特許第6861294号(P6861294)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861294
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】内側シャフトを含む送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20210412BHJP
   A61F 2/24 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   A61F2/966
   A61F2/24
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-547500(P2019-547500)
(86)(22)【出願日】2018年3月14日
(65)【公表番号】特表2020-508787(P2020-508787A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(86)【国際出願番号】US2018022371
(87)【国際公開番号】WO2018170088
(87)【国際公開日】20180920
【審査請求日】2019年8月30日
(31)【優先権主張番号】62/471,100
(32)【優先日】2017年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ポッペ、ケビン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】フォスター、ダニエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スウェラ、ブラッドリー エス.
(72)【発明者】
【氏名】シェフ、クリストファー ジェイ
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−501680(JP,A)
【文献】 特開2012−223578(JP,A)
【文献】 特表2013−524943(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0247868(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/95 − 2/97
A61F 2/24
A61M 25/00 − 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植え込み可能な医療デバイスの送達システムであって、
近位端領域、遠位端領域、これらを通って延在する非円形のルーメンを有する内側シャフト、及び、前記近位端領域と前記遠位端領域との間に少なくとも部分的に延在する引張抵抗部材と、
前記非円形のルーメン内に延在する第1の筒状部材であって、内部に延在するガイドワイヤを受け入れるように設計されている第1の筒状部材と、
前記内側シャフトの外面に沿って配置される展開カテーテルと、
前記非円形のルーメン内に配置される作動シャフトとを備え、
前記作動シャフトは、前記植え込み可能な医療デバイスに連結され、
前記作動シャフトの並進移動によって、前記植え込み可能な医療デバイスが第1の位置から第2の位置にシフトする、送達システム。
【請求項2】
前記植え込み可能な医療デバイスは、植え込み可能な心臓弁を含む、請求項1に記載の送達システム。
【請求項3】
前記内側シャフトは、前記内側シャフトの両側に沿って配置される一対の引張抵抗部材を含む、請求項1又は2に記載の送達システム。
【請求項4】
前記送達システムは、前記非円形のルーメン内に配置される一対の作動シャフトを、更に備え、前記非円形のルーメンは、前記ルーメン内の前記作動シャフトの捩れを制限するように設計されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項5】
前記内側シャフトは、前記展開カテーテルに対して回転するか、並進移動するか、又は、回転及び並進移動の双方を行うように構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項6】
前記送達システムは、前記非円形のルーメン内に延在する第2の筒状部材を、更に備え、作動シャフトは、前記第2の筒状部材内に延在する、請求項に記載の送達システム。
【請求項7】
前記非円形のルーメンは、前記第1の筒状部材及び前記第2の筒状部材の捩れを制限するように設計されている、請求項に記載の送達システム。
