(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861310
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】燃料電池用のバイポーラプレート、燃料電池スタック、および燃料電池スタックを備えた燃料電池システムを有する車両
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0265 20160101AFI20210412BHJP
H01M 8/0267 20160101ALI20210412BHJP
H01M 8/0228 20160101ALI20210412BHJP
H01M 8/0213 20160101ALI20210412BHJP
H01M 8/0221 20160101ALI20210412BHJP
H01M 8/0258 20160101ALI20210412BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20210412BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20210412BHJP
【FI】
H01M8/0265
H01M8/0267
H01M8/0228
H01M8/0213
H01M8/0221
H01M8/0258
H01M8/00 Z
H01M8/10
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-47079(P2020-47079)
(22)【出願日】2020年3月18日
(65)【公開番号】特開2020-177905(P2020-177905A)
(43)【公開日】2020年10月29日
【審査請求日】2020年3月18日
(31)【優先権主張番号】10 2019 205 564.8
(32)【優先日】2019年4月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】アデル ジラーニ
(72)【発明者】
【氏名】サンジフ クマール
(72)【発明者】
【氏名】ラドゥ ピー.ブレイディアン
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン フォークト
【審査官】
守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−527903(JP,A)
【文献】
特開2003−249242(JP,A)
【文献】
特開2013−229159(JP,A)
【文献】
特開2008−235009(JP,A)
【文献】
特開2007−165257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード側(31)および冷却剤側(32)を有するとともに、アノード側(31)にアノード流れ場(34)を形成するための第1の構造(33)が形成されたアノード板(30)と、カソード側(41)および冷却剤側(42)を有するとともに、カソード側(41)にカソード流れ場(44)を形成するための第2の構造(43)が形成されたカソード板(40)と、を備え、アノード板(30)とカソード板(40)との間に冷却剤流れ場(50)を形成するための構造要素(51a,51b,51c)が配置された、燃料電池用のバイポーラプレート(12)であって、
構造要素(51a,51b,51c)が弾性材料で作られており、それらの構造要素(51a,51b,51c)が、冷却剤流れ場(50)の異なる領域に応じて異なる高さを有する、バイポーラプレート(12)。
【請求項2】
構造要素(51a,51b,51c)の高さ(h)は、冷却剤流れ場(50)の領域における圧力負荷に反比例することを特徴とする請求項1に記載のバイポーラプレート(12)。
【請求項3】
アノード板(30)およびカソード板(40)が、金属または導電性カーボンベースの材料で作られ、好ましくはグラファイト、またはグラファイトおよびカーボンからなる複合材料で作られていることを特徴とする請求項1または2に記載のバイポーラプレート(12)。
【請求項4】
構造要素(51a,51b,51c)が、弾性ポリマで作られており、少なくとも一つの構造要素(51a,51b,51c)が導電性であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバイポーラプレート(12)。
