(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の3軸方向のうち、架台上に前記Y軸が対応しており、当該Y軸に平行なB軸回りに旋回割出し可能に設けられた回転テーブルと、支持部材に支持した主軸ヘッドとを備え、NC装置によって制御軸駆動部を作動させて、前記回転テーブルをB軸回りに旋回して位置決めし、前記回転テーブルと主軸ヘッドとをX、Y、Z軸方向に相対的に移動させて、前記主軸ヘッドの主軸に装着した工具により前記回転テーブルに固定したワークの加工を行う工作機械におけるワーク加工制御装置であって、
前記主軸が傾くことによって生じる角度誤差を、前記主軸と平行なZ軸に対する垂直面であるXY座標の少なくともいずれか1つの座標に対応させて、記憶するデータメモリと、
前記工具の長さを表す工具長補正値と前記角度誤差とに基づいて、前記工具の先端が前記ワークの加工を行うときの加工位置のXY座標を補正する補正部と、
前記NC装置の主メモリに記憶された加工プログラムで設定されたX,Y,Z軸の機械座標位置を前記補正部が算出する補正値によって補正し、補正後の機械座標位置に基づいて前記ワークの加工点の位置を制御する位置制御回路と、
を備え、
前記工作機械は、
互いに同心となる基準穴が前記主軸に対向して設けられるワーク位置決め板が配置されるとともに、前記回転テーブルに前記ワークを固定する、パレットを有し、
前記位置制御回路は、
前記基準穴に対応する基準穴座標の測定結果から前記パレットの心ズレ補正量を計算し、前記心ズレ補正量の計算結果に基づき、前記角度誤差を変更することを特徴とする
ワーク加工制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る工作機械におけるワーク加工制御装置を示す図である。ワーク加工制御装置20は、横形マシニングセンタ等の工作機械1を制御するNC装置の機能の一部として構成されている。
工作機械1はマシニングセンタであり、ベース2と、コラム3と、レベリング4と、テーブル5と、主軸ヘッド9と、回転テーブル11と、を含んで構成されている。
ベース2の上部の一端部にコラム3が設けられ、ベース2の下部にはレベリング4が複数設けられている。これらレベリング4が地面(工場などの床面)に設置されることにより、工作機械1が所定場所に設置される。また、ベース2上のコラム3に対向する位置にはテーブル(架台)5が設けられている。
ここで、工作機械1において垂直軸をY軸とし、Y軸に直交する水平面内において横方向をZ軸(
図1で左右方向)、X軸に直交する縦方向(
図1で紙面の垂直な方向)をX軸とする。
ベース2には、Y軸方向に直交する方向に1対のX軸ガイドレール6a、6bが平行に配設され、X軸モータ16によってX軸ガイドレール6a,6bに沿って前後方向(X軸方向)に移動可能にコラム3が設けられている。
コラム3には、Y軸方向に1対のY軸ガイドレール7a、7bが配設され、Y軸モータ17によってY軸ガイドレール7a、7bに沿って上下方向(Y軸方向)に昇降可能な主軸ヘッド9が設けられている。
ベース2には、Z軸方向にZ軸ガイドレール8a、8bが平行に配設され、Z軸モータ18によってZ軸ガイドレール8a、8bに沿って左右方向(Z軸方向)に移動可能にテーブル(架台)5が設けられている。
また、工作機械1は、テーブル5上に支持されてB軸モータ(
図1において不図示)によって、テーブル5の上面における中心に位置し、該上面に垂直なB軸回りに旋回、割出可能な回転テーブル11を備えている。ここで、B軸は、Y軸と平行である。
【0016】
回転テーブル11に対して、自動パレット交換装置等(
図1において不図示)により、パレット12に載せた加工対象物であるワーク(
図1において不図示)が搬入されて固定され、また、該固定を解除されて搬出される。なお、工作機械1では、主軸ヘッド9に軸回りに回転自在に支持された主軸13が支持され、主軸13に装着した工具(
図1において不図示)によって、回転テーブル11上のワークの切削加工(ボーリング)が行われる。
上記X軸モータ16、Y軸モータ17、Z軸モータ18、B軸モータには、これらを駆動する、例えばサーボアンプを有する位置制御回路23(位置制御回路)が接続されている。位置制御回路23が、各軸モータ(X軸モータ16、Y軸モータ17、Z軸モータ18、B軸モータ)に設けたエンコーダ等の位置検出器によって検出された移動位置信号に基づいて、前記各軸モータをフィードバック制御する。
このように、各軸モータと位置制御回路23とによって、回転テーブル11と主軸ヘッド9とを相対的にX,Y,Z軸方向に移動させ、回転テーブル11をB軸回りに回転させる制御軸駆動部を構成している。
【0017】
ワーク加工制御装置20は、データメモリ21と、補正部22と、位置制御回路23と、を含んで構成される。
データメモリ21は、格子に分けられ、当該格子の節点それぞれは主軸13のXY座標を表し、主軸13が傾くことによって生じる角度誤差(以下、ヒーリングと言うこともある)を主軸13のXY座標に対応して記憶する。
ここで、主軸13のヒーリングについて、
図2および
図3を参照して説明する。
図2は、主軸13のヒーリングについて説明するための図であり、
図2(a)はXZ平面での主軸ヒーリングΘを表し、
図2(b)はYZ平面での主軸ヒーリングΦを表している。また、
図3は、主軸ヒーリング誤差を説明するための図であり、
図3(a)、(b)は、主軸13のゲージングライン(GL)位置におけるXY座標を表し、
図3(c)は、データメモリ21が有するテーブルの一例を示している。
図2(a)に示すように、ヒーリングΘは、XZ平面上でZ軸と主軸中心の角度誤差である。本来ならZ軸と主軸は平行であるが、工作機械の重い移動体がX軸、Y軸方向に移動したときに、工作機械を支持する地面の変形(レべリング誤差)や、軸方向走行時の製造上や重量移動による真直度の誤差により、主軸のヒーリングがXY軸で異なってしまうという理由により、XY座標の位置で異なるヒーリングΘを持つ。また、
図2(b)に示すように、ヒーリングΦは、YZ平面上でY軸と主軸中心の角度誤差である。本来ならZ軸と主軸は平行であるが、工作機械の重い移動体がX軸、Y軸方向に移動したときに、工作機械を支持する地面の変形(レべリング誤差)や、軸方向走行時の製造上や重量移動による真直度の誤差により、主軸のヒーリングがXY軸で異なってしまうという理由により、XY座標の位置で異なるヒーリングΦを持つ。
【0018】
図3(a)は、XY平面の主軸ゲージライン(主軸GL)上の格子の各節点に対して主軸13の先端部分が位置したときを表わしている。X軸ガイドレール6a、6bの真直度、コラム3が移動する際の質量によるレベリング4の変位、ベース2の反り等で、X軸の位置におけるコラム3の傾きが変化し、主軸13のヒーリングが、X軸とY軸の位置で異なってしまう。すなわち、
