(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平板状の支持材ウェブと、前記支持材ウェブの両端にそれぞれ設けられた支持材上フランジおよび支持材下フランジと、前記支持材ウェブ、前記支持材上フランジおよび支持材下フランジを接続する支持材スティフナーとを具備する鋼床版支持材を有し、
前記鋼板と前記主桁上フランジとの接続に代えて、前記鋼板は前記支持材上フランジにボルト/ナットによって接続され、前記主桁上フランジは前記支持材下フランジにボルト/ナットによって接続され、
前記横リブウェブは、前記支持材スティフナーにスプライスプレートを介してボルト/ナットによって接続されていることを特徴とする請求項1記載の鋼床版インスタント橋。
前記縦リブと前記横リブとを溶接接続する溶接線の溶接始端および溶接終端は、前記縦リブの一方の側面および他方の側面にそれぞれ位置することを特徴とする請求項1または2記載の鋼床版インスタント橋。
前記縦リブと前記横リブとを溶接接続する溶接線と、前記縦リブと前記鋼板とを溶接接続する溶接線と、前記横リブと前記鋼板とを溶接接続する溶接線とは、交差することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼床版インスタント橋。
【背景技術】
【0002】
日本には約72万橋の橋梁があり、その約74%は橋長が2m以上15m未満である(以下、かかる橋長の橋梁を「小支間橋梁」と称す)。小支間橋梁は、橋軸に対して平行に配置された主桁に床版(床板と称す場合がある)が設置されるものであって、床版には主に鋼材からなる鋼床版、主にコンクリートからなるコンクリート床版、鋼材およびコンクリートからなる合成床版がある。以下、鋼床版を有する橋梁を「鋼床版橋」と、コンクリート床版を有する橋梁を「コンクリート床版橋」と、合成床版を有する橋梁を「合成床版橋」とそれぞれ称す。
【0003】
鋼床版を形成する鋼板(デッキプレートに同じ)は、主桁に対して平行に配置された縦リブ(縦梁と称す場合がある)と、主桁に対して垂直(以下「橋幅方向」と称す)に配置された横リブ(横梁と称す場合がある)とによって補剛されている。すなわち、鋼板の下面に縦リブおよび横リブが溶接接続され、さらに、縦リブと横リブとの交差部(以下「リブ交差部」と称す)も溶接接続されている。そして、鋼板の上面に、アスファルト等の舗装が施されるものである。
一方、合成床版は、これを形成する鋼板の上面にコンクリートが敷設されるものであって、該鋼板は鋼床版と同じように縦リブおよび横リブによって補剛されることがある。このとき、縦リブおよび横リブはコンクリート中に埋設される。
【0004】
縦リブは、閉塞空間を形成する台形状のUリブ等と、閉塞空間を形成しないバルブリブや平リブ等に大別される。Uリブは、台形の斜辺に相当する側面と台形の上辺に相当する下面とを有する鋼材であって、側面の上側縁(下面とは反対側の側縁)が鋼板に溶接接続され、断面台形状の閉塞空間を形成する。
横リブは断面T字状であって、ウェブの一方の側縁(上側縁)が鋼板に溶接接続され、他方の側縁(下側縁)にフランジを具備する。そして、ウェブには縦リブが侵入可能な台形状の切り欠き部が形成され、リブ交差部(切り欠き部)においてUリブの両側面は横リブに溶接接続される。
【0005】
なお、切り欠き部の最奥には「下部スカラップ」が設けられている。このため、Uリブと横リブとの溶接線は鋼板(デッキプレート)と下部スカラップとの間に形成され、一方の側面側の溶接線と他方の側面側の溶接線とは下部スカラップを挟んで離隔している。すなわち、Uリブの下面と切り欠き部の最奥との間には隙間が形成され、Uリブと横リブとの溶接線は「溶接端点(溶接始端および溶接終端を「溶接端点」と称す)」を有している。
【0006】
一方、平リブは平板であって、このとき、横リブには該平板が挿入可能な矩形状のスリットが形成され、スリットの口元には「上部スカラップ」が設けられ、スリットの最奥には「下部スカラップ」が設けられている。