【請求項8】
前記引張抵抗部材は、金属ワイヤを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項9】
前記引張抵抗部材は、ポリマーを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項10】
植え込み可能な心臓弁の送達システムであって、
遠位端領域、内部を通って延在する卵型のルーメン、及び、近位端領域と前記遠位端領域との間に少なくとも部分的に延在する引張抵抗部材を有する内側シャフト
前記卵型のルーメン内に延在する第1の筒状部材であって、内部に延在するガイドワイヤを受け入れるように設計されている第1の筒状部材と、
前記内側シャフトの外面に沿って配置される展開カテーテルと、
前記卵型のルーメン内に配置される作動シャフトを備え、
前記作動シャフトは、前記植え込み可能な医療デバイスに連結され、
前記作動シャフトの並進移動によって、前記心臓弁が第1の位置から第2の位置にシフトする、送達システム。
【請求項11】
前記内側シャフトは、前記内側シャフトの両側に沿って配置される一対の引張抵抗部材を含む、請求項10に記載の送達システム。
【請求項12】
前記送達システムは、前記卵型のルーメン内に配置される一対の作動シャフトを、更に備え、前記卵型のルーメンは、前記卵型のルーメン内の前記作動シャフトの捩れを制限するように設計されている、請求項10又は11に記載の送達システム。
【請求項13】
前記送達システムは、前記卵型のルーメン内に延在する第2の筒状部材を、更に備え、作動シャフトは、前記第2の筒状部材内に延在する、請求項10に記載の送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内側シャフトを含む送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な体内の医療デバイスが、医学的用途、例えば血管内用途のために開発されている。これらのデバイスの幾つかは、ガイドワイヤ、カテーテル等を含む。これらのデバイスは、種々の異なる製造方法のいずれか1つによって製造され、種々の方法のいずれか1つに従って使用することができる。既知の医療デバイス及び方法のうち、それぞれが特定の利点及び欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
代替的な医療デバイス、並びに、医療デバイスを製造及び使用する代替的な方法を提供することが現在も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、医療デバイスの設計、材料、製造方法及び使用の代替案を提供する。植え込み可能な医療デバイスの例示的な送達システムは、近位端領域、遠位端領域、これらを通って延在する非円形のルーメンを有する内側シャフトを含む。送達システムは、近位端領域と遠位端領域との間に少なくとも部分的に延在する引張抵抗部材、シャフトの外面に沿って配置される展開カテーテル、及び、非円形のルーメン内に配置される作動シャフトも含む。さらに、作動シャフトは、植え込み可能な医療デバイスに連結され、作動シャフトの並進移動によって、植え込み可能な医療デバイスが第1の位置から第2の位置にシフトする。
【0005】
上記の実施形態のいずれかに対して代替的に又は付加的に、植え込み可能な医療デバイスは、植え込み可能な心臓弁を含む。
上記の実施形態のいずれかに対して代替的に又は付加的に、内側シャフトは、内側シャフトの両側に沿って配置される一対の引張抵抗部材を含む。
【0006】
上記の実施形態のいずれかに対して代替的に又は付加的に、非円形のルーメン内に配置される一対の作動シャフトを更に備え、非円形のルーメンは、ルーメン内の作動シャフトの捩れを制限するように設計されている。
【0007】
上記の実施形態のいずれかに対して代替的に又は付加的に、内側シャフトは、展開カテーテルに対して回転するか、並進移動するか、又は、回転及び並進移動の双方を行うように構成されている。
【0008】
上記の実施形態のいずれかに対して代替的に又は付加的に、非円形のルーメン内に延在する第1の筒状部材を更に備え、第1の筒状部材は、内部に延在するガイドワイヤを受け入れるように設計されている。
【0009】
上記の実施形態のいずれかに対して代替的に又は付加的に、非円形のルーメン内に延在する第2の筒状部材を更に備え、作動シャフトは第2の筒状部材内に延在する。
