特許第6861290号(P6861290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861290
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】止血弁および止血弁組立体
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/06 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   A61M39/06 122
   A61M39/06 110
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-545890(P2019-545890)
(86)(22)【出願日】2017年11月7日
(65)【公表番号】特表2019-534133(P2019-534133A)
(43)【公表日】2019年11月28日
(86)【国際出願番号】US2017060479
(87)【国際公開番号】WO2018089390
(87)【国際公開日】20180517
【審査請求日】2019年5月30日
(31)【優先権主張番号】62/419,670
(32)【優先日】2016年11月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500332814
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アグラワル、サミット
(72)【発明者】
【氏名】ペピン、ヘンリー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】レディ、ソマシェカル
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0310765(US,A1)
【文献】 特開平09−047512(JP,A)
【文献】 特開2015−205219(JP,A)
【文献】 特開平10−127775(JP,A)
【文献】 特表平10−500345(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0039263(US,A1)
【文献】 特開2013−202068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置において使用するための止血弁であって、
医療装置のハブ本体内に配置されるように構成されているとともに、基端面および先端面を有している略円柱状の本体を備えており、
前記基端面が、前記本体の直径中心に向かって傾斜した表面と、該基端面から前記先端面に向かって減少する直径と、を有している円錐状中央領域を含んでおり、
前記先端面が、先端方向に延びている湾曲状中央領域を含んでおり、
前記本体が、該本体に形成されているとともに、前記円錐状中央領域と湾曲状中央領域との間において該本体内を少なくとも部分的に貫通している少なくとも第1のスリットおよび第2のスリットを備えており、第1のスリットが前記基端面に形成され、先端方向に延びて前記本体を部分的にのみ貫通し、第2のスリットが前記先端面に形成され、基端方向に延びて前記本体を部分的にのみ貫通する態様で、第1のスリットおよび第2のスリットが交差状部分スリット構造に形成されており、第1のスリットおよび第2のスリットが、前記基端面と先端面との間で交差点において交わって、前記本体全体にわたって貫通する開口部を形成しており、
止血弁の厚さが、前記本体の直径中心に近傍する部分において減少している、止血弁。
【請求項2】
前記本体がシリコーンエラストマーを含んでいる、請求項1に記載の止血弁。
【請求項3】
前記本体が液体シリコーンゴムを含んでいる、請求項1または2に記載の止血弁。
【請求項4】
前記本体が強化耐引裂性シリコーンエラストマーを含んでいる、請求項1または2に記載の止血弁。
【請求項5】
前記少なくとも第1のスリットおよび第2のスリットが、交差状貫通スリット構造を有するように形成されている、請求項に記載の止血弁。
【請求項6】
前記少なくとも第1のスリットおよび第2のスリットが、星型貫通スリット構造を有するように形成されている、請求項に記載の止血弁。
【請求項7】
前記本体がフランジ状外周部をさらに有しており、該フランジ状外周部が止血弁組立体のハブ本体と係合するように構成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の止血弁。
【請求項8】
止血弁組立体であって、
空隙を画定しているハブ本体と、
前記ハブ本体から先端方向に延びている張力緩和部と、
ハブ本体の基端に連結されているエンドキャップと、
ハブ本体の空隙内に配置されているとともに、ハブ本体とエンドキャップとの間に連結されている止血弁と、を備えており、
前記止血弁が基端面および先端面を有する略円柱状の弁本体を備えており、前記基端面が、弁本体の直径中心に向かって傾斜した表面と、該基端面から前記先端面に向かって減少する直径とを有している円錐状中央領域を含んでおり、前記先端面が先端方向に延びている湾曲状中央領域を含んでおり、
前記弁本体が、該弁本体に形成されているとともに、前記円錐状中央領域と湾曲状中央領域との間において該弁本体内を少なくとも部分的に貫通している少なくとも第1のスリットおよび第2のスリットを備えており、第1のスリットが前記基端面に形成され、先端方向に延びて前記弁本体を部分的にのみ貫通し、第2のスリットが前記先端面に形成され、基端方向に延びて前記弁本体を部分的にのみ貫通する態様で、第1のスリットおよび第2のスリットが交差状部分スリット構造に形成されており、第1のスリットおよび第2のスリットが、前記基端面と先端面との間で交差点において交わって、前記弁本体全体にわたって貫通する開口部を形成しており、
