出器12の要部の断面図である。
 
【0032】
  流量検出器12は、
図3に示すように、樹脂で形成された細長い円筒形状のパイプ体20を備えている。
  パイプ体20は、第1端側に、チャンバ10(
図2参照)からの呼気が流入する流入口21を有している。また、パイプ体20は、第1端とは反対の第2端側に、パイプ体20内を通過した呼気が流出する流出口22を有している。
 
【0033】
  パイプ体20には、2個のOリング24を介して、差圧センサ23が接続されている。差圧センサ23は、呼気の流入側と流出側の2カ所で圧力を計測することで、その圧力差を求める。
 
【0034】
  つまり、本実施形態の呼気測定装置1では、パイプ体20内を流れる呼気に対して、差圧センサ23が計測した2カ所の圧力の差から呼気の流量を検出する。
  なお、差圧センサ23は、一般的な差圧センサが使用されている。差圧センサ23は、他の電子部品25と共に基板26に設けられている。
 
【0035】
  また、パイプ体20には、流入口21および流出口22の近くに、2個のボス27が設けられている。
  さらに、詳細は後述するが、パイプ体20には、円柱状の分割パッキン28(分割部の一例)の中心に一本の通気管29が圧入された状態で、パイプ体20内に挿入されている。
 
【0036】
  そして、流量検出器12のボス27を2個のネジ30によって板金31にネジ止めすると、
図4および
図5に示すように、流量検出器12が組み立てられる。流量検出器12は、呼気測定装置1内部に配置される。
 
【0037】
  パイプ体20の内部について、
図7を用いて説明する。
  パイプ体20には、
図7に示すように、パイプ体20の内部空間を、流入口21側の流入空間(第1空間)32と、流出口22側の流出空間(第2空間)33とに分割する分割パッキン28が設けられている。
 
【0038】
  分割パッキン28は、ゴム(弾性体の一例)製の部材であって、略円筒状のパイプ体20の内側に圧入されている。そして、分割パッキン28の流出口22側の端部に形成された凹部が、パイプ体20の内周面(内面)から径方向内側に向かって突出した円環状のリブ34と嵌合している。
 
【0039】
  これにより、分割パッキン28が、パイプ体20の内部において移動することを規制することができる。
  また、分割パッキン28には、分割パッキン28の中央部を貫通した金属製の細長い円筒形状の通気管29が一本設けられている。
 
【0040】
  通気管29は、真っ直ぐな円筒状の部材であって、円柱状の分割パッキン28の軸方向に沿って圧入されている。
  このため、パイプ体20の内部空間は、分割パッキン28によって2分割され、かつ分割された流入空間32と流出空間33とは、通気管29を介して、連通している。よって、パイプ体20の流入口21から流入空間32に流れ込んだ呼気は、細長い通気管29内を通って流出空間33に到達し、流出口22から流出する。
 
【0041】
  パイプ体20における分割パッキン28よりも流入空間32の側には、接続孔35が設けられている。そして、接続孔35を介して、差圧センサ23が流入空間32に接続されている。
 
【0042】
  一方、パイプ体20における分割パッキン28よりも流出空間33側には、接続孔36が設けられている。そして、接続孔36を介して、差圧センサ23が流出空間33に接続されている。
 
【0043】
  差圧センサ23は、流入空間32と流出空間33とにおけるそれぞれの呼気の圧力を計測し、その圧力差を算出する。
  
図8は、パイプ体20の断面図であって、パイプ体20の内部における呼気の流れを示している。
 
【0044】
  本実施形態の呼気測定装置1では、
図8に示すように、流量検出器12を構成するパイプ体20の内部には、上述したように、パイプ体20の内部空間を流入空間32と流出空間33とに分割する分割パッキン28(分割部の一例)が設けられている。そして、分割パッキン28を貫通する細長形状の一本の通気管29が、設けられている。
 
【0045】
  また、通気管29は、第1端部29aが、分割パッキン28から流入空間32内に突出している。同様に、通気管29は、第1端部29aとは反対側の第2端部29bが、分割パッキン28から流出空間33内に突出している。
 