上記の実施形態のいずれかに対して代替的に又は付加的に、非円形のルーメンは、第1の筒状部材及び第2の筒状部材の捩れを制限するように設計されている。
【0010】
上記の実施形態のいずれかに対して代替的に又は付加的に、引張抵抗部材は金属ワイヤを含む。
上記の実施形態のいずれかに対して代替的に又は付加的に、引張抵抗部材はポリマーを含む。
【0011】
植え込み可能な心臓弁の別の例示的な送達システムは、遠位端領域、内部を通って延在する卵型の(ovular)ルーメン、及び、近位端領域と遠位端領域との間に少なくとも部分的に延在する引張抵抗部材を有する内側シャフト、シャフトの外面に沿って配置される展開カテーテル、並びに、卵型のルーメン内に配置される作動シャフトを備え、作動シャフトは植え込み可能な医療デバイスに連結され、作動シャフトの並進移動によって、心臓弁が第1の位置から第2の位置にシフトする。
【0012】
上記の実施形態のいずれかに対して代替的に又は付加的に、内側シャフトは、内側シャフトの両側に沿って配置される一対の引張抵抗部材を含む。
上記の実施形態のいずれかに対して代替的に又は付加的に、卵型のルーメン内に配置される一対の作動シャフトを更に備え、卵型のルーメンは、ルーメン内の作動シャフトの捩れを制限するように設計されている。
【0013】
上記の実施形態のいずれかに対して代替的に又は付加的に、卵型のルーメン内に延在する第1の筒状部材を更に備え、第1の筒状部材は、内部に延在するガイドワイヤを受け入れるように設計されている。
【0014】
上記の実施形態のいずれかに対して代替的に又は付加的に、卵型のルーメン内に延在する第2の筒状部材を更に備え、作動シャフトは第2の筒状部材内に延在する。
上記の実施形態のいずれかに対して代替的に又は付加的に、卵型のルーメンは、第1の筒状部材及び第2の筒状部材の捩れを制限するように設計されている。
【0015】
上記の実施形態のいずれかに対して代替的に又は付加的に、引張抵抗部材は金属ワイヤを含む。
上記の実施形態のいずれかに対して代替的に又は付加的に、引張抵抗部材はポリマーを含む。
【0016】
植え込み可能な医療デバイスを送達する方法であって、システムは、医療デバイス送達システムを心臓内の目的部位まで前進させることであって、医療デバイス送達システムは、近位端領域、遠位端領域、これらを通って延在する非円形のルーメン、及び、近位端領域と遠位端領域との間に少なくとも部分的に延在する引張抵抗部材を有する内側シャフト、シャフトの外面に沿って配置される展開カテーテル、
非円形のルーメン内に配置される作動シャフト、及び作動シャフトに連結される植え込み可能な心臓弁を含む、前進させること、展開カテーテルを内側シャフトに対して後退させること、作動シャフトを内側シャフトに対して並進移動させることであって、作動シャフトを並進移動させることによって、植え込み可能な医療デバイスが、折り畳まれた位置から展開された位置にシフトする、並進移動させることを含む、方法。
【0017】
上記の実施形態のいずれかに対して代替的に又は付加的に、植え込み可能な医療デバイスは植え込み可能な心臓弁を含む。
幾つかの実施形態の上記の概要は、本開示のそれぞれの開示される実施形態又は全ての実施態様を記載する意図はない。図面及び以下の詳細な説明がこれらの実施形態をより詳細に例示する。
【0018】
本開示は、添付の図面に関連して以下の詳細な説明を考慮してより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】例示的な医療デバイスシステムの側面図。
図2図1に示されている医療デバイスのシャフトの一部の斜視図。
図3図1及び図2に示されている医療デバイスシステムの例示的な内側カテーテルの斜視図。
図4図1及び図2に示されている医療デバイスシステムの別の例示的な内側カテーテルの斜視図である。
図5図4に示されている医療デバイスシステムの例示的な内側カテーテルの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、種々の変更形態及び代替的な形態に適しているが、その細部は、図面に例として示されており、詳細に記載される。しかし、記載される特定の実施形態に本開示を限定する意図はないことを理解されたい。それどころか、本開示の主旨及び範囲内に入る全ての変更形態、均等物及び代替形態を包含することが意図される。
【0021】
以下で定義される用語に関して、異なる定義が特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において与えられない限り、これらの定義が適用される。
