(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
改質セルロース系繊維が、乾燥繊維中0.25mol/kg超の量でアニオン部分を含み、乾燥繊維に対して0.5重量%から5.0重量%までの量でポリマー改質剤がその上に塗布されており、ポリマー改質剤は、少なくともポリマー1グラムあたり1.5meqの電荷を有するカチオン部分を含み、繊維に含有されるアニオン部分対カチオン部分のモル比が1:1から25:1までの範囲であることを特徴とし、アニオン部分が、繊維に取り込まれ、かつカルボキシメチルセルロースに由来しており、カチオン部分を含むポリマー改質剤が、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリDADMAC)、ポリ(アクリルアミド−co−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PAM−DADMAC)およびその混合物からなる群から選択されることを特徴とする、改質セルロース系繊維。
セルロース、ビスコース、リヨセル、綿、麻、マニラ紙、ジュート、サイザル、レーヨン、マニラ麻、針葉樹パルプ、広葉落葉樹パルプと、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリ(乳酸)(PLA)、PET/PET繊維、PE/PP繊維、PET/PEおよびPLA/PLA繊維を含む2成分繊維、好ましくは鞘−芯型の2成分繊維を含む、合成繊維もしくはヒートシール性繊維からなる群から選択される1つまたは複数の物質を、さらに含むことを特徴とする、請求項12から15のいずれか一項に記載の不織布製品または紙。
セルロース系繊維にアニオン部分を0.25mol/kg超の量で付与するステップと、アニオン部分を含むセルロース系繊維を、ポリマー1グラムあたり少なくとも1.5meqの電荷を有するカチオン部分を含むポリマー改質剤で処理するステップとを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の改質セルロース系繊維の製造方法。
【背景技術】
【0003】
「特殊な紙」の下では、紙は、断面、長さおよび直径等の定義された幾何学パラメーターを有する繊維の添加によってその特性を改良できるということが、理解できる。改良された紙特性とは、例えば、増大または減少した空隙率、向上した強度(引張強度、引裂強度、破裂強度)、より高い嵩、改良された柔軟性である。
【0004】
紙および不織布製品の特性が、改質セルロース系化合物の添加によって影響を受ける場合があることが知られている。
【0005】
WO1996/026220は、さらに粒子の内部にもカチオン性基を示す改質セルロース系粒子、および紙の製造において前記粒子の使用を開示する。
【0006】
WO2011/012423は、カルボキシメチルセルロース(CMC)が取り込まれた再生セルロース系ステープル、ならびに紙および不織布製品の製造におけるそれらの使用を開示する。したがって、これらの繊維は、アニオンの特性を持っている。アニオン性ビスコース繊維の改良された結合特性が知られている。
【0007】
繊維間結合における高分子電解質の相互作用に関する広範囲な概観は、2005年のSTFI−Packforsk報告書「On the nature of joint strength in paper−A review of dry and wet strength resins used in paper manufacturing」(http://www.innventia.com/documents/rapporter/stfi−packforsk%20report%2032.pdf)に示される。
【0008】
この報告書では、次の記事が引用されている:「The link between the fibre contact zone and the physical properties of paper:a way to control paper properties」、A.Torgnysdotterら、Journal of composite materials、41巻;No13/2007、1619〜1633(以下では、「Torgnysdotter2007」と称する)。そこに、アニオン性繊維間の結合強度に対するカチオン性高分子電解質の影響について記載されている。特にこの文書において、とりわけ、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリDADMAC)により改質されたカルボキシメチル化セルロースの特性が調査された。
【0009】
