(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861227
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】非冷却式加圧液化天然ガスタンクに送られたエネルギの量をリアルタイムに計算する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
F17C 13/08 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
F17C13/08 302Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-568246(P2018-568246)
(86)(22)【出願日】2017年6月14日
(65)【公表番号】特表2019-519740(P2019-519740A)
(43)【公表日】2019年7月11日
(86)【国際出願番号】FR2017051541
(87)【国際公開番号】WO2018002467
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2019年10月2日
(31)【優先権主張番号】1656241
(32)【優先日】2016年6月30日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517022108
【氏名又は名称】エンジー
【氏名又は名称原語表記】ENGIE
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベン ベルガセム−ストレック,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】メナード,ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】レグランド,フレデリク
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−182936(JP,A)
【文献】
特開2006−160287(JP,A)
【文献】
特開2010−139055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状および寸法によって画定され、液化天然ガス(LNG)の層を収容する加圧タンク(1)内に含まれる残存化学エネルギEをリアルタイムに計算する方法であって、前記LNG層は、所与の瞬間tにおいて、前記タンク内でのLNG層の温度T、LNG層の密度ρ、およびLNG層
の高さhによって定義され、
前記方法は、所与の瞬間tにおいて、以下のステップ:
A.以下の測定によって、前記LNG層の特性パラメータを取得するステップと、
− 高さセンサ(2)を使用する前記タンク内の前記LNG層の前記高さhの測定、
− 温度センサ(3)を使用する前記温度Tの測定、
− 密度センサ(4)を使用する前記密度ρの測定、
B.前記タンク(1)内に収容された前記LNGの全質量m
tを求めるステップと、
を含むアルゴリズムからなる、方法において、
前記アルゴリズムは、各瞬間tに対して、以下のステップ:
C.以下の式に従い、前記液体の前記温度
Tおよび前記密度
ρをパラメータとして用いる関数fを使用して、前記LNGの質量総熱量GCV
massを計算するステップと、
【数1】
D.以下の式に従って、前記残存化学エネルギEを計算するステップと、
【数2】
をさらに含
み、
前記質量総熱量GCVmassを前記パラメータTおよびρに関係付ける前記関数fは、以下の
形を取る、
【数3】
式中、
− Aは、所与の温度に対して一定値
− Bは、組成とは無関係の定数
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
・前記アルゴリズムは、前記タンク(1)を使用するオペレータ(7)から要求されたときに繰り返して行われるか、
・または、前記アルゴリズムは、所与の時間間隔Δtが経過した直後に自動的に行われ
るか、
のいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンク(1)に収容されたLNGの前記全質量mtの導出は、バランスまたは応力ゲージを使用する直接測定によって行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンク(1)に収容されたLNGの前記全質量m