そして、平リブの上端縁が鋼板に溶接接続された状態で、平リブは横リブのスリットに侵入して、リブ交差部において平リブの一方の側面が横リブに溶接接続され、平リブの他方の側面と横リブとの間に隙間が形成される。
このため、平リブと横リブとの溶接線は一方の側面のみにおいて、上部スカラップと下部スカラップとの間に形成され、溶接端点を有している。また、上部スカラップにおいて、平リブと横リブとの溶接線は、平リブと鋼板との溶接線から離隔し、横リブと鋼板との溶接線からも離隔している。
【0007】
鋼床版には、走行する車両による複雑な荷重(以下「輪荷重」と称す)が繰り返し作用するため、鋼板には複雑な曲げモーメントが繰り返し発生することになる。このとき、縦リブは鋼板を橋軸方向に補剛して主に橋軸方向の応力が発生し、横リブは鋼板を橋幅方向に補剛して主に橋幅方向の応力が発生するため、リブ交差部には縦リブの変形および横リブの変形の両方が集積して極めて複雑な局部変形が生じ、集中した局部応力が生じる。
さらに、縦リブは、前記のようなリブ交差部における溶接接続の形態によって、局部応力の集中が一層複雑さを増している。このため、鋼床版橋は、特に溶接端点において疲労亀裂が発生する傾向にあり、かかる疲労亀裂の発生を抑制しようとする発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された発明(鋼床版及びこれを備えた鋼床版橋)において、鋼床版は、Uリブと、Uリブが侵入可能な台形状の切り欠き部がウェブに形成された横リブとを有し、切り欠き部の最奥に連続して下部スカラップが設けられている。
また、切り欠き部の最奥(台形の上辺に相当する下縁)に連続して、切り欠き部の側縁(台形の斜辺に相当する)に平行な湾曲部が形成され、切り欠き部の奥側の所定範囲と湾曲部との間には、略短冊状の細幅部材が形成されている。
したがって、Uリブはリブ交差部において切り欠き部の口元側では横リブのウェブに溶接接続され、切り欠き部の奥側では細幅部材に溶接接続されているから、かかる溶接線は、Uリブと鋼板との溶接線に連続している(重なっている)ものの、細幅部材の下端部において下部スカラップに面した溶接端点を有する。
そうすると、細幅部材(特に奥側)はウェブに比較して剛性が低く、変形が容易であるため、溶接端点における応力集中が緩和されることから、溶接端点における疲労亀裂の発生が抑制されている。
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、リブ交差部において下部スカラップに面した溶接端点が形成されるため、溶接端点から溶接亀裂が発生するという問題があった。
また、閉塞空間を形成することから、片面溶接になるため、全肉厚に渡って溶け込まないおそれがあり、Uリブと横リブとの溶接線から疲労亀裂が発生するという問題があった。
また、横リブは主桁に溶接接続されているため、架け替えや新規設置の際、施工期間が長くなるという問題があった。
【0011】
本発明は、かかる問題を解消するものであって、リブ交差部における溶接線からの疲労亀裂の発生を抑制可能および施工期間を短縮可能な鋼床版インスタント橋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係る鋼床版インスタント橋は、橋軸方向に配置された主桁と、前記主桁に設置された鋼床版パネルとを有し、
前記鋼床版パネルは、鋼板、橋軸方向の縦リブおよび橋軸方向に対して垂直方向の横リブを具備し、
前記縦リブは矩形状の平板で、前記縦リブの上端面が前記鋼板に溶接接続され、
前記横リブは、平板状の横リブウェブおよび前記横リブウェブの下端縁に設けられた
横リブ下フランジを具備する断面T字状の鋼材で、前記
横リブウェブに矩形状のスリットが形成され、
前記スリットに前記縦リブが侵入し、前記スリットと前記縦リブとの交差部において前記縦リブの両側面および下端面が前記横リブウェブに溶接接続され、かつ、前記横リブウェブの上端面が前記鋼板に溶接接続され、