図3(b)に示すように、主軸13の長手方向とZ軸との方向との間の角度Θ、主軸13の長手方向とY軸との方向との間の角度Φにより工具長分、(X、Y)の位置座標が異なったものとなる。そこで、データメモリ21は、主軸13が傾くことによって生じる角度誤差を主軸13のXY座標に対応して記憶する。ここで、
図3(c)は、主軸13のGL位置において、XY座標を表す格子の各節点における角度誤差(XZ平面における角度誤差Θ、YZ平面における角度誤差Φ)を格子毎に記憶するデータメモリ21が備えるテーブルを一例として示している。
【0019】
補正部22は、工具の長さを表す工具長補正値と角度誤差とに基づいて、工具の先端がワークの加工を行うときの加工位置のXY座標を補正する。
図4は、工具長補正値を説明するための図である。
図4に示すように、工具の長さを表す工具長補正値は、主軸13のゲージラインから工具刃先までの長さで示される。上述のように、ヒーリングはZ軸に対して主軸13の中心が角度を持ってしまうため、工具長にX軸方向とY軸方向の位置誤差が異なってしまう。そのため、補正部22は、例えば、工具交換後の工具長補正値を読み込み、穴加工位置での主軸13のヒーリング(角度誤差Θ、Φ)を読み込んで、刃先のX軸方向とY軸方向の位置誤差を計算する。
なお、節点間のヒーリング量は、位置に比例した値を算出する。節点は所定の間隔を持って作られるため、節点の座標が、データメモリ21が備えるテーブルにないときは、その節点の座標に近いところにある2つの節点のヒーリング量を比例配分するなどの方法によって、節点間のヒーリング量を算出すればよい。
【0020】
位置制御回路23は、NC装置の主メモリに記憶された加工プログラムで設定されたB,X,Y,Z軸の機械座標位置(制御軸位置指令値)eを、補正部22が算出する補正値によって補正し、補正後の機械座標位置に基づいてワークの加工点の位置を制御し、この補正した位置指令値にもとづいて各軸モータ(X軸モータ16、Y軸モータ17、Z軸モータ18、B軸モータ)を駆動させる。
【0021】
従来、X軸ガイドレール6a、6bの真直度、コラム3が移動する際の質量によるレベリング4の変位、ベース2の反り等で、X軸の位置におけるコラム3の傾きが変化し、主軸13のヒーリングが、X軸とY軸の位置で異なってしまう。また、ヒーリングはZ軸に対して主軸13の中心が角度を持ってしまうため、工具長によりX軸方向とY軸方向の位置誤差が違ってしまう。ワーク加工制御装置20は、以上のような構成を備えることにより、機械のヒーリング誤差を補正し、反転穴加工精度の向上を図ることができる。
【0022】
続いて、本実施形態におけるワーク加工制御装置20の動作を実行させるプログラムについて説明し、ワーク加工制御装置20の動作についてフローチャートを参照しつつ説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態におけるヒーリング補正の処理を説明するためのフローチャートである。
まず、プログラムの例について説明する。ヒーリングを補正しながら穴加工を行う際、工具の送り軸と主軸の動作指令を個々に加工プログラムから発生させてもよいし、1行の加工プログラムで一連の動作を行う固定サイクルを使ってもよい。また、工具長の特定については、工具長補正値を読み込んでもよいし、プログラムで指定してもよい。
下記プログラムの例は、固定サイクルを使った例である。ヒーリングがXY平面の位置によって異なることに着目し、工具長補正値から工具先端のXY座標の誤差を補正する。なお、下記の例は、反転加工でなくても有効な例である。また、固定サイクルとは、1行のプログラムでボーリング穴加工の行きと穴底の動作と戻りの一連の動きを行う指令を言う。
【0023】
まず、プログラムの例について説明する。
(1行目)T1
「T1」の指令により、工具No1を呼び出す。
(2行目)M6
「M6」の指令により、主軸13に工具No1を入れるための工具交換を行う。
(3行目)G90 G54 G43 G0 B90.0 H1
「G90」はアブソリュート指令を意味し、この指令により、機械原点を0として加工位置を指令する。
「G54」の指令により、ワーク座標系を指令する。
「G43」が工具長補正値を使うという指令を意味する。
「G0」が早送りで、「B90.0」が回転テーブル11を90度回転させるという指令を意味する。
「G43」と「H1」が対になっていて、工具長補正値のH1を読み込む。例えばH1に200が入っていると、工具長補正値が200であると認識する。
(4行目)F500
毎分500mmの速度で、切削送りの速度を指令する。
【0024】
(5行目)G301 M1.0 A0 E9.0 I−100.2 J−200.5 K−80.3 R5.0 Q1.0 P0.5
「G301」は主軸ヒーリング補正の指令である。「G301」はプログラム実行時の仮のコードであり、G301の次に記載の「M1.0」以降がパラメータ(引数)を表す。「M1.0」は、固定サイクルのG76(ファインボーリング)で穴加工をするとの指令を表す(
図5のステップST113参照)。ここで、
図6は、本実施形態で使用する5つの固定サイクルを示す図である。固定サイクルには、
図6に示す固定サイクルが一例としてあり、ここでは、「M1.0」が「G76」であることを指令している。
図6に示すように、1行の指令で穴加工を行ってしまう。「G76」は、G73 X_Y_Z_R_Q_P_Fの指令で穴加工を行う。その際、X,Y,Zの値を入れることにより位置決めを行う。また、イニシャル点とR点があって、穴を加工したとき戻る位置(復帰する位置)を、R点で指定して復帰して次の加工に行くことを指令できる。穴を加工していって、帰りそのまま戻すと傷がつくので、止めて刃先を逃がすのがファインボーリングであって、
図6においては、破線が早送りを、実線が切削送りを表している。
「G301」の説明に戻って、「G301」に後続する「M1.0」は、固定サイクルのG76(ファインボーリング)で穴加工を行うことを宣言する。「A0」は、工具長補正を自動で読み込んで補正を行うことを指令する。ここで、「A0」と自動読み込みではなく、「A200.0」と指定することにより、自動で読みこまないで工具長200mmとして計算することもできる。「E」については、上述の工具の復帰点を指令し、ここが「E9」であればR点復帰、「E8」であればイニシャル点復帰を指令する。「I−100.2」は、補正を加える前の元々のプログラムにおけるX軸の位置決め位置=−100.2を指令する。「J−200.5」は、補正を加える前の元々のプログラムにおけるY軸の位置決め位置=−200.5を指令する。「K−80.3」は、補正を加える前の元々のプログラムにおけるZ軸の位置決め位置=−80.3を指令する。「R5.0」は、穴加工のR点の位置指令をR=5.0と指令する。「Q1.0」は、刃先逃げのシフト量を指令する。「P0.5」は、ドウェル(待ち時間)を0.5sと指令する。