前記止血弁の厚さが、前記弁本体の直径中心に近傍する部分において減少している、止血弁組立体。
【請求項9】
前記弁本体がシリコーンエラストマーを含んでいる、請求項に記載の止血弁組立体。
【請求項10】
前記弁本体が液体シリコーンゴムを含んでいる、請求項またはに記載の止血弁組立体。
【請求項11】
前記弁本体が強化耐引裂性シリコーンエラストマーを含んでいる、請求項またはに記載の止血弁組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は止血弁に関する。詳細には、本開示は自動調心止血弁に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内等において医療用途に使用される装置として、様々な体内医療装置が開発されてきた。これらの装置にはガイドワイヤやカテーテル等が含まれる。このような装置は、様々な異なる製造方法のうちのいずれか1つによって製造され、様々な方法のうちのいずれか1つに従って使用される。既知の医療装置および方法には、それぞれ利点および欠点がある。このため、さらに別の医療装置、ならびに医療装置を製造および使用するためのさらに別の方法を提供することが継続的に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示の目的は、医療装置の設計、材料、製造方法および使用選択肢を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の例では、医療装置において使用するための止血弁は、医療装置のハブ本体内に配置されるように構成されている略円柱状の本体を備えている。本体は基端面および先端面を有している。基端面は、本体の直径中心に向かって傾斜した表面を有するテーパ状中央領域を含んでおり、先端面は、先端方向に延びている湾曲状中央領域を含んでいる。
【0005】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、本体がシリコーンエラストマーを含んでいる。
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、本体が液体シリコーンゴム(LSR)を含んでいる。
【0006】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、本体が強化耐引裂性(ETR)シリコーンエラストマーを含んでいる。
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、止血弁は、本体に形成されているとともに、テーパ状中央領域と湾曲状中央領域との間において本体内を少なくとも部分的に貫通している1つまたは複数のスリットをさらに備えている。
【0007】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、1つまたは複数のスリットが交差状貫通スリット(CST)構造を有するように形成されている。
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、1つまたは複数のスリットが交差状部分スリット(CSP)構造を有するように形成されている。
【0008】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、1つまたは複数のスリットが星型貫通スリット(SST)構造を有するように形成されている。
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、テーパ状中央領域が、補助医療装置を本体の直径中心に案内するように構成されている。
【0009】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、本体がフランジ状外周部をさらに有しており、フランジ状外周部が止血弁組立体のハブ本体と係合するように構成されている。
【0010】
別の例では、止血弁組立体は、空隙を画定しているハブ本体と、ハブ本体から先端方向に延びている張力緩和部と、ハブ本体の先端に連結されているエンドキャップと、ハブ本体の空隙内に配置されているとともに、ハブ本体とエンドキャップとの間に連結されている止血弁とを備えている。止血弁は略円柱状の弁本体を有しており、弁本体は、弁本体の直径中心に向かって傾斜した表面を有しているテーパ状中央領域を含んでいる基端面と、先端方向に延びている湾曲状中央領域を含んでいる先端面とを有している。
【0011】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、弁本体がシリコーンエラストマーを含んでいる。
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、弁本体が液体シリコーンゴム(LSR)を含んでいる。
【0012】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、弁本体が強化耐引裂性(ETR)シリコーンエラストマーを含んでいる。
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、止血弁組立体は、弁本体に形成されているとともに、テーパ状中央領域と湾曲状中央領域との間において弁本体内を少なくとも部分的に貫通している1つまたは複数のスリットをさらに備えている。
【0013】
別の例では、医療装置において使用するための止血弁は、医療装置のハブ本体内に配置されるように構成されている略円柱状の本体を備えている。本体は基端面および先端面を有している。基端面は、本体の直径中心に向かって傾斜した表面を有するテーパ状中央領域を含んでおり、先端面は、先端方向に延びている湾曲状中央領域を含んでいる。