この点に関してさらなる研究が、同じ著者によって、Nordic Pulp and Paper Research18(4)、2003、455〜459(以下では、「Torgnysdotter2003」と称する)において発表されてきた。
【0010】
Torgnysdotter2003およびTorgnysdotter2007の両方において、レーヨン繊維はカルボキシメチル化によって表面帯電させるか一括帯電させるかのいずれかであった。これは、繊維のセルロース素材自体を、ある程度誘導体化してカルボキシメチルセルロースを形成させたことを意味する。
【0011】
Torgnysdotter2003によれば、表面帯電させた繊維と一括帯電させた繊維の両方を、ポリDADMACを用いて処理した。表面帯電させた繊維と一括帯電させた繊維の両方において吸収されたポリDADMACの最大量は、約3mg/g繊維(=0.3%)であることが分かった。
【0012】
Torgnysdotter2007によれば、一括帯電させた繊維を25g/kgのポリDADMACを用いて処理しているが、Torgnysdotter2007では繊維に吸収されたポリDADMACの量については記載されていない。
【0013】
R.Sczechによって書かれた学位論文「Haftvermittlung von Polyelektrolyten zwischen Celluloseoberflachen」では、PAM−DADMACがセルロース系表面間の接着促進剤として十分適していると言及されている(http://opus.kobv.de/ubp/volltexte/2006/733/pdf/sczech.pdf)。
【0014】
乾燥強度剤としてのカチオン性ポリマーの使用は、製紙業において周知である。
【0015】
しかしながら、先行技術の文献のいずれにも、PAM−DADMACまたはポリDADMACの添加によるアニオン性繊維の結合強度に対するプラスの影響については、記載されていない。一方、Torgnysdotter2007では、負に帯電した繊維から作製された紙の引張強度に対する悪影響について記載されている(
図3、p.1623参照)。これは、カチオン性ポリマーを添加した際のアニオン性繊維の解膨潤によって引き起こされる繊維間の接触領域が減少したことにより説明される。
【0016】
WO2011/012423の提案に関しては、アニオン性繊維だけの繊維間の結合強度は、100%のビスコース繊維から商業品質の紙を製造するほど、あるいは紙および不織布製品の改質に現在使用されるマニラ麻繊維の完全な代替品として繊維を使用するほど十分に強いものではない。
【0017】
最後に、カチオン性高分子電解質は、紙製法により少量しか添加することができず、耐洗浄性ではない。
【0018】
さらなる現状技術は、WO01/29309A1、WO00/39389、WO00/39398A1およびGB1394553Aから分かる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
驚くべきことに、先行技術の文献に示された指示とは反対に、本発明による特徴の組合せを有するセルロース系化学繊維が、紙および不織布製品の特性を改質するのに非常に有用であることが示された。特に、本発明による改質セルロース系繊維により、可逆的な繊維間結合が可能となり、紙または不織布製品に適用された際に、水等の液体または水性液中への再分散性を付与することができる。
【0024】
以下において、用語「ポリマー改質剤」は、少なくともポリマー1グラムあたり1.5meqの電荷を有するカチオン部分を含むポリマー改質剤を意味する。
【0025】
さらに、そのようなポリマー改質剤は、「(カチオン性)高分子電解質」または「(カチオン性)高分子電解質重合体」とも呼ばれる。
【0026】
好ましい実施形態では、本発明による改質セルロース系繊維は、セルロース系繊維がビスコース繊維またはリヨセル繊維等のセルロース系化学繊維のステープルであることを特徴とする。
【0027】
用語「化学繊維」は、事前誘導体化をする場合または事前誘導体化をしない場合の、セルロース系出発物質を溶解し、前記溶解によって得られた溶液から繊維を紡糸することにより調製される繊維を意味する。したがって、用語「化学繊維」は、綿等の天然のセルロース系繊維を除外する。さらに、紡糸液の紡糸によって得られていないセルロースパルプ等のセルロース系材料も除外される。周知のセルロース系化学繊維としては、標準ビスコース繊維、モダール繊維、またはポリノジック繊維およびリヨセル繊維を含むビスコース繊維が挙げられる。
【0028】
用語「ステープル」は当業者には周知であり、紡糸された後に個別の長さに切断された繊維を意味する。
【0029】