【請求項5】
構造要素(51a,51b,51c)が柱状であり、好ましくは矩形または楕円形の断面を有し、かつ、互いに離間して配置されており、任意選択的にアノード板(30)およびカソード板(40)の少なくとも一方の構造(33,43)が柱状設計を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のバイポーラプレート(12)。
【請求項6】
アノード板(30)の第1の構造(33)およびカソード板(40)の第2の構造(43)が、積層方向(S)に互いの上に配置されるとともに、構造要素(51a,51b,51c)の断面領域と少なくとも部分的に交差することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のバイポーラプレート(12)。
【請求項7】
構造要素(51a,51b,51c)が、流路(52)の形成のために規則的または不規則に配置されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のバイポーラプレート(12)。
【請求項8】
構造要素(51a,51b,51c)が、少なくともアノード板(30)またはカソード板(40)に固定され、または、構造要素(51a,51b,51c)が、アノード板(30)またはカソード板(40)のいずれかと接触するように配置された少なくとも一つの支持板(53)に形成され、前記支持板は、アノード板(30)またはカソード板(40)に固定されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のバイポーラプレート(12)。
【請求項9】
2つのエンドプレート(18)の間に交互に配置された、膜電極アセンブリ(10)と、請求項1〜8のいずれか一項に記載のバイポーラプレート(12)と、のスタックを備えた燃料電池スタック(100)。
【請求項10】
請求項9に記載の燃料電池スタック(100)を備えた燃料電池システムを有する車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アノード側および冷却剤側を有するとともに、アノード側にアノード流れ場を形成するための第1の構造が形成されたアノード板と、カソード側および冷却剤側を有するとともに、カソード側にカソード流れ場を形成するための第2の構造が形成されたカソード板と、を備え、アノード板とカソード板との間に冷却剤流れ場を形成するための構造要素が配置された、燃料電池用のバイポーラプレートに関する。本発明はさらに、そのようなバイポーラプレートを有する燃料電池スタック、およびそのような燃料電池スタックを有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電気エネルギーを生成するために、燃料と酸素の水を生成する化学反応を利用する。この目的のために、燃料電池はコア成分として所謂膜電極アセンブリ(MEA)を含み、このアセンブリは、イオン伝導(通常はプロトン伝導)膜と、それぞれの場合に膜の両側に配置された触媒電極(アノードとカソード)と、からなる構造である。後者は通常、担持された希金属、特に白金を備える。加えて、ガス拡散層(GDL)を、膜電極アセンブリの両側における、電極の、膜とは反対側の側面に配置することができる。原則として、燃料電池は、スタックに配置された複数のMEAによって形成され、その電力が加算される。原則として、個々の膜電極アセンブリの間にバイポーラプレート(流れ場プレートまたはセパレータプレートとも呼ばれる)が配置され、個々のセルに作動媒体、すなわち反応物を確実に供給し、通常、冷却にも使用される。さらに、バイポーラプレートは、膜電極アセンブリとの導電性接触を保証する。
【0003】
燃料電池の作動中、燃料(アノード作動媒体)、特に水素H
2または水素含有ガス混合物が、アノード側に開口する流れ場を介してアノードのバイポーラプレートに供給され、H
2のプロトンH
+への電気化学的酸化が、電子の放出とともに発生する(H
2→2H
++2e
-)。反応空間を気密に互いに分離するとともに電気的に絶縁する電解質または膜を介して、アノード空間からカソード空間へのプロトンの(水が結合したまたは水なしの)輸送が行われる。アノードにもたらされた電子は、電線を介してカソードに供給される。カソード作動媒体としての酸素または酸素含有ガス混合物(たとえば、空気)が、カソード側に開口するバイポーラプレートの流れ場を介してカソードに供給され、それにより電子の取り込みを伴うO
