【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「リチウムイオン電池応用・実用化先端技術開発事業」、「高性能リチウムイオン電池技術開発」及び「高容量・低コスト酸化物正極を用いた高エネルギー密度リチウムイオン電池の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非水系溶媒が、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群より選択される少なくとも2種を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解液。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の電解液およびリチウムイオン二次電池の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0027】
[電解液]
本発明の第一態様の電解液は、非水系溶媒と、リチウム塩と、下記一般式(1)で表されるフッ素含有エーテル化合物および下記一般式(2)で表されるフッ素含有カーボネート化合物から選択される少なくとも1種のフッ素含有化合物と、下記一般式(3)で表されるイオン液体および下記一般式(4)で表されるイオン液体の少なくともいずれか一方と、を含む。
【0028】
【化5】
[式中、R
1は少なくとも6個のフッ素原子を有する炭素数3〜8のフルオロアルキル基を表わし、R
2は−CF
3、−CHF
2、−CH
2Fからなる群より選択されるフルオロアルキル基を表わす。]
【0029】
【化6】
[式中、R
3は少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜3のフルオロアルキル基を表わし、R
4は炭素数1〜3のアルキル基または少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜3のフルオロアルキル基を表わす。]
【0030】
【化7】
[式中、X
−は、PF
6−、BF
4−、NO
3−、(C
2F
5)
3PF
3−、N(SO
2CF
3)
2−、CF
3SO
3−、C
4F
9SO
3−、CH
3SO
3−、CH
3C
6H
4SO
3−、B(CN)
4−、N(CN)
2−、C(CN)
3−、SCN
−、HSO
4−、CH
3SO
4−、C
2H
5SO
4−、C
4H
9SO
4−、C
6H
13SO
4−、C
8H
17SO
4−、C
5H
11O
2SO
4−、B(C
2O
4)
2−、CH
3COO
−、CF
3COO
−、Cl
−、Br
−およびI
−からなる群より選ばれるアニオンを表わす。R
5およびR
6はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基である。]
【0031】
【化8】
[式中、X
−は、PF
6−、BF
4−、NO
3−、(C
2F
5)
3PF
3−、N(SO
2CF
3)
2−、CF
3SO
3−、C
4F
9SO
3−、CH
3SO
3−、CH
3C
6H
4SO
3−、B(CN)
4−、N(CN)
2−、C(CN)
3−、SCN
−、HSO
4−、CH
3SO
4−、C
2H
5SO
4−、C
4H
9SO
4−、C
6H
13SO
4−、C
8H
17SO
4−、C
5H
11O
2SO
4−、B(C
2O
4)
2−、CH
3COO
−、CF
3COO
−、Cl
−、Br
−およびI
−からなる群より選ばれるアニオンを表わす。R
5およびR
6はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基であり、R
5が炭化水素基の場合の置換位置は、オルト、メタ、パラ位のいずれかである。]
【0032】
「非水系溶媒」
本実施形態の電解液に含まれる非水系溶媒は、支持塩としてのリチウム塩を溶解可能であり、上記一般式(1)で表されるフッ素含有エーテル化合物および上記一般式(2)で表されるフッ素含有カーボネート化合物からなる群より選択される少なくとも1種のフッ素含有化合物と、上記一般式(3)で表されるイオン液体および上記一般式(4)で表されるイオン液体の少なくともいずれか一方と、を安定に溶解可能な有機溶媒であることが好ましい。
このような有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等の炭酸エステル化合物;前記炭酸エステル化合物の任意の水素原子のうち少なくとも1個がフッ素原子で置換された、モノフルオロエチレンカーボネート(FEC)等のフッ素含有炭酸エステル化合物;γ−ブチロラクトン、ギ酸エチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル等のカルボン酸エステル化合物;1,3−プロパンスルトン等のスルホン酸エステル化合物;テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物;スルホラン等のスルホン化合物が挙げられる。
前記有機溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
前記非水系溶媒は、前記炭酸エステル化合物から選択される少なくとも2種を含むことが好ましく、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)からなる群から選択される少なくとも1種の電解液との混合溶媒であることがより好ましく、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒であることがさらに好ましい。