【0046】
  つまり、流入空間32に流入した呼気は、流入空間32と流出空間33とを連通させる一本の細くて長い通気管29内へ導かれ、通気管29を通って、流出空間33へと流れ出る。
 
【0047】
  このため、パイプ体20の内部では、流入空間32から流出空間33に流れる呼気は、細くて長い通気管29を介して移動するため、流入空間32側と流出空間33側とにおける圧力差が大きくなる。
 
【0048】
  具体的には、呼気が流入する流入空間32側の圧力は、細長い通気管29を介して呼気が流出する流出空間33側の圧力よりも高くなる。よって、流入空間32側と流出空間33側とにおける圧力差は、従来よりも大きくなる。
 
【0049】
  したがって、差圧センサ23によって、大きくなった圧力差が十分な精度で計測されるため、この圧力差を用いて検出される呼気の流量の検出精度を高めることができる。
  この結果、呼気の流量の検出精度が高まることで、制御部15によってポンプ13が適切に制御されるため、呼気が高精度で管理された所定の流量で測定部14に供給される。よって、呼気の測定精度を高めることができる。
 
【0050】
  なお、流出空間33においては、
図8のエリアDに示すように、通気管29の出口(通気管29の流出空間33側の端部)から流れ出した呼気は、パイプ体20と通気管29の内径の差によって、通気管29の流出側の第2端部29bから離れるにしたがって、少しずつ流路が拡がっていく。
 
【0051】
  このように、呼気の流路が変わると、そこに、乱流(呼気の速度や圧力などが不規則に変動する流れ)が発生しやすくなる。そして、通気管29の出口付近に乱流が発生すると、この乱流による圧力の変動に影響されて、呼気の圧力差の計測精度が低下することが懸念される。
 
【0052】
  そこで、本実施形態においては、上述のように、呼気を細長い通気管29に通している。このため、通気管29に入った呼気は、細長い通気管29によって流れる方向が整えられて、通気管29の長手方向への直進性が高まる。すると、通気管29の出口(第2端部29b)から出た呼気は、所定距離を直進するので、通気管29の出口付近における呼気の流路の変化が抑制される。
 
【0053】
  これにより、通気管29の出口付近(流出空間33のエリアD)における乱流の発生を抑制することができる。
  そして、パイプ体20の出口(第2端部29b)付近の乱流を抑制した状態で、乱流が発生し易い位置から離れた位置(つまり、通気管29の出口側の第2端部29bから離れた位置)で呼気の圧力差を計測する。
 
【0054】
  具体的には、流出空間33では、通気管29は、分割パッキン28から流出空間33内に突出して設けられると共に、パイプ体20の内周面から離して設けられている。つまり、流出空間33には、通気管29の外周面とパイプ体20の内周面との間に、円筒状の隙間37が形成されている。
 
【0055】
  隙間37は、乱流が発生し易い通気管29の出口側の第2端部29bから離れた位置に形成されている。
  そして、流出空間33内の圧力を測定する差圧センサ23は、隙間37に対応する位置に設けられた接続孔36を介して、流出空間33と連通している。
 
【0056】
  また、接続孔36は、パイプ体20における通気管29の出口側の第2端部29bよりも分割パッキン28に近い位置に設けられている。換言すれば、接続孔36は、パイプ体20における通気管29の中央寄りの位置に設けられている。
 
【0057】
  このため、流出空間33においては、通気管29の出口付近の乱流を抑制した状態、かつ、乱流が発生し易い通気管29の出口側の第2端部29bから離れた位置で、呼気の圧力が計測される。したがって、流出空間33において、乱流の影響をほとんど受けることなく、呼気の圧力を適切に計測することができる。よって、流出空間33側と流入空間32側とにおける圧力差を用いて検出される呼気の流量の検出精度を高めることができる。
 
【0058】
  この結果、呼気の流量の検出精度が高まることで、制御部15によってポンプ13が適切に制御され、呼気が高精度に管理された所定の流量で測定部14に供給されるため、呼気の測定精度を高めることができる。
 
