(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の被服用編地は、ベース編み部分と厚み方向に貫通したメッシュ(貫通孔ともいう)を含み、ベース編み部分は、一方の面は高熱伝導率糸(A)が相対的に多く配置され、他方の面は吸水速乾糸(B)が相対的に多く配置され、メッシュはメッシュを形成する糸(C)で形成され、メッシュ周囲の厚み方向の少なくとも一部には高伝導性の糸(A)が配置され、編地の高熱伝導率糸(A)が相対的に多く配置されている面は平滑ではない。一方の面は生地の裏面、他方の面は生地の表面とする事で、着用状態において、清涼感を得る事ができる。
この編地は、ベース編み部分は表面糸と裏面糸で編成されているリバーシブル編地ともいう。この編地は、例えば丸編み機を使用し、表面糸を細く、裏面糸を太くし繊度差をつけて引き揃え、テンションをかけて供給することにより、表面糸は編地の表面に、裏面糸は裏面に配置した編地とする。裏面糸は高熱伝導率糸(A)とし、表面糸は吸水速乾糸(B)とする。これにより、編地の裏面は高熱伝導率糸(A)となり、表面は吸水速乾糸(B)となる。この編地は多少のマイグレーション(糸の動き)があり、編地の裏面は高熱伝導率糸(A)が吸水速乾糸(B)に比べて相対的に多い層であり、表面は吸水速乾糸(B)が疎水性(A)に比べて相対的に多い層となる。また、ダブル組織の場合は、生地の表面に吸水速乾糸(B)が配置されるようにシリンダー側に吸水速乾糸を供給し、生地の裏面に高熱伝導率糸(A)が配置されるようにダイヤル側に供給することで、編地の裏面は高熱伝導率糸(A)が吸水速乾糸(B)に比べて相対的に多い層であり、表面は吸水速乾糸(B)が疎水性(A)に比べて相対的に多い層とすることができる。また、高熱伝導率糸は合成繊維のフィラメントである。例えば、ここでいう合成繊維は、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル、エバール樹脂等のポリマーから構成されている繊維を意味する。
【0011】
メッシュを形成する糸(C)は編地を編成する際、目飛ばしさせてメッシュを形成し、これが編地の厚み方向に貫通したメッシュとなる。メッシュの少なくとも一部には疎水糸(C1)又は撥水糸(C2)を配置するのが好ましい。これにより編地表面の水分が移動しやすい状態になり、貫通孔に水の膜ができなくなる。この結果、身体からの熱移動がスムースになるとともに、外気が入りやすくなり、熱交換もスムースになる。通常、メッシュを形成すると、皮膚と生地の接する面積が減少し、最大熱移動量が減少し、ひんやり感が低下する。高熱伝導性の糸が裏面からメッシュの貫通孔周りに配置されているが、貫通孔は他の部位より気化が効率的に行われる事で、効果的な熱交換ができており、高熱伝導性の糸の温度を効果的に低下させることができる。それにより、高熱伝導性の糸は貫通孔から裏面にかけて、温度が低下し、皮膚と生地の接する面積が少なくても、最大熱移動量が大きくなり、清涼感を得る事ができる。また、本発明ではメッシュの存在により、べたつき性を抑制することができる。例えば、実施例2ではウェール方向に対して皮膚と生地の接触長さを28%程度まで減少しており、メッシュを形成しながらも、高熱伝導率糸を裏面からメッシュの貫通孔周りに配置することで、湿潤時における通気性、最大熱移動量、べたつき性の全ての機能性を高めることができる。
【0012】
高熱伝導率糸(A)は、熱伝導率が0.2W/m・K以上かつ編地の染色加工にも耐えうる耐熱性を有する糸であるのが好ましい。高熱伝導率糸(A)は例えばポリエチレンマルチフィラメント糸である。前記熱伝導率は樹脂状態において測定した文献値である。例えば「プラスチック・データブック」,1999年12月1日,工業調査会, 327頁には、高密度ポリエチレン(HDPE)の熱伝導率(ASTM試験法,C177)が0.50W/m・K、中密度ポリエチレン(LDPE)と及び低密度ポリエチレン(LLDPE)は0.33W/m・Kと記載されている。また、融点は、高密度ポリエチレン(HDPE)131℃、中密度ポリエチレン(LDPE)107℃、低密度ポリエチレン(LLDPE)122℃と記載されている。このうち本発明の繊維には高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。