tの導出は、以下の式に従った計算によって行われる、請求項1または2に記載の方法。
【数4】
式中、
− hは、前記タンク内の前記LNG層の前記高さ
− ρは、前記LNGの前記密度
− gは、前記タンクの前記形状に関係する関数
【請求項5】
形状および寸法によって画定され、液化天然ガス(LNG)の層を収容する加圧タンク(1)内に含まれる残存化学エネルギEを請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法に従って、
リアルタイムに計算するためのシステムであって、前記LNG層は、所与の瞬間tにおいて、前記タンク内でのLNG層の温度T、LNG層の密度ρ、およびLNG層の高さhによって定義され
、
前記システムは、
− 前記タンク(1)に設けられた高さセンサ(2)、温度センサ(3)、および密度セ
ンサ(4)に接続されることを意図され、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法の前記
アルゴリズムを実行することができる計算機(5)と、
− 請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法の前記アルゴリズムによって得られた残存化学エネルギの量をオペレータに知らせるために、前記計算機(5)と相互作用するMMIインターフェイス(6)と、
を含むことを特徴とする、システム。
【請求項6】
車載システムであり、
・前記計算機(5)は、前記高さセンサ(2)、温度センサ(3)、および密度センサ(4)に接続された車載計算機であり、前記計算機(5)は、特に、本発明に記載の方法の前
記アルゴリズムを実行するように設計され、
・前記MMIインターフェイス(6)は、車載ダッシュボードタイプの車載インターフェイス、またはオフセットインターフェイスである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
液化天然ガスの層を収容し、高さセンサ(2)、温度センサ(3)、および密度センサ(4)を設けられた加圧タンク(1)を含む車両であって、請求項5または6に記載のシステムをさらに含むことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、液化天然ガス(LNG)の組成を特定する必要なしに、LNGを収容する非冷却式加圧タンク内の残存化学エネルギの量をリアルタイムに計算する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
LNG燃料は、CO
2排出物、汚染粒子、およびエネルギ密度の観点から、従来の燃料に対する単純かつ有効な代替物である。道路上、海上、またはレール上の運搬機など、LNG燃料
の使用に切り換える関係者が増えている。
【0003】
しかし、従来の燃料とは異なり、LNGの体積エネルギ密度、すなわち、LNGの単位体積当たりに含まれるエネルギは一定ではない。これは、2つの別の現象から説明することがで
きる。第1に、LNGの温度は、残存熱入力により、非冷却式加圧タンクでの貯蔵期間全体にわたって上昇する。この場合に、この温度上昇により、(体積が最大で20%を超える範囲で増大することがある)流体の熱膨張が生じ、ひいては、流体のエネルギ密度が落ちる。
【0004】
LNGのエネルギ密度の変化を説明する第2の現象はLNGの組成の変化である。LNGは精製された生産物ではなく、したがって、炭化水素の組成が、使用される保管所に応じて変わることがある。
【0005】
非冷却式の貯蔵器に保管されたLNGの体積エネルギ密度の変動は、燃料消費の細かい監
視を必要とするシステムにおいて問題であり得る。通常、LNGで動く貨物自動車において
、600LのLNGを収容する同じ貯蔵器の場合に、同一組成のLNGに対して、LNGが重くかつ冷
たいかどうか、またはLNGが軽くかつ温かいかどうかに応じて、約15-20%のLNGの体積エ
ネルギ密度の違いが認められることがある。これは、実際上、比較例に示すように、始動時に同じ量のLNGが導入された場合に、走行キロメートル数に関して100キロメートル程度の差をもたらす。
【0006】
現在のところ、LNGのタンク内に含まれる残存エネルギについて、加圧タンクのオペレ
ータにリアルタイムで知らせる問題解決策はない。オペレータにとって入手可能な情報は、ガス組成物の圧力、(最良の場合の)LNGの温度、およびタンクの充填高さのみである
