特許第6861293号(P6861293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6861293水管理が最適化されたカスケード式燃料電池スタックおよび燃料電池システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861293
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】水管理が最適化されたカスケード式燃料電池スタックおよび燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/249 20160101AFI20210412BHJP
   H01M 8/24 20160101ALI20210412BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20210412BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20210412BHJP
   H01M 8/1067 20160101ALI20210412BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20210412BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20210412BHJP
【FI】
   H01M8/249
   H01M8/24
   H01M8/04 J
   H01M8/10 101
   H01M8/1067
   H01M4/86 M
   H01M8/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-547430(P2019-547430)
(86)(22)【出願日】2018年12月6日
(65)【公表番号】特表2020-509552(P2020-509552A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(86)【国際出願番号】EP2018083734
(87)【国際公開番号】WO2019141429
(87)【国際公開日】20190725
【審査請求日】2019年8月30日
(31)【優先権主張番号】102018200687.3
(32)【優先日】2018年1月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(73)【特許権者】
【識別番号】591037096
【氏名又は名称】フオルクスワーゲン・アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】エルマッツチェンコ,ナタリア
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヒューブナー,ゲロルト
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−151120(JP,A)
【文献】 特開2016−195105(JP,A)
【文献】 特開2004−067880(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/125749(WO,A1)
【文献】 特開2006−294594(JP,A)
【文献】 特開2011−198520(JP,A)
【文献】 特開2007−018821(JP,A)
【文献】 特開2009−230902(JP,A)
【文献】 特開2009−016074(JP,A)
【文献】 特表2018−511914(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2005−0004729(KR,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0207353(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/249
H01M 4/86
H01M 8/00
H01M 8/04
H01M 8/10
H01M 8/1067
H01M 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ膜電極アセンブリ(20)および少なくとも1つのガス拡散層(21)を有する複数の燃料セル(18)を備えた燃料電池スタック(5)であって、前記複数の燃料セル(18)は、該複数の燃料セル(18)のうちの一部を含む少なくとも1つの第1の燃料セルセグメント(22)と、該複数の燃料セル(18)のうちの別の部分を含む第2の燃料セルセグメント(23)と、に分割され、前記第1の燃料セルセグメント(22)および前記第2の燃料セルセグメント(23)は、共有の燃料電池カスケード部(24)に配置され、前記第1の燃料セルセグメント(22)が、作動媒体用の第1の回収入口ライン(25)と、第1の回収出口ライン(26)と、を備え、前記第1の回収出口ライン(26)は、前記第2の燃料セルセグメント(23)の第2の回収入口ライン(27)と一体的に形成され、前記第2の燃料セルセグメント(23)が、第2の回収出口ライン(28)を備えており、前記第2の燃料セルセグメント(23)内の膜電極アセンブリ(20)および/またはガス拡散層(21)は、前記第1の燃料セルセグメント(22)内の膜電極アセンブリ(20)およびガス拡散層(21)よりも撥水性が高くなるように設計され