【0059】
  なお、流入空間32における通気管29の入口(通気管29の流入空間32側の第1端部29a)付近では、
図8のエリアEに示すように、呼気は、細い通気管29へと流れ込む。
 
【0060】
  流入空間32においても、通気管29は、分割パッキン28から流入空間32内に突出して設けられると共に、パイプ体20の内周面から離して設けられている。つまり、流入空間32には、通気管29の外周面とパイプ体20の内周面の間に円筒状の隙間38が形成される。
 
【0061】
  隙間38は、通気管29の入口側の第1端部29aから離れた位置に形成されている。
  そして、流入空間32内の圧力を測定する差圧センサ23は、隙間38に対応する位置に設けられた接続孔35を介して、流入空間32と連通している。
 
【0062】
  また、接続孔35は、パイプ体20における通気管29の入り口側の第1端部29aよりも分割パッキン28に近い位置に設けられている。換言すれば、接続孔36は、パイプ体20における通気管29の中央寄りの位置に設けられている。
 
【0063】
  このため、仮に、通気管29の入口(第1端部29a)付近において乱流が発生した場合でも、乱流から離れた位置で呼気の圧力が計測される。したがって、流入空間32において、乱流の影響をほとんど受けることなく、呼気の圧力を適切に計測することができる。よって、流入空間32側と流出空間33側とにおける圧力差を用いて検出される呼気の流量の検出精度を高めることができる。
 
【0064】
  この結果、呼気の流量の検出精度が高まることで、制御部15によってポンプ13が適切に制御され、呼気が高精度に管理された所定の流量で測定部14に供給されるため、呼気の測定精度を従来よりも向上させることができる。
 
【0065】
  なお、上述のように、流入空間32および流出空間33において、通気管29は、パイプ体20の内周面から離して設けられており、通気管29の外周面とパイプ体20の内周面との間には、略円筒状の隙間37,38が形成されている。
 
【0066】
  隙間37,38では、通気管29内での呼気の流れ、および通気管29の出入り口(
図8のエリアDおよびエリアE)付近における呼気の流れ、およびパイプ体20の流入口21および流出口22における呼気の流れ、と比べて、呼気の流れが少ない(呼気の流れがほとんど無い)。
 
【0067】
  そして、差圧センサ23は、接続孔35を介して流入空間32の隙間38に接続され、接続孔36を介して流出空間33の隙間37に接続されている。
  このため、呼気の流れのムラ(乱流等)による影響がほとんど無い状態で、流入口21と流出口22との間における呼気の圧力差が計測されるため、呼気の流量の検出精度をさらに高めることができる。
 
【0068】
  また、本実施形態においては、
図8に示すように、流出空間33では、差圧センサ23が接続された接続孔36が、通気管29の出口側の第2端部29bよりも分割パッキン28に近い位置に設けられている。
 
【0069】
  つまり、上述のように、呼気を長い通気管に通して、通気管29の出口付近に発生する乱流を抑制しているが、乱流の影響を更に小さくするために、接続孔36は、通気管29の出口側の第2端部29bから離して分割パッキン28に近い位置に設けられている。
 
【0070】
  したがって、乱流の影響を受けにくい位置で、流出空間33側の呼気の圧力が計測されるため、流入空間32と流出空間33とにおける圧力差を高精度に計測することができる。この結果、流入空間32と流出空間33とにおける圧力差に基づいて検出される呼気の流量の検出精度を高めることができる。
 
【0071】
  さらに、本実施形態においては、
図8に示すように、通気管29は、その長手方向において、分割パッキン28からの突出長さ(分割パッキン28から通気管29の第1端部29a、第2端部29bまでの距離)が、分割パッキン28の長さ(厚み)よりも大きくなるように配置されている。
 
【0072】
  特に、流出空間33では、通気管29は、その長手方向において、分割パッキン28からの突出長さが、分割パッキン28の長さ(厚み)よりも大きくなるように形成されている。つまり、流出空間33の通気管29を、分割パッキン28から大きく突き出た状態としている。
 
