特許第6861325号(P6861325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6861325ガスタービンのギャップ最小化を制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861325
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】ガスタービンのギャップ最小化を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 11/20 20060101AFI20210412BHJP
   F01D 17/04 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   F01D11/20
   F01D17/04
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-538123(P2020-538123)
(86)(22)【出願日】2019年3月11日
(65)【公表番号】特表2021-507176(P2021-507176A)
(43)【公表日】2021年2月22日
(86)【国際出願番号】EP2019055994
(87)【国際公開番号】WO2019175091
(87)【国際公開日】20190919
【審査請求日】2020年7月29日
(31)【優先権主張番号】102018203896.1
(32)【優先日】2018年3月14日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】18176962.1
(32)【優先日】2018年6月11日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ガム,ハンス−ゲオルグ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュニング,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】カールシュトルフ,ウーヴェ
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02843198(EP,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102889099(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0003991(US,A1)
【文献】 特開2010−230004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンのロータとハウジングとの間の調整可能なギャップのギャップ最小化を制御する方法であって、前記ガスタービンは、油圧式の、ギャップ調整装置を備えており、
シミュレーションプログラムを用いて、複数の異なるパラメータ設定下でのガスタービンの運転が図式化され、ギャップ寸法の運転パラメータ依存性を含むシミュレーションデータセットが作成されるステップと、
前記シミュレーションデータセットに基づいて、前記運転パラメータに対する下限閾値(P)および上限閾値(P)が定められるステップと、
さらに、前記下限閾値(P)と前記上限閾値(P)との間の移行領域(M)に対して、前記シミュレーションデータセットから当該運転パラメータとその運転パラメータの最大値(PMAX)との相関(F)が抽出されるステップと、
前記ガスタービンの運転中に運転パラメータの実際値(P)が連続的に検出されて、前記下限閾値(P)および前記上限閾値(P)と比較されるステップと、
予め決められた期間にわたって前記実際値(P)の最大値(PMAX)が決定されるステップと、
を含み、前記実際値(P)と、前記下限閾値(P)および前記上限閾値(P)とを比較するステップにおいて、
前記実際値(P)が前記下限閾値(P)より小さい場合には、ギャップ最小化が不作動とされ、
前記実際値(P)が前記上限閾値(P)より大きい場合には、ギャップ最小化が作動され、