【0034】
混合溶媒における各溶媒の混合比は、上記したリチウム塩、フッ素化合物、およびイオン液体の溶解性やと安定性等を考慮して決定することができる。
【0035】
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒においては、EC:DECは体積比で10:90〜90:10であることが好ましく、20:80〜50:50であることがより好ましく、30:70〜40:60であることがさらに好ましい。
【0036】
「リチウム塩」
本実施形態の電解液に含まれるリチウム塩としては、公知のリチウムイオン二次電池で使用されているリチウム塩を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、四フッ化ホウ素リチウム(LiBF
4)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2、LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO
2CF
3)
2、LiTFSI)等が挙げられる。リチウム塩は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
本実施形態の電解液の総量に対するリチウム塩の含有量は特に限定されず、例えば、リチウム塩の濃度が、好ましくは0.2モル/リットル〜3.0モル/リットル、より好ましくは0.4モル/リットル〜2.0モル/リットルとなるように、含有量を調節することができる。
【0038】
「フッ素含有エーテル化合物」
前記一般式(1)のR
1は直鎖状、分岐鎖状または環状のフルオロアルキル基であり、非水系溶媒中における溶解性を高める観点から、直鎖状または分岐鎖状のフルオロアルキル基であることが好ましく、直鎖状フルオロアルキル基であることがより好ましい。
R
1で表されるフルオロアルキル基を構成する炭素数は、非水系溶媒中における溶解性を高める観点から、3〜6であることが好ましく、3〜5であることがより好ましく、3または4であることがさらに好ましい。
R
1で表されるフルオロアルキル基は、少なくとも6個のフッ素原子を有する。また、R
1のフッ素原子の数の上限については特に制限はなく、フルオロアルキル基の炭素数などに応じて適宜決定することができるが、少なくとも1個の水素原子がフッ素に置換されずに残っていることが好ましい。即ち、R
1は少なくとも1個の水素原子を有することが好ましい。
【0039】
R
2で表されるフルオロアルキル基は、−CF
3、−CHF
2および−CH
2Fからなる群より選択されるフルオロアルキル基であり、中でも−CHF
2、−CH
2Fのいずれかであることが好ましい。
【0040】
上記一般式(1)で表されるフッ素含有エーテル化合物群のうち、より好ましい化合物は、下記一般式(5)で表される。
【0041】
【化9】
[式中、X
1〜X
10は水素原子またはフッ素原子を表し、X
1〜X
7のうち少なくとも6個がフッ素原子であり、X
8〜X
10のうち少なくとも1個がフッ素原子である。]
【0042】
上記一般式(5)中、X
4〜X
7のうちいずれか1個が水素原子であることが好ましく、X
4またはX
5が水素原子であることがより好ましい。
上記一般式(5)中、X
8〜X
10のうちいずれか1個または2個が水素原子であることが好ましく、X
8〜X
10のうちいずれか1個が水素原子であることがより好ましい。
【0043】
上記一般式(1)で表されるフッ素含有エーテル化合物群のうち、さらに好ましい化合物は、下記一般式(6−1)〜(6−6)で表される化合物であり、これらの中でも、下記式(6−1)で表される1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルジフルオロメチルエーテルが特に好ましい。
【0045】
本実施形態の電解液に含まれるフッ素含有エーテル化合物は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0046】
「フッ素含有カーボネート化合物」
前記一般式(2)のR
3は直鎖状のフルオロアルキル基である。
R
3を構成する炭素数は、1〜3であり、非水系溶媒中における溶解性をより高める観点から、1〜2であることがより好ましい。
R
3で表されるフルオロアルキル基は、少なくとも1個のフッ素原子を有する。また、R
3のフッ素原子の数の上限については特に制限はなく、フルオロアルキル基の炭素数などに応じて適宜決定することができるが、少なくとも1個の水素原子がフッ素に置換されずに残っていることが好ましい。即ち、R
3は少なくとも1個の水素原子を有することが好ましい。
【0047】
前記一般式(2)のR
4は直鎖状のアルキル基または少なくとも1個のフッ素原子を有するフルオロアルキル基である。
R
4を構成する炭素数は、1〜3であり、非水系溶媒中における溶解性をより高める観点から、1〜2であることがより好ましい。
R
4は、フッ素原子を有しないアルキル基であることが好ましい。
【0048】
上記一般式(2)で表されるフッ素含有カーボネート化合物群の中でも、2,2−ジフルオロエチルエチルカーボネート(2,2−difluoroethyl ethyl carbonate、CAS.NO.916678−14−3)が特に好ましい。
【0049】
本実施形態の電解液に含まれるフッ素含有カーボネート化合物は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0050】