軟化温度が116〜120℃程度であるからである(「繊維の百科事典」,2002年3月25日,丸善,939頁左欄下から6行)。本発明においては、染色温度は110℃以下が好ましく、より好ましくは100℃以下である。この染色温度で染めることができる繊維は、ポリエステルの場合はカチオン染料可染型繊維が好ましい。また原着繊維を使用する場合は、染色は不要である。参考までにPETの熱伝導率(ASTM試験法,C177)は0.14〜0.15W/m・Kである(前記「プラスチック・データブック」60頁)。ポリエチレンマルチフィラメント糸は高熱伝導率であるとともに疎水性もあり、乾きやすい。
【0013】
高熱伝導率糸(A)の繊度が大きいと熱移動量が大きく、接触冷感が良好となり、清涼感が高くなる。メッシュを形成する疎水糸(C1)又は撥水糸(C2)はメッシュを目立たなくすることから、細いのが好ましい。また、シングル編みにおいては、高熱伝導率糸(A)と引き揃える吸水速乾糸(B)との繊度の関係は、B<Aが好ましい。
【0014】
吸水速乾糸(B)は吸水加工されたポリエステルマルチフィラメント糸が好ましい。ポリエステルは強度面からポリエチレンテレフタレートが好ましく、マルチフィラメント糸は細いことから、薄くて軽い編み物が得られる。その中でも原着ポリエステルマルチフィラメント糸がより好ましく、カチオン染料可染型ポリエステルマルチフィラメント糸がさらにより好ましい。カチオン染料可染型ポリエステルは、テレフタル酸成分とエチレングリコール成分に、5−ナトリウムスルホ−イソフタル酸成分を1〜3モル%共重合したポリエステルである。カチオン染料可染型ポリエステルマルチフィラメント糸は、100℃程度の低温染色が可能であり、染色により商品的価値を高くできる。
【0015】
編地は、湿潤時の通気抵抗値が0.2kPa・s/m
2以下が好ましく、より好ましくは0.1kPa・s/m
2以下である。これにより、編地が湿潤時でも水の膜の形成を抑制し、編地の通気性を確保し、皮膚上の汗を常に身体表面上で気化することで、有効発汗量を増やし、運動パフォーマンスを低下させず、発汗時にも快適に着用できる。
【0016】
編地は最大熱移動量Q−maxが0.24W/m
2以上が好ましく、より好ましくは0.25W/m
2以上である。これにより、接触冷感が良好となり、清涼感が高くなる。とくに湿潤時の通気抵抗値が0.2kPa・s/m
2以下と最大熱移動量Q−maxが0.24W/m
2以上を両立させることにより、清涼感の高い被服用編地とすることができる。
【0017】
メッシュの大きさは、タテ及びヨコ方向の長さでいずれも平均0.3mm以上25mm以下が好ましく、より好ましくは0.3〜20mmである。これにより、さらに有効発汗量を増やし、運動パフォーマンスを低下させず、発汗時にも快適に着用できる被服用編地及びこれを用いた被服を提供できる。また、単位面積当たりのメッシュの好ましい数は10〜60個/cm
2であり、さらに好ましくは20〜40個/cm
2である。メッシュの部分が凹になり、平滑面ではない。これによりべたつき感を抑制できる。
【0018】
編地の開口率は1%以上50%以下が好ましく、より好ましくは2〜40%である。これにより、さらに有効発汗量を増やし、運動パフォーマンスを低下させず、発汗時にも快適に着用できる被服用編地及びこれを用いた被服を提供できる。なお開口率とは、編地において、貫通孔の占める割合をいう。
【0019】
前記編地を母数としたとき、高熱伝導糸の重量比率は20%以上が好ましく、より好ましくは40%である。これにより、熱移動量が大きく、接触冷感が良好となり、清涼感が高くなる。
【0020】
編地の厚みは0.3mm以上が好ましく、より好ましくは0.4〜0.7mmであり、さらに好ましくは0.5〜0.6mmである。これにより、薄くて軽い被服用編地となる。
【0021】
編地の好ましい単位面積当たりの質量(目付け)は50〜300g/m
2が好ましく、より好ましくは70〜250g/m
2であり、さらに好ましくは80〜200g/m
2である。衣類の発汗の多い部分に使用するため、薄手編地が好ましい。本発明の編地は、ワンウエイ、ツーウエイでもよく、ポリウレタンなどの弾性糸を含んでもよい。
【0022】