ビスコース繊維は、ビスコース法によって生産される繊維であるが、その方法では、セルロースキサントゲン酸塩のアルカリ性溶液が、酸性の紡糸浴中へ紡糸され、そのとき非誘導体化セルロースが繊維の形で再生され、析出する。
【0030】
リヨセル繊維は、典型的にはセルロースをN−メチルモルホリンN−オキシドに溶解しその後、繊維に紡糸することを含むアミンオキシドプロセスによって製造された、一種の溶媒紡糸繊維である。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、改質セルロース系繊維は、その繊維に含有されているアニオン部分対カチオン部分のモル比が、2:1から20:1まで、特に3:1から15:1まで、より特に、4:1から12:1までの範囲であることを特徴とする。
【0032】
本発明の改質セルロース系繊維は、アニオン部分がカルボキシル(COOH)基を含むことを特徴とする。
【0033】
繊維中のアニオン部分の量は、当業者に周知な方法によって測定することができる。例えば、繊維中のCOOH基の量は、例えば、酸−塩基滴定によって測定することができる。他の方法は、解析誘導体化に依拠することができる。さらに、分光分析方法はさらに利用可能であり、例えば、The surface charge of regenerated cellulose fibres、F.Weberら、Cellulose、2013、20(6)、2719〜2729を参照のこと。アニオン部分の測定値は、ポリマー改質剤を有する繊維の処理に先立って行なわれてもよい。
【0034】
さらに、本発明による改質セルロース系繊維は、カチオン部分がアンモニウム基、特に第四級アンモニウム基を含むことを特徴とする。
【0035】
アニオン部分の定量化についてと同様に、当業者は改質繊維上のカチオン部分の定量化の適切な方法を選択することができよう。例えば、カチオン部分が窒素含有化合物に由来する場合、ケルダール法に基づいた測定が適用可能なはずである。
【0036】
好ましくは、本発明による改質セルロース系繊維は、カチオン部分を含むポリマー改質剤が、100,000g/molから500,000g/molまでの、特に、200,000g/molから300,000g/molまでのモル重量を示すことを特徴とする。
【0037】
中程度の分子量、例えば200,000g/molから300,000g/mol等を有するカチオン性高分子電解質重合体の使用により、本発明による繊維から製造される紙の有利な特性がもたらされることが分かった。
【0038】
セルロース系ステープルを、特に繊維を所望の量で前記高分子電解質を含有する溶液または分散液と接触させることにより、カチオン性高分子電解質重合体により公知の方法で処理することができる。
【0039】
本発明による改質セルロース系繊維は、繊維に取り込まれたアニオン部分を含み、乾燥繊維に対して0.5重量%から5.0重量%までの量でカチオン部分を含むポリマー改質剤をその上に塗布したことを特徴とする。
【0040】
この点もまた、繊維に吸着されたポリDADMACの最大量が、約0.3重量%であったことが報告されたTorgnysdotter2003と対照的である。いかなる理論にも束縛されるつもりはないが、繊維上に吸着されるより多量の高分子電解質は、繊維それ自体がカルボキシメチル化されるのではなくて、繊維に取り込まれたCMCを含有するという事実によるものと考えられる。
【0041】
本発明による改質セルロース系繊維は、繊維に取り込まれているアニオン部分がカルボキシメチルセルロース(CMC)に由来することを特徴とする。
【0042】
その中にCMCを取り込んだセルロース系ステープルの製造は、例えば、米国特許第4,199,367(A)号および米国特許第4,289,824(A)号等のように、当業者に周知である。特に、CMCは、繊維を紡糸する前に紡糸原液、例えば、ビスコース原液へ混合される。
【0043】
使用されるCMCは、置換度(DS)が0.6〜1.2、好ましくは、0.65〜0.85、および粘度(2重量%溶液、25℃)が、30〜800mPas、好ましくは50〜100mPasである商品であってよい。
【0044】