前記主桁は、平板状の主桁ウェブと前記主桁ウェブの両端にそれぞれ設けられた主桁上フランジおよび主桁下フランジとを具備した断面H字状に圧延された鋼材で、前記主桁ウェブ、前記
主桁上フランジおよび前記主桁下フランジを接続する主桁スティフナーを具備し、
前記鋼板は前記主桁上フランジにボルト/ナットによって接続され、
前記横リブ下フランジは、前記主桁ウェブにスプリット・ティーを介してボルト/ナットによって接続され、
前記横リブウェブは、前記主桁スティフナーにスプライスプレートを介してボルト/ナットによって接続されている。
【0013】
(2)また、発明に係る鋼床版インスタント橋は、平板状の支持材ウェブと、前記支持材ウェブの両端にそれぞれ設けられた支持材上フランジおよび支持材下フランジと、前記支持材ウェブ、前記支持材上フランジおよび支持材下フランジを接続する支持材スティフナーとを具備する鋼床版支持材を有し、
前記鋼板と前記主桁上フランジとの接続に代えて、前記鋼板は前記支持材上フランジにボルト/ナットによって接続され、前記主桁上フランジは前記支持材下フランジにボルト/ナットによって接続され、
前記横リブウェブは、前記支持材スティフナーにスプライスプレートを介してボルト/ナットによって接続されている。
(3)さらに、前記縦リブと前記横リブとを溶接接続する溶接線の溶接始端および溶接終端は、前記縦リブの一方の側面および他方の側面にそれぞれ位置する。
(4)さらに、前記縦リブと前記横リブとを溶接接続する溶接線と、前記縦リブと前記鋼板とを溶接接続する溶接線と、前記横リブと前記鋼板とを溶接接続する溶接線とは、交差する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る鋼床版インスタント橋は、縦リブが平板によって形成され、横リブに形成されたスリットに侵入した縦リブの両側面および下端面が横リブに溶接接続されている。
すなわち、縦リブの下端面とスリットの最奥との間は溶接線によって塞がれ、下部スカラップに相当する隙間がないため、当該部に発生する輪荷重による応力集中は緩和され、当該部からの疲労亀裂の発生が抑制され、寿命が延長する。
また、縦リブと横リブとを溶接接続する溶接線の端点(溶接始端および溶接終端)は、縦リブの下端面とスリットの最奥との間に位置しないから、当該部からの疲労亀裂の発生がさらに抑制される。
さらに、縦リブと横リブとの溶接線と、縦リブと鋼板との溶接線と、横リブと鋼板との溶接線とは、スリットの口元(縦リブの上端面に同じ)において交差するから、上部スカラップに相当する隙間が形成されない。したがって、当該部における輪荷重による応力集中は緩和されるため、当該部からの疲労亀裂の発生が抑制され、寿命が延長する。
さらに、縦リブは平板であって、平板の両面において横リブおよび鋼板に溶接接続される(両面溶接に同じ)から、健全な接続になっている。
【0015】
また、主桁と鋼床版との接続が、スプリット・ティーおよびスプライスプレートを介したボルト/ナットであるから、設置が容易になり施工が迅速になる。また、撤去作業も迅速になる。
また、主桁に鋼床版支持材が設置されるから、設置の自由度が増す。すなわち、あらかじめ規格化された鋼床版パネルと、あらかじめ規格化された主桁とを用いた場合であっても、鋼床版支持材の高さを調整することによって、既設の下部工の高さ(橋脚の支承手段を含む高さ)に左右されることなく、鋼床版(鋼床版パネルに設けられた舗装の上面)を所望の高さにすることができる。
さらに、主桁を圧延H形鋼によって形成するため、規格化を図ることが容易になり、製作コストの圧縮や施工時間の短縮が可能になる。すなわち、鋼床版パネルおよび圧延H形鋼を採用することによって、規格商品化、設計レス化、舗装の一部工場実施等を組み合わせることによって製作から維持管理までのライフサイクルコストの低減が期待でき、既存の下部工が流用可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態1]