本実施形態の電解液の総量に対する前記フッ素化合物の含有量は、0.5体積%〜60体積%であることが好ましく、0.8体積%〜35体積%であることがより好ましく、1体積%〜10体積%であることがさらに好ましい。フッ素化合物の総含有量が、上記の下限以上であれば、電極の表面に被膜を形成し、サイクル特性の向上を達成できる。一方、フッ素化合物の総含有量が、上記の上限以下であれば、セパレータへの浸透性も問題ない。
【0051】
また、本実施形態の電解液の総量に対する前記フッ素化合物の含有量は、0.5重量%〜60重量%であることが好ましく、0.8重量%〜35重量%であることがより好ましく、1重量%〜10重量%であることがさらに好ましい。フッ素化合物の総含有量が、上記の下限以上であれば、電極の表面に被膜を形成し、サイクル特性の向上を達成できる。一方、フッ素化合物化合物の総含有量が、上記の上限以下であれば、セパレータへの浸透性も問題ない。
【0052】
本実施形態の電解液に含まれるフッ素含有エーテル化合物およびフッ素含有カーボネート化合物は、いずれかを単独で用いてもよく、両方を用いてもよい。
【0053】
本実施形態の電解液が、前記フッ素化合物を2種以上含む場合、本実施形態の電解液の総量に対するフッ素化合物の総含有量は、0.5体積%〜60体積%であることが好ましく、0.8体積%〜35体積%であることがより好ましく、1体積%〜10体積%であることがさらに好ましい。フッ素化合物の総含有量が、上記の下限以上であれば、電極の表面に被膜を形成し、サイクル特性の向上を達成できる。一方、フッ素化合物の総含有量が、上記の上限以下であれば、セパレータへの浸透性も問題ない。
【0054】
また、本実施形態の電解液が、前記フッ素化合物を2種以上含む場合、本実施形態の電解液の総量に対するフッ素化合物の総含有量は、0.5重量%〜60重量%であることが好ましく、0.8重量%〜35重量%であることがより好ましく、1重量%〜10重量%であることがさらに好ましい。フッ素化合物の総含有量が、上記の下限以上であれば、電極の表面に被膜を形成し、サイクル特性の向上を達成できる。一方、フッ素化合物の総含有量が、上記の上限以下であれば、セパレータへの浸透性も問題ない。
【0055】
「イオン液体」
上記一般式(3)および上記一般式(4)のX
−は、PF
6−、BF
4−、NO
3−、(C
2F
5)
3PF
3−、N(SO
2CF
3)
2−、CF
3SO
3−、C
4F
9SO
3−、CH
3SO
3−、CH
3C
6H
4SO
3−、B(CN)
4−、N(CN)
2−、C(CN)
3−、SCN
−、HSO
4−、CH
3SO
4−、C
2H
5SO
4−、C
4H
9SO
4−、C
6H
13SO
4−、C
8H
17SO
4−、C
5H
11O
2SO
4−、B(C
2O
4)
2−、CH
3COO
−、CF
3COO
−、Cl
−、Br
−およびI
−からなる群より選ばれるアニオンであり、PF
6−、BF
4−であることが好ましく、PF
6−であることがより好ましい。
上記一般式(3)および上記一般式(4)におけるR
5は水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基である。R
5は水素原子または炭素数1〜16の炭化水素基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基がであることがより好ましく、水素原子または炭素数1の炭化水素基であることががさらに好ましい。R
5としての炭化水素基は、直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましい。前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基が挙げられ、これらのうちメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が好ましい。R
5は水素原子またはメチル基であることが特に好ましい。
尚、式(4)においてR
5が炭化水素基の場合の置換位置は、オルト、メタ、パラ位のいずれかであり、オルト位であることが好ましい。
上記一般式(3)および上記一般式(4)におけるR
6は水素または炭素数1〜18の炭化水素基である。R
6は水素または炭素数2〜16の炭化水素基であることが好ましく、水素原子または炭素数2〜12の炭化水素基がであることがより好ましく、水素原子または炭素数2〜6の炭化水素基であることががさらに好ましい。R
6としての炭化水素基は、直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましい。前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられ、これらのうちブチル基、ペンチル基、へキシル基が好ましい。
イオン液体としては、1−ブチル−2メチルピリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、1−ペンチル−2メチルピリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、1−ヘキシル−2メチルピリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、1−ペンチルピリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、1−ヘキシルピリジニウムヘキサフルオロリン酸塩が特に好ましい。
【0056】
本実施形態の電解液に含まれる、上記イオン液体は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0057】
本実施形態の電解液の総量に対する上記イオン液体の含有量は、0.1体積%〜10体積%であることが好ましく、0.2体積%〜5体積%であることがより好ましい。