2からO
2-への還元が生じる(1/2O
2+2e
-→O
2-)。同時に、カソード空間では、酸素アニオンが膜を介して輸送されたプロトンと反応して、水が形成される(O
2-+2H
+→H
2O)。
【0004】
燃料電池スタックへの作動媒体、つまりアノード作動ガス(例えば、水素)、カソード作動ガス(例えば、空気)、および冷却剤の供給は、積層方向全体に亘ってそのスタックを通過する主供給チャネルを介して行われ、それらのチャネルにより、作動媒体がバイポーラプレートを介して個々のセルへと供給される。各作動媒体に対して、少なくとも2つのそのような主供給チャネルが存在する。すなわち、一つは作動媒体を供給し、一つは作動媒体を除去するためのものである。
【0005】
通常、バイポーラプレートは、2つの相互接続されたハーフプレートで構成され、それぞれその両側において構造化される。互いに向い合っていない側には、作動媒体の輸送のための構造が必要であり、互いに向かい合っている側には、冷却剤の輸送のための構造が必要である。ここでは、2つのハーフプレートを使用して3つの別々の輸送経路を提供する必要があるため、それぞれの場合でハーフプレートを互いに調整する必要がある。これにより、追加の限界条件が生じ、バイポーラプレートの設計の柔軟性が低下する。一般的な実施形態では、公知のバイポーラプレートのハーフプレートは、プロファイルに合わせて設計され、そのプロファイルは互いに係合するまたは入れ子になる。
【0006】
燃料電池スタックは、その対向するスタック端部に、通常、エンドプレートを備え、それらのエンドプレートは、締め付け(clamping)機構の一部として、締め付け装置によって互いに接続される。締め付け装置により、引張力が伝達され、これがエンドプレートを互いに引き寄せ、その間に配置された個々のセルを圧縮する。つまり、それらを互いに押し付ける。さらに、スタックに均等に負荷をかけ、スタックの損傷を防ぐために、締め付け機構の一部が圧縮ばねで構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の根底にある目的は、圧縮ばねに関連してバイポーラプレートが有する欠点を少なくとも部分的に改善するバイポーラプレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立請求項の特徴を有する、バイポーラプレート、燃料電池スタック、およびそのような燃料電池スタックを有する車両によって達成される。
【0009】
バイポーラプレートが、アノード側および冷却剤側を有するアノード板を備え、アノード側には、アノード流れ場を形成するための第1の構造が形成される。バイポーラプレートはさらに、カソード側および冷却剤側を有するカソード板を備え、カソード側には、カソード流れ場を形成するための第2の構造が形成される。アノード板とカソード板との間には、冷却剤流れ場を形成するための構造要素が配置され、アノード板およびカソード板の冷却剤側と接触する。本発明によれば、構造要素は弾性材料で作られており、それらの構造要素は、それらの構造要素が配置された冷却剤流れ場の領域に応じて異なる高さを有する。
【0010】
バイポーラプレートへの、または反応物および冷却剤の(複数の)流れ場への圧力荷重は、全ての領域において同じではなく、特にそれぞれの流れ場の流入または流出領域における流路の幾何形状および流路の位置に応じて異なる。
【0011】
これらの違いを補償するように、それらの領域にそれぞれ異なる高さの構造要素が配置され、低い圧力負荷の領域では、前記の構造要素は、より高い圧力負荷を有するその他の領域の構造要素よりも高い高さを有する。
【0012】
本発明によれば、複数の領域が設けられ、それらの領域には異なる高さの構造要素が設けられる。これは各々のバイポーラプレートの特定の設計によって決まる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、3つの領域、すなわち流れ場の流入領域と、流出領域と、流入領域から流出領域への移行領域と、が設けられ、構造要素の高さは、流入領域から流出領域へと増加する。
【0014】
構造要素は、その高さに応じて、カソード板および/またはアノード板と接触し、全ての構造要素が燃料電池スタックに取り付けられた状態では、それらはクランプ締めされるため、カソード板とアノード板とが接触する。
【0015】
構造要素は、特に、構造堅牢性を向上すると同時に圧縮を最適化するように、本発明によるバイポーラプレートを有する燃料電池スタック内の埋め込みばねとして用いられる。
