特許第6861349号(P6861349)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6861349CD81 LEL特異的モノクローナル抗体
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  • 特許6861349-CD81  LEL特異的モノクローナル抗体 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861349
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】CD81 LEL特異的モノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20210412BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20210412BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20210412BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20210412BHJP
   C12N 5/20 20060101ALI20210412BHJP
   G01N 33/577 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   G01N33/543 545A
   C07K16/28ZNA
   C12N15/13
   C12P21/08
   C12N5/20
   G01N33/577 B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-178799(P2016-178799)
(22)【出願日】2016年9月13日
(65)【公開番号】特開2017-57198(P2017-57198A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2019年9月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-182016(P2015-182016)
(32)【優先日】2015年9月15日
(33)【優先権主張国】JP
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-02092
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-02093
(73)【特許権者】
【識別番号】515259579
【氏名又は名称】中西 徹
(73)【特許権者】
【識別番号】515259812
【氏名又は名称】株式会社NEXT Stage
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】中西 徹
【審査官】 井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/077649(WO,A1)
【文献】 特表2005−537779(JP,A)
【文献】 Shoshana Levy et al.、”Structure and Membrane Topology of TAPA−1,THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,1991年,Val.266、No.22,Page.14597−14602
【文献】 中西徹 他,リウマチ早期診断薬開発のための組換えCD81タンパク質(LEL)の大量発現,日本薬学会年会要旨集,2011年,Vol.13 1st、No.3,Page.83,URL:http://nenkai.pharm.or.jp/131abst/30Y−am05.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
C07K 16/28
C12N 5/20
G01N 33/577
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のモノクローナル抗体(1)および(2):
(1)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号NITE P−02092を付与されたハイブリドーマにより産生されるCD81 LELに特異的なモノクローナル抗体または標識されている該モノクローナル抗体、
(2)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号NITE P−02093を付与されたハイブリドーマにより産生されるCD81 LELに特異的なモノクローナル抗体または標識されている該モノクローナル抗体
を用いて、対象から得た関節液試料中のCD81を検出、あるいはその量を測定する方法であって、サンドイッチELISAと組み合わせて実施される方法。
【請求項2】
下記のモノクローナル抗体(1)および(2):