本明細書において、全ての数値は、明示的に示されるか否かにかかわらず、「約」という用語によって修飾されることを前提とする。「約」という用語は、当業者が(例えば同じ機能又は結果を有する)記載した値に等しいとみなす数の範囲を概ね指す。多くの場合に、「約」という用語は、最も近い有効数字に四捨五入される数を含むことができる。
【0022】
終点による数値範囲の列挙は、その範囲内の全ての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「1つ(a、an)」及び「その」は、内容が明らかに別様に指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる場合、「又は」という用語は、内容が明らかに別様に指示しない限り、「及び/又は」を含む意味で概ね用いられる。
【0023】
明細書中における「実施形態」、「幾つかの実施形態」、「他の実施形態」等への言及は、記載される実施形態が1つ又は複数の特定の特徴、構造及び/又は特性を含み得ることを示すことに留意されたい。しかし、そのような記載は、全ての実施形態がその特定の特徴、構造及び/又は特性を含むことを必ずしも意味しない。その上、特定の特徴、構造及び/又は特性が1つの実施形態に関連して記載される場合、明らかにそれとは反対のことが述べられていない限り、明示的に記載されるか否かにかかわらず、そのような特徴、構造及び/又は特性を他の実施形態と関連して使用してもよいことを理解されたい。
【0024】
以下の詳細な説明は、異なる図面における同様の要素が同じ符号で示される図面を参照して読むべきである。必ずしも一定の尺度で描かれていない図面は、例示的な実施形態を示しており、本発明の範囲を限定する意図はない。
【0025】
心血管系に影響を与える疾患及び/又は医学的状態は、世界中でよく見られる。従来から、心血管系の治療は、多くの場合、系の影響を受けた部分に直接アクセスすることにより行われていた。例えば、冠動脈の1つ又は複数における閉塞の治療は、従来は、冠動脈バイパス手術を用いて治療されていた。容易に認識されるように、そのような治療法は、患者に対して相当に侵襲的であり、かなりの回復時間及び/又は治療を必要とする。より最近では、低侵襲的な治療法が開発されてきており、例えば、閉塞した冠動脈に経皮的カテーテルによってアクセスして、閉塞した冠動脈を治療することができる(例えば血管形成術)。そのような治療法は患者及び臨床医の間で広く受け入れられている。
【0026】
幾つかの比較的一般的な医学的状態は、心臓内の弁のうちの1つ又は複数の非効率、無効若しくは完全な不全を含むか、それらの結果であり得る。例えば、大動脈弁又は僧房弁の不全はヒトに対して深刻な影響を有する可能性があり、適切に対処しなければ深刻な健康状態及び/又は死亡につながることがある。障害のある心臓弁の治療は、この治療が多くの場合に障害のある弁の修復又は完全な置換を必要とするという点で、他の課題をもたらす。そのような治療法は患者に対してかなり侵襲的であり得る。本明細書において開示されるのは、心血管系を診断、治療及び/又は修復するため、心血管系の一部に医療デバイスを送達するのに用いられ得る医療デバイスである。本明細書において開示される医療デバイスのうちの少なくとも幾つかは、置換心臓弁(例えば置換大動脈弁、置換僧帽弁等)を送達して植え込むために用いられ得る。加えて、本明細書において開示されるデバイスは、置換心臓弁を経皮的に送達することができ、したがって、患者に対して非常に低侵襲的であり得る。本明細書において開示されるデバイスはまた、以下でより詳細に記載するように、多くの付加的な望ましい特徴及び利点も提供することができる。
【0027】
図面は、例えば、図1に概略的に示されている医療デバイスシステム10の選択された構成要素及び/又は配置を示している。いずれかの図面において、医療デバイスシステム10の幾つかの特徴は、簡略化するために示されない場合があるか、概略的に示される場合があることに留意されたい。医療デバイスシステム10の構成要素の幾つかに関する更なる詳細は、他の図面に、より詳細に示される場合がある。医療デバイスシステム10を使用して、種々の医療デバイスを、生体構造内の多くの位置に送達及び/又は展開することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、医療デバイスシステム10は、置換/人工心臓弁等の医療用インプラント16の経皮的送達に使用することができる置換心臓弁送達システム(例えば、置換大動脈弁送達システム)を含むことができる。しかし、これは、医療デバイスシステム10を、弁の修復、弁形成、植え込み可能な医療デバイス(例えばステント、グラフト等といった)の送達等を含む他の介入、又は、他の同様の介入に使用してもよいため、限定的であることを意図しない。
