(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、場合により図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。
【0014】
本開示の一実施形態に係るプラズマ処理装置用の部材は、焼結体で構成され、炭化タングステン相の一相のみからなる。本開示における炭化タングステン相(WC相)とは、炭化タングステンの結晶相である。すなわち、本実施形態の部材は、WC相以外の結晶相を含有しない。WC相はプラズマエッチングに対して優れた耐食性を有することから、部材の寿命を長くすることができる。部材は、Fe原子、Co原子及びNi原子からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を所定量含有する。これらの原子は、WC相に固溶していてもよいし、WC相の結晶の粒界にあってもよい。これらの原子の粒界における濃度は、相を形成しない範囲で、WC相の結晶内における濃度よりも高くてもよい。上記部材におけるFe原子、Co原子及びNi原子の含有量の合計は、30〜3300原子ppmであり、30〜2100原子ppmであってよく、30〜1650原子ppmであってもよい。
【0015】
上記原子の含有量の合計を30原子ppm以上にすることによって、難焼結材である炭化タングステンの焼結を促進して気孔率を低減することができる。一方、上記原子の含有量が過剰になると、金属相等の異相が形成され、その部分が優先的にプラズマエッチングされる。その結果、部材表面に凹凸が生じてパーティクルポケットとなる。また、金属相がプラズマエッチングされて金属イオンが浮遊し、半導体ウェハ等のエッチング処理物の汚染源になる傾向にある。
【0016】
そこで、本実施形態では、上記原子の含有量の合計を3300原子ppm以下にすることによって、炭化タングステン相以外の相の発生を抑制して、プラズマ処理装置内の金属汚染を抑制することができる。上記原子の含有量の合計を2100原子ppm以下にすることによって、プラズマ処理装置内の金属汚染を十分に抑制することができる。上記原子の含有量の合計を1650原子ppm以下にすることによって、プラズマ処理装置内の金属汚染を一層十分に抑制することができる。部材における各原子の含有量は、グロー放電質量分析(GDMS)によって測定することができる。
【0017】
本開示における「耐食性」とは、フロロカーボン系又はハロゲン系等のエッチングガスを用いたプラズマ処理に対する耐食性を意味する。
【0018】
部材におけるFe原子、Co原子及びNi原子のそれぞれの含有量は、装置内部の金属汚染を一層抑制する観点から、1650原子ppm以下であってよく、1200原子ppm以下であってよく、1000原子ppm以下であってもよい。一方、部材の製造コスト低減の観点から、部材におけるFe原子、Co原子及びNi原子のそれぞれの含有量は30原子ppm以上であってよく、300原子ppm以上であってもよい。
【0019】
本実施形態の部材は、W原子、Fe原子、Co原子及びNi原子以外の金属原子を含まなくてよい。W原子、Fe原子、Co原子及びNi原子以外の金属原子の総量は、プラズマ処理装置内の金属汚染を一層十分に抑制する観点から、1650原子ppm以下であってよい。また、W原子、Fe原子、Co原子及びNi原子以外の金属原子のそれぞれの含有量は、300原子ppm以下であってよい。
【0020】
上記部材の気孔率は、プラズマ処理に伴うパーティクルポケットを低減する観点から、2体積%以下であってよい。当該気孔率は、プラズマ処理に伴うパーティクルポケットを十分に低減しつつ製造コストを低減する観点から、0.05〜1体積%であってよく、0.1〜0.5体積%以下であってもよい。気孔率は、部材の断面を研磨し、研磨面を走査型電子顕微鏡で画像観察して算出することができる。
【0021】
本実施形態の部材は、プラズマ処理に対して優れた耐食性を有するWC相のみで構成される。このため、部材のエッチング速度が極めて遅く、例えばシリコンで構成される部材に比べて、長寿命化を図ることができる。また、複数の相を含有する場合に比べて、エッチング速度の相違に起因する部材表面の凹凸を生じ難くすることができる。そのため、パーティクルポケットを生じ難くするとともに金属汚染を抑制することができる。さらに、焼結を促進する作用を有する鉄族の原子(Fe原子、Co原子、Ni原子)を含有するため、純粋な炭化タングステンに比べて、部材においてパーティクルポケット発生の要因となる気孔を十分に低減することができる。このような部材をプラズマ処理装置に用いることによって、エッチング処理物及び装置内の汚染が低減されるとともに、半導体製造工程による製造品の品質改善及び歩留の向上を図ることができる。