Torgnysdotter2003およびTorgnysdotter2007とは対照的に、本発明による繊維は、カルボキシメチル化によって表面帯電させたものでも、一括帯電させたものでもない。もっと正確に言えば、本発明の繊維のセルロース繊維材料は、それ自体が誘導体化されるのではなくて、カルボキシメチルセルロースが取り込まれるのであり、つまりセルロース繊維材料のマトリックス内に分散されているのである。当業者に公知であるように、CMCを取り込むセルロース繊維は、ビスコース繊維の場合のビスコース紡糸原液等の繊維を紡糸する前の紡糸原液にCMCを添加することにより製造することができる。したがって、CMCは、紡糸原液の中で均一に分配され、結果として、セルロース繊維マトリックス自体を誘導体化せずに、紡糸原液から紡糸された繊維の中に均一に分配される。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明による改質セルロース系繊維は、繊維が乾燥繊維に対して1重量%〜4重量%のCOOH基、好ましくは1.5重量%〜3重量%のCOOH基を含むような量で繊維に取り込まれたカルボキシメチルセルロース(CMC)を、含むことを特徴とする。
【0046】
本発明による改質セルロース系繊維は、アニオン部分を含み、乾燥繊維に対して0.5重量%から5.0重量%までの量でカチオン部分を含むポリマー改質剤をその上に塗布することを特徴とし、ここでカチオン部分を含むポリマー改質剤は、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリDADMAC)、ポリ(アクリルアミド−co−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PAM−DADMAC)およびその混合物からなる群から選択される。
【0047】
好ましくは、本発明による改質セルロース系繊維は、カチオン部分を含むポリマー改質剤の量が、それぞれ乾燥繊維に対して、0.6重量%から4.0重量%まで、特に0.7重量%から3.0重量%まで、特に0.75重量%から2.0重量%まで、例えば1.0重量%から1.75重量%までであることを特徴とする。
【0048】
好ましい実施形態では、本発明による改質セルロース系繊維は、それが別の改質セルロース系繊維と可逆的な結合をすることができ、かつ/または、水性液中に分散可能であることを特徴とする。
【0049】
好ましくは、本発明による改質セルロース系繊維は不織布製品または紙の製造に使用される。
【0050】
本発明による繊維を含んでいる紙の特性に関して、繊維の比較的高いアニオン電荷(COOH基の量による)とカチオン性高分子電解質重合体の比較的低い含有量との組合せにより非常に有利な結果を得ることができることが分かった。
【0051】
したがって、さらなる態様では、本発明は、本発明による改質セルロース系繊維を含む紙または不織布製品を提供する。
【0052】
本発明による紙または不織布材料は、例えば食品包装用の包装材等の包装材、濾過材、特に、例えば紅茶やコーヒー等の浸出飲料用の濾紙、または、油の濾過用の濾過材、オーバーレイ紙等の複合積層体、衛生およびパーソナルケア製品、ホームケア製品、例えばふきん、タオル、ナプキンおよび台ふきん、特殊な紙、例えば壁装材(壁紙)、マットレスおよび室内装飾パッド等のエアレイド不織布ウェブである。好ましくは、本発明による紙または不織布ウェブは、紅茶およびコーヒー用の濾過材である。
【0053】
本発明による紙または不織布材料は、特に、湿式の、またはエアレイドの紙または不織布材料、好ましくは湿式の紙または不織布材料であってもよい。言い換えれば、紙または不織布材料は、例えば、抄紙機、例えば傾斜ワイヤ抄紙機を使用する従来の抄紙プロセス等によって湿式プロセスで形成されてもよく、あるいは乾式エアレイド不織布製造方法等によってエアレイドプロセスで形成されてもよい。従来の抄紙プロセスは、例えば米国特許第2004/0129632(A1)号に記載されており、その開示は、参照により本明細書に取り込まれる。適切な乾式エアレイド不織布製造方法は、米国特許第3,905,864号に、例えば記載されており、その開示は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0054】
紙または不織布ウェブの坪量は特に限定されるものではない。紙または不織布ウェブの坪量は、典型的には、5〜2000g/m
2、好ましくは、5〜600g/m
2、より好ましくは、8.5〜120g/m
2である。
【0055】
好ましくは、本発明による不織布製品または紙は、それが本発明による改質セルロース系繊維を、少なくとも5重量%、特に25重量%から100重量%まで、特に40重量%から90重量%まで、特に50重量%から80重量%までの量で含むことを特徴とする。
【0056】
好ましい実施形態では、本発明による不織布製品または紙は、セルロース、ビスコース、リヨセル、綿、麻、マニラ紙、ジュート、サイザル、レーヨン、マニラ麻、針葉樹パルプ、広葉落葉樹パルプと、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリ(乳酸)(PLA)、2成分繊維、好ましくは鞘−芯型の2成分繊維を含む合成繊維もしくはヒートシール性繊維からなる群から選択される1つまたは複数の物質を、さらに含むことを特徴とする。