(1)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号NITE P−02092を付与されたハイブリドーマにより産生されるCD81 LELに特異的なモノクローナル抗体または標識されている該モノクローナル抗体、
(2)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号NITE P−02093を付与されたハイブリドーマにより産生されるCD81 LELに特異的なモノクローナル抗体または標識されている該モノクローナル抗体
を含む、CD81を検出、あるいはその量を測定するためのキットであって、サンドイッチELISAと組み合わせて用いられるキット。
【請求項3】
対象が関節リウマチにかかっている可能性を検査するための、あるいは対象の関節リウマチの症状の重さを検査するための請求項2記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節リウマチの早期診断薬に関する。詳細には、本発明は、関節リウマチの滑液細胞において高発現しているタンパク質CD81のLarge extracellular loop (LEL)(以下において「CD81 LEL」と称することがある)に対する新規な特異的抗体、該抗体を用いたCD81の検出および測定、ならびに該抗体を用いた関節リウマチの診断キット、サンドイッチELISA等に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチは多発性関節炎を特徴とする炎症性疾患であり、進行すると関節が変形、破壊される。関節リウマチにおいては、滑膜内のタンパク質「シノビオリン」が過剰に作用して症状が悪化することがわかっている。シノビオリンはユビキチンリガーゼの一種であり、READ小胞体関連分解機構の促進などによるアポトーシスを抑制することで関節チウマチ滑膜線維芽細胞の増殖を促進させている。一方、細胞膜上に存在する4回膜貫通型タンパク質テトラスパニンの一種であるCD81は関節リウマチ滑膜細胞で高発現しており、シノビオリン遺伝子発現調節に関与している。
【0003】
従来の関節リウマチ治療は抗炎症剤と炎症性サイトカインの抑制による対症療法が主流であったが、CD81の発現を抑制することがリウマチ根絶治療につながると期待されている。
【0004】
関節ウマチは、治療が遅れれば遅れるほど関節の変形も進み、薬効も悪くなる。したがって、関節リウマチは早期診断、早期治療が肝要である。
【0005】
テトラスパニンは保存された残基を含む4つの膜貫通ドメイン、2つの細胞外ループおよび3つの細胞内ドメインから構成されている。CD81の2つの細胞外ループのうち大型のものがCD81 LELである。CD81 LELは、ほとんどのテトラスパニンと異なり、潜在的な糖鎖付加部位を含んでいないので、これを特異的に認識する抗体を見いだすことができれば、サンプル中の微量のCD81を正確に検出、測定でき、関節リウマチの早期診断、早期治療に資することになる。
【0006】
CD81に対する抗体の作成が報告されているが(非特許文献1)、CD81 LELに特異的な抗体を作成し、サンプル中のCD81 LELを実際に検出、測定したという報告はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】E. Fujimoto et al., Journal of Hard Tissue Biology 23(1) (2014) 131-134
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、サンプル中の極めて微量のCD81であっても正確に検出、定量できるCD81 LEL特異的モノクローナル抗体を得ること、これらの抗体を用いてサンドイッチELISAなどの検出、測定系を構築し、関節リウマチの診断、とりわけ早期診断に用いることであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ね、CD81 LEL特異的モノクローナル抗体を作成することに成功した。さらに本発明者は、これらのモノクローナル抗体を用いて、DC81 LEL用のサンドイッチELISAを構築し、極めて微量(ピコグラムオーダー)のCD81 LELを特異的に高感度で検出、測定することに成功した。かくして、本発明は完成された。
【0010】
したがって、本発明は以下のものを提供する。
(1)CD81 LELに特異的なモノクローナル抗体。
(2)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号NITE P−02092を付与されたハイブリドーマにより産生される(1)記載のモノクローナル抗体。
(3)標識されている(2)記載のモノクローナル抗体。
(4)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号NITE P−02093を付与されたハイブリドーマにより産生される(1)記載のモノクローナル抗体。
(5)標識されている(4)記載のモノクローナル抗体。
(6)(2)もしくは(3)記載のモノクローナル抗体および/または(4)もしくは(5)記載のモノクローナル抗体を含む、CD81検出キット。