【0014】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、本体がシリコーンエラストマーを含んでいる。
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、本体が液体シリコーンゴム(LSR)を含んでいる。
【0015】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、本体が強化耐引裂性(ETR)シリコーンエラストマーを含んでいる。
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、止血弁は、本体に形成されているとともに、本体のテーパ状中央領域と湾曲状中央領域との間において本体を少なくとも部分的に貫通している1つまたは複数のスリットをさらに備えている。
【0016】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、1つまたは複数のスリットが交差状貫通スリット(CST)構造を有するように形成されている。
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、1つまたは複数のスリットが交差状部分スリット(CSP)構造を有するように形成されている。
【0017】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、1つまたは複数のスリットが星型貫通スリット(SST)構造を有するように形成されている。
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、テーパ状中央領域が、補助医療装置を本体の直径中心に案内するように構成されている。
【0018】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、本体がフランジ状外周部をさらに有しており、フランジ状外周部が止血弁組立体のハブ本体と係合するように構成されている。
【0019】
別の例では、止血弁組立体は、空隙を画定しているハブ本体と、ハブ本体から先端方向に延びている張力緩和部と、ハブ本体の先端に連結されているエンドキャップと、ハブ本体の空隙内に配置されているとともに、ハブ本体とエンドキャップとの間に連結されている止血弁とを備えている。止血弁は略円柱状の弁本体を有しており、弁本体は、弁本体の直径中心に向かって傾斜した表面を有しているテーパ状中央領域を含んでいる基端面と、先端方向に延びている湾曲状中央領域を含んでいる先端面とを有している。
【0020】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、弁本体がシリコーンエラストマーを含んでいる。
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、弁本体が液体シリコーンゴム(LSR)を含んでいる。
【0021】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、弁本体が強化耐引裂性(ETR)シリコーンエラストマーを含んでいる。
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、止血弁組立体は、弁本体に形成されているとともに、テーパ状中央領域と湾曲状中央領域との間において弁本体内を少なくとも部分的に貫通している1つまたは複数のスリットをさらに備えている。
【0022】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、弁本体がフランジ状外周部をさらに有しており、フランジ状外周部がハブ本体の連結溝と係合するように構成されている。
【0023】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、弁本体が、基端面に形成されている第1の環状溝と、先端面に形成されている第2の環状溝とをさらに有している。第1の環状溝は、エンドキャップの連結構造と係合するように構成されており、第2の環状溝は、ハブ本体の連結構造と係合するように構成されている。
【0024】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、テーパ状中央領域が、医療装置を弁体の直径中心に案内するように構成されている。
別の例では、止血弁組立体は、空隙を画定しているハブ本体と、ハブ本体から先端方向に延びている張力緩和部と、ハブ本体の先端に連結されているエンドキャップと、ハブ本体の空隙内に配置されているとともに、ハブ本体とエンドキャップとの間に連結されている止血弁とを備えている。止血弁は略円柱状のエラストマー弁本体を有しており、弁本体は、基端面と、先端面と、基端面において弁本体の直径中心に向かって傾斜した表面を有しているテーパ状中央領域と、先端面において先端方向に延びている湾曲状中央領域と、基端面に形成されている第1の環状溝と、先端面に形成されている第2の環状溝と、フランジ状外周部とを有している。
【0025】
上記の例のいずれかに代えてまたは加えて、別の例では、止血弁は、弁本体に形成されているとともに、テーパ状中央領域と湾曲状中央領域との間において弁本体を少なくとも部分的に貫通している1つまたは複数のスリットをさらに備えている。
【0026】
いくつかの例示的実施形態の上記概要は、開示された各実施形態または本発明の全ての実施を説明することを意図していない。