【0016】
加えて、それにより通常用いられる圧縮ばねが不要となるため、従来技術と比較して燃料電池スタックの積層高さが低減される。さらに、それらの従来技術による圧縮ばねはバイポーラプレートの活性面への接触圧力を良好に制御することはできず、結果として生じる不均一な積層圧縮がプレートの破断をもたらすおそれがある。これは本発明のバイポーラプレートによって回避される。さらに、圧縮ばねを省くことにより、重量の軽減が達成される。エンドプレートの曲げも最小化される。さらに、GDL/MEAの侵入の影響が最小化されるという点で特に有利である。
【0017】
さらに、例えば、圧縮ばねを省き、大量生産のフォーム・イン・プレイス(FIP)法を使用する可能性により、プレートの製造におけるコスト削減を達成することができる。
【0018】
本発明によるバイポーラプレートは、構造要素を除き、好ましくは導電性材料からなり、好ましくはカーボンベースの材料、好ましくはグラファイト、またはグラファイトおよびカーボンで作られた複合材料からなる。金属の使用も提供される。
【0019】
本発明によって提供された構造要素は好ましくは弾性体からなり、好ましくは燃料電池の動作の温度範囲において安定的な導電性ポリマからなり、好ましくは少なくとも一つの構造要素が導電性である。
【0020】
有利には、材料の選択を別にすれば、構造要素のばね特性がその高さを介して調節されるように、全ての構造要素が同じ材料で作られる。
【0021】
異なる構造要素の高さは各々の領域における特定の要件に起因する。
【0022】
例えば、バイポーラプレートの高さが1140μmで冷却剤流れ場の高さが440μmの場合、高さ440μm、420μm、および400μm、幅500μmの構造要素を想定することができる。第1および第2の構造の高さは、構造要素の高さとは関係なく決定される。前記の高さは125μm〜225μmの範囲でありうる。
【0023】
好ましくは、シリコーンまたはシロキサンが用いられ、ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
【0024】
ポリマは100S/cmを上回る導電性を有することが好ましい。電気抵抗は好ましくは0.0008Ωcm、弾性係数は好ましくは5MPaである。
【0025】
冷却剤がバイポーラプレートの冷却剤流れ場をできるだけ少ない圧力損失で流れることができるように、構造要素がアノード板とカソード板との間に互いに離間して配置される。
【0026】
構造要素は柱状設計を有し、好ましくは個々の構造要素の全長に亘って一定の断面を有し、あるいはその長さに亘って変化する断面、例えば構造要素の中心に縮小する断面を有する柱状設計を有する。
【0027】
構造要素は、バイポーラプレートの異なる領域において様々なスプリング力の要件を満たすように、バイポーラプレートの表面に亘って分布する異なる寸法の断面領域を有してもよい。
【0028】
好ましくは、構造要素は、製造が非常に簡単になるように、矩形または正方形の断面を有する。1つまたは2つの対称軸を有する円形または楕円形の断面も可能である。
【0029】
本発明のバイポーラプレートの特に好ましい実施形態によれば、スタック高さ全体に亘って圧力を分散させるために、アノード板およびカソード板の第1および第2の構造が、アノード板およびカソード板においてその反対側にある構造要素の少なくとも接触面を、少なくとも部分的にそれらの構造によって覆うように設計される。
【0030】
したがって、構造要素のみならずアノード板の第1の構造およびカソード板の第2の構造が、バイポーラプレートの積層方向に直接互いの上に配置される。有利には、これによりバイポーラプレートの損傷を回避することができる。
【0031】
アノード板およびカソード板における流れ条件を最適化するための構造の追加の空間的設計が問題なく可能となる。構造要素の設計のような同等の設計が好ましい。
【0032】
本発明により、異なる断面を有する構造要素を混合させることも可能である。
【0033】
圧力損失を防ぎ、必要に応じて必要なスプリング力を印加するように、構造要素を、流れ領域の形成を伴う冷却剤流れ場に規則的にまたは不規則に配置することができる。規則的な配置の場合、構造要素および任意選択的に第1および第2の構造が、格子状のパターンを形成することが好ましい。
【0034】