前記第1の燃料セルセグメント(22)のガス拡散層(21)が、微孔質層およびマクロ孔質層を備え、前記第1の燃料セルセグメント(22)のガス拡散層(21)が、前記微孔質層および/または前記マクロ孔質層に親水性コーティングを備え、
前記第2の燃料セルセグメント(23)のガス拡散層(21)が、微孔質層およびマクロ孔質層を備え、前記第2の燃料セルセグメント(23)のガス拡散層(21)が、前記微孔質層および/または前記マクロ孔質層に疎水性コーティングを備えることを特徴とする、燃料電池スタック(5)。
【請求項2】
前記第1の燃料セルセグメント(22)の膜電極アセンブリ(20)の膜(19)の当量が、前記第2の燃料セルセグメント(23)の膜電極アセンブリ(20)の膜(19)の当量よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタック(5)。
【請求項3】
前記第1の燃料セルセグメント(22)の膜電極アセンブリ(20)の膜(19)の厚さが、前記第2の燃料セルセグメント(23)の膜電極アセンブリ(20)の膜(19)膜の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池スタック(5)。
【請求項4】
前記第1の燃料セルセグメント(22)の膜(19)の厚さが、4〜12マイクロメートルであり、前記第2の燃料セルセグメント(23)の膜(19)の厚さが、14〜35マイクロメートルであることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池スタック(5)。
【請求項5】
前記第2の燃料セルセグメント(23)のガス拡散層(21)の孔隙率が、前記第1の燃料セルセグメント(22)のそれよりも大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料電池スタック(5)。
【請求項6】
前記第2の燃料セルセグメント(23)のガス拡散層(21)は、疎水性コーティングを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料電池スタック(5)。
【請求項7】
前記膜電極アセンブリ(20)および/または前記ガス拡散層(21)が、前記第1の回収入口ライン(25)と前記第2の回収出口ライン(28)との間で進行する疎水性の勾配を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の燃料電池スタック(5)。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の燃料電池スタック(5)を備えた、自動車用燃料電池システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜電極アセンブリおよび少なくとも1つのガス拡散層を含む複数の燃料セルを備えた燃料電池スタックに関する。好ましくは、少なくとも2つのガス拡散層がそれぞれの場合に提供される。それらの燃料セルは、複数の燃料セルのうちの一部を含む少なくとも1つの第1の燃料セルセグメントと、複数の燃料セルのうちの別のまたはさらなる部分を含む第2の燃料セルセグメントと、に分割される。第1の燃料セルセグメントおよび第2の燃料セルセグメントは、共有の燃料電池カスケード部に配置される。第1の燃料セルセグメントは、作動媒体用の第1の回収入口ラインと、第2の燃料セルセグメントの第2の回収入口ラインと一体に形成された第1の回収出口ラインと、を備える。第2の燃料セルセグメントは、第2の回収出口ラインをさらに備える。本発明はさらに、そのような燃料電池スタックを備えた対応する燃料電池システムに関する。第1の回収出口ラインは、第2の回収入口ラインと一体的にまたは一体に形成され、単一(回収)コンポーネントとして理解されてもよい。
【背景技術】
【0002】
請求項1のプリアンブルに記載のそのようなカスケード状のすなわちカスケード式燃料電池スタックは、例えば、US2007/0128479A1に示されている。ここで、第1の燃料セルセグメントの回収出口ラインは、後続の第2の燃料セルセグメントの回収入口ラインも表す。そのようなカスケード式スタックの利点は、個々の燃料セルセグメントの化学量論が、燃料電池スタック全体または完全なスタックのそれよりも高いことである。最適な設計は、各セグメントに対して同じ化学量論を提供する。これは、2つの燃料セルセグメントにおける異なる数の燃料セルにより、既知のソリューションで実現される。作動媒体が第1の燃料セルセグメントに入るとき、作動媒体は、最適な反応プロセスを確実にするためにまず加湿されるべきであることがわかった。下流−2番目の燃料セルセグメントでは、水の蓄積のリスクがある。この水の蓄積により、動作が不安定になる。多くの場合、蓄積された水を除去するために、次いで化学量論の増加が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、水管理が最適化された安定した動作を達成するように、冒頭で述べたタイプの燃料電池スタックおよび燃料電池システムを改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