上述の5行目の「G301」が、本願の特徴のある指令であり、この「G301」にヒーリングの位置ずれ量を混ぜ込めば、正しい位置に位置決めが可能となる。すなわち、格子の座標に応じた角度から工具長を使って求められる値(X,Y値)を考慮したうえで、加工したい座標を補正した上で、「G301」に入れれば、工具の先端が正しい加工位置に来るように主軸13の位置を変更できる。
【0025】
(6行目)G301 M9
「G301」、「M9」は、5行目のG301の指令により1つの穴の穴加工が終了したため、補正モードを終了(キャンセル)する指令である。
(7行目)G0 Z−500
「G0」、「Z−500」は、穴加工位置からZ軸を逃がして、別の穴加工に進む指令である。
(8行目)B270.0
3行目の「B90.0」で回転テーブル11を90度回転させるという指令を行っているので、ここでは「B270.0」で、回転テーブル11を現状から180度回して、ワークを反転して、主軸13の加工対象をワークの反転面にする指令を行う。
(9行目)G301 M1.0 A0 E8.0 I100.2 K−90.4 R5.0 Q1.0 P0.5
「G301」は、5行目と同じく、主軸ヒーリング補正の指令である。ここでは、5行目で加工したワークの反転面の加工を行う。
(10行目)G301 M9
「G301」、「M9」は、6行目の「G301」、「M9」と同じく、9行目のG301の指令により1つの穴の穴加工が終了したため、補正モードを終了(キャンセル)する指令である。なお、データメモリ21のテーブルで参照するX、Y座標は、反転面(B軸=270度)では正転面(B軸=90度)からは異なる値となるので、Θ、Φの値も異なり、X、Y座標も異なる値となる。
(11行目)G49
工具長補正のキャンセルを指令する。
(12行目)M30
プログラムの終了を指令する。
【0026】
続いて、
図5に示すフローチャートを用いて、ヒーリング補正の処理を説明する。
ヒーリング補正がスタートすると、位置制御回路23は、G301のパラメータ読込みを実行する(ステップST101)。パラメータとしては、M(固定サイクルの種類)、A(工具長補正)、E(工具復帰点指令)、I,J,K(XYZ軸移動指令)、R(穴加工のR点指令)、Q(刃先逃げシフト量)、P(ドウェル)を読み込む。
位置制御回路23は、パラメータの良否判定を実行する(ステップST102)。パラメータの良否判定とは、ステップST101で読込んだパラメータ全てが、所定の範囲内にある場合(パラメータの値が間違った、有り得ない値ではない場合)、良と判定し、パラメータの少なくとも1つの値が、所定の範囲内にない場合(範囲外である場合)パラメータの値が間違った、有り得ない値ではない場合)、範囲外と判定する。
位置制御回路23は、ステップST102で「範囲外」と判定した場合、ステップST103に進む。位置制御回路23は、アラーム表示を実行し(ステップST103)、ヒーリング補正を終了する。
一方、位置制御回路23は、ステップST102で「良」と判定した場合、ステップST104に進む。位置制御回路23は、穴加工の計算を実行する(ステップST104)。位置制御回路23は、パラメータI,Jから、穴加工位置を表すXY座標を読込んで補正のための計算に備える。
【0027】
補正部22は、ヒーリングデータ読込みを実行する(ステップST105)。補正部22は、データメモリ21のテーブルが表す格子データのうち、ステップST104で読み込んだ穴位置座標の周囲の格子(2つの格子)が表すヒーリングデータを読み込む。
補正部22は、ヒーリングの計算を実行する(ステップST106)。補正部22は、ステップST104で読み込んだ穴加工位置のXY座標に対応する傾き誤差ΘとΦとを、周囲の格子(2つの格子)が表すヒーリングデータを比例計算することにより算出する。
位置制御回路23は、パラメータAの値がA=0であるか否かを判定する(ステップST107)。位置制御回路23は、パラメータAの値がA=0である場合、工具長補正値の読み込みを実行する(ステップST108)。すなわち、補正に使用するために、工具長補正を自動で読み込む。位置制御回路23は、補正に用いる工具長補正値Lの値を、ステップST108で読み込んだ工具長補正値とする(ステップST109)。
一方、位置制御回路23は、パラメータAの値がゼロ以外の値である場合、当該Aの値を工具長補正値Lの値とする(ステップST110)。
位置制御回路23は、補正値加算の計算(X軸とY軸の移動の計算)を実行する(ステップST111)。具体的には、工具の先端のX、Y座標を、X=I+L×tanΘ、Y=J+L×tanΦと計算する。
【0028】
続いて、位置制御回路23は、パラメータMの判定を実行する(ステップST112)。
位置制御回路23は、パラメータM=1の場合、
図6のG76(ファインボーリング)が示す固定サイクルを実行することに備える(ステップST113)。位置制御回路23は、パラメータM=2の場合、
図6のG85(ボーリングサイクル)が示す固定サイクルを実行することに備える(ステップST114)。位置制御回路23は、パラメータM=3の場合、
図6のG86(ボーリングサイクル)が示す固定サイクルを実行することに備える(ステップST115)。位置制御回路23は、パラメータM=4の場合、
図6のG87(バックボーリングサイクル)が示す固定サイクルを実行することに備える(ステップST116)。位置制御回路23は、パラメータM=5の場合、
図6のG89(ボーリングサイクル)が示す固定サイクルを実行することに備える(ステップST117)。位置制御回路23は、パラメータM=1〜5の場合、固定サイクルでワークの加工を実行する(ステップST118)。
位置制御回路23は、パラメータM=9の場合、補正モードのキャンセルを実行することに備え(ステップST119)、固定サイクルのキャンセルを実行する(ステップST120)。位置制御回路23は、ステップST118、ステップST120の終了後、次のプログラムの実行(例えばワークの反転位置の固定サイクルによるボーリングの実行)を行う。
【0029】
以上説明したように、第1の実施形態におけるワーク加工制御装置20は、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の3軸方向のうち、テーブル5上(架台上)にY軸が対応しており、当該Y軸に平行なB軸回りに旋回割出し可能に設けられた回転テーブル11と、コラム3(支持部材)に支持した主軸ヘッド9とを備え、NC装置によって制御軸駆動部を作動させて、回転テーブル11をB軸回りに旋回して位置決めし、回転テーブル11と主軸ヘッド9とをX、Y、Z軸方向に相対的に移動させて、主軸ヘッド9の主軸13に装着した工具により回転テーブル11に固定したワークの加工を行う工作機械におけるワーク加工制御装置20である。ワーク加工制御装置20は、データメモリ21と、補正部22と、位置制御回路23と、を備える。