イオン液体の含有量が、上記の下限以上であれば、ガス発生を抑制する効果が現われる。一方、イオン液体の含有量が、上記の上限以下であれば、セパレータへの浸透性も問題ない。
【0058】
また、本実施形態の電解液の総量に対する上記イオン液体の含有量は、0.1重量%〜10重量%であることが好ましく、0.2重量%〜5重量%であることがより好ましい。
イオン液体の含有量が、上記の下限以上であれば、ガス発生を抑制する効果が現われる。一方、イオン液体の含有量が、上記の上限以下であれば、セパレータへの浸透性も問題ない。
【0059】
「任意成分」
本実施形態の電解液は、上記した非水系溶媒、リチウム塩、フッ素化合物、並びに、イオン液体以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、任意成分が配合されていてもよい。
任意成分は、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
【0060】
「ホウ素系化合物」
本実施形態の電解液は、任意成分として、下記一般式(7)で表されるホウ素系化合物を含有してもよい。
【0061】
【化11】
[式中、R
7は炭素数1〜4のアルキル基または炭素数2〜4のアルケニル基を表し、R
8は炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
【0062】
上記一般式(7)のR
7がアルキル基である場合、このアルキル基は、リチウムイオン二次電池の充放電に伴う容量低下を低減する観点から、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。前記アルキル基の炭素数は、1〜3であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
上記一般式(7)のR
7がアルケニル基である場合、リチウムイオン二次電池の充放電に伴う容量低下を低減する観点から、ビニル基、1−プロペニル基または2−プロペニル基(アリル基)であることが好ましく、ビニル基またはアリル基であることがより好ましく、ビニル基であることがさらに好ましい。
【0063】
上記一般式(7)のR
8は直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基であり、非水系溶媒中における溶解性を高める観点から、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であることが好ましく、直鎖状アルキル基であることがより好ましい。
R
8で表されるアルキル基を構成する炭素数は、非水系溶媒中における溶解性を高める観点から、1〜3であることが好ましく、1または2であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
【0064】
上記一般式(7)で表される好適なホウ素系化合物としては、例えば、ビニルボロン酸(N−メチルイミノジ酢酸)メチルエステル、ビニルボロン酸(N−メチルイミノジ酢酸)エチルエステル、アリルボロン酸(N−メチルイミノジ酢酸)メチルエステル、アリルボロン酸(N−メチルイミノジ酢酸)エチルエステル等が挙げられる。これらの中でも、特に、下記式(8)で表されるビニルボロン酸(N−メチルイミノジ酢酸)メチルエステルを用いることにより、リチウムイオン二次電池の前記容量低下を一層低減させることができる。
本実施形態における電解液に含まれる上記一般式(7)で表されるホウ素系化合物は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0066】
本実施形態の電解液の総量に対するホウ素系化合物の含有量は、0.01質量%〜5質量%であることが好ましく、0.03質量%〜1質量%であることがより好ましく、0.06質量%〜0.5質量%であることがさらに好ましい。
【0067】
本実施形態の電解液において、フッ素含有エーテル化合物100質量部に対するホウ素系化合物の含有量は、5質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
【0068】
「電解液の調製方法」
本実施形態の電解液の調製方法は、上記した非水系溶媒、リチウム塩、フッ素化合物、および、イオン液体、並びに、必要に応じて添加する任意成分を混合し、各成分を均一に溶解または分散できる方法であればよく、公知の電解液と同様に調製することができる。
【0069】
本実施形態の電解液は、上記した非水系溶媒と、リチウム塩と、フッ素化合物と、イオン液体と、を含むため、この電解液を備えたリチウムイオン二次電池は、使用電圧を4.5V 以上に設定した場合においても、その充放電サイクルに伴う容量低下を従来よりも低減することができる。
【0070】
[リチウムイオン二次電池]
本発明の第二態様のリチウムイオン二次電池は、上述の電解液を備える。
【0071】
以下、適用可能な構成を有する、リチウムイオン二次電池の実施形態について説明する。
【0072】
本実施形態のリチウムイオン二次電池の構成として、例えば、正極および負極が対向配置された電極素子と、電解液とが外装体に内包されている構成が挙げられる。二次電池の形状は特に制限されず、例えば、円筒型、扁平捲回角型、積層角型、コイン型、扁平捲回ラミネート型および積層ラミネート型のいずれであってもよい。これらの中でも、積層ラミネート型が好ましい。以下、積層ラミネート型のリチウムイオン二次電池について、本実施形態の一例として説明する。
【0073】
図1は、積層ラミネート型の二次電池が有する電池要素(電極素子)の構造を示す模式的断面図である。この電極素子は、正極1と負極2がセパレータ3を挟んで積層されてなる単位が、正極集電体1Aまたは負極集電体2Aを挟んで複数積層されてなる。