【0028】
医療デバイスシステム10は、概して、外側シース12と、外側シース12のルーメンを少なくとも部分的に通って延在する内側カテーテル14(一部が図1に二点鎖線で示されている)と、内側カテーテル14に連結されかつその送達中に外側シース12のルーメン内に配置される医療用インプラント16(例えば置換心臓弁インプラント)とを含むカテーテルシステムとして記載することができる。幾つかの実施形態では、医療デバイスのハンドル18を、外側シース12及び/又は内側カテーテル14の近位端に配置することができ、これらに関連付けられる1つ又は複数の作動機構を含むことができる。換言すると、筒状部材(例えば、外側シース12、内側カテーテル14等)が、医療デバイスのハンドル18から遠位に延在することができる。概して、医療デバイスのハンドル18は、内側カテーテル14に対する外側シース12の位置を操作し、及び/又は、医療用インプラント16の展開を支援するように設計することができる。
【0029】
使用時に、医療デバイスシステム10は、関心領域及び/又は治療位置に隣接する位置まで、血管系を通して、経皮的に前進させることができる。例えば、幾つかの実施形態では、医療デバイスシステム10を、障害のある生来の弁(例えば、大動脈弁、僧帽弁等)に隣接する位置まで、血管系を通して、前進させることができる。障害のある大動脈弁及び/又は他の心臓弁(複数の場合もあり)を治療するための代替的な手法も、医療デバイスシステム10を用いて意図される。送達中に、医療用インプラント16は、例えば図1において概略的に見られるように、ルーメン及び/又は外側シース12の遠位端の内側に、細長い小型の「送達」形態で配置されることが一般的である。外側シース12は、位置決めされると、医療用インプラント16及び/又は内側カテーテル14に対して後退し、医療用インプラント16を露出させることができる。幾つかの場合、医療用インプラント16は、医療用インプラント16の露出によって医療用インプラント16を展開することができるように、自己拡張型であり得る。代替的には、医療用インプラント16を、生体構造内への植え込みに適した概ね短縮されたより大型の「展開」形態に変換させるために、医療デバイスのハンドル18を使用して、医療用インプラント16を拡張/展開することができる。例えば、幾つかの場合、内側カテーテル(又はその構成要素)を、医療用インプラント16に連結することができ、それによって、外側シース12及び/又は医療用インプラント16に対する内側カテーテル14の作動によって、医療デバイス16を生体構造内で展開させることができる。医療用インプラント16が生体構造内で好適に展開されると、医療デバイスシステム10を医療用インプラント16から分離、離脱及び/又は解放することができ、医療デバイスシステム10を血管系から取り出すことができ、医療用インプラント16を「解放」形態で適所に残す。
【0030】
植え込み可能な医療デバイス(例えば医療用インプラント16)の送達及び/又は、展開中に、医療デバイスシステム10の部分を、蛇行性の及び/又は狭い体腔を通して、前進させる必要があることを認識することができる。したがって、システムの十分な強度(圧縮、捩れ等)及び可撓性を全体として維持しながらも、医療デバイスの部分の外形を縮小する医療用送達システム(例えば、医療デバイスシステム10及び/又は他の医療デバイス等)の構成要素及び設計を使用することが望ましい。
【0031】
図2は、システムの十分な強度(圧縮、捩れ等)及び可撓性を全体として維持しながらも、医療デバイスの部分の外形を縮小することができる例示的なシャフト20の一部を示している。幾つかの場合、シャフト20は、図1に示されている医療デバイスシステム10内の内側カテーテル14として使用することができる。しかし、シャフト20は、医療デバイスシステム10の他の構成要素、異なる医療デバイスシステム(例えば、ステント送達システム、血管形成システム、生検システム等)の構成要素、外形が縮小された設計が必要とされ得る任意の他の医療デバイス等であってもよい。
【0032】