【0022】
プラズマ処理装置でプラズマエッチングを行う際、マスク材としてタングステンを含む材質のものを用いることがある。この場合、タングステンをチャンバ内で使用することとなるため、エッチング処理物に対してタングステンを除去する処理が行われる。このため、部材にタングステンが含まれることによって生じる汚染を、新たに洗浄工程を増やすことなく、上記処理で除去することができる。
【0023】
プラズマ処理装置用の部材の製造方法の一例を以下に説明する。原材料として炭化タングステンの粉末を準備する。炭化タングステンの粉末の純度は、金属汚染を十分に低減する観点から、99.9質量%以上であってよい。平均粒子径については、焼結性と取り扱い性の観点から、0.1〜4μm程度であってよい。
【0024】
鉄族の金属(Fe,Ni,Co)を添加する方法としては、粉末状態のものを混合してもよいし、後述の混合攪拌工程でメディアから混入してもよい。また、鉄族元素を構成元素とする化合物の粉末を混合してもよいし、当該化合物を水溶液等にしてイオンの状態で混合してもよい。このように原材料の形態は特に制限されない。粉末状態で場合する場合、平均粒子径は0.5〜5μm程度のものを用いてよい。添加量としては、焼結終了時までに若干の気化及び飛散があることを考慮して、鉄族の原子の含有量の合計は、後述の混合粉末の状態で30〜3500原子ppm程度にしてよい。
【0025】
例えば、炭化タングステンの粉末と、必要に応じて添加する鉄族の金属粉末とを、乾式又は湿式の公知の手法にて混合攪拌する。その後、必要に応じて、乾燥したり、成形用の有機バインダを加えたりして、成形原料を得る。鉄族の金属を粉末状態又は水溶液等の形態で添加する場合は、炭化タングステン粉末に配合して混合攪拌を行ってよい。
【0026】
続いて、成形原料を加圧成形して成形体を得る。加圧成形は、金型とプレス機を用いて行ってもよいし、静水圧を利用した湿式のプレス機を用いてもよい。プレス時の最大加圧は10〜500MPa程度で行うことができる。得られた成形体に対し、必要であれば脱脂、仮焼結、中間加工を行うことができる。
【0027】
成形体、又は、これに、脱脂、仮焼、中間加工を行った処理体を焼結炉に入れて焼結を行う。焼結は非酸化雰囲気(水素ガス雰囲気、アンモニアガス雰囲気、カーボン介在下の真空雰囲気、又は希ガス雰囲気等)にて行うことができる。焼結時の最高温度は、炭化タングステンは難焼結材であることから1800〜2400℃程度であってよい。
【0028】
焼結後、焼結体に対してHIP(熱間静水圧プレス)処理を行って、残留気孔をさらに削減してもよい。また、寸法精度が必要な用途・形状の場合は、焼結体に機械加工及び電気加工等、各種公知の表面処理等を施してもよい。このようにして焼結体で構成されるプラズマ処理装置用の部材が得られる。部材の製造方法は上述の例に限定されず、形状によってはホットプレス法、又はSPS法(放電プラズマ焼結法)を用いてもよい。
【0029】
炭化タングステンは焼結時の高温下で一部反応する場合がある。そのため、成形原料における成分比率と、部材における成分比率は一致しなくてよい。これは、炭化タングステンがそもそも理想的なW
1C
1の比率の化合物ではないこと(Wの量論比1に対し、Cの量論比は1未満である。)、及び、焼成時の雰囲気(焼成治具等も含む)と炭素をやり取りすること、炭化タングステンと炭化タングステン以外の炭素源との間で炭素のやり取りが発生すること等、様々な要因に基づく。
【0030】
投入する原材料の比率及び焼結の条件は、焼結体が、炭化タングステン相の一相のみで構成されるように調整してよい。このようにして得られる焼結体は、プラズマ処理に対して、十分な耐食性を有するため、プラズマ処理の際に、パーティクルポケットの発生と金属汚染を十分に抑制することができる。このため、半導体製造工程に用いられるプラズマ処理装置用の部材として好適に用いることができる。具体的な部材としては、半導体ウェハの周囲に設置されるエッジリング、半導体を吸着する静電チャック、ウェハ載置用の基材、エッチングのプロセスガス供給部であるシャワープレート、冷却水を流す構造であるウオータージャケット部のステム、及びチャンバ内壁材等が挙げられる。
【0031】