次に、本発明に係る実施の形態1を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の図面は模式的に描かれたものであり、本発明は描かれた形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0018】
(鋼床版インスタント橋)
図1〜
図6はそれぞれ、本発明の実施の形態1に係る鋼床版インスタント橋を説明するものであって、
図1は正面斜め上から斜め下方向に見た斜視図、
図2はその一部を拡大して示す斜視図、
図3は構成する部材(鋼床版パネル)を正面斜め下から斜め上方向に見た斜視図、
図4は構成する部材(鋼床版パネル)の一部(鋼板および縦リブ)を示す正面図、
図5は構成する部材(鋼床版パネル)の一部(横リブ)を示す正面図、
図6は構成する部材(鋼床版パネル)の一部(リブ交差部)を拡大して示す斜視図である。
【0019】
図1および
図2において、鋼床版インスタント橋100は、図示しない橋脚に設置された支承装置に設置される主桁40と、主桁40に設置された鋼床版支持材50と、主桁40および鋼床版支持材50に取り付けられた鋼床版パネル200とを有している。
なお、主桁40は橋幅方向に4列並び、鋼床版を形成する鋼床版パネル200は橋幅方向に3枚設置されているが、本発明はこれに限定するものではなく、何列あるいは何枚であってもよい。なお、主桁40の長手方向が「橋軸方向(Y方向)」で、橋軸方向に垂直な方向が「橋幅方向(X方向)」で、X−Y面に垂直な方向が「鉛直方向(Z方向)」である。
【0020】
(主桁)
主桁40は断面H形に圧延された鋼材(本発明において「圧延H形鋼」と称している)であって、主桁ウェブ41(Y−Z面に位置する)と、主桁ウェブ41の両側縁にそれぞれ形成された主桁上フランジ42a(X−Y面に位置する)および主桁下フランジ42b(X−Y面に位置する)とを具備している。さらに、主桁ウェブ41と主桁上フランジ42aと主桁下フランジ42bとを接続する主桁スティフナー43(X−Z面に位置する)が長手方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0021】
(鋼床版支持材)
鋼床版支持材50は断面H形の鋼材であって、支持材ウェブ51(Y−Z面に位置する)と、支持材ウェブ51の両側縁にそれぞれ形成された支持材上フランジ52a(X−Y面に位置する)および支持材下フランジ52b(X−Y面に位置する)とを具備している。
さらに、支持材ウェブ51と支持材上フランジ52aと支持材下フランジ52bとを接続する支持材スティフナー53(X−Z面に位置する)が長手方向に間隔をあけて複数設けられている。なお、鋼床版支持材50は鋼板を溶接接合して断面H形に形成したものであるが、圧延H形鋼であってもよい。
【0022】
(鋼床版パネル)
図1において、鋼床版パネル200は、鋼床版10と、橋軸方向の縦リブ20と、橋幅方向(X方向)の横リブ30とを有している。鋼床版10を構成する鋼板11の上面には製作工場において工場施工舗装12が施され、施工現場において現場施工舗装13が施されるため、施工時間の短縮が図られているが、工場施工舗装12を施工現場において実施してもよい。
【0023】
(鋼床版パネルを構成する縦リブ)
図3および
図4において、縦リブ20は矩形状の平板21によって形成され、平板上端面21aが鋼板11に溶接接続されている(かかる溶接接続の溶接線を「W21」と称す)。
なお、説明の便宜上、平板上端面21aと平板下端面21bとの距離を「平板高さH」と、平板側面21sと平板側面21tとの距離(平板21の厚さに同じ)を「平板厚さT」と、一方の側面を「平板側面21s」と、他方の側面を「平板側面21t」とそれぞれ称す。
【0024】
(鋼床版パネルを構成する横リブ)
図3および