。
【0007】
一般的に、燃料供給装置によるタンクへの充填時に、(供給装置から供給される)LNG
とLNGの転送質量との既知の最新組成を使用して、国際規格ISO 6976.1995に準拠したエネルギ計算が行われる。この計算は、金融取引のための基準として使用される。このように、LNGが実質的にメタン、エタン、プロパン、イソブタン、n−ブタン、イソ−ペンタン、n-ペンタン、および窒素からなることを前提として、式(1)による、LNGの燃焼温度におけるこの計算から、LNGの総熱量GCV
massが求められ、
【数1】
式中、
− GCV
massは、LNGの熱量を表し、
− T
c GCVが計算される燃焼温度、
− x
j 混合物の成分jのモル分率、
− M
j 成分jのモル質量、
− M 標準規格NF EN ISO 976から得られるLNGのモル質量、
− GCV
mass_j ISO 6976.1995の図表から得られる成分jの総熱量、
である。
【0008】
ただし、この計算は、LNGの組成に依存する。しかし、この組成は、特定するのに手間
がかかることがある。実際上、クロマトグラフの導入が必要である。
【0009】
タンク内に含まれるエネルギに関するリアルタイムでの情報がないのは、以下のいくつかの理由から問題である。
− 供給管理:現在のところ、特定のタンク(特に、貨物自動車のタンク)に対するLNGの供給管理は、貯蔵器に残った液体の体積のみに基づいている。しかし、タンクに接続
されたユニットによって要求されたエネルギに基づく管理の方が一貫性がある。それが、例えば、引き続き走行できるキロメートル数を評価するために必要とされるデータだからである。
− 燃料不足および燃料切れの回避:LNGのエネルギ密度に応じて、ユニットの体積消
費量が急激に多くなることがあり、その理由は、この場合に、同じエネルギ量を得るために、より多量のLNGが必要とされるからである。オペレータが予定しないこの変動は、燃
料の予期しない不足、ひいては燃料切れを引き起こすことがある。
− オペレータのトレーニング:LNG燃料市場は、比較的規模が小さい。市場関係者は
、ほとんどが、LNGを取り扱うのに適したトレーニングを受け、よい練習をした専門家で
ある。しかし、市場が急速に成長した場合に、トレーニング不足の関係者が、LNGの消費
に対処し、かつ/またはLNGの消費を管理する必要がある。タンク内に含まれるエネルギ
量が分かることで、これらのオペレータが容易に理解できる大きさ(例えば、残りのキロメートル数)を簡単に計算することが可能になる。
【発明の概要】
【0010】
これを踏まえて、LNG燃料の発展を確実にするために、本出願人は、タンク内で測定さ
れる熱力学的パラメータ(タンク内のLNGの密度、LNGの層の温度および高さ)だけを使用して、タンクに収容されたLNGの組成を知ることなく、LNGのエネルギ含量をリアルタイムに、より良好に計画することを可能にする問題解決策を用意した。
【0011】
特に、本発明は、目的を達成するために、形状および寸法によって画定され、液化天然ガス(LNG)の層を収容する非冷却式加圧タンク内に含まれる残存化学エネルギEをリアルタイムに計算する方法を有し、前記LNG層は、所与の瞬間tにおいて、前記タンク内での温度T、密度ρ、および高さhによって定義され、
前記方法は、所与の瞬間tにおいて、以下のステップ:
A.以下の測定によって、LNG層の特性パラメータを取得するステップと、
− 高さセンサを使用する、タンク内のLNG層の高さhの測定、
− 温度センサを使用する温度Tの測定、
− 密度センサを使用する密度ρの測定、
B.タンク内に収容されたLNGの全質量m
tを求めるステップと、
を含むアルゴリズムからなり、
前記方法は、前記アルゴリズムが、各瞬間tに対して、以下のステップ:
C.以下の式に従い、液体の温度および密度をパラメータとして用いる関数fを使用して、LNGの質量総熱量GCV
massを計算するステップと、
【数2】
D.以下の式に従って残存化学エネルギEを計算するステップと、
【数3】
をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
天然ガスの質量総熱量(mass gross caloric value)という用語は、本発明において、一定の圧力および所与の温度で空気中に含まれる、対象となる単位質量の天然ガスの完全燃焼によって供給される熱量を意味する。質量総熱量は、単位質量の燃料当たりの熱量として表される(本発明の枠組みではkWh/m