各正極1が有する正極集電体1Aは、正極活物質に覆われていない端部で互いに溶接されて電気的に接続され、さらにその溶接箇所に正極リードタブ1Bが溶接されている。各負極2が有する負極集電体2Aは、負極活物質に覆われていない端部で互いに溶接されて電気的に接続され、さらにその溶接箇所に負極リードタブ2Bが溶接されている。
【0074】
「負極」
負極は、負極活物質が負極用結着剤によって負極集電体を覆うように結着されてなる。
負極活物質として、例えば、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る炭素材料(a)、リチウムと合金化可能な金属(b)、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る金属酸化物(c)等を用いることができる。
【0075】
炭素材料(a)としては、黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブ、またはこれらの複合物が挙げられる。結晶性の高い黒鉛は、電気伝導性が高く、銅等の金属からなる負極集電体との接着性および電圧平坦性が優れているため、好ましい。一方、結晶性の低い非晶質炭素は、体積膨張が比較的小さいため、負極全体の体積膨張を緩和する効果が高く、かつ結晶粒界や欠陥といった不均一性に起因する劣化が起きにくいため、好ましい。
また、結晶性の異なる炭素材料を組み合わせて用いることも好ましい。例えば、高結晶性炭素質粒子の表面に低結晶性(若しくは非晶質)炭素材料を少なくとも部分的に有する複合炭素体を炭素材料(a)として用いることもできる。
【0076】
金属(b)としては、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、La、またはこれらの2種以上の合金が挙げられる。これらの中でも、金属(b)としては、シリコン(Si)を含むものが特に好ましい。
【0077】
金属酸化物(c)としては、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化リチウム、またはこれらの複合物が挙げられる。これらの中でも、金属酸化物(c)としては、比較的安定で他の化合物との反応を引き起こし難い酸化シリコンを含むものが特に好ましい。
また、金属酸化物(c)は、金属(b)を構成する金属の酸化物であることが好ましい。
また、金属酸化物(c)の電気伝導性を向上させる観点から、金属酸化物(c)に、窒素、ホウ素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1種の元素を、例えば0.1質量%〜5質量%添加してもよい。
【0078】
金属酸化物(c)は、その全部または一部がアモルファス構造を有することが好ましい。アモルファス構造の金属酸化物(c)は、他の負極活物質である炭素材料(a)や金属(b)の体積膨張を抑制することができ、フッ素含有エーテル化合物を含むような電解液の分解を抑制することもできる。このメカニズムは明確ではないが、金属酸化物(c)がアモルファス構造であることにより、炭素材料(a)と電解液の界面への皮膜形成に何らかの影響があるものと推定される。また、アモルファス構造は、結晶粒界や欠陥といった不均一性に起因する要素が比較的少ないと考えられる。なお、金属酸化物(c)の全部または一部がアモルファス構造を有することは、エックス線回折(XRD)測定にて確認することができる。具体的には、金属酸化物(c)がアモルファス構造を有しない場合には、金属酸化物(c)に固有のピークがシャープな形で観測されるが、金属酸化物(c)の全部または一部がアモルファス構造を有する場合は、金属酸化物(c)に固有のピークがブロードとなって観測される。
【0079】
金属(b)は、その全部または一部が金属酸化物(c)中に分散していることが好ましい。金属(b)の少なくとも一部を金属酸化物(c)中に分散させることで、負極全体としての体積膨張をより抑制することができ、電解液の分解も抑制することができる。なお、金属(b)の全部または一部が金属酸化物(c)中に分散していることは、透過型電子顕微鏡(TEM)観察とエネルギー分散型X線分光法(EDS)測定を併用することで確認することができる。具体的には、金属粒子(b)を含むサンプルの断面を観察し、金属酸化物(c)中に分散している金属(b)の酸素濃度を測定し、金属(b)を構成している金属が酸化物となっていないことを確認することができる。
【0080】
炭素材料(a)と金属(b)と金属酸化物(c)とを含み、金属酸化物(c)の全部または一部がアモルファス構造であり、金属(b)の全部または一部が金属酸化物(c)中に分散しているような負極活物質は、公知の方法で作製することができる。すなわち、金属酸化物(c)をメタンガス等の有機ガスを含む雰囲気下でCVD処理を行うことで、金属酸化物(c)中の金属(b)がナノクラスター化し、かつ表面が炭素材料(a)で被覆された複合体を得ることができる。また、炭素材料(a)と金属(b)と金属酸化物(c)とをメカニカルミリングで混合することでも、上記負極活物質を作製することができる。
【0081】
前記負極活物質の総量に対する、炭素材料(a)、金属(b)および金属酸化物(c)の個々の含有割合は特に制限されない。
炭素材料(a)は、炭素材料(a)、金属(b)および金属酸化物(c)の合計に対し、2質量%〜50質量%であることが好ましく、2質量%〜30質量%であることがより好ましい。
金属(b)は、炭素材料(a)、金属(b)および金属酸化物(c)の合計に対し、5質量%〜90質量%であることが好ましく、20質量%〜50質量%であることがより好ましい。