図5において、横リブ30は略矩形状の横リブウェブ31と、横リブウェブ31の横リブ下端31bに設けられた横リブ下フランジ32と、横リブ上端面31aから横リブ下端31bに向けて形成されたスリット33とを具備し、横リブ上端面31aが鋼板11に溶接接続されている(かかる溶接接続の溶接線を「W31」と称す)。スリット33に縦リブ20は侵入可能である。なお、説明の便宜上、スリット33の口元を「スリット上端33a」と、最奥を「スリット下端縁33b」と、一方の側縁を「スリット側縁33s」と、他方の側面を「スリット側縁33t」とそれぞれ称す。
そして、スリット33の口元においてスリット側縁33sと横リブ上端面31aとの角にC面取り34sが、スリット側縁33tと横リブ上端面31aとの角にC面取り34tが、それぞれ形成されている。
なお、スリット上端33aとスリット下端縁33bとの距離を「スリット深さD」と称すと、スリット深さDは平板高さHよりも僅かに大きくなっている。また、スリット側縁33sとスリット側縁33tとの間隔(スリット33の幅に同じ、以下「スリット幅S」と称す)は、平板厚さHよりも僅かに大きくなっている。
【0025】
(鋼床版パネルのリブ交差部)
図3および
図6において、平板21はスリット33に進入し、リブ交差部において、平板下端面21bはスリット下端縁33bに、平板側面21sはスリット側縁33sに、平板側面21tはスリット側縁33tにそれぞれ溶接接続されている(かかる溶接接続の溶接線を「W23」と称す)。すなわち、溶接線W23は平板上端面21aを除く範囲の「全周溶接」になっている。このとき、溶接線W23の図示しない溶接端点は、平板下端面21b(スリット下端縁33bに同じ)の位置にはなく、平板側面21s(スリット側縁33sに同じ)および平板側面21t(スリット側縁33tに同じ)にある。
なお、C面取り34sおよびC面取り34tは、たたえば「C10」程度の小さいものであるから、溶接線W21、溶接線W31および溶接線W23は、C面取り34sおよびC面取り34tにおいて交差し(重なり)、当初形成されていた三角形状の隙間は塞がれる。よって、リブ交差部において、上部スカラップに相当する隙間および下部スカラップに相当する隙間は形成されない。
【0026】
(鋼床版パネルの作用効果)
以上のように、鋼床版パネル200は、リブ交差部において、従来のような上部スカラップに相当する隙間および下部スカラップに相当する隙間が形成されないから、特に、溶接線W23の平板下端面21b(スリット下端縁33bに同じ)の位置における応力集中が緩和され、当該部からの疲労亀裂の発生が抑制される。
また、平板下端面21b(スリット下端縁33bに同じ)の位置に溶接線W23の端点(始端および終端)が存在しないから、該位置からの疲労亀裂の発生がさらに抑制される。
よって、鋼床版パネル200の寿命は延長する(これについては別途詳細に説明する)。
【0027】
(鋼床版パネルの主桁への取り付け)
再び
図1および
図2において、主桁40に鋼床版支持材50が載置され、主桁上フランジ42aと支持材下フランジ52bとがボルト/ナット80によって接続されている。そして、支持材上フランジ52aに鋼床版パネル200を構成する鋼板11の側縁部が載置され、両者はボルト/ナット80によって接続されている。
また、鋼床版パネル200を構成する横リブ30の横リブ下フランジ32は、スプリット・ティー60およびスプライスプレート61を介して主桁ウェブ41にボルト/ナット80によって接続されている。
さらに、横リブ30の横リブウェブ31は、スプライスプレート74を介して主桁スティフナー43にボルト/ナット80によって接続されると共に、スプライスプレート75を介して支持材スティフナー53にボルト/ナット80によって接続されている。
【0028】
なお、横リブ下フランジ32がスプライスプレート61に接続され、スプライスプレート61が断面T型のスプリット・ティー60に接続され、スプリット・ティー60が主桁ウェブ41に接続されているが、本発明はこれに限定するものではなく、スプライスプレート61を撤去して、断面L型のスプリット・ティーによって横リブ下フランジ32の内面および外面を挟み込んで、かかる断面L型のスプリット・ティーを主桁ウェブ41にボルト/ナット80によって接続してもよい。