前記実際値(P)が前記移行領域(M)内にある場合には、前記予め決められた期間における最大値(PMAX)を用いて、上記相関を利用して、前記運転パラメータに対する境界値(P)が決定され、前記実際値(P)が前記境界値(P)より大きい場合にはギャップ最小化が作動され、前記実際値(P)が前記境界値(P)より小さい場合にはギャップ最小化が不作動とされる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記運転パラメータとして、前記ガスタービンの定格出力で正規化された相対出力(PREL)が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最大値(PMAX)が決定される期間が20分〜3時間である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記下限閾値(P)が、前記相対出力(PREL)の30%から45%の間にある、請求項2または請求項2を引用する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記上限閾値(P)が、前記相対出力(PREL)の50%と65%との間にある、請求項2、請求項2を引用する請求項3、及び、請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記相対出力(PREL)の低下後、それに続いて相対出力(PREL)の上昇が生じた場合には、前記ギャップ最小化は、前記実際値(P)が前記境界値(P)を超えると、遅延して作動される、請求項2、請求項2を引用する請求項3、請求項4、及び、請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記下限閾値(P)と前記上限閾値(P)との間で前記最大値(PMAX)に対して複数のレベルが定義され、前記期間内に前記最大値(PMAX)が超えた最も高いレベルだけが、前記ギャップ最小化の作動または不作動のために考慮される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法がガスタービンの運転中に連続的に実施される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法を実施するための制御装置であって、油圧式のギャップ調整装置、および、前記運転パラメータの実際値を検出するための手段を備えている制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の制御装置を備えたガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンのロータとハウジングとの間の調整可能なギャップのギャップ最小化を制御する方法に関し、このガスタービンは、特に油圧式の、ギャップ調整装置を含む。さらに本発明は、本方法を実行するための制御装置、および、このような制御装置を備えたガスタービンに関する。
【0002】
最大のガスタービン効率を可能にするためには、回転部分と静止部分との間のギャップを運転中にできるだけ小さく保つことが決定的に重要である。円錐形タービン流路の場合、このための一つの方法は、ブレード先端のギャップができるだけ狭くなる過渡的な段階を通り過ぎた後で、定常的な高負荷運転においてロータを、例えば油圧機構で、軸方向に移動することである。ロータを流れ方向に逆らって移動するとギャップが減少する。
【0003】
特許文献1は、航空機のガスタービンエンジンのロータギャップ(先端クリアランス)を制御する方法及び装置を開示している。この方法のステップは、少なくとも1つのエンジンパラメータを測定するステップと、この少なくとも1つのエンジンパラメータからエンジン出力要求を決定するステップと、決定されたエンジン出力要求を考慮してロータギャップを計算するステップとを含む。このロータギャップ制御装置は、計算されたクリアランスと予め決められた目標クリアランスとの差に基づいて、ロータ尖端部クリアランスを大きくする、または、小さくするように制御される。
【0004】
また、特許文献2には、回転部品と、ギャップによって回転部品から分離された非回転部品とを含むタービン運転システムが記載されている。第1のアクチュエータは非回転部品に接続され、この第1のアクチュエータは形状記憶合金を備える。タービンを運転する方法は、非回転部品と回転部品との間のギャップを反映するパラメータの検出、および、このギャップを反映するパラメータ信号の生成を含む。この方法はさらに、パラメータ信号に基づいて少なくとも1つのアクチュエータのための制御信号の生成、および、ギャップを変化させるための、回転部分に対する非回転部分の少なくとも一部の移動を含む。
【0005】
特許文献3から、タービンの回転翼とハウジングとの間の調整可能なギャップを最小にする方法が知られている。ロータとハウジングを互いに動かすことによって、ロータとハウジングとの間のギャップは簡単な方法で最小化される。この目的のために、ロータ及び/又はハウジングに付設された固体伝搬音監視システムの出力信号がギャップの大きさの尺度として、従って最小ギャップを調整するために使用される。
【0006】
能動的な油圧式ギャップ調整時のガスタービンの部分負荷運転のための別の方法が、例えば特許文献4から知られている。
【0007】