シャフト20は、内側部材又はライナ22を含むことができる。内側ライナ22は、本明細書において説明されるような複数の特徴を含むことができる。外側部材28を、内側ライナ22の外面に沿って配置することができる。外側部材28は、ライナ22に対して並進移動及び/又は回転するように設計することができる。例えば、シャフト20が生体構造を通して前進されると、外側部材28内でライナ22を長手方向に並進移動させるか、ライナ22が径方向に捩られることを認識することができる。
【0033】
内側ライナ22は、複数の特徴を含むことができる。例えば、内側ライナ22は、1つ又は複数の引張抵抗部材30a/30bを含むことができる。引張抵抗部材30a/30bは、ワイヤ(例えば金属ワイヤ)、紐、ケーブル、撚られたケーブル、複合構造等の形態をとることができる。1つの例では、引張抵抗部材30a/30bはともに金属ワイヤである。別の場合では、引張抵抗部材30a/30bはともに金属の紐である。紐は、好適なポリマー又は金属(例えばアラミド)からなる軸方向ワイヤを、更に含むことができる。引張抵抗部材30a/30bは、同じ材料から形成されるか、及び/又は、同じ構造を有することができる。代替的には、引張抵抗部材30a/30bは、互いに異なってもよい。さらに、図2は、内側ライナ22が2つの引張抵抗部材30a/30bを含むことを示しているが、これは、限定されることを意図しない。1つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ又はそれ以上等の、他の数の引張抵抗部材30a/30bが意図される。
【0034】
内側ライナ22は、ルーメン32も含むことができる。幾つかの場合、第1の筒状部材34をルーメン32内に配置することができる。第1の筒状部材34は、ガイドワイヤルーメン35を画定する。ガイドワイヤ36は、ガイドワイヤルーメン35を通って延在する。第2の筒状部材38も、ルーメン32内に配置することができる。第2の筒状部材38は、ルーメン39を画定する。作動部材40は、ルーメン39を通って延在する。上述したように、作動部材40は、医療用インプラント16に連結及び/又は取り付けることができる。作動部材40の並進移動によって、インプラント16を、第1の折り畳まれた形態から、第2の展開された形態にシフトさせることができる。
【0035】
図3は、図1図2に関して記載したライナ22を示している。図3に示されており、また上述したように、ライナ22は、ルーメン32の両側に位置決めされる一対の引張抵抗部材30a/30bを含むことができる。図3は、ルーメン32の形状を、第1の筒状部材34及び第2の筒状部材38が互いに捩れることを制限するように設計できることを、更に示している。例えば、図3は、ルーメン32が非円形であり得ることを示している。例えば、ルーメン32の形状は、卵型、正方形、矩形、三角形、それらの組み合わせ等であってもよい。これらは例に過ぎない。内側ライナ22は形状を変えることができる。例えば、内側ライナ22は、単一のルーメン又は複数のルーメンと組み合わせた種々の形状を含むことができる。さらに、ライナ22には、ルーメンがなくてもよい。
【0036】
ライナ22が外側部材28のルーメン内で回転するとき、ルーメン32の非円形形状によって、第1の筒状部材34及び第2の筒状部材38の双方を、図2に示されているようにそれらの空間的な関係にして維持することができる。換言すると、ルーメン32の形状によって、第1の筒状部材34及び第2の筒状部材38を、ライナ22の曲げ、回転、撓み等に関係なく、それらの相対位置を維持することができる。
【0037】
図2は、ルーメン32が第1の筒状部材34及び第2の筒状部材38を収容するように設計されていることを示しているが、ルーメン32は、2つよりも多いか又は少ない筒状部材を収容するように構成することができる。例えば、ルーメン32は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ又はそれ以上のルーメンを収容するような形状にすることができる。さらに、ルーメン32の特定の形状を、一緒にまとめられた任意の数のルーメンの外形に適合するように設計することができる。例えば、図示されていないが、三角形のルーメン32が、互いにおよそ120度オフセットされてまとめられた3つの円形の筒状部材の外形に適合することを認識することができる。これは限定されることを意図しない。むしろ、ルーメン32は、任意の所与の外形を有する筒状部材の任意の集まりの外形に適合する形状にすることができる。上記で説明したように、ルーメン32の形状を、内部に位置決めされる筒状部材の外形と適合させることは、ルーメン32内で筒状部材が互いに巻き付く能力を、制限する。
【0038】