【0029】
(ボルト/ナット)
なお、ボルト/ナット80とは、所定の貫通孔(図示しない)を貫通するボルトと、該ボルトに螺合するナットとを具備する締結手段を指し、必要に応じて座金や弛み止めを伴う。そして、ボルト/ナット80を形成するボルトおよびナットの材質や形状、寸法は限定するものではなく、設置場所に応じて適宜選定されるものである。たとえば、鋼板11と支持材上フランジ52aとを接続するボルト/ナット80におけるボルトを「皿型高力ボルト」にしておけば、鋼板11の上面への現場施工舗装13に好適である。
【0030】
(鋼床版インスタント橋の作用効果)
以上のように鋼床版インスタント橋100は、鋼床版パネル200を有し、鋼床版パネル200は前記のように疲労亀裂の発生が抑制されるから、保全性が向上して寿命が延長する。また、鋼床版パネル200と主桁40および鋼床版支持材50との接続がボルト/ナット80であって、溶接を不要にするから、作業が簡素になり、施工時間が短縮する。
なお、以上は、鋼床版支持材50を有する場合であるが、本発明はこれに限定するものではなく、鋼床版支持材50を撤去して、主桁上フランジ42aに鋼板11を直接載置し、両者をボルト/ナット80によって接続してもよい。
【0031】
(鋼床版パネルの実施例)
鋼床版パネル200は以下に示す寸法に製作され、複数枚を並べられる。
鋼床版10を構成する鋼板11は、橋軸方向(Y方向)長さ4500mm、橋幅方向(X方向)長さ2560mm、厚さ(Z方向)16mmである。
縦リブ20を形成する平板は、平板高さHが256mm、平板厚さTが16mmの矩形鋼板である。そして、橋幅方向(X方向)に320mm間隔で7枚配置されている。
横リブ30は、横リブ上端面31aから横リブ下フランジ32の下面までの距離(以下「横リブ高さ」と称す)が600mmで、横リブウェブ31の厚さが9mmである。そして、スリット33は330mm間隔で7箇所に形成され、スリット深さDは258mm、スリット幅Sは20mmである。
【0032】
したがって、縦リブ20はスリット33内に完全に侵入可能で、平板下端面21bとスリット下端縁33bとの間、平板側面21sとスリット側縁33sとの間、平板側面21tとスリット側縁33tとの間には、それぞれ2mmの隙間が生じる設計になっている。
なお、工作機械(たとえばNCレーザ加工機等)の発達によって加工精度が向上しているから、仮に、製作誤差や取り付け誤差等によって前記隙間の値は変動したとしても、溶接接続に支障のない設計になっている。
そして、鋼板11の上面の両側縁および両端縁を除く矩形状の範囲に、舗装厚さ80mmの工場施工舗装12が、製作工場において設けられる。なお、工場施工舗装12を除く範囲(両側縁および両端縁に同じ)には施工現場において、鋼床版パネル200の主桁40への取り付けが完了した後、舗装厚さ80mmの現場施工舗装13が設けられる(
図1参照)。なお、工場施工舗装12を施工現場において設けてもよい。
【0033】
(主桁の実施例)
主桁40は、支間距離が10m、15mおよび20mの3水準に集約して製作されている。すなわち、支間距離が10mの場合は、ウェブ高さ600mm、フランジ幅300mm、ウェブ厚さ14mm、フランジ厚さ28mmの圧延H形鋼である。また、支間距離が15mの場合は、ウェブ高さ850mm、フランジ幅300mm、ウェブ厚さ19mm、フランジ厚さ32mmの圧延H形鋼である。さらに、支間距離が20mの場合は、ウェブ高さ1000mm、フランジ幅300mm、ウェブ厚さ19mm、フランジ厚さ28mmの圧延H形鋼である。なお、材質はSM400またはSM490であるが、これに限定するものではない。
【0034】
(試験材)
図7〜
図9はそれぞれ、本発明の実施の形態1に係る鋼床版インスタント橋を説明するものであって、
図7はその特性を試験するための試験材を正面斜め上から斜め下方向に見た斜視図、