市販可能な製品を生産するためには、始動されたロータ位置に関する決定は自動的にフィードフォワード制御またはフィードバック制御で行われなければならない。運転中のギャップの連続的な測定は技術的に困難であるか、非常にコスト高であるので、別の方法が必要である。ここで、ガスタービンのフィードフォワード制御において、計測可能な変数に基づいてギャップ最適化をどのように行うかを予め与える、HCO(Hydraulic Clearance Optimisation:油圧式クリアランス最適化)ロジックが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2843198A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2549065A1号明細書
【特許文献3】国際公開第2014/016153A1号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2015/128193A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、特にガスタービンの運転中の負荷切替え時にギャップ調整の最適な使用を可能にする、改良されたHCOロジックを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は本発明により、ガスタービンのロータとハウジングとの間の調整可能なギャップのギャップ最小化を制御する方法によって解決され、このガスタービンは、特に油圧式の、ギャップ調整装置を備えており、
シミュレーションプログラムを用いて、複数の異なるパラメータ設定下でのガスタービンの運転が図式化され、ギャップ寸法の運転パラメータ依存性を含むシミュレーションデータセットが作成されるステップと、
上記シミュレーションデータセットに基づいて、当該運転パラメータに対する下限閾値および上限閾値が定められるステップと、
さらに、下限閾値と上限閾値との間の移行領域に対して、シミュレーションデータセットから運転パラメータと運転パラメータの最大値との相関が抽出されるステップと、
ガスタービンの運転中に運転パラメータの実際値が連続的に検出されて、下限閾値および上限閾値と比較されるステップと、
予め決められた期間にわたって実際値の最大値が決定されるステップと、
を含み、この実際値と下限閾値および上限閾値とを比較するステップにおいて、
この実際値が下限閾値より小さい場合には、ギャップ最小化が不作動とされ、
この実際値が上限閾値より大きい場合には、ギャップ最小化が作動され、
移行領域内にある場合には、前記予め決められた期間における最大値を用いて上記相関を利用して、その運転パラメータに対する境界値が決定され、実際値がこの境界値より大きい場合にはギャップ最小化が作動され、実際値がこの境界値より小さい場合にはギャップ最小化が不作動とされる。
【0011】
この課題は、さらに本発明によれば、本方法を実行するための制御装置によって解決され、この制御装置は、特に油圧式の、ギャップ調整装置、および、運転パラメータの実際値を検出するための手段を備えている。運転パラメータの実際値を検出するためのこれらの手段は、運転パラメータに応じて、直接測定のための複数のセンサであってもよく、または代替的に、運転パラメータと相関のある別の量を直接測定して、このベースに基づいて運転パラメータを計算により間接的に決定することができる。
【0012】
本課題は、本発明によれば最終的に、このような制御装置を備えたガスタービンによって解決される。
【0013】
本方法に関連して以下に挙げる利点及び好ましい構成は、制御装置およびガスタービンに適用することができる。
【0014】
ギャップ最小化とは、ここでは、流れ方向とは逆向きのガスタービンロータの軸方向の移動を意味し、この移動は、ロータとハウジングとの間のギャップを調整するための特に油圧式手段を用いて行われる。以下の本文では、HCOという概念はギャップ最小化という概念と同等である。この場合、ギャップ最小化すなわちHCO機能は、作動される(ロータがハウジングに向けてシフトされる)、または、不作動とされることができる。
【0015】
「作動される」または「不作動とされる」は、単にHCOのオンまたはオフを意味するだけでなく、ギャップ最小化がすでに作動されている場合には、「作動される」は「作動されたままである」と等しいことを意味する。同じことが、既にオフされているギャップ最小化にも当てはまり、この場合、「不作動とされる」とは、「不作動とされたままである」ことも意味する。
【0016】
本発明は、簡単かつ堅牢であるが、ギャップ最適化をオンにした運転状態での危険を最小限に抑えることができる新しいHCOロジックを提供するという考えに基づいている。この目的のために計算機シミュレーションを用いて過渡的操作について多数の調査が行われ、これが改良HCOロジックの基礎を形成している。