3)。
【0013】
タンクの形状および寸法、LNGの温度、LNGの層の高さ、ならびにLNGの密度などの入力
情報を用いて、本発明による方法のアルゴリズムは、任意のタンク内に含まれる残存化学エネルギの実際の量を即座に計算することを可能にする。
【0014】
さらに、この方法は、LNGのGCV
massを求めるために、クロマトグラフまたは熱量計の使用を必要とするLNGの組成の特定を必要としないので、この方法を用意するのは簡単であ
る。実際上、通常では、LNGの質量GCVは、一般に、LNGが単にメタン、エタン、プロパン
、イソブタン、n-ブタン、イソ−ペンタン、n-ペンタン、および窒素で構成されるという近似を行うことで、LNGの組成に従って計算される。
【0015】
本発明による方法の場合、基本的にLNGの正確な組成を用いないことで生じる誤差は、
最大で約3%であり、これは、対象とする組成の温度と同じ温度での、重LNG(メタン以外の炭化水素を10%を超えて含有)のGCV
massと軽LNG(純粋なメタンを99%を超えて含有)との間に認められる差である。
【0016】
比較として、LNGのGCV
massを求めるための、本発明とは異なる方法で生じる誤差は、LNGのGCV
massが不正確な温度で求められる場合に、組成が正確な場合を含めても、約20%の値に急伸することがある。
【0017】
有利にも、前記アルゴリズムは、前記タンクを使用するオペレータの要求時に繰り返して行うか、または所与の時間間隔Δtが経過した直後に自動で行うことができ、この間隔
は、例えば、約1秒とすることも、または適用可能な場合に、使用されるセンサ技術に応
じて、潜在的遅延を考慮して最適に設定することもできる。
【0018】
LNGの全質量の導出は、様々な方法で行うことができる。
【0019】
導出するための第1の方法によれば、タンクに収容されたLNGの全質量m
tは、有利にも、バランスまたは応力ゲージを使用する直接測定によって求めることができる。
【0020】
別の有益な実施形態によれば、タンクに収容されたLNGの全質量m
tの導出は、以下の式
に従った計算により行うことができる。
【数4】
式中、
− hは、タンク内のLNGの層の高さ
− ρはLNGの密度
− gは、タンクの形状に関係する関数であり、体積に対して一定の値を付与する
【0021】
全質量m
tを求めるこの方法は、特に、質量の直接測定が、タンクで実施するのに煩雑な場合、例えば、タンクが測定時に動く場合に使用することができる。
【0022】
有利にも、質量総熱量GCV
massをパラメータTおよびρに関係付ける関数fは、以下の形
を取ることができる。
【数5】
式中、
− Aは所与の温度に対して一定値
− Bは、組成とは無関係の定数
【0023】
関数fに存在する2つの定数値は、LNG Industry magazine 2014などの業界出版物、または科学文献で規定されている。
【0024】
本発明はまた、目的を達成するために、形状および寸法によって画定され、液化天然ガス(LNG)の層を収容する加圧タンク内に含まれる残存化学エネルギEを本発明の方法に従ってリアルタイムに計算するシステムを有し、LNGの前記層は、所与の瞬間tにおいて、前記タンク内での温度T、密度ρ、および高さhによって定義され、
前記システムは、
− 前記タンクに設けられた高さセンサ、温度センサ、および密度センサに接続されることを意図され、本発明による方法のアルゴリズムを実行することができる計算機と、
− 接続された計算機を用いて本発明による方法のアルゴリズムが実行された場合に、このアルゴリズムによって得られた残存化学エネルギの量をオペレータに知らせるために、前記計算機と相互作用するMMIインターフェイスと、
を含むことを特徴とする。
【0025】
MMIインターフェイスという用語は、本発明において、活動に関する適切な決定を行う
ために、使用者が、残存エネルギの量に関する情報の任意の可聴信号または機械信号によって、見る、または通知を受けることを可能にするマン−マシンインターフェイスを意味する。
【0026】
本発明の枠組み内で使用できるMMIインターフェイスとして、車両のダッシュボード、
コンピュータキーボード、LED表示灯、タッチスクリーンおよびタブレット、拡声器など
を挙げることができる。
【0027】
本発明によるシステムの有益な実施形態によれば、このシステムは車載システムとすることができ、この車載システムでは、