(7)対象が関節リウマチにかかっている可能性を検査、あるいは対象の関節リウマチの症状の重さを検査するための(6)記載のキット。
(8)(2)もしくは(3)記載のモノクローナル抗体および(4)もしくは(5)記載のモノクローナル抗体を用いるサンドイッチELISAを含む、(6)または(7)記載のキット。
(9)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号NITE P−02092を付与されたハイブリドーマ。
(10)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号NITE P−02093を付与されたハイブリドーマ。
(11)(9)記載のハイブリドーマを培養し、培養液からモノクローナル抗体を回収することを特徴とする、CD81 LELに特異的なモノクローナル抗体の製造方法。
(12)(10)記載のハイブリドーマを培養し、培養液からモノクローナル抗体を回収することを特徴とする、CD81 LELに特異的なモノクローナル抗体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、微量のCD81 LELを特異的に高感度で検出、定量できるので、関節リウマチの早期診断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明のモノクローナル抗体を用いたサンドイッチELISAにおける組換えLELポリペプチドの検出結果を示すグラフである(曲線a)。市販ウサギ抗体と市販マウス抗体による測定結果(曲線b)、ならびに市販マウス抗体と市販マウス抗体による測定結果(曲線c)も示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、1の態様において、CD81 LELに特異的なモノクローナル抗体に関するものである。CD81 LELに特異的なモノクローナル抗体とは、CD81 LEL中のアミノ酸配列を認識して、CD81 LELに結合するモノクローナル抗体をいう。CD81 LELは潜在的な糖鎖付加部位を含んでいないので、これを特異的に認識する本発明のモノクローナル抗体は、サンプル中の微量のCD81であっても正確に検出でき、関節リウマチの早期診断、早期治療に資するものである。
【0014】
本発明のCD81 LELに特異的なモノクローナル抗体は、CD81 LELの全体または一部のアミノ酸配列を有するペプチド(以下において「CD81 LELポリペプチド」と称することがある)を免疫原として用いて得ることができる。CD81 LELのアミノ酸配列は公知であるので、当業者は公知の遺伝子工学的手法および/または合成化学的手法を用いてCD81 LELポリペプチドを作成することができる。
【0015】
先ず、CD81 LELポリペプチドを動物に投与して免疫を行う。動物への免疫方法、手段は当業者に公知である。動物への免疫は、例えば皮下注射、皮内注射、静脈注射、脾臓への直接注射などの公知の経路によってCD81 LELポリペプチドを投与して行う。動物としては、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、サル、などが例示されるが、これらに限定されない。CD81 LELポリペプチドを動物に投与する際にフロイントの完全または不完全アジュバント等のアジュバントを用いることが好ましい。アジュバントの種類や用法についても公知である。
【0016】
次いで、免疫された動物から脾臓細胞を取り出し、骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを得る。ハイブリドーマの取得方法は当業者に公知である。細胞融合法も公知であり、例えばポリエチレングリコールを用いる方法、センダイウイルスを用いる方法、電気融合法などが挙げられるが、これらの方法に限定されない。目的の抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングし、ハイブリドーマのクローン化を行う。ハイブリドーマの選択方法、抗体産生ハイブリドーマのスクリーニング方法は当業者に公知である。抗体活性の測定方法についても、目的とする抗体の特性に応じて当業者が適宜選択することができる。ハイブリドーマのクローン化方法も公知である。上記の方法以外にも、所望のモノクローナル抗体を作成する方法が知られており、例えばファージディスプレイ法を用いてもよい。
【0017】
本発明のCD81 LELモノクローナル抗体はCD81 LELに対する特異性が高く、サンプル中の微量のCD81タンパク質であっても検出することができる。本発明のCD81 LELモノクローナル抗体の好ましい例としては、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号NITE P−02092を付与されたハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体、および独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号NITE P−02093を付与されたハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体が挙げられる。