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置10の一例を示す縦断面図である。本実施形態のプラズマ処理装置10は、容量結合型(Capacitively Coupled Plasma:CCP)の平行平板プラズマ処理装置である。プラズマ処理装置10では、チャンバ11内にてガスをプラズマ化し、プラズマの作用により載置台20に載置されたウェハWaを処理する。ウェハWaは、例えば半導体ウェハである。プラズマ処理装置10は処理装置の一例である。
【0032】
プラズマ処理装置10は、略円筒形のチャンバ11を有している。チャンバ11の内面には、アルマイト処理(陽極酸化処理)が施されている。チャンバ11内にはプラズマエッチング処理及び成膜処理等がウェハWaに施される処理室Uが画定される。
【0033】
載置台20は、基台18と静電チャック21とを有し、ウェハWaを載置する。載置台20は下部電極としても機能する。
【0034】
基台18の上には静電チャック21が設けられている。静電チャック21は、絶縁体21bの間にチャック電極21aを挟み込んだ構造になっている。チャック電極21aにはスイッチ23を介して直流電源22が接続され、スイッチ23がオンのとき、直流電源22からチャック電極21aに直流電圧が印加される。これにより、クーロン力によってウェハWaが静電チャック21に吸着される。
【0035】
ウェハWaの周囲であって静電チャック21の外周の載置面には、円環状のエッジリング87が載置される。エッジリング87は、フォーカスリングとも呼ばれ、処理室U内のプラズマをウェハWaの表面に向けて収束し、プラズマ処理の効率を向上させるように機能する。
【0036】
載置台20は、支持体14によりチャンバ11の底部に保持される。基台18の内部には、冷媒流路24が形成されている。チラーユニットから出力された例えば冷却水及びブライン等の冷却媒体は、冷媒入口配管26a、冷媒流路24、冷媒出口配管26bと流れ、チラーユニットに戻り、所定の温度に制御されて上述の経路を循環する。これにより、載置台20は抜熱され、冷却される。
【0037】
伝熱ガス供給源から供給されるヘリウムガス(He)等の伝熱ガスは、ガス供給ライン28を通り静電チャック21の載置面とウェハWaの裏面との間に供給される。冷媒流路24に循環させる冷却媒体と、ウェハWaの裏面に供給する伝熱ガスとによりウェハWaが所定の温度に制御される。
【0038】
第1高周波電源32は、第1整合器33を介して載置台20に電気的に接続され、第1周波数のプラズマ生成用の高周波電力HF(例えば、40MHz)を載置台20に印加する。また、第2高周波電源34は、第2整合器35を介して載置台20に電気的に接続され、第1周波数よりも低い第2周波数の、バイアス電圧発生用の高周波電力LF(例えば、13.56MHz)を載置台20に印加する。
【0039】
第1整合器33は、第1高周波電源32の内部インピーダンスにプラズマ側の負荷インピーダンスを整合させる。第2整合器35は、第2高周波電源34の内部インピーダンスにプラズマ側の負荷インピーダンスを整合させる。
【0040】
ガスシャワーヘッド25は、その外縁に設けられた円筒状のシールドリング40を介してチャンバ11の天井部の開口を閉塞するように取り付けられている。ガスシャワーヘッド25は、載置台20(下部電極)に対向する対向電極(上部電極)としても機能する。ガスシャワーヘッド25の周辺部には、シールドリング40の下面にて、トップシールドリング41が配置されている。
【0041】
ガスシャワーヘッド25には、ガスを導入するガス導入口45が形成されている。ガスシャワーヘッド25の内部には拡散室46が設けられている。ガス供給源15から出力されたガスは、ガス導入口45を介して拡散室46に供給され、拡散室46にて拡散されて複数のガス供給孔47からチャンバ11内の処理室Uに導入される。
【0042】
チャンバ11の底面には排気口55が形成されており、排気口55に接続された排気装置50によってチャンバ11内が排気される。これにより、チャンバ11内を所定の真空度に維持することができる。チャンバ11の側壁にはゲートバルブGが設けられ、ゲートバルブGの開閉により、ウェハWaが搬送口からチャンバ11内又はチャンバ11外へ搬送される。
【0043】
載置台20の外周側面を覆うように円筒状のインシュレータリング86が配置されている。また、エッジリング87の外周側面を覆うように円筒状のカバーリング89が配置されている。
【0044】