【0017】
最適化されたギャップ調整のために1つの運転パラメータが使用され、これを用いてガスタービンの運転状態が把握される。この運転パラメータとしては、例えば、ガスタービンの出力、正規化された相対出力、主ガスチャネルに沿った温度もしくは圧力、または、温度圧力比も使用することができる。この場合、この運転パラメータは負荷変化に反応するように選択されている。
【0018】
シミュレーションプログラムを用いた計算機シミュレーションは特に運転外で、例えばガスタービンの開発段階で行われる。ここでは、シミュレーションプログラムはガスタービンのいわゆるデジタルツインを意味する。このシミュレーションプログラムまたはシミュレーションモデルにより、様々なパラメータ設定下でのタービン状態をより正確に概観することができる。このようにして、ガスタービンを最適に運転するために、適用シナリオにより良く整合する運転パラメータを決定することができる。具体的には、ロータとハウジングとの間のギャップに関連したガスタービンの挙動を、運転パラメータを連続的に変化させて調査する。
【0019】
次いで、このシミュレーションプログラムによって生成されたシミュレーションデータセットは、HCOの最適な使用、この最適使用時には許容できるギャップ損失でHCOができるだけ長時間作動されること、が可能となるように、上限閾値および下限閾値を選択する役割を果たす。この場合のシミュレーションの評価のための本質的な特徴は、一つの操作といえどもギャップを「破壊」しないことを確実にするために、様々な操作での最も狭いギャップをできるだけ等しくすることである。
【0020】
これまでの解析から得られた一つの知見は、一過性のギャップ減少をもたらし、その結果、これに伴ってHCO不作動を生じさせるのは、複数回の特に大きな負荷低下である、ということである。したがって、負荷跳躍以前における運転パラメータの最大値を考慮する必要がある。というのは、運転パラメータの最大値がHCO作動化のための境界をシフトするからである。この理由から、運転パラメータの最大値の展開と運転パラメータの展開との相関がシミュレーションデータセットから抽出される。この解析の結果は、例えば、とりわけ直線状の、凸状の、または、凹状の依存性を示す関数として、出力することができる。
【0021】
ガスタービンの運転中に運転パラメータの実際値は連続的に検出され、この場合、「連続的」は、連続的な、中断されない、直接的な測定、または、これらの測定データからの計算だけでなく、短い時間間隔内での直接的な測定、または、これらの測定データからの計算も含む。その時点で検出された実際値は下限閾値および上限閾値と比較され、その実際値の進行は少なくとも3つの運転モードまたは領域、すなわち、下方領域、中間移行領域、および上方領域に分割される。
【0022】
これに加えて、直近の期間にわたって実際値の最大値が検出される。この最大値に基づいて、シミュレーション結果からの相関を用いて、境界値が決定され、次にこの境界値が、実際値が下限閾値と上限閾値との間の移行領域内にある場合に使用される。
【0023】
低負荷領域ではガスタービンは汚染物質排出と低効率のために、たとえ運転するとしても、ごく短時間しか運転されない。したがって、この負荷領域での効率は、マシンの運転サイクル全体の効率には無視できるほどしか寄与しない。この点で、この厄介な状況ではHCOを作動させる必要はない。この理由から運転パラメータの下限閾値が定義される。従って、この下方領域、つまり下限閾値より下では、ギャップ最小化がまだオンされていなかった場合、または、すでにオフになっていた場合には、ギャップ最小化は不作動とされるか、または、不作動のままとされる。
【0024】
実施した解析は、HCOが通常はオンされているガスタービンの高負荷領域では、負荷変動があってもこのHCOをアップデートまたは適合させる必要がないことを示している。低負荷領域からの起動もギャップ最小化の使用にとっては問題ではない。この目的のために、その運転パラメータに対する上限閾値が定義される。したがって、上限閾値を超える上方領域ではギャップ最小化が作動されるか、または、ギャップ最小化がすでにオンされていた場合にはギャップ最小化は作動されたままである。
【0025】
下限閾値と上限閾値の間の移行領域では、運転パラメータの実際値と直近の過去での運転パラメータ最大値との相関が考慮される。下限閾値と上限閾値との間の移行領域では、予め定義された期間内のガスタービンの挙動に応じて、HCO機能が作動されるか、または、不作動とされる。このために、最大値に依存する、運転パラメータの境界値が必要となる。実際値がこの境界値より上にある場合、すなわち、境界値と上限閾値の間にある場合には、ギャップ最小化が作動されるか、または、作動されたままである。しかしながら、実際値が境界値を下回る場合、すなわち、下限閾値と境界値との間にある場合には、ギャップ最適化は不作動とされるか、または、不作動とされたままである。