【0018】
本発明のモノクローナル抗体の変異体や改変体、例えばキメラ抗体、ヒト化抗体も本発明のモノクローナル抗体に包含される。変異体や改変体は、元の本発明のモノクローナル抗体の特徴を維持しているものである。変異体や改変体は、例えば、元の本発明のモノクローナル抗体と同程度の強さでCD81 LELに結合するものであってもよい。また、変異体や改変体は、元の本発明のモノクローナル抗体と同じエピトープを認識するものであってもよい。変異体や改変体の重鎖の3つの相補性決定領域(重鎖のCDR1、CDR2、CDR3)および軽鎖の3つの相補性決定領域(軽鎖のCDR1、CDR2、CDR3)のアミノ酸配列が、元の本発明のモノクローナル抗体の重鎖の重鎖のCDR1、CDR2、CDR3および軽鎖のCDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列と同じであってもよい。変異体や改変体の重鎖のCDR1、CDR2、CDR3および軽鎖のCDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列が、元の本発明のモノクローナル抗体の重鎖の重鎖のCDR1、CDR2、CDR3および軽鎖のCDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列と異なっていてもよいが、相補性決定領域のアミノ酸配列の相違は各CDRあたり1残基、2残基または3残基が好ましい。
【0019】
本発明のモノクローナル抗体の変異体または改変体には、キメラ抗体やヒト化抗体も包含される。キメラ抗体およびヒト化抗体の作成法は当業者に公知であり、容易に作成することができる。
【0020】
本発明のモノクローナル抗体を用いてCD81 LELを検出、測定することによってCD81を検出、測定することができる。本発明のモノクローナル抗体を用いてCD81を検出、測定する態様の具体例の1つとしてELISA法が挙げられる。ELISA法は公知であり、直接吸着法、サンドイッチ法、競合法などを用いて行うことができる。これらの方法は当業者が容易に実施することができる。サンドイッチELISAの手順を以下に簡単に説明する。本発明のモノクローナル抗体(捕獲抗体または固相抗体という)を固相(プレートのウェル)に吸着させ、これにサンプルおよび本発明の別のモノクローナル抗体(一次抗体という)を添加し、次いで、検出可能な標識を付した抗体(二次抗体という)を添加する。固相としては、プレートのウェルのほかチップやビーズなどが公知であり、使用可能である。様々な二次抗体が市販されているので、適宜選択して用いることができる。反応後、標識を検出し、定量することができる。捕獲抗体と一次抗体は異なるエピトープを認識するものである。CD81の検出、測定のためのサンドイッチELISAに用いることのできる好ましい本発明のモノクローナル抗体の例としては、受託番号NITE P−02092を付与されたハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体、および独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号NITE P−02093を付与されたハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体が挙げられる。これらのモノクローナル抗体のいずれか一方を捕獲抗体として用い、もう一方を一次抗体として用いることができる。したがって、本発明は、さらなる態様において、2種類の本発明のモノクローナル抗体を用いるサンドイッチELISAを含む、CD81検出キットを提供するものでもある。通常、キットには取扱説明書が添付される。
【0021】
本発明のモノクローナル抗体を用いてCD81を検出、測定する態様のさらなる具体例としてはウエスタンブロットが挙げられる。ウエスタンブロットの一般的手順としては、目的のタンパク質を含むサンプルをSDS−PAGEにて展開し、ニトロセルロース膜やPVDF膜に転写し、この膜に対して免疫染色を行うことで、タンパク質を検出するものである。ウエスタンブロットは公知であり、当業者は容易に実施することができる。したがって、本発明は、さらなる態様において、本発明のモノクローナル抗体を含む、CD81を検出するためのウエスタンブロット用キットを提供するものである。通常、キットには取扱説明書が添付される。本発明のモノクローナル抗体を用いてCD81を検出、測定する態様は上記のものに限定されず、様々な手段、方法が公知であり、当業者はそれらを適宜選択あるいは変形して用いることができる。
【0022】
CD81の検出、測定のために、本発明のモノクローナル抗体に標識を付してもよい。抗体に付する標識は公知であり、放射性同位元素、金粒子、蛍光色素、酵素などが例示されるが、これらに限らない。標識の検出方法も公知である。
【0023】