本発明は、添付の図面を参照して以下の様々な実施形態の詳細な説明を考慮することによって完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】例示的な血管到達システムを示す斜視図。
図2図1の例示的な血管到達システムを示す、図1の2−2線に沿った断面図。
図3図2の例示的な止血弁組立体を示す拡大断面図。
図4】例示的止血弁を示す斜視図。
図5図3の例示的止血弁を示す、図4の5−5線に沿った断面図。
図6A】スリット構造を有している、図3の例示的な止血弁の基端側端面図。
図6B】別のスリット構造を有している、図3の例示的な止血弁の基端側端面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は様々な変更形態および代替形態に適用可能であるが、本発明の具体例を図面に示し、以下に詳細を述べる。しかしながら、本発明の態様は、記載された特定の実施形態に限定されない。以下の説明および図面は、本発明の趣旨および範囲内に含まれる全ての変更例、均等物および代替形態を網羅することを意図している。
【0029】
以下に定義する用語に関しては、別の定義が特許請求の範囲または本明細書に記載されている場合を除いて、以下の定義が適用される。
本明細書において、全ての数値は、明示的に示されているか否かに関わらず、「約」という語によって修飾されるものと見なされる。「約」という語は、一般に、記載される値と同等である(すなわち、同じ機能または結果を有する)と当業者が見なす数値範囲を指す。多くの場合において、「約」という語は、最も近い有効数字に四捨五入された数を含む。
【0030】
上下限値による数値範囲の記載は、その範囲内のすべての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4および5を含む)。
様々な構成要素、特徴および/または仕様に関するいくつかの最適な寸法、範囲および/または数値が開示されているが、当業者であれば、好適な寸法、範囲および/または数値が本明細書に明示されたものとは異なる場合もあることは、本明細書の開示内容から理解できる。
【0031】
本明細書および添付された特許請求の範囲において、単数形の「1つの」および「その」は、特に断らない限り、複数の対象物を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲において、「または」という用語は、特に断らない限り、「および/または」という意味を含むものとする。
【0032】
以下の記載においては図を参照するが、異なる図における類似する構成要素には同一の符号が付されている。発明の詳細な説明および図面は例示的実施形態を示すものであり、本発明の範囲を限定するものではない。また、図面は必ずしも縮尺どおりではない。例示的実施形態は、本発明の説明のみを意図する。特に断らない限り、例示的実施形態のある特徴は、別の実施形態に組み込み可能である。
【0033】
図1は、例示的な血管到達システム10を示す斜視図である。血管到達システム10は、診断またはインターベンショナル処置中に血管に到達するために使用できる。システム10は血管への到達に関連して説明されているが、システム10は身体の他の部分に到達するために使用されてもよい。到達システム10は、イントロデューサシース12および拡張器14を有している。イントロデューサシース12は、長尺状シャフト16および止血弁組立体18を有している。詳細は以下に記載するが、止血弁組立体18は、他の装置(拡張器、ガイドカテーテル等)がイントロデューサシース12内を通ることを可能としながら、イントロデューサシース12が血管に挿入される際の失血を減少または防止する弁部材またはガスケットを有している。
【0034】
いくつかの場合において、長尺状シャフト16の先端30はテーパ状に形成されており、これによって、血管系への挿入を滑らかに行うことや、拡張器14への滑らかな移行がもたらされている。イントロデューサシース12の長尺状シャフト16の寸法(外径または太さ)は4フレンチ〜9フレンチ(1.33mm〜3mm)であり、長さは10cm〜25cmである。しかしながら、外径は4フレンチ(1.33mm)未満であってもよいし、9フレンチ(3mm)よりも大きくてもよい。シャフト16の長さは、10cm未満であってもよいし、25cmよりも長くてもよい。止血弁組立体18は、ハブ本体20および張力緩和部22を有している。張力緩和部22は、ハブ本体20に連結されていてもよいし、ハブ本体20と一体構造を形成していてもよい。張力緩和部22は、ハブ本体20から先端側に延びている。ハブ本体20は、灌流または注入用のチューブサブアセンブリ(明示しない)に接続されるサイドポート24を有している。拡張器14は、長尺状シャフト26およびハンドル28を有している。止血弁組立体18またはその構成要素は、インターベンショナルカテーテル、診断用カテーテル、ガイドシース等の医療装置と共に使用可能であるが、これらに限定されない。
【0035】
図2は、図1の例示的な血管到達システム10を示す、図1の2−2線に沿った断面図である。イントロデューサシース12は、長尺状シャフト16の基端34から先端30まで延びる管腔32を有している。管腔32は、拡張器14または他の器具を受容できる寸法を有している。止血弁組立体18は、従来の技術を利用してシャフト16の基端34に接続されている。拡張器14は、長尺状シャフト26の基端38から先端40まで延びる管腔36を有している。管腔36は、診断用装置、インターベンショナル装置または治療装置を受容するように構成されている。ハンドル28は、従来の技術を用いて拡張器14の長尺状シャフト26の基端38に接続されている。
【0036】