図8はその一部示す正面図、
図9は比較のための比較材の一部を示す正面図である。
なお、鋼床版パネル200と同じ部位については同じ符号を付して説明を省略する。また、理解を容易にするため、部材寸法、部材間の隙間および溶接線の幅を誇張して描いている。
【0035】
図7および
図8において、試験材300は、鋼床版パネル200が一対の主桁40に直接設置され、主桁40の主桁上フランジ42aおよび鋼床版支持材50が撤去され、鋼板11が主桁ウェブ41および主桁スティフナー43に直接溶接接続されたものに同じである。
横リブ下フランジ32はスプライスプレート61およびスプリット・ティー60を介さないで、また、横リブウェブ31はスプライスプレート74を介さないで、それぞれ主桁スティフナー43の位置において主桁ウェブ41に直接溶接接続されている。
このとき、主桁40は長さ(橋軸方向の距離)5000mm、桁高さ1000mmで、主桁40には橋軸方向で4枚の主桁スティフナー43が等間隔に設けられている。また、主桁40同士は間隔(橋幅方向の距離)2000mmを開けて配置されている。
鋼床版パネル200は、橋幅方向に6枚の縦リブ20と橋軸方向に4枚の横リブ30とを具備している。そして、リブ交差部の寸法等は前記実施例の値に同じである。
【0036】
(比較材)
図9において、比較材900は、鋼板11と、橋軸方向の縦リブ20と、橋幅方向の比較横リブ90とを有し、リブ交差部の形態が試験材300と相違するものの、これを除く部位の形状および寸法は試験材300に同じである。すなわち、比較材900に比較スリット93が形成され、さらに、比較スリット93の最奥に比較スカラップ95が形成されている点において、試験材300に形成されたスリット33と相違する。以下、両者の相違する点について説明する。
【0037】
(比較材の横リブ)
比較横リブ90は矩形状平板である比較ウェブ91と、比較ウェブ91の比較上端91aから比較下端91bに向かって形成された比較スリット93を具備し、比較スリット93の最奥に比較スカラップ95が形成されている。比較スリット93に縦リブ20が侵入可能であって、比較スリット93の幅は平板厚さTより大きくなっている。また、比較スリット93の口元には、比較C面取り94sが形成されている。
なお、説明の便宜上、比較スリット93の口元を「比較スリット上端93a」と、最奥を「比較スリット下端縁93b」と、一方の側縁を「比較スリット側縁93s」と、他方の側面を「比較スリット側縁93t」とそれぞれ称す。そして、比較スリット上端93aと比較スリット下端縁93bとの距離は平板高さHよりも大きくなっている。
比較スカラップ95は、比較スリット下端縁93bに接する略円形であって、比較スリット側縁93sと比較スリット側縁93tとの距離よりも大きな距離の隙間を形成する。
【0038】
(比較材のリブ交差部)
縦リブ20の平板上端面は溶接線W21によって鋼板11に接続され、比較ウェブ91の比較上端91aは溶接線W91によって鋼板11に接続され、平板21は比較スリット93に侵入している。
このとき、平板下端面21bと比較スリット下端縁93bとの間に隙間が形成され、平板側面21sは比較スリット側縁93sの比較スカラップ95を除く範囲において溶接接続されている(かかる溶接接続の溶接線を「W93」と称す)。一方、平板側面21sは比較スリット側縁93tに対向し、互いに溶接接続されないで離隔している。
このとき、溶接線W93の上側の端は、溶接線W21および溶接線W91に重なって、比較C面取り94sを塞いでいるものの、溶接線W93の下側の端は比較スカラップ95に位置し、比較スカラップ95を塞がない。すなわち、溶接線W93の溶接端点は比較スカラップ95に位置している。なお、溶接線W91および溶接線W93は何れを先に形成してもよい。
【0039】
(FEA)
疲労試験に先行して、FEA(有限要素法解析)によって、(a)クリティカル載荷位置を確認した後、(b)耐疲労ディテールを検討した。なお、支持条件は一対の主桁40の両端部をそれぞれ支持する4点支持である。