【0073】
  このため、通気管29の出口付近における乱流が発生し易い位置から大きく離れた位置(つまり、乱流の影響を受けにくい位置)に、差圧センサ23が接続される接続孔36を設けることができる。
 
【0074】
  すると、差圧センサ23は、通気管29の出口付近において発生し易い乱流の影響を受けにくい位置で、流出空間33側の呼気の圧力を測定できる。
  したがって、乱流の影響を受けにくい位置で計測された呼気の圧力を用いて、呼気の圧力差が計測されるため、呼気の流量の検出精度をさらに高めることができる。
 
【0075】
  なお、通気管29は、流出空間33側にのみ突出させる構成にしてもよい。この構成においても、通気管29の出口付近の乱流が発生し易い位置から離れた位置に接続孔36を設けることで、乱流の影響を受けることなく呼気の圧力を計測することができる。
 
【0076】
  さらに、本実施形態においては、パイプ体20および通気管29は、略円筒状に形成されており、パイプ体20の中心軸と通気管29の中心軸とが一致する(重なる)ように配置されている。つまり、パイプ体20と通気管29とは、いわゆる同心円状に配置された2重筒を形成している。
 
【0077】
  このため、パイプ体20内の呼気の流れを、パイプ体20および通気管29の中心軸を中心とした軸対称に形成することができる。
  特に、流出空間33では、通気管29から出てきた呼気の流れが軸対称に形成されるため、流出空間33において、呼気の流れが整えられて、通気管29の第2端部29b付近における乱流の発生を抑制することができる。
 
【0078】
  したがって、乱流の影響を小さくした状態で、流入空間32および流出空間33における呼気の圧力差が高精度に計測されるため、呼気の流量の検出精度を高めることができる。
 
【0079】
  さらに、本実施形態においては、
図8に示すように、通気管29の内径は、パイプ体20の内径の半分よりも小さい。
  つまり、通気管29の軸に垂直な方向の断面積は、パイプ体の断面積に比べて十分に小さく形成されている。
 
【0080】
  このため、流入空間32から流出空間33に流れる呼気は、細い通気管29に通されるので、流入空間32の呼気と流出空間33の呼気との圧力差が大きくなる。
  したがって、大きくなった圧力差が十分な精度で計測されるため、呼気の流量の検出精度を高めることができる。
 
【0081】
  さらに、本実施形態においては、通気管29の内周面は、パイプ体20の内周面よりも表面粗さが小さい。
  具体的には、通気管29は、金属(例えば、ステンレス等)で形成されており、パイプ体20は、樹脂(例えば、ABS樹脂等)で形成されている。
 
【0082】
  これにより、金属製の通気管29の内周面は、樹脂製のパイプ体20の内周面よりも表面粗さが小さい。よって、通気管29の内周面は、パイプ体20の内周面よりも表面の凹凸が小さくなり、呼気は表面の凹凸が小さい通気管29を通過しやすい。
 
【0083】
  このため、呼気の流れが通気管29内で乱れることを抑制することができ、通気管29の出口側の第2端部29b付近(流出空間33のエリアD)における乱流の発生を抑制することができる。
 
【0084】
  したがって、乱流の影響を小さくした状態で、流入空間32側と流出空間33側とにおける呼気の圧力差が計測されるため、この圧力差を用いて検出される呼気の流量の検出精度をさらに高めることができる。
 
【0085】
  さらに、本実施形態においては、流出空間33において、差圧センサ23が接続された接続孔36は、通気管29の第2端部29bよりも通気管29の中央に近い位置(分割パッキン28側)に設けられている。
 
【0086】
  つまり、本実施形態では、上述のように、呼気を長い通気管29に通すことで、呼気の直進性を高め、通気管29の出口付近に発生する乱流を抑制しているが、乱流の影響を更に低減するために、接続孔36は、通気管29の出口側の第2端部29bから離して通気管29の中央に近い位置に設けられている。
 