構造要素は好ましくはアノード板またはカソード板の少なくとも一つに固定され、好ましくは接合によって固定され、片側での固定によりバイポーラプレートの設置が容易になるとともに、概ね十分である。ここでは酸化剤を伝達するカソード板との固定が好ましい。
【0035】
本発明のバイポーラプレートの特に好ましい実施形態によれば、構造要素が少なくとも一つの支持板に配置されるように設けられる。この少なくとも一つの支持板は好ましくは構造要素と同じ材料からなり、好ましくは構造要素を有する一体構造を形成するように製造される。
【0036】
全ての構造要素が支持板上に配置され、あるいは、異なる支持板の領域に応じて配置される。すなわち、同じ高さの全ての構造要素が別の支持板に位置決めされる。それにより、生産労力が有利に軽減される。
【0037】
支持板はアノード板またはカソード板のいずれかと接触するように配置される。こうした有利な設計により、本発明によるバイポーラプレートの実質的に簡単な設置が可能となる。この実施形態と同様、少なくともアノード板およびカソード板との接着が個々の構造要素と同様に生じる。
【0038】
上記の規定を除けば、冷却剤流れ場のみならずアノード板およびカソード板の流れ場が互いに独立して設計されうる。
【0039】
本発明の追加の態様は、2つのエンドプレートの間に交互に配置された、膜電極アセンブリと、本発明によるバイポーラプレートと、のスタックを備えた燃料電池スタックに関する。
【0040】
さらに、本発明は、本発明による燃料電池スタックを有する燃料電池システムを備えた車両に関する。車両は好ましくは電気自動車であり、燃料電池システムによって生成された電気エネルギーが電動機および/または電動バッテリの供給に用いられる。
【0041】
本発明の追加の好ましい設計は、従属項に記載された残りの特徴に起因する。
【0042】
本明細書中に述べた本発明の異なる実施形態は、個々の場合に別段の指示がない限り、有利に互いに組み合わせることができる。
【0043】
本発明を、関連する図面を参照しながら実施例中で以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図2】本発明によるバイポーラプレートの詳細を示す斜視図である。
【
図3】
図2のバイポーラプレートの詳細を示す断面図である。
【
図4】第2の実施形態によるバイポーラプレートの詳細を示す断面図である。
【
図5】支持板に配置された構造要素を有するカソード板の詳細を示す斜視図である。
【
図6】支持板上の楕円形断面を有する構造要素を示す上面図である。
【
図7】第2の実施形態による支持板上の楕円形断面を有する構造要素を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、全体を100で表した本発明による燃料電池スタックを概略的に示す。燃料電池スタック100は、詳細には示さない車両の一部であり、特に、燃料電池スタック100によって電気エネルギーが供給される電動機を備えた電気自動車の一部である。
【0046】
燃料電池スタック100は、その平坦な側に交互に列状に配置された複数の(積層された)膜電極アセンブリ10と、バイポーラプレート12と、を備える。複数の積層された個々のセル11は、全体で、燃料電池スタック100を形成し、概ね個々のセル11のうちの一つおよび燃料電池スタック100の両方が燃料電池として表される。燃料電池スタック100は、その両側にエンドプレート18を備える。バイポーラプレート12とそれぞれの膜電極アセンブリ10との間には、図示されていないアノードおよびカソード空間が配置され、これらは周方向シール20によって区切られる。とりわけ、シール20のシール機能を果たすために、燃料電池スタック100は、締め付け機構によって積層方向Sに一緒に押圧(圧縮)される。
【0047】
締め付け機構は、外側締め付け装置22と、ここでは見えないが、バイポーラプレート12の冷却剤領域に配置された弾性構造要素と、を備える。前記のバイポーラプレートについては、以下でさらに詳細に説明する。
【0048】
燃料電池スタック100の構造要素に伝達される外側クランプ張力の蓄積のために、外側締め付け装置22の細長い引張部材24が、2つのエンドプレート18間に張力を伝達し、それによりエンドプレート18が引張部材24によって互いに引っ張られる。この目的のために、引張部材24は、燃料電池スタック100の積層方向Sに延在する。
【0049】
図2および
図3は、本発明による第1の実施形態のバイポーラプレート12をそれぞれ異なる図で示す。それぞれの場合において、バイポーラプレート12の詳細が示されている。