図3は、図2の止血弁組立体18の拡大断面図である。図3に示すように、止血弁またはガスケット42は、止血弁組立体18のハブ本体20の空隙44内に配置されている。止血弁42は、1つまたは複数の連結構造を有している。この連結構造は、ハブ本体20の嵌合構造と係合することによって、止血弁をハブ本体20内において所望の位置および/または向きに保持するように構成されている(例えば、空隙44内の所定の長手方向位置および/または軸方向位置に固定する)。例えば、止血弁42は、ハブ本体20の嵌合凹部または溝48内に受容されるように構成されたフランジ状外周部46を有している。フランジ状外周部46の厚さ(例えば図3において基端側から先端側に向かう方向の厚さ)は、止血弁42の先端面および基端面に形成されている一対の環状溝または凹部54,55と比較して、より厚くなるように形成されている。止血弁42は、ハブ本体20の空隙44内にまず組み付けられてから、止血弁組立体18のエンドキャップ58に組み付けられることが想定される。エンドキャップ58は、止血弁42の環状溝54と係合するように構成された突起部56を有している。第2の環状溝55は、突起部57等の嵌合構造と係合するように構成されているが、これに限定されない。エンドキャップ58は、溝48内においてフランジ状外周部46を摩擦または嵌合により固定し、嵌合突起部56,57の間に環状溝54,55が配置される。
【0037】
使用時(拡張器14とイントロデューサシース12との組み付け時等)には、拡張器14の先端40が、止血弁42の1つまたは複数のスリットを通過して先端側に前進する(例えば、止血弁42の基端側から先端側へ移動する)。詳細は以下に記載するが、スリットは、止血弁42の中心が屈曲できるように配置されている。より少ない力で止血弁42を通過して拡張器14を前進させるためには、拡張器14が止血弁42の中心を通過することが望ましい。
【0038】
図4は、例示的止血弁42の斜視図である。止血弁42は、略円柱状である円盤状本体41を有しており、本体41は、基端面50および先端面60を有している。止血弁42は、シリコーンエラストマー等の柔軟な材料から形成されており、これによって、一時的な変形(例えば、降伏点または破壊点未満の応力または力が加えられた場合)の後に止血弁42が元の形状に戻ることができる。例示的な材料としては、液体シリコーンゴム(LSR)エラストマーおよび強化耐引裂性(ETR)シリコーンエラストマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
止血弁42の基端面50は、テーパ状または円錐状の中央領域52を有している。中央領域52の表面は、止血弁42の中心に向かって傾斜している。テーパ状中央領域52の直径は、止血弁42の基端面50から先端面60に向かって減少する。テーパ状中央領域52は、拡張器14の先端40を止血弁42の直径中心53に向けて案内する。テーパ状中央領域52は、イントロデューサシース12に対して止血弁42を組み付けるときに、拡張器14(または他の補助医療装置)の先端40を、止血弁42の直径中心53に向かって自動的に導く自動調心機構として機能する。自動調心機構は、止血弁42に拡張器14を通すために必要な力の減少や、止血弁42に拡張器14を通すために必要な試行回数の減少をもたらすことによって、処置前の装置の準備を容易化する。
【0040】
図5は、図4の5−5線に沿った止血弁42の断面図である。止血弁42の先端面60は、先端方向に延びている湾曲状または凸状の中央領域62を有している。湾曲状の中央領域62が曲率を有していることによって、血液等の流体によって止血弁42の先端面60が押されたときに、止血弁42が閉鎖されやすくなっている。湾曲状中央領域62の曲率を増加または減少させることによって、止血弁42の閉鎖の効果が変化し得る。
【0041】
本明細書に記載されるように、フランジ状外周部46は、止血弁42の基端面および先端面に形成された一対の環状溝または凹部54,55と比較して厚さ51が大きくなるように構成されている。フランジ状外周部46は、ハブ本体20の空隙44内でより確実に固定するために、止血弁42の径方向における他の部分よりも厚さ51が大きい。止血弁42の厚さは、径方向に異なっている。例えば、環状溝54,55に近傍する部分の厚さ43は、止血弁42の直径中心53に近傍する部分の厚さ45よりも大きい。中心53に近傍する部分において止血弁42の厚さを小さくした場合、止血弁42を通って器具を前進させるために必要な力を小さくできる。いくつかの場合において、フランジ状外周部46の厚さ51は、止血弁42の他の厚さ43,45と同じであってもよいし、類似していてもよいし、異なっていてもよい。止血弁42の厚さ43,45,51について他の変形例も想定される。厚さの変化の態様は、段階的であってもよいし、急激であってもよいし、漸進的に滑らかに変化してもよい。いくつかの場合においては、止血弁42の径方向全体にわたって厚さが均一である。
【0042】
図6Aは、スリット構造を有する止血弁42の基端側端面図である。本体41のテーパ状中央領域52は、上下方向スリット64と、上下方向スリット64に対して略垂直に延びる水平方向スリット66とを有している。各スリット64,66は、基端面50から先端面60まで止血弁42の厚さを完全に貫通していてもよい(例えば交差状貫通スリット(cross slit thru(CST))構造に形成されていてもよい)。あるいは、上下方向スリット64は、止血弁42の基端面50に形成され、先端方向に延びてテーパ状中央領域52と湾曲状中央領域62との間の厚さ45を部分的に貫通していてもよい。この場合、水平方向スリット66は止血弁42の先端面60に形成され、基端方向に延びてテーパ状中央領域52と湾曲状中央領域62との間の厚さ45を部分的に貫通していてもよい。スリット64,66は、止血弁42のテーパ状中央領域52と湾曲状中央領域62との間で交差点70において交わり、止血弁42の厚さ全体にわたって貫通する開口部を形成している(例えば交差状部分スリット(cross slit partial(CSP))構造に形成されている)。