【0057】
2成分繊維は、異なる物理的および/または化学的特性、特に異なる融解特性を有する2種類のポリマーからなる。鞘−芯型の2成分繊維には、高融点成分の芯および低融点成分の鞘が典型的にはある。本発明で使用するのに適している2成分繊維の例としては、PET/PET繊維、PE/PP繊維、PET/PEおよびPLA/PLA繊維を挙げることができる。
【0058】
特殊天然繊維(例えば、マニラ麻、麻、ケナフ)の代わりに、再生セルロース系繊維を100%または木材パルプとのブレンドとして使用することができる。天然セルロース系繊維の特性が相当に変わる可能性があり、さらに、これらの繊維の供給がそれぞれの収穫量に依存して変わる場合があるのは、天然セルロース系繊維の特質である。セルロース系化学繊維は一定の品質であり、それらの供給は原料として一般に利用可能な木材パルプを使用することにより安定している。
【0059】
好ましくは、本発明による不織布製品または紙は、バインダーを含まないか、または実質上含まないことを特徴とする。「実質上存在しないバインダー」を含む実施形態に関して、バインダーは、あるとすれば、不織布製品または紙の全重量に対して、最大3重量%まで、最大2重量%まで、または最大1重量%までの相対的に少ない量でなお存在し得る。抄紙の技術分野では、用語「バインダー」は、紙の強度を改良するために抄紙プロセスの間に添加される化学物質を意味する。
【0060】
本発明による改質セルロース系繊維の製造方法は、セルロース系繊維に上で定義したようなアニオン部分を0.25mol/kg超の量で付与するステップと、上で定義したようなカチオン部分を含むポリマー改質剤によってアニオン部分を含むセルロース系繊維を処理するステップとを含む。
【0061】
本発明の繊維が湿式の不織布または紙の製造に使用される場合、本発明による繊維のデシテックスは、好ましくは、0.5dtexから12dtexまでであり、最も好ましくは、0.5dtexから3.5dtexまでである。繊維の長さは、2mmから15mmまで、好ましくは、3mmから12mmまでの範囲となり得る。繊維の断面は多様性に富んだ形状、例えば、丸、のこぎり歯状、扁平、または三葉状等の多葉状をとり得る。
【0062】
本発明の繊維が、乾式不織布、例えばスパンレース用途向けの製造に使用される場合、本発明による繊維のデシテックスは、好ましくは、0.5dtexから12dtexまで、最も好ましくは、0.5dtexから3.5dtexまでである。繊維の長さは、20mmから80mmまで、好ましくは、30mmから60mmまでの範囲となり得る。繊維の断面はバラエティーに富んだ形状、例えば、丸、のこぎり歯状、扁平、または三葉状等の多葉状をとり得る。
【0063】
本発明の繊維により、濾紙の製法において紙の強度を著しく低下させることなく10重量%超の繊維を添加することが可能になることが分かった。
【0064】
本発明による繊維の使用により、目標の用途向けの十分な強度を維持したまま高空隙率を有する紙を製造することが可能になる。
【実施例】
【0065】
以下の実施例の全体を通して、パラメーター「空隙率」(通気率)は、メーカーの指示によってAKUSTRON通気率装置(Thwing−Albert、West Berlin、USA)により測定した。
【0066】
引張強度を、DIN EN ISO1924−2に準拠して測定した。
【0067】
引裂強度を、坪量に関するDIN EN21974に基づいて測定した。
【実施例1】
【0068】
用いた材料:
− 参照繊維:
ビスコース繊維Danufil(登録商標)0.9dtex/6mm(繊維1.1)
− アニオン性ビスコース繊維:
CMCを取り込み、2.4重量%のCOOH(WO2011/012423A1を参照)を有するビスコース繊維を、0.9dtex/6mm(繊維1.2)で製造した。
− PAM−DADMAC:
ポリ(アクリルアミド−co−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PAM−DADMAC)、98%
CAS:26590−05−6
分子量:10
5g/mol
55重量%のアクリルアミド
(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen)
【0069】
手順:
繊維の製造:
200gの繊維1.2を、H
2O中1重量%のPAM−DADMAC溶液2リットルに添加し、5分間撹拌した。
【0070】
繊維を濾別し、全重量が800gに到達するまで、残液を絞り出した。次いで、繊維を脱イオン水により洗浄し、再び絞り出した。この手順によって調製した繊維(繊維1.3)は、分析した結果、繊維上6重量%のPAM−DADMACのレベルに相当する0.89重量%の窒素含有量を有していた。