【0050】
ここで、バイポーラプレート12は、2つの個別のプレートである、アノード板30およびカソード板40を備える。アノード板30は、アノード側31と、カソード板40に面する冷却剤側32と、を有する。カソード板40は、カソード側41と、アノード板30に面する冷却剤側42と、を有する。アノード板30とカソード板40との間には、それぞれの冷却剤側32,42に、冷却剤流れ場50を形成するように、弾性構造要素51a,51b,51cが配置され、それぞれ異なる高さhを有する。冷却剤の流入領域Aでは、構造要素51aの高さhは、流出領域Cの構造要素51cの高さよりも小さく、移行領域Bでは、構造要素51bの高さhは、他の構造要素51aと51cの高さの間にある。
【0051】
非取り付け状態では、流出領域Cの構造要素51cのみがアノード板30およびカソード板40に接触する。
【0052】
取り付け状態では、対応する燃料電池スタック100がクランプ締めされているため、すべての構造要素51a,51b,51cがアノード板30およびカソード板40に接触し、それにより構造要素51a,51b,51c間の高さの差は補償される。
【0053】
構造要素51a,51b,51cは柱状であり、正方形の断面を有する。それらは均等に分布し、したがって、グリッドの形態の流路52を形成し、この流路を介して、バイポーラプレート12の主軸に対して冷却剤が長手方向および横方向に流れることができる。
【0054】
冷却剤流れ場50とは反対側のアノード側31およびカソード側41には、それぞれ冷却剤の構造要素51a,51b,51cと同様に設計された第1の構造33および第2の構造43が設けられており、それぞれアノード流れ場34およびカソード流れ場44を形成する。すなわち、それらは、正方形の断面を有する柱状である。加えて、それらは2つの反応媒体のための流路35,45を形成し、
図2〜4では、前記流路は積層方向Sにおいて構造要素51a,51b,51cと一致する。
【0055】
カソード板40の中心における構造要素51a,51b,51cの逸脱したサイズは、端部におけるサイズとは対照的に、示されたバイポーラプレート12の切抜き(cutout)にのみ起因し、技術的意義はない。原則として、構造要素51a,51b,51cの寸法を異ならせ、それらを不均等に分布させることは原則として可能である。バイポーラプレート12の組み立てを容易にするために、構造要素51a,51b,51cは、少なくともカソード板40の冷却剤側42に固定され、好ましくは接着される。
【0056】
図4はまた、第2の実施形態によるバイポーラプレート12の詳細を断面で示す。この実施形態では、構造要素51a,51b,51cは、カソード板40の冷却剤側42の平坦な側にある支持板53と単一の部品を形成するように設計されている。この支持板53の使用により、バイポーラプレート12の取り付けを明らかに容易にする。この変形例においても、支持板53または構造要素51a,51b,51cの、例えば接着による固定が生じる。
【0057】
支持板53の、構造要素51a,51b,51cを支持する側が、カソード板40の冷却剤側42にある、他の変形例を
図5に示す。カソード板40上に構造要素51a,51b,51cを有する支持板53を配置した後に、バイポーラプレート12を完成させるために、図示されていないアノード板30が適用される。
【0058】
図6および
図7は、それぞれ、2つの対称軸を有する楕円形断面(
図6)および1つの対称軸を有する断面(
図7)を有する構造要素51a,51b,51cが適用された支持板53を示す。これらの実施形態は、冷却剤の流れ状態を最適化するために使用される。これらの断面は、第1の構造33および/または第2の構造43として選択することもできる。
【0059】
明示的に示されない限り、説明はすべての実施形態に等しく適用される。
【符号の説明】
【0060】
100…燃料電池スタック
10…膜電極アセンブリ
11…個々のセル
12…バイポーラプレート
18…エンドプレート
20…シール
22…締め付け装置
24…長尺の引張部材
30…アノード板
31…アノード側
32…冷却剤側
33…第1の構造
34…アノード流れ場
35…流路
40…カソード板
41…カソード側
42…冷却剤側
43…第2の構造
44…アノード流れ場
45…流路
50…冷却剤流れ場
51a,b,c…構造要素
52…流路
53…支持板
A…流入領域
B…移行領域
C…流出領域
S…積層方向