いくつかの例においては、交差点70は止血弁42の直径中心に位置しているが、これは必須ではない。これとは反対の構成においては、水平方向スリット66が止血弁42の基端面50に形成され、先端方向に延びてテーパ状中央領域52と湾曲状中央領域62との間の厚さ45を部分的に貫通し、上下方向スリット64は、止血弁42の先端面60に形成され、基端方向に延びてテーパ状中央領域52と湾曲状中央領域62との間の厚さ45を部分的に貫通している。スリットは、他の変形例も想定できる。一例において、一方のスリットがテーパ状中央領域52と湾曲状中央領域62との間の厚さ45を貫通して延び、他方のスリットがテーパ状中央領域52と湾曲状中央領域62との間の厚さ45を部分的に貫通している。
【0043】
スリット64,66は、交差点70で交差して4つのフラップ68a,68b,68c,68d(集合的に68)を画定している。スリット64,66の数および方向は、必要に応じてフラップ68の数を変えるために変更可能である。スリット64,66は水平方向および上下方向に延びるように説明および図示されているが、スリット64,66が水平方向および上下方向の軸線からずれるようにスリット64,66を回転させてもよい。また、スリット64,66は必ずしも90°の角度で交差していなくてもよい。交差角度を変更することによって、異なる大きさのフラップ68(例えば2つの小さいフラップおよび2つの長いフラップ)を形成できる。フラップ68は、拡張器14が止血弁42を通過するときに先端方向に屈曲または湾曲できる。拡張器14の先端方向への移動が止まると(そして、先端方向への付勢力が止血弁42から取り除かれると)、先端面60の湾曲状中央領域62がフラップ68を基端方向に付勢し、フラップ68が拡張器14の外面に密着する。またさらに、フラップ68がスリット64,66付近において密接する。
【0044】
図6Bは、別のスリット構造を有する止血弁42の基端側端面図である。本体41のテーパ状中央領域52は、複数のスリット72a,72b,72c,72d,72e(集合的に72)を有している。スリット72は、テーパ状中央領域52において均等に配置されている。例えば、図示の実施形態では、スリット72は互いに約72°離間している。必要に応じて、スリット72を不規則な間隔で(等間隔ではなく)配置してもよい。スリット72は、基端面50から先端面60まで、テーパ状中央領域52と湾曲状中央領域62との間において止血弁42の厚さを完全に貫通していてもよい(例えば星型貫通スリット(star slit thru(SST))構造に形成されていてもよい)。いくつかの実施形態では、スリット72のうちの1つまたは複数が、基端面50または先端面60のいずれかから延びて、テーパ状中央領域52と湾曲状中央領域62との間において止血弁42の厚さを部分的に貫通している。もしくは、全てのスリット72が、テーパ状中央領域52と湾曲状中央領域62との間において止血弁42の厚さを完全に貫通していてもよいし、全てのスリット72が、テーパ状中央領域52と湾曲状中央領域62との間において止血弁42の厚さを部分的に貫通していてもよい(基端面50および先端面60のどちらか一方、または両方から延びていてもよい)。または、スリット72は、テーパ状中央領域52と湾曲状中央領域62との間において止血弁42の厚さを完全に貫通しているスリットと部分的に貫通しているスリットとが組み合わされて構成されていてもよい。
【0045】
スリット72は交差点76で交差して5つのフラップ74a,74b,74c,74d,74e(集合的に74)を画定している。スリット72の数および方向は、必要に応じてフラップ74の数を変えるために変更可能である。本明細書に記載されるように、スリット72は必ずしも72°の角度で交差していなくてもよい。交差角度を変更することによって、大きさの異なるフラップ74を形成できる。フラップ74は、拡張器14が止血弁42を通過するときに先端方向に屈曲または湾曲できる。拡張器14の先端方向への移動が止まると(そして、先端方向への付勢力が止血弁42から取り除かれると)、先端面60の湾曲状中央領域62がフラップ74を基端方向に付勢し、フラップ74が拡張器14の外面に密着する。またさらに、フラップ74が、スリット72付近において密接する。
【0046】
医療装置および/またはシステム10,12,14,18,42(および/または本明細書に開示されている他のシステム)の様々な構成要素ならびに本明細書に開示されている様々な要素に使用できる材料としては、医療器具に一般的に用いられる材料が挙げられる。説明を簡単にするために、以下の記載はシステム10に関連して記載するが、本明細書に記載の装置および方法の限定を意図するものではなく、以下の記載は、長尺状シャフト16,26、止血弁組立体8および/またはその要素もしくは構成要素等の本明細書に開示された他の要素、部材、構成要素または装置にも適用可能である。
【0047】
いくつかの実施形態では、システム10および/またはその構成要素は、金属、金属合金、ポリマー(以下に例を記載する)、金属−ポリマー組成物、セラミック、これらの組み合わせまたは他の適切な材料等から形成されている。
【0048】