・計算機は、前記高さセンサ、温度センサ、および密度センサに接続された車載計算機とすることができ、計算機は、特に、本発明による方法のアルゴリズムを実行するように設計され、
・MMIインターフェイスも車載式とするか、あるいは(例えば、車両が制御センタに接
続されている場合にオフセットとすることができる。
【0028】
このMMIインターフェイスは、車載式の場合に、本発明の方法に従って計算された自律
性(autonomy)の持続時間をオペレータ(ここでは運転者)に知らせるために、特に、前記車載計算機と相互作用する車載ダッシュボードタイプとすることができる。
【0029】
特に、本発明による方法のアルゴリズムを実行するように設計された計算機という用語は、本発明において、専用の記憶装置およびインターフェイスマザーボードと組み合わせたプロセッサを含む車載コンピュータであって、これらの要素のすべてが、機械的、熱力学的、および電磁的耐性の観点から見た「車載コンピュータ」ユニットの頑強性を付与し、したがって、LNG車両で使用するために「車載コンピュータ」ユニットが適合するのを
可能にするように組み立てられた車載コンピュータを意味する。
【0030】
本発明によるシステムは、オペレータが、LNGの取扱いに適する任意のトレーニングを
受けていない場合でさえ、タンク内内に含まれる残存化学エネルギ量の値をオペレータにとって容易に利用可能にする。本発明によるシステムはまた、車載コンピュータなどのサードパーティシステムにこの値を供給するのを可能にする。
【0031】
有利にも、システムは、タンク内に収容されたLNGの全質量を直接測定するために、バ
ランスまたは応力ゲージをさらに含むことができる。
【0032】
最後に、本発明は、目的を達成するために、液化天然ガスの層を収容し、高さセンサ、温度センサ、および密度センサを設けられた加圧タンクを含む車両(陸上用、海上用、または空中用)をさらに有し、前記車両は、本発明によるシステムをさらに含むことを特徴とする。
【0033】
本発明によるシステムにより、この車両は、LNGの取扱いに関するきめ細かなトレーニ
ングを受けていないオペレータが容易に使用することができる。実際上、このシステムは、タンク内の残存エネルギの値を表示するか、またはコンピュータに残存エネルギの値を送ることを可能にし、次いで、コンピュータは、タンクにもう一度補充することが必要になる前に、残りのキロメートル数を残存エネルギから推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
非限定的な例として提示され、添付図を参照する以下の説明を読むことで、本発明の他の利点および詳細が明らかになるであろう。
【0035】
【
図1】所与の温度および組成において、液体天然ガスの密度に対応したLNGの熱量のいくつかの測定結果を示している。
【
図2】本発明による測定システムの特定の実施形態の図を示している。
【
図3】本発明の枠組み内で使用できる非冷却式加圧タンクの例の図面を示し(円筒形の水平タンクの場合)、このタンクに収容されたLNGの質量を計算するのを可能にする関数g(h)を定めるのを可能にする様々なパラメータを示している。
【
図4】本発明の枠組み内で使用できる非冷却式加圧タンクの例の図を示し(球形タンクの場合)、このタンクに収容されたLNGの質量を計算するのを可能にする関数g(h)を定めるのを可能にする様々なパラメータを示している。
【
図5-7】それぞれ、円筒形であり、水平であるLNGのタンクを移送する車両のダッシュボードのスクリーン取込み図であり、本発明の方法に従った残存化学エネルギEの計算に使用される入力データと、さらにはこの計算の結果とを示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、所与の温度(−160℃)において、LNGの様々な密度値に対して行われた総熱量
の一連の測定の結果を示している。これらの測定点は、−160℃でのこの特定の場合にお
いて、式f(ρ)=0.0283ρ−0.7791で表される回帰直線によって、十分に関係付ける
ことができる(相関係数R
2=0.957)。したがって、この式fは、LNGが−160℃の温度に
あるときに、LNGのGCV
massを求めるための相関関数として使用することができる。
【0037】
図2は、タンク1が円筒形であり、垂直である場合の本発明の特定の実施形態の間略図を示している。連続して行うことができる測定が行われる場合に、時間間隔Δtが経過した