ルーメン32の形状を変えることは、ライナ22の全体的な外形、及び、拡張によるシャフト20の全体的な外形を縮小することに寄与することを、更に認識することができる。例えば、ルーメン32の形状を変えることは、ライナ22内に延在する個々のルーメンを隔てる肉厚の低減を可能にする。個々のルーメンを隔てる肉厚を低減することは、ライナ22及び/又はシャフト20の全体的な外形を、既存のライナ/シャフト設計よりもはるかに小さくすることを可能にする。
【0039】
その上、ライナ22の外面の外形の形状を変えることが望ましい場合があることを認識することができる。例えば、図4は、別の例示的なライナ122を示している。ライナ122は、本明細書において説明される他のライナと形状及び機能が同様とすることができる。例えば、ライナ122は、内側ルーメン132及び2つの引張抵抗部材130a/130bを含むことができる。しかし、図4に示されているように、ライナ122は、その長さに沿って延在する1つ又は複数の長手方向に延在するチャネル121(例えば、溝、谷等)を含む外面の外形であってもよい。図4に示されているように、チャネル121のそれぞれは、幾つかの例では、内側ルーメン132及び2つの引張抵抗部材130a/130bの外形に従う湾曲した部分を含むことができる。
【0040】
図5は、図4に示されている内側ライナ122の断面図を示している。しかし、図5は、内側ライナ122にわたって位置決めされる(上記で説明した外側部材28と形状及び機能が同様であり得る)外側部材128を、更に示している。図5から、チャネル121の1つ又は複数は、内側ライナ122の外面と外側部材128の内面との間をライナ122及び外側部材128の長さで延在する1つ又は複数の「疑似ルーメン」(例えば、スペース、開口、孔等)を形成することを認識することができる。幾つかの場合、ワイヤ、ケーブル等を、チャネル121を通して延在(例えば位置決め)させることが望ましい場合がある。チャネル121を通って延在することができるワイヤ、ケーブル等は、2つの引張抵抗部材130a/130bに対して付加的であることが意図される。
【0041】
本明細書において開示される医療デバイス及び/又はシステムの種々の構成要素(例えば、シャフト20及び/又は本明細書において開示される他のシャフト)に用いることができる材料は、一般に医療デバイスに関連するものを含み得る。簡潔さのため、以下の説明は、シャフト20に言及する。しかし、その説明が、種々のビード部材、バレル部材等を含み、本明細書に開示される医療デバイス及び/又はシステムの他のシャフト及び/又は構成要素に適用されてもよいため、本明細書に記載されるデバイス及び方法を限定することを意図しない。
【0042】
シャフト20は、金属、合金、ポリマー(この幾つかの例を以下で開示する)、金属−ポリマー複合体、セラミック、これらの組み合わせ等、又は、他の好適な材料から形成することができる。好適なポリマーの幾つかの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えばDuPontから入手可能なDELRIN(登録商標))、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン(例えば、ポリウレタン85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテル−エステル(例えば、DSM Engineering Plasticsから入手可能なARNITEL(登録商標))、エーテル系又はエステル系コポリマー(例えば、ブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレート及び/又はDuPontから入手可能なHYTREL(登録商標)等の他のポリエステルエラストマー)、ポリアミド(例えば、Bayerから入手可能なDURETHAN(登録商標)、又は、Elf Atochemから入手可能なCRISTAMID(登録商標))、弾性ポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(PEBA、例えば、PEBAX(登録商標)という商品名で入手可能)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエステル、Marlex高密度ポリエチレン、Marlex低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン(例えば、REXELL(登録商標))、超高分子量(UHMW)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(例えば、KEVLAR(登録商標))、ポリスルホン、ナイロン、ナイロン12(EMS American Grilonから入手可能なGRILAMID(登録商標)等)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ(スチレン−b−イソブチレン−b−スチレン)(例えば、SIBS及び/又はSIBS50A)、ポリカーボネート、イオノマー、生体適合性ポリマー、他の好適な材料、又は、それらの混合物、組み合わせ、コポリマー、ポリマー/金属複合材等が挙げられる。