データメモリ21は、主軸13が傾くことによって生じる角度誤差を、主軸13と平行なZ軸に対する垂直面であるXY座標の少なくともいずれか1つの座標に対応させて、記憶する。すなわち、データメモリ21は、格子に分けられ、前記格子の節点それぞれは主軸13のXY座標を表し、主軸13が傾くことによって生じる角度誤差(ヒーリング誤差)を主軸13のXY座標に対応して記憶する。
補正部22は、工具の長さを表す工具長補正値と角度誤差とに基づいて、工具の先端がワークの加工を行うときの加工位置のXY座標を補正する。
NC装置の主メモリに記憶された加工プログラムで設定されたX,Y,Z軸の機械座標位置を補正部22が算出する補正値によって補正し、補正後の機械座標位置に基づいてワークの加工点の位置を制御する。
【0030】
これにより、ワーク加工制御装置20は、機械のヒーリング誤差を補正し、反転穴加工精度の向上を図ることができる。
【0031】
[第2の実施形態]
図7は、パレットの交換誤差について説明するための図である。
工作機械1において、回転テーブル11は、中心位置として決められた値を持っているが、パレット12を交換して回転テーブル11に固定した際に、回転テーブル11に対するワークの位置に位置誤差があると、回転して反転する際にX軸等の方向に2倍の位置ズレを生じてしまう。そのため、位置ズレを検出してこの位置ズレを補正する必要がある。
この必要性から、
図7(a)に示すように、工作機械1において、パレット12の対向面(主軸13に対向する面)に対して設置するワーク位置決め板12aに、互いに同心となる基準穴を設ける。そして、工具交換で主軸13に把握したプローブ(穴心を測定する装置)で2つの基準位置の座標を、B軸を180度反転させて測定し、パレットの心ズレ量を算出し、穴加工位置(第1の実施形態におけるヒーリング補正後の穴加工位置)を補正することにより、反転穴加工の精度を高める。
例えば、
図7(b)に示すように、パレット12に取り付けたワーク位置決め板の基準穴1のB=0度位置で基準穴座標(XYZ)をプローブで測定し、B=180度で再び基準穴座標(XYZ)をプローブで測定する。これにより、パレット12の心ズレ量を計算し、パレット番号を指定してメモリに保存する。このメモリは、ワーク加工制御装置20におけるデータメモリ21であってよい。そして、反転加工時に、データメモリ21に保存されたパレット12の心ズレ補正量を呼び出して、上記ヒーリング補正に加算(付加)することで、パレット12の心ズレに対応できる。なお、例えば、
図7(c)に示すように、4個の基準穴のX軸とY軸のみ測定し、Z軸方向の測定は不要となる。
【0032】
続いて、本実施形態におけるワーク加工制御装置20の動作を実行させるプログラムについて説明し、パレット12の心ズレ補正量を求める動作についてフローチャートを参照しつつ説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態における心ズレ補正量を求める処理を説明するためのフローチャートである。
【0033】
まず、プログラムの例について説明する。
(1行目)T2
「T2」の指令により、工具No2(プローブ)を呼び出す。
(2行目)M6
「M6」の指令により、工具No2への工具交換を行う。
(3行目)G90 G55 G0 B0
本指令により、ワーク座標系でB軸=0度の位置決めを指令する。
(4行目)G90 G55 G43 G0 X0 Y0 Z−300 H2
本指令により、「G43」で工具長補正を使用し、「X=0」、「Y=0」、「Z=−300」の所へ位置決めを指令する。「H2」は、工具No2の工具長補正値を読み込む指令をしている。
(5行目)G302 M9.0 A1.0
本指令により、パレットNo.1に対応するメモリ(「A1.0」)の心ズレ補正量をクリア(「M9」)することを指令する。
(6行目)Z−20.0
本指令により、基準穴の位置を20mm手前までの位置決めを指令する。
(7行目)G302 M3.0 B0 C1.0 R15 P1.0 Q5.0
「M3.0」は、XYZ軸方向のプローブによる測定の指令である。「B0」はB軸=0度として座標を保存することの指令である。「C1.0」は、測定対象が1つ目の穴(1穴目)であることの指令である。「R15.0」は、基準穴の半径が15mmであることの指令である。「P1.0」は、Z軸はX軸方向にシフトして端面を測定することの指令である。「Q5.0」は、Z軸測定は、基準穴から5mm外側の端面を測定することの指令である。
以上より、「G302」指令により、基準穴=0度の位置のXYZの測定を指令する。
【0034】
(8行目)Z−300.0
本指令により、計測器であるプローブを逃がすことを指令する。
(9行目)B180.0
本指令により、B軸を180度に回転することを指令する。
(10行目)Z−20.0
本指令により、基準穴の位置を20mm手前までの位置決めを指令する。
(11行目)G302 M3.0 B180.0 C2.0 R15.0 P1.0 Q5.0
本指令により、次の基準穴(「C2.0」)に関する基準穴=180度の位置のXYZの測定を指令する。
(12行目)G302 M7.0 A1.0
本指令により、パレット交換の心ズレ量を計算し、パレットNo.1に対応するメモリ(「A1.0」)に保存する。
(13行目)G302 M8.0 A1.0
本指令により、パレットNo.1に対応するメモリ(「A1.0」)に保存されたパレット交換の心ズレ量を有効にする(実行エリアに保存する)。
(14行目)G301 M1.0 A0 B2.0 E9.0 I−100.2 J−200.5 K−80.3 R5.0 Q1.0 P0.5
本指令により、「B2.0」によりX軸Y軸の位置決め計算にパレット12の心ズレ補正値を加算して、反転穴加工を実行することを指令する。
これにより、パレット交換の精度が補正量として確定するので、穴加工を行う際のヒーリングに当該確定値を加えて穴加工を実行する。
なお、(13行目)と(14行目)の間には、[第1の実施形態]のプログラムの例で示した加工用工具の交換と加工位置へのアプローチの指令が入る。
【0035】
続いて、
図8に示すフローチャートを用いて、パレット交換の際の心ズレ補正量の測定に関する処理を説明する。
心ズレ補正量の測定がスタートすると、位置制御回路23は、G302のパラメータ読込みを実行する(ステップST201)。パラメータとしては、M(モードの種類)、A(パレット番号)、C(測定回数)、R(穴半径)、P(Z座標測定方向)、Q(Z座標測定のシフト量)を読み込む。