後、またはオペレータ7からの命令が届いた後、タンク内に存在する密度センサ4、温度センサ3、および高さセンサ2は、タンク内の液体の温度と、この液体の密度と、さらには高さとの値を読み込む。次いで、この情報は、オペレータ7が、マン−マシンインターフェ
イス(MMI)6を介して、タンク1の形状、およびタンク1の特徴的な寸法、この特定の場合
には半径を前もって入力している計算機5に送られる。これは、計算機5が、タンク内に収容されたLNGの全質量m
tを求めるために使用される関数g(h)を定めることを可能にする。
【0038】
図3は、水平に置かれた円筒形タンクの図を示している。この場合に、このタンク内のLNG層の体積の計算は、円盤の部分面積を計算するのと同様である。この場合に、関数g(h)は以下である。
【数6】
【0039】
タンクが垂直に置かれた場合、g(h)は、単にg(h)=π×R
2×hである。
【0040】
図4は、球形タンクを示している。この場合に、このタンク内のLNG層の体積の計算は、球形キャップを計算するのと同様である。この場合に、関数g(h)は以下である。
【数7】
【0041】
この情報を使用して、次いで、計算機5は、タンク1内に収容されたLNGの全質量m
tとLNGの総熱量GCV
massとを計算し、この場合に、これらの値により、計算機が、測定時にタン
ク内内に含まれる残存エネルギEの値を得るのが可能になる。次いで、残存エネルギEの値は、MMI6を介してオペレータに供給することも、または残りのキロメートル数などの容易に理解できる情報を得るために再処理することもできる。
【0042】
本発明は、下記に実施例でより詳細に示される。
【実施例1】
【0043】
[例1(比較)]
この実施例は、非冷却式の貯蔵器に貯蔵されたLNGの体積エネルギ密度の変動を示して
いる。
【0044】
この場合に、標準規格ISO 6976:1995の式(1)を使用する計算によって、600L(すなわち、0.6m
3)のLNGを収容した貯蔵器内で、重く冷たいLNG(ケースa):3barで平衡)の
場合と、同じ組成であるが軽く温かいLNG(ケースb):14barで平衡)の場合とにおける
残存化学エネルギEが求められる。
【0045】
ケースa):重く冷たいLNG(3barで平衡)
前提として、LNGは、表1で下記に示す以下の組成を有する。
【0046】
【表1】
【0047】
− 燃焼条件
○燃焼温度T
c=0℃
○圧力:1.01325bar
− 質量GCV(T
c)=14.99kWh/kg、標準規格ISO 6976:1995の式に準拠して計算
− LNGの温度T=−147.07℃
− 密度=443.7153kg/m
3
E=0.6×密度×GCV
mass=3990kWh
【0048】
ケースb):軽く高温のLNG(14barで平衡)
LNGは、下記に表2で示す組成と同じ組成を有する。
【0049】
【表2】
【0050】
− 燃焼条件
○燃焼温度T
c=0℃
○圧力:1.01325bar
− 質量GCV(T
c)=15.37kWh/kg、標準規格ISO 6976:1995の式に準拠して計算
− LNGの温度T=−112.5℃
− 密度=355.65kg/m
3
E=0.6×密度×GCV
mass=3279kWh
【0051】
結果的に、ケースa)およびケースb)でそれぞれ計算されたエネルギ値E間に17%を超
える差が認められる。言い換えると、600リットルの同じ初期体積のLNGに対するエネルギのこの差は、貯蔵器に導入されるLNGが、冷たく重い場合に(ケースa)、ケースb)で走
行するキロメートル数と比較して、さらに100キロメートル走行できるようにする。
【0052】
[例2(本発明)]
図5〜7は、それぞれ、円筒形であり、水平であるLNGのタンクを移送する車両のダッシ
ュボードのスクリーン取込み図であり、本発明の方法に従った残存化学エネルギEの計算
に使用される入力データと、さらにはこの計算の結果とを示している。
【0053】
特に、
図5は、タンクに特有の入力データを示すダッシュボードのスクリーン取込み図
である。
− 形状:タンクを担持する車両内に水平に配置されたシリンダ、
− 寸法:
○長さ:1.2m、
○直径:0.7m、
【0054】
図6は、LNGの層に特有の入力データを示すダッシュボードのスクリーン取込み図である。
− 温度T:−152.2℃、
− 密度ρ:420.2kg/m
3、
− 高さh:0.501m、