幾つかの実施形態では、シースには、液晶ポリマー(LCP)を混ぜることができる。
【0043】
好適な金属及び合金の幾つかの例としては、304V、304L及び316LVステンレス鋼等のステンレス鋼;軟鋼;線形弾性及び/又は超弾性ニチノール等のニッケル−チタン合金;ニッケル−クロム−モリブデン合金等の他のニッケル合金(例えば、INCONEL(登録商標)625等のUNS:N06625、HASTELLOY(登録商標)C−22(登録商標)等のUNS:N06022、HASTELLOY(登録商標)C276(登録商標)等のUNS:N10276、他のHASTELLOY(登録商標)合金等)、ニッケル−銅合金(例えば、MONEL(登録商標)400、NICKELVAC(登録商標)400、NICORROS(登録商標)400等のようなUNS:N04400)、ニッケル−コバルト−クロム−モリブデン合金(例えば、MP35−N(登録商標)等のようなUNS:R30035)、ニッケル−モリブデン合金(例えば、HASTELLOY(登録商標)ALLOY B2(登録商標)等のUNS:N10665)、他のニッケル−クロム合金、他のニッケル−モリブデン合金、他のニッケル−コバルト合金、他のニッケル−鉄合金、他のニッケル−銅合金、他のニッケル−タングステン合金又はタングステン合金等;コバルト−クロム合金;コバルト−クロム−モリブデン合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)等のようなUNS:R30003);白金富化(platinum enriched)ステンレス鋼;チタン;それらの組み合わせ等;又は任意の他の好適な材料が挙げられる。
【0044】
少なくとも幾つかの実施形態では、シャフトの部分又は全てはまた、放射線不透過性材料でドープされていてもよく、放射線不透過性材料で形成されてもよく、又は、別様に放射線不透過性材料を含有していてもよい。放射線不透過性材料は、医学的処置の間に、蛍光透視法の画面上又は別の撮像技法において、相対的に明るい画像を生成することが可能な材料であると理解される。この相対的に明るい画像は、シャフトの使用者がその位置を判定するのを支援する。放射線不透過性材料の幾つかの例としては、金、白金、パラジウム、タンタル、タングステン合金、放射線不透過性充填材が充填されたポリマー材料等を挙げることができるが、これらに限定されない。さらに、同じ結果を得るために、他の放射線不透過性マーカーバンド及び/又はコイルもシャフト20の設計に組み込んでもよい。
【0045】
幾つかの実施形態において、シャフトには、或る程度の核磁気共鳴画像法(MRI)適合性が与えられる。例えば、シャフト20は、画像を実質的に歪めず、実質的なアーチファクト(例えば、画像における空隙)を生成しない材料を含むことができる。例えば、特定の強磁性材料は、それらがMRI画像中にアーチファクトを生成し得るため、好適ではない可能性がある。シャフト20はまた、MRI装置が画像化することができる材料から形成される。これらの特性を示す幾つかの材料としては、例えば、タングステン、コバルト−クロム−モリブデン合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)等のようなUNS:R30003)、ニッケル−コバルト−クロム−モリブデン合金(例えば、MP35−N(登録商標)等のようなUNS:R30035)、ニチノール等、及び、他のものが挙げられる。
【0046】
本開示は、多くの点において、例示に過ぎないことが理解されるべきである。本開示の範囲を超えることなく、詳細について、特に形状、サイズ及び工程の配置に関して、変更がなされてもよい。これは、それが適切である範囲で、他の実施形態に用いられている1つの例示的な実施形態の特徴のうちのいずれの使用を含んでもよい。本開示の範囲は、当然ながら、添付の特許請求の範囲が表現されている文言において規定される。
図1
図2
図3
図4
図5