位置制御回路23は、パラメータの良否判定を実行する(ステップST202)。パラメータの良否判定とは、ステップST201で読込んだパラメータ全てが、所定の範囲内にある場合(パラメータの値が間違った、有り得ない値ではない場合)、良と判定し、パラメータの少なくとも1つの値が、所定の範囲内にない場合(範囲外である場合)パラメータの値が間違った、有り得ない値ではない場合)、範囲外と判定する。
位置制御回路23は、ステップST202で「範囲外」と判定した場合、ステップST203に進む。位置制御回路23は、アラーム表示を実行し(ステップST203)、心ズレ補正量の測定を終了する。
【0036】
一方、位置制御回路23は、ステップST202で「良」と判定した場合、ステップST204に進む。位置制御回路23は、パラメータMの判定を実行する(ステップST204)。
位置制御回路23は、パラメータM=1の場合、ステップST205に進む。位置制御回路23は、X方向測定を実行することに備える(ステップST205)。位置制御回路23は、プローブでX方向のみ測定し、座標を保存する(ステップST206)。位置制御回路23は、パラメータM=2の場合、ステップST207に進む。位置制御回路23は、XY方向測定を実行することに備える(ステップST207)。位置制御回路23は、プローブでXY方向2軸を測定し、座標を保存する(ステップST208)。位置制御回路23は、パラメータM=3の場合、ステップST209に進む。位置制御回路23は、XYZ方向測定を実行することに備える(ステップST209)。位置制御回路23は、プローブでXYZ方向3軸を測定し、座標を保存する(ステップST210)。
続いて、位置制御回路23は、パラメータCの判定を実行する(ステップST211)。位置制御回路23は、パラメータC=1の場合、ステップST212に進む。位置制御回路23は、穴の測定座標をメモリ1に保存する(ステップST212)。位置制御回路23は、パラメータC=2の場合、ステップST213に進む。位置制御回路23は、穴の測定座標をメモリ2に保存する(ステップST213)。ここで、メモリ1、メモリ2はデータメモリ21であってよい。
【0037】
位置制御回路23は、パラメータM=7の場合、ステップST214に進む。位置制御回路23は、補正値の計算と保存を実行することに備える(ステップST214)。続いて、位置制御回路23は、パラメータBとCの「良」及び「否」の判定を実行する(ステップST215)。具体的には、
図7(b)に示すように、一回目のC=1の場合(B軸=0度の場合)における基準穴の座標(X、Y、Z)とB軸の回転中心座標(X、Y、Z)との差分が所定の第1の閾値に入っているか否かを判定し、二回目のC=2の場合(B軸=180度の場合)における基準穴の座標(X、Y、Z)とB軸の回転中心座標(X、Y、Z)との差分が所定の第2の閾値に入っているか否かを判定する。位置制御回路23は、C=1の場合の差分が第1の閾値に入っており、かつ、C=2の場合の差分が第2の閾値に入っている場合、「良」と判定する。一方、C=1の場合の差分が第1の閾値に入らないか、または、C=2の場合の差分が第2の閾値に入らない場合、「否」と判定する。
【0038】
位置制御回路23は、ステップST215で「否」と判定した場合、ステップST216に進む。位置制御回路23は、アラーム表示を実行し(ステップST216)、心ズレ補正量の測定を終了する。一方、位置制御回路23は、ステップST215で「良」と判定した場合、ステップST217に進む。位置制御回路23は、心ズレの補正量を計算する(ステップST217)。具体的には、一回目のC=1の場合(B軸=0度の場合)における基準穴の座標(X、Y、Z)とB軸の回転中心座標(X、Y、Z)との差分と、二回目のC=2の場合(B軸=180度の場合)における基準穴の座標(X、Y、Z)との差分と、の差の半分をパレットの中心座標(X、Y、Z)をパレットの心ズレの補正量として計算する(
図7(b)参照)。
続いて、位置制御回路23は、A番号のメモリに心ズレの補正量を保存する(ステップST218)。なお、A番号のメモリとは、
図1に示すデータメモリ21であってもよい。
【0039】
位置制御回路23は、パラメータM=8の場合、ステップST219に進む。位置制御回路23は、実行エリアに補正値を格納することを実行することに備える(ステップST219)。ここで、実行エリアとは、
図1に示す補正部22がヒーリング補正の処理を実行する際のエリアをいい、補正部22は、保存用の領域を所有することが望ましい。
続いて、位置制御回路23は、A番号のメモリから心ズレの補正量を読み込むことを実行する(ステップST220)。位置制御回路23は、実行エリアに補正量を保存する(ステップST221)。
また、位置制御回路23は、パラメータM=9の場合、ステップST221に進む。位置制御回路23は、メモリのクリアを実行することに備える(ステップST222)。続いて、位置制御回路23は、A番号のメモリをクリアし、B、Cパラメータをクリアする(ステップST223)。
【0040】
以上説明したように、工作機械1は、互いに同心となる基準穴が主軸13に対向して設けられるワーク位置決め板12aが配置されるとともに、回転テーブル11にワークを固定する、パレット12を有している。また、位置制御回路23は、基準穴に対応する基準穴座標の測定結果からパレット12の心ズレ補正量を計算し、心ズレ補正量の計算結果に基づき、ヒーリング(角度誤差)によるX軸Y軸の位置決め補正に、パレット12の心ズレ補正を加える。
【0041】
これにより、ワーク加工制御装置20は、パレット12の交換によって生じる心ズレの補正量をヒーリング補正に付加することにより、反転穴加工精度の向上を図ることができる。
【0042】
[第3の実施形態]
工作機械1において、外気温度(機外の温度)、機体温度(コラム、スケール、ベースなど)、ワーク温度、切削液温度などの変化に応じて、例えば、一日において、加工穴の位置座標がずれてしまうため、加工位置に対応する熱変位による加工誤差を補正する必要がある。そのため、工作機械におけるワーク加工制御装置では、例えば、時刻(運転時間)と加工位位置補正量との関連付けされたマスターデータを含む複数のマスターデータを準備し、この複数のマスターデータから熱変位による加工誤差を選択し、選択された加工誤差を第1の実施形態におけるヒーリング誤差(角度誤差)に加算して、反転穴加工精度の向上を図るようにする必要がある。
【0043】
図9は本発明の第3の実施の形態に係る工作機械におけるワーク加工制御装置を示す図である。ワーク加工制御装置20aは、横形マシニングセンタ等の工作機械1を制御するNC装置の機能の一部として構成されている。なお、
図1と同じ部分には同じ符号を付し、その説明については省略する。
図1と相違する点として、ワーク加工制御装置20aは、PC接続I/F31と、温度センサI/F32とを備える。
【0044】
また、工作機械1とワーク加工制御装置20aとの外部には、温度測定手段41と、関連付け解析PC50が設けられている。