【0040】
(クリティカル載荷位置)
鋼床版パネル200の縦リブ20には車両の走行位置によって集中引張応力と集中圧縮応力とが発生する。すなわち、載荷位置を変更してある縦リブ(仮に「R1」とする)に発生する集中応力を求めて、載荷位置毎の集中応力を比較すると、載荷位置(以下「引張最大載荷位置」と称す)F1に載荷したときに最大の集中引張応力(σ1+)が発生し、載荷位置(以下「圧縮最大載荷位置」と称す)Q1に載荷したときに最大の集中圧縮応力(σ1−)が発生することが分かる。そして、縦リブR1について最大の集中引張応力(σ1+)と最大の集中圧縮応力(σ1−)の絶対値との和を「集中応力総和(σ1±)」とする。
同様に、その他の縦リブR2、R3・・・毎に、引張最大載荷位置F2、F3・・・と、圧縮最大載荷位置Q2、Q3・・・と、集中応力総和σ2±、σ3±・・・とを求める。
そこで、求めた集中応力総和σ1±、σ2±、σ3±・・・のうち最も大きな値になる集中応力総和σj±に対応した縦リブRjを「着目対象縦リブ」とし、縦リブRjについての引張最大載荷位置Fjを、鋼床版パネル200の「クリティカル載荷位置」と称す。
【0041】
(集中応力総和)
図10は、本発明の実施の形態1に係る鋼床版インスタント橋の特性を試験するための試験材および比較材の集中応力総和を比較する棒グラフである。なお、集中引張応力を右下がりの斜線で、集中圧縮応力の絶対値を右上がりの斜線で示す。
図10において、試験材300において、着目対象縦リブRjについて、引張最大載荷位置Fjに100kNの載荷をしたとき、25N/mm
2の集中引張応力(σj+)が発生し、圧縮最大載荷位置Qjに100kNの載荷をしたとき、55N/mm
2の集中圧縮応力(σj−)が発生し、集中応力総和(σj±)が80N/mm
2になっている。
一方、比較材900についても試験材300と同じ要領で、着目対象縦リブを特定し、引張最大載荷位置および圧縮最大載荷位置にそれぞれ100kNの載荷をしたとき、着目対象縦リブにおいて集中引張応力が92N/mm
2、集中圧縮応力が85N/mm
2発生し、集中応力総和が177N/mm
2になっている。
すなわち、試験材300の方が比較材900に比較して、集中応力総和は58%低い値になり、特に、集中引張応力は73%も低い値になっている。よって、試験材300は下スカラップに相当する隙間を有しないことから、集中応力総和が大幅に小さくなることが確認された。
【0042】
(疲労試験)
図11は、本発明の実施の形態1に係る鋼床版インスタント橋の特性を試験するための疲労試験の結果を示す「荷重−載荷回数曲線」である。なお、縦軸はクリティカル載荷位置に載荷される繰り返し荷重、横軸は繰り返し回数(
図11では「疲労寿命」と記載している)である。
図11において、試験材300のクリティカル載荷位置と、比較材900のクリティカル載荷位置とに、それぞれ荷重200kNを繰り返し載荷したとき、試験材300では約7千万回の繰り返しによっても疲労亀裂は発生しない(右斜め上方向の黒矢印付きの黒四角にて示す)のに対し、比較材900は約2百万回の繰り返しによって疲労亀裂が発生している(白四角にて示す)。
さらに、試験材300に、荷重340kNを約1百万回繰り返し載荷しても、疲労亀裂は発生していない(右斜め上方向の黒矢印付きの黒四角にて示す)。
なお、図中の斜線は「T荷重換算の1千万回」を示している。
以上より、試験材300が優れた疲労耐久性を有することが確認された。すなわち、試験材300は、リブ交差部において縦リブ20と横リブ30とが全周に渡って溶接接続され、下スカラップに相当する隙間を有しないため、当該位置における溶接線23からの疲労亀裂の発生が抑制されている。
【0043】
以上、本発明を、鋼床版インスタント橋について実施の形態1をもとに説明したが、これらは例示であり、様々な変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。