適切なポリマーのいくつかの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えばデュポン社(DuPont)から入手可能なDELRIN(登録商標))、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン(例えばポリウレタン85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテル−エステル(例えばDSMエンジニアリングプラスチックス社(DSM Engineering Plastics)から入手可能なARNITEL(登録商標))、エーテルまたはエステル系のコポリマー(例えば、ブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレートおよび/またはデュポン社から入手可能なHYTREL(登録商標)等の他のポリエステルエラストマー)、ポリアミド(例えばバイエル社(Bayer)から入手可能なDURETHAN(登録商標)またはエルフアトケム社(Elf Atochem)から入手可能なCRISTAMID(登録商標))、弾性ポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(PEBA、例えばPEBAX(登録商標)という商品名で入手可能)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、マーレックス(Marlex)高密度ポリエチレン、マーレックス低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン(例えばREXELL(登録商標))、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(例えばKEVLAR(登録商標))、ポリスルホン、ナイロン、ナイロン12(EMSアメリカングリロン社(American Grilon)から入手可能なGRILAMID(登録商標)等)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ(スチレン−b−イソブチレン−b−スチレン)(例えばSIBSおよび/またはSIBS 50A)、ポリカーボネート、アイオノマー、生体適合性ポリマー、他の好適な材料もしくはそれらの混合物、組み合わせ、コポリマー、ポリマー/金属複合材等を挙げることができる。
【0049】
好適な金属および合金の一部の例としては、304V、304Lおよび316LVステンレス鋼のようなステンレス鋼、軟鋼、線形弾性および/または超弾性ニチノールのようなニッケル−チタン合金、他のニッケル合金、例えば、ニッケル−クロム−モリブデン合金(例えば、INCONEL(登録商標)625等のUNS:N06625、HASTELLOY(登録商標)C−22(登録商標)等のUNS:N06022、HASTELLOY(登録商標)C276(登録商標)等のUNS:N10276、その他のHASTELLOY(登録商標)合金等)、ニッケル銅合金(MONEL(登録商標)400、NICKELVAC(登録商標)400、NICORROS(登録商標)400等のUNS:N04400)、ニッケル−コバルト−クロム−モリブデン合金(例えば、MP35−N(登録商標)等のUNS:R30035)、ニッケル−モリブデン合金(HASTELLOY(登録商標)ALLOY B2(登録商標)等のUNS:N10665)、その他のニッケル−クロム合金、その他のニッケル−モリブデン合金、その他のニッケル−コバルト合金、その他のニッケル−鉄合金、その他のニッケル銅合金、その他のニッケル−タングステンまたはタングステン合金等のその他のニッケル合金、コバルト−クロム合金、コバルト−クロム−モリブデン合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)等のUNS:R30003)、白金富化ステンレス鋼、チタン、これらの組み合わせまたはその他の好適な材料が挙げられる。
【0050】
本明細書において示唆するように、市販のニッケル−チタンまたはニチノール合金の系統の中には、「線形弾性」または「非超弾性」と呼ばれるものがある。これらは、化学的には従来の形状記憶および超弾性の種類に類似しているものの、特異かつ有用な機械特性を有している。線形弾性および/または非超弾性のニチノールは、応力/歪み曲線において、超弾性ニチノールのように実質的な「超弾性プラトー(plateau)」または「フラグ(flag)領域」を示さないという点で、超弾性ニチノールと異なっている。代りに、線形弾性および/または非超弾性ニチノールでは、回復可能な歪みが増加するに従い、塑性変形が始まるまで実質的に線形関係、ある程度線形であるが必ずしも完全に線形ではない関係、または少なくとも超弾性ニチノールの超弾性プラトーおよび/またはフラグ領域よりも線形である関係において応力が増加し続ける。したがって、本開示において、線形弾性および/または非超弾性ニチノールはまた、「実質的に」線形弾性および/または非超弾性ニチノールとも称する。
【0051】
線形弾性および/または非超弾性ニチノールと超弾性ニチノールとの他の相違点は、線形弾性および/または非超弾性ニチノールは実質的に弾性の状態(塑性変形前等)において最大約2%〜5%の歪みを許容し、一方、超弾性ニチノールは塑性変形前に最大約8%の歪みを許容する点である。これらの材料は、塑性変形前に約0.2%〜0.44%の歪みしか許容することができないステンレス鋼等の他の線形弾性材料から区別される(その組成によっても区別される)。
【0052】
いくつかの実施形態では、線形弾性および/または非超弾性ニッケル−チタン合金は、示差走査熱量計(DSC)および動的金属熱分析(DMTA)分析によって広い温度範囲にわたって検出可能ないかなるマルテンサイト相/オーステナイト相変化も示さない合金である。例えば、いくつかの実施形態では、線形弾性および/または非超弾性のニッケル−チタン合金について、約−60℃〜約120℃の範囲においてDSCおよびDMTA分析により検出可能なマルテンサイト相/オーステナイト相変化が発生しない。したがって、こうした材料の機械的曲げ特性は、この非常に広い温度範囲にわたる温度の影響に対して実質的に不活性である。いくつかの実施形態では、周囲温度または室温における線形弾性および/または非超弾性のニッケル−チタン合金の機械的曲げ特性は、超弾性プラトーおよび/またはフラグ領域を示さないという点で、例えば体温における機械特性と実質的に同じである。つまり、線形弾性および/または非超弾性のニッケルチタン合金は、広い温度範囲にわたってその線形弾性および/または非超弾性特徴および/または特性を維持する。