関連付け解析PC50は、データ入力部51、データメモリ52、演算手段53を備えている。
温度測定手段41は、
図9に示すように、工作機械1の各部分の温度を測定する温度センサに接続され、温度センサが測定した温度を温度データに変換して、温度センサI/F32に出力する。
PC接続I/F31は、関連付け解析PC50のデータ入力部51と接続され、温度センサI/F32に入力された温度データを、関連付け解析PC50のデータ入力部51に対して出力する。
関連付け解析PC50の演算手段53は、上述の複数のマスターデータを作成する。マスターデータ作成の際、演算手段53は、生産スケジュールコントローラからユーザが入力する許容値を各マスターデータに取り込む。
【0045】
第3の実施形態では、位置制御回路23は、使用する関連付けのグラフを指定する。
位置制御回路23は、過去の補正量と誤差測定履歴が関連付けマスターデータの許容値内であれば、現在と同じ補正値を使用し、誤差データが新たに入力されたら、補正値を再計算して使用する。また、許容値から外れたらオプションを選択する。
なお、第3の実施形態では、後述する第4の実施形態と異なり、未来の補正値を予測しない。また、後述する第3の実施形態のフローチャートでは、マスターデータの管理を外部PCが実行するものとしているが、NC装置を構成するワーク加工制御装置20aの内部で実行してもよい。
【0046】
図10は、本発明の第3の実施の形態における複数の穴を示す図である。
図10は、1つのワーク15にある複数の穴1〜穴5を示している。本実施形態においては、1つのワークに複数ある穴に対する反転穴加工に番号をP1、P2のように付け、反転穴加工の位置の誤差量と共に、変数(加工数、時刻、温度変化率等)を測定して、データ化する。これらを基に相関関係図を作成し、平均化したマスターデータに許容幅を設定する。
【0047】
図11は、本発明の第3の実施の形態における複数のマスターデータを示す図である。
図11は、加工位置に対応する熱変位による加工誤差の履歴データが示す所定の関連付けされた複数のマスターデータを示している。
図11(a)、(b)は、時刻(運転時間)と加工位置補正量とが関連付けされたマスターデータを示している。また、
図11(c)、(d)は、室温変化率と加工位置補正量とが関連付けされたマスターデータを示している。
図11(b)、(d)に示すように、穴1(P1)、穴2(P2)の位置誤差を時刻(または温度)と一緒に関連付け解析PC50の演算手段53へ入力することで、演算手段53は、
図11(a)、(c)に示すように、各関連付けにおける過去の履歴から相関係数(平均化したマスターデータ)を表示する。時刻(または温度)と加工位置補正量との間の相関関係が強く、バラつきが許容値(予めユーザによって入力される)範囲内であれば、位置制御回路23は、指定した関連付けに基づいて加工位置を補正できる。
【0048】
また、
図12は、本発明の第3の実施の形態における複数のマスターデータを示す図である。
図12は、複数の穴P1,P2のそれぞれの加工位置に対応する熱変位による加工誤差の履歴データが示す所定の関連付けされた複数のマスターデータを示している。
図12(a)は、加工数(開始からの個数)と加工位置補正量とが関連付けされたマスターデータを示している。
図12(b)は、時刻と加工位置補正量とが関連付けされたマスターデータを示している。
図12(c)は、ワークとスケールの温度の差と、加工位置補正量とが関連付けされたマスターデータを示している。
図12(d)は、室温変化率と加工位置補正量とが関連付けされたマスターデータを示している。
図12(e)は、機械温度変化と加工位置補正量とが関連付けされたマスターデータを示している。
【0049】
続いて、本実施形態におけるワーク加工制御装置20aの動作を実行させるプログラムについて説明し、複数の関連付けマスターデータを選択し、複数の穴のうち1つの穴の補正値を算出する動作についてフローチャートを参照しつつ説明する。
図13は、本発明の第3の実施形態における補正値を算出する処理を説明するためのフローチャートである。
【0050】
まず、プログラムの例について説明する。
(1行目)
G303 M1.0 A0 B0.01 P1
「M1.0」は、関連付けの種類を指定する指令である。また、「A0」は過去の履歴判定が無効であることを示す指令である。なお、「A1」の場合、過去の履歴判定が有効であることを示す指令となる。また、「B0.01」は、片側の許容値Bが0.01mmであることを示す指令である。なお、「B0」の場合、マスターデータに設定された許容値であることを示す指令である。また、「P1」は穴番号がNo.1であることを示す指令である。
(2行目)
G301 M1.0 A0 B3.0 E9.0 I−100.2 J−200.5 K−80.3 R5.0 Q1.0 P0.5
「B3.0」は、X軸Y軸の位置決め計算に関連付けの補正値を加算することを指示する指令である。
「G303」、「G301」を指令することにより、熱変形による誤差(熱変位の誤差)を、「G303」の指令により補正量を設定し、「G301」の指令により、ヒーリング補正(第1の実施形態における補正)に「G303」の指令による補正を追加して加工することができる。
【0051】
続いて、
図13に示すフローチャートを用いて、熱変位の誤差による補正値を算出する処理を説明する。
補正値の算出がスタートすると、位置制御回路23は、G303のパラメータ読込みを実行する(ステップST301)。パラメータとしては、M(関連付けの種類)、A(過去の履歴判定の有効無効)、B(許容値)、P(穴番号)を読み込む。
位置制御回路23は、パラメータの良否判定を実行する(ステップST302)。パラメータの良否判定とは、ステップST301で読込んだパラメータ全てが、所定の範囲内にある場合(パラメータの値が間違った、有り得ない値ではない場合)、良と判定し、パラメータの少なくとも1つの値が、所定の範囲内にない場合(範囲外である場合)パラメータの値が間違った、有り得ない値ではない場合)、範囲外と判定する。
位置制御回路23は、ステップST302で「範囲外」と判定した場合、ステップST303に進む。位置制御回路23は、アラーム表示を実行し(ステップST303)、補正値の算出を終了する。
【0052】
一方、位置制御回路23は、ステップST302で「良」と判定した場合、ステップST304に進む。位置制御回路23は、位置制御回路23は、パラメータMの値の判定を実行する(ステップST304)。
