(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
皮膜形成用樹脂、膨張開始温度が80℃〜150℃である熱膨張性マイクロカプセル、アルコール及び水を、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、18〜40質量%、5〜22質量%、7〜20質量%及び30〜56質量%含有し、上記皮膜形成用樹脂は、ガラス転移温度が−70℃〜−50℃のポリウレタン樹脂であり、上記アルコールは、イソプロピルアルコールであることを特徴とする、加熱された飲料又は食品を収容する容器の断熱層の形成に用いる断熱層形成用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、紙、樹脂フィルム、樹脂成形体、無機材料成形体等の被塗物(基材)の表面に、コーティング、スプレー等の、従来、公知の方法で塗布した後、塗膜を熱処理(加熱乾燥)することにより、断熱皮膜を形成するために好適な液状組成物であり、皮膜形成用樹脂、膨張開始温度が80℃〜150℃である熱膨張性マイクロカプセル、アルコール及び水を含有する断熱層形成用組成物である。塗膜の熱処理(加熱乾燥)により、熱膨張性マイクロカプセルが体積膨張して膨張カプセルとなり、この膨張カプセルが皮膜内部に分散相として存在し、断熱効果が付与される。
本発明の断熱層形成用組成物は、接着性改良剤、充填剤、粘度調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、難燃剤、帯電防止剤、防カビ剤、着色剤等の他の成分を含有することができる。
【0010】
以下、本発明の断熱層形成用組成物について、説明する。
【0011】
上記皮膜形成用樹脂は、これを含む液状組成物を用いて得られた塗膜の加熱乾燥により、皮膜を形成するものであれば、特に限定されない。尚、本発明に係る皮膜形成用樹脂は、単一物質により皮膜を形成するもの、及び、2種以上の物質の反応等により皮膜を形成するもの、のいずれでもよく、後者の場合の組成物中の含有割合は、反応により形成された樹脂の量を用いて計算されたものとする。
【0012】
上記皮膜形成用樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂及びこれらのシリコーン変性物又はシラン変性物等が挙げられる。本発明においては、断熱層形成用組成物からなる塗膜の加熱乾燥により形成された皮膜の耐水性又は耐溶剤性、基材に対する密着性等を有する、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂又はこれらの変性物等が好ましく、これらのうち、アルコール水溶液に溶解する又はアルコール水溶液中で分散性が良好なウレタン樹脂又はその変性物が特に好ましい。
【0013】
上記ウレタン樹脂としては、例えば、カルボキシル基を有し、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー原料と、ヒドロキシル基及び重合性不飽和結合を有する化合物とを反応させて、上記イソシアネート基及び上記ヒドロキシル基によるウレタン結合を含むウレタンプレポリマーを得た後、このウレタンプレポリマーを、アルコール、水、中和剤及び鎖伸長剤を含む液中で分散させて、分子末端に重合性不飽和結合を有するウレタン樹脂原料を生成させ、次いで重合性不飽和結合の重合を行って得られた樹脂とすることができる。
【0014】
上記ウレタンプレポリマー原料は、カルボキシル基を有するジオールと、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて得られたものとすることができ、好ましくは、イソシアネート基の当量をヒドロキシル基の合計当量より過剰とさせて得られたものである。
カルボキシル基を有するジオールとしては、α,α’−ジメチロールアルカン酸(グリセリン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸等)、ジオキシマレイン酸、ジオキシフマル酸、酒石酸、2,6−ジオキシ安息香酸、4,4−ビス(ヒドロキシフェニル)吉草酸、4,4−ビス(ヒドロキシフェニル)酪酸等が挙げられる。
ポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合したポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジプロピレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA等の飽和又は不飽和の低分子量グリコールと、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の二塩基酸又はこれらに対応する酸無水物とを脱水縮合反応させて得られたポリエステルポリオール;ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、リシントリイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水添化XDI、水添化MDI等の脂環式イソシアネート;上記イソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビューレット変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、オキサゾリドン変性体、イソシアネート基末端プレポリマー等の変性イソシアネート等が挙げられる。