吸水速乾加工したポリエステルマルチフィラメント糸を使用した部位は、滴下法評価(JIS L 1907 A法)において、180秒以内に吸水する事が望ましい。より好ましくは、60秒以内である。本発明の編地に、滴下法評価(JIS L 1907 A法)した際、疎水性糸(A)の編地層より、吸水速乾糸使用した編地層の方が保水する事が好ましい。
【0023】
好ましい態様として、本発明の被服用編地の編地重量100%に対して、300%の水分を湿潤させた状態で、編地を垂直方向となるように吊り下げたとき、前記貫通孔は空隙を維持する。
【0024】
高熱伝導糸(A)、吸水速乾糸(B)及びメッシュを形成する糸(C)は、生糸(なまいと)であってもよいし、仮より加工糸であってもよい。仮より加工糸は膨らみが出ることから、吸水速乾糸(B)は仮より加工糸が好ましい。また、高熱伝導糸(A)、吸水速乾糸(B)及びメッシュを形成する糸(C)は吸水速乾加工されていてもよい。このような吸水速乾加工は、染色後、例えば高松油脂社製の吸水加工剤、SR1801(商品名)を3%o.w.fを含む水溶液(浴比1:50)で熱水処理することにより得られる。
【0025】
本発明の衣服は、高熱伝導率糸(A)が相対的に多く配置されている面を肌側に配置し、吸水速乾糸(B)が相対的に多く配置されている面を外気側に配置した衣服である。これにより、最大熱移動量および大量発汗時の通気性を両立した清涼感の高い被服用編地及びこれを用いた被服を提供できる。
【0026】
被服はスポーツ用被服に好適である。とくに発汗の多い暑い時期に使用するスポーツ用被服に好適である。前記編地は少なくとも人体の発汗の多い部分に配置して衣類とする。例えばスポーツシャツ、Tシャツ、インナーシャツ、トレーニング用ウォーマー、ブリーフ、一般のシャツ、ブリーフ等の全部に使用しても良いし、脇、背中等の一部に使用しても良い。
【0027】
以下、図面を用いて本発明の好適な一実施形態の被服用編地を説明する。以下の図面において、同一符号は同一物を示す。
図1は本発明の一実施形態の衣服用編地1と着用時の物質の移動を示す模式的断面説明図である。この編地1は、ベース編み部分2と厚み方向に貫通したメッシュ3を含み、ベース編み部分2は、一方の面は高熱伝導率糸(A)4が相対的に多く配置され、他方の面は吸水速乾糸(B)5が相対的に多く配置される。この編地1は次の機能を有する。メッシュ3により、高熱伝導率糸(A)4が相対的に多く配置されている面は平滑ではない。6a,6bはメッシュ糸である。
(1)汗の移動
人体の肌7から出た汗(Sweat)はベース編み部分2から矢印8のように外気に放出される。ベース編み部分2は、肌側は高熱伝導率糸(A)4、外気側は吸水速乾糸(B)5がそれぞれ相対的に多く配置されており、高熱伝導率糸(A)4が相対的に多い層を通過して液体の汗は吸水速乾糸(B)5に吸引され、矢印8のように外気に放出される。
(2)熱の移動
人体の肌7から出た熱(Heat)は高熱伝導率糸(A)4の層からメッシュ(貫通孔)3を通過して、矢印9のように外気に放出される。メッシュ(貫通孔)3は発汗しても水膜は形成されず、空気が通過する状態にあり、抵抗なく矢印9のように外気に放出される。
(3)空気の移動
メッシュ(貫通孔)3は発汗しても水膜は形成されず、空気(Air)が通過する状態にあり、抵抗なく矢印10a,10bのように空気が出入りして移動し、熱交換が行われる。
(4)太陽光など外部からの吸熱を抑制
編地1は、外気側に吸水速乾糸(B)5が配置され、肌面側に高熱伝導率糸(A)4が配置されているため、太陽光など外部からの吸熱を抑制し、全体放熱量を増加できる。
【0028】
図2は本発明の一実施形態の編み物設計図である。この編み物はリバーシブル天竺メッシュ組織であり、一方の面側の糸は一例としてポリエチレンマルチフィラメント糸(生糸)PE84T/50f(Tはdecitex,fはフィラメント本数。PEはポリエチレン。以下同。)、他方の面側の糸は一例としてカチオン染料可染型ポリエステルマルチフィラメント糸(仮より加工糸)E56Td/48f(Eはポリエステル。以下同。)を引き揃え、3本を順番に供給してベース編地とする。メッシュを形成する糸はポリエステル(PET)マルチフィラメント糸(生糸)E33T/12fを使用し、編み目を飛ばしてメッシュを形成している。