チャンバ11の側部には、内壁面に沿ってデポシールド82が設けられている。また、載置台20及び支持体14の外周側面に沿ってデポシールド83が設けられている。デポシールド82、83は、着脱自在に構成されている。デポシールド82、83は、チャンバ11にて実行されたプラズマエッチング処理等により生じた副生成物(デポ)がチャンバ11の内壁に付着することを防止する。
【0045】
デポシールド82、83の間の環状の排気路には、環状のバッフル板81が設けられている。バッフル板81の下方の排気路49には排気口55が設けられている。
【0046】
プラズマ処理装置10には、装置全体の動作を制御する制御部100が設けられている。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)105、ROM(Read Only Memory)110及びRAM(Random Access Memory)115を有している。CPU105は、RAM115等の記憶領域に格納されたレシピに従って、エッチング等の所望のプラズマ処理を実行する。レシピにはプロセス条件に対する装置の制御情報であるプロセス時間、圧力(ガスの排気)、高周波電力や電圧、各種ガス流量、チャンバ内温度、冷却媒体の温度等が設定されている。
【0047】
プラズマ処理が実行される際には、ゲートバルブGの開閉が制御され、ウェハWaがチャンバ11に搬入され、載置台20に載置される。直流電源22からチャック電極21aに直流電圧が印加されると、ウェハWaが静電チャック21に吸着され、保持される。
【0048】
処理ガスは、ガス供給源15からチャンバ11内に供給される。高周波電力HFは、第1高周波電源32から載置台20に印加され、高周波電力LFは、第2高周波電源34から載置台20に印加される。これにより、処理室Uにプラズマが生成され、プラズマの作用によりウェハWaにプラズマ処理が施される。
【0049】
プラズマ処理後、直流電源22からチャック電極21aにウェハWaの吸着時とは正負が逆の直流電圧が印加され、ウェハWaの電荷が除電される。これにより、ウェハWaは、静電チャック21から剥がされ、ゲートバルブGからチャンバ11の外部に搬出される。
【0050】
プラズマ処理装置10において、プラズマ処理に曝される各構成要素を、上記実施形態に係る部材で構成してもよい。例えば、エッジリング87、カバーリング89、バッフル板81、ガスシャワーヘッド25、トップシールドリング41、デポシールド82、及びデポシールド83からなる群より選ばれる少なくとも一つを上記部材(焼結体)で構成してもよい。プラズマ処理装置は、
図1のものに限定されず、上記部材はプラズマ処理を行う種々の半導体製造装置に用いることができる。上記部材が適用される構成要素も特に限定されず、例えば、シャワープレート、基台及び処理容器の内壁等に適用してもよい。プラズマ処理装置に上記焼結体を使用することによって、プラズマ処理装置10の構成要素の耐食性を向上し、ウェハWa等のエッチング処理物及び装置内の金属汚染を十分に抑制することができる。
【0051】
上記実施形態は、別の側面において、上述の焼結体のプラズマ処理装置の部材としての使用ということもできる。以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
実施例及び比較例を参照して本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0053】
(実施例1〜14)
[原材料の調製]
市販のWC粉末(平均粒子径:0.6μm、Co含有量:150原子ppm)を準備した。WC粉末5000gと、メタノール1800mlとを5Lのバインダレス超硬ライニングポットに入れ、ボールミル(回転数:64rpm)によって粉砕し、粉砕時間(0〜50時間)とCo含有量との関係を調べた。ボールの材質としては、バインダレスの超硬合金製のものと、バインダ(Co、13質量%)を含有する超硬合金製のものをそれぞれ用い、ボールの材質の相違によるWC粉末へのバインダ成分の混入量を調べた。
【0054】
図2は、粉砕時間と粉砕後のCo含有量との関係を示すグラフである。
図2に示すとおり、バインダを含有する超硬合金製のボールを用いて粉砕することによって、Co原子の含有量が増加することが確認された。このような調製方法によって、Co原子の含有量が互いに異なる複数種類の原材料を調製した。同様にして、Ni原子及びFe原子の含有量が互いに異なる複数種類の原材料を調製した。実施例1の原材料は、Coを不純物としてもほぼ含まないWC粉末を、超硬合金のボールを使用せずに短時間で混合して調製した。
【0055】
[焼結体の作製]