【0015】
その後、ウレタンプレポリマー原料と反応させる、ヒドロキシル基及び重合性不飽和結合を有する化合物としては、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシドール/アクリル酸付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、2−ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルモノビニルエーテル、N−メチロールアクリルアミド、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、得られるウレタンプレポリマーにイソシアネート基が若干残存する割合で用いられる。
【0016】
次に、ウレタンプレポリマーを、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンタノール、sec−アミルアルコール等のアルコール;水;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン等の3級アミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−アルキルジエタノールアミン、N,N’−ジアルキルモノエタノールアミン、N−アルキルジイソプロパノールアミン、N,N’−ジアルキルモノイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン、アンモニア等の中和剤;及び、エチレンンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等の脂肪族ジアミン;2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の分子内に水酸基を有するジアミン;メチレンジヒドラジン、エチレンジヒドラジン、プロピレンジヒドラジン等のアルキレンジヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等の飽和又は不飽和ジヒドラジン;ダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等の鎖伸長剤を含む液中で分散させて、分子末端に重合性不飽和結合を有するウレタン樹脂原料を生成させる。
【0017】
その後、ラジカル重合法等を利用して、ウレタン樹脂原料の重合性不飽和結合を重合させ、高分子量化されたウレタン樹脂の分散液を得ることができる。
【0018】
上記皮膜形成用樹脂のガラス転移温度は、断熱層形成用組成物からなる塗膜を加熱乾燥した際の、熱膨張性マイクロカプセルの好ましい体積膨張性が得られることから、好ましくは−70℃〜−50℃であり、更に好ましくは−65℃〜−55℃である。
【0019】
上記熱膨張性マイクロカプセルは、好ましくは、加熱により占有体積を増す内包物質(気体、又は、固体若しくは液体であって加熱により気化するもの)が、樹脂材料からなる外殻の内部に封じ込められた粒子状マイクロカプセルであり、本発明に係る熱膨張性マイクロカプセルは、80℃〜150℃で加熱されると体積膨張するマイクロカプセルである。上記温度は、膨張開始温度であり、このような性質を有する熱膨張性マイクロカプセルが加熱されて膨張開始温度に達すると、内包物質が体積膨張し、外殻を構成する樹脂材料が軟化するため、内圧により膨張したカプセル(膨張カプセル)が得られる。本発明において、上記熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性の樹脂材料(樹脂組成物)からなる外殻の内部に、液体化合物が内包されたものであることがより好ましい。
【0020】
上記熱膨張性マイクロカプセルを構成する内包物質である液体化合物は、上記熱膨張性マイクロカプセルの外殻を構成する樹脂材料の軟化温度以下の沸点(大気圧条件)を有するものが好ましく、例えば、n−ブタン、イソブタン、シクロブタン、n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、シクロオクタン等の炭化水素;C
3F
7OCH
3、C
4F
9OCH
3、C
4F
9OC
2H
5等のハイドロフルオロエーテル化合物等とすることができる。上記液体化合物は、1種のみであってよいし、2種以上であってもよい。上記液体化合物としては、炭化水素が好ましく、炭素原子数が4〜5の低沸点炭化水素を含むことが特に好ましい。また、外殻を構成する樹脂材料は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、芳香族ビニル化合物、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド、及び、2以上の重合性炭素−炭素不飽和結合を有する多官能性化合物から選ばれた少なくとも1種に由来する構造単位を含む熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニリデン;塩化ビニリデン・アクリロニトリル共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル・メタクリル酸アルキルエステル共重合体等の、アクリロニトリル系(共)重合体;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系(共)重合体;ポリ塩化ビニル等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリル系(共)重合体が特に好ましい。上記樹脂材料(樹脂組成物)は、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤等の添加剤を含有することができる。