【0053】
いくつかの実施形態においては、線形弾性および/または非超弾性のニッケル−チタン合金は、約50重量%〜約60重量%の範囲のニッケルを含み、残りは実質的にチタンである。いくつかの実施形態では、組成物は、約54重量%〜約57重量%の範囲のニッケルを含む。好適なニッケル−チタン合金の一例は、神奈川県の株式会社古河テクノマテリアルから市販されているFHP−NT合金である。他の好適な材料としては、ウルタニウム(ULTANIUM)(商標)(ネオ−メトリクス社(Neo−Metrics)から入手可能)およびガムメタル(GUM METAL)(商標)(豊田中央研究所から入手可能)を挙げることができる。他のいくつかの実施形態において、所望の特性を得るために、超弾性合金、例えば超弾性ニチノールを用いることができる。
【0054】
少なくともいくつかの実施形態では、システム10の一部または全部ならびに/またはその構成要素は、放射線不透過性物質がドープされているか、放射線不透過性物質から形成されているか、他の方法により放射線不透過性材料を含んでいる。放射線不透過性材料は、医療処置の間にX線透視スクリーンまたは別の撮像技法において比較的明るい像を生成することのできる材料である。この比較的明るい像は、使用者が医療装置システム10の位置を特定するのに役立つ。放射線不透過性材料の例としては、金、白金、パラジウム、タンタル、タングステン合金、放射線不透過性充填材が装填されたポリマー材料等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、同じ結果を達成するように、他の放射線不透過性マーカバンドおよび/またはコイルを医療装置システム10の設計に組み込むことも可能である。
【0055】
いくつかの実施形態においては、医療装置システム10にある程度の磁気共鳴画像法(MRI)適合性が与えられる。例えば、システム10および/またはその構成要素もしくは各部分は、画像を実質的に歪めず実質的なアーチファクト(すなわち、画像における空隙)をもたらすことがない材料にて形成される。例えば、特定の強磁性材料は、MRI画像においてアーチファクトをもたらすことがあるため適していない。システム10は、MRI装置が撮像することができる材料から形成してもよい。これらの特性を有する材料としては、例えば、タングステン、コバルト−クロム−モリブデン合金(例えば、エルジロイ(ELGILOY)(登録商標)、フィノックス(PHYNOX)(登録商標)等のUNS:R30003)、ニッケル−コバルト−クロム−モリブデン合金(例えば、MP35−N(登録商標)等のUNS:R30035)、ニチノール等が挙げられる。
【0056】
いくつかの実施形態において、医療装置システム10の外面(例えば、送達システムの外面を含む)にサンドブラスト処理、ビーズブラスト処理、重曹ブラスト処理、電解研磨等を施すことができる。これらの実施形態および他のいくつかの実施形態において、コーティング、例えば潤滑性コーティング、親水性コーティング、保護コーティングまたは他の種類のコーティングを、シースの一部または全部に、あるいはシースが存在しない実施形態では送達システムまたは医療装置システム10の他の部分に施してもよい。フルオロポリマー等の疎水性コーティングによって、ガイドワイヤの操作性および器具交換性を向上させる乾式潤滑性が実現される。潤滑性コーティングは操縦性を向上させ、損傷部横断能力を向上させる。適切な潤滑性ポリマーは当該技術分野において周知であり、シリコーンおよびその他の同種のもの、高密度ポリエチレン(HDPE)等の親水性ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアリーレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース誘導体、アルギン、糖類、カプロラクトン等ならびにこれらの混合物および組み合わせを含んでもよい。適切な潤滑性、結合性および溶解性を有するコーティングを可能とするため、親水性ポリマー同士を組み合わせてもよいし、非水溶性化合物(いくつかのポリマーを含む)を配合してもよい。
【0057】
コーティングおよび/またはシースは、例えばコーティング、押出成形、共押出成形、断続層共押出成形(ILC)によって、またはいくつかのセグメントの端同士を融着させることによって形成できる。層はその基端から先端まで一定の剛性を有していてもよいし、緩やかに低下する剛性を有していてもよい。剛性の緩やかな低下はILCによる場合のように連続的であってもよいし、押出成形された別個の管状セグメントを相互に融着させる場合のように段階的であってもよい。外側の層はX線撮影による可視化を容易にするため、放射線不透過性充填材を含浸させることができる。当業者には、これらの材料を本発明の範囲から逸脱することなく広く変更可能であることが理解される。
【0058】
本開示は多くの点で単なる例示であると理解されるべきである。細部において、特に形状、寸法および工程の構成という点において、本発明の範囲を超えることなく変更可能である。これは適切な程度において、ある例示的な実施形態の任意の特徴を他の実施形態に用いることを含む。本発明の範囲は当然ながら、添付の特許請求の範囲の文言により定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B