上述の「原材料の調製」で得られた原材料を用いて、鉄族の金属含有量が互いに異なる複数種類の成形原料を調製した。調製した成形原料を所定のサイズの金型に入れ、プレス機を用いて100MPaで加圧した。このようにして、金属含有量が互いに異なる複数の成形体を作製した。それぞれの成形体を、真空下、2200℃で2時間焼成した。その後、1700℃、200MPaの条件でHIP処理を行って、各実施例の焼結体を得た。Co原子、Ni原子及びFe原子のうち、2種以上の原子を含む焼結体は、2種以上の原材料を混合して得られた成形原料を用いて作製した。
【0056】
各実施例の焼結体における鉄族の原子の含有量と気孔率を表1に纏めて示す。X線回折及びEDXマッピングの結果から、各実施例の焼結体は、炭化タングステン相のみから構成されることが確認された。鉄族の原子の含有量は、グロー放電質量分析(GDMS)で分析した。気孔率は、焼結体の断面を研磨し、研磨面を画像解析を行って求めた。
【0057】
【表1】
【0058】
<強度の評価>
実施例1〜14の焼結体はいずれも導電性を有し、機械的強度(3点曲げ抗折力)は700〜1800MPaの範囲にあった。
【0059】
(比較例1〜9)
市販の粉末を用いて表2に示す組成を有する試料(焼結体)を作製した。比較例1は、プラズマ処理装置の処理容器内で種々の部材として使用されているシリコン製のものである。シリコン製の部材は、プラズマによりエッチングされやすい。
【0060】
比較例2のアルミナはシリコンよりもエッチングされ難い。しかしながら、エッチングに対する耐食性が十分ではない。比較例3は、炭化タングステン(Co原子の含有量:15原子ppm)の部材である。この焼結体の原材料は、WC粉末としてCo含有量が少ない粉末を選定し、混合時に鉄族の元素が混入しないように調製したものである。炭化タングステンは単体では難焼結体であり、実施例と同じ条件で焼結体を作製したところ、相対密度は95.6%(気孔率4.4体積%)であった。
【0061】
比較例4は、低コバルト超硬合金に分類される、Coの含有量が比較的低い超硬合金である。比較例5は、バインダとしてCoを含有する一般的な超硬合金である。この焼結体は、市販の炭化タングステン粉末に対して、バインダとしてCo(体積比率で20.7体積%)を加えて混合したこと、及び焼結温度を1450℃としたこと以外は、実施例1〜14と同様の手順で作製した。比較例5の焼結体の相対密度は、ほぼ100%であった。比較例6は、バインダとしてNiを含有する一般的な超硬合金である。比較例7は、バインダとしてCoを含有する超硬合金に周期律表の4〜6族元素を構成元素とする炭化物を加えた超硬合金である。
【0062】
比較例8は、炭化タングステンに周期律表の4〜6族元素を構成元素とする炭化物を含有する焼結体である。この焼結体の原材料は、WC粉末としてCo含有量が少ない粉末を選定し、混合時に鉄族の元素が混入しないようにしつつ、上記炭化物を加えて調製したものである。比較例8では、炭化タングステン相以外の相が生成していた。比較例9はアルミニウム基材の上にY
2O
3の溶射皮膜をコーティングしたテストピースである。
【0063】
【表2】
【0064】
[プラズマ処理装置用の部材としての評価1]
<プラズマエッチング処理>
各実施例及び各比較例の焼結体(部材)のプラズマエッチングの評価を以下の手順で行った。作製した焼結体の機械加工を行って、φ30mm×3mmのサイズの評価用試料を作製した。評価用試料の表面を鏡面加工した。そして、
図3に示すように、焼結体1のうち、鏡面加工した表面の一部をカプトン製のマスキングテープ3でマスキングし、プラズマ処理装置を用いてプラズマエッチング処理を行った。
【0065】
プラズマ処理装置としては、8インチLSI量産用の平行平板型反応性イオンプラズマエッチング装置を用いた。また、CF
4ガスプラズマによるエッチング条件は、カソード温度60℃、アノード温度30℃、RF電源出力1000W、チャンバ内ガス圧16Pa、エッチング時間60分間、ガス流量60sccmとした。プラズマエッチング処理によって、
図3に示すように、焼結体の表面のうち、マスキングされていない部分がエッチングされた。
【0066】
<エッチング深さD>
プラズマエッチング処理後、表面からマスキングテープ3を剥がし、非エッチング面とエッチング面の段差を輪郭形状測定機(商品名:サーフコム2800、株式会社東京精密製)を用いて測定して、エッチング深さDを求めた。
【0067】
比較例1及び2のエッチング深さDは、それぞれ34μm及び3.6μmであった。これに対し、実施例1〜14及び比較例3、4、8、9は、いずれも1.5μm以内であった。実施例1〜14は、比較例1,2よりも優れた耐食性を有することが確認された。