【0029】
図3は本発明の一実施形態の編組織図である。この編み物のベース編み部分は、高熱伝導率糸(A)4が裏側に、吸水速乾糸(B)5が表側にして引き揃えられて編み目が形成されている。これにより、一方の面は高熱伝導率糸(A)4が吸水速乾糸(B)5に比較して相対的に多く配置され、他方の面は吸水速乾糸(B)5が高熱伝導率糸(A)4に比較して相対的に多く配置される。メッシュ糸(C)6は、この例においては4コースごとに1ウェール飛び目してメッシュ3を形成している。この例ではメッシュ3内部を横切るメッシュ糸6a,6bが存在する。また、メッシュ3周囲の厚み方向の少なくとも一部には高伝導性の糸(A)が配置されている。
【0030】
図3と度目(ループ密度)を異ならせることもできる。一例として
図3はウェール数42/インチ、コース数46/インチの編み物であるが、ウェール数42/インチ、コース数48/インチの編み物としてもよい。
【0031】
図5は本発明のさらに別の実施形態の編組織図である。
図3と異なる点は、上から2コース目は高熱伝導率糸(A)4単独としたことである。これにより高熱伝導率糸(A)4の割合を高めることができる。
【実施例】
【0032】
以下実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
評価方法は次のとおりである。
<編地の厚み>
JIS L1096 A法に準拠して測定した。
<編地の質量(目付)>
JIS L1096 A法に準拠して測定した。
<最大熱移動量Q−max>
カトーテック社製のKES−F7サーモラボII試験機を用いて、熱板にセンサーを重ね、試料との温度差(ΔT:20℃)を一定にした後、センサーを試験片に接触させた時の瞬間的な熱の移動量を測定した。
<通気抵抗値>
測定は通気抵抗試験機KES−F8(カトーテック社製)を用いた。この測定は、大気中へ空気を放出・吸引し、放出・吸引時の圧力を検知し、通気抵抗を算出することにより行った。
通気量:4cc/cm
2/sec.(通気量一定方式)
通気穴面積:2πcm
2
湿潤時の通気抵抗は編地質量100%に対して、300%の水分を湿潤させた状態で、空気の放出・吸引方向を地面と平行で測定した。温度20℃、相対湿度65%RHとした。測定方法は次のとおりである。
(1)編地が地面に対して垂直の状態となるように保持する。
(2)水槽の中に浸漬させた試料を取り出し、試験機に編地を設置する。
(3)KESの試験マニュアルに準拠した方法で測定する。
<開口率の測定方法>
(1)生地の画像を印刷し、4点の空隙貫通孔の中心を結んだ線分で形成された四角形の範囲を切り取る。
(2)切り取られた四角形の部分の紙重量W
1を測定する。
(3)切り取られた四角形部分に入っている空隙貫通孔を切り取り、その紙重量W
2を測定する。
(4)開口率=[(1−(W
2/W
1))×100で算出する。
<皮膚との接触長さの測定方法>
(1)生地をウェール方向にカットし、試料台上に両面テープで設置する。
(2)生地の断面をマイクロスコープで撮影する。
(3)撮影画像中における生地断面において、生地組織の1リピート分のウェール方向のピクセル数N
1および1リピート内で試料台と生地が接触している部分のピクセル数N
2を算出する。
図5は接触長さの測定方法におけるマイクロスコープ撮影写真の模式的説明図である。
図5において、11は編み物生地、12は試料台、13は1リピート、14a−14dは接触部分である。試料台12は皮膚とみなせる。
(4)皮膚との接触長さ=(N
2/N
1)×100で算出する。
【0033】
(実施例1)
30インチ、28ゲージの丸編機を使用して、
図2及び
図3に示す編み組織でリバーシブル天竺メッシュ編み物(シングル編地)を編成した。使用した糸は次のとおりである。
(1)編み物の一方の面の糸
高熱伝導率糸(A)4として、ポリエチレンマルチフィラメント糸(生糸)繊度84decitex、本数50(以下「PE84T/50f」という。)を使用した。
(2)編み物の他方の面の糸
吸水速乾糸(B)5として、カチオン染料可染型ポリエステルマルチフィラメント糸(仮より加工糸)E56T/48fを使用した。
(3)メッシュ形成糸
メッシュ形成糸(C)6として、ポリエステル(PET)マルチフィラメント糸(生糸)E33T/12fを使用した。