金属酸化物(c)は、炭素材料(a)、金属(b)および金属酸化物(c)の合計に対し、5質量%〜90質量%であることが好ましく、40質量%〜70質量%であることがより好ましい。
【0082】
また、前記負極活物質の総量に対する、炭素材料(a)の含有割合が0%であってもよい。この場合、前記負極活物質の総量に対する、金属(b)および金属酸化物(c)の合計の質量が100質量%となってもよい。さらに、前記負極活物質に代えて、金属(b)または金属酸化物(c)のみからなる負極材を用いてもよい。
【0083】
炭素材料(a)、金属(b)および金属酸化物(c)の形状は、特に制限されず、例えば、それぞれ粒子状とすることができる。例えば、金属(b)の平均粒子径は、炭素材料(a)の平均粒子径および金属酸化物(c)の平均粒子径よりも小さい構成とすることができる。このようにすれば、充放電時に伴う体積変化の小さい金属(b)が相対的に小粒径となり、体積変化の大きい炭素材料(a)や金属酸化物(c)が相対的に大粒径となるため、デンドライト生成および合金の微粉化がより効果的に抑制される。また、充放電の過程で大粒径の粒子、小粒径の粒子、大粒径の粒子の順にリチウムが吸蔵、放出されることとなり、この点からも、残留応力、残留歪みの発生が抑制される。金属(b)の平均粒子径は、例えば、20μm以下とすることができ、15μm以下とすることが好ましい。
【0084】
金属酸化物(c)の平均粒子径が炭素材料(a)の平均粒子径の1/2以下であることが好ましく、金属(b)の平均粒子径が金属酸化物(c)の平均粒子径の1/2以下であることが好ましい。より好ましくは、金属酸化物(c)の平均粒子径が炭素材料(a)の平均粒子径の1/2以下であり、かつ金属(b)の平均粒子径が金属酸化物(c)の平均粒子径の1/2以下である。平均粒子径をこのような範囲に制御すれば、金属および合金相の体積膨脹の緩和効果をより有効に得ることができ、エネルギー密度、サイクル寿命と効率のバランスに優れた二次電池を得ることができる。より具体的には、金属酸化物(c)の平均粒子径を炭素材料(a)の平均粒子径の1/2以下とし、金属(b)の平均粒子径を金属酸化物(c)の平均粒子径の1/2以下とすることが好ましい。さらに具体的には、金属(b)の平均粒子径は、例えば、20μm以下とすることができ、15μm以下とすることが好ましい。
尚、上記の平均粒子径は、レーザ回折・散乱法で測定することができる。
【0085】
負極用結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンオキシド等を用いることができる。これらの中でも、ポリイミド又はポリアミドイミドが、結着性が強いため好ましい。使用する負極用結着剤の量は、トレードオフの関係にある「十分な結着力」と「高エネルギー化」とのバランスを取る観点から、前記負極活物質100質量部に対して、5質量部〜25質量部が好ましい。
【0086】
負極集電体としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、銀等の金属およびそれらの合金などを用いることができる。負極集電体の形状は、特に制限されず、例えば、箔、平板状、メッシュ状等が挙げられる。
【0087】
負極の作製方法としては、例えば、前記負極集電体上に、前記負極活物質と前記負極用結着剤を含む負極活物質層を形成する方法が挙げられる。
負極活物質層は、例えば、ドクターブレード法、ダイコーター法などによって形成することができる。
また、予め負極活物質層を任意の支持体上に形成した後に、蒸着、スパッタ等の方法でアルミニウム、ニッケルまたはそれらの合金の薄膜を負極活物質層の上に形成して、この薄膜を負極集電体としてもよい。薄膜は、例えば、CVD法、スパッタリング法などによって形成することができる。
【0088】
「正極」
正極は、例えば、正極活物質が正極用結着剤によって正極集電体を覆うように結着されてなる。
正極活物質としては、LiMnO
2、Li
xMn
2O
4(0<x<2)等の層状構造を持つマンガン酸リチウムまたはスピネル構造を有するマンガン酸リチウム;LiCoO
2、LiNiO
2またはこれらの遷移金属の一部を他の金属で置き換えたもの;LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2等の特定の遷移金属が半数を超えないリチウム遷移金属酸化物;これらのリチウム遷移金属酸化物において化学量論組成よりもLiを過剰にしたもの等が挙げられる。特に、Li
αNi
βCo
γAl
δO
2(1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.7、γ≦0.2)またはLi
αNi
βCo
γMn
δO
2(1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.6、γ≦0.2)が好ましい。正極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
正極用結着剤としては、負極用結着剤と同様のものを用いることができる。中でも、汎用性や低コストの観点から、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。使用する正極用結着剤の量は、トレードオフの関係にある「十分な結着力」と「高エネルギー化」とのバランスを取る観点から、正極活物質100質量部に対して、2質量部〜10質量部が好ましい。
【0090】
正極集電体としては、例えば、アルミニウム、銅などの金属およびそれらの合金などを用いることができる。