燃料電池スタックに関する目的は、請求項1の特徴を有する燃料電池スタックによって達成される。本発明の適切な改良を含む有利な実施形態は、従属クレームに記載されている。特に、本発明では、第2の燃料セルセグメント内の膜電極アセンブリおよび/またはガス拡散層は、第1の燃料セルセグメントよりも撥水性が高くなるように設計されている。これは、第2の燃料セルセグメントの構成要素が、第1の燃料セルセグメントの構成要素の場合よりも顕著な疎水性効果を有することを意味する。したがって、第1の燃料セルセグメントは、乾燥した入口条件および少量の水用に設計され、第2の燃料セルセグメントは、高ガス湿度および高水量用に設計される。
【0005】
例えば、第2の燃料セルセグメントのものとは異なる膜を第1の燃料セルセグメントで使用することができる。プロトン伝導膜の使用が有利であることが証明されており、これはパーフルオロスルホン酸(PFSA)ポリマーでできている。そのような膜は高い酸化安定性を有する。別法として、スルホン化炭化水素(HC)ポリマーを膜として使用してもよい。この膜は、膜の厚さを同じに保つ場合、パーフルオロスルホン酸ポリマー膜と比較して、気体透過が低いという特徴がある。このようにして、第1の燃料セルセグメントの膜電極アセンブリが第1のイオノマータイプの膜で作られ、第2の燃料セルセグメントの膜電極アセンブリの膜が第2のイオノマーで作られることが可能である。イオノマーの種類は、第1の燃料セルセグメントと比較してより撥水性の第2の燃料セルセグメントが作成されるように選択される。
【0006】
燃料電池スタックの可能な一実施形態では、第1の燃料セルセグメントの膜電極アセンブリの膜の当量は、第2の燃料セルセグメントの膜電極アセンブリの膜の当量よりも低い。より低い当量を有するイオノマーは、より高い当量を有するイオノマーよりも高い水貯蔵能力を有する。
【0007】
一般的には、膜電極アセンブリの電極(アノード/カソード)は、好ましくは骨格状の設計を有するイオノマーによって互いに接合された炭素ベースの担体を含む。それらの担体は、白金ナノ粒子などの触媒活性粒子を含むことができる。第1の燃料セルセグメントの電極のイオノマーの当量は、第2の燃料セルセグメントの電極のイオノマーの当量よりも低くてもよい。
【0008】
好ましくは、イオン伝導膜または電極のイオノマーの当量は、600グラムから1200グラムの間である。例えば、第1の燃料セルセグメントのイオン伝導膜または電極のイオノマーの当量は、600グラムから830グラムの間である。第2の燃料セルセグメントのイオン伝導膜または電極のイオノマーの当量は、好ましくは830グラムから1100グラム、さらに好ましくは900グラムから1000グラムである。
【0009】
別の好ましい実施形態では、第1の燃料セルセグメントの膜の厚さは、第2の燃料セルセグメントの膜の厚さよりも薄い。別の有利な実施形態では、第1の燃料セルセグメントの膜の厚さは4マイクロメートル(μm)〜12マイクロメートルであり、第2の燃料セルセグメントの膜の厚さは14マイクロメートル〜35マイクロメートルである。より薄い膜により、乾燥した使用条件下で水のバランスが改善され、水の輸送が促進される。
【0010】
別の代替実施形態は、第2の燃料セルセグメントのガス拡散層の孔隙率(porosity)が第1の燃料セルセグメントのそれよりも大きいことを特徴とする。孔隙率が高いほど、燃料電池スタック、特に第2の燃料セルセグメントからの、したがってより高い湿度が発生する場所での水の除去が促進される。例えば、第1の燃料セルセグメントのガス拡散層の平均孔径は5マイクロメートル未満であり、好ましくはさらに1マイクロメートル未満である。その場合、第2の燃料セルセグメントの平均孔径は、5マイクロメートルより大きく、例えば10マイクロメートルである。これにより、第2燃料セルセグメント内での水の吸収と、結果として生じる可能性のあるフラッディングを防止することができる。代替または追加として、第1の燃料セルセグメントのガス拡散層の厚さは、第2の燃料セルセグメントのガス拡散層の厚さよりも薄くすることができる。
【0011】
第2の燃料セルセグメントからの水の除去をさらに促進するために、第2の燃料セルセグメントのガス拡散層が疎水性コーティングを含むことが有利であることが証明された。この疎水性コーティングは、例えば、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、エチレン、プロピレンおよびヘキサフルオロプロピレンから作られたポリマーおよびコポリマーであり得る。例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリ(テトラフルオロエチレン−CO−エチレン)の溶液または分散液を使用して、ガス拡散層をコーティング、処理、または含浸することができる。
【0012】