【0071】
試験紙の製造:
紙を、Rapid Kothen Lab sheet formerの中で製造した。試験シートを、圧負荷を全くかけずにオーブン内において105℃で乾燥した。
【0072】
予め精製した参照パルプに、総量がそれぞれ20重量%、50重量%および80wt%の繊維1.1〜繊維1.3を加えた。試験シートを、30g/m
2の坪量で製造した。
【0073】
試験シートを、引張強度、引裂強度および空隙率(通気率)について試験した。
【0074】
試験結果:
参照繊維(繊維1.1)を用いて製造したシートと比較して、以下の改良を達成することができた(80%のビスコース繊維および20%の参照パルプの混合配分)。
【0075】
#アニオン性ビスコース繊維(繊維1.2)を用いたシート
引張強度:約+65%
引裂強度:約+100%
空隙率:約−9%
【0076】
【表1】
【0077】
#発明によるビスコース繊維(繊維1.3)を用いたシート
引張強度:約+400%
引裂強度:約+650%
空隙率:約−14%
【0078】
【表2】
100%の参照パルプから作製したシートと比較して、すべてのビスコース繊維を用いて、空隙率は所望通りに(+50%〜+300%、ビスコース繊維の%によるが)高められる。
【実施例2】
【0079】
用いた材料:
− アニオン性ビスコース繊維:
アニオン性ビスコース繊維を、異なるパーセンテージのCMCを取り込んで1.3dtex/6mm(WO2011/012423A1を参照)で製造した。CMCの組込みの程度を、繊維中のカルボキシル基のパーセンテージによって特徴付けた。
繊維2.1:1.3重量%COOH
繊維2.2:1.7重量%COOH
繊維2.3:2.3重量%COOH
− PAM−DADMAC:
ポリ(アクリルアミド−co−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PAM−DADMAC)、98%
CAS:26590−05−6
分子量:10
5g/mol
55重量%アクリルアミド
(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen)
【0080】
手順:
繊維の製造:
繊維を、実施例1に類似の浴手順で高分子電解質を用いて処理した。異なるレベルの高分子電解質を、異なる浴濃度の使用により設定した。
【0081】
繊維上の高分子電解質の含浸量レベルを、製造した試験紙シートの窒素分析によって決定した。
【0082】
【表3】
【0083】
試験紙の製造:
試験紙をRapid Kothen Lab sheet formerの中で製造した。試験紙シートを、圧負荷をかけずにオーブン内において105℃で乾燥した。
【0084】
試験シートを、坪量30g/m
2で100%の改質ビスコース繊維、ならびに20重量%の参照パルプを添加した80重量%の改質ビスコース繊維から製造した。
【0085】
試験シートを、引張強度、引裂強度および空隙率(通気率)について試験した。
【0086】
試験結果:
【0087】
【表4】
【0088】
80重量%の未処理のアニオン性繊維(繊維1.2)を用いた参照シートの裂断長はわずかに539mであり、これはPAM−DADMACの含浸量にもよるが、処理された繊維を用いて達成した強度の30%〜40%である。
【0089】
製造したシートの空隙率は、所望の範囲内にあった。
【0090】
繊維のより高いアニオン電荷(重量%COOH)と、より低いレベルのカチオン性高分子電解質とが、引張強度に対して最良の結果をもたらすことを示している。
【実施例3】
【0091】
用いた材料:
− アニオン性ビスコース繊維:
実施例2からの繊維2.3
− カチオン性ビスコース繊維:
Danufil(登録商標)DeepDye1.7dtex/5mm(Kelheim Fibres GmbH、Kelheim)
− ノニオン性(レギュラー)ビスコース繊維:
Danufil(登録商標)1.7dtex/5mm(Kelheim Fibres GmbH、Kelheim)
− PAM−DADMAC:
ポリ(アクリルアミド−co−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PAM−DADMAC)、98%
CAS:26590−05−6
分子量:10
5g/mol
55重量%アクリルアミド
(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen)
【0092】
手順:
繊維を、実施例1に類似の浴手順で高分子電解質を用いて処理した。異なるレベルの高分子電解質を、異なる浴濃度の使用により設定した。