【0087】
  したがって、乱流が発生しやすい位置から離れた位置で、流出空間33側の呼気の圧力が計測されるため、呼気の流量の検出精度をさらに高めることができる。
  さらに、本実施形態においては、通気管29は、一本の円筒で形成されている。
 
【0088】
  すなわち、通気管29を、多数の細長い管を束ねて形成した場合、それぞれの管の内周面にはわずかな工作誤差が発生する。通気管29の前後では、複数の管の工作誤差が合算され大きくなるので呼気の圧力が変動しやすい。これにより、呼気の流量の検出精度が低くなってしまうおそれがある。
 
【0089】
  本実施形の呼気測定装置1では、通気管29が一本の円筒で形成されているため、工作誤差が合算されることがない。
  したがって、呼気の圧力差が適切に計測されるため、この圧力差を用いる呼気の流量の検出精度をさらに高めることができる。
 
【0090】
  なお、本実施形態においては、上述のように、通気管29の入口側の接続孔35および通気管29の出口側の接続孔36の両方が、通気管29の外周面とパイプ体20の内周面との間に形成される隙間37,38に対応する位置にそれぞれ設けられている。
 
【0091】
  しかしながら、通気管29の入口付近に発生する乱流が通気管29の出口付近の乱流に対して小さい場合には、出口側の接続孔36だけが、通気管29とパイプ体20の隙間37に対応する位置に設けられていればよい。
 
【0092】
  すなわち、例えば、流入空間32の通気管29の入口に到達する呼気の流れが層流(呼気の速度や圧力などが不規則に変動しない流れ)の場合には、通気管29の入口(第1端部29a)付近に発生する乱流は、出口(第2端部29b)付近に発生する乱流に対して無視できるほどに小さくなる。
 
【0093】
  この場合には、出口(第2端部29b)側の接続孔36だけが、通気管29の外周面とパイプ体20の内周面との間に形成される隙間37に対応する位置に設けられていてもよい。
 
【0094】
  以上のように、本実施形態の呼気測定装置1は、呼気が吹き込まれる測定装置本体4と、呼気の測定を行う測定部14と、測定装置本体4に吹き込まれた呼気を一時的に溜め込むチャンバ10と、チャンバ10内の呼気を測定部14に供給するポンプ13と、ポンプ13の動作制御を行う制御部15と、ポンプ13によって測定部14に供給される呼気の流量を検出する流量検出器12と、を備えている。
 
【0095】
  流量検出器12は、第1端側に呼気が流入する流入口21、第2端側に呼気が流出する流出口22がそれぞれ設けられたパイプ体20と、パイプ体20に接続された差圧センサ23と、を有している。
 
【0096】
  パイプ体20は、パイプ体20の内部を呼気の流入空間32と流出空間33とに分割する分割パッキン28(分割部の一例)と、流入空間32側に設けられており差圧センサ23を流入空間32に接続する接続孔35と、流出空間33側に設けられており差圧センサ23を流出空間33に接続する接続孔36と、分割パッキン28を貫通し流入空間32と流出空間33とを連通させる細長形状の通気管29と、を有している。
 
【0097】
  以上のように、本実施形態の呼気測定装置1では、流量検出器12のパイプ体20は、内部を呼気の流入空間32と流出空間33とに分割する分割パッキン28と、分割パッキン28を貫通し流入空間32と流出空間33とを連通させる細長形状の通気管29と、を有している。
 
【0098】
  このため、パイプ体20の内部で、呼気は細くて長い通気管29を通過して、流出空間33側へ移動するため、流入空間32側と流出空間33側とで、呼気の圧力差が大きくなる。
 
【0099】
  したがって、従来よりも大きくなった圧力差が十分な精度で計測されるため、この圧力差を用いて検出される呼気の流量の検出精度を高めることができる。
  この結果、精度よく検出された圧力差に基づいて高精度に管理された呼気の流量になるようにポンプ13が適切に制御されるため、呼気中に含まれる一酸化窒素の濃度の測定精度を高めることができる。