ガス拡散層はまた、マルチピース設計を有することができ、微孔質層(microporous layer)とマクロ孔質層(macroporous layer)を備えうる。微孔質層は、5マイクロメートル未満、好ましくは1マイクロメートル未満の平均孔径を有することができる。マクロ孔質層は、5マイクロメートルを超える平均孔径を有する。第2の燃料セルセグメントにおけるガス拡散層の微孔質層および/またはマクロ孔質層は、疎水性コーティングを備えうるが、第1の燃料セルセグメントにおけるガス拡散層の微孔質層および/またはマクロ孔質層は、別の実施形態では、親水性コーティングを備えうる。典型的な親水性コーティングは、酸化スズ(SnO2)、二酸化チタン(TiO2)、カーボンブラック(BlackPearls(登録商標)1000または2000など)、またはそれらの混合物から形成される。これにより、第2の燃料セルセグメントの構成要素は、第1の燃料セルセグメントの構成要素よりも撥水性が高くなる。
【0013】
代替または追加として、燃料電池は、反応媒体を供給するための流れ場を含む1つまたは複数のバイポーラプレートを含むことができる。好ましくは、第1の燃料セルセグメントのバイポーラプレートは親水性コーティングを備えており、これらをより親水性(water-attracting)にする。代替または追加として、第2の燃料セルセグメントのバイポーラプレートには疎水性コーティングが施され、これらの撥水性を高めている。
【0014】
代替または追加として、燃料電池スタックは、膜電極アセンブリおよび/またはガス拡散層が、第1の回収入口ラインと第2の回収出口ラインとの間で進行する疎水性の勾配を有するように設計することもできる。この疎水性の勾配の結果として、入口側により近接して位置するカスケード式燃料電池スタックのセクションは、出口側により近接して位置するセクションよりも多くの水を引き付ける。言い換えれば、入口側は出口側よりも水を引き付ける。
【0015】
自動車用の燃料電池システムに関する目的は、請求項10に記載の燃料電池システムによって達成される。
【0016】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、特許請求の範囲、以下の説明から、および図面に基づいて明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】カスケード式燃料電池スタックを含む、本発明に係る燃料電池システムの概略図である。
図2】カスケード式燃料電池スタックの概略図である。
図3】燃料セル(ユニットセル)の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、カソード側に加湿器2を備えた燃料電池システム1を示す。加湿器2は、そのカソード側出口3により、カソード供給ライン4を介してカスケード式燃料電池スタック5のカソード室に接続されている。さらに、加湿器2は、カソード側入口6により、カソード排気ガスライン7を介してカソード室に接続されており、それにより未反応のカソードガスまたは湿ったカソード排気ガスが加湿器2に再循環される。カソード室を通して、カソードガス(空気または酸素など)をカスケード式燃料電池スタック5に配置された複数の燃料セル18のカソード30に再循環させることができる。カソードガスは、圧縮機13を介して吸い込まれ、次いで供給ライン14に導入される。図示の例では、流入する圧縮カソードガスは、加湿のために加湿器2のカソードガス入口15に供給される前に(伝熱式)熱交換器16を通して冷却される。加湿器2は、多数の水蒸気透過性加湿器膜で形成されており、カソード排気ガスから水分を回収するように設計されている。水分は、圧縮機側の加湿器2に流入するカソードガスに供給される。残りの排気ガスは、排気ガスライン17を介して加湿器2から放出される。プロトン伝導膜19は、カソード30を燃料セル18のアノード31から分離し、アノード室を介してアノード31へと燃料(水素など)を供給することができる。この目的のために、アノード室はアノード供給ライン8を介して燃料貯蔵タンク9に接続される。アノード31で反応しなかった燃料は、アノード再循環ライン10を介して再びアノード室に供給される。好ましくは、詳細には示されていない再循環ファンが、アノード再循環に割り当てられる、すなわちアノード再循環ライン10に流体機械的に結合される。燃料の供給を調節するように、燃料制御要素11がアノード供給ライン8に割り当てられる、すなわちアノード供給ライン8に配置される。この燃料制御要素11は、好ましくは圧力制御弁として設計される。図示の例では、燃料の温度を加熱または制御するように、復熱装置の形態の熱交換器12が圧力制御弁の上流に設けられる。
【0019】
図2は、カスケード式燃料電池スタック5をより詳細に示す。「カスケード式(cascaded)」とは、燃料電池スタック5の翼列状すなわちカスケード状の組成物またはカスケード状の構造を意味すると理解されるものとする。燃料電池スタック5は、複数の燃料セル18の一部を含む第1の燃料セルセグメント22(図の下部)と、複数の燃料電池18の異なる、好ましくは相補的な一部を含む第2の燃料セルセグメント23(図の上部)と、に分割される。第1の燃料セルセグメント22および第2の燃料セルセグメント23は、共有する燃料電池カスケード部24に配置される。燃料電池スタック5は、カソードガス(空気または酸素など)、アノードガス(水素など)、またはその両方の作動媒体に関してカスケード構造を有する。
【0020】