【0093】
試験紙の製造:
紙を、Rapid Kothen Lab sheet formerの中で製造した。30g/m
2の試験紙シートを、圧負荷をかけずにオーブン内において105℃で乾燥した。
【0094】
試験結果を
図1に示し、カチオン性高分子電解質とアニオン性繊維の組合せだけが紙の強度の著しい向上をもたらすことを示す。
【0095】
図1に関する図の説明文
X....シート形成されず
A....引張強度(裂断長)[m]
B....空隙率[l/m
2*s]
C....引裂強度[−]
1....50%アニオン性ビスコース+1.3%PAM DADMAC
2....50%カチオン性ビスコース+1.3%PAM DADMAC
3....50%ノニオン性ビスコース+1.3%PAM DADMAC
4....PAM DADMACを含まない50%アニオン性ビスコース
5....PAM DADMACを含まない50%カチオン性ビスコース
6....PAM DADMACを含まない50%ノニオン性ビスコース
7....80%アニオン性ビスコース+1.3%PAM DADMAC
8....80%カチオン性ビスコース+1.3%PAM DADMAC
9....80%ノニオン性ビスコース+1.3%PAM DADMAC
10....PAM DADMACを含まない80%アニオン性ビスコース
11....PAM DADMACを含まない80%カチオン性ビスコース
12....PAM DADMACを含まない80%ノニオン性ビスコース
13....100%アニオン性ビスコース+1.3%PAM DADMAC
14....100%カチオン性ビスコース+1.3%PAM DADMAC
15....100%ノニオン性ビスコース+1.3%PAM DADMAC
16....PAM DADMACを含まない100%アニオン性ビスコース
17....PAM DADMACを含まない100%カチオン性ビスコース
18....PAM DADMACを含まない100%ノニオン性ビスコース
【実施例4】
【0096】
用いた材料:
− アニオン性ビスコース繊維:
アニオン性ビスコース繊維を、CMCを取り込んで1.3dtex/4mm(WO2011/012423A1を参照)で製造した。CMCの取込みの程度は、繊維中のカルボシキル基のパーセンテージによって特徴付けられ、分析の結果2重量%であった。
− ポリDADMAC:
ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)
CAS.:26062−79−3
Mw<100,000(低分子量)
(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen)
− ポリDADMAC:
ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)
CAS.:26062−79−3
Mw200,000〜300,000(中程度の分子量)
(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen)
− ポリDADMAC:
ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)
CAS.:26062−79−3
Mw400,000〜500,000(高分子量)
(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen)
− PAM−DADMAC1:
ポリ(アクリルアミド−co−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PAM−DADMAC)
CAS:26590−05−6
Mackernium007(登録商標)
(Rhodia UK Ltd;Oldbury)
− PAM−DADMAC2:
ポリ(アクリルアミド−co−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PAM−DADMAC)
CAS:26590−05−6
Mackernium007N(登録商標)
(Rhodia UK Ltd、Oldbury)
− ポリエチレンイミン(PEI):
CAS:25987−06−8
Lupasol G35(登録商標)
(BASF Corporation、Ludwigshafen)
【0097】
手順:
ビスコース繊維を、実施例1に類似の浴手順で異なるカチオン性高分子電解質を用いて処理した。異なるレベルの高分子電解質を、異なる浴濃度の使用により設定した。ポリエチレンイミンを、繊維上の1.5%の高分子電解質を目標に添加したが、このポリマーが、アニオン性繊維に対して非常に高い親和性を有しており結果として3.62%の含浸量であることが分かった。