【0026】
提案したこの方法により、HCO機能の非常に精密な作動が行われ、それによりガスタービンの運転中に多くのHCO作動時間が得られ、このことはガスタービンの効率にプラスの作用をもたらす。この方法により、ガスタービンの運転モード分割の複雑さは、HCOロジックがHCOをオンにするかオフにするかを決定しなければならない3つのケースだけに限定される。さらに、上述のHCOロジックはマシンの挙動とのより良い整合を提供し、実際のギャップ測定には依存しない。
【0027】
本方法の好ましい一実施形態によれば、運転パラメータとして、ガスタービンの定格出力で正規化された相対出力が使用される。この相対出力は絶対出力に直接リンクされており、これはガスタービンの制御において容易に利用可能であり、検出するために追加のハードウェア設備を必要としない。
【0028】
別の好ましい実施形態によれば、上述の期間は、20分〜3時間、特に30分〜90分である。この期間はタービンの応答時間によって決まるので、マシンに依存する。この期間は特にガスタービンの制御において予め与えられる。
【0029】
下限閾値は、相対出力の30%から45%の間にあることが好ましい。つまり、ギャップ最小化は、ガスタービンの定格出力の少なくとも30%に到達した時にはじめてオンになる。この相対出力より低い場合には、HCO機能が継続的に不作動であるように計画されている。
【0030】
また、上限閾値は、相対出力の50%と65%との間にあることが好ましい。遅くともガスタービン定格出力の65%に達するとHCOが作動され、上限閾値より上では継続的に作動されたままである。場合によっては、このことは既にガスタービンの定格出力の50%でも生じ得る。
【0031】
相対出力の低下後、それに続いて相対出力の上昇が生じた場合には、ギャップ最小化は、実際値が境界値を超えると、遅延して作動されることが好ましい。HCOを時間的に遅延して作動することにより、大きな負荷変化に対して急速な操作で対処することが避けられる。この理由から、HCOのもう一つの停止が定義される。これは、HCOの作動を数分から最大30分間ブロックするものである。
【0032】
特に簡単なマシン制御のために、下限閾値と上限閾値との間で最大値に対して複数のレベルが定義され、この場合、当該期間内に最大値が超えた最も高いレベルだけが、ギャップ最小化の作動または不作動のために考慮される。このようにして、最大値が変化するたびにその最大値を連続的に記憶する必要がなくなる。例えば、ガスタービンがより高い出力レベルまで上昇した場合にのみ、ガスタービンがそのレベルを超えて運転されたことが確定される。このような手順は、より長い期間にわたって最大値が一定のままであるので、境界値の決定をさらに簡単にする。
【0033】
境界値と最大値との相関が予め定義されていると好適である。実用上の理由から、最大値と境界値の関係は特にテーブルの形で予め与えられている。このことは、アプリケーションにとって全く十分であり、非常に信頼性が高く、制御可能である。したがって、迅速かつ多大な計算労力をかけずに境界値を決定するためには、運転パラメータの最大値を知りさえすればよい。移行領域が複数のレベルに分割されている場合には、各レベルについて境界値と最大値との相関が予め定義されていることが好ましい。それぞれの相関はテーブルに記録されている。
【0034】
代替の実施形態によれば、境界値と最大値との相関は計算によって決定される。これは、特に、制御に格納された公式に従って行われる。
【0035】
能動的なギャップ最小化を備えたガスタービンの運転において、ギャップ最小化を時間的に最大限に活用して最大効率を達成するためには、ガスタービンが運転されるとすぐに、運転パラメータの実際値の検出から始まるこの方法ステップがガスタービンの運転中に連続的に実施されると有利である。
【0036】
本発明の実施形態を、図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】ガスタービンの相対出力をHCOの作動に関して3つの領域に分けたものである。
図2】ガスタービンの相対出力の経時変化の区間を示す。
【0038】