位置制御回路23は、パラメータM=1の場合、ステップST305に進む。位置制御回路23は、時刻と加工位置の関連付けマスターデータを選択することに備える(ステップST305)。位置制御回路23は、パラメータM=2の場合、ステップST306に進む。位置制御回路23は、室温変化率と加工位置の関連付けマスターデータを選択することに備える(ステップST306)。位置制御回路23は、パラメータM=3の場合、ステップST307に進む。位置制御回路23は、機械温度変化と加工位置の関連付けマスターデータを選択することに備える(ステップST307)。位置制御回路23は、パラメータM=4の場合、ステップST308に進む。位置制御回路23は、加工開始個数と加工位置の関連付けマスターデータを選択することに備える(ステップST308)。位置制御回路23は、パラメータM=5の場合、ステップST309に進む。位置制御回路23は、ワークとスケールの温度差と加工位置の関連付けマスターデータを選択することに備える(ステップST309)。位置制御回路23は、パラメータM=1〜5の場合、反転加工誤差の読込みを実行する(ステップST310)。位置制御回路23は、外部PC(パーソナルコンピュータ)から指定の穴番号のデータを読み込む。ここで、外部PCは、本実施形態では、マスターデータの管理を行う関連付け解析PC50であり、関連付け解析PC50が、ワーク加工制御装置20aへの反転誤差の入力、マスターデータの更新を実行している。
【0053】
続いて、位置制御回路23は、パラメータAの値の判定を実行する(ステップST313)。位置制御回路23は、パラメータA=0の場合、履歴判定を無効と判定し、ステップST314に進む。位置制御回路23は、補正値を現状維持する(ステップST314)。
一方、位置制御回路23は、パラメータAがA=0以外の場合、履歴判定を有効と判定し、ステップST315に進む。位置制御回路23は、関連付け解析PC50からのパラメータB(許容値)の値が転送される(ステップST315)。位置制御回路23は、B=0の場合、関連付け解析PC50からのマスターデータを利用する。位置制御回路23は、B=0以外の場合、関連付け解析PC50へ許容値を入れ替えることを指令する。過去の履歴計算を実行しているマスターデータ管理PC(関連付け解析PC50)は、加工後の誤差と補正量の和がマスターデータの許容値内に入っているかを計算し、各関連付けの相関係数を表示する。
位置制御回路23へは、関連付け解析PC50から過去の履歴の良否判定がパラメータAに入力される。位置制御回路23は、過去の履歴の良否判定を判定することに備える(ステップST316)。
【0054】
続いて、位置制御回路23は、過去の履歴判定を実行する(ステップST317)。位置制御回路23は、パラメータAの値の判定を実行する。位置制御回路23は、パラメータAの値が1の場合(OKの場合)、ステップST318に進む。位置制御回路23は、補正値を設定する(ステップST318)。具体的には、位置制御回路23は、加工誤差が予め設定された許容値内にある加工誤差を補正値として設定する。
【0055】
一方、位置制御回路23は、パラメータAの値が1でない場合(NGの場合)、ステップST319に進む。位置制御回路23は、パラメータAの値の判定を実行する(ステップST319)。位置制御回路23は、パラメータA=2の場合、ステップST320に進む。位置制御回路23は、パラメータA=2の場合、補正値をゼロにする(ステップST320)。位置制御回路23は、パラメータA=3の場合、ステップST321に進む。位置制御回路23は、パラメータA=3の場合、新しい補正値を使わず、現状の補正値を使用する(ステップST321)。位置制御回路23は、パラメータA=9の場合、ステップST322に進む。位置制御回路23は、パラメータA=9は最新の測定結果が許容を外れた場合であり、アラーム表示を実行し(ステップST322)、補正値の算出を終了する。位置制御回路23は、パラメータA=0〜3の場合、XY軸の補正量をメモリーに保存する(ステップST323)。具体的には、位置制御回路23は、パラメータA=0〜3の場合の各場合において、ステップST314、ステップST318、ステップST320、ステップST321で算出した補正値を、データメモリ21に保存する。位置制御回路23は、外部PCへ補正値を転送する(ステップST324)。具体的には、位置制御回路23は、ワーク加工制御装置20aにおけるPC接続I/F31を介して関連付け解析PC50へ補正値を転送する。そして、補正値の転送後、位置制御回路23は、上述の「G301」指令を行うプログラムへ進み、「G301」の指令により、ヒーリング補正(第1の実施形態における補正)に「G303」の指令による補正を追加して反転穴の加工を実行する。
【0056】
以上述べたように、本実施形態のワーク加工制御装置20aにおける位置制御回路23は、加工位置に対応する熱変位による加工誤差の履歴データが示す所定の関連付けされた複数のマスターデータのうち、加工誤差が予め設定された許容値内にあるマスターデータを選択して、加工誤差のうち現在時刻に対応する加工誤差を角度誤差に加算する。
すなわち、本実施形態のワーク加工制御装置20aは、加工穴に番号を設けて、誤差を補正するマスターデータを設定し、加工誤差を入力することでマスターデータを更新しながら熱変位を補正する。
【0057】
これにより、ワーク加工制御装置20aは、機械のヒーリング誤差を、さらに加工誤差により補正することで、反転穴加工精度の向上を図ることができる。
【0058】
[第4の実施形態]
第4の実施形態では、上述した第3の実施形態における指定した関連付けに対して、未来の誤差を予測して、次の加工位置を補正できるワーク加工制御装置20aについて説明する。第4の実施形態では、
図12に示すように、各穴(穴P1、穴P2)について、実際に加工し、現在時刻までの推移の中で、測定できて入力された過去の誤差量から作成された複数のマスターデータから、許容範囲内に入っている変数のマスターデータを表示し、指定した関連付けに対して、未来の誤差を予測して、次の加工位置を補正できることについて説明する。
まず、本実施形態におけるワーク加工制御装置20aの動作を実行させるプログラムについて説明し、複数の関連付けマスターデータを選択し、複数の穴のうち1つの穴の補正値を算出する動作についてフローチャートを参照しつつ説明する。
図14は、本発明の第4の実施形態における補正値を算出する処理を説明するためのフローチャートである。
【0059】
まず、プログラムの例について説明する。
(1行目)
G304 M1.0 A0 B0.01 P1
「M1.0」は、関連付けの種類を指定する指令である。また、「A0」は過去の履歴判定が無効であることを示す指令である。なお、「A1」の場合、過去の履歴判定が有効であることを示す指令となる。また、「B0.01」は、片側の許容値Bが0.01mmであることを示す指令である。なお、「B0」の場合、マスターデータに設定された許容値であることを示す指令である。また、「P1」は穴番号がNo.1であることを示す指令である。
(2行目)