正極活物質を含む正極活物質層には、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材を添加してもよい。導電補助材としては、例えば、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の炭素質微粒子が挙げられる。
【0091】
「セパレータ」
セパレータとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなる多孔質フィルムや不織布、またはそれらの積層体が挙げられる。
【0092】
「外装体」
外装体は、電解液に安定で、かつ十分な水蒸気バリア性を持つものであれば特に限定されない。
例えば、積層ラミネート型のリチウムイオン二次電池の場合、外装体としては、アルミニウム、シリカをコーティングしたポリプロピレン、ポリエチレン等のラミネートフィルムを用いることができる。特に、体積膨張を抑制する観点から、アルミニウムラミネートフィルムを用いることが好ましい。
【0093】
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、上述の電解液を備えるため、使用電圧を4.5V 以上に設定した場合においても、その充放電サイクルに伴う容量低下を従来よりも低減することができる。また、本実施形態のリチウムイオン二次電池によれば、4.5V 以上の高電位で使用した場合の充放電サイクルに伴う容量低下が従来よりも低減されているため、高エネルギー密度の二次電池として従来よりも長期間に亘って繰り返し使用することができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
[実施例1]
図1に示す構造を有する積層ラミネート型のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0096】
「負極」
平均粒径1μmのSiOを69質量%、ポリアミック酸を15質量%、アセチレンブラックを10質量%、カーボンナノチューブを6質量%含むスラリーを、銅箔(厚み15μm)からなる負極集電体2A上に塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥させて、厚み25μmの負極2を作製した。作製した負極はアルゴン雰囲気下、300℃で2時間アニールし、を硬化させた。
【0097】
「正極」
正極活物質として三元系正極材料LiNi
0.33Mn
0.33Co
0.33O
2を90質量%、導電補助材としてケッチェンブラックを5質量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを5質量%含むスラリーを、アルミニウム箔(厚み10μm)からなる正極集電体1A上に塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥させて、厚み50μmの正極1を作製した。正極集電体1Aの両面に正極1を塗布し乾燥させた両面電極も同様に作製した。
【0098】
「電解液」
A:非水系溶媒であるエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を30:70の体積比で含む溶媒に、B:支持塩としてヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)をAに対して濃度1モル/リットルとなるように溶解し、C:下記式(9)で表わされるイオン液体をA+Bの合計に対して1重量%となるように添加した電解液を調製した。
【0099】
【化13】
【0100】
「リチウムイオン二次電池の作製」
上記方法で作製した正極および負極を成形した後、多孔質のフィルムセパレータを挟んで積層し、Al板からなる正極リードタブ1BおよびNi板からなる負極リードタブ2Bを各々溶接することで電池要素を作製した。この電池要素をアルミラミネートフィルムからなる外装体4で包み、三方(三辺)を熱融着により封止した後、上記電解液を適度な真空度にて含浸させた。その後、減圧下にて残りの一方(一辺)を熱融着封止し、活性化処理前のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0101】
「活性化処理工程」
作製した活性化処理前のリチウムイオン二次電池について、正極活物質1gあたり20 mAの電流で4.5Vまで充電し、同じく正極活物質1gあたり20 mAの電流で1.5Vまで放電するサイクルを2回繰り返した。その後、一旦、封口部(封止)を破り、減圧することで電池内部のガスを抜き、再び封止することにより、本発明に掛かる実施例1のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0102】
[実施例2]
Aとして、非水系溶媒であるエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)、および、添加剤である1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルジフルオロメチルエーテルを27:68:5の体積比で含む溶媒を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本発明にかかる実施例2のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0103】
[実施例3]
Aとして、非水系溶媒であるエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)、および、添加剤である2,2−ジフルオロエチルエチルカーボネートを36:32:32の体積比で含む溶媒を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本発明にかかる実施例3のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0104】