同一の符号は、図において同一の意味を有する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は3つの出力領域をグラフで示したものであり、新HCOロジックに従うギャップ調整装置を備えたガスタービン(詳細には示されていない)の出力がこれらの3つの出力領域に分割され、このHCOロジックは複数の異なる運転モードによって特徴付けられている。このギャップ調整装置、これは特に油圧で駆動される、はここでは詳細には示されていない制御装置の一部であり、この制御装置は、ガスタービンの運転を監視する図示されていない複数のセンサとデータ通信している。X軸には、ガスタービンの定格出力で正規化された現在の出力で形成された相対出力PRELがプロットされている。Y軸には、ガスタービンの相対出力の最大値PMAXがプロットされている。X軸上の3つの領域U、MおよびOは、下限閾値Pと上限閾値Pによって互いに分割されている。ゼロから下限閾値Pの間の出力領域には符号Uが付けられている。上限閾値Pより大きい出力領域には符号Oが付けられている。下限閾値Pと上限閾値Pとの間には中間の移行領域Mがあり、この中に境界値Pが存在する。閾値PおよびPはマシン固有であり、ガスタービンの図示されていない制御装置に含まれている制御内に格納されている。例えば、P=40%、P=60%である。これらの数値は必要に応じて変更することもできる。
【0040】
移行領域Mにわたって延びる線Fは、境界値Pの最大値PMAXへの依存性を示している。図示の実施例ではこの依存性は、制御がアクセスできるテーブルに格納されている。このテーブルはシミュレーションデータセットに基づいており、このシミュレーションデータセットはこのタービン型式用のシミュレーションプログラムまたはデジタルツインを用いて生成されている。
【0041】
HCOが作動されるか不作動とされるか、あるいは、作動されたままであるか不作動のままであるかの決定は、相対出力PRELの実際値Pの展開に基づく。この目的のために、或る期間、これは例えば、常に直近の1時間である、内で実際値P図2参照)の最大値PMAXが検出される。この期間は同様に制御内に格納されており、マシン固有である。この期間は1時間よりも短くすることもでき(例えば、直近の45分間の相対出力PRELの測定値が使用される)、または、それよりも長くすることもできる(例えば、90分間)。
【0042】
実際値Pが、下限閾値Pを下回る下方領域Uにある場合には、制御はギャップ最小化をオフにする、あるいは、ギャップ最小化がすでに不作動になっている場合には、オフのままにする。
【0043】
実際値Pが、上限閾値Pを上回る上方領域Oにある場合には、制御はギャップ最小化をオンにする、あるいは、ギャップ最小化がすでに作動されている場合には、オンのままにする。
【0044】
移行領域Mでは、相対電力PRELの実際値Pが境界値Pよりも下の領域M’にあるか、境界値Pよりも上の領域M”にあるかによって、ギャップ最小化がオンまたはオフされる。この境界値Pは、すでに説明したように、制御に格納されている相関(F)に基づいて、直近1時間における最大出力PMAXの最大値PMAXから導き出すことができる。
【0045】
最大値PMAXの検出を簡略化するために、さらにY軸上に最大値PMAXに対する複数のレベルを定義することもできる。この場合、ギャップ最小化の作動または不作動に対しては、直近1時間内で最大値PMAXが超過した最も高いレベルはどれであるかということだけが考慮される。そのようなレベルを、例えば3から10の間で、定義することができ、これらは異なる大きさとすることができる。この場合、特に、線Fは各レベルに対して多少異なる。すなわち、あらかじめ定義された、または、計算された境界値Pと最大値PMAXとの相関は、レベル毎に変化させることができる。
【0046】
さらに、HCOのもう一つの停止を組み込むことができ、これはHCO作動を、例えば15分間ブロックする。この停止は、特に、下方領域Uへの大きな負荷低下または出力低下に続いて生じる移行領域Mまたは上方領域Oにおける大きな負荷上昇または出力上昇の後に行われる。
【0047】
このケースが図2に示されており、相対出力PRELが時間tに対してプロットされている。時刻tまでは実際値Pは略一定で上方の出力領域Oに存在し、この領域ではHCOが作動されている。tからtの間でPは急激に低下し、下限閾値Pを下回る値に達する。時刻tにおいて移行領域M内で境界値Pを下回ると、ギャップ最小化はオフに切り替わる。tからtの間では、実際値Pは下方領域U内に在り続け、従ってHCOは不作動のままである。tからtの間でPは定常的に上昇し、時刻tで再び境界値Pを超える。しかし、これはまだtでHCOの作動を引き起こすものではなく、実際値Pは全時間で領域M”にあるものの、例えば更に15分後に、時刻tにおいてはじめてギャップ最小化が行われる。時刻tにおいて実際値Pは再び図2によるガスタービンの初期状態のレベルとなる。
【0048】
HCOが作動する前に、tの後で実際値Pが例えば再び低下する場合には、このことは場合によっては、直近1時間内のPMAXに影響を与え、その結果、新たな境界値Pにつながる可能性がある。
図1
図2