(4)編み物編成
前記一方の面の糸と他方の面の糸は引き揃え、テンションをかけて緊張状態で供給し、編み物を編成した。
(5)吸水速乾加工
得られた編み物は、カチオン染料を用いた常法の染色法により、100℃で1時間染色し、ソーピングと水洗をし、その後、高松油脂社製の吸水速乾加工剤、SR1801(商品名)を3%o.w.fを含む水溶液(浴比1:50)で熱水処理した。これによりポリエステル糸(吸水速乾糸(B)5及びメッシュ形成糸(C)6)に吸水速乾性を付与した。高熱伝導率糸(A)4のポリエチレン繊維の疎水性はこのような処理をしても変わらない。このようにして得られた編み物は、ウェール数42個/インチ、コース数46個/インチであった。メッシュの大きさはタテ及びヨコ方向の長さの平均値が0.47mm、メッシュの密度は35個/cm
2であった。ウェール方向に対して皮膚との接触長さは48%であった。
図6は本発明の実施例1の編み地の裏面写真(倍率50倍)である。
図6において、3はメッシュ、4(白い太い糸)は高熱伝導率糸(A)、5(黒い糸)は吸水速乾糸(B)、6(白い細い糸)はメッシュ形成糸(C)である。糸の説明は
図7〜8においても同じである。
【0034】
(実施例2)
図2及び
図3に示すように、実施例1と比べて度目(ウェール数とコース数)を変えた以外は実施例1と同様に実施した。得られた編み物は、ウェール数42個/インチ、コース数48個/インチであった。メッシュの大きさはタテ及びヨコ方向の長さの平均値が0.49mm、メッシュの密度は28個/cm
2であった。ウェール方向に対して皮膚との接触長さは37%であった。
図7は本発明の実施例2の編み地の裏面写真(倍率50倍)である。
【0035】
(実施例3)
図4に示す編組織図の通り、2段目のコースは高熱伝導率糸(A)4単独とし、吸水速乾糸(B)5のカチオン染料可染型ポリエステルマルチフィラメント糸(仮より加工糸)E56T/48fを2本とした以外は実施例1と同様に実施した。得られた編み物は、ウェール数40個/インチ、コース数46個/インチであった。メッシュの大きさはタテ及びヨコ方向の長さの平均値が0.50mm、メッシュの密度は29個/cm
2であった。ウェール方向に対して皮膚との接触長さは25%であった。
図8は本発明の実施例3の編み地の裏面写真(倍率50倍)である。
【0036】
(比較例1)
ポリエステル糸100%使いの丸編みダブル組織の編み物を評価した。この編み物は湿潤時でも貫通孔の空隙を維持できる編み物であった。前記特許文献4で提案されている編地である。
【0037】
(比較例2)
ポリエステル糸とトリアセテート糸使いの丸編みダブル組織の編み物を評価した。この編み物は湿潤時に貫通孔の空隙を維持できないが、冷感編地であった。
【0038】
(比較例3)
ポリエステル糸とトリアセテート糸とポリウレタン糸使いの丸編みシングルリバーシブル組織の編み物を評価した。この編み物は湿潤時に貫通孔の空隙を維持できないが、冷感編地であった。
【0039】
(比較例4)
ポリエステル糸とトリアセテート糸使いの丸編みシングル組織の編み物を評価した。この編み物は湿潤時に貫通孔の空隙を維持できる編地であった。
以上の条件と結果を表1〜2にまとめて示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
表1〜2から明らかなとおり、各実施例の編地は各比較例の編地に比べて、湿潤時の通気抵抗値が0.2kPa・s/m
2以下と最大熱移動量Q−maxが0.24W/m
2以上を両立させることができ、着用試験においてもべたつき感がなく、清涼感が高いことが確認できた。
【解決手段】本発明の被服用編地1は、ベース編み部分2と厚み方向に貫通したメッシュ3を含み、ベース編み部分2は、一方の面は高熱伝導率糸(A)が吸水速乾糸(B)に比較して相対的に多く配置され、他方の面は吸水速乾糸(B)が高熱伝導率糸(A)に比較して相対的に多く配置され、メッシュ3はメッシュを形成する糸(C)で形成され、メッシュ3周囲の厚み方向の少なくとも一部には高伝導性の糸(A)4が配置され、前記高熱伝導率糸(A)4が相対的に多く配置されている面は平滑ではない。本発明の被服は、高熱伝導率糸(A)4の面を肌側に配置し、吸水速乾糸(B)5の面を外気側に配置する。