【0021】
上記熱膨張性マイクロカプセルの形状は、球状又は楕円球状であり、熱機械分析(TMA)等により測定された粒子径は、適正な膨張率を与え、良好な断熱層を与えることから、好ましくは2μm以上、より好ましくは3〜40μm、更に好ましくは3〜30μmである。
【0022】
本発明の断熱層形成用組成物は、上記熱膨張性マイクロカプセルを、1種のみ含んでよいし、2種以上を含んでもよい。
【0023】
本発明の断熱層形成用組成物は、膨張開始温度が80℃未満又は150℃を超える、他の熱膨張性マイクロカプセルを、更に含有してもよい。この場合、他の熱膨張性マイクロカプセルの含有量の上限は、皮膜形成用樹脂及び熱膨張性マイクロカプセルの合計を100質量部としたときに、好ましくは15質量部である。
【0024】
上記アルコールは、脂肪族アルコール、脂環式アルコール及び芳香族アルコールのいずれでもよく、また、モノオール及びポリオールのいずれでもよい。本発明において、上記アルコールは、好ましくは、水に溶解するアルコールであり、より好ましくは、炭素原子数が1〜4の脂肪族アルコールである。特に好ましくは、イソプロピルアルコールである。
【0025】
本発明の断熱層形成用組成物に含まれる皮膜形成用樹脂、熱膨張性マイクロカプセル、アルコール及び水の含有量は、保存安定性に優れ、膨張カプセルのサイズのばらつきの小さい断熱層を円滑に形成することができることから、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、18〜40質量%、5〜22質量%、7〜20質量%及び30〜56質量%であり、好ましくは20〜35質量%、8〜20質量%、8〜15質量%及び38〜55質量%、より好ましくは25〜30質量%、9.5〜16質量%、8.5〜13.5質量%及び42〜53質量%である。
【0026】
本発明の断熱層形成用組成物は、従来、公知の混合分散機、即ち、プラネタリーミキサー、アトライター、グレンミル、ニーダー、ロール、ディゾルバー等を用いて、原料成分を混合することにより製造することができる。
【0027】
本発明の断熱層形成用組成物は、基材の表面への断熱層形成に好適である。即ち、組成物を基材11の表面に塗布して塗膜を形成した後、得られた塗膜を加熱することにより、熱膨張性マイクロカプセルを体積膨張させるとともに樹脂皮膜を形成させ、皮膜形成用樹脂からなる母相の中に膨張カプセルからなる分散相を含む膨張カプセル含有樹脂皮膜からなる断熱層13を有する断熱材1を製造することができる(
図1参照)。
他の使用方法としては、剥離可能なシート等の表面に塗膜を形成した後、得られた塗膜を加熱することにより、熱膨張性マイクロカプセルを体積膨張させ、皮膜形成用樹脂からなる母相の中に膨張カプセルからなる分散相を含む膨張カプセル含有樹脂皮膜の単体を製造することができる。
【0028】
本発明の断熱層形成用組成物を用いて断熱材を製造する方法として、本発明では、断熱層形成用組成物を、基材の表面に塗布する工程(以下、「第1工程」という)と、得られた塗膜を加熱して、アルコール及び水を蒸発させるとともに、該塗膜に含まれる熱膨張性マイクロカプセルを膨張させつつ皮膜化する工程(以下、「第2工程」という)とを、順次、備える。
【0029】
本発明に係る第1工程は、断熱層形成用組成物を、基材の表面の所定の部分に塗布する工程である。
上記基材は、有機材料及び無機材料のいずれを含むものでもよく、これらを組み合わせたものであってもよい。本発明においては、紙、樹脂フィルム、樹脂成形体、無機材料成形体等が好ましく用いられる。
【0030】
第1工程において、組成物を基材に塗布する方法は、特に限定されない。通常、基材の構成材料、塗布部の表面形状等に応じて、コーティング(ディップコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、キスコーティング等)、スプレー(エアレススプレー、エアスプレー等)、印刷(グラビア印刷、スクリーン印刷等)等から、適宜、選択される。
表面外観性に優れ、断熱性に優れた皮膜の形成に好適な塗膜の厚さは、通常、20μm以上、好ましくは30〜100μm、より好ましくは40〜80μmである。上記のように、本発明の断熱層形成用組成物は、保存安定性に優れ、熱膨張性マイクロカプセル等の特定の成分が沈降する等の不具合が抑制されるため、得られる塗膜に含まれる熱膨張性マイクロカプセルは、全体に渡って均一に分布している。
【0031】
本発明に係る第2工程は、塗膜を加熱して、アルコール及び水を蒸発させるとともに、塗膜に含まれる熱膨張性マイクロカプセルを体積膨張させつつ皮膜化する工程である。