【0068】
<パーティクルの個数>
プラズマエッチング処理後のパーティクルの個数測定は、市販のパーティクルカウンターを用いて、JIS B 9921に基づいて行った。パーティクル個数の測定結果は、比較例1では概ね100個であった。これに対し、実施例1〜14及び比較例8は20〜100個の範囲であった。比較例3〜7については、パーティクルが100個超であった。
【0069】
比較例3については気孔率が高いために、表面の気孔がパーティクルポケットとなり、パーティクルを保持しやすくなっていたと考えられる。比較例4〜7については、数μm以上のサイズを有する金属相(Co相又はNi相)を有していた。これらの金属相は炭化タングステン相と比較して耐食性が低い。そのために、プラズマエッチング処理中に炭化タングステン相との間でリセッション(腐食による段差)が発生し、これがパーティクルポケットとなってパーティクルを保持しやすくしていたと考えられる。比較例9については、温度変化による熱膨張差により、表面の一部に微細な剥離が生じていた。
【0070】
<金属汚染>
プラズマエッチングを行った焼結体を洗浄液(フッ化水素酸)で洗浄した。洗浄液を、ICP−MS法(融合結合プラズマ質量分析法)で分析することによって、金属汚染の評価を行った。分析対象の元素はNa,Mg,Al,K,Ca,Ti,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Wの13種類とした。
【0071】
半導体製造工程において、特に回路を汚染しやすい有害な金属元素であるCu、Ti、Caについては3×10
10(atoms/cm
2)を超えた試料を不合格、Cu、Ti、Ca及びW以外の金属元素については20×10
10(atoms/cm
2)を超えた試料について不合格と判定した。Wについては、メタルマスク成分と同様であり、後の工程でプロセスにて除去されるために影響が少なく、金属汚染の評価から除外した。
【0072】
上記基準にて、実施例1〜14、及び比較例1、2、3、9の評価結果は合格であった。比較例4、5、6、7についてはCo量又はNi量が多く検出され、不合格であった。比較試料8については、Ti量が多く、不合格であった。
【0073】
以上の結果をまとめると、実施例1〜14は、十分にエッチング深さDが小さく、観察パーティクルの個数が比較例1と同等以下であった。また、金属汚染は許容値以下であった。また、いずれの試料も導電性を有しており、いずれの評価においても剥離は発生しなかった。一方、比較例1は、導電性は問題ないものの、強度が低いために所望の形状への加工に難点があった。また、エッチング深さDが最も大きく、耐食性が不十分であった。
【0074】
比較例2は、比較例1と比べるとエッチング深さDは改善されていた。しかし、実施例1〜14よりも、エッチング深さDは大きかった。また、導電性を有さないために、静電気放電によってパーティクルを吸着しやすい傾向にあった。
【0075】
比較例3は、洗浄してもパーティクルの個数を十分に減少することができなかった。これは、表面及び内部に多数存在していた気孔がパーティクルポケットとなったものと考えられる。
【0076】
比較例4、5及び6は、Co,Ni等の金属相を有していた。金属相が優先的にエッチングされて凹凸が発生し、これがパーティクルポケットの要因となったと考えられる。また、金属汚染ではCo,Niの量が許容範囲を大きく超えていた。比較例7も同様であった。比較例8は、TiC及びTaCの体積割合が高いために、Ti及びTaが許容量を超えて検出された。
【0077】
[プラズマ処理装置用の部材としての評価2]
<パーティクルの個数測定、及び、金属汚染の評価>
実施例3、比較例1及び比較例8の焼結体を、
図1に示すようなプラズマ処理装置の部材(エッジリング)とした。そして、上述の「評価1」と同様のエッチング条件で、シリコンウェハのエッチングを行った。プラズマエッチング処理後のシリコンウェハを洗浄液(フッ化水素酸)で洗浄した。洗浄液を、上述の「金属汚染」の同様の方法で分析して、金属汚染の評価を行った。金属汚染の評価結果は表3に示すとおりであった。
【0078】
【表3】
【0079】
表3には、実施例3の焼結体を部材として用いた場合に、全ての元素において許容値を満たしていた。Wの含有量が高かったが、これは洗浄で除去できる成分であるため、特に大きな問題とはならない。一方、比較例8では、Tiの含有量が高かった。