上述のごとく、本発明のモノクローナル抗体およびキットをサンプル中のCD81 LELの検出、測定に用いることができる。したがって、本発明のモノクローナル抗体およびキットを用いて対象の関節液サンプル中のCD81の量を測定することによって、対象が関節リウマチ等の関節液中のCD81レベルの上昇に関連する疾患にかかっている可能性あるいはその症状の重さを、診断、検査または判定することができる。本発明の好ましい態様において、かかる症状は関節リウマチである。関節液サンプル中のCD81の量が多いほど、対象が関節リウマチにかかっている可能性が高く、あるいは対象の関節リウマチの症状が重いとすることができる。
【0024】
本発明は、別の態様において、CD81 LELに特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマに関する。本発明のCD81 LELに特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの好ましい例としては、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号NITE P−02092を付与されたハイブリドーマおよび独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号NITE P−02093を付与されたハイブリドーマが挙げられる。
【0025】
本発明は、さらなる態様において、CD81 LELに特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを培養し、培養液からモノクローナル抗体を回収することを特徴とする、CD81 LELに特異的なモノクローナル抗体の製造方法に関する。ハイブリドーマの培養、培養液からのモノクローナル抗体の回収および精製は、当業者に公知の方法によって行うことができる。
【0026】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものと解してはならない。
【実施例1】
【0027】
動物実験は就実大学薬学部動物実験指針に従って行った。大腸菌にて産生された組換え型ヒトLELポリペプチド(アミノ酸配列を配列番号:1に示す)を抗原として用いてBalb/cマウスを免疫した。免疫したマウスから脾臓細胞を取り出し、ポリエチレングリコールを用いて1x10個の脾臓細胞を1x10個の骨髄腫細胞と融合させた。融合細胞を96ウェルプレートに分注し、HAT培地を用いてハイブリドーマ細胞を選択した。
【0028】
ELISAを用いて、LELに対する抗体力価が高いハイブリドーマをスクリーニングした。抗原(組換え型ヒトLELポリペプチド(配列番号:1))を含む緩衝液を96ウェルプレートの各ウェルに添加し、BSA(bovine serum albumin)をウェルに添加した。ハイブリドーマによって産生されたモノクローナル抗体(一次抗体)を含む培養上清を適宜希釈してウェルに添加し、二次抗体(アルカリホスファターゼ標識ヤギ抗マウスIgG抗体、プロメガ社S3721)を添加した。次いで、パラニトロフェニルリン酸(PNPP)を用いて発色させることにより、抗体力価を測定し、抗体力価が高いハイブリドーマを選択した。
【0029】
選択したハイブリドーマを10% fetal calf serumを添加したRPMI1640培地にて増殖させ、10個のハイブリドーマをプリスタン投与したBalb/cマウスに腹腔内投与し、10〜14日後に腹水を回収した。プロテインGセファロース4(GE Healthcare UK Ltd., UK)カラムを用いて腹水中のモノクローナル抗体(IgG)を精製した。HiTrap IgM Purification HP (GE Healthcare UK Ltd., UK)カラム を用いて腹水中のモノクローナル抗体(IgM)を精製した。
【0030】
最も高い抗体力価を示したハイブリドーマをF8(IgGモノクローナル抗体産生)およびB3(IgMモノクローナル抗体産生)と命名した。ハイブリドーマF8を千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託し、2015年8月25日付けで受託番号NITE P−02092を付与された。ハイブリドーマB3を千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託し、2015年8月25日付けで受託番号NITE P−02093を付与された。以下において、ハイブリドーマF8が産生するモノクローナル抗体をマウスIgG抗体F8と、ハイブリドーマB3が産生するモノクローナル抗体をマウスIgM抗体B3と称する。
【実施例2】
【0031】
1.実験方法
(1)固相抗体のプレートへの固相化
96穴プレートを蒸留水で1回洗い、50mM カーボネートバッファー(pH9.6)で固相抗体(実施例1で得たマウスIgG抗体F8:2.51mg/mL)を1000倍希釈した溶液を100μlずつ96穴プレートに分注(外側の2つずつを外した4X8個のウェルを使用)した。これをサランラップ(登録商標)でおおい、室温で1時間放置した後、ウェル中の溶液をピペットにより除去し、さらにプレートを逆さにして液をよく切った。
【0032】
(2)ブロッキング