[実施例4]
Aとして、非水系溶媒であるエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)、および、添加剤である2,2−ジフルオロエチルエチルカーボネートを28.5:66.5:5の体積比で含む溶媒を用い、かつ、C:イオン液体をA+Bの合計量に対して5重量%となるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして、本発明にかかる実施例4のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0105】
[実施例5]
C:イオン液体に下記式(10)で表わされるものを用いたこと以外は、実施例4と同様にして、本発明にかかる実施例5のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0106】
【化14】
【0107】
[実施例6]
C:イオン液体に下記式(10)で表わされるものを用い、イオン液体をA+Bの合計に対して5重量%となるように添加し、さらに正極活物質にコバルト酸リチウムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本発明にかかる実施例6のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0108】
[実施例7]
正極活物質にコバルト酸リチウムを用いたこと以外は、実施例5と同様にして、本発明にかかる実施例7のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0109】
[比較例1]
電解液を調製する際に、上記式(9)で表わされるイオン液体を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0110】
[比較例2]
電解液を調製する際に、上記式(9)で表わされるイオン液体を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0111】
[比較例3]
電解液を調製する際に、上記式(9)で表わされるイオン液体を用いなかったこと以外は、実施例3と同様にして、比較例3のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0112】
[比較例4]
電解液を調製する際に、上記式(9)で表わされるイオン液体を用いなかったこと以外は、実施例4と同様にして、比較例4のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0113】
[比較例5]
電解液を調製する際に、上記式(10)で表わされるイオン液体を用いなかったこと以外は、実施例6と同様にして、比較例5のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0114】
[比較例6]
電解液を調製する際に、上記式(10)で表わされるイオン液体を用いなかったこと以外は、実施例7と同様にして、比較例6のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0115】
実施例1〜7、および比較例1〜6の成分比は表1の通りである。
【0116】
【表1】
【0117】
「リチウムイオン二次電池の評価方法」
上記方法で作製したリチウムイオン二次電池を、45℃の恒温槽中、正極活物質1gあたり40mAの定電流で4.5Vまで充電し、さらに正極活物質1gあたり5mAの電流になるまで4.5Vの定電圧で充電を続けた。その後、正極活物質1gあたり5mAの電流で1.5Vまで放電し、初期容量を求めた。さらに初期容量測定後のリチウムイオン二次電池について、45℃の恒温槽中で、正極活物質1gあたり40mAの定電流で4.5Vまで充電し、さらに正極活物質1gあたり5mAの電流になるまで4.5Vの定電圧で充電を続け、その後、正極活物質1gあたり40mAの電流で1.5Vまで放電する充放電サイクルを100回繰り返した。そして、1サイクル目で得られた初期容量(単位:mAh/g)と50,100サイクル目で得られた放電容量(単位:mAh/g)の比から、各サイクル後の容量維持率を求めた。
【0118】
また、次のようにして、サイクル試験中にリチウムイオン二次電池から発生したガスの発生量(g)を、アルキメデス法により計測することにより測定した。
サイクル試験前のリチウムイオン二次電池の重さをA(g)、サイクル試験前のリチウムイオン二次電池を25℃の水に浸漬した場合の重さをA´(g)、サイクル試験後のリチウムイオン二次電池の重さをB(g)、サイクル試験後のリチウムイオン二次電池を25℃の水に浸漬した場合の重さをB´(g)とする。リチウムイオン二次電池から発生したガスの発生量(g)は、下記式(α)に基づいて算出した。
ガスの発生量=(B−B´)−(A−A´) (α)
【0119】
サイクル後の容量維持率、およびガスの発生量の結果を表2に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
以上の結果から、放電時の電圧を4.5Vという従来よりも高い電位に設定して使用した場合においても、実施例1〜7のリチウムイオン二次電池は、比較例1〜6のリチウムイオン二次電池よりも容量維持率が優れており、特に100サイクル目の容量維持率が顕著に優れていることが明らかである。
また、実施例1〜7のリチウムイオン二次電池は、比較例1〜6のリチウムイオン二次電池よりもガスの発生量が少ないことが分かった。