塗膜の加熱方法は、特に限定されず、塗膜を所定の加熱温度条件下に曝す方法、塗膜を常温から所定の加熱温度まで昇温する方法等とすることができる。尚、上記の所定の加熱温度及びその加熱時間は、皮膜形成用樹脂の種類、熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度等により、適宜、選択される。塗膜の加熱温度は、通常、100℃以上、好ましくは120℃〜150℃である。また、塗膜の加熱時間は、通常、30〜180秒間、好ましくは45〜120秒間である。このような加熱処理により、熱膨張性マイクロカプセルを膨張させ、塗膜の厚さに対して、好ましくは4〜16倍、より好ましくは7〜14倍の厚さの膨張カプセル含有樹脂皮膜を得ることができる。この膨張カプセル含有樹脂皮膜の厚さは、好ましくは200〜1000μm、より好ましくは300〜800μmである。また、この膨張カプセル含有樹脂皮膜に含まれる膨張カプセルのサイズ(平均径)は、好ましくは30〜100μm、より好ましくは50〜80μmである。
【0032】
第2工程により、
図1に示す構造を有する断熱材1を製造することができるが、目的、用途等により、第1工程及び第2工程を繰り返して、より厚い断熱層としてもよい。また、他の工程を備えることにより、多様な構造を有する断熱材とすることができる。例えば、
図1に示す断熱材1の断熱層13の表面に、その少なくとも一部を被覆する層を形成させてなる複合材料(図示せず)等とすることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。
【0034】
1.断熱層形成用組成物の原料
実施例及び比較例で用いた原料は、以下の通りである。
【0035】
1−1.皮膜形成用樹脂
下記樹脂成分を含むアルコール水溶液、水分散液又は水溶液を用いた。
(1)ポリウレタン樹脂のアルコール水溶液(A1)
ガラス転移温度が−60℃であるポリウレタン樹脂35質量%、イソプロピルアルコール9質量%及び水56質量%を含む荒川化学社製ポリウレタン樹脂「ユリアーノ W321」(商品名)を用いた。
(2)ポリウレタン樹脂の水分散液(A2)
ガラス転移温度が−38℃であるポリウレタン樹脂50質量%及び水50質量%を含む第一工業製薬社製非反応型ポリウレタン樹脂「スーパーフレックス E2000」(商品名)を用いた。
(3)アクリル樹脂の水溶液(A3)
ガラス転移温度が21℃であるアクリル樹脂40質量%を含む水溶液を用いた。
【0036】
1−2.熱膨張性マイクロカプセル
アクリロニトリル・メタクリレート共重合体からなる外殻の内部にイソブタンを含む、膨張開始温度が90℃であり、粒子径が3〜30μm(平均径10μm)である熱膨張性マイクロカプセルを用いた。
1−3.消泡剤
シリコーン化合物を用いた。
【0037】
2.断熱層形成用組成物の製造及び評価
表1に従って、断熱層形成用組成物を製造した。そして、断熱層形成用組成物及び基紙を用いて、断熱紙を製造した。
【0038】
実施例1
78質量部のポリウレタン樹脂のアルコール水溶液(A1)と、12質量部の熱膨張性マイクロカプセルと、0.05質量部の消泡剤と、10質量部の20%イソプロピルアルコール水溶液とを混合して、断熱層形成用組成物(S1)を得た。この組成物を25℃で24時間静置し、保存安定性を評価した。分離、沈降若しくは増粘のないもの、あるいは、分離又は沈降があるが、攪拌すれば良好な分散状態となるものを「○」、分離若しくは沈降があり、撹拌しても元に戻らないもの、又は、増粘若しくはゲル化するものを「×」とした。
次に、厚さ275μmの基紙に、バーコート法により、組成物を塗布(塗膜の厚さ:50μm)し、大気中140℃で60〜90秒間加熱し、塗膜を乾燥させるとともに、熱膨張性マイクロカプセルを膨張させ、厚さ445〜505μmの皮膜(断熱層)を有する断熱紙を得た(
図2参照)。得られた皮膜は、基紙に対して、密着性に優れていた。
その後、電子顕微鏡により、この断熱紙の表面観察を行い、皮膜が、n=10として算出された平均径が65μmである膨張カプセルを含むこと、及び、良好な発泡状態を有することを確認した(
図3参照)。そして、断熱性を評価するため、
図4に示す内容積200mLのポリプロピレン樹脂製カップ(市販品)30の側面全体に、上記断熱紙20の断熱層23側の面を貼り合わせて加熱飲料用の保温カップ50を作製した(
図5参照)。次いで、この保温カップ50に熱湯(93℃)を注ぎ、上記内容積の約90%に相当する量(約180mL)となった瞬間の基紙21側の面の温度を、放射温度計により測定したところ、71.7℃であった。尚、断熱紙20を貼り合わせずにポリプロピレン樹脂製カップ30に熱湯(93℃)を注ぎ、側面の温度を測定した場合、89.7℃であった。
【0039】
実施例2〜5並びに比較例1及び2
表1に記載の原料を混合して、断熱層形成用組成物(S2)〜(S7)を製造し、その後、実施例1と同様にして、断熱紙及び保温カップを得た。そして、各種評価を行った。その結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1から明らかなように、実施例1〜5の組成物は、保存安定性に優れる。また、十分な断熱効果を得ることができた。一方、比較例1及び2の組成物は、保存安定性に劣っていた。
【0042】
尚、本発明においては、上記の具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて、本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。