図2は、作動媒体またはガス質量流の流れ33を示しており、カスケード状の設計の結果として複数の偏向(deflection)を受ける。燃料電池スタック5に作動媒体を供給することができるように、第1の燃料セルセグメント22は、第1の回収入口ライン25を備える。第1の回収入口ライン25に供給される作動媒体は、複数の燃料電池セル18に、特に側面または横方向に(またはバイポーラプレート34によって提供される作動媒体室へと流れ場を通して)供給され、そこで作動媒体は、第1の回収入口ライン25の反対側に配置された第1の燃料セルセグメント22の側において再び燃料セル18を出る前に、少なくとも部分的に消費され、第1の回収出口ライン26へと流入する。第1の回収出口ライン26は、第2の燃料セルセグメント23の第2の回収入口ライン27と一体的にまたは一体に形成される。次に、作動媒体は、第2の燃料セルセグメント23の複数の燃料電池セル18に、特に側面または横方向に(または、バイポーラプレート34によって提供される作動媒体室へと流れ場を介して)供給され、そこで作動媒体の別の部分が消費される。その後、−少なくとも部分的にさらに消費された−作動媒体は、第2燃料セルセグメント23の複数の燃料セル18を出て、第2の回収出口ライン28へと流入する。第2回収出口ライン28から、作動媒体排気ガスは、次いで、例えば燃料電池スタック5を出て、別の隣接する燃料セルセグメント22,23に流入しうる。
【0021】
この例では、第1の回収入口ライン25および第2の回収出口ライン28は共用のラインとして形成されるが、ここでは、第1の燃料セルセグメント22を第2の燃料セルセグメント23から分離するための遮断部29すなわち隔壁を含む。第1の燃料セルセグメント22内の燃料セル18の数および第2の燃料セルセグメント23内の燃料セル18の数は、この隔壁29の位置の関数として確立することができる。
【0022】
図2に示されるカスケード式燃料電池スタック5では、燃料セル18の、約70パーセント(の第1の燃料セルセグメント22)に対する約30パーセント(の第2の燃料セルセグメント23)の分割を例として示す。しかしながら、他の分割が可能であり、他の分割は、特に隔壁29の位置に起因して生じる。
【0023】
図3は、カスケード式燃料電池スタック5のセグメントで使用される例としての燃料セル18を示す。この例では、2つのガス拡散層21が割り当てられた膜電極アセンブリ20を含む。しかしながら、それらのガス拡散層21は、膜電極アセンブリ20の電極を直接形成することもできる。いずれの場合でも、膜電極アセンブリ20は、第1の電極(カソード30)および第2の電極(アノード31)を含み、それらの電極は互いにプロトン伝導膜19によって離間される。2つの電極にはそれぞれ、ガス拡散層21の1つが割り当てられており、電極、ひいては膜19の表面全体に亘ってそれぞれの作動媒体を均一に分配している。作動媒体の分配を向上させるように、ガス拡散層21は、電極に隣接してまたは電極の近くに配置された微孔質層32と、微孔質層32に隣接するマクロ孔質層33と、を備える。微孔質層32の孔径はマクロ孔質層33の孔径に比べて著しく小さい。それらの流れ場により、ガス拡散層21の隣に配置されたバイポーラプレート34が、燃料セル18のカソードまたはアノード室を提供する。明確にするために、これらをガス拡散層21からオフセットして示すが、圧縮時にはその上に載る。
【0024】
この例では、第1の燃料セルセグメント22の燃料セル18は、実質的に撥水性の構造を有することにより、第2の燃料セルセグメント23の燃料セルとは異なる。第1の燃料セルセグメント22の燃料セル18および第2の燃料セルセグメント23の燃料セル18の異なる構造は、図2において異なる線の太さで示されている。2つのセグメントの燃料セル18は、膜19の当量に関して、膜19に使用されるイオノマーの種類に関して、膜19の厚さに関して、ガス拡散層21の厚さに関して、ガス拡散層21内および/または膜19内の孔径に関して、および、それらの熱伝導率または水輸送および貯蔵能力に関して、互いに異なり得る。
【0025】
一方、設計パラメーターは常に、燃料電池スタック5全体で化学量論を増加させることなく安定した動作を確保できるように選択される。
【符号の説明】
【0026】
1…燃料電池システム
2…加湿器
3…出口
4…カソード供給ライン
5…燃料電池スタック
6…入口
7…カソード排気ガスライン
8…アノード供給ライン
9…燃料貯蔵タンク
10…アノード再循環ライン
11…燃料制御要素
12…熱交換器
13…圧縮機
14…供給ライン
15…カソードガス入口
16…熱交換器
17…排気ガスライン
18…燃料セル
19…膜
20…膜電極アセンブリ(MEA)
21…ガス拡散層
22…第1の燃料セルセグメント
23…第2の燃料セルセグメント
24…燃料電池カスケード部(fuel cell cascade)
25…第1の回収入口ライン(collection inlet line)
26…第1の回収出口ライン(collection outlet line)
27…第2の回収入口ライン
28…第2の回収出口ライン
29…遮断部(隔壁)
30…カソード
31…アノード
32…微孔質層(microporous layer)
33…マクロ孔質層(macroporous layer)
34…(流れ場を有する)バイポーラプレート
35…作動媒体の流れ
図1
図2
図3