BSA(3%)を各ウェルに分注し、サランラップ(登録商標)でおおい、室温で1時間放置した。その後、プレートを逆さにしてBSAを廃棄し、各ウェルにPBS−Tを250μl分注して、逆さにして液をよく切った。この操作を3回繰り返して洗浄した。
【0033】
(3)抗原と一次抗体との反応
(i)プレート1
抗原(組換え型ヒトLELポリペプチド(配列番号:1):LEL発現ベクターを導入した大腸菌からLELポリペプチドを培地500mLあたり60μg調製した)をTBSで各濃度に希釈し、一次抗体(実施例1で得たマウスIgM抗体B3:3.54mg/mL)をTBSで1000倍希釈した。希釈した抗原と一次抗体を各50μlずつ各ウェルに分注、混合した。その後、サランラップ(登録商標)でおおい、室温で1時間放置した。その後、ウェル中の溶液をピペットで除去し、各ウェルにPBS−Tを250μl分注して、逆さにして液をよく切った。この操作を3回繰り返して洗浄した。
【0034】
(ii)プレート2
関節リウマチ(RA)ヒト患者の関節液および変形性関節症(OA)ヒト患者の関節液を4℃、3000rpmで10分遠心分離後、上清を回収した。これらの上清をTBSで1/2および1/4に希釈した(表2において原液1/2、原液1/4と表示)。これらのサンプルからアルブミンを除去したサンプルも調製した(表2においてア1/2、ア1/4と表示)。これらのサンプルおよび一次抗体(TBSで1000倍希釈したマウスIgM抗体B3)を用いて、上記(i)プレート1と同様に操作した。
【0035】
(4)二次抗体反応
二次抗体(ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgM抗体、サンタクルーズ社SC−2064)をTBSで1000倍希釈し、100μlずつ各ウェルに分注後、サランラップ(登録商標)でおおい、室温で1時間放置した。その後、ウェル中の溶液をピペットで除去し、各ウェルにPBS−Tを250μl分注して、逆さにして液をよく切った。この操作を3回繰り返して洗浄した。
【0036】
(5)検出反応
Thermo Scientific社のペルオキシダーゼ用化学蛍光基質QuantaBluTM Fluorogenic Peroxidase Substrate Kitを使用した。キット中のQuantaBluTM Substrate SolutionとQuantaBluTM Stable Peroxidase Solutionを9:1で混合したもの(WS)を100μlずつ各ウェルに分注し、フルオロスキャンアセントFLで測定した。50分後にQuantaBluTM Stop Solutionを100μlずつ各ウェルに分注した。
【0037】
2.結果
プレート1の結果を図1(曲線a)に示す。実験を4系並行して行い、平均値を得た。図1に示す結果から、本発明のモノクローナル抗体を用いたサンドイッチELISAにおいて、10fg/ウェル〜10000fg/ウェル(0.2pg/ml〜200pg/ml)の範囲の組換えLELポリペプチドに関して、濃度と吸光度に正の相関が見られた。本発明のモノクローナル抗体を用いて極めて微量(ピコグラムオーダー)のCD81 LELを検出できることがわかった。低濃度サンプルの場合は、二次抗体あたりの酵素量(あるいは他の標識量)を増加させることによって測定感度を上げることが可能である。また、高濃度サンプルの場合は、サンプルの希釈倍率を上げることによって適切な測定が可能となる。
【0038】
比較のため、上記と同様にして、市販ウサギ抗体(サンタクルーズ社sc−9158)と市販マウス抗体(モノクローナル抗体、サンタクルーズ社sc−166029)による測定(図1の曲線b)、ならびに市販マウス抗体(モノクローナル抗体、サンタクルーズ社sc−166029)と市販マウス抗体(モノクローナル抗体、サンタクルーズ社sc−166028)による測定(図1の曲線c)も行った。いずれの場合も、試験したLEL濃度領域においては測定不可能であった。
【0039】
プレート2の結果を表1に示す。実験を4系並行して行い、平均値を得た。
【表1】
【0040】
以上の実験結果から、本発明のモノクローナル抗体を用いて、関節リウマチ(RA)あるいは変形性関節症(OA)患者の関節液サンプル中のCD81(またはLEL)を検出、測定することが可能であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、生物学、医学等の研究分野、関節リウマチの診断薬の分野、および関節リウマチの研究分野において利用可能である。
【受託番号】
【0042】
本発明のモノクローナル抗体(マウスIgG抗体F8)を産生するハイブリドーマF8を独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託し、受託番号NITE P−02092を付与された。
本発明のモノクローナル抗体(マウスIgM抗体B3)を産生するハイブリドーマB3を独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託し、受託番号NITE P−02093を付与された。
【配列表フリーテキスト】
【0043】
配列番号:1は、実施例1で用いた組換えLELポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]