【0098】
繊維上の高分子電解質の含浸量レベルを、窒素分析によって測定した。
【0099】
【表5】
【0100】
試験紙の製造:
紙を、Rapid Kothen Lab sheet formerの中で製造した。試験紙シートを、圧負荷をかけずにオーブン内において105℃で乾燥した。
【0101】
試験シートを、坪量30g/m
2で、100%の改質ビスコース繊維、ならびに20重量%の参照繊維を添加した80重量%の改質ビスコース繊維から製造した。試験シートを、引張強度、引裂強度および空隙率(通気率)について試験した。
【0102】
試験結果:
【0103】
【表6】
【0104】
この結果により、中程度の分子量のポリDADMACが本発明で使用するのに特に適したポリマーであることが示される。
【0105】
一方では、繊維上に高レベルのポリエチレンイミンを有する繊維は、紙の強度の点で性能が劣っていた。この実施例では、アニオン部分対カチオン部分のモル比(mEq/mEqで)は、わずかに0.5であるため、1より小さく、紙の強度の改良には不十分な結果をもたらした。
【実施例5】
【0106】
用いた材料:
− アニオン性ビスコース繊維:
アニオン性ビスコース繊維を、CMCを取り込んで1.3dtex/4mm(WO2011/012423A1を参照)で製造した。CMCの取込みの程度は、繊維中のカルボシキル基のパーセンテージによって特徴付けられ、分析の結果2.6重量%であった。
− ポリDADMAC:
ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)
CAS−Nr.:26062−79−3
Mw<100,000(低分子量)
(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen)
− ポリDADMAC:
ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)
CAS−Nr.:26062−79−3
Mw200,000〜300,000(中程度の分子量)
(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen)
【0107】
手順:
ビスコース繊維を、処理済みの繊維を全く洗浄しなかったこと以外は、実施例1に類似の浴手順で、異なるカチオン性高分子電解質を用いて処理した。
【0108】
異なるレベルの高分子電解質を、異なる浴濃度の使用により設定した。
【0109】
繊維上の高分子電解質の含浸量レベルを、窒素分析によって測定した。
【0110】
【表7】
【0111】
試験紙の製造:
紙を、Rapid Kothen Lab sheet formerの中で製造した。試験シートを、圧負荷をかけずにオーブン内において105℃で乾燥した。
【0112】
一連の洗浄を施した後、試験シートを、坪量30g/m
2で、100%の改質ビスコース繊維から製造した。
【0113】
繊維上の高分子電解質の含浸量レベルを、選択された試験シートの窒素分析によって測定した。
【0114】
【表8】
【0115】
10回洗浄の後でさえも、紙シート上のポリDADMACレベルは提供された改質ビスコース繊維上のレベルと同一である。これは、選択された濃度では、高分子電解質が繊維上で定量的に保持され、抄紙プロセスまたは最終用途で洗い流されないことを示している。
【0116】
試験シートを、引張強度(裂断長)および空隙率(通気率)について試験した。
【0117】
試験結果:
a)洗浄後の高分子電解質の保持
【0118】
【表9】
【0119】
繊維を数回洗浄した後でさえも、同一の紙の引張強度が達成されており、効率を損なうことなく、繊維上の高分子電解質の定量的な保持を確認している。
【0120】
b)裂断長に対する高分子電解質の含浸量レベルの影響
【0121】
【表10】
【0122】
100%のビスコース繊維に由来する紙では、高分子電解質の含浸量≧1%で作製されたものは、含浸量<1%の繊維から作製されたものより著しく高い強度を示した。これは、実施例4からの結果とともに、約1%の高分子電解質の最適含浸量レベルがあることを示している。
【0123】
c)高分子電解質の分子量の影響
紙を、異なる洗浄サイクル後に形成した。
【0124】
【表11】
【0125】
【表12】
【0126】
それぞれの場合において、中程度の分子量のポリDADMACが、製造された試験シートにより高い強度をもたらしており、ポリDADMACのための好ましい分子量が>100,000であることを示している。
【0127】
製造された紙の空隙率は、予想の範囲内であり、空隙率損失は観察されなかった。