G301 M1.0 A0 B3.0 E9.0 I−100.2 J−200.5 K−80.3 R5.0 Q1.0 P0.5
「B3.0」は、X軸Y軸の位置決め計算に関連付けの補正値を加算することを指示する指令である。
「G304」、「G301」を指令することにより、熱変形による誤差(熱変位の誤差)を、「G304」の指令により補正量を設定し、「G301」の指令により、ヒーリング補正(第1の実施形態における補正)に「G303」の指令による補正を追加して加工することができる。
【0060】
続いて、
図14に示すフローチャートを用いて、熱変位の誤差による補正値を算出する処理を説明する。なお、
図14に示すフローチャートにおいて、
図13に示すフローチャートと同じ処理を行うステップについては同一の符号を付し、その説明については省略する。
図14に示すフローチャートにおいては、
図13に示すフローチャートにおけるステップST301がステップST301Aとなっている。補正値の算出がスタートすると、位置制御回路23は、G304のパラメータ読込みを実行する(ステップST301A)。パラメータとして、M(関連付けの種類)、A(過去の履歴判定の有効無効)、B(許容値)、P(穴番号)を読み込むパラメータは、
図13に示すフローチャートにおけるステップST301と同じである。
また、
図14に示すフローチャートにおいては、
図13に示すフローチャートにおけるステップST318がステップST318Aとなっている。位置制御回路23は、次(未来)の補正値をマスクデータから読み込む(ステップST318A)。具体的には、位置制御回路23は、加工誤差が予め設定された許容値内にある加工誤差を、現在値から良くなるか否かを判定し、良くなる場合の加工誤差を補正値として設定する。
【0061】
以上述べたように、本実施形態のワーク加工制御装置20aにおける位置制御回路23は、加工位置に対応する熱変位による加工誤差の履歴データが示す所定の関連付けされた複数のマスターデータのうち、加工誤差が予め設定された許容値内にあるマスターデータを選択して、加工誤差のうち現在時刻に対応する加工誤差から次の加工における加工誤差を予測し、予測した加工誤差をヒーリング(角度誤差)に加算する。
すなわち、本実施形態のワーク加工制御装置20aは、加工穴に番号を設けて、誤差を補正するマスターデータを設定し、加工誤差を入力することでマスターデータを更新しながら熱変位を補正する。
【0062】
これにより、ワーク加工制御装置20aは、機械のヒーリング誤差を、さらに加工誤差により補正することで、反転穴加工精度の向上をはかることができる。
【0063】
[第5の実施形態]
第5の実施形態では、上述した第4の実施形態における指定した関連付けに対して、関連付けの種類に優先順位を設定し、かつ、未来の誤差を予測して、次の加工位置を補正できるワーク加工制御装置20aについて説明する。第5の実施形態では、
図12に示すように、各穴(穴P1、穴P2)について、実際に加工し、現在時刻までの推移の中で、測定できて入力された過去の誤差量から作成された複数のマスターデータから、許容範囲内に入っている変数のマスターデータを表示し、設定された優先順位に対応する指定した関連付けに対して、未来の誤差を予測して、次の加工位置を補正できることについて説明する。
まず、本実施形態におけるワーク加工制御装置20aの動作を実行させるプログラムについて説明し、複数の関連付けマスターデータを優先順位により選択し、複数の穴のうち1つの穴の補正値を算出する動作についてフローチャートを参照しつつ説明する。
図15は、本発明の第5の実施形態における補正値を算出する処理を説明するためのフローチャートである。
【0064】
まず、プログラムの例について説明する。
(1行目)
G305 M12345 A0 B0.01 P1
「M12345」は、関連付けの種類の優先順序が1→2→3→4→5の順序であることを指定する指令である。また、「A0」は過去の履歴判定が無効であることを示す指令である。なお、「A1」の場合、過去の履歴判定が有効であることを示す指令となる。また、「B0.01」は、片側の許容値Bが0.01mmであることを示す指令である。なお、「B0」の場合、マスターデータに設定された許容値であることを示す指令である。また、「P1」は穴番号がNo.1であることを示す指令である。
(2行目)
G301 M1.0 A0 B3.0 E9.0 I−100.2 J−200.5 K−80.3 R5.0 Q1.0 P0.5
「B3.0」は、X軸Y軸の位置決め計算に関連付けの補正値を加算することを指示する指令である。
「G305」、「G301」を指令することにより、熱変形による誤差(熱変位の誤差)を、「G305」の指令により補正量を設定し、「G301」の指令により、ヒーリング補正(第1の実施形態における補正)に「G303」の指令による補正を追加して加工することができる。
【0065】
続いて、
図15に示すフローチャートを用いて、熱変位の誤差による補正値を算出する処理を説明する。なお、
図15に示すフローチャートにおいて、
図14に示すフローチャートと同じ処理を行うステップについては同一の符号を付し、その説明については省略する。
図15に示すフローチャートにおいては、
図14に示すフローチャートにおけるステップST301AがステップST301Bとなっている。補正値の算出がスタートすると、位置制御回路23は、G305のパラメータ読込みを実行する(ステップST301B)。パラメータとして、
図14に示すフローチャートにおいては、M(関連付けの種類)、A(過去の履歴判定の有効無効)、B(許容値)、P(穴番号)を読み込むのに対し、
図15に示すフローチャートにおいては、M(関連付けの優先順序)、A(過去の履歴判定の有効無効)、B(許容値)、P(穴番号)を読み込む。
また、
図15に示すフローチャートにおいては、
図14に示すフローチャートにおけるステップST319が判定する際のA(過去の履歴判定の有効無効)=1であるときにステップST304に進む点が相違している。
【0066】
以上述べたように、本実施形態のワーク加工制御装置20aにおける位置制御回路23は、複数のマスターデータを選択する際の優先順位を設定し、選択したマスターデータにおいて加工誤差が許容値を超えたら、次に優先順位の高いマスターデータに移行する。
すなわち、本実施形態のワーク加工制御装置20aは、加工穴に番号を設けて、誤差を補正するマスターデータを設定し、加工誤差を入力することでマスターデータを更新しながら熱変位を補正する。
【0067】
これにより、ワーク加工制御装置20aは、機械のヒーリング誤差を、さらに加工誤差により補正することで、反転穴加工精度の向上を図ることができる。
【0068】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。